(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】薄板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2018212416
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 順也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058629(JP,A)
【文献】特開2003-197729(JP,A)
【文献】特開2016-092213(JP,A)
【文献】実開昭62-012950(JP,U)
【文献】実開平04-082852(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部が形成され、外形が円形の薄板が収納可能な容器本体と、
前記容器本体に収納可能であり、前記薄板を載置可能な複数のサポート治具と、
前記サポート治具から取り外し可能な態様で前記サポート治具ごとに装着可能であり、所定半径の前記薄板の外周縁に径方向で当接可能な規制部材とを含
み、
前記規制部材は、前記サポート治具の表面に沿って延在する基部と、前記基部から上方向に突出する突出部とを含み、
前記規制部材が前記サポート治具に装着された状態において、前記規制部材のうちの、前記突出部は、他の部位よりも内径側に位置する、薄板収納容器。
【請求項2】
前面に開口部が形成され、外形が円形の薄板が収納可能な容器本体と、
前記容器本体に収納可能であり、前記薄板を載置可能な複数のサポート治具と、
前記サポート治具から取り外し可能な態様で前記サポート治具ごとに装着可能であり、所定半径の前記薄板の外周縁に径方向で当接可能な規制部材とを含み、
前記規制部材は、基部と、前記基部から上方向に突出する突出部とを含み、
前記基部は、前記サポート治具の表面に沿って延在する第1基部と、前記第1基部よりも径方向内側まで延在する第2基部とを含み、
前記第2基部は、前記サポート治具の前記表面と面一の上側表面を、前記サポート治具及び前記突出部よりも径方向内側に有する、薄板収納容器。
【請求項3】
前記規制部材は、複数の異なる前記所定半径に対応して複数種類設定される、
請求項1又は2に記載の薄板収納容器。
【請求項4】
前記規制部材は、嵌合により前記サポート治具に装着可能である、
請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の薄板収納容器。
【請求項5】
前記規制部材は、前記容器本体の正面を視て、左右両側に設けられる、
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の薄板収納容器。
【請求項6】
前記突出部は、円柱状又は楕円柱の形態、若しくは、湾曲中心が前記薄板の中心に対して外側となる態様で湾曲した壁状の形態である、
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の薄板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
同じサポート治具を使用しながら、径の異なる複数種類の薄板を収納することができる薄板収納容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、新たな径の薄板に対応させようとすると、サポート治具自体の設計を変更する必要が生じるため、多様な径の薄板に機動的に対応することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本発明は、多様な径の薄板に機動的に対応可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、前面に開口部が形成され、外形が円形の薄板が収納可能な容器本体と、
前記容器本体に収納可能であり、前記薄板を載置可能な複数のサポート治具と、
前記サポート治具から取り外し可能な態様で前記サポート治具ごとに装着可能であり、所定半径の前記薄板の外周縁に径方向で当接可能な規制部材とを含む、薄板収納容器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本発明によれば、多様な径の薄板に機動的に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係る薄板収納容器の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本実施例に係る薄板収納容器の下側を概略的に示す底面図である。
【
図3】蓋体を取り外した状態の薄板収納容器を示す斜視図である。
【
図4】水平面内の平面で切断した際の薄板収納容器の断面図である。
【
図5A】一枚のサポート治具の単品状態の斜視図である。
【
図5B】オフセット部材が取り付けられたサポート治具の斜視図である。
【
図6A】1つのオフセット部材の単品状態の平面図である。
【
図6B】1つのオフセット部材の単品状態を下側から視た斜視図である。
【
図7】他の実施例によるオフセット部材の説明図である。
【
図8】他の実施例によるオフセット部材の説明図である。
【
図9】他の実施例によるオフセット部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
以下の説明において、薄板収納容器1の左右方向(幅方向)をX方向、薄板収納容器1の前後方向をY方向、薄板収納容器1の上下方向(高さ方向)をZ方向といい、薄板収納容器1における上下・前後・左右・内外の方向を、単に上下・前後・左右・内外の方向という。また、「径方向」とは、特に言及しない限り、薄板収納容器1内に収納される外形が円形の薄板の中心を基準とした径方向を指す。なお、後述のように、薄板収納容器1内に収納可能な薄板Wの直径は多様であるので、直径の異なる薄板Wが収容されると、薄板Wの中心が厳密には若干変化するが、かかる変化は、「径方向」の用語の意義に実質的に影響しないため、「径方向」の用語の意義に関しては無視するものとする。また、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0011】
図1は、本実施例に係る薄板収納容器1の外観を概略的に示す斜視図である。
図2は、本実施例に係る薄板収納容器1の下側を概略的に示す底面図である。
図1及び
図2に示すように、実施例に係る薄板収納容器1は、容器本体3と、蓋体4と、を備えている。
【0012】
容器本体3は、内部に直径150mm~550mm、厚さ0.01mm~4.0mm等の薄板Wを収納するものである。薄板Wは、外形が円形である。薄板Wは、中心側まで中実の板(円盤状の板)であってもよいし、中心側が中空の板(リング状の板)であってもよい。薄板Wの素材は、任意であり、例えばシリコンやガラス、アルミナ、セラミックス等であってよい。例えば、薄板Wは、半導体ウェーハ、マスクガラス等であってよい。この場合、薄板Wは、加工対象、加工途中又は加工後の薄板であってよい。あるいは、薄板Wは、半導体製造装置で利用される治具として機能するものであり、例えばシリコンにより形成されるリング状の板であってもよい。
【0013】
容器本体3は、正面となる前側に開口部3aが形成されたフロントオープン型の容器であり、開口部3aに隣接して対向する一対の側壁3b及び側壁3cと、底壁3dと、天壁3eと、開口部3aに対向する背壁3fと、を備えている。なお、容器本体3の下面部には、容器本体3を加工装置に位置決めしたり固定したりするためのボトムプレート7が取り付けられており、ボトムプレート7には、容器本体3を加工装置に位置決めするための位置決め部材8が配設されている。
【0014】
蓋体4は、容器本体3の開口部3aに嵌め合わされて容器本体3を密封するものである。蓋体4の外周面には、容器本体3の開口部3aとの間をシールするシール部材が取り付けられており、蓋体4の内側面には、容器本体3に収納された薄板Wを個別に保持する弾性材の保持部材5が取り付けられている。また、蓋体4には、開口部3aに蓋体4が嵌め合わされた状態に保持する施錠機構9が内蔵されている。
【0015】
図3は、蓋体4を取り外した状態の薄板収納容器1を示す斜視図である。
図4は、水平面内の平面で切断した際の薄板収納容器1の断面図であって、
図1に示すIV-IV線における断面図である。
【0016】
図3及び
図4に示すように、容器本体3には、薄板Wが載置されるサポート治具10が積層されて容器本体3に収納されるサポート治具体11と、サポート治具体11を容器本体3に固定する固定部材12と、サポート治具10に載置された薄板Wの位置を規制するオフセット部材70(規制部材の一例)と、が収納される。
【0017】
図5Aは、一枚のサポート治具10の単品状態の斜視図であり、
図5Bは、オフセット部材70が取り付けられたサポート治具10の斜視図である。
図6Aは、1つのオフセット部材70の単品状態の平面図であり、
図6Bは、1つのオフセット部材70の単品状態を下側から視た斜視図である。
【0018】
図3~
図5Bに示すように、サポート治具体11を構成するサポート治具10は、容器本体3の開口部3aに向かって開口する板状に形成されている。すなわち、サポート治具10は、容器本体3の開口部3a側に向けて開口する開口部14が形成されたU字型の板状部材であり、少なくとも開口部14を囲う内側周縁に薄板Wが載置されるU字状の載置部15が形成されている。開口部14は、薄板Wを載置部15に載置する際や、薄板Wを載置部15から取り出す際に、搬送ロボットのハンド(エンドエフェクタ)がZ方向に上下動するのを可能とする空間である。開口部14の内側縁部の少なくとも一部は、載置部15に載置する薄板Wよりも内径側に位置している。
【0019】
また、サポート治具10には、固定部材12が挿入される固定部材挿入穴16と、オフセット部材70が嵌合される嵌合穴17と、容器本体3に対するサポート治具10の位置決めを行う位置決め用切り欠き18と、が形成されている。
【0020】
固定部材挿入穴16は、サポート治具10を上下に貫通して固定部材12が挿入される貫通穴である。固定部材挿入穴16は、サポート治具10の外周部に合計5箇所形成されており、容器本体3の左右の側壁3b及び側壁3cの近傍に2箇所ずつ形成されるとともに、容器本体3の背壁3fの近傍に1箇所形成されている。なお、固定部材挿入穴16は、薄板Wとの干渉を防止するために、載置部15の外側に形成されている。
【0021】
嵌合穴17は、オフセット部材70が嵌合される穴である。嵌合穴17は、左右に2つずつ設けられる。なお、嵌合穴17の位置や数等は任意である。ただし、水平面内でのオフセット部材70の回転を防止するために、好ましくは、嵌合穴17は、1つのオフセット部材70に対して2つ以上設けられる。
【0022】
左右に2つずつ設けられる嵌合穴17のうちの、左右の1つずつは、直径330mmの薄板Wに対して機能してもよい。この場合、嵌合穴17には、棒状の位置規制体(図示せず)が貫通する態様で設けられる。このような位置規制体は、特許文献1で開示されており、かかる位置規制体を用いることができる。
【0023】
位置決め用切り欠き18は、サポート治具10を細長いU字状に切り欠いた切り欠きである。位置決め用切り欠き18は、容器本体3の背壁3f側に配置される後端部に一対形成されており、互いに平行となるようにY方向に延びている。一方、容器本体3の背壁3f又は底壁3dには、一対の位置決め用切り欠き18に対応する位置に、容器本体3の前後方向に延びる位置決め用リブ39(
図4参照)が形成されている。そして、位置決め用切り欠き18に位置決め用リブ39が挿入されることで、容器本体3に対するサポート治具10の位置決めが行われる。
【0024】
なお、位置決め用切り欠き18は、少なくとも一枚のサポート治具10の位置決め用切り欠き18に挿入することができればよい。このため、位置決め用切り欠き18は、一枚のサポート治具10の位置決め用切り欠き18に対応する高さにのみ形成されてもよく、複数枚のサポート治具10の位置決め用切り欠き18に対応する高さに形成されてもよく、全てのサポート治具10の位置決め用切り欠き18に対応する高さに形成されてもよい。なお、一枚のサポート治具10の位置決め用切り欠き18に対応する高さにのみ形成される場合は、例えば、最下層に配置されるサポート治具10の位置決め用切り欠き18に対応する高さに形成することができる。
【0025】
オフセット部材70は、
図5A及び
図5Bに示すように、サポート治具10から取り外し可能な態様で、サポート治具10ごとに装着可能である。すなわち、オフセット部材70とサポート治具10との関係は、オフセット部材70がサポート治具10から取り外された
図5Aに示す状態と、オフセット部材70がサポート治具10に装着された
図5Bに示す状態との間で、変更可能である。
【0026】
オフセット部材70は、任意の材料により形成されてよい。例えば、オフセット部材70は、サポート治具10と同様の材料により形成されてよい。例えば、サポート治具10及びオフセット部材70は、ポリアセタール、ポリカーボネートやポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂や、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系などの熱可塑性エラストマーなどから形成することができる。また、これらの樹脂には、導電性を付与するためカーボン繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの添加剤を適宜加えることができる。また、剛性を向上させるためにガラス繊維を添加してもよいし、マイカやフッ素樹脂などを添加して摺動性を向上させることができる。
【0027】
オフセット部材70は、1枚のサポート治具10に対して、2つ設けられる。すなわち、オフセット部材70は、1枚のサポート治具10に対して、左右両側にそれぞれ設けられる。左側のオフセット部材70Lと、右側のオフセット部材70Rとは、左右対称の構成であり、以下では、特に言及しない限り、左右のオフセット部材70L、70Rを区別せずに、オフセット部材70と称する。なお、変形例では、左右のオフセット部材70L、70Rは、一枚のオフセット部材として実現されてもよい。
【0028】
オフセット部材70は、薄板Wの外周縁に径方向で当接可能である。具体的には、オフセット部材70は、
図4に示すように、サポート治具10に取り付けられた状態では、当該サポート治具10上に載置される薄板Wの外周縁に径方向で当接する。
【0029】
ここで、
図6A及び
図6Bを参照して、オフセット部材70について、より詳細に説明する。
【0030】
オフセット部材70は、
図6A及び
図6Bに示すように、基部70aと、前側突出部71と、後側突出部72(突出部の一例)と、嵌合部74とを含む。
【0031】
基部70aは、サポート治具10の表面(水平面)に沿って延在する。本実施例では、オフセット部材70がサポート治具10に装着された状態では、基部70aは、サポート治具10の上側の表面に下側の表面が面接触する。基部70aは、好ましくは、上面視で、サポート治具10からはみ出さない領域に延在する。また、基部70aは、固定部材12を避けるための切り欠き部701を有する。
【0032】
前側突出部71は、後述の後側突出部72と同様の形態であるが、後側突出部72よりも薄板Wの中心に対して外側にわずかにオフセットされる。前側突出部71は、サポート治具10上の薄板Wの水平面内のわずかな変位(横ズレ)を防止するために設けられる。なお、変形例では、前側突出部71は省略されてもよい。
【0033】
前側突出部71は、オフセット部材70がサポート治具10に装着された状態で、サポート治具10の載置部15の表面に対して所定高さH1(
図5B参照)を有する。所定高さH1は、後述の後側突出部72に関する所定高さH2と同様であってよい。すなわち、薄板Wの厚みよりも有意に大きく、かつ、基部70aの厚みよりも有意に大きい。これにより、薄板Wが前側突出部71を乗り上げて、径方向外側に移動することを効果的に防止できる。すなわち、前側突出部71による横ズレ防止機能を、より確実に発揮させることができる。
【0034】
後側突出部72は、基部70aの上側から上方向に突出する。後側突出部72は、オフセット部材70がサポート治具10に取り付けられた状態で、当該サポート治具10上に載置される薄板Wの外周縁に径方向で当接する。
【0035】
本実施例では、後側突出部72は、湾曲した壁状の形態である。後側突出部72の湾曲態様は、上面視で、湾曲中心が薄板Wの中心に対して外側となる態様である。これにより、後側突出部72は、薄板Wに対して径方向に点で接触できる。
【0036】
後側突出部72は、
図5Bに示すように、オフセット部材70がサポート治具10に装着された状態で、サポート治具10の載置部15の表面上に位置するように形成される。これにより、後側突出部72は、サポート治具10の載置部15の表面上に載せられた薄板Wに対して当接する際に、重力による撓みのない薄板Wの部分に対して当接できる。
【0037】
ここで、オフセット部材70は上述のように左右にそれぞれ設けられるので、薄板Wは、左右の後側突出部72によって2点で径方向に当接される。また、薄板Wは、前側で、蓋体4の保持部材5により径方向に当接される。この結果、薄板Wは、周方向に沿った異なる3点以上で当接されるので、径方向の変位が適切に規制される。以下、このような後側突出部72による機能(すなわち薄板Wの径方向外側の縁部に当接することで薄板Wの位置を径方向に規定する機能)を、「薄板Wに対する径方向位置規制機能」とも称する。
【0038】
換言すると、上面視で、左右の後側突出部72によって2点の位置と、保持部材5の接触点の位置とを通る円の直径が、オフセット部材70が装着されたサポート治具10によって適切に支持できる薄板Wの直径に対応する。従って、支持対象の薄板Wの直径に応じて、左右の後側突出部72の位置を設定することで、支持対象の薄板Wを適切に支持できる。そして、支持対象の薄板Wが複数種類あり、直径が異なる場合は、直径ごとに後側突出部72の位置が異なるオフセット部材70を複数種類用意することで、多様な直径の薄板Wに対応できる。
【0039】
なお、本実施例では、オフセット部材70は、一例として、直径310mmの薄板Wに対応するように構成される。また、オフセット部材70は、上述したように、直径310mmの薄板Wに対応するように構成された第1タイプに加えて、直径300mmの薄板Wに対応するように構成された第2タイプを有してよい。このようにして、複数のタイプのオフセット部材70を用意することで、多様な直径の薄板Wに対応できる。
【0040】
後側突出部72は、オフセット部材70がサポート治具10に装着された状態で、サポート治具10の載置部15の表面に対して所定高さH2(
図5B参照)を有する。所定高さH2は、薄板Wの厚みよりも有意に大きく、かつ、基部70aの厚みよりも有意に大きい。例えば所定高さH2は、上下方向で隣接するサポート治具10の間の隙間よりもわずかに小さい値であってよい。この場合、薄板Wが後側突出部72を乗り上げて、径方向外側に移動することを効果的に防止できる。すなわち、後側突出部72による薄板Wに対する径方向位置規制機能を、より確実に発揮させることができる。
【0041】
嵌合部74は、基部70aの下側から下方向に突出する態様で設けられる。嵌合部74は、上述のサポート治具10の嵌合穴17に嵌合する。
【0042】
ここで、
図6Bに示す例では、嵌合部74は、1つの嵌合穴17まわりに4つ分離して設けられている。具体的には、嵌合部74は、対の第1嵌合部74aと、対の第2嵌合部74bとを含む。対の第1嵌合部74aは、対の第2嵌合部74bよりも下方に延在し、下端部に爪741を有する。例えば、対の第2嵌合部74bの突出高さは、サポート治具10の板厚相当である。対の第1嵌合部74aの爪741は、サポート治具10の下面に引っかかる位置に設けられる。爪741は、嵌合穴17の径方向で径方向外側に延在する形態であり、嵌合穴17の開口縁部よりも外側まで延在する。これにより、嵌合穴17から嵌合部74が意図しない態様で抜けてしまう可能性を防止できる。
【0043】
また、
図6Bに示す例では、対の第1嵌合部74aと対の第2嵌合部74bは、下端面の角部(嵌合穴17の径方向で径方向外側の角部)がC面(嵌合穴17の径方向で径方向内側に向かうほど下方になる傾斜方向の傾斜面)742を有する。これにより、嵌合穴17への嵌合部74の嵌合が容易となる。なお、C面742は、
図6Bに示すように、爪741の下端面に連続する態様で形成されてよい。
【0044】
なお、嵌合部74は、例えば嵌合穴17に嵌合された状態で、嵌合穴17の径方向で径方向内側に弾性変形してもよい。例えば、対の第1嵌合部74aと対の第2嵌合部74bとが形成する外径(上下方向に視たときの外径)は、嵌合穴17の内径よりもわずかに大きくてもよい。この場合、嵌合部74と嵌合穴17との嵌合状態を安定的に維持できる。
【0045】
このように、本実施例によれば、サポート治具10ごとにオフセット部材70が設けられるので、サポート治具10ごとにオフセット部材70の脱着が可能となる。これにより、支持対象の薄板Wの変更等に起因して、異なる直径に対応するオフセット部材70に装着し直す必要が生じた場合でも、かかる交換作業が比較的容易となる。また、複数のサポート治具10のうちの、一部のサポート治具10に対しては、第1の直径に対応するオフセット部材70を装着し、他のサポート治具10に対しては、第1の直径とは異なる第2の直径に対応するオフセット部材70を装着するといった使用態様も可能となる。
【0046】
また、本実施例によれば、オフセット部材70は、支持対象の薄板Wの直径のバリエーションに対応するように、複数種類用意することが可能であり、サポート治具10を作製し直すことなく、多様な直径の薄板Wに対応することができる。
【0047】
また、本実施例によれば、オフセット部材70は、嵌合によってサポート治具10に装着されるので、容易に取り外し可能である。また、簡易な嵌合構造を利用して、オフセット部材70をサポート治具10に取り外し可能に装着できる。
【0048】
また、本実施例によれば、オフセット部材70は、一枚のサポート治具10に対して左右両側にそれぞれ設けられるので、左右の比較的離れた2箇所で薄板Wの位置(薄板収納容器1に対する薄板Wの位置)を径方向に規制できる。これにより、薄板Wの周方向の比較的近い2箇所で薄板Wの位置を径方向に規制する場合に比べて、後側突出部72による薄板Wに対する径方向位置規制機能を、より確実に発揮させることができる。なお、左右の後側突出部72による薄板Wとの接触点(2点)と、保持部材5による薄板Wとの接触点とは、薄板Wの周方向で等間隔になるほど、安定的に薄板Wの位置を径方向で規制できる。
【0049】
また、本実施例によれば、オフセット部材70の後側突出部72は、上述のように上面視で内側に凸状に湾曲する態様の壁状の形態であるので、薄板Wに点で径方向に接触できる。これにより、1つの後側突出部72が薄板Wの周方向の複数の点で薄板Wに径方向に当接する場合に比べて、精度良く薄板Wの位置(容器本体3内での薄板Wの位置)を径方向に規定できる。
【0050】
また、本実施例によれば、オフセット部材70の後側突出部72は、上述のように載置部15に対して所定高さH2まで上方に延在するので、薄板Wの径方向外側の移動による乗り上げを防止でき、後側突出部72による薄板Wに対する径方向位置規制機能を、より確実に発揮させることができる。
【0051】
また、本実施例によれば、オフセット部材70は、前側突出部71を有するので、サポート治具10上の薄板の水平面内のわずかな変位(横ズレ)を適切に防止できる。
【0052】
なお、本実施例では、オフセット部材70を複数種類用意にすることで、多様な直径の薄板Wに対応可能としているが、これに代えて又は加えて、同一のオフセット部材70の、サポート治具10に対する嵌合位置を可変とすることで、対応可能な薄板Wの直径の数を2つ以上としてもよい。すなわち、サポート治具10に嵌合穴17を複数設け、オフセット部材70を装着する位置(サポート治具10に対する位置)を可変とすることで、多様な直径の薄板Wに対応可能としてもよい。
【0053】
次に、オフセット部材に関する他の実施例について説明する。なお、以下で説明する各実施例のオフセット部材70A~70Cは、上述したオフセット部材70に代えて用いることもできるし、オフセット部材70とともに用いることもできる。
【0054】
図7は、他の実施例によるオフセット部材70Aの説明図であり、オフセット部材70Aがサポート治具10に装着された状態を示す斜視図である。
【0055】
本実施例によるオフセット部材70Aは、上述した実施例によるオフセット部材70に対して、前側突出部71が前側突出部71Aで置換され、かつ、後側突出部72が後側突出部72Aで置換された点が異なる。オフセット部材70Aの他の構成は、上述した実施例によるオフセット部材70と同様であってよい。
【0056】
前側突出部71Aは、
図7に示すように、円柱状の形態である。また、前側突出部71Aは、同様に、載置部15から所定高さH1まで延在してよい。
【0057】
本実施例によるオフセット部材70Aの前側突出部71Aによっても、上述した実施例によるオフセット部材70の前側突出部71と同様に機能できる。すなわち、同様の横ズレ防止機能を実現できる。
【0058】
後側突出部72Aは、
図7に示すように、円柱状の形態である。この場合も、後側突出部72Aは、薄板Wに対して径方向に点で接触できる。また、後側突出部72Aは、同様に、載置部15から所定高さH2まで延在してよい。
【0059】
本実施例によるオフセット部材70Aの後側突出部72Aによっても、上述した実施例によるオフセット部材70の後側突出部72と同様に機能できる。すなわち、同様の薄板Wに対する径方向位置規制機能を実現できる。
【0060】
従って、本実施例によるオフセット部材70Aを用いた場合でも、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
図8は、他の実施例によるオフセット部材70Bの説明図であり、オフセット部材70Bがサポート治具10に装着された状態を示す斜視図である。
【0062】
本実施例によるオフセット部材70Bは、上述した実施例によるオフセット部材70に対して、後側突出部72及び前側突出部71が省略された点が異なる。オフセット部材70Bの他の構成は、上述した実施例によるオフセット部材70と同様であってよい。
【0063】
本実施例によるオフセット部材70Bを用いる場合、後側突出部72及び前側突出部71が省略されることから、後側突出部72及び前側突出部71の各機能(乗り上げを防止する機能)が得られないものの、上述した実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、本実施例のオフセット部材70Bは、左右で一体であるが、左右で別体であってもよい。
【0065】
図9は、他の実施例によるオフセット部材70Cの説明図であり、オフセット部材70Cがサポート治具10に装着された状態を示す斜視図である。
【0066】
本実施例によるオフセット部材70Cは、上述した実施例によるオフセット部材70に対して、載置部15の機能を更に含む点が異なる。オフセット部材70Cは、例えば、直径300mmよりも有意に小径である薄板W(例えば直径200mmの薄板W)に対応するように構成された第3タイプとして利用できる。
【0067】
オフセット部材70Cは、基部70aCと、後側突出部72Cと、前側突出部71Cとを含む。なお、オフセット部材70Cは、上述した実施例のオフセット部材70の嵌合部74と同様の嵌合部を有する。従って、オフセット部材70Cは、サポート治具10に取り外し可能な態様で装着可能である。
【0068】
基部70aCは、第1基部70aC-1と、第2基部70aC-2とを含む。
【0069】
第1基部70aC-1は、上述した実施例のオフセット部材70の基部70aと実質的に同じであり、サポート治具10の表面(水平面)に沿って延在する。
【0070】
第2基部70aC-2は、第1基部70aC-1よりも下方にオフセットした上側表面を有する。具体的には、第2基部70aC-2は、オフセット部材70Cがサポート治具10に装着された状態において、サポート治具10の載置部15の上側表面と面一の上側表面を有する。従って、第2基部70aC-2は、サポート治具10の載置部15と同様に、所定の高さで薄板Wを支持する機能を有する。
【0071】
第2基部70aC-2は、第1基部70aC-1よりも径方向内側(すなわち薄板Wの中心側)まで延在する。すなわち、第2基部70aC-2は、サポート治具10だけでは支持できないような小径の薄板W(例えば直径200mmの薄板W)を支持できるように、径方向内側まで延在する。
【0072】
前側突出部71Cは、
図9に示すように、楕円柱の形態である。また、前側突出部71Cは、同様に、載置部15から所定高さH1まで延在してよい。
【0073】
本実施例によるオフセット部材70Cの前側突出部71Cによっても、上述した実施例によるオフセット部材70の前側突出部71と同様に機能できる。すなわち、同様の横ズレ防止機能を実現できる。
【0074】
後側突出部72Cは、
図9に示すように、楕円柱の形態である。この場合も、上述した実施例によるオフセット部材70の後側突出部72と同様、後側突出部72Cは、薄板Wに対して径方向に点で接触できる。また、後側突出部72Cは、同様に、載置部15から所定高さH2まで延在してよい。
【0075】
本実施例によるオフセット部材70Cの後側突出部72Cによっても、上述した実施例によるオフセット部材70の後側突出部72と同様に機能できる。すなわち、同様の薄板Wに対する径方向位置規制機能を実現できる。
【0076】
従って、本実施例によるオフセット部材70Aを用いた場合でも、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0077】
なお、本実施例では、後側突出部72C及び前側突出部71Cは、楕円柱の形態であったが、上述の後側突出部72及び前側突出部71のような、湾曲した壁状の形態であってもよいし、上述の後側突出部72A及び前側突出部71Aのような、円柱状の形態であってもよい。
【0078】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、前側突出部71が横ズレ防止機能を実現し、後側突出部72が径方向位置規制機能を実現しているが、逆であってもよい。すなわち、前側突出部71及び後側突出部72の最も径方向内側の位置を変更(逆の関係に)することで、前側突出部71が径方向位置規制機能を実現し、後側突出部72が横ズレ防止機能を実現してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 薄板収納容器
3 容器本体
3a 開口部
3b 側壁
3c 側壁
3d 底壁
3e 天壁
3f 背壁
4 蓋体
5 保持部材
9 施錠機構
10 サポート治具
11 サポート治具体
12 固定部材
14 開口部
15 載置部
16 固定部材挿入穴
17 嵌合穴
70(70L,70R) オフセット部材
70a 基部
70A オフセット部材
70aC 基部
70aC-1 第1基部
70aC-2 第2基部
70B オフセット部材
70C オフセット部材
71 前側突出部
71A 前側突出部
71C 前側突出部
72 後側突出部
72A 後側突出部
72C 後側突出部
74 嵌合部
74a 第1嵌合部
74b 第2嵌合部
741 爪
W 薄板