(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】分娩検出システムおよび分娩報知方法
(51)【国際特許分類】
A61D 1/08 20060101AFI20230117BHJP
A01K 67/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61D1/08 A
A01K67/00 Z
(21)【出願番号】P 2018221465
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2017227620
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】398000288
【氏名又は名称】株式会社むつ家電特機
(73)【特許権者】
【識別番号】519076794
【氏名又は名称】有限会社小比類巻家畜診療サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【氏名又は名称】西原 広徳
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大志
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】平泉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】杉山 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 暢
(72)【発明者】
【氏名】杉山 秀史
(72)【発明者】
【氏名】小比類巻 正幸
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-058985(JP,A)
【文献】特開2005-110880(JP,A)
【文献】特開昭49-115874(JP,A)
【文献】米国特許第04028687(US,A)
【文献】国際公開第2016/117199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61D 1/00 - 99/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の膣内に挿入される検出装置と、
前記検出装置からの情報を受信して報知する報知装置とを備え、
前記検出装置は、
挿入先端側に位置し、内部に空間が形成されており、大気中で前記動物の膣内の内径よりも大きく、かつ、前記膣内に挿入されて前記膣から押圧力を受けると当該膣内に収まるように変形する圧力変形部と、
挿入後端側に位置し、前記圧力変形部よりも縮径した本体部と、
前記圧力変形部と前記本体部の間に位置し、前記本体部よりも縮径したくびれ部と、
前記圧力変形部内の気体の圧力を検出する圧力センサを有し、前記気体の圧力から前記圧力変形部が受けている前記押圧力を検出する押圧力検出部と、
前記押圧力検出部により検出した前記押圧力に基づく前記情報を送信する送信部とを備え、
前記検出装置または前記報知装置に、
前記押圧力に基づいて
、前記気体の圧力が予め定められた所定値以下、または、前記気体の圧力の変化量が一定以上であるか否かに応じて、分娩開始を報知するための分娩
開始情報の報知を行うか否か判定する判定部を備え、
前記報知装置は、
前記情報を受信する受信部と、
前記分娩
開始情報を報知する報知手段とを備えた
分娩検出システム。
【請求項2】
前記検出装置の挿入方向後端の中央には、動物の膣内に挿入する際に押圧するための押し込み孔が形成されている
請求項1記載の分娩検出システム。
【請求項3】
前記圧力変形部は、伸縮性のある素材により略風船状に形成された
請求項1
または2記載の分娩検出システム。
【請求項4】
前記判定部は、
前記押圧力検出部で検出する前記押圧力の変化が予め定められた所定条件を満たした場合に、分娩が始まったものと判定して前記分娩
開始情報
の報知を行うと判定する構成である
請求項1
、2、または3記載の分娩検出システム。
【請求項5】
前記判定部を前記検出装置に備え、
前記送信部は、動物の膣内に挿入され
、前記判定部にて分娩開始情報の報知を行うと判定されていない状態では情報を送信せず待機する待機状態であり、前記判定部にて分娩
開始情報の報知を行うと判定されたときに、情報を送信する情報送信状態となる
請求項1
から4のいずれか1つに記載の分娩検出システム。
【請求項6】
前記送信部は
920MHz帯の電波により無線通信を行う
請求項1
から5のいずれか1つに記載の分娩検出システム。
【請求項7】
前記送信部は
2.4GHz帯の電波により無線通信を行う
請求項1から5のいずれか1つに記載の分娩検出システム。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1つに記載の分娩検出システムを用いて、
妊娠している前記動物の前記膣内に前記検出装置を挿入しておき、
前記判定部により前記分娩
開始情報を報知すると判定した場合に、前記報知
手段により報知をして、分娩の介添えが必要であることを前記動物の育成者に報知する
分娩報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動物の分娩の開始を検出して報知するような分娩検出システムおよび分娩報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産や酪農等の様々な目的で、様々な動物が家畜として飼養されている。このように家畜として飼養される動物は、出産によるリスクを軽減することが望まれる。例えば、牛等の大型の動物の場合、出産時に胎児が正常に分娩されないことがあり、自然分娩に任せると胎子の死亡や母体の死亡等の出産事故が起こることがある。牛の場合であれば、出産による死亡率が5%、つまり20頭に1頭の割合で死亡している。そして、このような死亡は分娩時に生じるため、分娩時に飼養者が付き添って分娩介助をしている。
【0003】
このような分娩介助をするためには、出産時期に深夜におよぶ監視が必要となる。このような監視は、飼養者に対して精神的および肉体的に大きな負担を強いるものである。
【0004】
このような分娩に関するものとして、牛の分娩を予知する測温/送信モジュールが提案されている(特許文献1参照)。この測温/送信モジュールは、牛の膣内に挿入して膣内温度を測定し、破水や分娩で膣外に押し出されるように構成されている。
【0005】
しかしながら、この測温/送信モジュールには、温度計測に基づく判定であるが故の問題点があった。すなわち、牛の体内温度は安定していたとしても、外気温度は夏場と冬場、昼間と夜間で異なっているため、その温度差が広いときもあれば狭いときもある。従って、常に安定して判定するためには、温度測定の精度を高める必要があり、その結果コストがかかり装置価格も高くなるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑みて、安定して確実に分娩を検出して報知できる分娩検出システム、および分娩報知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、動物の膣内に挿入される検出装置と、前記検出装置からの情報を受信して報知する報知装置とを備え、前記検出装置は、挿入先端側に位置し、内部に空間が形成されており、大気中で前記動物の膣内の内径よりも大きく、かつ、前記膣内に挿入されて前記膣から押圧力を受けると当該膣内に収まるように変形する圧力変形部と、挿入後端側に位置し、前記圧力変形部よりも縮径した本体部と、前記圧力変形部と前記本体部の間に位置し、前記本体部よりも縮径したくびれ部と、前記圧力変形部内の気体の圧力を検出する圧力センサを有し、前記気体の圧力から前記圧力変形部が受けている前記押圧力を検出する押圧力検出部と、前記押圧力検出部により検出した前記押圧力に基づく前記情報を送信する送信部とを備え、前記検出装置または前記報知装置に、前記押圧力に基づいて、前記気体の圧力が予め定められた所定値以下、または、前記気体の圧力の変化量が一定以上であるか否かに応じて、分娩開始を報知するための分娩開始情報の報知を行うか否か判定する判定部を備え、前記報知装置は、前記情報を受信する受信部と、前記分娩開始情報を報知する報知手段とを備えた分娩検出システムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、安定して確実に分娩を検出して報知できる分娩検出システム、および分娩報知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る分娩検出システムの構成を示すブロック図。
【
図3】検出装置を牛に装着した状態を示す一部断面側面図
【
図4】検出装置の制御部が実行する動作を示すフローチャート。
【
図5】920MHzの電波の受信電波強度を時間軸に沿ってグラフ化して説明する説明図。
【
図6】2.4GHzの電波の受信電波強度を時間軸に沿ってグラフ化して説明する説明図。
【
図7】シリコーンゴムの硬度別に気圧変化量を示すグラフ。
【
図8】本発明の変形例に係る920MHzの電波の受信電波強度を時間軸に沿ってグラフ化して説明する説明図。
【
図11】同変形例に係る2.4GHzの電波の受信電波強度を時間軸に沿ってグラフ化して説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態を図面と共に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、分娩検出システム1の構成を示すブロック図である。
分娩検出システム1は、一台の管理装置3(報知装置)と、複数台の検出装置5が無線通信により通信可能に接続されて構成されている。
【0013】
管理装置3は、マイコン等で構成される制御部11と、音声またはビープ音等により報知をする報知部12(報知手段)と、液晶ディスプレイまたは7セグ表示器等で光栄される表示部13と、2.4GHz帯の電波等の適宜の電波を用いて無線通信を行う無線通信部14(受信部)と、各部に電力供給をする電源部15を備えている。
【0014】
制御部11は、登録されているプログラムに従って、情報記憶部25に記憶されている情報(データ)を用いて各種演算および動作制御を実行する。この制御部11は、無線通信部14により無線通信を行う検出端末5を通信対象として登録する処理を行う検出装置登録機能部21と、検出装置5から送信された信号を無線通信部14により受信する処理を行う信号受信機能部22と、受信した信号に基づいて分娩が開始したか否かを判定する判定機能部23と、分娩開始と判定された場合に分娩開始を報知部12により報知する報知機能部24、適宜の情報を記憶する情報記憶部25とを備えている。
【0015】
判定機能部23は、前記判定条件に基づく判定を実行する。すなわち、気圧変化量ΔPが所定量以上であれば、分娩開始確実情報(分娩開始情報)を報知部12により報知させる。
【0016】
検出装置5は、マイコン等で構成される制御部31と、2.4GHz帯または920MHz帯の電波等の適宜の電波を用いて無線通信を行う無線通信部32(送信部)と、気圧を検出する気圧検出部33と、電源のON/OFF状態等の適宜の状態を知らせるための発光部34と、各部に電力供給をする電源部35を備えている。
【0017】
制御部31は、登録されているプログラムに従って、各種演算および動作制御を実行する。この制御部31は、無線通信部32により無線通信を行う管理装置3を通信対象として登録する処理を行う管理装置登録機能部41と、気圧検出部33により後述する圧力変形部51(
図2参照)内の気圧を検出する気圧検出機能部42と、検出した信号から分娩関連情報の報知を行うか否か判定する判定機能部43と、検出した信号又は/及び分娩開始データなどの分娩関連情報を無線通信部32により管理装置3の無線通信部14へ送信する処理を行う情報送信機能部44とを備えている。
【0018】
図2は、検出装置5の外観構成を示す縦断面図である。
検出装置5は、全体が医療用シリコーンゴムで形成される外装部50により覆われている。外装部50は、挿入先端側の圧力変形部51と、挿入後端側の本体部53と、この圧力変形部51と本体部53の間のくびれ部52とを有している。ここで、本体部53は、くびれ部52と同じか、くびれ部52よりわずかに小さい形状に形成される。
【0019】
圧力変形部51は、挿入方向に長い(図示左右方向に長い)楕円形をしている。この圧力変形部51は、最も幅広となる押圧位置保持部51cと、この押圧位置保持部51cから湾曲しつつ挿入先端に向かって縮径していく挿入斜面部51bと、さらにその挿入先端にある挿入先端部51aとがなだらかに湾曲して続いている。
また、圧力変形部51の後方は、湾曲しつつ本体部53に向かって縮径していく根元傾斜部51bが設けられている。この根元傾斜部51bのさらに本体部53側は、くびれ部52に繋がっている。
【0020】
圧力変形部51は、内部に空間Eが形成されている。これにより、圧力変形部51に外部から圧力を加えると、圧力変形部51は、ある程度内部へ自由に変形することができる。なお、圧力変形部51は、挿入先端部51aから根元傾斜部51bまで肉厚一定に形成されているが、これに限らず押圧力により変形可能な適宜の肉厚に形成することができる。
【0021】
この圧力変形部51は、押圧位置保持部51cの大きさが、一般的な牛の膣の内径よりも少し大きく形成されている。すなわち、圧力変形部51は、大気中で牛の膣内の内径よりも大きく形成され、かつ、圧力変形部51の材料であるシリコーンゴムは、当該膣内に挿入されて当該膣から押圧力を受けると変形する柔らかさ(硬度)である。従って、圧力変形部51は、牛の膣内に挿入されると、当該膣内に収まるように変形する。これにより、牛の膣内に検出装置5を留置すると、牛の膣内によって押圧位置保持部51cが押圧されて変形するため、圧力センサ34aは、この押圧力を検知できる押圧力検出部としての役割を担う。
【0022】
くびれ部52および本体部53の内側には、筐体60が設けられている。
本体部53には、挿入方向後端の中央に押し込み孔54が形成されている。この押し込み孔54により、牛の膣内に検出装置5を挿入するときに、押し込み孔54に押し込みロッド30等の適宜の部材を当接させ、このまま押圧を継続することができる。
【0023】
筐体60は、内部に基板30が設けられており、挿入方向と垂直な幅方向の太さが細い第1筐体61と第2筐体62を備えている。
基板30は、各種電子素子が搭載されている。この基板30に接続される形で、圧力変形部51の空間Eに向けて配置された気圧センサ34aと、その横のLED照明34bが設けられている。また、本体部60には、電源のオン/オフを行う押下スイッチ35aが設けられている。
【0024】
図3は、検出装置5を、牛Cの子宮Bに繋がる産道の入り口付近を断面にした構成図である。図示するように、検出装置5は、牛の膣内に挿入される。
【0025】
図4は、検出装置5の制御部31が実行する動作を示すフローチャートである。
制御部31は、気圧検出部33により検出した気圧を読み込み(ステップS1)、前回に検出した気圧との差である気圧変化量ΔPを算出する(ステップS2)。
【0026】
制御部31は、気圧変化量ΔPが予め定められた所定値(この実施例では20hPa)より大きいという所定条件を満たさなければ(ステップS3:No)、ステップS1に処理を戻して繰り返す。ここでの所定条件は、例えば、気圧変化量ΔPが20hPa以上であることすることができる。このようにステップS1~S3を1分毎や10分毎などの所定時間間隔毎に繰り返すことで、常時分娩の有無を検出することができる。この判定を行うとき、制御部31は判定部として機能する。
【0027】
気圧変化量ΔPが予め定められた所定値(この実施例では20hPa)より大きいという所定条件を満たす場合(ステップS3:Yes)、制御部31は、無線通信部32により分娩が開始したことを知らせる分娩開始情報を電波により管理装置3へ送信し(ステップS4)、処理を終了する。このとき送信する情報は、分娩開始したことを知らせる内容と検出装置5を識別する識別情報(ID)を含む分娩開始情報とするなど、適宜の情報とすることができる。
【0028】
管理装置3は、この分娩開始情報を受信すると、その検出装置5を装着していた牛の分娩が開始したことを音声により報知する。これにより、分娩を控えた複数の牛のうちの報知された牛の分娩が開始したことを把握できる。
【0029】
なお、ステップS4を行う制御部31は、発光部34の発光や、図示省略する発音装置により音を発する等の動作を行っても良い。これにより、その場で分娩開始を知らせることができる。
【0030】
図5は、気圧検出部33が検出する気圧と、無線通信部32が送信した920MHzの電波を無線通信部14が受信したときの受信電波強度を時間軸に沿ってグラフ化して説明する説明図であり、
図5(A)は外装部50を硬度25°のシリコーンゴムにより形成した場合を示し、
図5(B)は外装部50を硬度30°のシリコーンゴムにより形成した場合を示し、
図5(C)は外装部50を硬度40°のシリコーンゴムにより形成した場合を示す。
【0031】
図5(A)~
図5(C)は、いずれも、検出装置5を大気中から牛の膣内に挿入し、再度牛の膣外に放出(取出)した一連の流れにおけるデータの変化を示しており、受信電波強度の値が低くなっているグラフ中央部分が膣内でのデータとなっている。
【0032】
気圧変化量ΔP(膣内時気圧と膣内から膣外へ排出時のピーク気圧の差)は、外装部50のシリコーンゴムが、硬度25°の場合は35hPaであり(
図5(A)参照)、硬度30°の場合は28hPaであり(
図5(B)参照)、硬度40°の場合は23hPaである(
図5(C)参照)。従って、上述したステップS3での判定基準は、気圧変化量ΔPが23hPa以上とすることができ、この実施例では20hPa以上としている。
【0033】
920MHzの受信電波強度は、外装部50のシリコーンゴムが、硬度25°の場合は59であり(
図5(A)参照)、硬度30°の場合は42であり(
図5(B)参照)、硬度40°の場合は50である(
図5(C)参照)。
【0034】
図6は、気圧検出部33が検出する気圧と、無線通信部32が送信した2.4GHzの電波を無線通信部14が受信したときの受信電波強度を時間軸に沿ってグラフ化して説明する説明図であり、
図6(A)は外装部50を硬度25°のシリコーンゴムにより形成した場合を示し、
図6(B)は外装部50を硬度30°のシリコーンゴムにより形成した場合を示し、
図6(C)は外装部50を硬度40°のシリコーンゴムにより形成した場合を示す。
【0035】
図6(A)~
図6(C)は、いずれも、検出装置5を大気中から牛の膣内に挿入し、再度牛の膣外に放出(取出)した一連の流れにおけるデータの変化を示しており、受信電波強度の値が低くなっているグラフ中央部分が膣内でのデータとなっている。
【0036】
気圧変化量ΔP(膣内時気圧と膣内から膣外へ排出時のピーク気圧の差)は、外装部50のシリコーンゴムが、硬度30°の場合は70hPaであり(
図6(B)参照)、硬度40°の場合は32hPaである(
図6(C)参照)。従って、上述したステップS3での判定基準は、気圧変化量ΔPが23hPa以上とすることができ、この実施例では20hPa以上としている。
【0037】
2.4GHzの受信電波強度は、外装部50のシリコーンゴムの強度に限らず、が、硬度25°の場合は110であり(
図6(A)参照)、硬度30°の場合は120であり(
図6(B)参照)、硬度40°の場合は123である(
図6(C)参照)。この
図6(A)~
図6(C)に示すように、2.4GHzの電波を使用した場合、牛の膣内に入ると電波が届かなくなる。また一般的に送信周波数が920MHzの無線モジュールよりも、2.4GHzの無線モジュールが省エネ、すなわち消費電力が少ない態様のものが多い。それ故、2.4GHzの電波を使用した場合は、より電池継続時間が長い。すなわち同図の態様をそのまま適用するか、或いは更に改良を加えることにより、省エネ型の検出装置5を実現或いは開発をすることができる。
図7(A)は、シリコーンゴムの硬度別に気圧変化量ΔPを示すグラフである。
【0038】
以上の構成および動作により、安定して確実に分娩を検出して報知できる分娩検出システム1、および分娩報知方法を提供することができる。
【0039】
圧力変形部51(外装部材50)は、伸縮性のある素材(シリコーンゴム)により略風船状に形成され、気圧検出機能部42は、前記圧力変形部内の気体の圧力を検出する圧力センサ34aにより形成されている。これにより、牛の膣内の圧力を適切に測定することができる。
【0040】
検出装置5は、気圧変化量ΔPが所定条件を満たすか否かによって判定する構成であるため、誤認識が少なく、精度よく分娩開始を報知することができる。
圧力変形部51は、押圧位置保持部51cの大きさが、一般的な牛の膣の内径よりも少し大きく形成されているため、分娩開始時の破水によって、検出装置5を確実に牛の膣外へ排出することができる。
【0041】
分娩開始の報知は、気圧変化量ΔPが所定量を超えたときに実行し、それまでは無線通信部32による無線通信を行わない構成であるため、電源部35を構成する電池(バッテリー)の消耗を抑制することができる。すなわち、ずっと無線通信を行っているとその間も電池を消耗するが、膣内にある間は無線通信を行わないために使用電力を減らして電池を長持ちさせることができる。特に、上述した
図6の如く2.4GHz帯の電波による無線通信を併せて適用すれば、更なる省電力化に資する。
【0042】
また、気圧変化量ΔPが所定量を超えたとき分娩開始の報知を実行するため、残っている十分な電力で確実に管理装置3へ分娩開始を伝達し、管理装置3から育成者などの周囲の者に分娩開始を報知することができる。
【0043】
尚、この発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
例えば、
図7(B)のグラフに示すように、無線通信に使う電波を920MHzなどの牛の膣内から外部への無線通信できる電波とし、常時信号を発信する構成とし、受信部である無線通信部14を、送信部である無線通信部32から受信する情報の信号強度を検出する構成とし、判定部(ステップS3を実行する制御部31)は、予め定められた所定値よりも前記信号強度が強くなった場合に、分娩が始まったものと判定して前記分娩関連情報を分娩開始情報とする構成とされてもよい。この場合、管理装置3は、無線通信部14で受信する電波の信号強度変化量が所定値以上となったか否かを確認し、所定値以上であれば、受信した分娩開始情報は適切であると判定するとよい。この場合、情報記憶部25には、信号強度変化量が所定値以上となれば分娩開始と判断するべく必要な情報を記憶すると良い。
これにより、動物の膣内か膣外かを信号強度によっても判定できるため、より適切に出産を検知することができる。
【0044】
また、判定部(ステップS3を実行する制御部31)は、気圧検出部33で検出する気圧が予め定められた所定値より低い(あるいは気圧変化量ΔPが所定値以上)という第1条件と、予め定められた所定値よりも信号強度が強い(あるいは信号強度変化量が所定値以上)という第2条件のうち、一方の条件を満たせば分娩が始まった可能性があると判定して前記分娩開始情報を分娩開始可能性あり情報とする構成であり、両方の条件を満たせば確実に分娩が始まったと判定して前記分娩開始情報を分娩開始確実情報とする構成とされてもよい。この場合、分娩開始情報の信ぴょう性を判定することができるため、誤報知による労力の発生を防止することができる。
【0045】
そして、送信部たる無線通信部32は、920MHz帯の電波により無線通信を行うときには、牛の膣内に検出装置5があるときであっても、管理装置3に電波が届くようになっている。
【0046】
また検出装置5は、主たる素材としてシリコーンゴムにより構成されたものであるので、硬度を種々変更しても、好適に本実施例に係る上述した効果を奏しうる。
【0047】
ここで、本実施例では、検出装置5は、膣内の内径よりも大きく、かつ、膣内に挿入されて膣から押圧力を受けると当該膣内に収まるように変形する圧力変形部51と、圧力変形部51が受けている押圧力を検出する押圧力検出部たる圧力センサ34aと、圧力センサ34aにより検出した押圧力に基づく情報を送信する送信部たる無線通信部32とを備え、判定部(ステップS3を実行する制御部31)は、押圧力に基づいて分娩に関連する分娩関連情報の報知を行うか否かを判定するようにしているので、更に高い検出精度を実現せしめている。
【0048】
特に本実施例では、上述の通り、膣内にある間は無線通信を行わないために使用電力を減らして電池を長持ちさせることができる。特に、上述した
図6の如く2.4GHz帯の電波による無線通信を併せて適用し、更なる省電力化を実現している。詳述すると、必要なとき以外は電波を発せずに省力化できるとともに、必要なときだけ2.4GHzの電波を発することで誤作動を防止することができる。すなわち、分娩以外の理由で検出装置5が牛の体外へ放出されたような場合、分娩を検知していないから2.4GHzの電波を発信しない。したがって、分娩以外の理由で検出装置5が牛の体外へ放出されてもこれを破水や分娩であると誤検知することを防止できる。
【0049】
<変形例>
以下に、本実施例の各変形例について
図8~
図10及び
図11を参照しつつ詳述する。当該変形例に関し、上記実施例の構成要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、詳細な説明を省略する。
【0050】
まず、
図8~
図10は、検出装置5を構成する主たる素材を上記実施例とは異なり、高伸縮ゴムライク樹脂としたものを例示している。これら
図8~
図10は、無線通信部32は、920MHz帯の電波により無線通信を行うため、牛の膣内に検出装置5があるときであっても、管理装置3に電波が届くものとなっている。なおこれら
図8~
図10に示す検出装置5の内部構造については上記実施例と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
図8は、同図(A)に検出装置5の形状を示している。同図(A)に示す検出装置5は、(外装部50の)主たる素材として高伸縮ゴムライク樹脂を用い、硬度を27°に設定している。
【0052】
そして、同図(B)は、検出装置5を大気中から牛の膣内に挿入し、再度牛の膣外に放出(取出)した一連の流れにおけるデータの変化を示しており、受信電波強度の値が低くなっているグラフ中央部分が膣内でのデータとなっている。気圧変化量ΔP(膣内時気圧と膣内から膣外へ排出時のピーク気圧の差)は、27hPaである。
【0053】
図9は、同図(A)に検出装置5の形状を示している。同図(A)に示す検出装置5は、(外装部50の)主たる素材として高伸縮ゴムライク樹脂を用い、硬度を50°に設定している。
【0054】
そして、同図(B)は、検出装置5を大気中から牛の膣内に挿入し、再度牛の膣外に放出(取出)した一連の流れにおけるデータの変化を示しており、受信電波強度の値が低くなっているグラフ中央部分が膣内でのデータとなっている。気圧変化量ΔP(膣内時気圧と膣内から膣外へ排出時のピーク気圧の差)は、8hPaである。
【0055】
図10は、同図(A)に検出装置5の形状を示している。同図(A)に示す検出装置5は、(外装部50の)主たる素材として高伸縮ゴムライク樹脂を用い、硬度を50°に設定している。
【0056】
そして、同図(B)は、検出装置5を大気中から牛の膣内に挿入し、再度牛の膣外に放出(取出)した一連の流れにおけるデータの変化を示しており、受信電波強度の値が低くなっているグラフ中央部分が膣内でのデータとなっている。気圧変化量ΔP(膣内時気圧と膣内から膣外へ排出時のピーク気圧の差)は、13hPaである。
【0057】
従って、上述したステップS3での判定基準は、
図8に示す検出装置5では20hPa以上とすることができるが、
図9及び
図10に示す検出装置5では上記実施例とは異なる値に設定する必要がある。
【0058】
以上のように本変形例では、上記実施例において検出装置5の素材に用いたシリコーンゴムとは異なり高伸縮ゴムライク樹脂により構成し、形状、硬度を種々変更した。しかしながら本変形例においても上記実施例同様、本発明に係る分娩検出システム1に好適に利用し得ることが明らかとなった。
【0059】
以下に、本発明の他の変形例について説明する。上記実施例において
図6に示すように、無線通信部32による送信周波数が2.4GHzの場合は、検出装置5が牛の膣内に入ると牛の体外にある管理装置3での受信電波強度がゼロとなり、2.4GHzの電波を使用した場合、牛の膣内に入ると電波が届かなくなる。
【0060】
そこで本変形例では、
図11に示す検出装置5を用いた。具体的に説明すると、当該検出装置5は、上記実施例並びに変形例に開示したものよりも外見が簡素に設計されたものとなっている。以下に本変形例について詳述する。
【0061】
すなわち本変形例に係る分娩検出システム1は、検出装置5と、上記実施例同様の報知装置たる管理装置3とを備え、検出装置5は、2.4GHz帯の電波を用いて無線通信を行う送信部たる無線通信部32を備え、更に、検出装置5または管理装置3に、分娩に関連する分娩関連情報の報知を行うか否か判定する判定部たる制御部31を備え、管理装置3は、分娩関連情報を受信する受信部と、分娩関連情報を報知する報知手段たる報知部12とを備えた分娩検出システム1を実現している。
【0062】
換言すれば、本変形例に係る検出装置5は、上記実施例並びに変形例とは違い、圧力変形部51と、圧力変形部51が受けている押圧力を検出する押圧力検出部たる圧力センサ34aとを具備していない。
【0063】
しかしながら、
図11に示すような検出装置5によれば、上記実施例にも記載した通り、2.4GHz帯の電波を使用した場合、牛の膣内に入ると電波が届かなくなるという特性を利用することにより、検出装置5が牛の膣内から外部へ放出されたときにのみ、2.4GHz帯の電波を検出する。これにより、上記実施例同様、安定して確実に分娩を検出して報知できる分娩検出システム1、および分娩報知方法が実現される。
【0064】
詳述すると、分娩開始予定日の前に、妊娠している牛Cの膣内部に破水検知センサたる検出装置5を留置する。この検出装置5は常に2.4GHz帯の電波を発信しているものの、牛Cの膣内にあるときは当該電波を検出することができない。そして、牛Cの一次破水発生時の大量の破水により、検出装置5が牛の体外へ排出されるとともに、2.4GHz帯の電波をはじめて検出し、分娩介助者に分娩開始タイミングを通知するという手順となる。
【0065】
特に
図11に示した本変形例に沿った検出装置5であれば、当該検出装置5の内部構造のみならず、外形までもよりシンプルなものとできる点が上記実施例並びに変形例よりも有利な点として挙げられる。具体的には、斯かる点により、検出装置5の外形を形成するための金型をシンプルなものとしたり、検出装置5の外形自体の設計自由度が増した分、状況に応じた種々の形状をなす検出装置5を適用したり、更には、内部に装填する電気部品の部品点数を有効に削減したりすることができる。
【0066】
その結果、本発明に係る分娩検出システム1自体の有効利用のみならず、導入コストの削減、加えて当該分娩検出システム1の維持コスト、更にはランニングコストの削減にも資することにつながる。
【0067】
なお、気圧変動データのベースラインとピーク値の差である気圧変化量ΔP[hPa]は、SN比(信号対雑音比、Signal-to-noise Ratio)に相当するが、値が大きい程、分娩開始タイミング検出の信頼性を高くすることができる。検出装置5の硬度の値を小さくする(素材を柔らかくする)ことにより、気圧変化量ΔPの値を大きくできることがわかった。これらの知見を利用することにより、本願発明は種々の変形、更なる改良が可能である。
【0068】
例えば、検出装置5に適宜のタイマー機能部を設け、気圧検出機能部42で気圧変化を検出して判定機能部43で分娩開始と判定した場合に、所定時間毎に報知内容を変更する構成としてもよい。この場合、2.4GHzの電波を管理装置3が受信して分娩開始を報知する際に、最初に受信した信号が分娩開始からどれくらい経過しているかを管理装置3が判別し、それに応じた報知を報知部12により行うことができる。これにより、分娩開始から検出装置5が牛の体外に放出されて検出されるまでに時間が経過していたような場合に、分娩開始よりも報知部12による報知が遅れていることを飼養者が把握でき、飼養者が適切に介助することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、動物の出産に関連する産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…分娩検出システム
3…管理装置
5…検出装置
12…報知部
14…無線通信部
31…制御部
32…無線通信部
33…気圧検出部
34a…圧力センサ
51…圧力変形部