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  • 特許-腫瘍プロテーゼ用の骨伸長システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】腫瘍プロテーゼ用の骨伸長システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/62 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
A61F2/62
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021545981
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 TR2019050811
(87)【国際公開番号】W WO2020231359
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】2019/07277
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】521345877
【氏名又は名称】ユルドゥズ テクニク ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YILDIZ TEKNIK UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】コカオグル, ストゥク
(72)【発明者】
【氏名】アクドガン, エルハン
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102498(JP,A)
【文献】特開2017-196297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007329(US,A1)
【文献】特表2017-532149(JP,A)
【文献】特表2012-507340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0056186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0172624(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/62
A61F 2/28
A61F 2/48
A61B 17/56
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線充電のために配置された内蔵電池(7)を含むプロテーゼ(202)を備える、腫瘍プロテーゼ用の骨伸長システム(100)であって、
伸長可能な機構(1)をさらに備え、
前記伸長可能な機構(1)は、
前記プロテーゼ(202)に接続されており、
使用中に、健康な四肢の長さ(107)のデータに基づいて、前記プロテーゼ(202)が設置された四肢の長さ(108)を変更するための調整手段によって伸長するように構成されており、
前記伸長可能な機構(1)は、伸長軸線に沿って互いに対して摺動可能な同軸に配置された2つの管(12及び13)を含むことによって、伸縮構造を有し、
前記プロテーゼ(202)は、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)を測定するのに適したセンサを備え、前記センサは、前記2つの管(12及び13)の互いに対する瞬間的な位置を判定し、前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)に対応する相対位置に基づいてデータ信号を生成するように構成されている、骨伸長システムにおいて、
前記プロテーゼ(202)は、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)に対応する前記データ信号の通信を受け取るように構成された内部制御ユニット(3)を含み、当該骨伸長システムは、外部制御ユニット(4)と、前記外部制御ユニット(4)へ通信すべき前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを測定及び追跡するように健康な四肢に外部から配置された外部センサ(5)とをさらに備えており、
前記外部センサ(5)は、健康な四肢(201)に近づけられたとき、前記健康な四肢(201)の遠位下端及び遠位上端に対応するさらなるセンサと通信して、前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを判定し、次いで前記外部制御ユニット(4)を介して、前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを前記内部制御ユニット(3)へ通信するように構成されていることを特徴とする、骨伸長システム。
【請求項2】
前記内部制御ユニット(3)は、伸長の程度、温度、及び電池充電レベルからなるリストから選択された1つ又は複数のプロテーゼ(202)に関係する物理値に関する情報を収集するためのセンサを含み、前記内部制御ユニット(3)は、前記1つ又は複数のプロテーゼ(202)に関係する物理値に関する情報を前記外部制御ユニット(4)へ通信するように構成されており、前記外部制御ユニット(4)は、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)を変更するためのコマンドを前記内部制御ユニット(3)へ通信するように構成されている、請求項1に記載の骨伸長システム。
【請求項3】
前記リストが、患者の姿勢状況に関する情報をさらに含む、請求項に記載の骨伸長システム。
【請求項4】
前記外部制御ユニット(4)は、前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)の変更を開始するための情報及び案内をユーザに提供するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
【請求項5】
当該骨伸長システムは、前記長さ(107及び108)データに基づいて、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)を変更する時間を判定し、それに応じて警告信号を生成するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
【請求項6】
当該骨伸長システムは、視覚及び/又は聴覚インターフェースを介して前記警告信号を通信するようにさらに構成されている、請求項5に記載の骨伸長システム。
【請求項7】
前記警告信号の生成後の時点で、前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)の変更をトリガするように構成されている、請求項5又は6に記載の骨伸長システム。
【請求項8】
前記伸長可能な機構は、人工膝関節(11)を含み、前記管のうちの1つ(12又は13)は、大腿に接続可能であり、前記人工膝関節(11)の一部分は、脛骨に接続可能であり、前記調整手段は、モータ(22)、スピンドルドライブ(23)、及びエンコーダ(24)を備え、前記モータ(22)は、前記スピンドルドライブ(23)によって前記2つの管(12及び13)を互いに対して動かすように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
【請求項9】
当該骨伸長システムは測定手段を備え、前記測定手段は、前記外部センサ(5)によって該測定手段の瞬間的な状況を外部から感知することによって患者の健康な四肢の骨の2つの遠位端間の距離を測定して、次いで前記外部制御ユニット(4)へ通信するための前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを生成するために、前記2つの遠位端に位置合わせされた送信器を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
【請求項10】
前記外部制御ユニット(4)は、前記健康な四肢の前記長さ(107)と前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)との差を特定するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
【請求項11】
前記差が所定の値を上回ると特定された後、コマンドによって患者を案内するように構成されている、請求項10に記載の骨伸長システム。
【請求項12】
前記内蔵電池は、前記プロテーゼ(202)に配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍プロテーゼ用の自律式の伸長可能なシステム、及びウェアラブル骨長測定センサを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、伸長可能な腫瘍プロテーゼを使用している骨肉腫患者は、年齢に伴う成長が続く限り、四肢長差の判定及び必要な場合は伸長のために、臨床施設を頻繁に訪問する必要がある。これにはいくつかの問題が伴う。これらの問題には、患者の日常生活が不便になるとともに医師の作業量が増加すること、患者が測定のたびに放射に暴露されること、伸長が周期的に(すなわち、断続的に又は間隔をあけて)適用されることから、伸長の適用が大規模になること(ステップ長がより大きくなる)、したがって患者の快適さが低下し、医師の作業量が増大することが含まれる。
【0003】
従来技術の腫瘍プロテーゼは、外部電磁場によるプロテーゼ内のモータの回転によって伸長される。必要な伸長量の判定は、患者が臨床施設を頻繁に訪問すること、及び前回の訪問からの経過時間により四肢長差を特定することによって実行される。発生した四肢長差の程度が大きい場合、再び臨床施設で医師による伸長処置が実行される。
【0004】
中国特許出願公開第105662663号公報は、本技術分野に関するものである。同文献に開示されているシステムによれば、患者の大腿を伸ばすべき時期及び程度の判定は、統計及び推定に基づくデータ、例えば患者の体重、中国百分位表、患者の家族による追跡及び知覚、移植の使用年数、又は患者が経た歩数に依拠しており、そのようなデータは、いくぶん主観的且つ単に近似的な結果をもたらす。約8年間の使用が予期された電池をどのように再充電するかに関する情報は与えられない。
【0005】
現在のシステムによれば、四肢長間の差を自律的に測定することはできず、医療施設を周期的に訪問する必要があること、医師の作業量が大きいこと、患者が測定の際に放射を頻繁に受けること、及び伸長プロセスが断続的に適用されるために高い程度の伸長が必要になることで患者の生活の快適さが損なわれることから、患者の日常生活は悪影響を受ける。
米国特許出願第2018/317980号公報、Verkerkeらの科学研究論文(DOI:10.1016/0141-5425(90)90126-8)及びAnderson Mらの科学研究論文(「下肢における成長及び成長の予測」、J.BONE JOINT VRMLG.,vol.45A,01.01.1963)及び中国特許出願公開105662663号公報は、本出願の技術分野に関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、従来技術における上述した欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、腫瘍プロテーゼ用の骨伸長システムを提案し、この骨伸長システムは、配線の必要なく充電するのに適した内蔵電池を含むプロテーゼを備え、システムは、プロテーゼに接続された伸長可能な機構をさらに備え、前記伸長可能な機構は、使用中、健康な四肢の長さに基づいて、前記機構を備えた四肢の長さを、健康な四肢のものに実質上等しい長さにするように構成される。
【0008】
本明細書に提供される図の簡単な説明は、本発明のさらなる理解を提供することのみを意図しており、したがって、保護の範囲又は内容を定義することを意図したものではなく、前記範囲は、この説明なしで解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明によるシステムの例示的な実施形態の好ましい1組の特徴間の機能を示す図である。
図2】本発明によるシステムの例示的な実施形態の断面図である。
図3】患者をシミュレートする実験的セットアップにおける本発明によるシステムの例示的な実施形態の例示的な使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した図を参照して、本発明について以下に詳細に開示する。これらの図で使用される参照番号を以下に挙げる。
1.伸長可能な機構
11.膝関節
12.外管
13.内管
2.モータドライブ、モータ、スピンドルドライブ、及びエンコーダの組合せ
21.モータドライブ/レジューサ
22.モータ
23.スピンドルドライブ(回転可能な駆動部材)
24.エンコーダ
3.内部制御ユニット
4.外部制御ユニット
5.外部センサ(例えば、ウェアラブルセンサ)
6.充電ユニット
7.(内蔵)電池
8.(ユーザ)
100.システム
101.電気エネルギー
102.電池電圧
103、104.情報-コマンド
105.伸長信号
106.長さ変化
107.健康な四肢長
108.データ信号(プロテーゼ長)
201.健康な四肢
202.プロテーゼ
203.健康な四肢
204.伸長モジュール
【0011】
上記の「背景」の章で述べた欠点を解消するために、伸長可能なモータ駆動式の知的腫瘍プロテーゼ(システム、100)が開発された。本発明で提案されるシステムと背景の章で述べたものとの重要な違いは、本発明によるシステムが自律式であるという点である。
【0012】
本発明によるシステム(100)では、電池(7)が用いられる。前記電池(7)は、内蔵電池(電池、7)とすることができ、例えばシステム(100)内の腫瘍プロテーゼ(プロテーゼ、202)に配置することができる。電池(7)は、外部エネルギー源に機械的に接触する必要なく、外部エネルギー源によって充電するのに適している。例えば、前記電池(7)は、「無線」式で充電するのに適したものとすることができる。
【0013】
さらに、本発明の内容では、健康な四肢の長さを測定するための外部センサ(5)ユニットが提案される。前記外部センサ(5)ユニットは、好ましくは、ウェアラブルに配置される。本発明によるシステム(100)は、外部センサ(5)によって提供される測定に基づく健康な四肢長及び患者の姿勢状況の機械学習ベースの推定のために配置される。
【0014】
四肢にプロテーゼ(202)を有する患者は、別の健康な四肢(201)(例えば、大腿にプロテーゼが設置されている場合、他の脚の大腿)に、外部(例えば、ウェアラブル)センサ(5)ユニットを着用することができ、そこから得られる「健康な四肢の長さ」データの追跡が可能になる。前記健康な四肢の長さデータは、「外部制御ユニット」(4)へ通信することができる。
【0015】
システム(100)は、プロテーゼ(202)に接続された伸長可能な機構(1)をさらに備える。前記伸長可能な機構(1)は、健康な四肢の長さに基づいて、プロテーゼが設置された四肢の長さを、健康な四肢の長さに実質上等しい値まで伸長するのに適している。伸長可能な機構(1)は、伸縮構造を有することができる。軽量化のため、伸長可能な機構(1)は、伸長軸線に沿って互いに対して摺動可能な2つの同軸に配置された管(パイプ)(12及び13)を備えることができる。
【0016】
プロテーゼ(202)は、前記プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)を測定するのに適したセンサを備えることができる。センサは、前記2つの管(12及び13)の互いに対する瞬間的な位置を判定することができる。前記相対位置に基づいてデータ信号(108)を生成することができ、次いで例えば「内部制御ユニット」(3)に通信することができる。したがって、前記相対位置に基づく前記データ信号(108)の大きさに基づいて、プロテーゼが設置された四肢の長さを計算により測定することができる。
【0017】
プロテーゼ(202)は、健康な四肢長(107)とプロテーゼが設置された四肢の長さ(108)とを比較し、次いで健康な四肢長とプロテーゼが設置された四肢の長さ(108)との差(すなわち、プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)をどれだけ変更、例えば伸長するべきか)を示す「差分データ」を判定するように構成された特徴を備えることができる。したがって、プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)を(最終的に)どれだけ変更するべきかを判定することができる。
【0018】
プロテーゼ(202)は、健康な四肢長(107)及びプロテーゼが設置された四肢の長さ(108)に関係するデータに基づいて、例えば差分データに基づいて、プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)を、健康な四肢長(107)に等しい又はより近い値にするために、伸長可能な機構(1)の長さを配置する調整手段を備える。前記調整手段は、モータドライブ(21)、モータ(22)、スピンドルドライブ(23)(回転可能な駆動手段)、及びエンコーダ(24)をともに含むことができる。
【0019】
したがって、システム(100)は、医療施設を訪ねる必要なく、健康な四肢長(107)に基づいて、プロテーゼ(20)の長さを変更(例えば、伸長)することができる。さらに、この処置は、従来技術で適用される間隔に対してはるかに頻繁に実行することができ、したがって従来技術で見られるものと比較して、プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)を更新、すなわち変更するたびに、プロテーゼ(202)の長さの差を非常に小さくすることができる。したがって、医療施設への必要な訪問の数が最小になり、患者が受ける痛みに関連する不快さの程度が減少し、患者の快適さが向上し、伸長処置が容易になり、医師の作業量が最小になる。
【0020】
システム(100)は、プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)を変更し(例えば、上述した長さ(107、108)データ又は差分データに基づいて)、それに応じて警告信号を生成する時間を判定するように構成することができる。前記警告信号は、視覚及び/又は聴覚インターフェースを介して通信することができる。システム(100)は、警告信号の前記生成後、患者によって好まれる時点、又は患者に適した時点に、プロテーゼが設置された四肢の長さ(108)を変更する機能をトリガするように構成することができる。
【0021】
本発明による好ましい実施形態のさらなる理解のために、以下の例を提供する。
【0022】
[例]
例示的な実施形態では、本発明によるシステム(100)は、以下の特徴を含むことができる。
【0023】
・伸長可能な機構(1)は、プロテーゼ(202)の長手方向の伸長を可能にする。伸長可能な機構は、同軸の管(12及び13)を含む。
【0024】
・モータドライブ(21)、モータ(22)、スピンドルドライブ(23)、及びエンコーダ(24)の組合せは、
ストライド長における十分な程度の力による伸長可能な機構(1)の長手方向の伸長、及び瞬間的な長さの測定を可能にする。周知の従来技術の伸長可能なプロテーゼは、前記回転子の運動を伸長可能な機構に伝える磁気回転子及び留めねじ機構を含み、そのような機構は、スピンドルドライブユニットの初期の型であると考えることができる。しかし、本発明より前の周知の体内インプラント(周知の腫瘍プロテーゼを含む)では、エンコーダ(24)による腫瘍プロテーゼの内側からの伸長の測定はまだ実施されていない。
【0025】
・内部制御ユニット(3)は、システム(100)の主制御手段である。システムの他の特徴から収集された情報を使用し、それに応じてコマンドを生成することによって、システム(100)は機能する。初めて、腫瘍プロテーゼに中心制御ユニットが確立されている。
【0026】
・外部制御ユニット(4)は、システム(100)とユーザとの間、及びシステム(100)とウェアラブルセンサ(5)との間の通信を可能にする。外部制御ユニットは、伸長が必要かどうかを判定し、伸長コマンドを内部制御ユニット(3)へ通信する。
【0027】
・ウェアラブルセンサ(5)は、センサを使用し、以て健康な四肢長(107)の測定を可能にする。したがって、センサを使用して、体内の一部(例えば、大腿の長さ)の測定を実現することができる。
【0028】
・充電ユニットは、前記充電ユニット内の充電制御モジュール及び充電コイルによって、電池(7)(使用中は患者の体内に残る)の充電を可能にする。
【0029】
図1に示す略図は、本発明による前記例示的なシステムのさらなる理解のために本明細書に参照されている。この略図に1、2、3、及び4と番号が付けられたユニット及びそれらの好ましい構成要素は、図2に示されており、5、6、及び7と番号が付けられたユニットは、図3に示す実験的セットアップに表されている。図3に示す他の構成要素は、試験に関係する実験的手段として使用されており、保護範囲を限定すると考えるべきではない。
【0030】
1)伸長可能な機構(1):伸長可能な機構は、人工膝関節(11)と、同軸に配置された少なくとも2つの管(12及び13)とを含む。管(12及び13)の1つは、心棒を介して大腿に接続可能であり、人工膝関節(11)の下部は、対応する心棒を介して脛骨に接続可能である。モータ(22)が駆動された後、2つの管(12及び13)は互いに対して動き、スピンドルドライブ(23)によって互いから離れて隔置される。以て、プロテーゼ(202)が伸長される。
【0031】
2)モータドライブ(21)、モータ(22)、スピンドルドライブ(23)、及びエンコーダ(24)の組合せ:モータ(22)(例えば、公称トルク3.33mNmの4.5Vのブラシレス直流モータ)と、スピンドルドライブ(23)(例えば、転換率850:1を有する)との組合せが、システムで使用される。モータ(22)を駆動するために、モータドライブ(21)が導入される。この組合せに導入された3チャネルインクリメンタルエンコーダ(24)(例えば、3つのチャネルを有する)から、モータ(22)の位置情報が取得される。この組合せによって、378Nの力及び低い伸長率(最大0.22mm/分)を伸長プロセスで実現することができる。
【0032】
3)内部制御ユニット(3):プロテーゼ(202)の膝関節に配置することができる内部制御ユニット(3)のセンサによって、プロテーゼ(202)に関係する物理値(例えば、伸長の程度、温度、内蔵電池(7)の充電レベル、及び患者の姿勢状況に関する情報)を測定することができる。内部制御ユニットは、センサから得られた情報(内部温度の上昇、内蔵電池充電レベルの低下、患者の姿勢状況など)を、外部制御ユニット(4)に通信する。伸長プロセスを適用するべきであるとき、内部制御ユニットは、外部制御ユニット(4)からコマンドを受け取り、センサによって、これらの状態が伸長に適しているかどうかを制御する。伸長プロセス中、内部制御ユニットは、モータドライブ(21)を制御して伸長プロセスを管理するユニットである。プロテーゼ(202)の内部温度は、内部制御ユニット(3)の下で機能する温度センサによって定期的に追跡することができる。温度が望ましくない値まで上昇したとき、内部制御ユニット(3)は、プロテーゼの構成要素を受動モードにし、伸長プロセスを中止することができる。
【0033】
4)外部制御ユニット(4):外部制御ユニットは、HMIパネルの形態とすることができ、ユーザとしての患者とシステムとの通信を可能にするように構成される。外部制御ユニットは、内部制御ユニット(3)からの情報を評価し、必要なときはそれに応じて患者に通知することができる。外部制御ユニットは、ウェアラブルセンサ(5)によって得られた健康な四肢長情報と、プロテーゼが設置された四肢の長さとを比較することができる。したがって、伸長の必要性が判定され、ユーザとしての患者及び内部制御ユニット(3)へ通信され、必要な場合は伸長コマンドを提供する。外部制御ユニットは、内蔵電池(7)の充電を開始及び停止する。
【0034】
5)外部(例えば、ウェアラブル)センサ(5):ユーザとしての患者は、ウェアラブルセンサ(5)を自身の健康な四肢に外側から接続することができる。ウェアラブルセンサ(5)は、可撓性の構造を有することができ、前記四肢に接続されたとき、健康な四肢の長さと同じだけ伸張することができる。患者の健康な四肢の大腿の下端及び上端に位置することができる送信器(例えば、受動RFIDタグ)と、ウェアラブルセンサ(5)ユニットに位置するセンサとを互いに位置合わせすることができ、互いに通信することができる。前記位置合わせが適切に実行されているかどうかは、外部制御ユニット(4)によって管理することができ、適切な位置合わせを調整するようにユーザとしての患者を案内することができる。適切な位置合わせが実現された後、ウェアラブルセンサ(5)内の長さ測定センサ(例えば、リニアポテンショメータ、赤外センサ、超音波センサ、又はレーザセンサ)によって、ウェアラブルセンサ(5)の長さを測定することができる。ウェアラブルセンサ(5)の長さは、健康な四肢長(107)の指標である。ウェアラブルセンサの長さのこの値は、外部制御ユニット(4)によって内部制御ユニット(3)へ通信することができる。健康な四肢の成長によって生じる四肢長差を、ウェアラブルセンサ(5)によって感知することができる。そのような四肢長差が生じたとき、システム(100)は、ユーザとしての患者を案内することによって、伸長処置を開始する。
【0035】
6)充電ユニット(6):プロテーゼ(202)のエネルギーは、人工膝関節(11)に位置することができる電池(7)によって供給される。内部制御ユニット(3)によって電池充電レベル情報を定期的に測定することができ、電池充電レベルが充電の開始のための所定の閾値レベルを下回ったとき、外部制御ユニット(4)へ警告信号を通信することができる。したがって、充電ユニットは、ユーザとしての患者による電池の充電を提供する。電池(7)の安全及び保護を提供するために、電池充電制御ユニットを用いることができる。したがって、電池電圧が閾値レベルを下回る値まで低下したときは、放電動作が開始され、電池電圧が前記閾値レベルを上回る値まで上昇したときは、充電動作が完遂される。
【0036】
7)内蔵電池(7):プロテーゼ(202)にエネルギーを提供するための内蔵電池(例えば、リチウムイオン)を、人工膝関節(11)に配置することができる。
【0037】
8)ユーザ(8):ユーザは、腫瘍プロテーゼが自身の体に移植された患者とすることができる。
【0038】
システム(101)は、患者の健康な四肢長(107)を測定することができ、前記健康な四肢長とプロテーゼが設置された四肢の長さ(108)とを比較して、伸長を自律的に決定することができる。プロテーゼ(202)は、例えば膝関節に配置するのに適した内部制御ユニット(3)が動作しているとき、伸長の程度、温度、内蔵電池充電レベル、及びプロテーゼの位置情報などの測定を提供するのに適したものになるように構成することができる。
【0039】
外部センサ(5)は、ウェアラブルセンサとして配置することができる。外部センサは、ユーザ(8)(例えば、患者)によって、例えば外部センサがウェアラブルである場合に結び付けることによって、健康な四肢(201)に近づけるのに適している。健康な四肢(201)(例えば、大腿)の遠位下端及び遠位上端に対応するセンサが、ウェアラブルセンサ(5)ユニットと通信することによって、健康な四肢長(107)を判定し、次いで外部制御ユニット(4)を介して内部制御ユニット(3)へ通信することができる。必要であり且つ状態が適している場合、ユーザとしての患者に通知及び案内することによって、伸長動作を開始することができる。関連治療区間における軟組織の治癒を可能にし、筋肉が弛緩相に入ることを可能にするために、伸長可能な機構(1)の日常的に伸長するステップ長が1mmに制限されることが好ましい。したがって、臨床施設を訪問する必要なく、快適で安全な四肢の伸長を実現することができる。
【0040】
本発明によるシステム(100)の例示的な使用は、以下の特徴を含むことができる。
【0041】
a)プロテーゼ(202)は、患者の骨に移植することができる。例えば、小児患者の大腿の腫瘍部分を、対応する膝関節及び成長板とともに外科的に除去し、本発明によるシステムのプロテーゼと交換することができる。
【0042】
b)プロテーゼが設置された四肢と対をなす健康な四肢長(107)を追跡するために、測定手段を用いることができる。例えば、健康な四肢の骨(この例では、大腿)の2つの遠位端に、前記遠位端間の距離を測定するための送信器を位置合わせすることができる。この処置は、ステップ(a)の外科手術と同時に行うことができる。
【0043】
c)ステップ(b)に記載した測定手段の瞬間的な状況を外部から感知するように構成されたセンサによって、健康な四肢長データを得ることができる。例えば、周期的に、ユーザとしての患者は、外部制御ユニットによってステップごとに案内されて、ウェアラブル外部センサ(5)を自身の健康な四肢に外部から結び付けることができる。例えば互いにほぼ対向することによって、センサ及び送信器が互いに位置合わせされた後、健康な四肢長(107)データが生成され、例えば長さセンサが、測定値を外部制御ユニット(4)に通信する。
【0044】
d)内部制御ユニット(3)は、場合によりプロテーゼ(202)の構造に提供されるエンコーダ(24)を使用して、プロテーゼ(202)の瞬間的な長さ情報又はプロテーゼが設置された四肢の長さ(108)情報をそのメモリに維持するように構成することができる。そのような情報は、外部制御ユニット(4)へ通信することができる。
【0045】
e)外部制御ユニット(4)は、健康な四肢長(107)とプロテーゼが設置された四肢の長さ(108)との差を特定するように構成することができる。システム(100)は、例えば外部制御ユニット(4)の構造がそれに応じて配置されることによって、差が所定の値を上回ると特定された後、コマンドによって患者を案内し、以て患者を伸長処置に向けて準備するように構成することができる。
【0046】
f)外部制御ユニット(4)は、内部制御ユニット(3)からプロテーゼセンサ情報(例えば、温度、患者の姿勢状況、内蔵電池充電レベル)を受け取ることによって、条件が適している場合に伸長処置を開始/トリガするように構成することができる。
【0047】
本発明によるシステム(100)の好ましい実施形態は、以下の有利な技術的効果のうちの1つ又は複数を提供するように構成することができる。
【0048】
・患者の健康な四肢内の骨の長さ(107)(例えば、患者の健康な脚の大腿の長さ)の測定が提供される。
【0049】
・患者に不快さを与えることなく、プロテーゼの瞬間的な長さ(108)の測定が提供される。
【0050】
・システムは、患者が起立しているときに伸長処置が行われることを回避するために、AHRSセンサ及び機械学習によって(例えば、それに応じて事前プログラムされたコントローラを含むことによって)、患者の姿勢状況を測定するように装備することができる。
【0051】
・システムは、内部制御ユニット(3)及び外部制御ユニット(4)のため、中心で制御及び決定することができ、したがって自律式に機能することができる。
【0052】
・プロテーゼ(202)は、前記プロテーゼの内部温度を測定して、プロテーゼを危険な温度レベルから保護するための温度測定手段を含むことができる。
【0053】
・内蔵電池(7)は、その瞬間的な充電レベルを測定するセンサを備えることができる。
【0054】
・内蔵電池(7)は、(外部又は遠隔から)無線で再充電することを可能にするように構成することができる。
[発明の項目]
[項目1]
無線充電のために配置された内蔵電池(7)を含むプロテーゼ(202)を備える、腫瘍プロテーゼ用の骨伸長システム(100)であって、
伸長可能な機構(1)をさらに備え、
前記伸長可能な機構(1)は、
前記プロテーゼ(202)に接続されており、
使用中に、健康な四肢の長さ(107)のデータに基づいて、前記プロテーゼ(202)が設置された四肢の長さ(108)を変更するための調整手段によって伸長するように構成されている、骨伸長システム。
[項目2]
前記伸長可能な機構(1)は、伸長軸線に沿って互いに対して摺動可能な同軸に配置された2つの管(12及び13)を含むことによって、伸縮構造を有する、項目1に記載の骨伸長システム。
[項目3]
前記プロテーゼ(202)は、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)を測定するのに適したセンサを備え、前記センサは、前記2つの管(12及び13)の互いに対する瞬間的な位置を判定し、前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)に対応する相対位置に基づいてデータ信号を生成するように構成されている、項目2に記載の骨伸長システム。
[項目4]
前記プロテーゼ(202)は、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)に対応する前記データ信号の通信を受け取るように構成された内部制御ユニット(3)を含み、当該骨伸長システムは、外部制御ユニット(4)と、前記外部制御ユニット(4)へ通信すべき前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを測定及び追跡するように健康な四肢に外部から配置された外部センサ(5)とをさらに備える、項目3に記載の骨伸長システム。
[項目5]
前記内部制御ユニット(3)は、伸長の程度、温度、電池充電レベル、及び好ましくは患者の姿勢状況に関する情報からなるリストから選択された1つ又は複数のプロテーゼ(202)に関係する物理値に関する情報を収集するためのセンサを含み、前記内部制御ユニット(3)は、前記1つ又は複数のプロテーゼ(202)に関係する物理値に関する情報を前記外部制御ユニット(4)へ通信するように構成されており、前記外部制御ユニット(4)は、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)を変更するためのコマンドを前記内部制御ユニット(3)へ通信するように構成されている、項目4に記載の骨伸長システム。
[項目6]
前記外部センサ(5)は、健康な四肢(201)に近づけられたとき、前記健康な四肢(201)の遠位下端及び遠位上端に対応するさらなるセンサと通信して、前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを判定し、次いで前記外部制御ユニット(4)を介して、前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを前記内部制御ユニット(3)へ通信するように構成されている、項目4又は5に記載の骨伸長システム。
[項目7]
前記外部制御ユニット(4)は、前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)の変更を開始するための情報及び案内をユーザに提供するように構成されている、項目4~6のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
[項目8]
当該骨伸長システムは、前記長さ(107及び108)データに基づいて、前記プロテーゼが設置された前記四肢の前記長さ(108)を変更する時間を判定し、それに応じて警告信号を生成するように構成されており、好ましくは、当該骨伸長システムは、視覚及び/又は聴覚インターフェースを介して前記警告信号を通信するようにさらに構成されている、項目4~7のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
[項目9]
前記警告信号の生成後の時点で、前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)の変更をトリガするように構成されている、項目8に記載の骨伸長システム。
[項目10]
前記伸長可能な機構は、人工膝関節(11)を含み、前記管のうちの1つ(12又は13)は、大腿に接続可能であり、前記人工膝関節(11)の一部分は、脛骨に接続可能であり、前記調整手段は、モータ(22)、スピンドルドライブ(23)、及びエンコーダ(24)を備え、前記モータ(22)は、前記スピンドルドライブ(23)によって前記2つの管(12及び13)を互いに対して動かすように構成されている、項目1~9のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
[項目11]
当該骨伸長システムは測定出願を備え、前記測定出段は、前記外部センサ(5)によって該測定手段の瞬間的な状況を外部から感知することによって前記2つの遠位端間の距離を測定して、次いで前記外部制御ユニット(4)へ通信するための前記健康な四肢の前記長さ(107)のデータを生成するために、患者の健康な四肢の骨の2つの遠位端に位置合わせされた送信器を含む、項目4~10のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
[項目12]
前記外部制御ユニット(4)は、前記健康な四肢の前記長さ(107)と前記プロテーゼ(202)が設置された前記四肢の前記長さ(108)との差を特定するように構成されている、項目4~11のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
[項目13]
前記差が所定の値を上回ると特定された後、コマンドによって患者を案内するように構成されている、項目12に記載の骨伸長システム。
[項目14]
前記内蔵電池は、前記プロテーゼ(202)に配置されている、項目1~13のいずれか一項に記載の骨伸長システム。
図1
図2
図3