(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ及び眼内レンズ挿入システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2018163011
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中畑 義弘
(72)【発明者】
【氏名】傍嶋 達也
(72)【発明者】
【氏名】片山 真梧
(72)【発明者】
【氏名】長坂 信司
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536047(JP,A)
【文献】特開2015-208608(JP,A)
【文献】米国特許第04878903(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251845(US,A1)
【文献】特開平08-295345(JP,A)
【文献】特開昭60-123372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0133226(US,A1)
【文献】米国特許第6607537(US,B1)
【文献】特表2002-500917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを眼内に挿入するための眼内レンズ挿入器具を無菌状態で収容する眼内レンズ挿入器具の収容パッケージにおいて、
前記眼内レンズ挿入器具を滅菌包装する包装部材と、
前記眼内レンズ挿入器具に直接触れることなく前記包装部材内から前記眼内レンズ挿入器具を把持して取出すための取出し部材とを有し、
前記取出し部材は、
指先で直接触れることなく前記眼内レンズ挿入器具を把持するために、前記眼内レンズ挿入器具の一部分にて底面以外を覆うように形成された把持部を備え、前記眼内レンズ挿入器具と前記包装部材との間に配置されている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ。
【請求項2】
請求項
1に記載する眼内レンズ挿入器具の収容パッケージにおいて、
前記把持部は、前記眼内レンズ挿入器具を把持/開放可能な弾性を有する材質で形成されている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ。
【請求項3】
請求項
1又は請求項
2に記載する眼内レンズ挿入器具の収容パッケージにおいて、
前記取出し部材には、前記把持部の先端側に外側へ広がる防護部が設けられている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ。
【請求項4】
請求項1から請求項
3に記載するいずれか1つの眼内レンズ挿入器具の収容パッケージにおいて、
前記包装部材は、前記眼内レンズ挿入器具の全体を収容するケースを含み、
前記取出し部材は、前記ケースに収容された前記眼内レンズ挿入器具の前記ケースからの浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材を兼用する
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ。
【請求項5】
請求項1から請求項
4に記載するいずれか1つの眼内レンズ挿入器具の収容パッケージと、
前記収容パッケージに収容された前記眼内レンズ挿入器具とを備えたことを特徴する眼内レンズ挿入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内レンズを患者眼に挿入する眼内レンズ挿入器具を無菌状態で収容する眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ、及びその収容パッケージを備えた眼内レンズ挿入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白内障の治療方法の一つとして混濁した水晶体を摘出した後、その代わりに眼内レンズを眼内に挿入する手法が一般的に用いられている。眼内レンズの眼内への挿入には、インジェクターと呼ばれる眼内レンズ挿入器具が用いられる。このような白内障手術を行う手術室内では、清浄(無菌)領域と不浄領域とが明確に区画されている。
【0003】
ここで、眼内レンズ挿入器具は、例えば特許文献1に記載されているように、包装部材内に収容された後に滅菌処理され、無菌状態が確保された状態で出荷されている。従って、包装部材の外側は不浄物であり、内側のみが無菌状態となっている。そのため、包装部材と眼内レンズ挿入器具の両方を、一人の器具出し担当だけで通常取り扱うことができない。つまり、一人の器具出し担当だけで眼内レンズ挿入器具を清浄器具台に配置することができない。
【0004】
このようなことから一般的に、無菌領域と不浄領域とに器具出し担当がそれぞれ配置されている。そして、白内障手術において、例えば眼内レンズ挿入器具を清浄器具台に配置する場合には、不浄領域に配置された器具出し担当が、包装部材を把持しつつ開封し、無菌領域に配置された器具出し担当が、開封された包装部材の外側部分に触れることなく、包装部材内から眼内レンズ挿入器具を取出して清浄器具台に配置している。
【0005】
ここで、何らかの理由で器具出し担当が二人揃わなかった場合、手術の事前準備を一人だけで行うときには、包装部材を開封した後、眼内レンズ挿入器具に触れないようにしつつ、清浄器具台に向けて眼内レンズ挿入器具を包装部材から投げ落とす(包装部材から自重落下させる)ことしかできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、眼内レンズ挿入器具を包装部材から投げ落とすと、清浄器具台に他の器具と綺麗に並べて整列配置することができないばかりでなく、眼内レンズ挿入器具を損傷させるおそれがある。また、近年、予め眼内レンズが眼内レンズ挿入器具内に収容されているプリセットタイプのものが広く使用されている。このプリセットタイプの眼内レンズでは、挿入器具内における眼内レンズの位置が重要であり、この位置がずれてしまうと正常に眼内レンズを眼内へ挿入することができなくなる。そして、プリセットタイプの眼内レンズを投げ落とすことは、この位置ずれを誘発する恐れがあり好ましくない。このように、器具出し担当が一人だけで眼内レンズ挿入器具を清浄器具台に配置することは非常に困難である。
【0008】
さらに、プリセットタイプの眼内レンズの中には、輸送時の振動・衝撃などの影響を緩和するための固定部材が包装部材に追加され、より強固に収容パッケージに固定されているものがある。この場合、清浄器具台に向けてプリセットタイプの眼内レンズを包装部材から投げ落とすこと自体が困難となる。このような現状から、器具出し担当が一人だけで眼内レンズ挿入器具に直接触れることなく、無菌的に清浄器具台に配置することは非常に困難であるといえる。
【0009】
そこで、本開示は、上記した問題点を解決するために、一人だけで眼内レンズ挿入器具に直接触れることなく(無菌的に)、眼内レンズ挿入器具を包装部材内から取出して清浄器具台に配置することができる眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ、及びその収容パッケージを備えた眼内レンズ挿入システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
眼内レンズを眼内に挿入するための眼内レンズ挿入器具を無菌状態で収容する眼内レンズ挿入器具の収容パッケージにおいて、
前記眼内レンズ挿入器具を滅菌包装する包装部材と、
前記眼内レンズ挿入器具に直接触れることなく前記包装部材内から前記眼内レンズ挿入器具を把持して取出すための取出し部材とを有し、
前記取出し部材は、指先で直接触れることなく前記眼内レンズ挿入器具を把持するために、前記眼内レンズ挿入器具の一部分にて底面以外を覆うように形成された把持部を備え、前記眼内レンズ挿入器具と前記包装部材との間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の眼内レンズ挿入器具の収容パッケージ、及びその収容パッケージを備えた眼内レンズ挿入システムによれば、眼内レンズ挿入器具に直接触れることなく、眼内レンズ挿入器具を包装部材内から取出して清浄器具台に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の眼内レンズ挿入システムの外観斜視図である。
【
図2】本実施形態の眼内レンズ挿入システムにて包装シートを剥がした状態を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態の眼内レンズ挿入システムの分解斜視図である。
【
図4】本実施形態の取出し部材を示す拡大斜視図である。
【
図6】包装箱から収容パッケージを取出す状態を示す図である。
【
図7】収容パッケージの包装シートを剥がす状態を示す図である。
【
図8】収容パッケージから眼内レンズ挿入器具を取出す状態を示す図である。
【
図9】取出し部材を介して眼内レンズ挿入器具をケースから取出した状態を示す図である。
【
図10】眼内レンズ挿入器具を取出し部材とともに清浄器具台に配置した状態を示す図である。
【
図11】清浄器具台に配置した眼内レンズ挿入器具から取出し部材を分離した状態を示す図である。
【
図12】眼内レンズ挿入器具を清浄器具台に配置した状態を示す図である。
【
図13】眼内レンズ挿入システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。まず、眼内レンズ挿入器具システムの全体構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。なお、
図1では、ケース本体70への取出し部材40及び保護部材50の装着状態を説明するために、ケース本体70の一部を削り取った説明用の斜視図としている。また、
図2では、包装シート80を剥がした状態を示している。
【0014】
本実施形態の眼内レンズ挿入システムは、眼内レンズ挿入器具10と、眼内レンズ挿入器具10を収容する収容パッケージ1とを組み合わせたものである。眼内レンズ挿入器具10の収容パッケージ1は、眼内レンズ挿入器具10の全体を収容するケース30と、ケース30から眼内レンズ挿入器具を取出すための取出し部材40と、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10を滅菌包装する包装シート80とを備える。そして、ケース30は、ケース本体70と保護部材50を備える。なお、本実施形態のケース30のケース本体70は、シートを変形させる加工方法によって形成されている。ケース本体70には、眼内レンズ挿入器具10全体を収容できる凹凸部60が形成されている。この凹凸部60によって形成される空間部に、眼内レンズ挿入器具10が収容される。
【0015】
そして、ケース30の外周に形成された鍔部300に貼り付けられた包装シート80により、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10が滅菌包装されている。鍔部300に貼り付けられた包装シート80は、凹凸部60によって形成される空間部の開口箇所を塞ぐ。すなわち、本実施形態では、ケース30と包装シート80とが本開示の「包装部材」に相当する。このような収容パッケージ1は、紙箱81に収容される(
図6参照)。また、ケース本体70の上方外側面にはシール82が貼り付けられる。シール82は、製造された収容パッケージ1の識別用として用いられる。シール82には、ケース30に収容される眼内レンズ挿入器具10の種類を示す文字のほか、眼内レンズ挿入器具10に充填される眼内レンズの屈折度数等が表記される。
【0016】
ケース30は、ケース本体70と保護部材50を備える。ケース本体70には保護部材50が装着される。ケース本体70は眼内レンズ挿入器具10全体を収容する。ケース本体70は凹凸部60を備える。凹凸部60は凹凸形状で形成されており、凹凸形状によって形成される陥没空間部に眼内レンズ挿入器具10が収容される。なお、凹凸部60はケース本体70の中央部に形成されており、凹凸部60の周囲には平坦な鍔形状の鍔部300が形成されている。なお本実施形態では、凹凸部60の凹凸形状は眼内レンズ挿入器具10の形状に対応している。従って、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10は凹凸形状によって、ケース30内での移動(変位)が抑制されている。本実施形態のケース30は凹凸部60の凹凸形状と保護部材50とを併用することで、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の移動をより抑制している。
【0017】
本実施形態のケース本体70は、熱を加えて柔らかくした樹脂シートを金型に押し当て、シートと金型の間の空気を抜いてシートを金型の形状に成形する真空成形法で成形される。なお、真空形成法で加工された部品はブリスターパック,ブリスターケース等と呼ばれている。また、本実施形態のケース本体70は、材料として、透明色の樹脂を用いている。ケース本体70を透明色の樹脂で形成することで、透明なケース本体70を介して、ケース本体70内に収容された眼内レンズ挿入器具10の収容状態を視認することができる。
【0018】
なお、本実施形態のケース本体70は、断面の厚さが1mm以下の薄肉で形成されている。したがって、ケース本体70を容易に成形することができる。なお、ケース本体70は薄肉であるため、真空成形法によって片面(表面)の所定位置に所定形状の凸部(隆起部)が形成されると、片面の所定位置に対応した他面(裏面)の所定位置には、片面の凸形状に対応した凹形状(陥没部)が形成される。
【0019】
また、本実施形態のケース30の鍔部300には、包装シート80が接着(例えば溶着)される。包装シート80は不透明であるため、
図1のように、透明なケース30の表面を上方に向けて載置することで、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の状態を好適に視認することができる。なお、本実施形態の包装シート80は可撓性を有している。また、包装シート80はEOガス(酸化エチレンガス)等の滅菌ガス(殺菌ガス)を通過させることができる。したがって、ケース30に包装シート80を貼り付けた後でも眼内レンズ挿入器具10の滅菌処理を行うことが可能とされている。前述したように、包装シート80は可撓性を有しているため、使用時に容易に剥ぎ取ることが可能とされている。なお本実施形態は一例であり、ケース本体70の形成方法、包装シート80の特性等を適宜変更してもよい。収容パッケージを用いて眼内レンズ挿入器具を滅菌包装できればよい。
【0020】
ここで、ケース30に収容する眼内レンズ挿入器具10について、
図3を参照しながら説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、製造時に眼内レンズを装填(セット)しておくプリセットタイプの眼内レンズ挿入器具10とされている。製造時に眼内レンズを装填しておくことで、使用現場で眼内レンズを装填する作業が不要となり、使用現場で眼内レンズを速やかに患者眼の眼内へ挿入することができる。なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は樹脂材料で形成されている。
【0021】
本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、筒状の挿入器具本体100と棒状のプランジャー200を備える。挿入器具本体100は本体筒部130、張り出し部190、設置部120、及び挿入部110を備える。プランジャー200は、棒状の部材である。プランジャー200は、眼内レンズ挿入器具10に充填された眼内レンズを患者眼の眼内へと押し出す部材である。なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10に使用する眼内レンズは、折り畳むことが可能な軟性眼内レンズとされている。
【0022】
筒状の挿入器具本体100は、本体筒部130の基端から挿入部110の先端まで連通する中空部を有している。本体筒部130は外側面に張り出し部190を備えている。張り出し部190は、プランジャー200で眼内レンズを押し出す際に、使用者(術者又は介助者等)の指を引っ掛ける箇所として用いられる。設置部120は本体筒部130の先端に接続される。設置部120はプランジャー200で眼内レンズを押し出す直前に眼内レンズが配置される位置となる。挿入部110は先細りのテーパー形状に形成されており、設置部120に設置された軟性の眼内レンズが、挿入部110内でプランジャー200に押されて小さく折り畳まれていき、先端から排出されて眼内に挿入される。なお、眼内レンズ挿入器具10は、プランジャー200の進行が係止された状態で、ケース30に収容される。
【0023】
次に、取出し部材について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。取出し部材40は、眼内レンズ挿入器具10に直接触れることなくケース30から眼内レンズ挿入器具10を取出すための部材である。この取出し部材40は、収容パッケージ1内に設けられている。詳細には、取出し部材40は、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10と包装シート80との間に配置されている。本実施形態では、眼内レンズ挿入器具10の本体筒部130に取出し部材40が配置されている。
【0024】
取出し部材40は、把持部41と防護部42を備える。把持部41は、ケース30から取出す際に、眼内レンズ挿入器具を指先で間接的(直接触れず)に把持するための部分であり、眼内レンズ挿入器具10の一部分(本実施形態では本体筒部130)にて、眼内レンズ挿入器具10の底面以外を覆うように形成されている。言い換えると、把持部41は、眼内レンズ挿入器具10の底面側に開口部分を備えており、断面形状がコ字状(又はU字状)になっている。なお、眼内レンズ挿入器具10の底面とは、清浄器具台に配置される際に清浄器具台と対向する面(
図3に示す状態では下側面)である。本実施形態では眼内レンズ挿入器具10がケース30に収容された状態では、眼内レンズ挿入器具10の底面は凹凸部60の底(陥没形状の底)と向き合う。詳細は後述するが、使用者(術者,介助者等)は把持部41を把持して眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出した後、把持部41を持ち直すことなく眼内レンズ挿入器具10を清浄器具台に載置できる。
【0025】
把持部41は、弾性を有する材質(例えば、PETやポリプロピレン等の樹脂)で形成されている。これにより、把持部41は、眼内レンズ挿入器具10を把持/開放可能となっている。なお、眼内レンズ挿入器具10の把持/開放を可能とする柔軟性は、把持部41の材質自体によって持たせてもよいし、把持部41の肉厚を調整する(変化させる)ことによって持たせてもよい。
【0026】
そして、把持部41は、一般的に親指と人差し指又は中指で把持される。そのため、把持部41の側面41aの大きさが親指の大きさよりも小さいと、把持部41を介して眼内レンズ挿入器具10を把持した時に、指先が眼内レンズ挿入器具10に触れてしまうおそれがある。そのため、把持部41の側面41aの大きさ(
図4の寸法A)は、一般的な親指の寸法より大きくなっている。具体的には例えば、把持部41の側面41aの寸法Aは、20~30mm程度とすればよい。これにより、把持部41(取出し部材40)を介して眼内レンズ挿入器具10を把持した際に、指先が眼内レンズ挿入器具10に直接接触することを確実に防止することができる。なお、把持部41の側面41aの寸法Bは、眼内レンズ挿入器具10の本体筒部130の高さ寸法と同程度(例えば5~10mm程度)である。
【0027】
防護部42は、把持部41の先端側に外側(左右)へ広がるように設けられた部材である。本実施形態では、防護部42は把持部41と一体的に成形されている。この防護部42により、取出し部材40を介して眼内レンズ挿入器具10を把持した際に、指先が把持部41からはみ出して眼内レンズ挿入器具10に誤って触れてしまうことを防止することができる。また、ケース30から取出した眼内レンズ挿入器具10を清浄器具台に配置する際に、誤って指先が清浄器具台に接触することを防止することができる。
【0028】
ここで、本実施形態では、眼内レンズ挿入器具10を滅菌包装する包装部材として、眼内レンズ挿入器具10の全体を収容するケース30(ブリスターパック)と包装シート80を用いている。そして、収容パッケージ1内の眼内レンズ挿入器具10はプリセットタイプである。そのため、製品輸送時の振動や衝撃などの影響を緩和することが望ましい。
【0029】
そこで、上記の取出し部材40に、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10のケース30からの浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材としての機能を持たせてもよい。すなわち、
図5に示すように、取出し部材40aが、眼内レンズ挿入器具10のケース30からの浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材を兼用してもよい。この場合、取出し部材40aは、把持部41及び防護部42に加えて、張り出し部190の一部にケース30とは反対側(
図3では上側)から係合する張り出し部ガイド45と、張り出し部190付近の本体筒部130をガイドする本体筒部ガイド46とを備える。この張り出し部ガイド45と本体筒部ガイド46を設けることにより、包装シート80とケース30内の眼内レンズ挿入器具10との間にできる隙間に取出し部材40aが介在する。これにより、取出し部材40aが眼内レンズ挿入器具10のケース30からの浮き上がりを防止することができるため、製品輸送時の振動・衝撃などの影響を緩和することができる。
【0030】
続いて、使用者(術者,介助者等)が、上記した収容パッケージ1から眼内レンズ挿入器具10を取出して、眼内レンズ挿入器具10を清浄器具台400に整列配置する手順について、
図6~
図12を参照しながら説明する。まず、保管棚から紙箱81に収納された状態の収容パッケージ1を取出し、
図6に示すように、紙箱81から収容パッケージ1を引き出す。次に、
図7に示すように、ケース30に貼り付けられている包装シート80を剥がす。具体的には例えば、ケース30を左手(又は右手)で持って、右手(又は左手)で包装シート80を剥がす。
【0031】
そして、ケース30内の眼内レンズ挿入器具10を外部へ取出す。具体的には、
図8に示すように、取出し部材40を介して指先(例えば、親指と人差し指又は中指)で、眼内レンズ挿入器具10の本体筒部130を側方(左右方向)から把持する。その状態で、
図9に示すように、取出し部材40とともに、眼内レンズ挿入器具10をケース30から外部へ取出す。このように取出し部材40により、眼内レンズ挿入器具10に直接触れることなく、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取出すことができる。
【0032】
その後、
図10に示すように、ケース30から取出した眼内レンズ挿入器具10を取出し部材40とともに、清浄器具台400に静かに置く。このとき、眼内レンズ挿入器具10に振動・衝撃などがほとんど加わらないため、眼内レンズ挿入器具10内の眼内レンズの位置がずれることはないし、眼内レンズが損傷することもない。つまり本実施形態では眼内レンズ挿入器具10をケース30から投げ落とすのではなく、使用者が眼内レンズ挿入器具10を把持して清浄器具台400に載置するため、眼内レンズ挿入器具10への振動・衝撃を生じ難くし易い。また、取出し部材40の防護部42により、指先が眼内レンズ挿入器具10及び清浄器具台400に直接触れることはない。
【0033】
そして、取出し部材40を介して、清浄器具台400上で眼内レンズ挿入器具10の向きを整えて整列配置した後、取出し部材40を介しての眼内レンズ挿入器具10の把持を開放する。続いて、
図11に示すように、取出し部材40を持ち上げて眼内レンズ挿入器具10から引き離す。これにより、
図12に示すように、眼内レンズ挿入器具10が清浄器具台400に整列配置される。その後、取出し部材40を廃棄する。このように、本実施形態の収容パッケージ1によれば、一人の器具出し担当だけで、眼内レンズ挿入器具10及び清浄器具台400に触れることなく、眼内レンズ挿入器具10を清浄器具台400に整列配置することができる。これにより、今までは二人必要だった作業を、一人だけ行うことができる。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態の収容パッケージ1、及びそれを備えた眼内レンズ挿入システムでは、取出し部材40が内蔵されているので、取出し部材40を介して眼内レンズ挿入器具10をケース30から取出して清浄器具台400に静かに置くことができる。これにより、一人の器具出し担当だけで、眼内レンズ挿入器具10及び清浄器具台400に触れることなく(無菌的に)、眼内レンズ挿入器具10を清浄器具台400に整列配置することができる。また、眼内レンズ挿入器具10を清浄器具台400に配置するときに、眼内レンズ挿入器具10に振動や衝撃を加えることがないため、眼内レンズ挿入器具10内の眼内レンズの位置がずれたり、眼内レンズ挿入器具10が損傷することもない。
【0035】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、眼内レンズ挿入器具10の全体がケース30(ブリスターパック)に収容される場合を例示したが、
図13に示すように、眼内レンズ挿入器具10の一部が保護部材35に収容されてビニール包装36により滅菌包装される収容パッケージにも本開示の技術を適用することができる。また、包装部材としては滅菌包装が可能なものであればよく、ビニール包装の他、アルミ包装などを用いることもできる。なお、保護部材35としては、眼内レンズ挿入器具10を収容・固定するものの他、眼内レンズ挿入器具10の先端部分を保護する部材、挿入器具内の眼内レンズの位置ズレを防止する部材、眼内レンズ挿入器具10の可動部分の可動を規制する部材、及びこれらの部材が組み合わせられたもの等も含む。
【0036】
また、上記実施形態では、収容パッケージに収容される眼内レンズ挿入器具としてプリセットタイプのものを例示したが、使用現場で眼内レンズを眼内レンズ挿入器具に充填する非プリセットタイプのものであっても本開示の技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 収容パッケージ
10 眼内レンズ挿入器具
30 ケース
40 取出し部材
41 把持部
41a 側面
42 防護部
80 包装シート
130 本体筒部
400 清浄器具台