(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合用の工具組立体
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20230116BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B23K20/12 344
B23K20/00 310L
B23K20/12 G
(21)【出願番号】P 2021531935
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2019083786
(87)【国際公開番号】W WO2020115192
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】スカースブルック ジェフリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ボウズ デヴィッド クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ル シュオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ サントーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス スアレス テレサ
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530411(JP,A)
【文献】特開2012-192433(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106001897(CN,A)
【文献】特開2015-039704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00-20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦攪拌接合用の工具組立体であって、前記工具組立体は、それぞれが回転軸線を備えた工具ホルダとパックを含み、前記工具ホルダは、工具ポストを有し、前記パックは、ピンを有し、前記パックは、前記工具ポストに結合され、
前記工具ホルダは、前記工具ポストと前記パックを隙間を持って離隔して軸方向心合せ状態に結合するよう前記工具ポスト周りにかつ前記パック周りに取り付け可能な環状接合カラーを有し、前記パックおよび前記接合カラーは、前記工具ポスト及び前記隙間に向かって互いに対応関係をなして内方にテーパしており、前記工具ポストおよび前記接合カラーは、前記パック及び前記隙間に向かって互いに対応関係をなして内方にテーパしており、前記工具組立体は、摩擦攪拌接合中、前記工具ホルダの回転軸線と前記ピンの回転軸線との間の回転振れとして測定された前記工具ホルダの回転振れが10μmを超えることがないように構成されている、工具組立体。
【請求項2】
前記パックは、拡散結合部によって前記工具ポストに結合されている、請求項1記載の工具組立体。
【請求項3】
前記パックは、摩擦接合部によって前記工具ポストに結合されている、請求項1記載の工具組立体。
【請求項4】
前記パックは、角度θ1でテーパし、前記角度θ1は、2°から15°
までの範囲にある、請求項
1~3のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項5】
前記工具ポストは、角度θ4でテーパし、前記角度θ4は、2°から15°までの範囲
にある、請求項
1~4のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項6】
前記工具ポスト、前記パック、および前記接合カラーのうちの
少なくとも1つは、軸方向断面が円形である、請求項
1~5のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項7】
前記工具ポスト、前記パック、および前記接合カラーのうちの
少なくとも1つは、軸方向断面が多角形である、請求項
1~5のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項8】
前記パックは、1組の半径方向外方に向いたファセットを有し、前記接合カラーは、1組の半径方向内方に向いたファセットを有し、ファセットの各組は、前記工具ポストに向かって半径方向内方に延びている、請求項
7記載の工具組立体。
【請求項9】
前記工具ポストは、1組の半径方向外方に向いたファセットを有し、前記接合カラーは、第2の組をなす半径方向内方に向いたファセットを有し、ファセットの各組は、前記パックに向かって半径方向内方に延びている、請求項
7または8記載の工具組立体。
【請求項10】
各組に6つ、7つまたは8つのファセットを有する、請求項
8または9記載の工具組立体。
【請求項11】
各ファセットは、4つの側を有し、前記4つの側のうちの2つは、互いに平行であり、残りの2つの側は、互いに向かって細まっている、請求項
8~10のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項12】
ファセットの各組は、前記長手方向中心軸線回りに連続して配列されている、請求項
8~11のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項13】
ファセットの各組は、前記長手方向中心軸線回りに等角度を置いて配置されている、請求項
12記載の工具組立体。
【請求項14】
前記長手方向中心軸線回りの連続したファセットは、丸みを帯びた交差部によって互いに連結された状態で並置状態に置かれている、請求項
12または13記載の工具組立体。
【請求項15】
前記接合カラーは、熱膨張係数(CTE)が最高600℃までの温度について、11ppm/℃未満の物質から成る、請求項
1~14のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項16】
前記工具ポストおよび前記パック周りに取り付けられたヒーターモジュールをさらに含む、請求項
1~15のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項17】
前記ヒーターモジュールは、誘導型のヒーターを含む、請求項
16記載の工具組立体。
【請求項18】
前記工具ポストと前記パックの軸方向中間に設けられたサーマルバリヤ要素をさらに含む、請求項
1~17のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項19】
前記パックと前記接合カラーとの間に設けられたサーマルバリヤ要素をさらに含む、請求項
1~18のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項20】
液体を利用した内部冷却システムをさらに含む、請求項
1~19のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項21】
気体を利用した内部冷却システムをさらに含む、請求項
1~20のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項22】
前記パックは、前記工具ポストから取り外し可能である、請求項
1~21のうちいずれか一に記載の工具組立体。
【請求項23】
前記接合カラーは、ウェッジインサートを受け入れるための2つの直径方向反対側の接近孔を有する
、請求項
22記載の工具組立体。
【請求項24】
突出しロッドをさらに含み、前記工具ポストは、前記パックを前記接合カラーから突き出す前記突出しロッドを摺動可能に受け入れる中央ボアを有する
、請求項
22記載の工具組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦撹拌接合(friction stir welding:FSW)、特に高融点物質、例えば、鉄基合金のFSW中に超研磨性パックをしっかりと保持し、パックが好ましくは取り替え可能であるようなFSW工具組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属組立体、特に最も一般的には鋼で作られた構造用金属組立体の製作にあたり、2種類の材料を接合する上での要件が存在する場合が多い。多くのオプションがこれについて存在し、かかるオプションとしては、溶接、ろう付け、リベット止めなどが挙げられるが、これらプロセスの各々は、それ自体の利点と欠点を有する。2つの重要な問題は次の通りである。
i)接合が連続(連続溶接部のように)であるか別個(例えば、リベット止め)であるかどうか。別々の接合箇所は、接合線に沿って材料の強度を完全利用することはなく、したがって、究極的には、この構造は、「完全な」連続溶接部の場合よりも重くなる。
ii)連続接合の場合、接合部の諸特性が周りの材料の特性に合致しているかもしくはこれを上回っているか、あるいは弱点となるか。
【0003】
大型工学用構造体に関し、最も一般的な接合形式は、溶接、最も一般的にはフィラーロッドを用いたガスシールドアーク溶接形式を用いることであり、ただし、溶接の多くの変形例が存在する。しかしながら、これらの全てに共通して、以下の特徴が存在する。
a)接合部を短期間で溶融し、このためには相当な量の熱を周りの金属ならびに接合部自体に投入する必要があり、しかも、
b)熱の総量の結果として、当該接合部のところで溶融されている状態からの冷却は遅く、その結果、この領域における実質的な結晶粒成長および相分離が生じる場合がある。
【0004】
残念ながら、幾つかの鋼では、例えば、高強度高炭素鋼では、従来型溶接は、実施が常に容易であるというわけではなく、従来型溶接部で生じる結晶粒成長および相分離は、かかる鋼を弱体化するとともに破損しやすくする場合があり、その結果、溶接部は、構造体の最も脆弱な部分となる場合が極めて多い。
【0005】
1990年代初期において、溶接協会(The Welding Institute:TWI)は、「摩擦撹拌接合(friction stir welding)」(FSW)と呼ばれる、種々の形態のアーク溶接に対する代替手段を開発したが、この技術は、低融点金属および合金、例えば、Alおよびその合金にいまや十分に確立しており、この場合、このプロセスに適当な工作機械を従来型工具鋼から製造することができる。FSWの利点は、溶接が融点よりも著しく低い温度で起こり、加熱が極めて局所化され、その結果、溶接後の冷却速度が高く、それにより結晶成長および相分離が減少することにある。その結果、溶接部は、母材と同じほど強固でありかつ環境的に安定しているといえる。
【0006】
これら利点を鋼の接合に移し替えようとする要望が常に存在するが、鋼におけるFSWは、極めて多くの要求を用いられる工具に課す。特に、典型的な溶接温度は、約1100℃である場合があり、中実であるが塑性的に流動する鋼被加工物中に埋め込まれた工具に加えられる力は、極めて大きく、環境は、極めて研磨性でありかつ化学的に過酷である。
【0007】
現在、FSW工具の限られた供給が鋼とともに用いられる市場に投入されているが、一般に、採用度は極めて低い。FSW用の工具材料は、用途の詳細につれて様々であるが、典型的には、タングステン‐レニウム(W‐Re)結合剤中に焼結させた多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)グリットを含み、W‐Re結合剤は、靱性をもたらし、PCBNグリットは、耐研磨性をもたらす。
【0008】
採用度が低いことは、工具性能の非信頼性のゆえであると考えられ、市場報告は、許容可能な最小工具寿命が30メートルの溶接部であることを示唆しているが、これは、日常的には達成されないことを報告している。これら極めて技術的に検討された材料、すなわち、W‐ReおよびPCBNの使用にもかかわらず、2つの故障モードは、摩耗であり、溶接部性能および破損に影響を及ぼす工具に対する重要な形状特徴を失い、それにより、場合によっては、工具の中央「撹拌ピン」が完全にちぎれる。
【0009】
工具を製作するために用いられるPCBN/W‐Re焼結「パック」(以下に詳細に説明する)の正確な組成および微細構造は、破断に起因した故障の明らかに1つの関連要因である。ポストを増大させるとともに靱性を増すW‐Reの追加と耐摩耗性を増加させるが破断の恐れを高めるPCBNの追加との間の均衡が計られるべきである。パックの摩耗性が、現在、W‐Reに対する高い依存性によって拘束され、工具破断の問題に対する別の解決策が見出された場合には拘束を軽減することができるということを議論することができる。
【0010】
PCBNは、グリットとしてまたはある範囲の結合剤がW‐Reを含む焼結形態において、「超研磨性」と称されるある範囲の材料のうちの1つである。PCBN/W‐Reは、現在、従来の超弾性の最適実施であるが、本明細書の後の部分で説明される本発明は、PCBNには限定されず、例えば、結合剤として使用されまたは幾つかの用途ではスタンドアロンとして用いられる適当な靱性および研磨性を備えたエントロピーの高い合金の出現を予期している。本明細書の残りの部分全体を通じて、パックという用語は、FSW工具組立体の最終要素の状態に付形されかつ溶接中の材料と直接的な接触状態にあるコンポーネントについて用いられている。典型的には、これは、多くの場合、表面中への逆螺旋状切れ目により肩および撹拌ピンを形成するよう溶接中の金属と接触状態にあるフェース上に形成され、その結果、回転中、パックは、金属をピンに向かって引き寄せてこれをピンによって形成中の穴の中に押し込む。「超研磨性パック」は、超研磨性グリットを含みまたは高エントロピー合金を含むパックである。
【0011】
典型的には、超研磨性パックは、フライス加工または専用FSW機械の従来型コレットまたはキー止め工具マウント中に挿入されるポスト上に金属カラーによって保持される。典型的には、以下において「工具ポスト」と呼ばれるポストは、タングステンで作られるが、他の材料を使用することができ、かかる材料は、本明細書において後で説明する本発明で想定される。
【0012】
特に亀裂に対して工具寿命の観点における他の重要な要因は、工具ホルダの設計である。従来型工具ホルダは、内部が当初丸形の炭化タングステン(W‐C)シャフトを有し、かかるシャフトは、多数の典型的には8つのファセット(小面)がシャフト上に加工され、造形された超研磨性パックに当接され、このパック上にも、多数のファセットが加工される。当接状態の接合部を横切って、合致する8つのファセットを備えた内側ボア付きの金属カラーが焼嵌めされる。この技術的思想は、2つのコンポーネント上に焼嵌めされたカラーがこれら2つのコンポーネントの両方を機械的にロックし、多数のファセットが工具の使用中に追加のトルク伝達をもたらすということにある。
【0013】
使用条件が厚さ6mmの互いに当接したプレートを溶接するのに適した6mm長さのピンに関して実質的に様々であるが、力は、以下の通りであるといえる。
軸方向力 80kN (工具を溶接対象の金属中に圧入する)
横方向力 20kN (工具を溶接又は接合の線に沿って横行(横送り)させる)
トルク 400Nm (ツールの回転を維持するために加えられるトルク)
【0014】
証拠の示唆するところによれば、いまや、問題は焼嵌めカラーの使用に関する。超研磨性パックの熱膨張率(CTE)は、一般に、低く、例えば、W‐Re/PCBNパックに関し、これは、W‐Cの場合と同様に約4.5ppm/℃であり、これに対し、熱収縮リングに用いられる典型的な金属のCTEは、約11ppm/℃である。熱収縮では、一般的なプロセスとして、通常、コンポーネントを加熱して最高約600℃まで焼嵌めし、その後、このコンポーネントを収縮のための定位置に嵌める。しかしながら、溶接中における約1100℃の動作温度では、焼嵌めされたカラーは、超研磨性パックよりもはるかに再膨張する傾向が高く、それによりカラーを超弾性パックにとってぞんざいな嵌合状態が生じる。カラーに対して内部に位置しかつパックに対して外部に位置するファセット付き形状は、パックが回転するが、いまや、パックもまたカラー内で僅かに側方に動く場合があるようにし、その結果、「回転振れ」と通称されているパックの回転が生じ、ピンは、回転軸線から僅かに外れる。工具に関してかかる転振れがあると、その結果として、ピンが塑性的に流動する鋼内で心振れしているときにピンに極めて大きな周期的力が加わり、それにより極めて深刻な疲労および亀裂伝搬が生じ、最終的に破損が生じる。
【0015】
回転振れは、機械加工用途においては良く見られる問題であり、かかる回転振れは、使用中における機械および工具ホルダ/工具の回転振れを含む。FSWを多くの場合、標準フライス加工機によってまたは特にFSWについて市販されている本質的には改造型のフライス加工機設計例である機械によって完了させることができる。本明細書全体を通じて、機械をFSW機械と称し、これは、FSWに適当な任意の機械を意味する。
【0016】
一般に、FSW動作原理は、多数のステップ、例えば、
a)挿入ステップ、工具が被加工物に接触する時点からピンが加熱されそして軟化された被加工物中に肩まで完全に埋め込まれる時点まで、
b)工具横行、工具が接合されるべき被加工物相互間で接合線に沿って側方に移動する、および
c)抽出ステップ、工具が被加工物から持ち上げられまたは横行される場合。
【0017】
主として溶接部を形成する段階である工具横行は、通常、一定条件下で行われ、典型的には、これら条件は、回転速度、突っ込み深さ、横行速度などであり、ただし、これらの場合、速度に代えて加えられた動力および加えられた力による深さを用いることができ、それにより同様な結果を与えるが、局所被加工物ばらつきに対する応答性の実現が可能になる。いずれの場合においても、工具横行がいったん開始されると、条件は、溶接の終わりに近づくまで横行期間中、本質的な一定のままである。これらは、本明細書全体を通じて、「定常状態作業」であると呼ばれる条件である。
【0018】
工具ホルダ内の熱膨張問題を回避するための表面的に明白な一解決策は、超研磨性パックをこれが標準型FSW機械中に直接嵌まり込むほど大型にすることである。この解決策は、2つの理由で非実用的である。
a)かかる大型超研磨性パックを焼結するために用いられるとともにこれを製造するのに適した超高圧を加えることができるプレスが利用できないこと、および
b)超研磨性パック(フィラー+結合剤)のコストがとてつもなく高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、課題は、その最も簡単な形式において、使用中における工具ホルダの回転振れの一因を高融点金属、例えば、鋼においてFSW作業中に最小限に抑えようとしながら、本質的には超研磨性パックを工具ポストにどのように適切に接合するかという課題であり、工具ポストは、次に、標準FSW機械に何らかの手段によって連結できる。
【0020】
本発明の目的は、上述の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一観点では、高融点金属および合金を摩擦攪拌接合する工具組立体であって、工具組立体は、工具ホルダおよび超研磨性パックを含み、工具ホルダおよびパックは各々、回転軸線を備え、工具ホルダは、工具ポストを有し、パックは、ピンを有し、パックは、工具ポストに結合され、工具組立体は、摩擦攪拌接合中、工具ホルダの回転軸線とピンの回転軸線との間の回転振れとして測定された工具ホルダの回転振れが10μmを超えることがないように構成されていることを特徴とする工具組立体が提供される。
【0022】
回転振れは、工具組立体設計の2つの重要な観点、すなわち、1)構造的コンポーネント相互間のあり得るCTE不一致が最小限に抑えるような材料の選択、および2)構造的設計、例えば、テーパ付き取り付け具の使用に取り組むことによって最小限に抑えられる。
【0023】
工具組立体は、以下の仕方のうちのいずれか一方またはこれら両方において構成するのが良い。
1)パックは、1つまたは2つ以上のテーパ付き継手構造体によって工具ホルダに連結され、その結果、FSWプロセスの軸方向力がテーパ付きコンポーネントを一緒になって押し、それによりCTE不一致に起因して生じる接合部のたるみを吸収する。
2)工具組立体の一部をなす任意の構造要素(これは、使用中に400℃以上の温度に達しかつCTEが10ppm/℃を超える工具の一領域であることによって定められる)は、3mmを超えない最も小さな直線寸法(使用中)を有する。最も小さな直線寸法は、好ましくは、2.0mmを超えず、1.5mmを超えず、1.0mmを超えずまたは0.5mmを超えない。
【0024】
高融点金属または合金は、以下の条件、すなわち、融点が1200℃を超えず、あるいは、FSWの作業中、ピンに隣接して位置する被加工物の温度が900℃を超えるという条件のうちの1つまたは2つ以上が当てはまる金属または合金として定められる。
【0025】
分かりやすくするために、FSW中に生じる上述の条件は、パック温度またはピンに隣接して位置する被加工物の温度が定常状態動作温度の10%の範囲内に達したときに起こると考えられる。オプションとして、これは、定常状態動作温度の5%以内、3%以内、1%以内であるのが良い。
【0026】
上述の「工具組立体の一部をなす構造要素」という表現は、動作中における最小温度に達するとともに最小CTEを有する領域であることによって定められ、しかも、工具ホルダおよびパックの境を接して隣接した領域であり、さらに、かかる構造要素は、2つ以上の材料またはサブエレメントを有するのが良い。変形例として、上述の構造要素を定めるCTEは、9ppm/℃、8ppm/℃、7ppm/℃、または6ppm/℃であっても良く、これを定めるために到達する温度は、300℃、200℃、または100℃であるのが良い。この領域の最も小さな直線寸法(厚さ)は、筒体または中空コーンの壁厚であるのが良いが、これは、工具ホルダの長手方向軸線と直交しかつこれと同軸の層の厚さであっても良い。
【0027】
本発明のこの観点の他のオプションとしての特徴は、従属形式の請求項2~27に提供されている。
【0028】
テーパ付き継手構造体はどれも、工具組立体が被加工物からの高温抽出中に一緒に位置するよう設計されているが、工具組立体が昇温しているときに締まり嵌め状態を保持するためにテーパ付き継手圧縮を妨害しないねじまたは他の係止装置を有するのが良い。
【0029】
本発明の別の観点では、パックを工具組立体から取り外す方法が提供され、この方法は、
a)パックを穴あけしてドリル止まり穴を作るステップ、
b)エクストラクター(取り出し)ピンをドリル止まり穴中に挿入するステップ、
c)エクストラクターピンをパックに係合させるステップ、および
d)パックを接合カラーから取り外すステップを含む。
【0030】
エクストラクターピンをパックに係合させるステップは、ねじ穴または拡張バーブ(刺部)を用いて係合を達成するステップを含むのが良い。
【0031】
本方法は、ステップa)に先立って接合カラーのステップをさらに含むのが良い。
【0032】
次に、添付の図面を参照して本発明を具体的に説明するが、これは例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】工具ポスト、パックおよび接合カラーを含む組立状態の先行技術の工具組立体の概略側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る組立状態の工具組立体の概略側面図である。
【
図15】角度θ1が
図8のパックに対してどのように測定されるかを示す図である。
【
図16】角度θ2および角度θ3が
図8の接合カラーに対してどのように測定されるかを示す図である。
【
図17】角度θ4が
図8の工具ポストに対してどのように測定されるかを示す図である。
【
図18】接合カラーの2つの変形実施形態の概略端面図である。
【
図19】
図8のパックの拡大部分およびその種々の有意義な外角α1およびα2を示す図である。
【
図20】
図8の接合カラーの拡大部分およびその種々の有意義な外角β1およびβ2を示す図である。
【
図21】種々の合金の平均CTEを示すグラフ図である。
【
図22】種々の合金の引っ張り強度を示すグラフ図である。
【
図23】種々の合金のクリープ破断特性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図中、類似の部分には類似の参照符号が割り当てられている。
【0035】
最初に
図1~
図7を参照すると、先行技術の工具組立体が全体を10で示されている。工具組立体は、長手方向中心軸線11を有する。工具組立体は、細長い工具ポスト12、パック14および工具ポスト12およびパック14の周りに取り付けられていて工具ポスト12とパック14を軸方向心合せ状態に固定する接合カラー16を含む。
【0036】
完全なFSW条件下において、工具組立体10は、同一の長手方向中心軸線11回りに回転する。しかしながら、回転振れが起こったとき、パック14の回転軸線は、変位状態になって工具ポスト12の回転軸線との心合せまたは整列状態から外れる。かかる心狂いは、一般的には、直線的に測定されることが理解され、例えば、長手方向中心軸線11回りの振動振幅である。
【0037】
工具ポスト12は、互いに接合された第1の本体部分12aと第2の本体部分12bから成り、第1の本体部分12aは、パック14の最も近くに位置する。第1の本体部分12aは、軸方向(すなわち、横方向)断面が八角形である。第2の本体部分12bは、軸方向断面が円形である。工具ポスト12は、その長さに沿って途中まで半径方向に段付けされている。
【0038】
金属接合カラー16は、外部が円筒形であり、この接合カラーは、
図4および
図5で最も良く分かるように、その長さに沿って軸方向に延びる中央ボア18を有している。ボア18は、工具ポスト12の第1の本体部分12aとの結合を可能にするよう横断面が八角形である。
【0039】
パック14は、横断面が八角形である。パック14の寸法は、
図1に示されているように、工具ポスト12の第1の本体部分12aの寸法と一致している。工具ポスト12から見て遠くに位置するパック14の反対側の一端部では、パック14は、撹拌ピン20中に付形されている。パックは、先端部まで半径方向内方に(同心円によって
図7に示されている)テーパしており、先端部は、使用中、溶接されているコンポーネントと接触する。
【0040】
パック14と工具ポスト12は、隙間22だけ軸方向に離隔されておりかつパック14および工具ポスト12上に焼嵌めされた接合カラー16によって互いに対して定位置に固定されている。従来、パック14と工具ポスト12は、上述したように、互いに当接しているものの、機械的に定位置に係止される。
【0041】
いま、
図8~
図14を参照すると、本発明にかかる工具組立体の第1の実施形態が全体100で示されている。工具組立体は、工具ポスト102、超研磨性パック104および接合カラー106を含む。接合カラー106は、工具ポスト102および超研磨性104上に焼嵌めされている。
【0042】
工具ポスト102は、
図9で最も良く示されている互いに接合状態の第1の本体部分102aと第2の本体部分102bから成り、第1の本体部分102aは、パック104の最も近くに位置する。第1の本体部分102aは、軸方向(すなわち、横方向)断面が八角形である。第1の本体部分102aは、パック104に向かって各内方にテーパしている。換言すると、第1の本体部分は、八角形の底および平坦なピラミッド形側部を備えた切頭ピラミッドである。第2の本体部分102bは、軸方向断面が円形であり、その直径は、その長さに沿って一定である。第1の本体部分102aと第2の本体部分102bの交差部のところでは、工具ポスト102は、半径方向内方に段付けされている。
【0043】
接合カラー106は、外部が円筒形であり、この接合カラーは、
図11および
図12に示されているように長さに沿って軸方向に延びる中央ボア108を有する。ボア108は、軸方向断面が八角形である。しかしながら、ボアの寸法は、工具ポスト102の長さに沿って一様ではない。ボア108は、接合カラー106の一端部110から半径方向内方にテーパし、その後、中間点112のところまたはその近くで曲がって砂時計のように接合カラー106の他端部114まで半径方向外方にテーパしている。このように、ボアは、2つの隣接した空所、すなわち、パック104を受け入れる第1のボア空所108aおよび工具ポスト108を受け入れる第2のボア空所108bに分割されている。
【0044】
パック104は、横断面が八角形である。パック104の寸法は、
図1に示されているように、工具102の第1の本体部分102aの寸法と一致している。工具ポスト102から見て遠くに位置するパック104の反対側の一端部では、パック104は、撹拌ピン20中に付形されている。パック104は、既知の仕方で先端部まで半径方向内方に(同心円によって
図14に示されている)テーパしている。
【0045】
パック104と工具ポスト102は、隙間22だけ軸方向に離隔されておりかつ接合カラー106によって互いに対して定位置に固定されている。
【0046】
本発明の一特徴は、ファセット付きの超研磨性パック104が僅かなテーパ(テーパ角度θ1‐
図15参照)を有し、接合カラー106に設けられた対応のボア108は、テーパした形態でファセットを有し(テーパ角度θ2‐
図16参照)、その結果、接合カラー106が膨張すると、超研磨性パック108は、加えられた軸方向荷重を受けて接合カラー106中にさらに押し込まれ、かくして締まり嵌め状態のままであり、ピン116の軸線は、回転軸線11と平行でありかつこれと一線をなしている。
【0047】
接合カラー106は、他端部から入る第2の僅かに組をなすファセットを有するのが良く(テーパ角度θ3‐
図16参照)、第2の僅かにテーパした組をなすファセットは、W‐Cシャフト102に設けられた類似の組をなすテーパ付きファセット(テーパ角度θ4‐
図17参照)と嵌合する。この設計は、両方のテーパによりコンポーネントが締まり状態のままであることができ、この目的のため、組み立て時、W‐Cシャフト102のテーパ付き端部と超研磨性パック104のテーパ付き(小さなテーパ付き)端部との間に隙間22が残り、それにより両方が自由に接合カラー106中にさらに動いてテーパ内で締まることができるようにする。
【0048】
工具ポスト102、パック104および/または接合カラー106のファセットの配列状態は、好ましくは、回転周期性であり、ファセットの数は、4つから8つまでの範囲(端の値を含む)任意の数であり、好ましくは6つである。例えば、
図18の左側パック104は、6つのファセットX1を有し、
図18の右側のパックは、7つのファセットX1を有する。
【0049】
ファセットX1は、必ずしも、これらの縁部のところでは接合されておらず、
図19に示されているように、ファセットX1相互間に露出されていて任意所与の断面で見て円形のセグメントを形成する円筒形または円錐形表面X2の僅かなセグメントが存在するのが良い。一般的に、この円形セグメントX2の角度は、ファセットX1の角度よりも非常に小さく、好ましくは、ファセットX1相互間のコーナー部を単純に壊し、そして個々の要素102,104の堅牢さを向上させるために設けられる。丸形区分X2の角度は、挿入状態のコンポーネント(パック104、工具ポスト106)上の外部ファセットX1について、接合カラー106(
図20参照)の同様な内部ファセットY1,Y2に等しくまたはこれよりも大きくなければならず、それにより、これらコンポーネント相互間の良好な嵌合が確保される。
【0050】
用途に適したテーパ角度の最小値および最大値は、十分なトルクを伝達するための必要性によって設定され、それにより2°の最小値および15°の最大値が提供される。
【0051】
テーパの正確な角度は、テーパが自動係止する程度およびテーパを解除することができる容易さを決定する際に重要である。2つの合致したテーパ表面は、代表的には、同一またはほぼ類似のテーパ角度を有し、すなわち、テーパ角度θ1は、テーパ角度θ2と同一またはほぼ同じであり、同様に、テーパ角度θ3は、テーパ角度θ4と同一またはほぼ同一であるが、テーパθ1は、用いられる設計の細部に応じて、テーパ角度θ3とは著しく異なる場合がある。テーパ角度は、一般に、組立体100が通常のFSW作業条件下において自動係止するよう選択される。すなわち、テーパが十分な長手方向圧縮下にありかつ動くのに十分なクリアランスがある状態で、接合カラー106が膨張して離れる傾向は、テーパのそれ以上の機械的挿入によって軽減される。大抵のセラミックおよび脆い材料の場合のように、超研磨性および焼結超研磨性は、テーパが圧縮荷重を適度に一様に分配するよう設計されている限り(例えば、テーパ角度θ1は、テーパ角度θ2と同一またはほぼ同一である)、圧縮下において一般的に言って良好であり、工具の冷却後におけるパックおよびW‐Cポストの結果としての高い圧縮作用は、問題ではない。
【0052】
かくして、テーパ角度は、従来用途においては典型的には自動係止と見なされた範囲内に位置するのが良く、例えば、7°未満であり、あるいは、超研磨性複合材の比較的高い表面靱性の結果として、自動係止は、僅かに大きな角度に合わせて、最高10°まで支援できる。かくして、テーパ角度θ1,θ2は代表的には、2°から15°までの範囲、より代表的には5°から10°までの範囲、より代表的には6°から8°までの範囲にある。
【0053】
これとは対照的に、工具ポスト102のテーパ角度は、これよりも小さいのが良く、というのは、一般的に、組立体のこの部分を分解することが意図されないからである。かくして、テーパ角度θ3,θ4は代表的には、2°から15°までの範囲にあり、代表的には3°から8°まで、より代表的には4°から7°までの範囲にある。
【0054】
本発明の別の特徴は、工具ホルダ(すなわち、工具ポスト102+接合カラー106)を再使用して超研磨性パック104に取って代わることができることにあり、それにより、工具の全体的費用が減少する。再使用可能であることは、工具ホルダを互いに異なる超研磨性パック104について2回以上、代表的には3回~5回以上使用することができることを意味している。これは、2つの理由、すなわち、i)工具ホルダが互いに異なる側面を備えたパック14の取り外し向きには設計されていないこと、およびii)接合カラー16がパック14を作業温度できつくクランプしない場合にパック14の運動から損傷を受けることが避けられないことにより、工具ホルダの先行技術の設計では可能ではない。工具ホルダ内におけるパック104の取り外しおよび交換は、必ずしも、最終使用者に適切な作業である必要であるとは限らず、ただし、かかる取り外しおよび交換は、工具サプライチェーンにおいてどこかの場所において完了させることができることを条件とする。
【0055】
パック104の取り外しを容易にするため、多くのオプションを採用することができる。例えば、接合カラー106は、代表的には接合カラー106の互いに反対側の側部に対称に設けられた2つの接近孔を備えるのが良く、それにより、パック104を押し出すためのウェッジインサートまたはその類似物の使用が可能になる。変形例として、工具ポスト102は、その長さに沿って下方に延びる中央穴を有しても良く、エジェクタ(取り出し)ロッドをこの穴に沿って下方に用いることができる。第3の選択肢は、パック104に穴あけし、ねじ山もしくは拡張刺部またはバーブ(刺部)またはその類似物を用いてパック104に結合するエクストラクターピンを挿入することによってパック104を破壊的に取り出すことである。選択された設計例そのものは、要求される工具性能の他の観点および取り出しプロセス中に用いられる加熱方式で決まるのが良い。パック104を取り出すための要件は、パック104と関連したウェッジ角度(θ1,θ2)を大きな角度に押す傾向があり、その結果、取り出しを容易にするようになっている。パック104を取り出すプロセスは、接合カラー106を加熱して膨張を容易にし、次にウェッジを打ち込みまたは上述した他の方法のうちの1つを用いてパック104の解除を容易にするステップを含む。
【0056】
工具104(すなわち、パック)が加熱可能である手段は、様々である。一構成例は、FSW作業中に工具104を迅速に取り出して作業条件を解除のために用いることである。第2の解決策は、接合カラー106の周りに嵌まって一部が接合カラー106のために用いられる材料に応じて火炎か放射線か熱伝導か電磁誘導かのいずれかによって直接加熱するヒーターモジュールを提供することにある。適当な場合、電磁誘導は、大抵の場合、最も効果的な解決策であり、熱を迅速かつ直接的に加熱を最も必要とするコンポーネントに提供する。
【0057】
本発明の別の特徴は、接合カラー106の材料の選択にある。工具ホルダ(工具ポスト102および接合カラー106)を再使用にしたので、商業的に実行可能と見なすことができる(例えば、市場に受け入れ可能なプライスポイントに適合する)極めて広範な材料が存在し、というのは、より高価な材料を考慮することができるからである。従来型の強固な金属(例えば、鉄を基材とする)は、焼結PCBNおよびW‐Cの4ppm/℃から5ppm/℃のCTE値と比較して、約11ppm/℃のCTE値を有する。したがって、多数の側面を備えた焼嵌めカラーを使用した場合、CTEにおける大きな差は、工具104が作業温度においてルーズな嵌合状態になる主因である。厳密にいえば、材料のCTEは、それ自体、通常温度の関数であり、重要なパラメータは、室温から作業条件までの全膨張量になり、この全膨張量は、CTEを温度変化全体にわたる温度の関数として積分することと等価である。
【0058】
一般的に、従来金属よりも著しく高価であるが、室温から600℃までの温度範囲の少なくとも一部分にわたってCTE値が実質的に11ppm/℃未満であり、それと同時に高温に対する強度を保持する多くの特注の合金が知られている(これについては、
図21、
図22および
図23を参照されたい)。特に、合金HRA929,909,903は、全て、程度が様々であるが、従来の鋼よりも最高600℃までの範囲において低いCTEを有し、929は、最高400℃までW‐Cと極めて類似したCTEを有する。これは、カラーが包囲しかつ通常の作業中、機械的にクランプするPCBNまたはW‐C要素からカラーが膨張して離れる恐れを最小限に抑える一方で、依然として、工具の組み立ておよび分解に用いられるべき大きな温度逸脱を許容する。
【0059】
本発明の第2の実施形態では、工具ポスト102を超研磨性パック104に焼結しまたは拡散結合し、接合カラー106は省かれる。
【0060】
パック104は、過剰な回転振れの大きな力またはこれが接合カラー106内でルーズな状態になったときの接合カラー106内でのカチャカチャという音を出す衝撃をもはや受けないので、パック104の靱性を潜在的に減少させることができしかも耐摩耗性の増大と交換関係に置くことができる。したがって、ある範囲の他の材料を超研磨性パック104内で金属結合剤のために用いることができる。この利点は、これにより、ある範囲の他の接合および組み立て策の実現が可能であることにあり、1つのオプションは、この場合、金属またはW‐Cポスト102を超研磨性パック104に焼結しまたは拡散結合することである。
【0061】
焼結または拡散結合インターフェースは、工具ホルダの長手方向軸線に沿いかつ全体としてこれと直交し、しかもこれに関して回転対称である箇所に位置するが、特に、焼結インターフェースは、この回転対称を崩す追加の構造体をインターフェースのところに有する場合がある。変形例として、このインターフェースは、2つの円錐形の形をしていてかつ互いに嵌合するコンポーネント相互間の隙間を埋める薄肉の円錐体の形態を取っても良い。インターフェースは、単一の層で構成されても良く多数の層で構成されても良い。このインターフェース層と組立体の残部との間に存在する潜在的なCTE不一致を取り扱う問題が残っている。温度逸脱が主として高温になるパック104の関連で生じかつパック104が約4ppm/℃~5ppm/℃のCTEを有しているので、3つのオプションは、
1)インターフェース領域を使用中における工具組立体の高温領域から十分遠くに離して位置決めしまたは工具組立体が低温でありかつ特定の温度しきい値未満であるようにするのに十分に効果的な冷却を提供し、
2)インターフェース領域のCTEを低く、特に規定されたしきい値未満に維持し、その結果、インターフェース領域が高温になったときに、インターフェース領域がこのインターフェース領域とパックとの間におけるCTE不一致が過度ではなく、しかも接合部または隣接のコンポーネントの強度をこのように十分な熱応力を生じさせないようにし、あるいは、
3)インターフェース領域の最も小さな寸法を小さく、かつ特定のしきい値未満に維持し、その結果、歪がインターフェース領域内で許容され、インターフェース領域に外部から加えられた応力が小さく保たれることにある。
【0062】
一実施例として、高強度かつ高エントロピー合金TZM(TiZrMo)は、約6ppm/℃のCTEを有し、このCTEは、超研磨性パック104(典型的には、4.5ppm/℃~5ppm/℃)とかなり近く、この場合、CTEは、超研磨性成分、例えば、PCBNによって定められる。TZMを超研磨性パック104のための結合剤として用いることができ、そしてTZMはまた、超研磨性パック104の後部に結合される金属ポスト102として用いることができる。結合は、拡散結合によるものであるのが良い。変形例として、ポスト102は、特に、超合金ポストの費用が選択される特定の超合金で決まるW‐Cポストの費用よりも大きい環境では、W‐Cであっても良い。
【0063】
拡散結合は、結合温度では必要ならば典型的にはコンポーネントを滑らせて横にずらすことによって結合部を分解することもまた可能であるという点で可逆的プロセスである。
【0064】
変形例として、超研磨性パック104は、製造中、W‐Cの裏当て層に焼結されても良く、その結果としてのW‐C層への結合が起こる。この場合における1つのオプションは、これまたW‐Cで作られたポスト102に結合することであり、2つのW‐C要素相互間のインターフェースは、薄い金属層を用いた拡散結合部である。上述したように、工具をFSW機械中に直接取り付けるのに十分に大きいW‐Cポストへの直接的な焼結は、FSW機械から大きなトルクを伝送すると同時に回転振れを最小限に抑えるのに必要とされるシャフトの全長が焼結カプセルの寸法と比較して大きいので、どのような任意の大きな寸法の工具(例えば、構造的用途で用いられる長さ4mmを超えるピン)にとって困難である。しかしながら、これは、4mm未満、典型的には2mm未満のピン長さが適当である場合、例えば、自動車および微細金属工学で用いられる小さなピン長さにとって考えられる解決策である。
【0065】
より従来の金属、例えば、超合金TZMの代替手段として、超研磨性結合剤は、単層金属中に5つまたは6つ以上の金属要素を含む耐熱高エントロピー合金であっても良く、この場合、この合金は、多数の成分のエントロピーと関連した高エントロピー(およびかくして低ギブス自由エネルギー)のゆえに単層のままである。
【0066】
本発明の第3の実施形態では、工具ポスト102は、摩擦スピン接合部により超研磨性パック104に接合され、この場合もまた、接合カラー106が省かれている。これは、拡散結合して上述した接合部が摩擦スピン溶接部または摩擦結合の他の何らかの形式、例えば、直線摩擦接合または超音波摩擦接合を用いることによって代わりに形成された場合である。かかる結合部は、通常、インターフェースのところに金属層を含み、この場合、金属層は、互いに接合されている2つの主要な要素よりも低い融点を有し、この金属層は、一つにはかかる金属層の同様に高いCTEと関連した応力を最小限に抑えるために、3mmを超えず、好ましくは2mmを超えず、1.5mmを超えず、1mmを超えず、0.5mmを超えない最も小さな寸法を有する。上述のインターフェース層は、連続的に配置されるとともに2つ以上の材料または部分要素を含むのが良い。
【0067】
例えば、インターフェース材料は、AlまたはCuであるのが良い。原理的には、金属層は、鋼であっても良く、というのは、W‐Cと鋼との摩擦結合が実証されているからである。融点の十分低い金属を用いた場合の利点は、接合部を当初摩擦により生じる加熱によって形成することができるが、拡散接合の場合と酷似して、ユニット全体を加熱して接合部を軟化させ、次にこれらを機械的に分離することによって分解することができことにある。これとは逆に、接合材料の融点または軟化点は、工具使用中に破損しないのに十分に高いことが必要であり、ただし、これは、上述したように工具ホルダの冷却によって支援できる。
【0068】
上述の実施形態の各々に関し、金属性要素をいったん超研磨性パックに連結すると、工具ホルダの残部、例えば、FSW工具ホルダの特注の工具ポストをFSW機械に用いられるように、より標準サイズの工具ホルダに適合させるコンバータ(変換)ポストを完成させるための極めて従来型の解決策を用いることができる。また、金属工具ホルダポストにより、テーパしているが金属「キー」構造体を有するポストがトルクを伝達することができる。代表的には、かかる金属キー構造体は、ポストテーパに設けられた溝内に位置する長方形の金属バーを含み、この溝は、ポストの長手方向軸線の平面内にかつテーパの壁に平行に延び、長方形の金属バーは、FSW機械内のテーパに設けられた適切に合致する溝と嵌合する。
【0069】
本発明の別の特徴は、作業中、熱流量を管理してこれを変更し、コンポーネント相互間の固着具合の減少に対する熱膨張差の有害な作用を減少させ、そして最終的には、工具を再び分解するのに必要な温度逸脱を減少させるよう工具ホルダを設計することにある。この目的は、多くの方法で達成でき、これら方法のうちの第1のものは、低熱伝導率コンポーネント、代表的にはセラミックを工具ホルダの全体的構造中に挿入することである。サーマルバリヤ(熱障壁または断熱層)、例えば、薄いプレートを超研磨性パックと接合カラーとの間のテーパ中に挿入するのが良い。この設計は、セラミックスを圧縮下に保ち、しかもセラミックスペーサに対する化学的攻撃となる分解のための追加のオプションを提供する。変形例として、工具ポスト102と超研磨性パック104の端部相互間の隙間22内にサーマルバリヤ要素を配置しても良く、これは、かなり大きな耐荷重点まで圧縮されないロックウールの形態をした熱伝導、熱対流および/または熱放射に対するバリヤである。
【0070】
かかる受動的な解決策に加えて、熱管理のための能動的な解決策もまた想定される。従来の解決策は、工具とともにかつこれを受け入れる水供給および戻り路とともに回転するか、静的であるかのいずれかであり、しかも工具の近くに位置決めされた水冷ジャケットである。変形例として、例えば、恐らくはシャフトが超研磨性パックに取り付けられる穴の底部まで水を供給する管を用いて穴をポストの中心沿いにこれを下方に水冷作用を施すことができ、戻り路は、シャフト内の穴によって拘束される。水冷作用をかかる回転シャフトの中心中に提供する方法が知られている。冷却効果に対する良好な管理を提供するため、用いられる液体は、水以外の液体、例えば、油であるのが良い。液体冷却方式の一欠点は、選択された作業圧力において液体から気体への潜在的な相変化が冷却速度に不連続性を提供し、かくして、通常、冷却された固体と冷却する液体との間の境界部のところに許容可能な温度に対する温度上限として作用することにある。かかる欠点は、気体冷却を用いることによって回避でき、この場合、冷却作用におけるかかる不連続性を生じさせるそれ以上の相変化が生じない。気体冷却のための一オプションは、1組のファンの羽根であり、各羽根は、熱をカラーから伝導し、空気の運動を生じさせてこれら羽根を冷却する。安全上の理由で、このファンは、これを包囲する筒体セグメント(静的でありまたはファンと一緒に回転する)内に位置する必要がある場合がある。かくして、空気流は、典型的には被加工物の方へ差し向けられた工具の軸線にほぼ平行であり、しかも、この空気流を用いると、溶接領域もまた冷却することができる。溶接部の迅速な冷却(例えば、水中における溶接時)の結果、微細でありかつ良好に作用する微細構造が得られ、したがって、空冷もまた有益である場合がある。変形例として、気体冷却を上述の水冷に取って代わった状態でシャフトの中空中心沿いに下方に用いても良い。
【0071】
以上要約すると、作動中に有害な回転振れを最小限に抑えるための摩擦撹拌接合用の工具組立体が開発されている。これは、CTE不一致を減少させるための注意深い材料の選択によってかつ巧妙な構造設計によって解決されている。工具ホルダは、再使用可能であり、パックは、交換可能である。