(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】異物摘出器具
(51)【国際特許分類】
A61F 11/00 20220101AFI20230116BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20230116BHJP
A61B 17/24 20060101ALI20230116BHJP
A61B 17/50 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
A61F11/00 350
A47K7/00 106
A47K7/00 104
A61B17/24
A61B17/50
(21)【出願番号】P 2022124821
(22)【出願日】2022-08-04
【審査請求日】2022-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503422848
【氏名又は名称】和田 秀毅
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀毅
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-036892(JP,U)
【文献】登録実用新案第3137475(JP,U)
【文献】特開2019-071945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00
A47K 7/00
A61B 17/24
A61B 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から体内に侵入した異物を取り出すことが可能な器具であって、
吸引装置に接続可能な中空の管状部材と、
前記管状部材の先端に取り付けられた吸着部材と
を備え、
前記吸着部材は、管状部材側よりも前記異物が吸着する大径側端部の方が、外径が大きくなる形状であるとともに、タイプAディユロメータで測定した硬さが約35以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約60以下の素材から構成され、
前記異物が前記吸着口に吸着する際に前記吸着部材の変形により前記異物を吸着する気体の陰圧を高めるように構成されている、
異物摘出器具。
【請求項2】
前記吸着部材は、
少なくとも内側表面が円錐台の表面形状を有し、
前記
円錐台部の小径側端部には前記管状部材が接続されている、請求項1に記載の異物摘出器具。
【請求項3】
前記吸着部材は、タイプAディユロメータで測定した硬さが約20以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約45以下の素材で構成されている、請求項1に記載の異物摘出器具。
【請求項4】
前記吸着部材は天然ゴムあるいはシリコーンゴムで構成されている、請求項1に記載の異物摘出器具。
【請求項5】
外耳道、咽喉頭、鼻腔内部のいずれかに存在している前記異物を取出する、請求項1に記載の異物摘出器具。
【請求項6】
請求項1に記載の異物摘出器具と吸引装置とを備えた、異物摘出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物摘出器具に関し、特に、異物を吸着して狭小空間から取り出すための器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の外耳道に溜まった耳垢を取り出す器具として耳かきの他に、吸引により吸い取るものがあり、例えば、特許文献1には、円筒形のノズルを外耳道内に挿入して耳垢を吸引する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示の装置では、耳垢などは吸い出すことはできるが小石やビー玉等の異物を吸い出すことは困難であった。
【0005】
本発明は、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間から異物を簡単かつより確実に取り出すことができる異物摘出器具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の項目を提供する。
【0007】
(項目1)
異物を取り出すための器具であって、
吸引装置に接続可能な中空の管状部材と、
前記管状部材の先端に取り付けられた吸着部材と
を備え、
前記吸着部材は、前記異物を気体の陰圧により吸着する吸着口を有する、異物摘出器具。
【0008】
(項目2)
前記吸着部材は、略円錐台の表面形状を有し、
前記略円錐台部の小径側端部には前記管状部材が接続されている、項目1に記載の異物摘出器具。
【0009】
(項目3)
前記吸着部材は、前記異物の表面形状に沿って変形する程度の柔らかい材料で構成されている、項目1または2に記載の異物摘出器具。
【0010】
(項目4)
前記吸着部材は、タイプAディユロメータで測定した硬さが約50以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約75以下の素材で構成されている、項目3に記載の異物摘出器具。
【0011】
(項目5)
前記吸着部材は、タイプAディユロメータで測定した硬さが約35以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約60以下の素材で構成されている、項目4に記載の異物摘出器具。
【0012】
(項目6)
前記吸着部材は、タイプAディユロメータで測定した硬さが約20以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約45以下の素材で構成されている、項目4に記載の異物摘出器具。
【0013】
(項目7)
前記吸着部材は天然ゴムあるいはシリコーンゴムで構成されている、項目1に記載の異物摘出器具。
【0014】
(項目8)
前記管状部材の内径は、前記異物が通過不能な大きさである、項目1に記載の異物摘出器具。
【0015】
(項目9)
外耳道、咽喉頭、鼻腔内部のいずれかに存在している前記異物を取出する、項目1に記載の異物摘出器具。
【0016】
(項目10)
項目1に記載の異物摘出器具と吸引装置とを備えた、異物摘出装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間から異物を簡単かつより確実に取り出すことができる異物摘出器具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1による異物摘出器具100を示す図であり、異物摘出器具100の斜視図、吸着部材120の拡大図、および吸着部材120の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す異物摘出器具100を吸引装置10に接続した状態(異物摘出装置)を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す異物摘出器具100を用いて狭小空間(例えば外耳道などの管腔L)に存在する異物(例えば小石)を取り出す方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0020】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0021】
本明細書において、「異物」とは、小石、ビー玉、御餅、飴玉など体内に外部から侵入したもののことをいう。
【0022】
本発明は、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間から異物を簡単かつより確実に取り出すことができる異物摘出器具を得ることを課題とし、
異物を取り出すための異物摘出器具であって、
吸引装置に接続可能な中空の管状部材と、
管状部材の先端に取り付けられた吸着部材と
を備え、
吸着部材は、異物を気体の陰圧により吸着する吸着口を有する、異物摘出器具を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0023】
従って、本発明の異物摘出器具は、狭小空間に存在する異物を取り出すための器具であって、吸着口を有する吸着部材が管状部材の一端に取り付けられ、この吸着口で気体の陰圧により異物を吸着するものであれば、その他の構成は特に限定されるものではない。
【0024】
(管腔部材)
例えば、管状部材は、中空の管材(つまり、筒体)であれば、管材断面は任意の形状でありえる。例えば、丸断面パイプ部材でも角断面パイプ部材でもよい。管状部材の形状は、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間に挿入可能なものであれば特に限定されるものではく、例えば、1つの実施形態では、管状部材は、内径が3mm~7mmである略円形のリング状断面形状を有する。なお、ヒトの外耳道の断面形状はやや楕円であり、縦長径が約10mm、横短径が約8mmであるため、管状部材の断面形状は、略楕円系のリング状断面形状とすることも可能である。
【0025】
また、管状部材の材質もステンレス、鉄などの金属材料、あるいは、アクリル、塩化ビニールなどの樹脂材料といった硬質のものでもよいし、逆に、柔らかいゴムなどの軟質のものでもよい。
【0026】
(吸着部材)
吸着部材は、異物を気体の陰圧により吸着する吸着口を有するものであれば、その他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0027】
例えば、吸着部材は、概ねカップ形状を有し、底側から開口端に近づくほど外径が大きくなった形状となっている。具体的には、1つの実施形態では、吸着部材は、略円錐台形状、略お椀型形状、略コーン形状、あるいはラッパ先端部の形状を採用し得るものであり、このような形状の周壁の先端開口部を吸着口としたものである。なお、吸着部材は、平板状の壁面に開口部を吸着口として形成したものでもよいが、吸着部材は、略円錐台形状を有することが好ましい。この場合、吸着部材の小径側端部に管状部材を接続し、吸着部材の大径側端部を吸着口とすることで、異物摘出器具として、管状部材の内径よりも大きな吸着口を有するものを簡単な構造で実現できる。
【0028】
また、吸着部材の材質は、柔軟性を有するものであれば任意の材質であり得る。柔軟性のある材質のものとしては、アクリル、塩化ビニールなどの樹脂材料、あるいは天然ゴム、シリコーンゴムなどのゴム部材がとり得る。なお、吸着部材は、異物の表面形状に沿って変形する程度の柔らかい材料で構成されていることが好ましい。このような構成とすることで、吸着部材が異物の表面形状に沿って変形することで、異物を吸着部材に吸着させる気体の陰圧を高めることができる。その結果、異物を確実に吸着部材でキャッチし、取出することが可能となる。
【0029】
特に、吸着部材は、タイプAディユロメータで測定した硬さが約50以下またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約75以下である。好ましくはタイプAディユロメータで測定した硬さが約35以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さが約60以下である。さらに好ましくは、タイプAディユロメータで測定した硬さが約20以下、またはタイプCデュロメータで測定した硬さ約45以下の素材で構成されている。
【0030】
吸着部材が、その形態を維持出来る範囲において、柔らかいほど、吸着部材が異物の表面形状に沿って変形しやすくなり、その結果、吸着部材の吸着口での吸着部材と異物との密着度を高めることが可能となる。
【0031】
なお、吸着部材に用いられる軟質の材料としては、例えば、天然ゴム、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリイソプレン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリイソブチレン、イソブチレンイソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、及びシリコーンゴム等を用いることができ、好ましくは天然ゴムである。
【0032】
ただし、以下の実施形態では、異物摘出器具100として、吸着部材が、異物の表面形状に沿って変形する程度の柔らかい材料で構成されているものを説明する。
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による異物摘出器具100を示す図であり、
図1(a)は異物摘出器具100の外観を示す斜視図、
図1(b)は、吸着部材120を
図1(a)のA方向から見た斜視図、
図1(c)は、
図1(b)のB-B線断面図である。
【0035】
図1に示す異物摘出器具100は、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭い通気管腔(狭小空間)に存在する異物を取り出すための器具である。
【0036】
この異物摘出器具100は、吸引装置100の先端に接続される中空の管状部材110と、管状部材110の一端(先端)に取り付けられた吸着部材120とを備え、吸着部材120は、異物K(
図3参照)を気体の陰圧により吸着する吸着口121を有しており、管状部材110の中空部分は通気路111となっている。ここで、陰圧を発生する気体は空気であり、管状部材110の他端には、大気圧を減圧して陰圧を発生させる吸引装置10(
図2参照)からの吸引管12(
図2参照)を接続するジョイント部材130が取り付けられている。気体は空気以外の気体、例えば、酸素などであってもよい。
【0037】
吸着部材120は、略円錐台の表面形状を有し、吸着部材120の小径側端の開口は、管状部材110との接続口122となっており、吸着部材120の大径側端の開口は、異物Kを吸着する吸着口121となっている。ここで、吸着部材120は、異物の表面形状に沿って変形する程度の柔らかい材料で構成されている。
【0038】
1つの実施形態おいて、吸着部材120は、柔らかいシリコーンゴムの素材で構成されており、タイプAディユロメータで測定した硬さが約35以下の素材であって、さらに、タイプCデュロメータで測定した硬さが約60以下の素材で構成されている。
【0039】
また、管状部材の内径の大きさは、異物Kが通過不能な大きさとなっている。
【0040】
次に
図1に示す異物摘出器具100を用いて管腔L内に溜まっている異物K、ここでは耳の外耳道に溜まっている小石を取り出す場合を説明する。
【0041】
図2は、
図1に示す異物摘出器具100をエアー吸引装置10に接続した状態(異物摘出装置)を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図1に示す異物摘出器具100を用いて管腔(ここでは外耳道)に存在する異物(ここでは小石、ビー玉、おもちなど)Kを取り出す方法を示す斜視図であり、
図3(a)は、異物摘出器具100の吸着部材120を管腔L内に挿入して異物Kに接近させた状態を示し、
図3(b)は、異物摘出器具100の吸着部材120の吸着口121に異物が吸着された状態を示す。
【0042】
まず、
図2に示すように、異物摘出器具100のジョイント部材130にエアー吸引装置10の吸引口11を、連結ホース12を介して接続し、異物摘出器具100の吸着部材120の吸着口121から空気Arが吸い込まれるように、異物摘出器具100の通気路110内の空気をエアー吸引装置10で吸引する。
【0043】
これにより、異物摘出器具100では、管状部材110の先端に取り付けられている吸着部材120の吸着口121に空気Aが流入する空気流の流れが生じる。
【0044】
この状態で、異物摘出器具100の吸着部材120を
図3(a)に示すように管腔L内に挿入して吸着口121を異物Kに接近させると、
図3(b)に示すように、管腔L内に存在している異物Kが吸着口121に吸い寄せられて吸着口121に吸着する。
【0045】
これにより吸着口121が異物Kにより塞がれると、管状部材110の内部の通気路111内で陰圧が発生することにより吸着部材120が異物Kの表面形状に沿って変形して異物Kに密着する。その結果、異物Kは空気の陰圧により吸着部材120に強固に吸着される。
【0046】
このように異物Kが異物摘出器具100の吸着部材120に吸着された状態で、異物摘出器具100を管腔Lから引き出すことにより、異物Kが管腔L内から取り出される。
【0047】
このように、本実施形態では、狭小空間に存在する異物Kを取り出すための異物摘出器具100において、中空の管状部材110と、管状部材110の一端に取り付けられた吸着部材120とを備え、吸着部材120は、異物Kを気体の陰圧により吸着する吸着口121を含む構造としたので、狭小空間内でそこに存在する異物Kを異物摘出器具100の吸着部材120に吸着可能となり、このため、このような吸着状態で異物Kを狭小空間から引き出すことが可能となる。その結果、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間から異物を簡単かつより確実に取り出すことができる異物摘出器具を得ることができる。
【0048】
なお、本発明の異物摘出器具は、異物だけではなく、耳垢などの摘出にもりようできるものである。
【0049】
また、この実施形態の異物摘出器具100では、吸着部材120を、異物の表面形状に沿って変形する程度の柔らかい材料で構成しているので、吸着部材120の吸着口121での吸着部材120と異物Kとの密着度を高めて、吸着部材120で吸着した異物Kをより確実に管腔Lから取り出すことができる。
【0050】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の異物摘出器具は、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間から異物を簡単かつより確実に取り出すことができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 吸引装置
11 吸引口
100 異物摘出器具
110 管状部材
111 通気路
120 吸着部材
121 吸着口
122 接続口
130 ジョイント部材
K 異物
L 管腔
【要約】
【課題】本発明の課題は、外耳道、咽喉頭、鼻腔などの狭小空間から異物を簡単かつより確実に取り出すことができる異物摘出器具を得ることである。
【解決手段】本発明は、異物Kを取り出すための異物摘出器具100であって、吸引装置に接続可能な中空の管状部材110と、管状部材110の一端に取り付けられた吸着部材120とを備え、吸着部材120は、異物Kを気体の陰圧により吸着する吸着口121を有するものである。ここで、吸着部材121は、略円錐台形の表面を有し、吸着部材120の小径側端部には管状部材110が接続されており、吸着部材120の大径側端部は吸着口121となっている。
【選択図】
図1