(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】骨および軟骨の損傷または疾患の予防および治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20230117BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230117BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230117BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230117BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P19/08
A61P19/02
A61P19/00
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2019535889
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2018052104
(87)【国際公開番号】W WO2018138322
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-27
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509254926
【氏名又は名称】キシンテラ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】XINTELA AB
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【氏名又は名称】田村 明照
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ラングレン アカーランド,エヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ウヴェブラント,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】タルツ,ジャン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/099337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/0775
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における軟骨下骨硬化症、外傷関節傷害、および/または変形性関節疾患(DJD)の予防および/または治療での使用のための同種異系または自己由来のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団であって、
前記集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、前記MSCがCD44、CD90およびCD105陽性であって、MHCII陰性およびCD45陰性であり、
前記集団は、プラスチック培養容器中で培養し、非付着細胞を廃棄し、最初に血小板溶解物含有培地中で培養し、その後、血小板溶解物及びFGF-2含有培地中で、低酸素下で培養し、インテグリンα10を発現する細胞を選択することよって得られる、ならびに
前記MSCが間葉系幹細胞または間葉系間質細胞である、MSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項2】
前記変形性関節疾患(DJD)が軟骨下骨の疾患、軟骨変性、外傷後変形性関節症、炎症性関節炎、および先天性奇形および/または筋骨格系の変形からなる群から選択され、前記外傷関節傷害が骨軟骨損傷、腱損傷、靭帯損傷、および筋損傷からなる群から選択される、請求項1に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項3】
前記骨軟骨損傷が関節軟骨損傷および/または骨損傷を含む、請求項2に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項4】
前記外傷関節傷害が、破損、捻挫、挫傷、裂傷、骨折、断裂、軟骨亀裂、軟骨微小骨折、軟骨欠損、腱断裂、靭帯断裂、または骨折であり、および/または、前記外傷関節傷害が、筋肉、腱、骨、靭帯、軟骨、または半月板におけるものである、請求項1に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項5】
哺乳動物における骨折治癒を促進または誘導するための同種異系または自己由来のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団であって、
前記集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、前記MSCがCD44、CD90およびCD105陽性であって、MHCII陰性およびCD45陰性であり、
前記集団は、プラスチック培養容器中で培養し、非付着細胞を廃棄し、最初に血小板溶解物含有培地中で培養し、その後、血小板溶解物及びFGF-2含有培地中で、低酸素下で培養し、インテグリンα10を発現する細胞を選択することよって得られる、ならびに
前記MSCが間葉系幹細胞または間葉系間質細胞である、MSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項6】
前記集団に含まれる総細胞の少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%がインテグリンα10サブユニットを発現する、請求項1~5のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項7】
前記集団がin vitro細胞培養物である、請求項1~6のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項8】
インテグリンα10を発現する前記細胞が抗インテグリンα10抗体によって単離される、請求項1~7のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項9】
前記細胞が脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、または羊水に由来する、請求項1~8のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項10】
前記MSCが同種異系または自己由来である、請求項1~9のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項11】
前記集団が投与前に細胞凝集体に調製される、請求項1~10のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項12】
対象がヒト、ウマ、ポニー、雄ウシ、ロバ、ラバ、ラクダ、ネコ、イヌ、ブタ、または雌ウシである、請求項1~11のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項13】
MSCの濃縮インテグリンα10
高集団であって、
前記集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、前記MSCがCD44、CD90およびCD105陽性であって、MHCII陰性およびCD45陰性であり、
前記集団は、プラスチック培養容器中で培養し、非付着細胞を廃棄し、最初に血小板溶解物含有培地中で培養し、その後、血小板溶解物及びFGF-2含有培地中で、低酸素下で培養し、インテグリンα10を発現する細胞を選択することよって得られる、ならびに
前記MSCが間葉系幹細胞または間葉系間質細胞である、MSCの濃縮インテグリンα10
高集団。
【請求項14】
MSCの濃縮インテグリンα10
高集団を製造する方法であって、
a.脂肪組織、骨髄、滑膜、臍帯血、ワルトン膠様質、または羊水から幹細胞の集団を単離すること、
b.単離された細胞をプラスチック培養容器中で培養すること、
c.非付着細胞を廃棄すること、
d.培地を加えることによってインテグリンα10発現を誘導することであって、前記培地が無血清培地または哺乳動物血清を含む培地であり、ならびに前記培地が
最初に血小板溶解物含有培地中で培養し、その後、血小板溶解物及びFGF-2含有培地中で、低酸素下で培養する培地であること、
e.インテグリンα10を発現する細胞を抗インテグリンα10抗体で選択すること、ならびに
f.選択した細胞を拡張し、それによってMSCの濃縮インテグリンα10
高集団を生成すること
を含み、
前記MSCの濃縮インテグリンα10
高集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、前記MSCがMHCII陰性およびCD45陰性である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における軟骨および骨の疾患または損傷に関わる状態を、抗インテグリンα10抗体によって単離された間葉系幹細胞を用いて予防するおよび/または治療するための組成物と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨は、傷害および病理的な変性を起こす傾向が高い。一旦損傷されると、関節軟骨は一般に治癒しない、または特定の生物学的状況下で部分的のみ治癒する。損傷によって、軟骨はさらに分解され、軟骨分解生成物が炎症を引き起こし、次に炎症を進める軟骨のさらなる分解が生じ、したがって悪循環を作り出す1。例えば、スポーツ傷害由来の初期の軟骨外傷と、その後の変形性関節症(OA)の発症の間の関連はよく知られている2。
【0003】
細胞療法は、組織再生のための有望な方法である。動物およびヒトにおける一連の試験は、多能性間葉系間質細胞(MSC)を用いる軟骨損傷を含む種々の疾患の治療に対する安全性および有効性を示している6、7。MSCの治療効果は、多くの要素からなると考えられている。MSCは、再生される組織の特定の細胞型へと直接分化できるが、さらに細胞外基質、サイトカインおよび増殖因子を生成することによって微小環境を改変し、内在性幹細胞を補充、刺激し、および免疫抑制効果も有する8。軟骨修復と再生のためのMSCの移植はしたがって、これらの細胞が軟骨細胞に分化する可能性を考えると有望な戦略である6。一般的に、幹細胞調製物は、細胞型または種々の分化能を有する細胞の複合混合物である。それらの可塑性と大きな分化能のため、前臨床試験および臨床試験は明確に定義された細胞で行われることが重要である。品質管理されたバイオマーカーによるMSCの特徴づけは、良好な有効性にとって重要であるが、治療薬としての細胞の安全な使用にとっても重要である。国際細胞治療学会は、MSCとして定義されるヒト細胞の最小基準として、細胞表現型、プラスチック接着、三血球系分化能、ならびに表面マーカーCD73、CD90、CD105それぞれCD45、CD34、CD14もしくはCD11b、CD79αもしくはDC19、HLA-DRの発現または欠如を提唱した9。
【0004】
患畜において、現在、MSCに基づく3つの手法が、ウマまたはイヌにおいて腱、靭帯または軟骨/関節の傷害の治療のために使用されている10。使用される3つの細胞型は、以下の通りである:骨髄(BM)穿刺液由来の培養拡張された細胞集団(ほとんどの臨床試験はこの細胞集団を使用してきた)、BM穿刺液由来の濃縮混合された細胞集団、および脂肪組織(AT)由来の混合された有核細胞集団。全3種類の細胞は、自己(自身)由来または同種(ドナー)由来であり得る。それらはいずれも、あまり明確に定義されていなかった。
【0005】
MSCによる軟骨修復を向上させるために、注射されるMSCの品質と数、および投与方法、の2つの変数が満足のいく結果にとって重要であると思われる。現在、国際細胞治療学会基準によって選択された細胞が依然として異種集団であることは、明らかである。MSCの品質問題に対する解決策は、特定の候補潜在能マーカーの発現によって定義されたMSC集団を用いることであり得る11。
【0006】
インテグリンアルファー10ベータ1(α10β1)は最初は、軟骨細胞上のII型コラーゲン結合受容体として特定され、骨格発達において重要な役割を有することが明らかにされている12。それは軟骨細胞上で豊富に発現され、ヒトMSCの亜集団中に存在する。インテグリンα10β1を標的にする抗体を用いて、混合細胞集団からMSCを特定し、識別し、単離できる(国際公開第03/106492号を参照されたい)。軟骨細胞の拡張培養、またはトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1治療は軟骨細胞特異的インテグリンα10レベルの低下を伴う脱分化をもたらす。対照的に、培地への骨形成タンパク質(BMP)-2の投与は、軟骨形成表現型を安定化し、高レベルのインテグリンα10発現を誘導する13。懸濁培養において、異なる細胞周囲マトリックスとの軟骨細胞凝集体の形成は、α10β1インテグリン-II型コラーゲンの相互作用を必要とする14。さらに、インテグリンα10β1発現はヒトBM由来MSCの軟骨形成分化能の改善と相関することが実証されている15。
【0007】
関節傷害が実質的に、外傷後変形性関節症(PTOA)と呼ばれる現象、変形性関節症(OA)のリスクを増加させることは知られている。しかし、OAまたはPTOAの治療に関して予防的治療または疾患修飾治療はなく、現在の治療は、疾患の発症および/または疾患の進行もしくは疾患の悪化を防止することなく症状を軽減する。このように、傷害または外傷の後のOAの発症を予防する手段が実質的に必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、骨または軟骨の傷害に苦しんでいる哺乳動物に投与されるMSCのインテグリンα10濃縮集団を用いて、それに伴う状態、またはそれから生じる状態を防止、および治療し得ることをin vivoで初めて実証した。
【0009】
したがって、一態様において、本開示は、軟骨下骨質硬化症、外傷関節損傷および/もしくは椎間板変性症の予防方法または治療方法において使用するためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団であって、MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、および上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、MSCの濃縮インテグリンα10高集団に関する。
【0010】
本開示のさらな態様は、骨折治癒を促進するまたは誘導するためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団であって、MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、および上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、MSCの濃縮インテグリンα10高集団に関する。
【0011】
本開示の一態様は、軟骨下骨硬化症、外傷関節損傷および/または椎間板変性症の予防または治療用の薬物の調製のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団の使用であって、MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、ならびに上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、MSCの濃縮インテグリンα10高集団の使用に関する。
【0012】
本開示のさらなる態様は、対象において軟骨下骨硬化症および/または軟骨下骨硬化症を治療するおよび/または予防する方法に関し、方法は、軟骨下骨質硬化症のリスクのある、もしくは軟骨下骨硬化症を有する対象にMSCの濃縮インテグリンα10高集団を投与することを含み、MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、ならびに上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択され、それによって軟骨下骨硬化症および/または骨軟骨損傷を治療するおよび/または予防する。
【0013】
本開示の一態様は、本明細書に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団を製造する方法に関し、方法は、
a.脂肪組織、骨髄、滑膜、臍帯血、ワルトン膠様質、または羊水から幹細胞集団を単離すること、
b.プラスチック培養容器中で単離された細胞を培養すること、
c.非付着細胞を廃棄すること、
d.培地を加えることによってインテグリンα10発現を誘導することであって、培地が無血清培地、または哺乳動物血清を含む培地であり、および培地が血小板溶解物および/もしくは血小板溶解物成分、および/または増殖因子を含む、インテグリンα10発現を誘導すること、
e.インテグリンα10を発現する細胞を選択すること、ならびに
f.選択した細胞を拡張し、それによってMSCの濃縮インテグリンα10高集団を生成すること
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】骨髄(BM)および脂肪組織(AT)由来の間葉系間質細胞(MSC)の代表的なFACSプロファイルを示す。細胞を、細胞表面マーカーCD44、CD45、CD90、CD105、およびMHCクラスIIを認識する抗体で標識した。左パネルはBM由来MSCを示し、右パネルはAT由来MSCを示す。抗体標識細胞および陰性対照細胞(抗体で標識されない)を示す。
【
図2】BM(
図2A)由来およびAT(
図2B)由来の培養ウマMSC上でのインテグリンα10β1の代表的な発現プロファイルを示す。インテグリンα10標識強度を側方散乱に対してプロットした。両タイプのMSCは、インテグリンα10β1を発現したが、BM由来MSCの大部分はインテグリンα10発現について陽性であった。
【
図3】特異的抗インテグリンα10モノクローナル抗体を用いて蛍光活性化セルソーティング(FACSAria)によって2種の異なる細胞集団に選別したAT由来MSCを示す。インテグリンα10標識強度を側方散乱に対してプロットした。インテグリンα10
高としてゲートされたMSCを青色(右側)で表示し、インテグリンα10
低としてゲートされたMSCを黄色(左側)で表示する(
図3A)。インテグリンα10
高としてゲートされた細胞を続いてプラスチックに付着させ、次いでインテグリンα10に対する抗体で染色した。細胞核をDAPIで対比染色した(
図3B)。
【
図4】未選別のおよび選別された(インテグリンα10
高またはインテグリンα10
低)AT-MSC由来の凍結切片の上で行ったペレット大量培養物の免疫組織化学分析を示す。5回の分化実験からの凍結切片を抗II型コラーゲン抗体で標識し、ImageJ 1.50iソフトウェアを使用して免疫組織化学呈色反応を定量化した(
図4A)。代表的なII型コラーゲンの発現パターンおよびレベルを、未選別細胞(
図4B)、選別インテグリンα10
高細胞(
図4C)、または選別インテグリンα10
低細胞(
図4D)を用いるペレット大量培養物の中央領域からの凍結切片について示す。II型コラーゲン型標識は、未選別ペレットにおいてII型コラーゲンの中間標識化を示し、選別インテグリンα10
高ペレットにおいてII型コラーゲンの強い標識化を示し、一方でII型コラーゲンはインテグリンα10
低ペレットにおいては低く、軟骨形成分化に対するインテグリンα10のプラス効果を示唆した。
【
図5】未選別および選別(インテグリンα10
高またはインテグリンα10
低)AT-MSC由来のRNAを用いて行ったペレット大量培養物の遺伝子発現分析を示す。GAPDHを内在性コントロールとして使用し、未選別細胞をΔΔCt計算のための標準試料として使用した。結果は、インテグリンα10
低ペレットと比較して、インテグリンα10
高ペレットでのI型コラーゲンのより低い発現ならびにII型コラーゲンおよびアグレカンのより高い発現を示し、インテグリンα10
高選別細胞由来のペレットにおいて軟骨形成分化が良好であることを示唆した。バーは平均値±標準偏差を示す。
【
図6】無傷の軟骨または損傷軟骨への非選別細胞およびインテグリンα10選別細胞のホーミング能を
図6A~Dに示す。インテグリンα10(α10
高細胞)をより高レベルで発現する細胞は、軟骨修復についての関心領域へのホーミングがより良好である。バーは平均値±標準偏差を表す。
【
図7】6ヵ月の対照肢における軟骨下骨硬化成分スコアは、6ヵ月の処置肢よりもかなり高く、6週目および試験エントリー(0日目)の処置群または対照群よりもかなり高いことを示す。バーは平均値±標準偏差を表す。共通の文字を共有しない群は、p<0.05で互いに有意に異なる。
【
図8】プロスタグランジンE2(PGE-2)レベルは、9/11時点で対照肢と比較して、処置肢において高く、ならびに0日目、4日目、42日目、56日目、126日目、および154日目の時点での対照肢と比較して、術後28日目の処置肢においてかなり高いことを示す。データは、平均値±標準偏差として示す。共通の文字を共有しない群は、p<0.05で有意に異なる。
【
図9】II型コラーゲン合成の増加を示す、II型プロコラーゲンC末端プロペプチド(CPII)のレベルは、いくつかの時点で対照肢と比較して処置肢において高く、ならびに0日目および試験終了時(154日目)と比較して、7日目と14日目の処置肢および対照肢においてかなり高いことを示す。データは、平均値±標準偏差として示す。共通の文字を共有しない群は、p<0.05で有意に異なる。
【
図10】C2C ELISAの結果を示す。C2C ELISAは、コラゲナーゼによるII型コラーゲンの切断を介して生じる3/4ペプチドのC末端でのネオエピトープを測定する。処置群および対照群の両方において、C2Cは、衝撃手術から14日目までかなり増加し、次いで、本試験を通し0日目と異ならない値まで減少した。データは、平均値±標準偏差として示す。共通の文字を共有しない群は、p<0.05で有意に異なる。
【
図11】骨軟骨の切片の組織像を示す。距腿(足根骨)関節を組織像用に準備し、切片をSafranin-O/ファストグリーンで染色した(
図11A)。プロテオグリカンの正常レベルを、処置肢および対照肢の両方において軟骨の非衝撃領域で見ることができる。衝撃を受けた領域での、プロテオグリカン成分と軟骨細胞組織の差を、いくらかのウマで見ることができた。隣接している、切片をII型コラーゲンに対する抗体で標識した(
図11B)。II型コラーゲンの正常レベルを、処置肢および対照肢の両方における軟骨の非衝撃領域で見ることができる。衝撃領域での、II型コラーゲン成分と発現パターンの差を、いくらかのウマで見ることができた。
【
図12】軟骨細線維化は、対照肢と比較して、試験終了時(6ヵ月目)で処置肢においてかなり少なかった(良好)。バーは平均値±標準偏差、p<0.039、対応のあるt検定、片側t検定で表す。
【
図13】墨汁染色を示す。死後に、墨汁を関節面に塗布し、デジタル写真を撮った。墨汁は微粒炭素を含み、軟骨完全性が損なわれている関節面の領域に付着する。矢印は、墨汁付着が損傷した軟骨上の黒色色素沈着として見られる衝撃領域を指す。墨汁は、処置肢の軟骨面よりも対照肢の軟骨面に多く付着し、処置の有益な効果を示した。
【
図14】脂肪組織から単離されたウマインテグリンα10選択MSCが、MSC対PBMCの比率の上昇と共にリンパ球増殖の低下として示される、T細胞上での免疫調節能を有することを示す免疫抑制アッセイ。最大の免疫抑制効果は、MSC対PBMCが1:1の比率で生じた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「抗インテグリンα10抗体」または「抗インテグリンα10サブユニット抗体」を本明細書では同義的に用いて、ヘテロ二量体タンパク質インテグリンα10β1の少なくともインテグリンα10サブユニットを認識しそれに結合することができる抗体を指す。これらの抗体は、ヘテロ二量体タンパク質インテグリンα10β1のエピトープを認識する抗体であり得、エピトープはインテグリンα10およびインテグリンβ1サブユニットの両方のアミノ酸残基を含む。
【0016】
骨傷害または骨損傷に関連して、本明細書で用いる場合、用語「破損」は、骨の連続性に損傷がある医学的状態である、骨折を指す。破損は、大きな力の衝撃または応力の結果であり得るが、骨粗鬆症、骨癌、もしくは骨形成不全症などの骨を弱める特定の医学的状態の結果としての最小限の外傷の結果でもあり得、破損または骨折は、病的骨折とも呼ばれる。
【0017】
骨傷害または骨損傷に関連して、本明細書で用いる場合、用語「挫傷」は、骨折よりも軽度である、骨の線維組織への外傷を指す。骨挫傷は、骨または関節への外傷によって、ならびに関節炎によって引き起こされることがある。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「同定すること」は、細胞をある特定の細胞型、例えば、MSCまたは軟骨細胞であると認識する行為を指す。同定することの代替用語は、「検出すること」であり、本明細書では同じ意味で用いる。
【0019】
本明細書で用いる場合、「インテグリンα10」または「インテグリンα-10」は、ヘテロ二量体タンパク質インテグリンα10β1のα10サブユニットを指す。この明示的な意味は、インテグリンα10サブユニットに結合されしたがってインテグリンα10β1ヘテロ二量体の四次構造を形成するインテグリンβ1サブユニットの存在を除外しない。ヒトインテグリンα10鎖配列は知られており、GenBank(商標)/EBI Data Bank受入番号AF074015で公表され、およびCamperらJ. Bio. Chem. 273:20383-20389(1998)に記載されている。
【0020】
本明細書で用いる場合、用語「骨の不整列」は、関節に関して一直線でない骨の変位を指す。
【0021】
本明細書で用いる場合、用語「単離すること」、「選別すること」、および「選択すること」は、細胞を特定の細胞型であると同定し、それを同じ細胞型または別の分化状態に属していない細胞から分離する行為を指す。通常、単離は分離の第一の段階を指すのに対して、「選択」はより特異的であり、例えば抗体の助けによって行われる。
【0022】
本明細書で用いる場合、「間葉系幹細胞」または「MSC」は、The Mesenchymal and Tissue Stem Cell Committee of the International Society for Cellular Therapy(Dominici Mら, Cytotherapy. 8(4):315-7(2006)を参照されたい)によって定義される多能性間質細胞を指す。MSCは、標準培養条件下で維持されるとき、プラスチック付着性である必要があり、CD105、CD73、およびCD90を発現する必要があり、CD45、CD34、CD14もしくはCD11b、CD79αもしくはCD19、およびHLA-DRの表面分子の発現が欠如している必要がある。MSCは、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞、または軟骨芽細胞に分化する能力がなければならない。
【0023】
本明細書で用いる場合、「変形性関節症」または「OA」は、関節軟骨の分解によって特徴づけられる関節疾患を指す。OAはまた、消耗性関節炎、変性関節疾患、および変形性関節炎と呼ばれることもある。OAの症状としては、関節腫脹、疼痛、および可動域の減少が挙げられる。OAによって一般的に影響を受ける関節としては、手、足の親指、手首、頸部、背部、膝、および股の関節が挙げられる。OAでは、軟骨は硬くなり、その弾性を失うことがあり得、または軟骨は一部の領域で磨滅することがあり得る。OAの重度の症例において、関節面の軟骨が失われると、関節の骨が擦れ合うことがあり得る。
【0024】
本明細書で用いる場合、「傷害後関節炎」、「外傷後関節炎」または「PTOA」は、以前の傷害、損傷、または外傷に起因するOAを指す。この状態は、いずれの関節でも起こり得る。傷害は関節の軟骨および/または骨に損傷を与えることがあり得、これにより軟骨を急速に摩耗させることがあり得る。継続する傷害もしくは過剰な体重の様な状態は、PTOAの発症を起こす、または加速させることがあり得る。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「スポーツ傷害」は、運動中に起こる傷害を指す。スポーツ傷害は、外傷性のもの、および酷使と反復応力に起因するものの両方があり得る。
【0026】
骨傷害または骨損傷に関して本明細書で用いる場合、用語「捻挫」は、靭帯の伸びおよび/または裂傷を指す。捻挫は、通常、関節に応力を加える、支持靭帯を過度に伸ばすまたはさらに断裂する傷害、例えばねじれに起因する。
【0027】
骨傷害または骨損傷に関して本明細書で用いる場合、用語「裂傷」は、関節中の1または複数の線維軟骨細片が断裂することを指す。裂傷は、ねじれなどの外傷の結果であり得るが、軽度の応力および長期の応力の結果でもあり得、この場合、変性断裂とも呼ばれ得る。裂傷は、靭帯断裂とも呼ばれる。
【0028】
本明細書で用いる場合、「治療すること」または「治療」は、対象における開示される疾患、障害、および状態に対する治療薬の任意の投与、または適用を含み、ならびに疾患の進行を阻害すること、疾患またはその進行を遅らせること、その発症を抑えること、疾患を部分的にもしくは完全に緩和すること、または疾患の1もしくは複数の症状を部分的にもしくは完全に緩和することを包含する。
【0029】
本明細書で用いる場合、「予防すること」または「予防」は、疾患、障害、または状態の発症を遅らせること、もしくは停止させることを含む。
【0030】
組成物
本発明は、抗インテグリンα10抗体によって混合細胞集団から単離された間葉系幹細胞(MSC)を含む。単離されたMSCの治療有効量は、変形性関節症、亀裂形成を含む軟骨損傷、および軟骨下骨硬化症のような疾患/障害を治療するために投与されてよい。
【0031】
本発明は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団であって、細胞がインテグリンα10サブユニットを発現するよう誘導され、およびMSCの濃縮インテグリンα10高集団が、インテグリンα10サブユニットを発現するMSCのパーセンテージが集団の細胞の少なくとも60%である、MSCの濃縮インテグリンα10高集団を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団に含まれる総細胞の少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%がインテグリンα10サブユニットを発現する。
【0033】
いくつかの実施形態において、MSCの集団中の細胞はインテグリンα10サブユニットを発現するよう誘導される。
【0034】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10はインテグリンβ1サブユニットとの組み合わせでヘテロ二量体として発現される。
【0035】
いくつかの実施形態において、MSCの集団は脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、または羊水に由来する。好ましくは、いくつかの実施形態において、MSCの集団は脂肪組織に由来する。好ましくは、いくつかの実施形態において、MSCの集団は骨髄に由来する。
【0036】
場合によっては、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、プラスチック培養皿で培養され、インテグリンα10を発現するよう誘導される。
【0037】
いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物血清およびFGF-2を含む培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される。「血小板溶解物成分」という用語は、血小板溶解物中に通常見いだされる成分のいくつかのみを含む組成物を指す。例えば、特定の増殖因子が選択される、または選択を解除され得る。いくつかの実施形態において、細胞はFGF-2、および血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物血清、および血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞はTGFβを含む培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は無血清培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む無血清培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は増殖因子、例えばFGF-2および/またはTGFβを含む無血清培地中で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物血清を含む培地中で培養され、および哺乳動物血清はウシ胎児血清である。上記の培地の例はすべて、細胞がインテグリンα10を発現するよう誘導するのに適している。しかし、細胞がインテグリンα10を発現するよう誘導するのに適している他の培地も存在し、当業者に知られている。
【0038】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団はin vitroでの細胞培養物である。
【0039】
いくつかの実施形態において、細胞はアスコルビン酸をさらに含む培地中で培養される。
【0040】
いくつかの実施形態において、細胞はジメチルスルホキシド(DMSO)をさらに含む培地中で保管される。
DMSOは、保存目的で培地に存在してよく、総培養量の0と12%の間、好ましくは、少なくとも1%、少なくとも2%など、例えば少なくとも3%、好ましくは少なくとも4%、少なくとも5%など、例えば少なくとも6%、好ましくは少なくとも7%、少なくとも8%など、例えば少なくとも9%、好ましくは総培養量の少なくとも10%の量で含まれる。DMSOは、細胞が解凍後に必要とする対象に直接投与され得るように細胞培養物の凍結および解凍を容易にするので、細胞の保存に有益である。DMSOは、細胞を洗浄することによって解凍後に除去され得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、DMSOは軟部組織腫脹、炎症、および急性外傷に伴う浮腫を減少させ、血流を上昇させ、血管拡張を増進させることによってMSCの予防または治療作用を促進する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明は、インテグリンα10、CD44、CD90、およびCD105を発現し、かつMHCIIおよびCD45が欠如しているMSCを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、MSCの集団は胎児、新生児、幼若、もしくは成体のMSCおよび/または前駆体細胞に由来する。
【0044】
いくつかの実施形態において、MSCの集団は胚細胞または胚に由来しない。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明は、インテグリンα10サブユニットを発現する未分化MSCを含むin vitro細胞培養物を包含する。
【0046】
いくつかの実施形態において、細胞は、脂肪組織または骨髄組織由来である。いくつかの実施形態において、培養中の細胞は、軟骨細胞に分化する能力を有する。いくつかの実施形態において、細胞培養物は、分化後に少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の軟骨細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞は、血清と、少なくとも1種の増殖誘導性増殖因子とを含有する培地中で分裂する。いくつかの実施形態において、細胞は、血清および増殖誘導性増殖因子が取り除かれると、軟骨細胞に分化する。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の増殖誘導性増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)-2または血小板溶解物、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明は培養皿中にMSCの集団を含み、細胞はインテグリンα10の発現を誘導する成分を含有する培地と接触した、またはこれまでに接触したことがあり、およびインテグリンα10陽性細胞のパーセンテージが総細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%を含む。好ましくは、濃縮インテグリンα10高集団に含まれるインテグリンα10陽性細胞のパーセンテージは、総細胞の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明は、懸濁培養液中にMSCを含み、細胞はインテグリンα10サブユニットまたはインテグリンα10ポリペプチドを発現する。
【0049】
いくつかの実施形態において、懸濁液中の細胞は実質的に細胞凝集体に形成される。例えば、細胞凝集体は、ペレットまたはスフェロイドの形態であり得る。いくつかの実施形態において、細胞凝集体は、増殖誘導性増殖因子を含有する培地中で維持される。
【0050】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団はさらに、CD44、CD90、またはCD105のうちの少なくとも1つを発現する。いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団はさらに、CD44、CD90の両方および/またはCD105を発現する。いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、MHCIIまたはCD45を発現しない。
【0051】
いくつかの実施形態において、培養物中の細胞はヒト、マウス、イヌ、またはウマの細胞である。いくつかの実施形態において、培養物中の細胞はヒトの細胞である。いくつかの実施形態において、培養物中の細胞はウマの細胞である。いくつかの実施形態において、培養物中の細胞はイヌの細胞である。
【0052】
いくつかの実施形態において、濃縮インテグリンα10高集団中の細胞は、間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態において、濃縮インテグリンα10高集団中の細胞は、ヒト胎児、新生児、幼若、またはヒト成体のMSCに由来する。いくつかの実施形態において、培養物中の細胞は、ヒト胚細胞またはヒト胚に由来しない。
【0054】
いくつかの実施形態において、MSCは、数量を増やし、かつインテグリンα10の発現を誘導するよう培養される。
【0055】
いくつかの実施形態において、MSCはプラスチック培養皿に付着する。いくつかの実施形態において、非付着性細胞は廃棄される。
【0056】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10の発現は、規定培地を加えることによって誘導される。いくつかの実施形態において、この規定培地は、ウシ胎児血清およびFGF-2を補充したDMEM、血小板溶解物を補充したDMEM、またはFGF-2もしくは血小板溶解物と同じ機能を果たす因子を含む市販の合成培地である。いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、DMEM/F12、PRIME-XV(登録商標)MSC Expansion SFMまたはSTEMMACSを含む培地中で培養される。
【0057】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10を発現する細胞は抗インテグリンα10抗体によって単離される。例えば、抗インテグリンα10抗体はモノクローナル抗体であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、マウスにヒトインテグリンα10ポリペプチドで免疫性を与えることによって生成される。いくつかの実施形態において、インテグリンα10を発現しない細胞は廃棄される。
【0058】
いくつかの実施形態において、MSCを発現するインテグリンα10を濃縮したin vitro細胞培養物、またはin vitro細胞培養物から単離したインテグリンα10を発現するMSCを、例えば、環状オレフィンコポリマー(COC)またはあらゆる同等の材料で作製された密閉型プラスチックバイアル中で冷凍し、保管する。それを必要とする対象に投与する前に、凍結細胞を解凍し、さらに処置せずに、または洗浄した後に投与できる。
【0059】
いくつかの実施形態において、MSCの集団は投与前に、通常はさらに凍結する前に、細胞凝集体へと調製される。細胞凝集体はスフェロイドまたはペレットの形態であってよい。凝集体の形態で細胞を投与することは、それらが優れたホーミング能を有し軟骨をうまく模倣するので、有益である。
【0060】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10発現MSCを濃縮したin vitro細胞培養物、またはin vitro細胞培養物から単離したインテグリンα10を発現するMSCを、体細胞治療医薬品として、または組織工学製品として使用する。
【0061】
治療の方法
本開示は、軟骨下骨硬化症および/または骨軟骨損傷を予防するおよび/または治療するための方法に関し、方法は必要とする対象にMSCの濃縮インテグリンα10高集団を投与することを含む。
【0062】
本開示は、変形性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、および/または椎間板変性症を予防するおよび/または治療するための方法に関し、方法は必要とする対象にMSCの濃縮インテグリンα10高集団を投与することを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、DJDは、軟骨下骨硬化症、軟骨下骨の疾患、軟骨変性、外傷後変形性関節症、炎症性関節炎、および先天性奇形、および/または筋骨格系の変形からなる群から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態において、外傷関節傷害はスポーツ傷害を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、外傷関節傷害は骨軟骨損傷、腱損傷、靭帯損傷、および筋損傷からなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、骨軟骨損傷は関節軟骨損傷および/または骨損傷を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、関節炎の治療または予防のために用いることができる。
【0068】
本明細書に開示される方法で使用されるMSCの濃縮インテグリンα10高集団は、上記「組成物」のセクションに詳述される。
【0069】
本明細書に開示される方法の利点の1つは、MSCの濃縮インテグインα10高集団が、インテグリンα10発現のおかげで、高い付着性で効率的に、かつ容易に損傷した骨または軟骨に付着できることである。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される軟骨下骨硬化症および/または骨軟骨損傷を予防する方法は、インテグリンα10を発現するよう誘導されるMSC細胞を、関節への傷害が生じた直後、例えば、発生当日、1週間以内、2週間以内、3週間以内、1ヵ月以内、2ヵ月以内、3ヵ月以内、または傷害の日から1年以内に投与することを含む。投与されたMSCは、例えば、骨および軟骨での初期損傷を修復でき、したがって軟骨下骨硬化症の発症および進行性の軟骨分解を予防する、または最小限に抑える。さもなければこれらは、変形性関節症に進行する。実際、進行性の変形性関節障害として、変形性関節症は、軟骨損傷、軟骨下骨の変化、骨棘形成、筋力低下、および滑膜組織と腱の炎症によって特徴づけられる。変形性関節症は、関節軟骨の原発性疾患として長い間見なされてきたが、軟骨下骨に注目が高まっている。それは変形性関節症の病態形成において重要な役割を果たしていると一般的に報告されている。軟骨下骨硬化症は、進行性の軟骨分解と共に、変形性関節症の特徴と広く見なされている(Guangyi Li, Jimin Yin, Junjie Gao, Tak S Cheng, Nathan J Pavlos, Changqing Zhang,およびMing H Zheng;Subchondral bone in osteoarthritis:insight into risk factors and microstructural changes;Arthritis Res Ther. 2013;15(6): 223;ならびにCastaneda S, Roman-Blas JA, Largo R, Herrero-Beaumont G;Subchondral bone as a key target for osteoarthritis treatment;Biochem Pharmacol. 2012 Feb 1;83(3):315-23)。さらに、骨軟骨病変または離断性骨軟骨炎は、あらゆる関節で起こり得るが、最も頻度の高いのは、膝と足首である。そのような病変は、関節中の骨の1つを覆う軟骨の裂傷または骨折である。軟骨は、引き裂かれ、押しつぶされ、または損傷を受けることがあり得、稀に嚢胞が軟骨中に形成されることがある。本開示は、軟骨下骨硬化症を治療するための方法を提供し、したがって、同方法を用いて、変形性関節症をうまく予防できる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示する軟骨下骨硬化症および/または骨軟骨損傷を治療する方法は、インテグリンα10を発現するよう誘導されるMSC細胞を軟骨下骨硬化症および/または骨軟骨損傷と診断された対象に投与することを含む。投与された、インテグリンα10を発現するよう誘導されたMSC細胞は、関節の軟骨下層の肥厚を減少させ、および/または関節中の骨密度の増加を減少させ、それによって軟骨下骨硬化症および/または骨軟骨損傷を治療できる。
【0072】
本明細書で用いる場合、「骨軟骨損傷または傷害」は、関節軟骨(コンドロ)と呼ばれる骨の末端上の滑面への傷害、さらにその下の骨(オステオ)への傷害である。傷害の程度は、関節内の小さいひびから、骨の一部が裂けるまでにわたる。これらの破片は大きさと深さが種々であり得、傷害を受けた領域に付着したまま(安定している)、または関節の内部で離れている(不安定である)状態であり得る。この傷害は、は青少年と若年成人で多くみられ、一般的に膝、足首、または肘で起こる。特に、骨軟骨欠損の認められる部位は、以下の通りである:大腿顆(最も頻度が高い);上腕頭;距骨;および上腕骨小頭。この用語は、離断性骨軟骨炎を包含し、骨軟骨損傷または傷害と同義的に使われる。
【0073】
いくつかの実施形態において、方法は対象において変形性関節症を治療することを含み、方法は、変形性関節症を有する、もしくは変形性関節症のリスクのある対象にMSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離されたMSCを投与することを含み、それによって変形性関節症を治療する。
【0074】
いくつかの実施形態において、方法は対象において変形性関節症の進行を遅延させること、または防止することを含み、方法は、抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離したMSCの濃縮インテグリンα10高集団を、変形性関節症を有する対象に投与することを含み、変形性関節症の進行はMSCを投与されていない対照と比較して遅延される。
【0075】
いくつかの実施形態において、方法は軟骨下骨硬化症を治療することを含み、方法は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離した単離MSCを投与することを含み、それによって軟骨下骨硬化症を治療する。
【0076】
いくつかの実施形態において、軟骨下骨硬化症を治療することは、関節周囲の骨形成の増加を予防すること、または後退させることを含む。いくつかの実施形態において、軟骨下骨硬化症を治療することは、関節の軟骨下層の肥厚を防止する、もしくは減少させること、または関節内の骨密度の増加を防止する、もしくは減少させることを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、方法は、変形性骨および関節疾患を治療することを含み、方法は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離した単離MSCを投与することを含み、それによって変形性骨および関節疾患を治療する。
【0078】
いくつかの実施形態において、方法は、変形性骨および関節疾患を予防することを含み、方法は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離した単離MSCを投与することを含み、それによって変形性骨および関節疾患を予防する。
【0079】
いくつかの実施形態において、軟骨下骨硬化症または骨軟骨損傷は、変形性関節疾患、または先天性奇形、および/または筋骨格系の変形である。
【0080】
いくつかの実施形態において、軟骨下骨硬化症または骨軟骨損傷は、変形性関節症、炎症性関節炎、椎間板変性症、スポーツ傷害、外傷関節傷害から選択される変形性関節疾患である。
【0081】
いくつかの実施形態において、方法は、スポーツ傷害を治療することを含み、方法は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離した単離MSCを投与することを含み、それによってスポーツ傷害を治療する。
【0082】
いくつかの実施形態において、方法は、外傷後変形性関節症(PTOA)を治療することを含み、方法は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離した単離MSCを投与することを含み、それによってPTOAを治療する。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のMSC組成物を投与することは、投与部位でのコラーゲン産生の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、組成物の投与は、II型コラーゲン合成の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、II型コラーゲン合成の増加は、コラーゲンの形成過程で放出されるカルボキシプロペプチドを測定し、したがってII型コラーゲン合成速度の変化を反映する、II型プロコラーゲンC末端プロペプチド(プロコラーゲンII C-プロペプチド)アッセイを用いて測定される。CPIIは、対照肢と比較して治療肢からの滑液において大きい傾向があった。いくつかの実施形態において、組成物の投与は、プロテオグリカン産生の増加、および/またはラブリシンの増加をもたらす。
【0084】
いくつかの実施形態において、対象において軟骨亀裂を治療する方法は、MSCの濃縮インテグリンα10高集団、または抗インテグリンα10抗体を用いてMSC集団から単離されたMSCを投与することを含み、それによって軟骨亀裂を治療する。いくつかの実施形態において、軟骨亀裂は軟骨細線維化を含む。いくつかの実施形態において、軟骨亀裂は関節軟骨または骨の末端の軟骨にある。いくつかの実施形態において、軟骨の層内に破損があると軟骨亀裂が生じ、層間に分離を引き起こす。軟骨亀裂は、骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害であり得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、軟骨亀裂を治療することは、傷害領域における構造損傷の軽減を含む。いくつかの実施形態において、軟骨亀裂を治療することは、軟骨損傷を防止することを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、MSCは、細胞凝集体の形態で投与される。いくつかの実施形態において、MSCはペレットとして投与される。ペレットとしてMSCを投与する手段は、当業者に知られている(BartzらJ. Transl Med. 14:317(2016)を参照されたい。これを参照によって本明細書に組み込む)。いくつかの実施形態において、MSCは、スフェロイドとして、またはマトリックス結合軟骨細胞インプラントとして軟骨に分化後に投与されてよい。これらの投与形態は、損害を受けた部位への細胞の容易なホーミングをもたらす。
【0087】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、細胞懸濁液として投与される。MSCの薬学的有効量が投与される。MSCは、薬学的に許容される賦形剤と共に投与されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、骨軟骨損傷、軟骨損傷、または関節もしくは骨への傷害を有する、またはこれまでに有した対象に投与される。いくつかの実施形態において、骨軟骨損傷、軟骨損傷もしくは傷害は破損、捻挫、挫傷、裂傷、骨折、または断裂である。例えば、損傷は軟骨亀裂または靭帯細線維化であり得る。いくつかの実施形態において、骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害は軟骨微小骨折である。いくつかの実施形態において、骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害は軟骨欠損である。いくつかの実施形態において、骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害は人工器官の装着の結果である。例えば、骨軟骨損傷、関節における軟骨損傷または傷害は、筋肉、腱、骨、靭帯、軟骨、または半月板においてである。
【0089】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、骨の不整列を有する対象に投与される。
【0090】
MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、傷害後に疾患の発症を防止するために投与されてよい。MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、傷害後に傷害を受けた関節および/または骨部位の外科的修復中に、投与されてよい。いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、破損後の接骨と同時に、例えば骨折した骨を修復する際に、投与される。
【0091】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、抗炎症効果を有する。それにもかかわらず、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、別の治療の投与、例えば抗炎症剤と同時に、その前に、またはその後に投与されてよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、関節腔に投与されてよい。MSCの濃縮インテグリンα10高集団は、注射によって投与されてよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団は対象に投与され、上記対象はヒト、ウマ、ポニー、雄ウシ、ロバ、ラバ、ラクダ、ネコ、イニ、ブタ、または雌ウシである。好適な実施形態において、対象はヒトである。他の好適な実施形態において、対象はウマである。さらなる好適な実施形態において、対象はイヌである。
【0094】
いくつかの実施形態において、投与されるMSCの濃縮インテグリンα10高集団は同種異系または自己由来である。いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団および対象は、同じ種または属に由来する。いくつかの実施形態において、MSCの濃縮インテグリンα10高集団および対象は、異なる種または属に由来する。
【0095】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10発現MSCを濃縮したin vitro細胞培養物、またはin vitro細胞培養物から単離したインテグリンα10を発現するMSCは、体細胞治療医薬品として、または組織工学製品として投与される。
【0096】
製造方法
本開示の一態様は、本明細書に開示されるMSCの濃縮インテグリンα10高集団を製造する方法に関し、方法は、
a.脂肪組織、骨髄、滑膜、臍帯血、ワルトン膠様質、または羊水から幹細胞集団を単離すること、
b.プラスチック培養容器中で単離された細胞を培養すること、
c.非付着細胞を廃棄すること、
d.培地を加えることによってインテグリンα10発現を誘導することであって、培地が無血清培地、または哺乳動物血清を含む培地であり、および培地が血小板溶解物および/もしくは血小板溶解物成分、および/または増殖因子を含む、インテグリンα10発現を誘導すること、
e.インテグリンα10を発現する細胞を選択すること、ならびに
f.選択した細胞を拡張し、それによってMSCの濃縮インテグリンα10高集団を生成すること
を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10発現の誘導中の細胞は、上記「組成物」のセクションに記載の培地中で培養される。
【0098】
いくつかの実施形態において、インテグリンα10を発現する細胞は、ステップe.において上述の抗インテグリンα10抗体を用いて選択される。
【0099】
いくつかの実施形態において、得られたMSCの濃縮インテグリンα10高集団は、上記「組成物」のセクションに記載の通りである。
【0100】
いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物血清を含まない培地中で培養される。例えば、いくつかの実施形態において、細胞は、血小板溶解物または血小板溶解物成分を含む、またはこれらからなる培地中で培養される。
【0101】
項目
[項目1]
間葉系幹細胞(MSC)の濃縮インテグリンα10高集団であって、MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現する、間葉系幹細胞(MSC)の濃縮インテグリンα10高集団。
[項目2]
上記集団に含まれる総細胞の少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%がインテグリンα10サブユニットを発現する、項目1に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目3]
上記細胞がインテグリンα10サブユニットを発現するよう誘導される、項目1~2のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目4]
上記細胞が哺乳動物血清およびFGF-2を含む培地中で培養される、項目1~3のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目5]
上記細胞が血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される、項目1~4のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目6]
上記細胞がFGF-2、ならびに血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される、項目1~5のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目7]
上記細胞が哺乳動物血清、ならびに血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される、項目1~6のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目8]
上記細胞がTGFβを含む培地中で培養される、項目1~7のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目9]
上記細胞が血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む無血清培地中で培養される、項目1~8のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目10]
上記細胞が増殖因子を含む無血清培地中で培養される、項目1~9のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目11]
上記細胞が増殖因子FGF2および/またはTGFβを含む無血清培地中で培養される、項目1~10のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目12]
上記集団がin vitroでの細胞培養物である、項目1~11のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目13]
項目1~12のいずれか1項の集団から抗インテグリンα10抗体によって単離されたMSC。
[項目14]
変形性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、および/または椎間板変性症の予防または治療の方法での使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団であって、
上記MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、ならびに
上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、
変性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、および/または椎間板変性症の予防または治療の方法での使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目15]
変形性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、椎間板変性症、軟骨変性、軟骨下骨硬化症、外傷後変形性関節症、炎症性関節炎、軟骨下骨の疾患、スポーツ傷害、骨軟骨損傷、関節軟骨損傷、骨損傷、腱損傷、靭帯損傷、および/または筋損傷の予防または治療の方法での使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団であって、上記MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、
上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、
予防または治療の方法での使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目16]
DJDが軟骨下骨硬化症、軟骨下骨の疾患、軟骨変性、外傷後変形性関節症、炎症性関節炎、ならびに先天性奇形、および/または筋骨格系の変形からなる群から選択される、項目14に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目17]
外傷関節傷害がスポーツ傷害を含む、項目14および16のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目18]
外傷関節傷害が骨軟骨損傷、腱損傷、靭帯損傷、および筋損傷からなる群から選択される、項目14~17のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮イテグリンα10高集団。
[項目19]
骨軟骨損傷が関節軟骨損傷および/または骨損傷を含む、項目14および18のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮イテグリンα10高集団。
[項目20]
骨折治癒を促進する、または誘導するためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団であって、上記MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、MSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目21]
上記集団に含まれる総細胞の少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%がインテグリンα10サブユニットを発現する、項目14~20のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目22]
上記細胞がインテグリンα10サブユニットを発現するよう誘導される、項目14~21のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目23]
上記細胞が哺乳動物血清およびFGF-2を含む培地中で培養される、項目14~22のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目24]
上記細胞が血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される、項目14~23のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目25]
上記細胞が血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む無血清培地中で培養される、項目14~24のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目26]
上記細胞が増殖因子を含む無血清培地中で培養され、上記増殖因子がFGF2および/またはTGFβである、項目14~25のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目27]
上記細胞がFGF-2、ならびに血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される、項目14~26のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目28]
上記細胞が哺乳動物血清、ならびに血小板溶解物および/または血小板溶解物成分を含む培地中で培養される、項目14~27のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目29]
上記細胞がTGFβを含む培地中で培養される、項目14~28のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目30]
上記血清がウシ胎児血清である、項目14~29のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目31]
上記集団がin vito細胞培養物である、項目14~30のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目32]
上記培地がアスコルビン酸をさらに含む、項目14~31のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目33]
上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、項目14~32のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目34]
インテグリンα10がインテグリンβ1サブユニットとの組み合わせでヘテロ二量体として発現される、項目14~33のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目35]
インテグリンα10を発現する細胞が抗インテグリンα10抗体によって単離される、項目14~34のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目36]
抗インテグリンα10抗体がモノクローナル抗体である、項目14~35のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目37]
上記抗体がマウスにヒトインテグリンα10ポリペプチドで免疫性を与えることによって生成される、項目14~36のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目38]
上記MSCがMHCIIおよびCD45の非存在によってさらに特徴づけられる、項目14~37のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目39]
上記MSCがCD44、CD90、およびCD105の存在によってさらに特徴づけられる、項目14~38のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目40]
上記細胞が脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、または羊水に由来する、項目14~39のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目41]
上記細胞が脂肪組織由来である、項目14~40のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目42]
上記細胞が骨髄由来である、項目14~41のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目43]
上記集団が軟骨下骨の疾患および/または骨軟骨損傷の予防の方法での使用のためである、項目14~42のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目44]
上記集団が軟骨下骨の疾患および/または骨軟骨損傷の治療の方法での使用のためである、項目14~43のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目45]
上記対象が骨軟骨損傷、軟骨損傷、または関節もしくは骨への傷害を有する、またはこれまでに有した、項目14~44のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目46]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が破損、捻挫、挫傷、裂傷、骨折、または断裂である、項目14~45のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目47]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が軟骨亀裂である、項目14~46のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目48]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が軟骨微小骨折である、項目14~47のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目49]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が軟骨欠損である、項目14~48のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目50]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が腱断裂または靭帯断裂である、項目14~49のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目51]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が骨折である、項目14~50のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目52]
傷害がスポーツ傷害である、項目14~51のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目53]
上記対象が骨の不整列を有する、項目14~52のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目54]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が人工器官の装着の結果である、項目14~53のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目55]
骨軟骨損傷、関節における軟骨損傷または傷害が、筋肉、腱、骨、靭帯、軟骨、または半月板においてである、項目14~54のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目56]
方法が軟骨下骨の疾患または骨軟骨損傷に起因する外傷後変形性関節症(PTOA)を予防する、項目14~55のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目57]
上記MSCが同種異系または自己由来である、項目14~56のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目58]
上記MSCが関節腔に投与される、項目14~57のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目59]
上記MSC集団が注射によって投与される、項目14~58のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目60]
上記MSC集団が薬学的に許容される賦形剤と共に細胞懸濁液中で投与される、項目14~59のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目61]
上記MSC集団が投与前に細胞凝集体に調製される、項目14~60のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目62]
上記MSC集団が損傷した関節および/または骨を修復するための手術中に投与される、項目14~61のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目63]
上記MSC集団が破損後の接骨と同時に投与される、項目14~62のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目64]
上記対象がヒト、ウマ、ポニー、雄ウシ、ロバ、ラバ、ラクダ、ネコ、イニ、ブタ、または雌ウシである、項目14~63のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目65]
上記対象がヒトである、項目14~64のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目66]
上記対象がウマである、項目14~65のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目67]
上記対象がイヌである、項目14~66のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目68]
上記MSCおよび対象が同じ種または属に由来する、項目14~67のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目69]
上記MSCおよび対象が異なる種または属に由来する、項目14~68のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目70]
上記細胞が胎児、新生児、幼若、もしくは成体のMSCおよび/または前駆体細胞に由来する、項目14~69のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目71]
上記細胞が胚細胞または胚に由来しない、項目14~70のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目72]
上記投与が投与部位でのコラーゲン産生の増加、プロテオグリカン産生の増加、および/またはラブリシンの増加をもたらす、項目14~71のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目73]
上記MSCと組み合わせて抗炎症剤を投与することをさらに含む、項目14~72のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目74]
上記MSCがMHCIIおよびCD45を発現しない、項目14~73のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目75]
上記MSCがCD44、CD90、およびCD105を発現する、項目14~74のいずれか1項に記載の使用のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団。
[項目76]
変形性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、および/または椎間板変性症の予防または治療用の薬物の調製のためのMSCの濃縮インテグリンα10高集団の使用であって、上記集団に含まれる総細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択される、MSCの濃縮インテグリンα10高集団の使用。
[項目77]
対象において変形性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、および/または椎間板変性症を治療するおよび/または予防する方法であって、軟骨下骨硬化症のリスクのある、または軟骨下骨硬化症を有する対象にMSCの濃縮インテグリンα10高集団を投与することを含み、上記MSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現し、ならびに上記MSCが間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞からなる群から選択され、それによって変形性関節疾患(DJD)、外傷関節傷害、および/または骨軟骨損傷を治療するおよび/または予防する方法。
[項目78]
DJDが軟骨下骨硬化症、軟骨下骨の疾患、軟骨変性、外傷後変形性関節症、炎症性関節炎、ならびに先天性奇形、および/または筋骨格系の変形からなる群から選択される、項目76および77のいずれか1項目に記載の使用または方法。
[項目79]
外傷関節傷害がスポーツ傷害を含む、項目76~78のいずれか1項目に記載の使用または方法。
[項目80]
外傷関節傷害が骨軟骨損傷、腱損傷、靭帯損傷、および筋損傷からなる群から選択される、項目76~79のいずれか1項目に記載の使用または方法。
[項目81]
骨軟骨損傷が関節軟骨損傷および/または骨損傷を含む、項目76~80のいずれか1項目に記載の使用または方法。
[項目82]
上記集団に含まれる総細胞の少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%がインテグリンα10サブユニットを発現する、項目76~81のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目83]
上記細胞がインテグリンα10サブユニットを発現するよう誘導される、項目76~82のいずれか1項目に記載の使用または方法。
[項目84]
上記幹細胞が脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、または羊水に由来する、項目76~83のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目85]
上記MSCが脂肪組織に由来する、項目76~84のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目86]
上記MSCが骨髄に由来する、項目76~85のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目87]
上記対象が骨軟骨損傷、関節または骨への損傷もしくは傷害を有する、またはこれまでに有した、項目76~86のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目88]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が破損、捻挫、挫傷、裂傷、骨折、または断裂である、項目76~87のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目89]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が軟骨微小骨折である、項目76~88のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目90]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が軟骨欠損である、項目76~89のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目91]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が腱断裂または靭帯断裂である、項目76~90のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目92]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が骨折である、項目76~91のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目93]
傷害がスポーツ傷害である、項目76~92のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目94]
上記対象が骨の不整列を有する、項目76~93のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目95]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が人工器官の装着の結果である、項目76~94のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目96]
骨軟骨損傷、関節における軟骨損傷または傷害が、筋肉、腱、骨、靭帯、軟骨、または半月板においてである、項目76~95のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目97]
骨軟骨損傷、軟骨損傷または傷害が軟骨亀裂である、項目76~96のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目98]
上記使用または方法が軟骨下骨の疾患または骨軟骨損傷に起因する外傷後変形性関節症(PTOA)を予防する、項目76~97のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目99]
上記MSCが同種異系または自己由来である、項目76~98のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目100]
上記MSCが関節腔に投与される、項目76~99のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目101]
上記MSCが注射によって投与される、項目76~100のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目102]
上記MSCが薬学的に許容される賦形剤と共に細胞懸濁液中で投与される、項目76~101のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目103]
上記MSCが投与前に細胞凝集体に調製される、項目76~102のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目104]
上記MSCがジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中で保管される、項目76~103のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目105]
上記MSCが損傷した関節または骨を修復するための手術中に投与される、項目76~104のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目106]
上記MSCが破損後の接骨と同時に投与される、項目76~105のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目107]
上記対象がヒト、ウマ、ポニー、雄ウシ、ロバ、ラバ、ラクダ、ネコ、イニ、ブタ、または雌ウシである、項目76~106のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目108]
上記対象がヒトである、項目76~107のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目109]
上記対象がウマである、項目76~108のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目110]
上記対象がイヌである、項目76~109のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目111]
上記MSCおよび対象が同じ種または属に由来する、項目76~110のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目112]
上記MSCおよび対象が異なる種または属に由来する、項目76~111のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目113]
上記細胞が胎児、新生児、幼若、もしくは成体のMSCおよび/または前駆体細胞に由来する、項目76~112のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目114]
上記細胞が胚細胞または胚に由来しない、項目75~113のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目115]
上記投与が投与部位でのコラーゲン産生の増加、プロテオグリカン産生の増加、および/またはラブリシンの増加をもたらす、項目76~114のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目116]
上記MSCと組み合わせて抗炎症剤を投与することをさらに含む、項目76~115のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目117]
上記MSCがMHCIIおよびCD45を発現しない、項目76~116のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目118]
上記MSCがCD44、CD90、およびCD105を発現する、項目76~117のいずれか1項に記載の使用または方法。
[項目119]
項目1~13のいずれか1項に記載のMSCの濃縮インテグリンα10高集団を製造する方法であって、
a.幹細胞集団を脂肪組織、骨髄、滑膜、臍帯血、ワルトン膠様質、または羊水から単離すること、
b.単離した細胞をプラスチック培養容器中で培養すること、
c.非付着細胞を廃棄すること、
d.培地を加えることによってインテグリンα10発現を誘導することであって、培地が無血清培地、または哺乳動物血清を含む培地であり、および培地が血小板溶解物および/もしくは血小板溶解物成分、および/または増殖因子を含む、ンテグリンα10発現を誘導すること、
e.インテグリンα10を発現する細胞を選択すること、ならびに
f.選択した細胞を拡張し、それによってMSCの濃縮インテグリンα10高集団を生成すること
を含む、方法。
[項目120]
ステップd.における培地が増殖因子FGF2および/またhTGFβを含む、項目119に記載の方法。
【0102】
実施例
実施例1.ウマMSCの特徴
ウマのMSCを骨髄(BM)および脂肪組織(AT)から単離した。BM吸引液および頸部脂肪組織を、スウェーデン農業庁からの認可を得て健康なウマの死体から採取した。
【0103】
BM吸引液をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、10%ウシ胎児血清(FBS)(Biological Industries)、線維芽細胞増殖因子(FGF)-2(Miltenyi)50μg/L、および抗生物質-抗真菌剤(Gibco)100U/mLを補充したDMEM-F12培地(Gibco)中でのプラスチック付着のために細胞培養フラスコに播種し、次いで4%O2、5%CO2の加湿インキュベーターで、37℃でインキュベートした。24時間後に、非付着性細胞を廃棄し、新鮮な培地を加えた。約80%コンフルエントに達した細胞を、Accutase(Gibco)を用いて継代培養し、拡張のために、Cook Regentecからの5%ヒト血小板溶解物(PL)、50μg/LのFGF-2、および抗生物質-抗真菌剤を含有するDMEM F-12培地中にて104細胞/cm2の密度で再播種した。
【0104】
ウマ頸部由来のATを無菌で細かく刻み、洗浄してから、37℃で、1.5時間、穏やかに撹拌しながら0.1%I型コラゲナーゼ(Sigma-Aldrich)で分解消化した。試料を300xgで5分間、遠心分離し、その後、脂肪細胞層およびコラゲナーゼ上清を吸引した。残留する間質血管細胞群をDMEM F-12培地で洗浄し、100μmのセルストレーナーを介して濾過し、次いで10%FBSおよび抗生物質-抗真菌剤を補充したDMEM F-12含有細胞培養フラスコに200cm2あたり約35mLの脂肪組織の播種密度で播種した。細胞を4%O2、5%CO2の加湿インキュベーターで、37℃にてインキュベートし、24時間後に、非付着性細胞を廃棄し、DMEM F-12、5%PL、および抗生物質-抗真菌剤を含有する培地を加えた。培地を2~3日毎に取り替え、細胞を、Accutaseを用いて80%コンフルエントで収集し、増殖のために、5%PL、50μg/LのFGF-2、および抗生物質-抗真菌剤を含有するDMEM F-12培地に5000細胞/cm2の細胞密度で再播種した。
【0105】
各継代で、MSCを、表面マーカー(インテグリンα10β1(Xintela)、CD90(BD Pharmingen)、CD44、CD105、CD45およびMHCクラスII(AdB Serotec))のパネルを用いるフローサイトメトリー分析によって免疫表現型について決定した。手短に言えば、100,000の細胞を、1%FBSおよび0.1%アジ化ナトリウムを補充したPBS中で洗浄し、続いて選択的抗体とインキュベートした。インキュベーション後に、細胞を緩衝液中で2回洗浄し、BD Accuri C6フローサイトメーターを用いて得た。少なくとも20,000の細胞を得て、分析した。結果を陽性細胞のパーセンテージとして表す。
【0106】
細胞をPLおよびFGF-2と共に低酸素下で培養した。MSCは通常、幹様表現型を維持するためにFGF-2含有培地で増殖されることが多い。しかし、FGF-2は培養物中のMSC上でMHCクラスIIを増加させる21。したがって、培養物には、最初にPLだけを補充した。BMまたはATから単離され血小板溶解物含有培地中で培養されたMSCは、良好な増殖特性を示し、倍加時間はそれぞれ1.9日(46時間)と1.6日(38時間)であった。AT由来およびBM由来の両細胞は、MSCに典型的な形態を示した。
【0107】
細胞を、フローサイトメトリーによりインテグリンα10、CD44、CD45、CD90、およびCD105の発現について継続的にモニターした。MSCは、マーカーCD44、CD90、およびCD105を高レベルで発現し、造血細胞マーカーCD45およびMHCクラスII(HLA-DR)を欠いた(
図1)。
【0108】
ヒトMSCの場合、細胞表現型プラスチック付着性と、表面マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現ならびにCD45、CD34、CD14もしくはCD11b、CD79α、またはCD19、およびHLA-DR表面分子の非存在は、MSC定義の最小表面抗原の基準を満たす9。ウマ細胞表面マーカーと反応する有効な抗体の欠如のため、CD73、CD34、CD14もしくはCD11b、CD79α、またはCD19の発現は評価しなかった。しかし、AT由来およびBM由来の両細胞は、プラスチックに付着し、検査MSCマーカーを発現し、CD45またはMHCクラスIIを発現せず、かつ軟骨細胞へと分化した。
【0109】
結論:インテグリンα10を発現するAT由来およびBM由来の細胞はプラスチックに付着し、検査MSCマーカー(CD44、CD90、およびCD105)を発現し、CD45またはMHCクラスIIを発現せずかつ軟骨細胞へと分化した。
【0110】
実施例2.MSCの軟骨細胞への分化
文献によれば、ウマMSCは、軟骨細胞に分化するのが困難である16~18。しかし、ヒトAT-MSCによる試験は、これがTGFβ受容体の欠如に起因し、したがって軟骨形成誘導シグナルTGFβ1への無応答性による可能性があることを示す9。この欠失は、ヒトAT由来MSCにおいてTGFβ受容体発現を刺激するBMP-6を加えることによって克服できる20。インテグリンα10の発現は、ヒトFGF-2処置MSCで増加され、それに続いて軟骨形成分化能が改善される15。ウマAT由来MSCは、ウシ胎児血清含有培地中およびFGF-2含有培地中での通常の細胞培養において軟骨形成分化が起こる寸前であった。軟骨形成分化をまた、増殖因子を添加せず、TGFβ3のみ、またはTGFβ3とBMP-6を2種の異なる濃度で含有する培地中での28日間のインキュベーション後に、ペレット大量培養中のII型コラーゲン発現により比較した。ウマBM由来MSCの軟骨形成分化を比較のために用いた。
【0111】
ウマAT由来MSCを培養し、3継代に拡張した後、FACSAria(BD)によるインテグリンα10蛍光活性化セルソーティングに供した。細胞を、モノクローナル抗インテグリンα10(Xintela)を用いて染色し、生細胞をインテグリンα10陽性細胞と、インテグリンα10陰性細胞との2集団に選別した。生細胞/死細胞の識別を7-AAD染色(BioLegend)と共に行った。選別した細胞を培地中で洗浄し、回収および1継代増殖のために再播種しその後軟骨形成分化実験を行った。
【0112】
非選別細胞およびインテグリンα10選別細胞の軟骨形成分化能を決定するために、4継代のMSC200,000を、20μg/LのTGFβ3、20μg/LのBMP-6、50mg/LのL-アスコルビン酸-2-リン酸、1%インスリン・トランスフェリン・セレニウム(ITS)、および100nMのデキサメタゾン(Sigma Aldrich)を補充した、4.5gのグルコース/L(Gibco)を含むDMEMからなる軟骨形成培地を含む15mLのポリプロピレンチューブ中でペレット化した。種々の増殖因子濃度およびこれらの組み合わせを試験して、ウマAT由来MSCの軟骨形成分化の条件を最適化した。培地を1週間あたり3回変え、通常は28日間、または軟骨形成時間研究で示されるように維持した。ペレットを、凍結切片用の最適切断温度化合物(Histo Lab)に包埋するか、またはRNA抽出のために急速凍結し-80℃で保管した。非誘導の軟骨形成ペレット大量培養物を、以降の免疫組織学染色およびPCR実験において陰性対照として用いた。
【0113】
ペレットを、プロテオグリカンの検出のために凍結切片化しAlcian Blueで染色するか、または軟骨特異的タンパク質II型コラーゲンに対する抗体(Ab3092,Abcam)およびインテグリンα10に対する抗体(Xintela)を用いる免疫組織化学分析にかけた。
【0114】
結論:AT由来およびBM由来ウマMSCは、軟骨細胞に分化する。
【0115】
実施例3.インテグリンα10の発現レベルは軟骨形成分化能と相関する
AT由来およびBM由来のウマMSC上のインテグリンα10β1の発現を検査した。ウマAT由来MSCを培養し、3継代に拡張した後、FACSAria(BD)によるインテグリンα10蛍光活性化セルソーティングに供した。細胞を、モノクローナル抗インテグリンα10β1(Xintela)を用いて染色し、生細胞をインテグリンα10陽性細胞と、インテグリンα10陰性細胞との2集団に選別した。生細胞/死細胞の識別を7-AAD染色(BioLegend)と共に行った。選別した細胞を培地中で洗浄し、回収および1継代増殖のために再播種した後軟骨形成分化実験を行った。
【0116】
インテグリンα10発現のフローサイトメトリー分析は、インテグリンα10発現がAT由来MSCと比較して、BM由来MSCにおいてかなり高いことを明らかにした。BM由来MSCのほぼ100%がインテグリンα10陽性であり、それに比べAT由来MSCの約30%がインテグリンα10陽性であった(
図2A~B)。
【0117】
軟骨形成分化に対するインテグリンα10の重要性を調べるために、AT由来MSCを、特異的モノクローナル抗体(モノクローナル抗体)を用いる蛍光活性化セルソーティング(FACSAria)によって2種の異なる細胞集団に選別した(
図3A)。免疫蛍光染色が示すように、すべてのインテグリンα10
高MSCはα10β1を発現し、発現は細胞表面に局在した(
図3B)。インテグリンα10濃縮(α10
高)およびα10枯渇(α10
低)の2種の細胞集団を次いで拡張し、ペレット大量培養で使用し、それらを未選別細胞と比較した。4種のウマドナー由来の細胞を使用した。選別した細胞をペレット大量培養に移し、28日間分化させ、切片化し免疫組織化学によって分析した。ペレット凍結切片の免疫組織化学分析は、インテグリンα10
高で作製したペレットにおいてII型コラーゲンの強い標識を示し、一方でインテグリンα10
低ペレットにおいてはII型コラーゲンは少なかった(
図4A~D)。
【0118】
ペレット大量培養の遺伝子発現分析を、未選別のおよび選別された((α10高)または(α10低))AT由来MSCからのRNAを用いて行った。GAPDHを内在性コントロールとして使用し、未選別細胞をΔΔCt計算のための標準試料として使用した。全RNAを、Precellys溶解キットビーズおよび「ホモジナイザー」を使用するQIAzol中でのペレットの均質化に続いてRNeasy Lipid Tissue Miniキット(QIAGEN)によるRNA単離によって抽出した。RNAを、SuperScript VILOキット(Invitrogen)を使用してcDNAに逆転写した。リアルタイムPCRを、StepOne Plus Real Time PCR System装置(Applied Biosystems)でプロトコルに従ってTaqMan Universal Master Mix IIと共に、ウマ遺伝子(ACAN、COL1A1、COL2A1、GAPDH、RUNX2、およびSOX9)転写物についてTaqManアッセイを用いて行った。相対的mRNA発現を、GAPDHが内在性コントロール(ΔCt)であり未選別細胞に対し正規化される(ΔΔCt)、2-ΔΔCt方法を使用して算出した。
【0119】
結論:遺伝子発現の結果は、インテグリンα10
低ペレットと比較してインテグリンα10
高ペレットにおけるII型コラーゲンおよびアグリカンのより高い発現を示し、インテグリンα10
高選別細胞からのペレットにおける良好な軟骨形成分化を示した。(
図5)。
【0120】
実施例4.インテグリンα10発現のレベルはホーミング能と相関する
非選別細胞およびインテグリンα10選別細胞の無傷の軟骨または損傷軟骨へのホーミング能を決定するために、MSCを、回転するプラスチックチューブ中でウシ骨軟骨外植片と1時間インキュベートした。これらの外植片は2つの部位で損傷していた。1つは軟骨下骨組織を露出し、1つは軟骨だけを露出する浅い傷であった。1時間後に、付着細胞を未損傷領域、軟骨欠損、および軟骨下欠損について別々に計数した(ImageJプラグインの細胞計数によって)。2つの独立した実験からの結果を
図6に示す。インテグリンα10
高細胞は、未選別細胞またはインテグリンα10
低細胞よりも全体的に良好に結合し(
図6A)、無傷軟骨(
図6B)、軟骨欠損(
図6C)、および軟骨下欠損(
図6D)に良好に結合した。
【0121】
結論:これは、インテグリンα10(α10高細胞)を高レベルで発現する細胞が軟骨修復の関心領域へのホーミングが良好であり得ることを示す。
【0122】
実施例5.外傷後変形性関節症(PTOA)を有するウマにおけるインテグリンα10β1陽性MSCの調査
本試験は、ウマPTOAモデルにおけるインテグリンα10β1陽性MSCの安全性および有効性を評価した。
【0123】
A.動物と手術
ウマを、年齢(2~5年の範囲)に基づき試験に組み入れるために選択した。登録の前に、各ウマは、身体系異常、特に本試験に影響を与え得る骨格筋異常および神経学的異常を除外するために、通常の全身の健康診断および跛行評価を受けた。後脚が健全であり健康全般が良好であると決定されたウマだけを本試験に登録した。
【0124】
到着後、ウマを厩舎に閉じ込めた。臨床パラメータを術前に1回、術後3日間1日2回、次いで術後10日間1日1回、評価した。毎日の健康診断は、バイタルパラメータ、粘膜の色、毛細血管再補充時間、胃腸運動、デジタルパルス、糞尿排泄量、食欲、および水分摂取を含んだ。健康診断値を各ウマの個体医療記録に記録した。麻酔を、認定獣医麻酔科医によって誘導し、維持し、モニターした。ウマを鎮静させ、次いで全身麻酔を、試験プロトコルとIACUCプロトコルに従って麻酔科医の裁量により誘導し維持した。さらなる薬物または輸液療法を、担当麻酔科医の裁量により、必要に応じて投与した。外科的処置の終了後、ウマを、パッドを入れた回復ボックスに横臥位に置いた。回復のためにウマに追加の鎮静剤を与えた。ウマが自発的に呼吸すると直ぐに、気管内チューブを取り外した。ウマを麻酔回復中モニターし続け、着実に立ち四肢すべてに完全に負荷がかかったならば厩舎に戻した。麻酔誘導、全身麻酔、または麻酔回復の間、重大な合併症はみられなかった。麻酔下のウマを背臥位に置き、左および右の後肢の足根骨関節を切った。皮膚の無菌処置および通常の滅菌ドレーピングを次いで行った。標準背側進入路を後肢の足根骨(距腿)関節に作成した。後述するように、18ゲージ針を関節に配置し滑液を分析のために収集した。関節を生理食塩水で膨張させた。5mmの刺切を伸筋腱の横に作成し、関節鏡を挿入した。関節を探索し、針を用いてインパクター導入のためのポータル位置を決定した。その先端が距骨の内側滑車稜の軸面に対して垂直になるようにインパクターを関節内に配置した。約1cm間隔を置いて、3回の衝撃を距骨の内側滑車稜の軸側面に適用した。衝撃力を、インパクター内のロードセルにより衝撃中に記録した。滑膜生検を組織学分析のために採取した。この方法を反対側の肢で繰り返した。関節鏡の映像をすべての手術で得た。皮膚切開を、非吸収性縫合材料を使用して簡単な中断パターンで閉じ、関節に包帯を巻き、ウマを回復のために運んだ。
【0125】
B.ウマインテグリンα10選択MSCの準備および注射
実施例1~3によって調製され、以降「Eq12a10+.1細胞」と呼ばれる、ウマインテグリンα10選択MSC細胞を、これらの試験で使用した。Eq12a10+.1細胞を、使用まで液体窒素中で保管した(衝撃外科手術後4日間)。バイアルを解凍し、細胞を計数し、生存率を、トリパンブルーを使用して評価した。細胞を次いで遠心分離し、約6×106細胞/mLの濃度でPBSに再懸濁した。細胞を、注射のために直ちに処置領域に移した。
【0126】
細胞懸濁液と対照PBSの両方の3mLアリコートを、3インチの18ゲージ針を通して6mLシリンジに無菌的に引き込んだ。細胞を20~30秒にわたりゆっくりと吸引した。注射に備えるために、ウマを必要に応じて化学的および物理的に拘束し、距腿関節の背内側嚢を両側で、無菌的に準備した。被験物質を受ける無作為の肢に最初に注射し、19ゲージ針を距腿関節の背内側コンパートメントに挿入し、滑液を3mLシリンジに吸引し、次いで充填したシリンジを取り付け、溶液をゆっくりと着実なペース(3~5秒にわたり)で空にして百万を超える細胞を関節腔に送達した。同じ方法をで、反対側の肢への対照PBSの注射について行った。
【0127】
術前の準備および麻酔を、初回手術に関して上述したように行った。麻酔下のウマを背臥位に置き、左および右の足根骨関節を切り準備し、通常のドレーピングを行った。標準背外側進入路を足根骨関節に作成した。後述するように、18ゲージ針を距腿関節に配置し滑液を分析のために収集した。関節を生理食塩水で膨張させた。5mmの刺切を関節鏡スリーブ用に伸筋腱の横に作成した。関節を探索し、ICRSスコアリング法を用いて、スコア化した。滑膜生検を組織学分析のために採取した。この方法を反対側の肢で繰り返した。皮膚切開を、非吸収性縫合材料を使用して閉じ、足根骨関節に包帯を巻き、ウマを回復のために運んだ。術後回復は、上述のとおりであった。
【0128】
各距腿関節からの滑液試料を、衝撃外科手術の直前、術後4日目、7日目、14日目、28日目、42日目、70日目、98日目、126日目、154日目、ならびに安楽死時にすべてのウマから吸引した。衝撃外科手術、被験物質注射、および6週目の再検査手術以外の時点で、ウマを必要に応じて化学的および物理的に拘束し、距腿関節の背内側嚢を両側で、無菌的に準備した。19ゲージ針を距腿関節の背内側コンパートメントに挿入し、滑液を3mLシリンジに吸引した。約1mLの吸引液を完全滑液評価(スメアおよび白血球百分率)のために、Cornell University Clinical Pathology Laboratoryに提出した。残りの滑液試料を遠心分離して細胞ペレットを除去し、微小遠心管に移し、-80℃の冷凍庫に保管した。
【0129】
6ヵ月目に、ウマを鎮静させ、AVMAガイドラインに従って、バルビツレート(ペントバルビタール)の静脈内過量投与により人道的に安楽死させた。滑液を無菌方法によって採取し、標準解剖検査を認定獣医病理学者によって行った。主要器官の組織試料を組織学的検査のために収集した。距腿関節を収集し、識別用のタグを付け、冷却器での輸送のために包装した。一連の管理形態を常に関節で保った。
【0130】
C.分析
MRI検査の後、距腿関節を切開して、検査した。滑膜の試料を収集し、組織学的処理のために固定した。墨汁を関節面に塗布し、デジタル写真を撮った。墨汁は微粒炭素を含み、軟骨完全性が損なわれている関節面の領域に付着する。衝撃部位ならびに非衝撃対照軟骨を含有する骨軟骨ブロックを収集し、組織学的処理のために固定した。
【0131】
複数のサンプリング時間による関節の健康の各評価項目(跛行、滑液分析、滑液ELISA、関節鏡スコア、滑膜組織像)について、混合効果モデルを、変量効果としてのウマのデータ、ならびに固定効果としての処置(対照または処置)と時間および処置*時間の交互作用項のデータに適合させた。チューキーのポストホックおよび線形対比を適宜使用して、特定の目的の群間の差を検定した。対応のあるt検定を、軟骨組織学およびMRIスコアで行った。統計分析を、JMP 12(SAS Institute, Cary, North Carolina, USA)を使用して行った。有意性をp<0.05で設定した。
【0132】
大多数の分析のモデル適合度は、適正(調整済みR2=0.25~0.50)または良好(R2=0.50~0.75)であり、in vivoの動物試験に許容できると考えられる。いくつかの症例では、モデル適合度は、劣っていた(調整済みR2=<0.25)。
【0133】
D.X線画像の結果
要約したX線画像データを表5に示す。
ベースライン(術前)所見:術前X線画像では、1症例を除くすべてのウマは、X線画像上正常な足根骨関節を有し、硬化、関節周囲骨棘、関節腔狭小化、または関節の腫れは無かった。1症例のウマに、近位中心足根骨の背内側表面に軽度の関節周囲骨棘が認められた。これは、記録され、試験の選択基準にとって重要でないと決定された。
【0134】
軟骨下骨硬化:6ヵ月の試験終了時に、対照群は、処置群よりもかなり多い硬化を有した(
図7;p=0.004;調整済みR
2=0.03)。硬化は骨密度を上げ、それは骨を硬くし、骨が関節軟骨から離れて力を吸収し伝える能力を減じる。硬化は骨関節症の特徴であり、軟骨劣化の原因または結果であり得る。本試験は外傷後変形性関節症のためのモデル系であるので、したがって軟骨下骨質硬化の増加は関節外傷の結果であるということになり、このモデルが変形性関節症を誘導することを検証する。試験終了時での対照群における硬化の増加は、対照群において軟骨が、体重負荷中に伝達される力の吸収が増加することに起因して経時的に劣化し続けることを示唆する。
【0135】
結論:6ヵ月の試験終了時に、より少ないX線撮影軟骨下骨質硬化が、対照群と比較して処置肢で見出された。軟骨下骨質硬化はおそらく、継続する軟骨劣化および関節炎の進行をもたらし、この影響は運動に直面して増強されると予想される。
【0136】
E.滑液ELISAの結果
6回のELISAを術後0日目、4日目、7日目、14日目、28日目、42日目、70日目、98日目、126日目、154日目、および169日目の時点で、左および右距腿関節から採取した滑液試料で行った。試料を遠心分離して細胞片を除去し、分析まで-80℃で保管した。要約したデータを以下の表9に示す。
【0137】
プロスタグランジンE2(PGE-2):MSCは、PGE-2の発現上昇を部分的に介する、免疫調節性であると考えられている。PGE-2は、0日目~28日目に処置群および対照群の双方で増加した。それは次いで、急激に減少し低いままであったが、試験を通してベースライン値よりも高かった。PGE-2濃度は、11時点のうち9時点で、対照肢と比較して、処置群において高かった。
28日目で、PGE-2は、0日目、4日目、42日目、56日目、126日目、および154日目の時点での対照と比較して、処置肢においてかなり増加し(
図8)、対照肢と比較して、処置肢において術後の関節環境の調節が向上したことを示唆している。
【0138】
コラーゲンCPII:このアッセイは、プロコラーゲンIIC末端プロペプチドアッセイとしても知られている。CPIIアッセイは、コラーゲンの形成過程で放出されるカルボキシプロペプチドを測定し、したがってII型コラーゲン合成速度の変化を反映する。CPIIは、対照肢と比較して処置肢からの滑液中で多い傾向があり(
図9)、処置肢におけるII型コラーゲン合成の増加を示唆する。処置肢および対照肢の双方は、0時点および試験完了時と比較して、術後7日目と14日目にCPIIが増加した。
【0139】
コラーゲンC2C:このアッセイは、コラゲナーゼによるII型コラーゲンの切断を介して(3/4ペプチドのC末端で)生成されるネオエピトープを測定する。C2C濃度は、術後4~14日目に処置関節および対照関節においてかなり増加し(
図10)、次いで試験を通して、0日目と大きく異ならない値に減少した。TNF-αのように、これは、軽度外傷後変形性関節症の1つとしてのモデルを支持する。
【0140】
F.軟骨組織学的検査の結果
H&EおよびSafranin-Oファストグリーンで染色したすべての骨軟骨標本を研究者のコンセンサスによってスコア化した。研究者らはスコアリングの間、処置群に対して盲検化された。データを、表11に要約したデータと共に
図11に示す。すべてのウマについて、各関節において軟骨の2カ所の非衝撃領域、すなわち距骨の外側滑車稜と、内側滑車稜上の衝撃領域と関節でつながる対向する関節面である脛骨の遠位中間稜とを検査した。両方の試料を検査し、次いで単一スコアを非衝撃軟骨に割り当てた。すべてのウマについて、3つの衝撃の各々を含有する内側滑車稜の病巣領域を検査し、次いで単一スコアを各関節の衝撃軟骨に割り当てた。
【0141】
全体的な観察-衝撃軟骨:予想どおり、軟骨のすべての衝撃領域は中等度~重度の異常軟骨スコアを有した。
【0142】
総関節スコア:結果はMSC処置が亀裂形成/細線維化についてかなり良好なスコアをもたらしたことを示す。
他のすべての成分スコアならびに総スコアも、対照と比較して、処置群において良好であった(表11)。
【0143】
軟骨の亀裂形成/細線維化:処置関節は、細線維化/亀裂形成(
図12、p=0.039、片側t検定)について、およびΔ細線維化/亀裂形成(p=0.030、片側t検定)についてかなり低い(良好な)スコアを有する。この所見は、処置関節が対照よりも傷害領域において構造損傷が少なかったことを示す。
【0144】
さらなる観察:軟骨の裂け目は、いくつかの標本中で、主観的に処置肢においてより多く治癒されることが認められた。この治癒タイプの反応は、これまでに外傷後変形性関節症のこの動物モデルにおいて認められていなかった。軟骨下骨質硬化は、同様に多数の標本で観察できる。
【0145】
【0146】
F.骨軟骨の免疫組織化学的検査(I型およびII型コラーゲンI)の結果
I型およびII型コラーゲンについての免疫組織化学的検査を骨軟骨切片で行った(
図11)。墨汁染色も行った(
図13)。本アッセイにおける本質的に高いばらつきのため、免疫組織化学切片の定量的評価は行わなかった。
【0147】
I型コラーゲン-非衝撃(離れた)軟骨:I型コラーゲンについての免疫組織化学は、処置対照肢および非処置対照肢の両方において離れた対照試料中でほとんど目立たず、関節軟骨のI型コラーゲン染色はなかった。
【0148】
I型コラーゲン-衝撃軟骨:I型コラーゲンの染色は、衝撃領域に限定され、全体的に関節軟骨面内の1/4~1/2に達した。変化は極めて少なく、処置肢と対照肢の間に差は認められなかった。修復組織の領域において(上述の「さらなる主観的観察」)、染色は修復組織の1/2の深さでみられただけであった。
【0149】
II型コラーゲン-非衝撃(離れた)軟骨:II型コラーゲンについての免疫組織化学は、対照試料においてほとんど目立たず、II型コラーゲンが軟骨全体に均一に分布していた。
【0150】
II型コラーゲン-衝撃軟骨:対照関節または処置関節においてII型コラーゲンが失われた領域は少なかった。衝撃に隣接した領域において、II型コラーゲンの染色はわずかに減少していた。I型コラーゲンと同様に、線維性修復の領域は、修復組織のより深い層で、II型コラーゲンを染色しただけであった。
【0151】
免疫調節ケモカイン:本試験において最もMSC特異的な所見は、対照と比較してEq12a10+.1MSCで処置した関節においてPGE-2濃度が上昇したことであった。PGE-2は、ケモカインおよび炎症誘導性細胞の走化性を調節し、したがって免疫病理学の重要なメディエーターである。すべての細胞はPGE-2を生成でき、MSCは、骨髄系細胞および間質細胞によってPGE-2の発現を増加させることが知られている。本試験において、滑液中のPGE-2濃度は、28日目にピークに達し、次いで本試験の残りの期間、減少した。
【0152】
結論:本前臨床試験は、外傷後変形性関節症の処置のためのEq12a10+.1 MSCの使用を支持する。この処置は安全であり、関節外傷の影響を軽減する際に効果的であり得ることを示唆する強力なエビデンスがある。例えば、軟骨の裂け目は、いくつかの標本中で、主観的に処置肢においてより多く治癒されることが認められた。この治癒タイプの反応は、これまでに外傷後変形性関節症のこの動物モデルにおいて認められていなかった。
【0153】
実施例6.免疫抑制
脂肪組織から単離されたウマインテグリンα10選択MSCの免疫抑制能も、検査した。免疫抑制アッセイを、異なる比率の同種異系MSCとの共培養物中で72時間コンカナバリンAで末梢血単核細胞(PBMC)を刺激することにより行った。リンパ球増殖を、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を加えてから24時間後にBrdU取り込みのフローサイトメトリー分析により測定した。T細胞を発現するBrdU陽性CD4の出現頻度を
図14に示す。
【0154】
結論:脂肪組織から単離されたウマインテグリンα10選択MSCは、MSC対PBMCの比率の上昇を伴うリンパ球増殖の低下として示される、T細胞上での免疫調節能を有する。最大の免疫抑制効果は、MSC対PBMCの1:1比率で生じた。
【0155】
均等物
前述の文書による明細書は、当業者が実施形態を実行できるのに十分であると考えられる。前述の説明および実施例は、特定の実施形態を詳述し、本発明者らによって意図される最良の形態を述べる。しかし、前述が本文においてどんなに詳述されているように見えても、実施形態は多くの方法で行われることが可能であり、添付の特許請求の範囲、およびそのいずれの均等物に従って解釈さるべきであることが理解されよう。
【0156】
本明細書で用いる場合、約という用語は、明示的に示されているか否かに関わらず、例えば、整数、分数、およびパーセンテージを含む数値を指す。大体という用語は、当業者が記載された値に相当する(例えば、同じ機能または結果を有する)と考える数値の範囲(例えば、記載された範囲の±5~10%)を指す。少なくとも、および約などの用語が数値または範囲のリストに先行する場合、その用語はリストに記載されたすべての値または範囲を修飾する。場合によっては、約という用語は、最も近い有効数字にまるめられる数値を含み得る。
【0157】
参考文献
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