(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ブロー成形装置およびブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/28 20060101AFI20230116BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B29C49/28
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2021512187
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2020015088
(87)【国際公開番号】W WO2020204098
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019070459
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】堀篭 浩
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊雄
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003775(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/142043(WO,A1)
【文献】特開平4-246526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/28
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、
機台と、
前記機台から上下方向に間隔をおいて配置され
、前記機台に立設された複数の支柱で支持される上部基盤と、
前記上部基盤の高さ位置で回動することで、前記射出成形部および前記ブロー成形部の間で前記プリフォームを搬送する移送板と、
前記機台に配置された金型に対して前記移送
板を上下方向に昇降させる昇降機構と、
前記支柱に設けられ、前記機台と前記上部基盤の上下方向の間隔を調整し、前記機台に対する前記移送
板の上下方向のストロークを調整する高さ調整部と、
を備え
、
前記高さ調整部には、前記機台と前記上部基盤の上下方向の間隔を保持するスペーサー部材が交換可能に取り付けられ、
間隔調整後の前記支柱は、前記スペーサー部材を介して前記上部基盤を支持する
ブロー成形装置。
【請求項2】
前記高さ調整部は、前記支柱を上下方向に移動させる駆動部を有する
請求項
1に記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記高さ調整部は、前記駆動部により移動する前記支柱を上下方向に沿って案内するガイド部を有する
請求項
2に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記高さ調整部は、間隔調整後の前記支柱の位置を固定するロック部を有する
請求項2
または請求項
3に記載のブロー成形装置。
【請求項5】
前記ブロー成形部の前に、前記射出成形部で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整部をさらに備える
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のブロー成形装置を用いたブロー成形方法であって、
前記高さ調整部
における前記スペーサー部材の交換により、前記機台に対する前記移送
板の上下方向のストロークを調整する高さ調整工程を行い、
前記高さ調整工程の後に、
前記プリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を行うブロー成形方法。
【請求項7】
前記高さ調整工程では、前記プリフォームの軸方向長さに基づいて、前記機台と前記上部基盤の上下方向の間隔を調整する
請求項
6に記載のブロー成形方法。
【請求項8】
前記ブロー成形工程の前に、前記射出成形工程で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整工程がさらに実施される
請求項
6または請求項
7に記載のブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形装置およびブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造装置の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形装置が知られている。ホットパリソン式のブロー成形装置は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する構成であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
また、ブロー成形装置の構成として、射出成形されたプリフォームを回転駆動する移送板で間欠搬送し、樹脂製容器をブロー成形する回転式のブロー成形装置がよく知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のブロー成形装置では、移送板や各種の駆動機構を保持する上部基盤が機台に対して上下方向に間隔をおいて固定される。そして、ブロー成形装置の射出成形部、ブロー成形部などでは、上部基盤に対して移送板が昇降することで各工程の処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブロー成形装置で扱うプリフォームの軸方向長さは、製造する容器に応じて種々変化する。例えば、ブロー成形装置の各部からプリフォームを進退させるのに必要となる移送板の上下方向のストロークは、プリフォームの軸方向長さが短い場合には、当該長さが長い場合と比べると短くてすむ。
【0006】
しかし、従来のブロー成形装置の構成では、移送板の上下方向のストロークは上部基盤の位置と機台の間隔により規定され、プリフォームの種類に拘わらず一定である。つまり、従来のブロー成形装置によると、プリフォームの軸方向長さが短い場合にはプリフォームの進退に必要となるストロークよりも余分に移送板を上下方向に往復移動させることになる。そのため、プリフォームの種類によっては機械の動作時間(ドライサイクル)が不必要に長くなるので、容器の成形サイクルもその分長くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、プリフォームの長さに応じて移送板の上下方向のストロークを適切に調整し、容器の成形サイクルを短縮可能なブロー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るブロー成形装置は、有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、機台と、前記機台から上下方向に間隔をおいて配置され、前記機台に立設された複数の支柱で支持される上部基盤と、前記上部基盤の高さ位置で回動することで、前記射出成形部および前記ブロー成形部の間で前記プリフォームを搬送する移送板と、前記機台に配置された金型に対して前記移送板を上下方向に昇降させる昇降機構と、前記支柱に設けられ、前記機台と前記上部基盤の上下方向の間隔を調整し、前記機台に対する前記移送板の上下方向のストロークを調整する高さ調整部と、を備える。前記高さ調整部には、前記機台と前記上部基盤の上下方向の間隔を保持するスペーサー部材が交換可能に取り付けられる。間隔調整後の前記支柱は、前記スペーサー部材を介して前記上部基盤を支持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、プリフォームの長さに応じて移送板の上下方向のストロークを適切に調整し、容器の成形サイクルを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ブロー成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】ブロー成形装置の射出成形部近傍の側面図である。
【
図3】非伸張状態における支柱および高さ調整部の構成例を示す図である。
【
図4】伸張状態における支柱および高さ調整部の構成例を示す図である。
【
図5】高さ調整部の油圧シリンダおよびガイド機構を模式的に示す図である。
【
図6】ストッパー部材およびスペーサー部材の構成例を示す図である。
【
図7】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態および比較例のブロー成形方法におけるプリフォームの温度変化例を示すグラフである。
【
図9】射出成形装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0012】
(ブロー成形装置1)
図1は、樹脂製容器(以下、容器とも称する)を製造するためのブロー成形装置1の構成を模式的に示す平面図である。
図2は、ブロー成形装置の射出成形部近傍の側面図である。
本実施形態のブロー成形装置1は、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0013】
図1、
図2に示すように、ブロー成形装置1は、機台2と、機台2の上方(図中Z方向)に配置された上部基盤3とを備える。上部基盤3は、機台2から上方へ立設された複数(4本)の支柱4によって支持されている。各支柱4は、機台2と上部基盤3の上下方向(図中Z方向)の間隔を調整する高さ調整部5をそれぞれ有している。
【0014】
ブロー成形装置1において、機台2と上部基盤3の間の空間には、射出成形部11、温度調整部12、ブロー成形部13および取出部14が配置されている。射出成形部11、温度調整部12、ブロー成形部13および取出部14は、後述する移送板15の回転中心Oを基準として、所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。なお、ブロー成形装置1において、温調部12や取出部14は配置されていなくても構わない。
【0015】
ここで、上部基盤3の射出成形部11の位置には、射出成形部11の上部型締板27や
図2に示す射出コア型23がそれぞれ上面側に配置される。上部基盤3の温度調整部12の位置には、加熱コアおよび加熱コアの昇降機構(いずれも不図示)が上面側に配置される。上部基盤3のブロー成形部13の位置には、延伸ロッドおよび延伸ロッドの昇降機構(いずれも不図示)がそれぞれ上面側に配置される。また、上部基盤3の取出部14の位置には、取出カム(不図示)が上面側に配置される。
【0016】
また、機台2の上方であって上部基盤3の下面には、扇形の4つの移送板15が所定角度(例えば90度)ごとに配置されている。4つの移送板15は、それぞれ上部基盤3の周囲に固定された複数の受部材32(
図2参照)に案内されて、回転中心Oを回転軸とする回転方向に沿って間欠的に循環移動する。移送板15に保持されたプリフォーム10(または容器)は、移送板15の回動により、射出成形部11、温度調整部12、ブロー成形部13、取出部14の順に搬送される。なお、移送板15は、単一の円盤形状であって、成形部ごとに分割されていない構成でもよい。
【0017】
また、
図2に示すように、各移送板15の下面には、プリフォーム10の軸方向が上下方向に沿うようにプリフォームを保持するネック型16が設けられている。また、各移送板15におけるネック型16の上面側には開口部が形成されており、当該開口部から射出コア型23、ブローコアおよび延伸ロッドなどを上方からプリフォーム10に挿入することが可能である。
【0018】
(射出成形部11)
射出成形部11は、射出金型21、移送板15の昇降機構30を備える。射出成形部11には、プリフォームの原材料である樹脂材料を供給する射出装置17が接続されている。
射出金型21は、プリフォーム10の内部形状を規定する射出コア型23と、プリフォーム10の外部形状を規定する射出キャビティ型24と、射出装置17から供給された溶融樹脂を射出金型21の型空間に導くホットランナ型25と、を有している。射出キャビティ型24およびホットランナ型25は、機台2の下部基盤2a側に固定される。一方、射出コア型23は、タイバー26で支持された上部型締板27に取り付けられ、上下方向に昇降可能である。
【0019】
昇降機構30は、移送板15の下面に取り付けられたネック型16を射出キャビティ型24に対して昇降させる機能を担う。昇降機構30は、昇降ロッド31を介して受部材32を上下方向に昇降させる昇降シリンダ(不図示)を備え、受部材32の昇降によって受部材32に保持される移送板15が上下方向に昇降するように構成されている。昇降機構30の動力源としては、例えば油圧シリンダやエアシリンダを用いることができる。なお、昇降機構30の動力源として、油圧式やトグル式の昇降機構や電動モータによるボールねじ機構を用いてもよい。
【0020】
ここで、射出金型21の射出キャビティ型24は、機台2の下部基盤2a側に固定されており、移送板15は、上部基盤3の高さ位置で回動してプリフォーム10を搬送する。したがって、射出金型21に対してプリフォーム10を進退させるときの昇降機構30による移送板15の上下方向のストロークは、機台2又は下部基盤2aと上部基盤3の上下方向の間隔によって規定される。
【0021】
射出成形部11は、射出キャビティ型24、射出コア型23と、移送板15のネック型16とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置17から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部11でプリフォーム10が製造される。
【0022】
なお、射出成形部11の型開きをしたときにも、移送板15のネック型16は開放されずにそのままプリフォーム10を保持して搬送する。射出成形部11で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置1で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。一例として、
図1では4本のプリフォームを搬送する構成を示す。
【0023】
(温度調整部12)
温度調整部12は、図示しない温度調整用の金型ユニット(温調ポットや温調ロッド)と、その金型ユニットの昇降機構(いずれも不図示)を備える。温度調整部12は、温調ポットにより、射出成形部11で製造されたプリフォーム10の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度を最終ブローに適したブロー温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、本実施形態の温度調整部12は、射出成形後の高熱のプリフォーム10を冷却する機能も担う。なお、温度調整部12にも、射出成形部11と同様の構成の移送板15の昇降機構(不図示)を設けてもよい。
【0024】
(ブロー成形部13)
ブロー成形部13は、ブロー成形金型(ブロー型および底型)、延伸ロッド、ブローエアの導入部材、移送板15の昇降機構(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部13は、ブロー成形金型に配置されたプリフォーム10を延伸ロッドで軸方向に延伸させるとともに、内部に高圧エアを導入して二軸延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
【0025】
(取出部14)
取出部14は、取出カムによってネック型16を開放し、ブロー成形部13で製造された容器をブロー成形装置1から取り出す。取出部14で取り出された容器は、箱詰めされるかあるいは充填ラインへ搬送される。なお、取出部14にも、射出成形部11と同様の構成の移送板15の昇降機構(不図示)を設けてもよい。
【0026】
(支柱4、高さ調整部5)
図3は、非伸張状態における支柱4および高さ調整部5の構成例を示す図である。
図4は、伸張状態における支柱4および高さ調整部5の構成例を示す図である。
図5は、高さ調整部の油圧シリンダおよびガイド部を模式的に示す図である。
なお、本実施形態における4組の支柱4および高さ調整部5の構成は共通であるので、1組の支柱4および高さ調整部5の構成を説明し、重複説明は省略する。
【0027】
図3、
図4に示すように、支柱4は、それぞれ上下方向に沿って配置された上部支柱41と下部支柱42で構成される。上部支柱41は、上部基盤3の下側に接続され、下端側に側方に突出する台座41aを有している。下部支柱42は、機台2上に立設されている。上部支柱41および下部支柱42は、いずれも後述するシリンダロッド51bおよびガイド部52により上下方向に接続されている。また、
図3、
図5(A)に示す非伸張状態においては、下部支柱42の上端面が上部支柱41の下端面を受けるように構成されている。
【0028】
高さ調整部5は、駆動部の一例としての油圧シリンダ51と、上部支柱41を上下方向に案内するガイド部52と、上部支柱41の上下方向の位置を固定するロック部53とを備える。
油圧シリンダ51は、上部支柱41の内側に固定されたシリンダ本体51aと、シリンダ本体51aの下側に延びるシリンダロッド51bとを備える。
図5(A)、(B)に示すように、シリンダロッド51bは下部支柱42の上端面に連結され、シリンダ本体51aの油圧により上下方向に伸縮する。したがって、油圧シリンダ51により上部支柱41を上下方向に動かすことが可能である。
【0029】
図5(A)、(B)に示すように、ガイド部52は、上部支柱41および下部支柱42の一側面に配置される。また、
図3、
図4に示すように、ロック部53は、ガイド部52が配置された側面とは異なる、上部支柱41および下部支柱42の他の側面に配置される。
【0030】
ガイド部52は、上下方向に沿って配置されたガイドロッド52aを備える。ガイドロッド52aは、上部支柱41の台座41aに固定され、下部支柱42に固定されたガイドブロック42aを貫通するように取り付けられている。ガイドロッド52aは、ガイドブロック42aに対して摺動可能である。したがって、ガイドロッド52aによって上部支柱41の水平方向(図中XY方向)の動きが拘束され、上部支柱41は上下方向にのみ安定して移動可能となる。
【0031】
また、
図4、
図5(B)に示す伸張状態においては、下部支柱42の上端面と上部支柱41の下端面の間に、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を規定するスペーサー部材54が挿入される。スペーサー部材54は、
図6(C)に示すように、全体形状が矩形状のブロックであって、一方の側面部には上下方向に伸びる溝部54aが形成されている。スペーサー部材54の溝部54aの幅は、シリンダロッド51bの径寸法よりも広く設定されている。
なお、スペーサー部材54は、移送板15の上下方向のストロークがプリフォーム10を進退させるのに適切な寸法となるように、上下方向の高さが異なる複数種類のうちから任意の高さhの部材を選択可能である。
【0032】
スペーサー部材54の取付時には、油圧シリンダ51の動作によって形成された上部支柱41と下部支柱42の隙間にスペーサー部材54を水平方向から挿入し、シリンダロッド51bが溝部54aに挟まれるようにスペーサー部材54を配置する。上部支柱41と下部支柱42の間にスペーサー部材54を配置することで、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔をスペーサー部材54の高さhで調整できる。
【0033】
ロック部53は、ロックシリンダ55と、ストッパー部材56とを備える。
ロックシリンダ55は、上部支柱の第2の側面と対向するように支持台57に固定され、ストッパーの機能を担うロッド55aを上部支柱41の側面に向けて水平方向に伸縮させる。ロックシリンダ55のロッド55aが伸びた状態では、ロッド55aがストッパー部材56と係合することで上部支柱41の上下方向の位置が固定される。一方、ロッド55aが収縮した状態では、ロッド55aとストッパー部材56の係合が解除されて上部支柱41を上下方向に動かすことが可能である。
【0034】
ストッパー部材56は、上部支柱41の側面に設けられた取付部41bに取り付けられ、ロックシリンダ55のロッド55aを受ける部材である。ストッパー部材56は平板状の部材であって、厚さ方向にボルト穴が開口されている。また、ストッパー部材56は、上面でロックシリンダ55のロッド55aを受ける。
【0035】
ストッパー部材56は、上下方向の高さが異なる複数種類のうちから任意の高さの部材を選択して、上部支柱の第2の側面にボルト(不図示)によって交換可能に取り付けられる。例えば、
図6(A)は、
図3の非伸張状態に対応するストッパー部材56aを示す図であり、
図6(B)は、
図4の伸張状態に対応するストッパー部材56bを示す図である。
【0036】
図3、
図4に示すように、ロックシリンダ55の上下方向の位置は支持台57で固定されている一方で、上部支柱41の取付部41bの位置は伸張状態と非伸張状態で上下方向に変化する。そのため、伸張状態に対応するストッパー部材56bの上下方向の寸法h
2は、非伸張状態に対応するストッパー部材56aの上下方向の寸法h
1よりも、スペーサー部材54の高さhの分だけ短く設定される。これにより、伸張状態と非伸張状態のいずれにおいても、ストッパー部材56の上面をロックシリンダ55の位置に合わせることができる。
【0037】
また、ストッパー部材56の上面は、上部支柱41へ取り付けたときに、上部支柱の側面から離れるにつれて下側に傾いたくさび状の傾斜面をなしている。
図3、
図4に示すように、ロックシリンダ55のロッド55aが伸張するとストッパー部材56の傾斜面が下側に押圧される一方、上部支柱41に固定されたストッパー部材56には上側への反力が生じるので、上部支柱41が強く固定される。
【0038】
<ブロー成形方法の説明>
図7は、本実施形態のブロー成形装置1によるブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。本実施形態では、ブロー成形方法の後述の各工程(S101~S104)が実施される前に、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を調整する高さ調整工程(S100)が行われる。
【0039】
(ステップS100:高さ調整工程)
高さ調整工程は、ブロー成形に用いるプリフォーム10の軸方向長さに応じて、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を調整する工程である。以下の説明では、プリフォーム10を軸方向長さの長いものから短いものに切り替えた場合を想定し、ブロー成形装置1を
図4に示す伸張状態から
図3に示す非伸張状態に調整する場合を説明する。
【0040】
第1に、ロックシリンダ55のロッド55aを収縮させて上部支柱41の固定を解除し、その後に油圧シリンダ51のシリンダロッド51bをわずかに伸張させる。これにより、上部支柱41が下部支柱42に対して上側に移動し、上部支柱41と下部支柱42に挟まれたスペーサー部材54を抜き出すことが可能になる。
【0041】
第2に、上部支柱41と下部支柱42の間からスペーサー部材54を抜き出す。また、上部支柱41に取り付けられているストッパー部材56bを、非伸張状態に対応するストッパー部材56aに交換する。
第3に、油圧シリンダ51のシリンダロッド51bを収縮させて上部支柱41の下端面と下部支柱42の上端面を当接させて支柱4を非伸張状態にする。これにより、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔は、抜き出されたスペーサー部材54の高さhの分だけ短くなる。また、移送板の上下方向のストロークは、軸方向長さの短いプリフォームを進退させるのに適切な寸法に調整される。
第4に、ロックシリンダ55のロッド55aを伸張させてストッパー部材56aと係合させる。これにより、上部支柱41の上下方向の位置が固定される。
【0042】
以上のようにして、高さ調整工程では、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を調整することができる。上記の例はあくまで一例であって、高さ調整工程では、高さ調整部5を非伸張状態から伸張状態に調整してもよい。あるいは、移送板15の上下方向のストロークが切り替え後のプリフォームを進退させるのに適切な寸法となるように、スペーサー部材54を異なるものに交換して高さ調整をしてもよい。
上記の高さ調整工程が完了すると、以下に示すブロー成形方法の各工程が実行される。
【0043】
(ステップS101:射出成形工程)
まず、射出成形部11において、射出キャビティ型24、射出コア型23および移送板15のネック型16で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置17から樹脂を射出し、プリフォーム10が製造される。
【0044】
ステップS101において、樹脂充填の終了直後または樹脂充填後に設けられた最小限の冷却時間後に射出成形部11が型開きされる。つまり、プリフォーム10の外形が維持できる程度の高温状態でプリフォーム10が射出キャビティ型24、射出コア型23から離型される。その後、移送板15が所定角度回転し、ネック型16に保持されたプリフォーム10が温度調整部12に搬送される。
【0045】
ここで、
図8を参照して、本実施形態のブロー成形方法におけるプリフォーム10の温度変化を説明する。
図8の縦軸はプリフォーム10の温度を示し、
図8の横軸は時間を示す。
図8において、本実施形態のプリフォームの温度変化例は
図8中(A)で示す。また、後述する比較例(従来方法)のプリフォームの温度変化例は
図8中(B)で示す。なお、各工程間の空白は、プリフォーム10または容器の移送に要する時間であり、同一である。
【0046】
本実施形態においては、樹脂材料の融点以上の温度で樹脂材料が射出成形されると、射出成形部11では射出成形後のプリフォーム10の最小限の冷却のみを行い、温度調整部12でプリフォーム10の冷却および温度調整を行う。本実施形態において、射出成形部11で樹脂材料の射出が完了してから樹脂材料を冷却する時間(冷却時間)は、樹脂材料を射出する時間(射出時間)に対して1/2以下であることが好ましい。また、上記の樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料の重量に応じて、樹脂材料を射出する時間に対してより短くすることができる。樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対して2/5以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましく、1/5以下であると特に好ましい。比較例よりも冷却時間を著しく短縮させているため、プリフォームのスキン層(固化状態にある表面層)は従来より薄く、コア層(軟化状態または溶融状態にある内層)は従来より厚く形成される。つまり、比較例と比べて、スキン層とコア層との間の熱勾配が大きく、高温で保有熱が高いプリフォームが成形される。
【0047】
本実施形態では、射出成形されたプリフォーム10は、比較例の場合よりも高い離型温度で射出成形部11から離型され、温度調整部12へと搬送される。温度調整部12への移動に伴って、プリフォーム10はスキン層とコア層間の熱交換(熱伝導)による均温化が進む。また、外気との接触により、プリフォーム10は外表面から若干冷却される。しかし、温度調整部12への搬入時までプリフォーム10の温度はほぼ高温の離型温度の状態で維持される。温度調整部12では、高温の離型温度からブロー温度までプリフォーム10の温度が低下され、その後、ブロー成形が行われるまでプリフォーム10の温度は上記のブロー温度に維持される。
【0048】
ここで、ブロー成形装置1の構造上、射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各待機時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
各工程間の搬送時間には、移送板15を上下方向に往復移動させる時間が含まれる。本実施形態では、上記の高さ調整工程により移送板15の上下方向のストロークがプリフォームを進退させるのに適切な寸法に事前に調整されている。そのため、本実施形態では移送板15を上下方向に往復移動させるときに移送板15を余分に移動させずにすむ。
【0049】
一方、比較例として、射出成形工程でプリフォーム10の冷却を行う場合のプリフォームの温度変化例(
図8の(B))を説明する。
比較例では、射出成形部11の金型内でプリフォーム10をブロー温度よりも低いか略同程度の温度まで冷却する。その結果として、比較例では射出成形工程の時間が本実施形態よりも長くなる。そうすると、各工程の時間は最も長い射出成形工程の時間に合わせて設定されることから、結果的に容器の成形サイクルの時間も長くなってしまう。
【0050】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部12において、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0051】
温度調整工程においては、まず、プリフォーム10が温調ポット内のプリフォーム形状の温調空間内に収容される。続いて、温調ポットに収容されたプリフォーム10に対して、エアを吹き込み可能な加熱コアが導入され、プリフォーム10の冷却ブロー(クーリングブロー)が行われる。
温度調整工程の冷却ブローにより、プリフォーム10は内側からエアの圧力を受けて、所定の温度に保たれた温調ポットと接触し続ける。そのため、温度調整工程において、プリフォーム10は外側からブロー温度以下にならないように温度調整され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。なお、温調ポットがプリフォーム形状の空間を有しているため、プリフォームの形状は温調ポットで維持されて大きく変化することはない。
【0052】
温度調整工程の後、移送板15が所定角度回転し、ネック型16に保持された温度調整後のプリフォーム10がブロー成形部13に搬送される。
【0053】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部13において、容器のブロー成形が行われる。
まず、ブロー成形部13のブロー成形金型にプリフォーム10が収容されると、ブロー成形金型が型閉じされ、容器の形状に対応する型空間が形成される。続いて、ブローエアの導入部材(ブローコア)および延伸ロッドがプリフォーム10内に挿入され、延伸ロッドの降下によってプリフォーム10が軸方向に延伸される。その後、ブローエアの導入部材の開口から、ブローエアがプリフォーム10内に導入される。これにより、プリフォーム10は、ブロー成形金型に密着するように膨出して容器にブロー成形される。
【0054】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブロー成形金型が型開きされる。続いて、移送板15が所定角度回転し、容器が取出部14に搬送される。取出部14において、容器の首部がネック型16から開放され、容器がブロー成形装置1の外部へ取り出される。
【0055】
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。その後、移送板15を所定角度回転させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。
【0056】
以下、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態のブロー成形装置1によれば、支柱4の高さ調整部5によって機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を調整できる。ブロー成形に用いるプリフォーム10の軸方向長さに応じて機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を調整することで、ブロー成形の各工程でプリフォームを搬送するときにおける移送板の上下方向のストロークがプリフォームを進退させるのに適切な寸法となる。
【0057】
ブロー成形の各工程間の搬送時間には、移送板15を上下方向に往復移動させる時間が含まれ、当該時間が長いほどブロー成形における容器の成形サイクルは長くなる。上記のようにプリフォーム10の軸方向長さに応じて機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を個別に調整すると、移送板15を上下方向に往復移動させるときに移送板15を余分に移動させずにすみ、機械の動作時間および容器の成形サイクルが最適化される。
換言すれば、本実施形態によれば、同じプリフォーム10を用いるが上記の高さ調整を行わない場合に比べると、移送板15を上下方向に往復移動させる時間が短縮されるので、容器の成形サイクルを高速化できる。
【0058】
また、本実施形態では、ブロー成形のときに機台2に対する上部基盤3の位置が固定され、プリフォーム10を保持する移送板15が上下方向に昇降する。このように、本実施形態では、射出コア型23や延伸ロッドなどの各種部品やこれらの駆動機構を支持している大重量の上部基盤3をブロー成形のときに昇降させずにすむ。つまり、本実施形態の構成によれば、ブロー成形のときに上部基盤3を昇降させる構成と比べて運転時の負荷が少なくなるので、ブロー成形装置1の消費電力を大幅に抑制できる。しかも、ブロー成形装置1の動作を安定させることが容易であり、容器の成形サイクルの高速化にも容易に対応できる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0060】
例えば、高さ調整部5の駆動部として、エアシリンダ、トグル式の昇降機構や電動モータによるボールねじ機構などを用いてもよい。
例えば、高さ調整部5の駆動部はすべての高さ調整部に設ける必要はない。例えば、上部基盤3を安定して上下方向に動かすことができる範囲で、一部の支柱4では駆動部を有しない高さ調整部を配置するようにしてもよい。
また、ブロー成形装置1における高さ調整部5の位置は上記実施形態の構成に限定されない。例えば、上部基盤3の下面に高さ調整部5を設けるようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態においては、機台に立設された複数の支柱で上部基盤が支持され、機台に対して移送板が昇降するブロー成形装置の構成例を説明した。しかし、本発明は、移送板を保持する上部基盤が昇降装置により機台に対して昇降するブロー成形装置において、機台に対する上部基盤の上下方向のストロークをスペーサーで調整する構成としてもよい。
【0062】
上記実施形態の高さ調整部5の構成は、ホットパリソン式のブロー成形装置への適用に限定されるものではない。例えば、プリフォーム10を高速で製造するために使用される射出成形装置に上記実施形態の高さ調整部5を適用してもよい。
【0063】
図9は、射出成形装置60の構成を模式的に示す図である。
図9の射出成形装置60は、プリフォーム10を高速で製造するために使用される装置であって、上記実施形態のブロー成形装置1からブロー成形部13を除いたものに相当する。そのため、
図9の説明において、上記実施形態と同様の構成については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0064】
射出成形装置60は、機台2と、機台2の上方に配置された上部基盤3とを備える。機台2と上部基盤3の間の上下方向(
図9の紙面垂直方向)の間隔は、高さ調整部5によって調整可能である。また、射出成形装置60は、機台2と上部基盤3の間の空間に、射出成形部11と、後冷却部61と、取り出し部14と、移送板15とを備える。後冷却部61は、取出部14でプリフォーム10を硬化状態で排出可能な程度に短時間で冷却可能な構成であり、広義的には温度調整部12の一種である。
【0065】
射出成形部11、後冷却部61および取出部14は、移送板15の周方向において所定角度(例えば120度)ずつ回転した位置に配置されている。移送板15の構成は、ステップごとの回転角度が異なる点を除き上記実施形態と同様である。
射出成形装置60では、移送板15の回転により、ネック型16で保持されたプリフォーム10が、射出成形部11、後冷却部61、取出部14の順に搬送される。
【0066】
射出成形装置60においては、射出成形部11の下流側に後冷却部61を設けることで、後冷却部61においてプリフォーム10の追加冷却を行うことができる。後冷却部61でプリフォーム10の追加冷却を行うことで、射出成形部11では上記実施形態と同様にプリフォーム10を高温の状態でも離形でき、射出成形部11におけるプリフォーム10の冷却時間を大幅に短縮できる。これにより、次のプリフォーム10の成形を早く開始できるので、射出成形装置60でのプリフォーム10の成形サイクル時間を短縮できる。
また、射出成形装置60によれば、機台2と上部基盤3の上下方向の間隔を高さ調整部5で調整することで、移送板15の上下方向のストロークをプリフォームの進退に適切な寸法とすることができる。これにより、移送板15を上下方向に往復移動させる時間が短縮されるので、プリフォーム10の成形サイクルを高速化できる。
【0067】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1…ブロー成形装置、2…機台、3…上部基盤、4…支柱、5…高さ調整部、10…プリフォーム、11…射出成形部、12…温度調整部、13…ブロー成形部、15…移送板、30…昇降機構、41…上部支柱、42…下部支柱、51…油圧シリンダ、52…ガイド部、53…ロック部、54…スペーサー部材、60…射出成形装置