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特許7210711ネットワーク化されたマイクログリッドのためのセキュアな分散型状態推定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ネットワーク化されたマイクログリッドのためのセキュアな分散型状態推定
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021517002
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019053172
(87)【国際公開番号】W WO2020069141
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】16/142,103
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シントゥグル,メフメト・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】イーシェンコ,ドミトリー
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/048351(WO,A1)
【文献】特開2018-032382(JP,A)
【文献】特開2012-068947(JP,A)
【文献】特開平09-073573(JP,A)
【文献】特開2017-204722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00 - 5/00
H02H 3/05
G05B 19/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマイクログリッドおよび複数のマイクログリッドを含むネットワーク化されたマイクログリッドシステムから偽データを除去するための方法であって、
第1の複数のローカル測定値を用いて第1のマイクログリッド制御システムで第1のローカル状態推定値を計算するステップと、
前記第1のマイクログリッド制御システムで、前記複数のマイクログリッドから複数のローカル状態推定値を受信するステップと、
前記第1のローカル状態推定値および前記複数のローカル状態推定値を用いて、前記第1のマイクログリッド制御システムおよび前記複数のマイクログリッドで複数のグローバル状態推定値を計算するステップと、
前記複数のグローバル状態推定値が収束しなかったと前記第1のマイクログリッド制御システムで判断するステップと、
前記第1のマイクログリッド制御システムおよび前記複数のマイクログリッドを用いて、前記第1のマイクログリッド制御システムで計算された前記複数のグローバル状態推定値のうちの第1のグローバル状態推定値における偽データを検出するステップと、
前記複数のグローバル状態推定値から前記第1のグローバル状態推定値を除去するステップと、
前記複数のグローバル状態推定値のうち残りのグローバル状態推定値が収束するまで、前記第1のマイクログリッド制御システムおよび前記複数のマイクログリッドで、前記複数のグローバル状態推定値のうち前記残りのグローバル状態推定値を反復的に更新するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記複数のマイクログリッドの第1の部分に関連する直接通信の際に、前記第1のマイクログリッド制御システムで、前記第1の部分から情報を受信し、その後、前記第1のマイクログリッド制御システムとの間接通信の際に、前記第1の部分から前記複数のマイクログリッドの第2の部分に関連する情報を受信することによって、通信ネットワークトポロジを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のグローバル状態推定値は、各グローバル状態推定値が閾値未満の標準偏差を有するときに収束する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のグローバル状態推定値を計算するステップは、複数回の反復を用いて行われ、前記複数のグローバル状態推定値が収束しなかったと判断するステップは、前記複数回の反復の後に行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のグローバル状態推定値における偽データを検出するステップは、前記複数のマイクログリッドのうち1つのマイクログリッドから前記第1のマイクログリッド制御システムによって受信されるグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第1の信頼因数と、前記第1のマイクログリッド制御システムによって計算される前記グローバル状態推定値に適用される重みに対応する第2の信頼因数とを含む複数の信頼因数を含む動的信頼行列を更新するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のグローバル状態推定値における偽データを検出するステップは、以下の式セットを用いて前記複数のグローバル状態推定値を更新するステップを含み、
【数1】
ここで、kはエージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【数2】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkのグローバル状態推定値を示し、ωk,iは、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、∇ω(ωk,i-1)は、反復i-1での中間状態ωのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する確率勾配であり、νは忘却因数であり、
【数3】
は瞬間誤差メトリックである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のグローバル状態推定値の各グローバル状態推定値は、前記第1のマイクログリッドのバスの電圧大きさに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マイクログリッドシステムにおける偽データを検出および軽減するための方法であって、
第1のマイクログリッドの第1のマイクログリッド制御システム、第2のマイクログリッドの第2のマイクログリッド制御システム、および第3のマイクログリッドの第3のマイクログリッド制御システムを動作させるステップと、
第1の複数の測定値を用いて前記第1のマイクログリッド制御システムで第1のローカル状態推定値を計算し、第2の複数の測定値を用いて前記第2のマイクログリッド制御システムで第2のローカル状態推定値を計算し、第3の複数の測定値を用いて前記第3のマイクログリッド制御システムで第3のローカル状態推定値を計算するステップと、
前記第2のマイクログリッド制御システムおよび前記第3のマイクログリッド制御システムで前記第1のローカル状態推定値を受信し、前記第1のマイクログリッド制御システムおよび前記第3のマイクログリッド制御システムで前記第2のローカル状態推定値を受信し、前記第1のマイクログリッド制御システムおよび前記第2のマイクログリッド制御システムで前記第3のローカル状態推定値を受信するステップと、
前記第1のマイクログリッド制御システムで前記第1のマイクログリッドの電気的特性の第1のグローバル状態推定値を計算し、前記第2のマイクログリッド制御システムで電気的特性の第2のグローバル状態推定値を計算し、前記第3のマイクログリッド制御システムで電気的特性の第3のグローバル状態推定値を計算するステップと、
前記第1のマイクログリッド制御システムで、前記第1のグローバル状態推定値、前記第2のグローバル状態推定値、および前記第3のグローバル状態推定値が収束しないと判断するステップと、
動的信頼行列を用いて、前記第1のマイクログリッド制御システムで前記第1のグローバル状態推定値を反復的に更新し、前記第2のマイクログリッド制御システムで前記第2のグローバル状態推定値を反復的に更新し、前記第3のマイクログリッド制御システムで前記第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップと、
前記第1のグローバル状態推定値、前記第2のグローバル状態推定値、および前記第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップを用いて、前記第1のグローバル状態推定値内の偽データを検出するステップと、
前記第2のグローバル状態推定値および前記第3のグローバル状態推定値が収束するまで、前記第2のマイクログリッド制御システムでの前記第2のグローバル状態推定値の更新および前記第3のマイクログリッド制御システムでの前記第3のグローバル状態推定値の更新を続けるステップとを含む、方法。
【請求項9】
第1の反復中に、前記第1のマイクログリッド制御システムで、前記第2のマイクログリッドに関する情報を前記第2のマイクログリッド制御システムから受信し、前記第1の反復中に、前記第2のマイクログリッド制御システムで、前記第3のマイクログリッドに関する情報を前記第3のマイクログリッド制御システムから受信し、第2の反復中に、前記第1のマイクログリッド制御システムで、前記第3のマイクログリッドに関する情報を前記第2のマイクログリッド制御システムから受信することによって、通信ネットワークトポロジを決定するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のローカル状態推定値、前記第1のグローバル状態推定値、前記第2のグローバル状態推定値、および前記第3のグローバル状態推定値は、前記第1のマイクログリッドのバスの推定電圧である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のマイクログリッド制御システムは、第2の複数のローカル測定値または第3の複数のローカル測定値を受信しない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のグローバル状態推定値、前記第2のグローバル状態推定値、および前記第3のグローバル状態推定値を計算するステップは、拡散アルゴリズムを用いるステップを含み、前記第2のグローバル状態推定値および前記第3のグローバル状態推定値の更新を続けるステップは、前記拡散アルゴリズムを用いるステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記動的信頼行列は、第1のマイクログリッド制御システムによって前記第1のグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第1の信頼因数と、前記第1のマイクログリッド制御システムによって前記第2のグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第2の信頼因数とを含む複数の信頼因数を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記動的信頼行列を用いて前記第1のグローバル状態推定値、前記第2のグローバル状態推定値、および前記第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップは、前記第1のマイクログリッド制御システムによって前記第2のグローバル状態推定値内のノイズを検出することに応答して前記第2の信頼因数をゼロに低減するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のグローバル状態推定値、前記第2のグローバル状態推定値、および前記第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップは、以下の式セットを用いて前記動的信頼行列を更新するステップを含み、
【数4】
ここで、kはエージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【数5】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkのグローバル状態推定値を示し、ωk,iは、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、νは忘却因数であり、
【数6】
は瞬間誤差メトリックである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
非一時的コンピュータ可読媒体であって、
第1のマイクログリッドの第1のマイクログリッド制御システムの処理デバイスによって実行されるように構成された命令のセットを含み、前記命令のセットは、
第1の複数の測定値を用いて第1のローカル状態推定値を計算し、
前記第1のマイクログリッドに結合された複数のネットワーク化されたマイクログリッドから複数のローカル状態推定値を受信し、
前記第1のローカル状態推定値および前記複数のローカル状態推定値を用いて第1のグローバル状態推定値を計算し、
前記複数のネットワーク化されたマイクログリッドから複数のグローバル状態推定値を受信し、
前記第1のグローバル状態推定値および前記複数のグローバル状態推定値が収束しないと判断し、
前記第1のグローバル状態推定値および前記複数のグローバル状態推定値における検出されたノイズに応じて更新されるように構成された動的信頼行列を用いて、前記第1のグローバル状態推定値および前記複数のグローバル状態推定値を反復的に更新することによって、前記複数のグローバル状態推定値のうち少なくとも1つのグローバル状態推定値が偽データを含むと判断し、
前記複数のグローバル状態推定値のうち偽データを含むと判断されなかったグローバル状態推定値で前記第1のグローバル状態推定値が収束するまで前記第1のグローバル状態推定値を反復的に更新する、
のに有効である、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記第1のマイクログリッドは、複数のフィールドデバイスを含み、前記複数のフィールドデバイスは、前記第1のマイクログリッドの複数のバス電圧を測定するように構成された複数の電圧センサを含む、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項18】
処理デバイスによって実行されるように構成された前記命令のセットは、前記複数のネットワーク化されたマイクログリッドの第1の部分に関連する直接通信の際に前記第1の部分から情報を受信し、その後、前記第1のマイクログリッド制御システムとの間接通信の際に、前記第1の部分から、前記複数のネットワーク化されたマイクログリッドの第2の部分に関連する情報を受信することによって、通信ネットワークトポロジを決定するのに有効である、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項19】
前記動的信頼行列は、複数のマイクログリッドのうちの1つのマイクログリッドから前記第1のマイクログリッド制御システムによって受信されるグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第1の信頼因数と、前記第1のグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第2の信頼因数とを含む複数の信頼因数を含む、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項20】
前記複数のグローバル状態推定値のうち少なくとも1つのグローバル状態推定値が偽データを含むと判断することは、拡散アルゴリズムを用いることと、以下の式セットを用いて前記動的信頼行列を更新することとを含み、
【数7】
ここで、kはエージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【数8】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関するグローバル状態推定値を示し、ωk,iは、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、νは忘却因数であり、
【数9】
は瞬間誤差メトリックである、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、概して、少なくとも1つの電源と1つの負荷とを含む電力ネットワークの相互接続された部分であるネットワーク化されたマイクログリッドに関するものであって、当該1つの負荷は、電力ネットワークの残りの部分から切断された場合に独立して動作することができる。ネットワーク化されたマイクログリッドシステムにおける状態推定は、オンライン監視およびネットワーク認識を可能にする。いくつかのシステムでは、状態推定は一元化された場所で実行される。すべてのデータを1つの中央コントローラに送信することで、状態推定が実行可能となる。電力ネットワーク内のマイクログリッドおよび通信デバイスの数が増加するのに応じて、リアルタイムでの集中型状態推定のための計算性能制約が指数関数的に増加する。分散型状態推定は、集中型状態推定の一代替例であって、1つの集中型制御システムではなく複数のローカル制御システムによって状態推定が実行される。
【背景技術】
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発
本発明は、契約番号DE-OE0000831に関して米国エネルギ省からの政府支援を受けて行われた。米国政府は本発明について一定の権利を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
開示の概要
本開示の例示的な実施形態は、ネットワーク化されたマイクログリッドのための固有のシステム、方法、技術および装置を含む。本開示のさらなる実施形態、形態、目的、特徴、利点、局面および利益が以下の記載および添付の図面から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】例示的なネットワーク化されたマイクログリッドシステムを示す。
図2】偽データ検出および軽減のための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図3図1のネットワーク化されたマイクログリッドシステムでのグローバル状態推定を示すグラフのセットである。
図4図1のネットワーク化されたマイクログリッドシステムでの偽データ軽減を示すグラフのセットである。
図5図1のネットワーク化されたマイクログリッドシステムについての例示的な初期化プロセスを示す表である。
図6A】例示的な分散型状態推定プロセスに関する収束を示すグラフである。
図6B】代替的な分散型状態推定プロセスに関する収束を示すグラフである。
図7】例示的な分散型状態推定プロセスおよび従来の集中型状態推定プロセスに関する計算性能を示す表である。
図8】例示的なマイクログリッド制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
具体的な実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、ネットワーク化されたマイクログリッドシステム100が示されている。システム100が、いくつか例を挙げると、ユーティリティグリッド配電システム、産業プラント配電システム、および車両配電システムを含むさまざまな用途で実現され得ることを認識されたい。システム100のトポロジは、説明のために例示されるものであって本開示を限定するものとして意図されるものではないことを認識されたい。たとえば、システム100が含み得るマイクログリッドは、より多くてもよくまたはより少なくてもよく、システム100のマイクログリッドは、各マイクログリッドが少なくとも1つの他のマイクログリッドに結合されている限り、如何なる構成で配置されてもよい。さらに、各マイクログリッドのトポロジは、説明のために例示されるものであって本開示を限定するものとして意図されていないことを認識されたい。たとえば、マイクログリッド110が含み得るバス、電源、エネルギ貯蔵デバイス、負荷およびフィールドデバイスはそれぞれ、より多くてもよくまたはより少なくてもよい。システム100は単線図で示されているが、当該システム100は、単相交流(alternating current:AC)電力または多相AC電力、または直流(direct current:DC)電力を伝送するように構成されてもよい。
【0006】
システム100は、マイクログリッド110、120、130、140および150を含む。各マイクログリッドは、少なくとも1つの負荷と、複数のバスのうちの1つに結合される少なくとも1つの電源とを含む。各マイクログリッドは、マイクログリッドの電気的特性または物理的特性を測定するように構成された複数のフィールドデバイスを含む。たとえば、マイクログリッド150は、バス153を含む複数のバスと、負荷155を含む複数の負荷と、AC電源157と、複数のフィールドデバイス152とを含む。
【0007】
AC電源157は、ソーラーパネルアレイ、風力タービン、天然ガス発生器、または、電力を発生するように構成された他の任意のデバイスもしくはシステムを含み得る。負荷155は、電力を消費するように構成された任意の種類のデバイスまたはシステムであり得る。複数のフィールドデバイス152は、いくつか例を挙げると、電圧センサ、インテリジェント電子デバイス(intelligent electronic device:IED)、遠隔端末ユニット(remote terminal unit:RTU)、リレー、再閉器、電流センサ、変圧器、および変流器を含み得る。
【0008】
各マイクログリッドはまた、複数の通信チャネルを介して複数のフィールドデバイスに結合されたマイクログリッド制御システムを含む。たとえば、マイクログリッド150は、複数の通信チャネルを介して複数のフィールドデバイス152に結合されるマイクログリッド制御システム151を含む。各マイクログリッド制御システムは、マイクログリッドの電気的特性および物理的特性を監視し、マイクログリッド内の制御可能なデバイスを動作させ、マイクログリッドに結合されたデバイスを故障および他の状況から保護するように構成される。
【0009】
マイクログリッド制御システム111、121、131、141および151は、1つ以上の近隣のマイクログリッド制御システムと結合された通信チャネルを含む通信ネットワーク160を介して通信するように構成される。図示した実施形態では、マイクログリッド制御システム111はマイクログリッド制御システム121および131と通信し、マイクログリッド制御システム121はマイクログリッド制御システム111のみと通信し、マイクログリッド制御システム131はマイクログリッド制御システム111、141および151と通信し、マイクログリッド制御システム141はマイクログリッド制御システム131のみと通信し、マイクログリッド制御システム151はマイクログリッド制御システム131のみと通信する。
【0010】
フィールドデバイスとマイクログリッド制御システムとの間、ならびにマイクログリッド間の通信チャネルは有線でもあってもよく、または無線であってもよい。各通信チャネルは、いくつか例を挙げると、IEC61850、OPC UA、Pub-Sub、XMPPまたはDDSなどの標準化された通信プロトコルを用いてもよい。いくつかの実施形態では、標準化された通信プロトコルが分散型状態推定のためにマイクログリッドの挙動を定義するのに不十分である場合、やり取りされるメッセージのセマンティクスが共通の知識表現を用いて定義され得る。
【0011】
たとえば、インテリジェント物理エージェント財団(the Foundation for Intelligent Physical Agents:FIPA)の規格は、やり取りされたメッセージのセマンティクスを記述するためのエージェント通信言語(Agent Communication Language:ACL)を組込んでいる。ACLメッセージの内容は、当該メッセージを通じて渡されるパラメータおよびアクションのオブジェクトを含む。送信者パラメータおよび受信者パラメータは、送信者および意図された受信者エージェントの名前を指定する。ACLメッセージは、いくつか例を挙げると、通知、要求、拒否、加入および伝搬などの通信動作を表わす。IEC61850通信プロトコルは、ACL通信動作に基づく抽象通信サービスインターフェイス(Abstract Communication Service Interface:ACSI)として非標準IEC61850論理ノードを用いて拡張され得るとともに、GOOSEメッセージにマッピングすることができる。
【0012】
既存の分散型状態推定システムには多くの欠点および不利点がある。サイバーセキュリティの増強の要求や、プライバシー問題の増加に伴う要求が依然として満たされていないままである。たとえば、マイクログリッドは、分散型状態推定を実行するために、他のマイクログリッドのセキュリティだけでなく通信システムのセキュリティにも依拠しなければならない。カスケード式電力ネットワークの障害を引起こすには、1つのマイクログリッドのセキュリティの違反だけで十分であるだろう。さらに、独立して動作するマイクログリッドは、プライバシー問題のために、未処理の測定値などの他のマイクログリッドと共有されるデータの種類を制限する可能性がある。当技術分野におけるこれらおよび他の欠点に鑑みると、本明細書に開示される固有の装置、方法、システムおよび技術が大いに必要とされている。以下でより詳細に説明するように、システム100のマイクログリッド制御システムは各々、他のマイクログリッド制御システムから受信した状態推定値およびエージェントマイクログリッド制御システムに関連付けられたマイクログリッドのローカル測定値のみを用いてグローバル状態推定を実行するように構成されている。
【0013】
図2を参照すると、完全分散型状態推定を用いて、ネットワーク化されたマイクログリッドシステムにおいて偽データを検出および軽減するためのプロセス200が示されている。図1に示されるネットワーク化されたマイクログリッドシステム100を参照して、以下においてプロセス200を説明する。具体的には、プロセス200は、1つのマイクログリッド制御システムを参照して説明されるが、ネットワーク化されたマイクログリッドシステム100の各マイクログリッド制御システムが同時にプロセス200を実行することが理解されるはずである。プロセス200は、他の形態のネットワーク化されたマイクログリッドシステムと組合わせて用いられてもよい。たとえば、プロセス200についての1つ以上の局面の省略、さらなる条件および動作の追加、ならびに/または、動作および条件の別個のプロセスへの再編成または分離を含む、プロセス200に対するいくつかの変形およ変更が企図されることがさらに認識されるだろう。
【0014】
プロセス200は開始動作201を含み、動作203へと進む。動作203で、マイクログリッド制御システムは、他のマイクログリッド制御システムを発見するとともにマイクログリッド間の位相角に関連する情報を受信することによって、マイクログリッド通信ネットワークのトポロジを決定する。マイクログリッド制御システムは、状態推定のための電力ネットワークモデルを必要としない。代わりに、ネットワーク化されたマイクログリッドシステムは、システム100内のマイクログリッド制御システムの数およびマイクログリッド間の位相角差を識別するために完全分散型の反復プロセスを用いる。特定の実施形態では、システム100の各マイクログリッドは、フェーザ測定ユニットを含んでおり、マイクログリッド間の位相角差を決定する必要はない。
【0015】
マイクログリッド制御システムがマイクログリッド通信ネットワークトポロジを決定すると、プロセス200は動作205に進む。動作205で、マイクログリッド制御システムは、マイクログリッド制御システムと同じマイクログリッドの複数のフィールドデバイスから受信したデータを用いてローカル状態推定を実行する。ローカル状態推定は、推定すべきマイクログリッドの電気的特性または物理的特性に関する入力データを用いてマイクログリッドの電気的特定または物理的特性が推定されるプロセスである。複数のフィールドデバイスからの入力データは、いくつか例を挙げると、電圧、電流、有効電力流、無効電力流の測定値、または他の種類の情報、たとえば回路遮断器状態などを含み得る。各々の測定値または推定値は、大きさ、位相角、またはこれら両方を含み得る。
【0016】
特定の実施形態では、ローカル状態推定は加重最小二乗法を用いて実行される。各マイクログリッドが知っているのは、それ自体のローカル測定ベクトルz、ローカル共分散行列R、およびローカルヤコビ行列Hだけである。ローカル測定ベクトルzは、バス電圧、電流注入および電流の流れなどの、マイクログリッドにおけるフィールドデバイスからのデータを含む。行列Hは、h(x)のヤコビ行列であって、各マイクログリッドについての非線形測定関数
【0017】
【数1】
【0018】
である。行列Rは、各測定値の標準偏差を含む測定共分散行列
【0019】
【数2】
【0020】
である。反復プロセスにおいて以下の式のセットを用いて、各マイクログリッドがローカル状態推定を実行する。ここで、G(x)は利得行列であり、Wは共分散行列Rの逆数であり、xはローカル状態推定ベクトルであり、iは反復数である。
【0021】
【数3】
【0022】
プロセス200が動作207に進む。動作207で、マイクログリッド制御システムは、発見されたマイクログリッドトポロジを用いるグローバル状態推定値、それ自体の計算されたローカル状態推定値、およびネットワーク化されたマイクログリッドの他のマイクログリッド制御システムによって計算されるローカル状態推定値を初期化する。グローバル状態推定は、ネットワーク化されたマイクログリッドシステムの全マイクログリッドの電気的特定または物理的特性が、推定されるべきネットワーク化されたマイクログリッドシステムの電気的特定または物理的特性に関連する入力データを用いて推定されるプロセスである。たとえば、グローバル状態推定は、ネストされたマイクログリッドシステム内のすべてのバスのバス電圧を推定することと、ネストされたマイクログリッドシステム内のすべてのマイクログリッドを流れる電流を推定することとを含み得る。プロセス200は、各マイクログリッド制御システムが知っているのがそれ自体の測定値だけであるので、ローカル情報ポリシーおよびプライバシーを考慮しながらネットワーク化されたマイクログリッドシステムのグローバル状態推定を達成するために分散型の2層レベルアルゴリズムを実現する。グローバル状態推定中にマイクログリッド間でやり取りされるデータは、以下に説明されるように、反復的に計算される初期グローバル状態推定値およびグローバル状態推定値を決定するためのローカル状態推定値のみを含む。各マイクログリッド制御システムは、グローバル状態推定を実行するために、別のマイクログリッドまたはネットワークモデルからの未処理のフィールドデバイスデータを必要としない。
【0023】
マイクログリッド制御システムは、ネットワーク化されたマイクログリッドシステムにおける他のマイクログリッド制御システムの各々からベクトルの形でローカル状態推定値を受信する。各ローカル状態推定ベクトルを用いて、マイクログリッド制御システムは、ローカル状態推定ベクトルを1つのベクトルに組合わせることによってグローバル推定ベクトルを生成する。
【0024】
動作207中にグローバル状態推定ベクトルを生成することに加えて、マイクログリッド制御システムは、マイクログリッド間の関係の各々に重み付けされた値を割当てるために信頼行列を生成する。ネットワーク化されたマイクログリッドシステムは、複数のマイクログリッド制御システムとして動的な無向グラフで表現され得る。信頼行列または近隣行列である
【0025】
【数4】
【0026】
は、エージェントマイクログリッド制御システムkがネットワーク化されたマイクログリッドシステムにおける近隣マイクログリッド制御システムlから受信した通信に伝達する非負重みを表わす。
【0027】
係数aklは、各マイクログリッド制御システムが互いに対して課す信頼因数である。係数は対称的である必要はない(すなわち、akl≠alk)が、各係数は0以上でなければならず、1つのマイクログリッド制御システムによって近隣に割当てられる信頼因数の合計は1に等しくなければならず、近隣ではないマイクログリッド制御システムに割当てられる信頼因数は0でなければならない。
【0028】
【数5】
【0029】
信頼因数は、エージェントマイクログリッド制御システムとその近隣との間の信頼因数がエージェントマイクログリッド制御システムまたは近隣マイクログリッド制御システムのいずれかに対する接続されるマイクログリッド制御システムの最大数の逆数に等しくなるように、かつ、マイクログリッド制御システムとマイクログリッド制御システム自体との間の信頼因数がマイクログリッド制御システムとその近隣との間の信頼因数の和を引いたものに等しくなるように、割当てられてもよい。式セット(3)は、上述した割当てを示している。ここで、nは、マイクログリッド制御システムk自体を含むエージェントマイクログリッド制御システムkのうち接続されたマイクログリッド制御システムの数であり、nは、マイクログリッド制御システムl自体を含む近隣マイクログリッド制御システムlのうち接続されたマイクログリッド制御システムの数であり、Nは近隣lの近傍である。
【0030】
【数6】
【0031】
言い換えれば、kからlまでの信頼因数は、いずれかのマイクログリッド制御システムが有する近隣の最大数に依存しており、自己重みは、A内の各行(および列)の合計を1にする。信頼行列は、システムトポロジの変化に応じて再計算されてもよいが、それ以外の場合には静的なままである。
【0032】
プロセス200が動作208に進む。動作208で、動作207中に生成された信頼行列およびグローバル推定ベクトルを用いて、反復グローバル状態推定手順が実行される。グローバル状態推定ベクトルおよび信頼行列を用いることで、ネットワーク化されたマイクログリッドシステムのマイクログリッド制御システムは、拡散戦略およびピアツーピア反復通信を用いてグローバル状態推定を実行する。拡散アルゴリズムは、同じパラメータベクトルであるω、N×1のサイズを推定するN個のマイクログリッド制御システムの集合を考慮に入れる。拡散アルゴリズムは、Combine-then-Adapt(CTA)およびAdapt-then-Combine(ATC)という2種類の戦略を用いる。ATCは以下のように要約することができる。すなわち、すべての反復瞬間iにおいて、ATC戦略は2つのステップを実行する。第1のステップは、マイクログリッド制御システムkがその近隣からそれらのモーメント{Ru,l,rdu,l}を受信する情報交換ステップである。マイクログリッド制御システムkは、この情報を組合わせ、これを用いて、その既存の推定値ωk,i-1を中間値
【0033】
【数7】
【0034】
に更新する。ネットワーク化されたマイクログリッドシステムにおける他のすべてのマイクログリッド制御システムは、同様のステップを実行するとともに、それらの近隣からの情報を用いることによってそれらの推定値{ωk,i-1}を中間推定値
【0035】
【数8】
【0036】
に更新している。第2のステップは、マイクログリッド制御システムkがその近隣の中間推定値同士を組合せてその更新推定値ωk,iを得る集約ステップである。
【0037】
グローバル状態推定は、エージェントマイクログリッド制御システムkによって計算されるグローバル状態推定値が、式セット(4)を用いて反復ごとに更新される反復プロセスにおいて実行される。この場合、
【0038】
【数9】
【0039】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkの状態を示しており、ωk,iは、反復iでのエージェントkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、∇ω(ωk,i-1)は、反復iでの中間状態ωのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する確率勾配である。
【0040】
【数10】
【0041】
特定の実施形態では、μは0.2であり、νは.01である。他の実施形態では、μは0~1の範囲内であり、νは0~0.1の範囲内である。確率勾配は、ある反復から他の反復までのωの差である。各マイクログリッド制御システムは、その勾配を追跡し、それに応じてそのすべての近隣の組合わせを更新する。
【0042】
各々の反復中、マイクログリッド制御システムは、それ自体の更新済みグローバル状態推定値を他のマイクログリッド制御システムに送信するとともに、他のマイクログリッド制御システムの各々から更新済みグローバル状態推定値を受信する。マイクログリッド制御システムは、それ自体の更新済みグローバル状態推定値を他のマイクログリッド制御システムによって計算される更新済みグローバル状態推定値と比較して、すべてのグローバル状態推定値が収束したかどうか、すなわち、グローバル状態ベクトルの標準偏差が閾値を下回っているかどうかを判断する。たとえば、閾値は、いくつか例を挙げると、σ<0.001またはσ<0.1であり得る。動作208は、すべてのグローバル状態推定値が収束してしまうまで、またはすべてのグローバル状態推定値が収束していないが規定された計算期間が終了するまで、続けられる。規定された計算期間は、いくつか例を挙げると、一定回数の反復または一定量の反復であり得る。
【0043】
プロセス200が条件209に進む。条件209で、マイクログリッド制御システムは、ネットワーク化されたマイクログリッドシステムの全マイクログリッド制御システムによって計算された全グローバル状態推定値が収束したかどうかを判断する。
【0044】
プロセス200は、全グローバル状態推定値が収束した場合、条件209から動作215に進む。動作215で、他のアプリケーションによる使用のためにグローバル状態推定値が利用可能にされる。たとえば、グローバル状態推定値は、いくつか例を挙げると、市場シミュレーション、安定性分析、および需要応答のために用いられてもよい。
【0045】
グローバル状態推定値が収束していない場合、プロセス200は条件209から動作211に進む。動作211で、マイクログリッド制御システムは、通常の推定モードから偽データ軽減モードに移行する。通常の条件下では、グローバル状態推定は、最良の収束精度結果を達成するための最適なポリシーとして静的信頼行列を適用する。グローバル状態推定値が収束していないとき、マイクログリッド制御システムは、動的信頼行列を含む修正済みグローバル状態推定式セットを用いて、損なわれたマイクログリッド制御システムを検出する。動的信頼行列を用いることで、マイクログリッド制御システムは、複数の近隣の信頼因数を低減させるとともに、信頼因数が閾値未満に低減した場合にリンクを完全に切断し得る。近隣のグローバル状態推定値が、当該近隣のグローバル状態推定値のノイズのせいで他のグローバル状態推定値とクラスタ化できない場合、近隣の信頼因数が低下する。
【0046】
偽データ軽減モードでは、損なわれたマイクログリッド制御システムを示すノイズが、受信したグローバル状態推定値において検出されるかどうかに応じて、信頼因数に対して低減された重みが割当てられる。損なわれたマイクログリッド制御システムを検出するために、式セット(3)および(4)の代わりに以下の式セット(5)が反復的に計算される。ここで、kはエージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【0047】
【数11】
【0048】
は反復iでのエージェントkの状態を示し、ωk,iは反復iでのエージェントkに関する中間変数であり、μはエージェントkの非負更新パラメータであり、∇ω(ωk,i-1)は、反復i-1での中間状態ωのエージェントkに関する確率勾配であり、νは忘却因数であり
【0049】
【数12】
【0050】
は瞬間誤差メトリックである。
【0051】
【数13】
【0052】
特定の実施形態では、μは0.2であり、νは.01である。他の実施形態では、μは0~1の範囲内であり、νは0~0.1の範囲内である。確率勾配は、ある反復から他の反復までのωの差である。各マイクログリッド制御システムは、その勾配を追跡し、それに応じてそのすべての近隣の組合わせを更新する。
【0053】
プロセス200は、動作211から動作213に進む。ここで、プロセス200の残りの部分に関して、各マイクログリッド制御システムによるさらなる考慮要素から偽データのソースが除去される。たとえば、各マイクログリッド制御システムは、偽データに関連付けられたグローバル状態推定値を除去することによって、そのグローバル状態推定ベクトルを更新してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のマイクログリッド制御システムは、将来のグローバル状態推定値から偽データソースを除去するために、再び動作203、205および207を実行する。いくつかの実施形態では、マイクログリッド制御システムは、アラームをシステムオペレータに送信してもよく、または、状態推定のためにデータがデータソースから収集されるのを阻止してもよい。
【0054】
プロセス200が動作213から動作208に進む。ここで、マイクログリッド制御システムは、動作211において除去されたグローバル状態推定値なしで、式セット(4)を用いるグローバル状態推定および式セット(3)を用いて計算される静的信頼行列の反復手順を続ける。動作208は、残りのグローバル状態推定値が収束するまで続く。次いで、プロセス200は条件209、動作215に進み、最後に動作217で終了する。
【0055】
図3を参照すると、プロセス200に従ってシステム100によって実行される、グローバル状態推定値の収束を例示する複数のグラフ300が示されている。システム100の各マイクログリッド制御システムは、それ自体のマイクログリッドのフィールドデバイスからのローカル測定値を用いて、ローカル状態推定値を計算する。ベクトルセット(6)は、すべてのマイクログリッドに関するローカル状態推定ベクトルを含み、各ベクトルは、マイクログリッド内の各バスに関する初期電圧および位相角
【0056】
【数14】
【0057】
の推定値を含む。0回目の反復で、各マイクログリッドは、初期推定ベクトルxMGn(0)を設定する。
【0058】
【数15】
【0059】
各マイクログリッド制御システムが他のマイクログリッド制御システムの各々からローカル状態推定ベクトルを受信すると、各マイクログリッド制御システムはベクトルセット(6)を用いてグローバル推定ベクトルxMGglobalを生成する。
【0060】
【数16】
【0061】
式セット(3)を用いて、各マイクログリッド制御システムは信頼行列を計算する。以下の行列は、式セット(3)を用いて信頼行列に変換されているシステム100のトポロジ行列を示す。
【0062】
【数17】
【0063】
各マイクログリッド制御システムは、信頼行列(8)および式セット(4)を用いて、図2の動作に関して上述したようにグローバル状態推定値を反復的に計算する。グラフ310は、各反復ごとにマイクログリッド110~150によって計算されるバス153の電圧大きさに関するそれぞれのグローバル状態推定値311~315を含む。グラフ320は、各反復ごとにマイクログリッド110~150によって計算されるバス153の電圧位相角に関するそれぞれのグローバル状態推定値321~325を含む。40回目の反復において、1×10-5未満の標準偏差を有する、各マイクログリッド制御システムのグローバル状態推定値が収束する。
【0064】
図4を参照すると、図2のプロセス200に従ってシステム100によって実行されるグローバル状態推定中の偽データ検出および軽減を例示する複数のグラフ400が示されている。グラフ410は、各反復ごとにマイクログリッド110~150によって実行されるバス153の電圧大きさに関するそれぞれのグローバル状態推定411~415の値を含む。グラフ420は、各反復ごとにマイクログリッド110~150によって実行されるバス153の電圧大きさに関するそれぞれのグローバル状態推定411~415の値を含む。マイクログリッド制御システム141によって計算されて推定値414および424として示されるグローバル状態推定値は、グローバル状態推定値に10%バイアス因数を導入する攻撃者によって損なわれたものであって、これにより、近隣エージェントに不正確な推定値が送られることとなった。
【0065】
いくつかの実施形態では、偽データは、1つのマイクログリッドからのグローバル状態推定値の一部または全てを損なうように、グローバル状態推定ベクトル内の1つ以上のグローバル状態推定値に適用され得る。いくつかの実施形態では、偽データは、2つ以上のマイクログリッド制御システムからグローバル状態推定値に適用され得る。
【0066】
0回目の反復で、マイクログリッド制御システムの動作は通常推定モードである。10回目の反復から始まって、10%バイアス因数がマイクログリッド制御システム141のグローバル推定値414、424に追加される。サイバー攻撃が開始されると、マイクログリッド制御システムのグローバル状態推定値が互いから逸脱し始める。マイクログリッド制御システムは、30回目の反復まで、通常の推定モードで動作し続ける。
【0067】
30回目の反復で、マイクログリッド制御システムは、グローバル状態推定値が収束していないと判断し、それに応じて偽データ軽減モードに進む。30回目の反復の後、偽データなしの推定値は、最初にそれらの信頼重みに基づいてクラスタを形成する傾向がある。グラフ410に関して、マイクログリッド制御システム141の推定値414は、マイクログリッド制御システム111および121の推定値411および412ならびにマイクログリッド制御システム131および151の推定値413および415によって形成される2つのクラスタから大きく逸脱している。反復が進むにつれて、推定値411、412、413および415は互いに向かって収束するが、損なわれた推定値414は逸れている。
【0068】
反復を繰り返した後の信頼行列の適応が行列(9)~(12)によって示される。行列(9)は、反復31での動的信頼行列であり、行列(10)は、反復32での動的信頼行列であり、行列(11)は、反復40での動的信頼行列であり、行列(12)は、反復50での動的信頼行列である。30回目の反復から反復が進むにつれて、マイクログリッド制御システム141から受信したグローバル状態推定値に対するマイクログリッド制御システム131の信頼因数である行列A(4,3)が減少する。いくつかの実施形態では、信頼因数が所定の閾値よりも減少すると分離が発生するだろう。たとえば、予め定義された閾値は、いくつか例を挙げると、akl<0.00001、akl<.005、または、akl<.05となり得る。
【0069】
【数18】
【0070】
図5を参照すると、図1のシステム100のための例示的なマイクログリッド制御システムおよび位相角発見プロセスを例示する表が示されている。マイクログリッド制御システム間の通信のたびに、1つのマイクログリッド制御システムから別のマイクログリッド制御システムに送られるすべてのメッセージが限られた時間内に破損なしで到着するが、必ずしも同じ順序で公開されるわけではない。さらに、各マイクログリッド制御システムは、その近隣と、受信したメッセージの発信元である近隣のアイデンティティとを認識している。
【0071】
一例では、マイクログリッド110の共通結合の格子点は、位相角計算のための基準バスとなるように決定される。マイクログリッド制御システムは、それ自体と近隣マイクログリッドとの間で位相角差を決定するための情報をやり取りすることで、各マイクログリッドが基準バスに対するそれ自体の位相角変位を計算できるようにする。
【0072】
反復(0)で、各マイクログリッド制御システムはそれ自体の固有のアイデンティティを認識している。0回目の反復後の反復ごとに、各マイクログリッド制御システムは、その近隣からデータを要求することによって情報を取得する。反復(1)で、近隣マイクログリッド制御システムが、エージェントとしても知られるエージェントマイクログリッド制御システムと情報をやり取りし、新しいマイクログリッド制御システムおよび位相角差が発見される。位相角は、直接通信されてもよく、または、やり取りされた電圧および電力流などの、近隣間でやり取りされた情報を用いて計算されてもよい。たとえば、以下の式セット(1)を用いて、2つの隣接するマイクログリッド間の位相角を決定してもよい。ここで、iは1つのマイクログリッドの相互接続バスであり、jは隣接するマイクログリッドの相互接続バスであり、θi-jはバスiとバスjとの間の位相角差であり、Pijはバスiとバスjとの間のライン上を流れる有効電力であり、Vはバスiにおける電圧であり、Vはバスjにおける電圧であり、Rijはバスiとバスjとの間のライン抵抗であり、Xijはバスiとバスjとの間のラインリアクタンスである。
【0073】
【数19】
【0074】
反復(2)で、エージェントマイクログリッド制御システムは、反復(1)中にその近隣によって事前に取得されていた情報、すなわち近隣の近隣からの情報、を取得する。当該プロセスは、マイクログリッド制御システムがいずれも新しいマイクログリッド制御システムを発見しなくなるまで続く。図5に示されるように、発見プロセスは、ネットワークの直径Ψである、4回目の反復の終了時に完了する。ネットワーク内のマイクログリッド制御システムの数は、N=Ψ+1として決定される。分散型マイクログリッド制御システム発見は、各推定プロセスの後に適用されて、次回の状態推定に何個のマイクログリッドが関与するかを決定する。マイクログリッド制御システム発見の終了時に、すべてのマイクログリッド制御システムは、θ1-2、θ1-3、θ3-4、θ3-5についての情報を認識するようになる。決定された位相角差を用いて、各マイクログリッド制御システムは、マイクログリッド110の基準バスに対するそれ自体の位相角差を計算する。たとえば、マイクログリッド制御システム151は、θ1-3-θ3-5としてθ1-5を計算する。マイクログリッド110以外のシステム100内の各マイクログリッドは、ローカル状態推定の位相角結果をシフトさせるために、この位相角差を用いるだろう。
【0075】
図6Aおよび図6Bを参照すると、例示的なマイクログリッド状態推定プロセスと、コンセンサスアルゴリズムを用いる代替的なマイクログリッド状態推定プロセスとの計算性能を例示するグラフが示されている。2つのプロセスは、2.70GHzでクロックするCore i7と8GB RAMとを含むコンピュータにおいて実装されている。各プロセスの計算性能は、30マイクログリッドの300バスネットワークにおいて分析される。図6Aのグラフ610は図2のプロセス200の通常動作モードの実行を示す。図6Bのグラフ620は、コンセンサスアルゴリズムを用いた別のマイクログリッド分散型状態推定プロセスの実行を示す。グラフ620の複数の推定値612は、100回反復しても、4.9×10-3の標準偏差を有する正確な推定値に収束しない。しかしながら、グラフ610の複数の推定値611は、1.0461×10-5の標準偏差を有する正確な推定値に収束する。
【0076】
さらに、図7の表に示されるように、例示的なグローバル状態推定プロセスのための収束時間は、同じグローバル状態推定値を計算するための従来の集中型プロセスと比べて著しく短い。2つのプロセスは、2.70GHzでクロックするCore i7と8GBのRAMとを含むコンピュータにおいて実装されていた。各プロセスの計算性能は、30マイクログリッドの300バスネットワークにおいて分析される。集中型状態推定に必要な反復はより少ないものの、集中型状態推定において用いられる行列がより大きいので各反復の経過時間は著しくより長くなる。
【0077】
図8を参照すると、図1のシステム100のマイクログリッド制御システムのうちの1つなどの例示的なマイクログリッド制御システム800の概略ブロック図が例示されている。マイクログリッド制御システム800は、処理デバイス802と、入出力デバイス804と、メモリデバイス806と、動作論理808とを含む。さらに、コンピューティングデバイス800は、ネストされたマイクログリッドシステムまたはローカルフィールドデバイスにおける他のマイクログリッド制御システムを含む1つ以上の外部デバイス810と通信する。マイクログリッド制御システム800は、独立型デバイス、埋込み型システム、またはシステム800に関して説明した機能を実行するように構成された複数のデバイスであってもよい。たとえば、システム151は、マイクログリッドSCADAゲートウェイに組込まれてもよい。
【0078】
入出力デバイス804は、マイクログリッド制御システム800がローカルフィールドデバイスまたは他のマイクログリッドと通信することを可能にする。入出力デバイス804は、いくつか例を挙げると、ネットワークアダプタ、ネットワーククレデンシャル、インターフェイス、またはポート(たとえば、USBポート、シリアルポート、パラレルポート、アナログポート、デジタルポート、VGA、DVI、HDMI(登録商標)、FireWire、CAT5、イーサネット(登録商標)、ファイバ、または任意の他の種類のポートもしくはインターフェイス)を含み得る。入出力デバイス804は、これらのアダプタ、クレデンシャル、またはポート、たとえば、データを受信するための第1のポートおよびデータを送信するための第2のポートなどのうち2つ以上を含み得る。
【0079】
処理デバイス802は、いくつか例を挙げると、1つまたは複数のプロセッサ、演算論理装置(arithmetic-logic unit:ALU)、中央処理装置(central processing unit:CPU)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array:FPGA)を含み得る。複数の処理ユニットを有する処理デバイスの形態に関して、分散処理、パイプライン処理、または並列処理が用いられ得る。処理デバイス802は、本明細書で説明される動作のみを実行するためだけのものであってもよく、または1つ以上の追加のアプリケーションにおいて用いられてもよい。処理デバイス802は、メモリ806に格納されたプログラミング命令(ソフトウェアまたはファームウェアなど)によって定義されるように、動作論理808に従ってアルゴリズムを実行するとともにデータを処理するプログラム可能な種類のものであってもよい。代替的にまたは付加的には、処理デバイス1202のための動作論理808は、ハードワイヤード論理または他のハードウェアによって少なくとも部分的に定義されている。処理デバイス802は、入出力デバイス804または他の箇所から受信した信号を処理するとともに所望の出力信号を提供するのに適した任意の種類の1つ以上の構成要素を備え得る。このような構成要素は、デジタル回路、アナログ回路、またはこれら両方の組合わせを含み得る。
【0080】
メモリデバイス806は、コンピュータ可読媒体としても公知であり、いくつか例を挙げると、ソリッドステート型、電磁型、光学型、またはこれらの形態の組合わせなどの1つ以上の種類のメモリであり得る。さらに、メモリデバイス806は、揮発性、不揮発性、一時的、非一時的、またはこれらの種類の組合わせであってもよく、メモリデバイス806の一部または全体は、いくつか例を挙げると、ディスク、テープ、メモリスティック、またはカートリッジなどの携帯型であってもよい。加えて、メモリデバイス806は、一例を挙げると、動作論理808を定義するプログラミング命令を格納することに加えて、またはその代わりに、入出力デバイス804から受信した信号および/または入出力デバイス804に送信される信号を表わすデータなどの、処理デバイス802の動作論理808によって操作されるデータを格納していてもよい。メモリデバイス806は、処理デバイス802に含まれてもよく、および/または、処理デバイス802に結合されてもよい。
【0081】
いくつかの例示的な実施形態をここでさらに説明する。一実施形態は、第1のマイクログリッドおよび複数のマイクログリッドを含むネットワーク化されたマイクログリッドシステムから偽データを除去するための方法であって、第1の複数のローカル測定値を用いてマイクログリッド制御システムで第1のローカル状態推定値を計算するステップと、マイクログリッド制御システムで、複数のマイクログリッドから複数のローカル状態推定値を受信するステップと、第1のローカル状態推定値および複数のローカル状態推定値を用いて、マイクログリッド制御システムおよび複数のマイクログリッドで複数のグローバル状態推定値を計算するステップと、複数のグローバル状態推定値が収束しなかったと判断するステップと、マイクログリッド制御システムおよび複数のマイクログリッドを用いて、マイクログリッド制御システムで計算された複数のグローバル状態推定値のうちの第1のグローバル状態推定値における偽データを検出するステップと、複数のグローバル状態推定値から第1のグローバル状態推定値を除去するステップと、複数のグローバル状態推定値のうち残りのグローバル状態推定値が収束するまで、マイクログリッド制御システムおよび複数のマイクログリッドで、複数のグローバル状態推定値のうち残りのグローバル状態推定値を反復的に更新するステップとを含む。
【0082】
上述の方法のいくつかの例では、当該方法は、第1のマイクログリッド制御システムで、複数のマイクログリッドの第1の部分に関連する直接通信の際に当該第1の部分から情報を受信し、その後、第1のマイクログリッド制御システムとの間接通信の際に、当該第1の部分から複数のマイクログリッドの第2の部分に関連する情報を受信することによって、通信ネットワークトポロジを決定するステップを含む。いくつかの例では、グローバル状態推定値は、各グローバル状態推定値が閾値未満の標準偏差を有するときに収束する。いくつかの例では、複数のグローバル状態推定値を計算するステップは、複数回の反復を用いて行われ、複数のグローバル状態推定値が収束しなかったと判断するステップは、複数回の反復の後に行なわれる。いくつかの例では、第1のグローバル状態推定値における偽データを検出するステップは、複数のマイクログリッドのうち1つのマイクログリッドから第1のマイクログリッド制御システムによって受信されるグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第1の信頼因数と、第1のマイクログリッド制御システムによって計算されるグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第2の信頼因数とを含む複数の信頼因数を含む動的信頼行列を更新するステップを含む。いくつかの例では、第1のグローバル推定値における偽データを検出するステップは、式セット(5)を用いて複数のグローバル状態推定値を更新するステップを含み、ここで、kはエージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【0083】
【数20】
【0084】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkのグローバル状態推定値を示し、ωk,iは、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、∇ω(ωk,i-1)は、反復i-1での中間状態ωのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する確率勾配であり、νは忘却因数であり、
【0085】
【数21】
【0086】
は瞬間誤差メトリックである。いくつかの例では、複数のグローバル状態推定値の各グローバル状態推定値は、第1のマイクログリッドのバスの電圧大きさに対応する。
【0087】
例示的な実施形態は、マイクログリッドシステムにおける偽データを検出および軽減するための方法であって、第1のマイクログリッドの第1のマイクログリッド制御システム、第2のマイクログリッドの第2のマイクログリッド制御システム、および第3のマイクログリッドの第3のマイクログリッド制御システムを動作させるステップと、第1の複数の測定値を用いて第1のマイクログリッド制御システムで第1のローカル状態推定値を計算し、第2の複数の測定値を用いて第2のマイクログリッド制御システムで第2のローカル状態推定値を計算し、第3の複数の測定値を用いて第3のマイクログリッド制御システムで第3のローカル状態推定値を計算するステップと、第2のマイクログリッド制御システムおよび第3のマイクログリッド制御システムで第1のローカル状態推定値を受信し、第1のマイクログリッド制御システムおよび第3のマイクログリッド制御システムで第2のローカル状態推定値を受信し、第1のマイクログリッド制御システムおよび第2のマイクログリッド制御システムで第3のローカル状態推定値を受信するステップと、第1のマイクログリッド制御システムで第1のマイクログリッドの電気的特性の第1のグローバル状態推定値を計算し、第2のマイクログリッド制御システムで電気的特性の第2のグローバル状態推定値を計算し、第3のマイクログリッド制御システムで電気的特性の第3のグローバル状態推定値を計算するステップと、第1のマイクログリッド制御システムで、当該第1のグローバル状態推定値、当該第2のグローバル状態推定値、および当該第3のグローバル状態推定値が収束しないと判断するステップと、動的信頼行列を用いて、当該第1のマイクログリッド制御システムで第1のグローバル状態推定値を反復的に更新し、第2のマイクログリッド制御システムで第2のグローバル状態推定値を反復的に更新し、第3のマイクログリッド制御システムで第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップと、当該第1のグローバル状態推定値、当該第2のグローバル状態推定値、および当該第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップを用いて、当該第1のグローバル状態推定値内の偽データを検出するステップと、当該第2のグローバル状態推定値および当該第3のグローバル状態推定値が収束するまで、当該第2のマイクログリッド制御システムでの当該第2のグローバル状態推定値の更新および当該第3のマイクログリッド制御システムでの当該第3のグローバル状態推定値の更新を続けるステップとを含む。
【0088】
上記の方法のいくつかの例では、当該方法は、第1の反復中に、第1のマイクログリッド制御システムで、第2のマイクログリッドに関する情報を第2のマイクログリッド制御システムから受信し、第1の反復中に、第2のマイクログリッド制御システムで、第3のマイクログリッドに関する情報を第3のマイクログリッド制御システムから受信し、第2の反復中に、第1のマイクログリッド制御システムで、第3のマイクログリッドに関する情報を第2のマイクログリッド制御システムから受信することによって、通信ネットワークトポロジを決定するステップを含む。いくつかの例では、第1のローカル状態推定値、第1のグローバル状態推定値、第2のグローバル状態推定値、および第3のグローバル状態推定値は、第1のマイクログリッドのバスの推定電圧である。いくつかの例では、第1のマイクログリッド制御システムは、第2の複数のローカル測定値または第3の複数のローカル測定値を受信しない。いくつかの例では、第1のグローバル状態推定値、第2のグローバル状態推定値、および第3のグローバル状態推定値を計算するステップは、拡散アルゴリズムを用いるステップを含み、第2のグローバル状態推定値および第3のグローバル状態推定値の更新を続けるステップは、拡散アルゴリズムを用いるステップを含む。いくつかの例では、動的信頼行列は、第1のマイクログリッド制御システムによって第1のグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第1の信頼因数と、第1のマイクログリッド制御システムによって第2のグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第2の信頼因数とを含む複数の信頼因数を含む。いくつかの例では、動的信頼行列を用いて第1のグローバル状態推定値、第2のグローバル状態推定値、および第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップは、第1のマイクログリッド制御システムによって第2のグローバル状態推定値内のノイズを検出することに応答して第2の信頼因数をゼロに低減するステップを含む。いくつかの例では、第1のグローバル状態推定値、第2のグローバル状態推定値、および第3のグローバル状態推定値を反復的に更新するステップは、式セット(5)のうち以下の部分を用いて動的信頼行列を更新するステップを含む。
【0089】
【数22】
【0090】
ここで、kは、エージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【0091】
【数23】
【0092】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkのグローバル状態推定値であり、ωk,iは、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、νは忘却因数であり、
【0093】
【数24】
【0094】
は瞬間誤差メトリックである。
例示的な実施形態は非一時的メモリデバイスである。当該非一時的メモリデバイスは、第1のマイクログリッドの第1のマイクログリッド制御システムの処理デバイスによって実行されるように構成された命令のセットを含み、当該命令のセットは、第1の複数の測定値を用いて第1のローカル状態推定値を計算し、第1のマイクログリッドに結合された複数のネットワーク化されたマイクログリッドから複数のローカル状態推定値を受信し、第1のローカル状態推定値および複数のローカル状態推定値を用いて第1のグローバル状態推定値を計算し、複数のネットワーク化されたマイクログリッドから複数のグローバル状態推定値を受信し、第1のグローバル状態推定値および複数のグローバル状態推定値が収束しないと判断し、第1のグローバル状態推定値および複数のグローバル状態推定値における検出されたノイズの大きさに応じて更新されるように構成された動的信頼行列を用いて、第1のグローバル状態推定値および複数のグローバル状態推定値を反復的に更新することによって、複数のグローバル状態推定値のうち少なくとも1つのグローバル状態推定値が偽データを含むと判断し、複数のグローバル状態推定値のうち偽データを含むと判断されなかったグローバル状態推定値で第1のグローバル状態推定値が収束するまで、第1のグローバル状態推定値を反復的に更新する、のに有効である。
【0095】
前述の非一時的メモリデバイスのいくつかの例では、複数のフィールドデバイスは、第1のマイクログリッドの複数のバス電圧を測定するように構成された複数の電圧センサを含む。いくつかの例では、処理デバイスによって実行されるように構成された命令のセットは、複数のネットワーク化されたマイクログリッドの第1の部分に関連する直接通信の際に当該第1の部分から情報を受信し、その後、第1のマイクログリッド制御システムとの間接通信の際に、第1の部分から、複数のネットワーク化されたマイクログリッドの第2の部分に関連する情報を受信することによって、通信ネットワークトポロジを決定するのに有効である。いくつかの例では、動的信頼行列は、複数のマイクログリッドのうちの1つのマイクログリッドから第1のマイクログリッド制御システムによって受信されるグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第1の信頼因数と、第1のグローバル状態推定値に適用される重みに対応する第2の信頼因数とを含む複数の信頼因数を含む。いくつかの例では、複数のグローバル状態推定値のうち少なくとも1つのグローバル状態推定値が偽データを含むと判断することは、拡散アルゴリズムを用いることと、式セット(5)のうち以下の部分を用いて動的信頼行列を更新することとを含む。
【0096】
【数25】
【0097】
ここで、kはエージェントマイクログリッド制御システムであり、lは近隣マイクログリッド制御システムであり、
【0098】
【数26】
【0099】
は、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関するグローバル状態推定値を示し、ωk,iは、反復iでのエージェントマイクログリッド制御システムkに関する中間変数であり、μは、エージェントマイクログリッド制御システムkの非負更新パラメータであり、νは忘却因数であり、
【0100】
【数27】
【0101】
は瞬間誤差メトリックである。
さまざまな実施形態からのさまざまな局面、特徴、プロセスおよび動作は、そうではないと明示的に述べられない限り、他の実施形態のいずれにも使用され得ることが企図されている。例示される特定の動作は、コンピュータが非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上でコンピュータプログラム製品を実行することによって実装されてもよく、この場合、コンピュータプログラム製品は、コンピュータに動作のうちの1つ以上を実行させるか、または、当該コンピュータに、1つ以上の動作を実行するためのコマンドを他のデバイスに発行させる命令を含む。
【0102】
本開示の非限定的な例示的実施形態と、その作製および使用方法およびプロセスとを明確、簡潔かつ正確に説明するために、さらに、その実施、作製および使用を可能にするために、図に示されるものを含む特定の例示的実施形態が参照されており、これを説明するのに特定の言語が用いられている。それにも関わらず、本開示の範囲の限定がこれによってなされるものではなく、本開示が、本開示の利益を伴って当業者に想起され得るように例示的な実施形態のこのような変更例、変形例およびさらなる適用例を包含および保護することが理解されるはずである。
【0103】
本開示が添付の図面および上述の記載において詳細に図示および説明されてきたが、本開示は、特徴を限定するのではなく例示するものと見なされるべきであり、特定の例示的実施形態のみが図示および説明されていること、ならびに、本開示の精神の範囲内に収まるすべての変更例および変形例が保護されることが望ましいことを理解されたい。上述の記載において利用される「好まれる」、「好ましくは」、「好ましい」、または「より好ましい」などの語の使用は、そのように記載される特徴がより望ましい可能性があることを示しているが、必ずしも必要でなくてもよく、それが欠如している実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義されている本開示の範囲内となるよう企図されていると理解されるべきである。請求項を読む際に、「a」、「an」といった不定冠詞、「少なくとも1つ(at least one)」、または「少なくとも1つの部分(at least one portion)」などの単語が用いられる場合、請求項において特段の記載がない限り、請求項を1つのアイテムだけに限定する意図がないことが意図されている。前置詞「の(of)」は、それが用いられる文脈によって示されるように、別のアイテムとの関連付けまたは別のアイテムへのつながり、さらに、他のアイテムへの帰属または他のアイテムとのつながりを意味し得る。語句「に結合される(coupled to)」、「と結合される(coupled with)」などは、間接的な接続および結合を含んでおり、さらに、そうでないと明記されない限り、直接的な結合または接続を、必ずしも必要とはしないが含んでいる。「少なくとも1つの部分(at least a portion)」および/または「1つの部分(a portion)」という語が用いられる場合、そうでないと明記されない限り、アイテムは1つの部分および/またはアイテム全体を含み得る。
図1
図2
図3
図4
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図6A
図6B
図7
図8