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特許7210751ペディオコッカスイノピナタスを含む退行性脳疾患の予防、改善又は治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ペディオコッカスイノピナタスを含む退行性脳疾患の予防、改善又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20230116BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20230116BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230116BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230116BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230116BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230116BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20230116BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/744
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A23K10/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021539970
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 KR2020000754
(87)【国際公開番号】W WO2020149647
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0005270
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12653P
(73)【特許権者】
【識別番号】518405821
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティチュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA FOOD RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】245, Nongsaengmyeong-ro, Iseo-myeon, Wanju-gun, Jeollabuk-do, 55365, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ハク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナム ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ギョン
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1617141(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61K 35/744
A61P 25/00-25/26
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)、その培養物、その溶解物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む、退行性脳疾患の予防又は改善用食品組成物。
【請求項2】
前記食品は、健康機能食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記食品は、飲料、バー又は発酵乳である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項4】
前記ペディオコッカスイノピナタスは、受託番号KCCM12653Pとして寄託されたペディオコッカスイノピナタスWIKIM27であることを特徴とする、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項5】
ペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を有効成分として含む退行性脳疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ルーゲーリック病(amyotrophic
lateral sclerosis)、クロイツフェルトヤコブ病(Creutzgeldt-Jacob disease)、脳卒中(stroke)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、神経炎症(neuroinflammation)、学習障害(learning disorder)、認知障害(cognitive impairment)及び記憶力損傷からなる群から選ばれる一つ以上である、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項7】
経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、血液内投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与からなる群から選ばれる投与経路で投与される、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項8】
ペディオコッカスイノピナタスを1×10CFU/ml~1×1012CFU/mlで含む、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項9】
退行性脳疾患を有する個体の運動失調症状を予防又は治療する、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項10】
前記ペディオコッカスイノピナタスは、受託番号KCCM12653Pとして寄託されたペディオコッカスイノピナタスWIKIM27であることを特徴とする、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項11】
ペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を含む、退行性脳疾患の予防又は改善用飼料添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を含む退行性脳疾患の予防、改善又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
退行性脳疾患は、加齢に伴って発生する退行性疾患の中でも脳で発生する疾患を意味する。退行性脳疾患は、主要症状と侵犯される脳部位を考慮して区分できるが、代表にはアルツハイマー病とパーキンソン病がある。退行性脳疾患は、老化による神経退化と、遺伝的、環境的要因によってタンパク質が凝集して神経細胞が死滅することに起因すると知られているが、まだ正確な原因は明らかになっていない。
【0003】
パーキンソン病(Parkinson’s disease)は、退行性脳疾患の中でも、有病率がアルツハイマー疾患に次ぐ2位である疾患であり、50歳以上の人口の約1%がこの疾患に悩んでいると報告されている。パーキンソン病は、振戦、硬直、行動緩慢及び姿勢異常症などを主な症状とする疾病であり、脳でドパミン(dopamine)という神経伝達物質が不足して生じる慢性疾患である。ドパミンは、脳の黒質という神経細胞で生成され、黒質の神経細胞は、脳の運動皮質及びその他様々な部位と複雑に連結されている。パーキンソン病は、黒質で基底核の機能を調節するために分泌される物質であるドパミンが不足して発病する。
【0004】
パーキンソン病の主要症状には、1)運動緩慢(bradykinesia)、2)安静時振戦(tremor-at-rest)、3)筋硬直(muscle rigidity)、4)姿勢反射の喪失(loss of postural reflexes)、5)前傾姿勢(flexed posture)、6)すくみ現象(freezing)などがある。
【0005】
現在パーキンソン病の治療法には、薬物治療法、手術治療法及び物理治療法などがあるが、薬物治療の場合、一般に脳で不足したドパミンを補充し、ドパミンの不足による神経伝達物質の不均衡を整えて神経細胞の破壊を予防又は遅延させようとする目的とその他うつ病などの症状を調節するための薬物が使用されている。例えば、パーキンソン病の薬物治療剤には、L-DOPAのようなドパミン代替薬物及びドパミン受容体に作用する薬物が使用されているが、これらの薬物は、死滅した神経細胞を再生させることが不可能なため、症状の調節を目的とするという点で限界があり、長期間投与すると、不随意的な運動(dyskinesia)、嘔吐などの深刻な副作用につながる。したがって、症状の改善とともに安全性の確保された神経保護効果がある薬物の開発が至急な実情である。
【0006】
特に、最近では、パーキンソン病を有する患者から誘発される腸内菌叢の変化がパーキンソン病の進行と病態生理学的に関連するとの報告があり、さらには、パーキンソン病動物モデルに糞便微生物移植(fecal microbiota transplantation,FMT)した結果、神経炎症調節作用によって神経保護効果を示すことが知られた(非特許文献1)。
【0007】
このような背景下で、近年、乳酸菌を用いたパーキンソン病の予防及び治療研究が行われているが、パーキンソン病の症状のうち、便泌以外の運動失調症状に直接に影響を与える乳酸菌については明らかになっていないところ、パーキンソン病による運動失調症状を改善又は治療できる乳酸菌の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
(非特許文献1)Xin Fang,Microbial treatment:the potential application for Parkinson’s disease,Neurological Sciences,2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を有効成分として含む退行性脳疾患の予防、改善又は治療用組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、退行性脳疾患に対する治療効能を有するプロバイオティクス菌株を見出そうと努力した結果、キムチから分離したペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)菌株が神経炎症を抑制させるだけでなく、パーキンソン病マウスモデルに前記ペディオコッカスイノピナタス菌株を直接投与した結果、マウスの運動失調症状が改善されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に係るペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)菌株は、好ましくはキムチ由来のペディオコッカスイノピナタス菌株であり、より好ましくは、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27(Pediococcus inopinatus WIKIM27)菌株であり、最も好ましくは、受託番号KCCM12653Pとして寄託されたペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株であるが、これに制限されるものではない。
【0012】
本発明のペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)菌株は、グラム陽性菌であり、好気的条件と嫌気的条件のいずれにおいても成長可能な通性嫌気性(facultative anaerobe)であり、胞子を形成しなく、運動性がなく、細胞は球菌の形態を取っている。
【0013】
本発明のペディオコッカスイノピナタス(Pediococcus inopinatus)菌株はプロバイオティックスであり、乳酸菌の一般的な整腸効果及び免疫増強効果を有する。ペディオコッカス属の乳酸菌が整腸効果及び免疫増強効果を有するということはよく知られている事実である。
【0014】
本発明において、‘プロバイオティクス(probiotics)’は、ヒトを含む動物の胃腸管内で宿主の腸内微生物環境を改善して宿主の健康に有益な影響を与える生きている微生物’との意味で理解される。プロバイオティクスは、プロバイオティック活性を有する生きている微生物であって、単一又は複合菌株形態でヒトや動物に乾燥した細胞形態又は発酵産物形態で給与される場合、宿主の腸内菌叢に有益な影響を及ぼすことができる。
【0015】
本発明の一具体例では、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を含む組成物を提供する。
【0016】
本発明に係る組成物に含まれるペディオコッカスイノピナタスは、生菌体又は死菌体として存在してもよく、また、乾燥又は凍結乾燥した形態で存在してもよい。様々な組成物内に含める適切な乳酸菌の形態及び製剤化方法は、当業者によく知られている。例えば、ペディオコッカスイノピナタスは、公知の液体培地又は固体培地で培養させて得た培養物であるか、前記菌株と追加の成分を共に培養して得た発酵物であるか、前記菌株を有機溶媒で抽出した抽出物、前記菌株の細胞膜を溶解させたり、破砕又は均質化処理した溶解物(又は、破砕物)などの形態で製剤化できるが、これに制限されるものではない。
【0017】
一具体例において、前記組成物は、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27(Pediococcus inopinatus WIKIM27;受託番号KCCM12653P)菌株を含む組成物であってよい。
【0018】
他の具体例において、前記組成物は、生菌又は死菌として存在するペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を含む組成物であってよい。
【0019】
さらに他の具体例において、前記組成物は、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の培養物、溶解物、発酵物又は抽出物を含む組成物であってよい。
【0020】
本発明は、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を含む整腸剤組成物を提供する。本発明に係る整腸剤組成物は、ヒトを含む動物の胃腸疾患の予防、治療、改善に用いることができ、好ましくは、前記動物は、ウシ、ウマ、ブタのような家畜を含む。前記‘胃腸疾患’としては、胃腸危害細菌感染及び炎症性腸疾患を全て含み、例えば、病原性微生物(大腸菌、サルモネラ、クロストリディウムなど)による感染性下痢、胃腸炎症、炎症性腸疾患、神経性腸炎症候群、小腸微生物過成長症、腸給餌性下痢などを含むが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る整腸剤組成物は経口で投与することが好ましい。投与量は、胃腸疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療又は予防目的などによって異なってよいが、一般に、成人を基準に1日に1千万匹から1千億匹を投与できる。
【0022】
本発明は、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を含む免疫増強用組成物を提供する。ペディオコッカス属の乳酸菌が整腸効果と免疫増強効果を有するということはよく知られている事実である。
【0023】
また、本発明は、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を有効成分として含む、記憶力改善、認知能力改善、筋力改善又は運動遂行能力改善用食品組成物を提供する。
【0024】
前記食品組成物において、ペディオコッカスイノピナタスは、上述した全ての内容をそのまま適用できる。
【0025】
一具体例において、前記組成物は、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27(Pediococcus inopinatus WIKIM27;受託番号KCCM12653P)菌株を含む組成物であってよい。
【0026】
他の具体例において、前記組成物は、生菌又は死菌として存在するペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を含む組成物であってよい。
【0027】
さらに他の具体例において、前記組成物は、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の培養物、溶解物、破砕物、発酵物又は抽出物を含む組成物であってよい。
【0028】
本発明において、“記憶力改善”及び“認知能力改善”は、身体的な疲労、睡眠不足、アルコール過多摂取、痴呆などによって脳の萎縮及び脳神経細胞の破壊が発生する時に起きる記憶力減退、記憶力障害又は認知能力減少を、脳細胞を損傷させる有害物質を調節して認知能力を維持したり、或いは脳の神経伝達物質を調節して、低下した認知能力を改善する効果を意味する。前記記憶力は、必要な情報を受け入れて脳中に保存し、必要時に取り出して使用する能力であり、認知能力は、物事を分別して認知できる能力をいう。
【0029】
本発明において、“筋力改善”及び“運動遂行能力改善”は、各種疾病、年齢によるホルモンの変化、肥満、酒、タバコなどによる筋力の弱化によって運動遂行能力が低下することを、エネルギー代謝を調節して運動遂行能力を向上させる効果を意味する。前記筋力は、ある抵抗(重さ、力)に対して筋肉が一度で最大に出し得る力であって、筋肉の能力、すなわち、筋肉や筋組織がただ一度で発揮できる最大の力をいい、運動遂行能力とは、このような筋力を用いて運動を行う能力を指す。
【0030】
本発明の組成物が食品組成物として用いられる場合、前記食品組成物は、健康機能食品又は調味料、飲料、バーなどの形態を含むことができる。また、前記菌株を有効成分として含む食品組成物は、発酵乳などの飲料を含むことができる。そこで、本発明は、ペディオコッカスイノピナタス又はその培養物からなる発酵用乳酸菌スターターを提供する。
【0031】
本発明の食品組成物は、前記有効成分の他にも、食品学的に適切で、生理学的に許容される補助剤を使用して製造されてよく、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤又は香味剤などを使用することができる。
【0032】
前記食品組成物は、投与のために、上記の有効成分に加えて、食品学的に許容可能な担体を1種以上含めて薬剤学的組成物として好ましく製剤化してよい。
【0033】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合してよい。また、所望又は必要な場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物として含まれてよい。適切な結合剤は、次に制限されないが、澱粉、ゼラチン、グルコース又はベータ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカント又はオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、次に制限されないが、澱粉、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液として製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適するものであって、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びそれら成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤として製剤化してもよい。
【0034】
本発明に係る食品組成物は、各種食品に添加できる。本発明の組成物を添加できる食品には、例えば、飲料類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0035】
本発明の食品組成物は、食品製造時に通常添加される成分を含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として、天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど])、及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合には、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種植物抽出液などをさらに含むことができる。
【0036】
また、本発明は、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を有効成分として含む退行性脳疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0037】
一具体例において、前記組成物は、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27(Pediococcus inopinatus WIKIM27;受託番号KCCM12653P)菌株を含む組成物であってよい。
【0038】
他の具体例において、前記組成物は、生菌又は死菌として存在するペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を含む組成物であってよい。
【0039】
さらに他の具体例において、前記組成物は、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の培養物、溶解物、破砕物、発酵物又は抽出物を含む組成物であってもよい。
【0040】
また、本発明は、治療上有効量のペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を、それを必要とする対象体に投与することを含む退行性脳疾患の治療方法を提供する。
【0041】
ここでいう“対象体”とは、治療、観察又は実験の対象である哺乳動物のことを指し、好ましくは、退行性脳疾患の予防及び/又は治療を必要とするヒト又は動物であってよい。
【0042】
また、ここでいう“退行性脳疾患”とは、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ルーゲーリック病(amyotrophic lateral sclerosis)、クロイツフェルトヤコブ病(Creutzgeldt-Jacob disease)、脳卒中(stroke)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、神経炎症(neuroinflammation)、学習障害(learning disorder)、認知障害(cognitive impairment)及び記憶力損傷からなる群から選ばれる一つ以上の疾患であってよいが、これに制限されるものではない。
【0043】
一具体例において、前記退行性脳疾患は、パーキンソン病であってよい。
【0044】
下記の実施例では、ペディオコッカスイノピナタス菌株の処理によって神経炎症が抑制されることを確認した。また、パーキンソン病マウスモデルにペディオコッカスイノピナタス菌株を直接投与した後にロータロッド評価と握力評価を行った結果、陰性対照群(PBS摂取群)に比べて回転装置上での均衡保持能力と握力が高いことが確認できた。すなわち、本発明は、前記ペディオコッカスイノピナタス菌株を用いてパーキンソン病マウスモデルの運動失調症状が改善されることを確認することにより、パーキンソン病を含めて退行性脳疾患の治療に利用できることを確認した。
【0045】
神経炎症(neuroinflammation)は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ルーゲーリック病(amyotrophic lateral sclerosis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)などの様々な退行性脳疾患の原因になる。神経炎症が退行性脳疾患の発病と関連があることは、複数の文献(Mol Med Rep.2016 Apr,13(4):3391-3396;J Immunol Res.2018 Apr16,2018:4784268;Transl Neurodegener.2015,4:19など)でよく知られており、退行性脳疾患の治療のために神経炎症調節物質を使用する技術も公知の技術に該当する。
【0046】
本発明に係る薬学組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、又は胸骨内などの経路を通じて通常の方式で投与できる。
【0047】
本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。本発明において、用語“薬学的に許容可能な担体”とは、生物体をあまり刺激しなく、投与成分の生物学的活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤を意味する。本発明における薬学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びそれらの成分の1成分又は1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液及び静菌剤などの他の通常の添加剤を添加し、組織又は臓器に注入するに適した注射剤の形態に剤形化できる。また、等張性滅菌溶液、又は場合によって滅菌水又は生理食塩水を添加して注射可能な溶液とし得る乾燥製剤(特に、凍結乾燥製剤)として剤形化してもよい。また、標的器官に特異的に作用可能となるように、標的器官特異的抗体又はその他リガンドを前記担体と結合して使用してもよい。当該技術の分野に知られた適切な製剤は、文献(Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PA)に開示のものを使用することができる。
【0048】
また、好ましくは、本発明の組成物は、充填剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤などをさらに含むことができる。また、本発明の組成物は、哺乳動物に投与されて活性成分の迅速、持続又は遅延された放出を提供できるように、当業界に公知の方法を用いて剤形化できる。
【0049】
本発明において、“投与”とは、ある適切な方法で患者に本発明の組成物を導入させることを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口又は非経口の様々な経路で投与できる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、血液内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与できるが、これに制限されない。
【0050】
例えば、本発明の組成物は、臨床投与時に、筋肉静脈、又は腹腔注射によって投与できる。
【0051】
注射のために、好ましくは、ハンクス(Hank)溶液、リンガー(Ringer)溶液、又は生理食塩水バッファーのような薬理学的に合うバッファーとして剤形化されてもよい。粘膜透過投与のために、通過するバリアーに適する非浸透性剤が剤形に用いられる。これらの非浸透性剤は、当業界に一般に公知されている。
【0052】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてよい。
【0053】
本明細書において、“有効量”とは、目的とする治療されるべき特定疾患の発病又は進行を遅延したり或いは全的に中止させるために必要な量を意味し、本発明の薬学組成物に含まれるペディオコッカスイノピナタスWIKIM27の有効量は、退行性脳疾患の予防又は治療効果を得るために要求される量を意味する。したがって、前記有効量は、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれている他の成分の種類及び含有量、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路、治療期間、同時使用される薬物をはじめとする様々な因子によって調節されてよい。適切な総1日使用量は、正確な医学的判断範囲内で処置医によって決定されてよいということは当業者には明らかである。
【0054】
本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって、他の製剤の使用の有無をはじめとする具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか或いは同時使用される薬物をはじめとする様々な因子と医薬分野によく知られた類似因子によって個別に適用することが好ましい。
【0055】
本明細書において、“治療”とは、有益な又は好適な臨床的結果を得るための接近を意味する。本発明の目的のために、有益な又は好適な臨床的結果は、検出可能であれ検出不可能であれ、非制限的に、症状の緩和、疾病範囲の減少、疾病状態の安静化(すなわち、悪化しないこと)、疾病進行の遅延又は緩除化、疾病状態の改善又は一時的緩和、及び寛解(部分的又は全体的に)を含む。また、“治療”は、治療を受けない場合に予想される生存率と比較して、生存を延長することを意味してもよい。“治療”は、治療学的治療及び予防的又は予防措置方法の全てを意味する。これらの治療は、予防される障害の他に既に発生した障害において要求される治療も含む。疾病を“緩和”することは、治療をしない場合と比較して、疾病状態の範囲及び/又は好ましくない臨床的徴候が減少したり及び/又は進行の時間的推移(time course)が遅延又は延長されることを意味する。
【0056】
また、本発明は、ペディオコッカスイノピナタス、その培養物、その溶解物、その破砕物、その発酵物又はその抽出物を有効成分として含む飼料添加剤又は飼料を提供する。
【0057】
飼料添加剤として用いられる場合、前記組成物は、20~90%の高濃縮液であるか或いは粉末又は顆粒形態で製造されてよい。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸、又はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩、又はポリフェノール、カテキン、アルファ-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のいずれか一つ又は一つ以上をさらに含むことができる。飼料として用いられる場合、前記組成物は、通常の飼料形態で製剤化でき、通常の飼料成分を共に含むことができる。
【0058】
前記飼料添加剤及び飼料は、穀物、例えば、粉砕又は破砕した小麦、燕麦、麦、トウモロコシ及びコメ;植物性タンパク質飼料、例えば、油菜、豆、及びひまわりを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば、血粉、肉粉、骨粉及び魚粉;糖分及び乳製品、例えば、各種粉乳及び乳漿粉末からなる乾燥成分などをさらに含むことができ、その他にも、栄養補充剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0059】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与したり、或いは食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与することができる。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして、又は動物飼料との直接混合により、又は飼料とは別個の経口剤形として容易に動物に投与できる。前記飼料添加剤を動物飼料とは別個に投与する場合、当該技術分野によく知られているように、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、即時放出又は徐放性の剤形として製造できる。このような食用担体は、固体又は液体、例えば、トウモロコシ澱粉、ラクトース、スクロース、豆フレーク、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油及びプロピレングリコールであってよい。固体担体が使用される場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤又は含糖錠剤又は未分散性形態のトップドレッシングであってよい。液体担体が使用される場合、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、シロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤、又は溶液剤の剤形であってよい。
【0060】
また、前記飼料添加剤及び飼料は、補助剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、又は溶液促進剤などを含有できる。前記飼料添加剤は、浸酒、噴霧又は混合して動物の飼料に添加して使用することができる。
【0061】
本発明の飼料又は飼料添加剤は、哺乳類、家禽及び魚類を含む種々の動物食餌に適用することができる。
【0062】
前記哺乳類として、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、実験用齧歯動物、及び実験用齧歯動物の他に、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)などにも使用でき、前記家禽類として、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、キジ、及びウズラなどにも使用でき、前記魚類としてマスなどに使用できるが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明の飼料又は飼料添加剤は動物食餌に適用され、動物の成長、免疫強化などのために用いられてよい。
【0064】
また、本発明の飼料又は飼料添加剤は、動物の記憶力改善、認知能力改善、筋力改善又は運動遂行能力改善や退行性脳疾患の予防、改善又は治療用途に用いることができる。
【0065】
本発明に係る組成物に含まれるペディオコッカスイノピナタス菌株の量は、1回を基準に約10~1012cfu/mlでよく、例えば、10~1011cfu/ml、10~1010cfu/mlでよい。菌株を投与する場合には、生菌状態で投与することが好ましく、摂取前に死滅又は減衰(attenuation)の状態で投与できる。また、培養上澄液などを用いて製造する場合には、熱処理過程による滅菌化過程をさらに含むことができる。最小の効能を有するのに必要な菌株量及び一日摂取程度は、摂取者の身体又は健康状態によって異なってよいが、一般に、約10~1012cfu/mlでよく、例えば、10~1011cfu/ml、10~1010cfu/mlでよい。
【0066】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照して明確になるであろう。ただし、本発明は、以下に開示の実施例に限定されるものではなく、様々な他の形態で具現されてもよく、本実施例は、単に本発明の開示を完全にさせ、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範ちゅうのみによって定義される。
【発明の効果】
【0067】
本発明に係るペディオコッカスイノピナタス菌株は、神経炎症抑制効果だけでなく、パーキンソン病動物モデルで運動失調症状を改善させることができるので、パーキンソン病を含む様々な退行性脳疾患の予防、改善及び治療用途に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明のペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の神経炎症抑制効果を確認するための実験過程を示す図である。
図2】LPSにより炎症の誘発された神経膠細胞に本発明のペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の培養液を処理した結果を免疫蛍光染色で観察したものである。
図3】LPSにより炎症の誘発された神経膠細胞に本発明のペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の培養液を処理した結果を示すグラフである。
図4】パーキンソン病マウスモデルに本発明のペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を経口投与した後、ロータロッド(Rotarod)を用いてマウスの運動能力を評価した結果である。
図5】パーキンソン病マウスモデルに本発明のペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を経口投与した後、マウスの握力強度を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明する。下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲は下記実施例に限定されない。
【0070】
[実施例]
実施例1:ペディオコッカスイノピナタス菌株の準備
キムチから由来し、韓国微生物保存センターに受託番号KCCM12653Pとして受託されたペディオコッカスイノピナタスWIKIM27(Pediococcus inopinatus WIKIM27)菌株を実験に使用した。ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株は、MRS培地で30℃、24時間培養した後、菌体を8,000rpmで5分間遠心分離し、PBSで洗浄して、残っている培地成分を除去した。これをさらにDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Hyclone、米国)培地に1×10CFU/mL菌数で接種し、30℃、24時間培養した後、8,000rpmで5分間遠心分離して菌体を除去し、上澄液のpHを7.2に補正した後、シリンジフィルター(0.22νm孔径)を用いて濾過して使用した。
【0071】
実施例2:神経膠細胞の一次培養
生後2日のSprague-Dawleyラットの頭皮をアルコールで消毒した後、損傷無しで迅速に大脳を摘出した。摘出した大脳を冷たいHBSS(Hank’s Balanced Salt Solution)溶液に浸し、解剖顕微鏡下で大脳皮質だけを分離した後、パスツールピペットを用いて単一細胞懸濁液とした後、10日間培養した。神経膠細胞の培養のために、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum,Hyclone、米国)、10%ウマ血清(horse serum,Hyclone、米国)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin,Gibco、米国)を含むDMEM培地を使用し、5%COを含む培養器で37℃条件で培養した。
【0072】
実施例3:ペディオコッカスイノピナタス菌株の神経炎症抑制効果確認
前記実施例1で準備したペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株の神経炎症抑制効果を確認するために、LPS(lipopolysaccharide)で神経膠細胞炎症を誘発した後、WIKIM27の培養液で処理した。神経膠細胞を24ウェル(24-well)プレートに1.0×10細胞数/ml濃度で分注した後、24時間後に無血清培地に取り替え、その16時間後に、LPSを100ng/ml濃度で処理し、LPS処理2時間後に、WIKIM27培養液を神経膠細胞培地の1/5体積となるように処理した。この実験の実験過程を図1に図式化した。このとき、対照群としては、ワイセラサイバリアWIKIM28(Weissella cibaria WIKIM28;受託番号KFCC11625P)菌株及びラクトバチルスサケイWIKIM30(Lactobacillus sakei WIKIM30;受託番号KFCC11618P)菌株を使用した。
【0073】
図2及び図3に示すように、WIKIM27処理群(W27_CM)の場合、LPSで神経炎症を誘発するにもかかわらず、神経膠細胞(微細膠細胞及び星状細胞)活性が有意に減少することを免疫染色化学法で確認した。このとき、選択的標識子としては、微細膠細胞及び星状細胞のそれぞれにIba-1(ionized calcium-binding adapter molecule 1)とGFAP(Glial fibrillary acidic protein)を使用した。すなわち、前記結果から、WIKIM27菌株培養液により神経炎症が緩和されることを確認した。
【0074】
実施例4:ペディオコッカスイノピナタス菌株の準備及び投与
ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株は、MRS培地で30℃、24時間培養した後、菌体を8,000rpmで5分間遠心分離し、PBSで洗浄して、残っている培地成分を除去した。PBSを用いて1×1010CFU/mL菌数に定量し、0.2ml(1×10CFU)ずつゾンデを用いて実験動物に週5回経口投与し、陰性及び陽性対照群には滅菌PBSを投与した。
【0075】
実施例5:動物モデルにおいてペディオコッカスイノピナタス菌株の処理によるパーキンソン病予防及び治療効能確認
前記実施例1で準備したペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株のパーキンソン病に対する治療効能を確認するために、パーキンソン病マウスモデルにロータロッド評価(rota-rod test)と握力評価(grip strength test)を行った。このとき、パーキンソン病マウスモデルは、8週齢の雄マウス(C57BL/6)を1週間飼育室に適応させ、30日間ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を経口投与した後、MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)を腹腔内注射(30mg/kg、1日1回で5日間)してパーキンソン病を誘発した。以下、実験において、ナイブ(Naive)は無処理群を、MPTPは陰性対照群を、セレギリン(Selegiline)は陽性対照群を示し、セレギリンは神経保護物質であるMAO-B抑制剤であり、MPTP注射3日前に経口投与(3mg/kg)した。
【0076】
1)ロータロッド評価
ロータロッド評価は、ベースプラットホームと表面が滑らかでない回転棒とで構成されたロータロッド上で、マウスモデルが回転ドラム上で均衡を保つ期間を測定して行った。マウスモデルを装置に適応させるために、マウスモデルを4rpmの速度で2分間訓練させた後、30分後に評価を行った。評価は、4rpmの速度から始まって最高40rpmの速度になるまで8秒当たりに1rpmずつ加速パラダイムを適用し、その後の回転速力は、最大で300秒間40rpmに一定に維持させた。
【0077】
その結果(図4)、PBSを処理した陰性対照群では、平均で7.7rpmの速度まで均衡を保ち、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を経口投与した実験群では、平均で10.6rpmまで均衡を保つことが確認できた。
【0078】
2)握力評価
握力評価は、マウスモデルの前足の握力を握力測定機(grip strength meter)で測定して行った。マウスモデルの前足の握力を5回ずつ総3回にわたって測定し、そのうち、最も高い数値3個の平均値で当該マウスモデルの握力を表示した。
【0079】
その結果(図5)、陰性対照群の前足の握力が77.78gramであるのに対し、ペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を摂取した実験群では85.79gramと、陰性対照群に比べて非常に高い握力を有することが確認された。
【0080】
すなわち、パーキンソン病疾患マウスモデルにペディオコッカスイノピナタスWIKIM27菌株を摂取させることによって、ロータロッド及び握力評価の両方とも、陰性対照群に比べて高い結果を示し、パーキンソン病疾患マウスモデルの運動失調症状が有意(P<0.05)に改善されることが確認できた。
【受託番号】
【0081】
KCCM12653P
【その他】
【0082】
図1
図2
図3
図4
図5