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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】歩行支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
A61H3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018104998
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208622
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/079491(WO,A1)
【文献】特開2018-61819(JP,A)
【文献】特開2011-115323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに設けられた左右一対のアーム部と、
左右一対の前記アーム部に設けられて使用者が把持可能で前記フレームに対して前後方向に移動可能な左右一対の把持部と、
前記フレームの下端に設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動して歩行支援装置を前進又は後進させる駆動手段と、
前記駆動手段の電源となるバッテリーと、
前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
路面上の段差との接触を検出する段差接触検出手段と、
を有して、それぞれの前記把持部を把持して腕を振りながら歩行する使用者とともに前進又は後進する歩行支援装置であって、
前記駆動制御手段は、
前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、段差と前記車輪との接触を検出し、
段差と接触したと判定した場合に、前記駆動輪における駆動トルクを増加させるように前記駆動手段を制御して前記段差を乗越えるように、前記歩行支援装置を前進させる、段差乗越制御を実行し、
それぞれの前記把持部を移動させることが可能なそれぞれの把持部駆動手段と、を有し、
前記駆動制御手段は、
前記段差乗越制御を実行する際に、前記把持部を前記フレームに対して後方向に所定距離だけ移動させるように前記把持部駆動手段を制御する、
歩行支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行支援装置であって、
前記フレームに対する前記把持部のそれぞれの移動を制限する把持部移動制限手段を有し、
前記駆動制御手段は、
前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、前記車輪が段差と接触したと判定した場合に、前記把持部のそれぞれを前記フレームに対する所定の位置に移動するように前記把持部駆動手段を制御し、前記把持部移動制限手段を制御して固定する、
歩行支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歩行支援装置であって、
それぞれの前記把持部の状態を検出する把持部状態検出手段を備え、
前記駆動制御手段は、
前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、前記車輪が段差と接触したと判定した場合、更に、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定した場合に、前記段差乗越制御を実行する、
歩行支援装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の歩行支援装置であって、
それぞれの前記把持部の状態を検出する把持部状態検出手段を備え、
前記駆動制御手段は、
前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、前記車輪が段差と接触したと判定した場合、更に、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、使用者の後進の意思を検出した場合に、所定距離だけ前記歩行支援装置を後進させるように前記駆動手段を制御し、その後、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定した場合に、前記段差乗越制御を実行する、
歩行支援装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の歩行支援装置であって、
前記駆動制御手段は、
前記車輪が段差と接触したと判定した後、所定期間経過後、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、前記把持部のそれぞれが受ける前方向へ加えられる力が前記把持部のそれぞれが受ける後方向へ加えられる力よりも大きい場合に、使用者が前記段差乗越意思を有していると判定する、
歩行支援装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の歩行支援装置であって、
前記駆動制御手段は、
使用者に前記段差乗越意思有りと判定した後、
前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、前記把持部のそれぞれが受ける前方向へ加えられる力と前記把持部のそれぞれが受ける後方向へ加えられる力の差が所定の大きさよりも小さくなる場合、又は前記フレームに対する前記把持部のそれぞれの位置が後端近傍位置である場合、前記段差乗越制御を終了させる、
歩行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自立歩行可能な使用者が、より質の高い歩行を行うには、歩行器に寄り掛からず、体幹を真っ直ぐにした正しい姿勢で、脚に同期させて正しく腕を振ることが非常に重要である。
【0003】
近年では、荷物台車、買物カート、歩行器、車椅子等、比較的小径の前輪を下端に備えた種々の手押し車がある。例えば使用者が荷物台車を押している際、段差に遭遇する場合がある。荷物台車の前輪の直径が200[mm]程度の場合、10[mm]程度の段差であれば、使用者が力強く押すだけで容易に乗り越えることができるが、30[mm]程度の段差になると、当該段差を乗り越えることは非常に困難である。このため、段差の乗り越えを容易にする車輪や車輪機構について、種々のものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、図12及び図13に示すように、前部車輪331と後部車輪332が取り付けられた可動ホルダ320が、固定ホルダ310に対して可動可能とされた段差越え用車輪301が開示されている。固定ホルダ310には、固定ホルダ軸311が固定されており、固定ホルダ軸311は、可動ホルダ320に形成された可動ホルダ長孔321に挿通され、固定ホルダ310と可動ホルダ320は、この固定ホルダ軸311と可動ホルダ長孔321にて連結されている。可動ホルダ320には、前バネ支持部322回りに回転する前部車輪331と、後部車輪軸部材324回りに回転する後部車輪332が設けられている。また固定ホルダ310には固定バネ支持部312が設けられ、可動ホルダ320には後バネ支持部323が設けられている。固定バネ支持部312と前バネ支持部322には前バネ325が取り付けられ、固定バネ支持部312と後バネ支持部323には後バネ326が取り付けられていることで、後部車輪332は地表に接地し、前部車輪331は地表から所定距離だけ上方となる位置に保持されている(図12参照)。段差に遭遇した場合、図13に示すように、固定ホルダ310が可動ホルダ長孔321に沿って前方に移動し、固定ホルダ310に対して可動ホルダ320が後方に移動する。さらに、固定ホルダ310に対して可動ホルダ320が反時計回り方向に回転し、後部車輪332が引き上げられる。そして段差を乗り越えた後、前バネ325と後バネ326の弾性力にて図12に示す状態に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-1102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12及び図13に示す特許文献1に記載された段差越え用車輪301は、固定ホルダ310と可動ホルダ320が固定ホルダ軸311と可動ホルダ長孔321にて連結されており、固定ホルダ310に対して可動ホルダ320が左右方向に傾斜しやすい。固定ホルダ310に対して可動ホルダ320が左右方向に傾斜すると、可動ホルダ320の動作に引っ掛かり等が発生し、段差乗り越えの動作がうまく働かない可能性がある。また、構造が複雑で。種々の部品を必要とする。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、他の部品を追加することなく、段差に遭遇した場合、容易に段差を乗り越えることができる歩行支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明は、フレームと、前記フレームに設けられた左右一対のアーム部と、左右一対の前記アーム部に設けられて使用者が把持可能で前記フレームに対して前後方向に移動可能な左右一対の把持部と、前記フレームの下端に設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、前記駆動輪を駆動して歩行支援装置を前進又は後進させる駆動手段と、前記駆動手段の電源となるバッテリーと、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、路面上の段差との接触を検出する段差接触検出手段と、を有して、それぞれの前記把持部を把持して腕を振りながら歩行する使用者とともに前進又は後進する歩行支援装置であって、前記駆動制御手段は、前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、段差と前記車輪との接触を検出し、段差と接触したと判定した場合に、前記駆動輪における駆動トルクを増加させるように前記駆動手段を制御して前記段差を乗越えるように、前記歩行支援装置を前進させる、段差乗越制御を実行する、歩行支援装置である。
【0009】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る歩行支援装置であって、それぞれの前記把持部を移動させることが可能なそれぞれの把持部駆動手段と、前記駆動制御手段は、前記段差乗越制御を実行する際に、前記把持部を前記フレームに対して後方向に所定距離だけ移動させるように前記把持部駆動手段を制御する、歩行支援装置である。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る歩行支援装置であって、前記フレームに対する前記把持部のそれぞれの移動を制限する把持部移動制限手段を有し、前記駆動制御手段は、前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、前記車輪が段差と接触したと判定した場合に、前記把持部のそれぞれを前記フレームに対する所定の位置に移動するように前記把持部駆動手段を制御し、前記把持部移動制限手段を制御して固定する、歩行支援装置である。
【0011】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明に係る歩行支援装置であって、それぞれの前記把持部の状態を検出する把持部状態検出手段を備え、前記駆動制御手段は、前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、前記車輪が段差と接触したと判定した場合、更に、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定した場合に、前記段差乗越制御を実行する、歩行支援装置である。
【0012】
本発明の第5の発明は、上記第1の発明~第3の発明に係る歩行支援装置であって、それぞれの前記把持部の状態を検出する把持部状態検出手段を備え、前記駆動制御手段は、前記段差接触検出手段からの検出信号に基づいて、前記車輪が段差と接触したと判定した場合、更に、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、使用者の後進の意思を検出した場合に、所定距離だけ前記歩行支援装置を後進させるように前記駆動手段を制御し、その後、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定した場合に、前記段差乗越制御を実行する、歩行支援装置である。
【0013】
本発明の第6の発明は、上記第4又は第5の発明に係る歩行支援装置であって、前記駆動制御手段は、前記車輪が段差と接触したと判定した後、所定期間経過後、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、前記把持部のそれぞれが受ける前方向へ加えられる力が前記把持部のそれぞれが受ける後方向へ加えられる力よりも大きい場合に、使用者が前記段差乗越意思を有していると判定する、歩行支援装置である。
【0014】
本発明の第7の発明は、上記第4の発明~第6の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置であって、前記駆動制御手段は、使用者に前記段差乗越意思有りと判定した後、前記把持部状態検出手段の情報に基づいて、前記把持部のそれぞれが受ける前方向へ加えられる力と前記把持部のそれぞれが受ける後方向へ加えられる力の差が所定の大きさよりも小さくなる場合、又は前記フレームに対する前記把持部のそれぞれの位置が後端近傍位置である場合、前記段差乗越制御を終了させる、歩行支援装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、他の部品を追加することなく、段差に遭遇した場合、容易に段差を乗り越えることができる。
【0016】
第2の発明によれば、歩行支援装置の段差の乗越えに際して、増加させられた駆動トルクで前進する歩行支援装置に使用者が引っ張られてバランスを崩すことを防止できる。
【0017】
第3の発明によれば、歩行支援装置が段差を乗り越えて使用者の段差乗越意思が無いと判定した場合、又は、アーム部の後端近傍位置に把持部の位置がある場合に、適切に歩行支援装置における段差乗越制御を終了する。
【0018】
第4の発明によれば、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定した場合に、段差乗越制御を実行する。これにより、使用者の意思に応じて、段差を乗越えることができる。
【0019】
第5の発明によれば、使用者の後進の意思を検出した場合に、所定距離だけ歩行支援装置を後進させるように駆動手段を制御し、更に、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定した場合に、段差乗越制御を実行する。これにより、歩行支援装置を後進させ弾みを付けて段差を乗り越えるため、より容易に段差を乗り越えることができる。
【0020】
第6の発明によれば、使用者が把持部を前方向に押した場合に、使用者の段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定するため、使用者の段差乗越意思を容易に検出して歩行支援装置を前進させることができる。
【0021】
第7の発明によれば、段差乗越制御において、アーム部における把持部を所定の位置に固定でき、把持部を介して、歩行支援装置を前進又は後進させる使用者の意思を適切に歩行支援装置に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】歩行支援装置の全体構成を説明する斜視図である。
図2】持ち手及びレールの構成及び機能を説明する斜視図である。
図3図2におけるIII-III方向から見た持ち手の断面図である。
図4図2におけるIV-IV方向から見た持ち手の断面図である。
図5】歩行支援装置の駆動制御手段の入出力を説明するブロック図である。
図6】歩行支援装置の駆動制御手段の全体処理及び移動負荷制御の処理手順を説明するフローチャートである。
図7】歩行支援装置の駆動制御手段の歩行制御の処理手順を説明するフローチャートである。
図8】歩行支援装置の駆動制御手段の段差乗越処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図9】歩行支援装置の駆動制御手段の段差乗越処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図10】各検出手段の出力に基づいて決められる歩行支援装置の動作モードを説明する図である。
図11】歩行支援装置の段差乗越え動作を説明する図である。
図12】従来の段差乗り越え車輪の構造と、当該段差乗り越え車輪が段差に接触する前の状態を説明する図である。
図13】従来の段差乗り越え車輪が段差を乗り越える動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお、図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、各軸は互いに直交している。そして図1では、Z軸方向は、前輪60FRから後輪60RRへの方向を示し、X軸方向は、フレーム50における左から右へ向かう方向を示している。また、フレーム50において、X軸方向を“右”、X軸方向に対して反対方向を“左”とし、Z軸方向の反対方向を“前”、Z軸方向を“後”とする。また、Y軸方向を“上”、Y軸方向の反対方向を“下”とする。
【0024】
●[第1の実施の形態の概略全体構成(図1)]
図1を用いて本発明を実施するための形態の概略構成を説明する。図1は本実施の形態の歩行支援装置10を説明する図である。歩行支援装置10は、持ち手20R、20L(把持部に相当)と、レール30R、30L(アーム部に相当)と、駆動制御手段40と、フレーム50と、前輪60FR、60FL(車輪に相当)と、後輪60RR、60RL(駆動輪に相当)と、駆動手段64R、64L(例えば電動モータ)と、コントロールパネル70と、バッテリーBと、を有している。
【0025】
図1に示すように、フレーム50は、左右方向に対して対称の形状をしており、使用者はフレーム50の開放されている側からレール30Rとレール30Lとの間に入り、歩行支援装置10を操作する。前輪60FR、60FLは、フレーム50における前方下端に設けられた従動輪(旋回自在なキャスタ輪)である。後輪60RR、60RLは、フレーム50における後方下端に設けられた駆動輪であり、ベルト62を介して駆動手段64R、64Lでそれぞれ駆動される。図1に示す例では、駆動輪である後輪は左右一対であって、それぞれ独立に駆動手段(64R、64L)により駆動される例を示している。
【0026】
フレーム50の右側にはレール30R、左側にはレール30Lがそれぞれ設けられている。レール30R、30Lのそれぞれには、上方に突出した持ち手20R、20Lがそれぞれ設けられている。持ち手20R、20Lは、使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせたレール30R、30Lのそれぞれの可動範囲内を前後に移動する。レールと持ち手は、左右一対で設けられている。
【0027】
また、フレーム50には、X軸Y軸Z軸のそれぞれの軸方向における歩行支援装置10の傾きを検出する3軸加速度・角速度センサー52(段差接触検出手段に相当)が設けられている。
【0028】
3軸加速度・角速度センサー52は、X軸Y軸Z軸の3方向の軸のそれぞれに対して加速度を計測するとともに、3方向のそれぞれの軸を中心とした回転における角速度を計測する。3軸加速度・角速度センサー52は、例えば、歩行支援装置10が傾斜面を進行している場合、傾斜面に対する車両におけるX軸Y軸Z軸のそれぞれの傾きに応じた検出信号を駆動制御手段40に出力する。また、3軸加速度・角速度センサー52は、歩行支援装置10の車体に加えられた加速度の変化(車体への衝撃)も検出し、検出した加速度の変化に応じた信号を駆動制御手段40に出力する。また、3軸加速度・角速度センサー52は、歩行支援装置10の車体のピッチ角速度、ヨー角速度、ロール角速度も検出し、検出した角速度に応じた信号を駆動制御手段40に出力する。
【0029】
図1に示すように、コントロールパネル70は、例えばフレーム50の上部であって使用者による操作が容易な位置に設けられている。コントロールパネル70は、メインスイッチ72と、アシスト量調整ボリューム74aと、負荷量調整ボリューム74bと、移動負荷制御モード切替76と、モニター78と、を有している。
【0030】
メインスイッチ72は、歩行支援装置10のメインのスイッチであり、オンにするとバッテリーBから駆動制御手段40と駆動手段64R、64Lへ電力を供給し、歩行支援装置10の操作を可能にする。
【0031】
移動負荷制御モード切替76は、後述するモータ32R、32L(把持部駆動手段に相当)(図2参照)によるレール30R、30Lにおける持ち手20R、20Lの移動をアシストするアシストモード又は移動に負荷を掛ける負荷モードを切り替える。例えば移動負荷制御モード切替76は、持ち手の移動をアシストする「アシストモード」と、持ち手の移動に負荷を加える「負荷モード」と、持ち手の移動に対してアシストも負荷の付与も行わない「ノーマルモード」と、の3つのモードの切り替えを可能とする。
【0032】
また、アシスト量調整ボリューム74aは、アシストモードにおけるアシスト量を、負荷量調整ボリューム74bは負荷モードにおける負荷量を、それぞれ調整するボリュームである。モニター78は、種々の状態を表示するモニターで、例えばバッテリーBの充電量、各種モードの設定、動作の状態等を表示する。
【0033】
●[歩行支援装置10の詳細な構造(図2図4)]
図2図4を用いて、歩行支援装置10の構造について詳細に説明する。なお、歩行支援装置10は、コントロールパネル70と駆動制御手段40と3軸加速度・角速度センサー52とバッテリーBを除き、フレーム50における左右において対称な構造であるため、左側の説明を省略して主に右側の構造について説明する。図2は、持ち手20R及びレール30Rの構成及び機能を説明する斜視図である。また、図3は、図2におけるIII-III方向から見た持ち手20Rの断面図である。図4は、図2におけるIV-IV方向から見た持ち手20Rの断面図である。
【0034】
図2に示すように、レール30Rは、持ち手20Rと、プーリーPB、PFと、ワイヤーWと、を有している。レール30Rは、上方向に凹状に湾曲した形状を有し、前後方向に沿って上方向に開口するレールスリット部38を有している。また、レール30Rは、前後方向における両端に、プーリーPB、PFがそれぞれ設けられている。ワイヤーWは、前方に配置されたプーリーPFと後方に配置されたプーリーPBに掛けられ、それぞれの回転を連動させる。また、モータ32Rと右持ち手位置検出手段34R(例えばエンコーダ)と持ち手移動制限手段35Rは、プーリーPFに対して同軸に設けられている。図4に示すように、アンカー部22Bのワイヤー接続部WAにはワイヤーが固定され、ワイヤー孔WHにはワイヤーが固定されることなく挿通されている。そしてアンカー部22Bには持ち手20Rが接続されている。これにより、モータ32Rは、プーリーPFを回転させてワイヤーWをプーリー間で回転させることで、持ち手20Rをレール30Rに沿って移動させることを可能とする。また、モータ32Rは、持ち手20Rの移動をアシスト又は、持ち手20Rの移動に負荷を掛けることができる。右持ち手位置検出手段34Rは、レール30Rにおける持ち手20Rの移動に伴うプーリーPFの回転量、すなわち持ち手20Rの移動量を駆動制御手段40へ出力する。
【0035】
図3に示すように、持ち手20Rは、持ち手軸部21aと、軸部嵌入孔21bと、スライダ22と、グリップ部26aと、スイッチグリップ部26b、26baと、ブレーキレバーBKLと、を有している。また、スライダ22は、持ち手保持部22Aとアンカー部22Bからなる。
【0036】
図3に示すように、付勢手段24の一方端が持ち手軸部21aに接続され、他方端が軸部嵌入孔21bの底部に接続されている。持ち手軸部21aの付勢手段24が接続されている端部には円周方向に鍔部21cが設けられている。また、軸部嵌入孔21bにおける開口の内側壁面には、内鍔部20cが設けられている。これにより、グリップ部26aは、持ち手軸部21aと分離することなく、持ち手軸部21aの長手方向に沿って上下にスライド可能である。すなわち、持ち手20Rは、突出方向への伸縮を可能とする伸縮機構を有している。
【0037】
持ち手軸部21aの付勢手段24が接続されていない側には、持ち手支持軸JKが設けられている。持ち手支持軸JKは、軸の先端が略球状に形成されており、持ち手保持部22Aに設けられた凹部とボールジョイントを形成する。これにより、持ち手20Rは、持ち手保持部22Aに対して開口で規制される範囲内で前後左右に傾けることができる(図3図4参照)。この傾き量を検出する右持ち手傾き検出手段33Rが、持ち手保持部22Aの開口において設けられ前後左右から持ち手支持軸JKに対して配置されている。右持ち手傾き検出手段33Rは、例えば持ち手支持軸JK側面と持ち手保持部22Aの開口との間にバネを設け、そのバネの伸縮伸長による圧力を検出する圧力センサでもよい。
【0038】
図3に示すように、スイッチグリップ部26b、26baは、グリップ付勢手段28(例えばバネ)により、グリップ部26aとスイッチグリップ部26b、26baとの間に所定の隙間を生じるように設けられている。把持検出手段25Rは、使用者が持ち手20Rを把持するとスイッチグリップ部26bがグリップ部26a側へ移動し、掛けられた圧力に応じた信号を出力して、圧力が掛からなくなるとオフする。また、把持検出手段25aRは、使用者が持ち手20Rを把持するとスイッチグリップ部26baがグリップ部26a側へ移動し、掛けられた圧力に応じた信号を出力して、圧力が掛からなくなるとオフする。把持検出手段25R、25aRは、例えば圧力センサ又は荷重センサ等である。把持検出手段25Rは、加えられた力の大きさ(後方向へ加えられる力Fb)に応じた信号を出力する。把持検出手段25aRは、加えられた力の大きさ(前方向へ加えられる力Ff)に応じた信号を出力する。
【0039】
ブレーキレバーBKLは、一方端がグリップ部26aにおける前側下方に接続されている。使用者が、ブレーキレバーBKLを把持してグリップ部26a側に引くと、前輪60FR、60FL、後輪60RR、60RLの回転をロックし、そのロック状態が維持され、さらに引くとロックを解除する機構を有する(図示省略)。
【0040】
図2に示すように、レール30Rには、フレーム50に対する持ち手20Rの移動の許可と禁止を行う持ち手移動制限手段35Rが設けられている。例えば持ち手移動制限手段35Rは、モータ32Rの回転をロックするロック機構を有し、モータ32Rの回転をロックすることで持ち手の移動を禁止し、モータ32Rの回転のロックを解除することで、レールに対する(すなわち、フレームに対する)持ち手の移動を許可する。また、このロック機構として、例えばパウダーブレーキを用いても良いし、モータ32Rに直流の大電流を印加し、ロックさせても良い。
【0041】
図2図4に示すように、アンカー部22Bに設けられたワイヤー孔WHにはワイヤーWの一方が挿通されており、ワイヤーWの他方がワイヤー接続部WAに接続されている(固定されている)。また、持ち手20Rは、持ち手保持部22Aとアンカー部22Bを接続するくびれた部分がレールスリット部38を摺動して、レール30R上を移動できる。
【0042】
信号ケーブル36は、一方がアンカー部22Bに接続されて、他方が駆動制御手段40に接続されており、把持検出手段25Rと右持ち手傾き検出手段33Rからの検出信号を駆動制御手段40へ伝達する。信号ケーブル36は、例えば、フレキシブルケーブル等の柔軟性を有するケーブルであれば良い。駆動制御手段40は、右持ち手位置検出手段34Rからの検出信号に基づいて、レール30R上における持ち手20Rの位置を検出することができる。また駆動制御手段40は、右持ち手傾き検出手段33Rからの検出信号に基づいて、持ち手20Rが前後左右のどの方向にどれだけ傾いているか、を検出することができる。また駆動制御手段40は、把持検出手段25R、25aRからの検出信号に基づいて、持ち手20Rが使用者に把持されているか否か、を検出することができる。
【0043】
●[歩行支援装置10の機能(図5図11)]
図5図11を用いて、歩行支援装置10(図1参照)の機能について詳細に説明する。図5は、歩行支援装置の駆動制御手段40(例えばCPUを備えた制御装置)の入出力を説明するブロック図である。図5に示すように、駆動制御手段40は、持ち手情報取得手段42(把持部状態検出手段に相当)からの入力情報と、3軸加速度・角速度センサー52と、コントロールパネル70からの入力情報に基づいて、モータ32R、32Lと、持ち手移動制限手段35R、35Lと、駆動手段64R、64Lを制御する。持ち手情報取得手段42は、把持検出手段25R、25L、25aR、25aL、と、右持ち手傾き検出手段33Rと、左持ち手傾き検出手段33Lと、右持ち手位置検出手段34Rと、左持ち手位置検出手段34Lと、から構成されている。また、記憶手段44は、情報を記憶する手段であり、駆動制御手段40の求めに応じて情報の記憶と読み出しを行う。また駆動制御手段40には、コントロールパネル70のメインスイッチ72、アシスト量調整ボリューム74a、負荷量調整ボリューム74b、移動負荷制御モード切替76から信号が入力され、モニター78に画像信号等を出力する。
【0044】
●[歩行支援装置10の駆動制御手段40における処理手順(図6図10)]
図6図9は、歩行支援装置10(図1参照)の駆動制御手段40(図5参照)の処理手順を説明するフローチャートである。図10は、各検出手段の出力に基づいて決められる歩行支援装置10の動作モードを説明する図である。
【0045】
使用者がメインスイッチ72(図5参照)をオンすると、駆動制御手段40は動作を開始する。駆動制御手段40は、把持検出手段25R、25L、25aR、25aL、(図5参照)からの情報に基づいて、持ち手20R、20L(図1参照)が使用者に把持されているか否かを判定する。駆動制御手段40は、持ち手20R、20L(図1参照)のいずれかが把持されていないと判定した場合は、持ち手移動制限手段35R、35Lを禁止の側に制御する。駆動制御手段40は、持ち手20R、20Lが把持されていると判定した場合は、持ち手移動制限手段35R、35L(図5参照)を許可の側に制御し、図6における全体処理を実行する。なお、駆動手段64R、64L(図5参照)にロック機構を備えておき、持ち手20R、20Lが把持されていないと判定した場合は駆動手段64R、64Lをロックし、持ち手20R、20Lが把持されていると判定した場合は駆動手段64R、64Lのロックを解除するようにしてもよい。
【0046】
歩行支援装置10の駆動制御手段40の処理手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。駆動制御手段40の全体処理は、移動負荷制御(ステップS100)、歩行制御(ステップS200)、段差乗越処理(ステップS300)の処理で構成されている。
【0047】
●[駆動制御手段40の全体処理(図6)]
制御手段40は、起動された場合、以下の各フラグを初期化(OFF)し、所定時間間隔(例えば数[ms]間隔)にて、全体処理を実行する。
【0048】
[フラグの詳細な説明]
段差乗越処理フラグ1は、歩行支援装置10の前輪(60FR、60FL、図1参照)が、段差に接触した(車輪に衝撃有り)と判定した場合に、ONに設定されるフラグである。段差乗越処理フラグ2は、使用者が持ち手(20R、20L、図1参照)を前方向に押して、持ち手(20R、20L)のそれぞれの前方向へ加えられる力Ffの変化が、予め記憶されている所定の大きさよりも大きい場合に、ONに設定されるフラグである。
【0049】
持ち手固定完了フラグ1、持ち手固定完了フラグ2、持ち手固定完了フラグ3は、左右両方の持ち手(20R、20L)のレール(30R、30L、図1参照)における位置を固定したと判定した場合に、ONに設定されるフラグである。持ち手固定完了フラグ1は、歩行支援装置10の前輪が段差に接触したと判定した場合における、それぞれのレール30R、30Lにおけるそれぞれの持ち手20R、20Lの位置の固定の完了を示すフラグである。持ち手固定完了フラグ2は、歩行支援装置10の前輪が段差に接触していないと判定した場合で、かつ、使用者が段差の乗越えを所望していると判定した場合における、それぞれのレール30R、30Lにおけるそれぞれの持ち手20R、20Lの位置の固定の完了を示すフラグである。持ち手固定完了フラグ3は、それぞれのレール30R、30Lにおけるそれぞれの持ち手20R、20Lの位置を目標固定位置Ptに固定し、かつ、歩行支援装置10が停止(段差乗越処理の完了)したことを示すフラグである。
【0050】
後進処理フラグは、左右両方の持ち手(20R、20L)を第1目標移動距離Lm1だけ前方向に移動し、歩行支援装置を後進距離Ld1だけ後進させた場合に、ONに設定されるフラグである。前進処理フラグは、左右両方の持ち手(20R、20L)を第2目標移動距離Lm2だけ後方向に移動し、歩行支援装置10を前進距離Ld2だけ前進させた場合に、ONに設定されるフラグである。
【0051】
以下、全体処理の各ステップについて詳細に説明する。
【0052】
ステップS10において、駆動制御手段40は、3軸加速度・角速度センサー52に基づいて、車輪(前輪60FR、60FL)に衝撃有りと判定した場合(Yes)は、ステップS20に進み、車輪(前輪60FR、60FL)に衝撃無しと判定した(No)は、ステップS30に進む。なお、駆動制御手段40は、3軸加速度・角速度センサー52に基づいて、車輪(前輪60FR、60FL)にZ軸方向の加速度の変化量が予め記憶されている所定の値を超え、かつ、Y軸方向の加速度の変化量が予め記憶されている所定の値を超えた場合に、衝撃有りと判定し、段差に歩行支援装置10(図1)の前輪60FR、60FLが接触したことを検出する。
【0053】
ステップS20において、駆動制御手段40は、段差乗越処理フラグ1をONに設定し、段差乗越処理フラグ2をOFFに設定して、ステップS50に進む。
【0054】
ステップS30において、駆動制御手段40は、把持検出手段(25R、25L、25aR、25aL)の情報に基づいて、前方向へ加えられる力Ffの変化が所定の大きさより大きいと判定した場合(Yes)は、ステップS40に進み、前方向へ加えられる力Ffの変化が所定の大きさより大きくないと判定した場合(No)は、ステップS50に進む。この場合、使用者は、段差を乗り越えようと所望し、歩行支援装置10を加速させるために持ち手を持ち手(20R、20L)を前方向に押す。駆動制御手段40は、前方向へ加えられる力Ffの変化が所定の大きさより大きいと判定した場合、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定する。
【0055】
ステップS40において、駆動制御手段40は、段差乗越処理フラグ1をOFFに設定し、段差乗越処理フラグ2をONに設定して、ステップS50に進む。
【0056】
ステップS50において、駆動制御手段40は、(段差乗越処理フラグ1=OFF、かつ、段差乗越処理フラグ2=OFF)の場合(Yes)は、ステップS100(移動負荷制御)に進み、(段差乗越処理フラグ1=OFF、かつ、段差乗越処理フラグ2=OFF)でない場合(No)は、ステップS300(段差乗越処理)に進む。
【0057】
●[移動負荷制御(ステップS100)(図6)]
以下、ステップS100(移動負荷制御)の各ステップについて詳細に説明する。
【0058】
ステップS110において、駆動制御手段40は、移動負荷制御モード切替76の状態(アシストモード、または負荷モード、またはノーマルモード)を取得して、記憶手段44に記憶して、ステップS120へ進む。
【0059】
ステップS120において、駆動制御手段40は、アシスト量調整ボリューム74aと負荷量調整ボリューム74bの調整量を取得して、アシスト量調整ボリューム74aに応じた持ち手移動アシスト調整量と負荷量調整ボリューム74bに応じた持ち手移動負荷調整量を決定し、記憶手段44に記憶して、ステップS130へ進む。
【0060】
ステップS130において、駆動制御手段40は、移動負荷制御モード切替76の状態がアシストモードの場合(Yes)は、ステップS140に進み、アシストモードでない場合(No)は、ステップS150に進む。
【0061】
ステップS140において、駆動制御手段40は、持ち手20R、20Lの移動を順方向(持ち手の移動方向と同じ方向)にステップS120において決定した持ち手移動アシスト調整量をアシストするようにモータ32R、32Lを制御して、移動負荷制御(ステップS100)を終了し、全体処理へ戻る。ステップS140にて持ち手の移動をアシストするモータ32R、32Lが、アシスト手段に相当している。
【0062】
ステップS150において、駆動制御手段40は、移動負荷制御モード切替76の状態が負荷モードの場合(Yes)は、ステップS160に進み、負荷モードでない場合(No)は、ステップS170に進む。
【0063】
ステップS160において、駆動制御手段40は、持ち手20R、20Lの移動を逆方向(持ち手の移動方向とは逆の方向)にステップS120において決定した持ち手移動負荷調整量の負荷を掛けるようにモータ32R、32Lを制御して、移動負荷制御(ステップS100)を終了し、全体処理へ戻る。ステップS160にて持ち手の移動に対して負荷を掛けるモータ32R、32Lが、負荷手段に相当している。
【0064】
ステップS170において、駆動制御手段40はモータ32R、32Lを停止して(空回り状態にして)、移動負荷制御(ステップS100)を終了し、全体処理へ戻る。
【0065】
●[歩行制御(ステップS200)(図7)]
以下、ステップS200(歩行制御)の各ステップについて詳細に説明する。
【0066】
ステップS210において、駆動制御手段40は、右持ち手傾き検出手段33Rと左持ち手傾き検出手段33Lから持ち手20R、20Lの傾き(右持ち手傾き、左持ち手傾き)を取得し、右持ち手位置検出手段34Rと左持ち手位置検出手段34Lから持ち手20R、20Lのレール30R、レール30Lにおける位置(右持ち手位置、左持ち手位置)を取得して、記憶手段44へそれぞれ記憶して、ステップS220に進む。
【0067】
ステップS220において、駆動制御手段40は、記憶手段44に記憶された持ち手20Rの位置と、一つ前(前回の全体処理の実行時)に記憶されている持ち手20Rの位置から右振幅DRを計算し、記憶手段44へ右振幅DRを記憶して、ステップS230へ進む。
【0068】
ステップS230において、駆動制御手段40は、記憶手段44に記憶された持ち手20Lの位置と、一つ前(前回の全体処理の実行時)に記憶されている持ち手20Lの位置から左振幅DLを計算し、記憶手段44へ左振幅DLを記憶して、ステップS240へ進む。
【0069】
ステップS240において、駆動制御手段40は、右振幅DRと左振幅DLから移動速度Vc=(DR+DL)/(所定時間間隔)/2を計算して、ステップS250へ進む。なお、「所定時間間隔」は、全体処理を実行する時間間隔である。
【0070】
ステップS250において、駆動制御手段40は、右振幅DRと左振幅DLから移動速度差VD=|DR-DL|/(所定時間間隔)を計算して、ステップS260へ進む。
【0071】
ステップS260において、駆動制御手段40は、右持ち手傾きと、左持ち手傾きと、右持ち手位置と、左持ち手位置と、前後振幅と、から図10に記載の状態に基づいて、動作モード(直進、右旋回、左旋回)を決定し、ステップS270へ進む。
【0072】
図10に示すように、動作モードは、右持ち手傾きと、左持ち手傾きと、右持ち手位置と、左持ち手位置と、前後振幅の各状態に基づいて、決定される。例えば、歩行支援装置10を真っ直ぐに前進させる直進モードは、持ち手20Rを前方から後方へ移動させ、持ち手20Lを後方から前方へ移動させ、前後振幅が左右で同等である場合と、持ち手20Lを前方から後方へ移動させ、持ち手20Rを後方から前方へ移動させ、前後振幅が左右で同等である場合である。また例えば、歩行支援装置10を右に旋回させる右旋回モードは、左持ち手傾きが“内傾”つまり持ち手20Lを使用者側に傾け、前後振幅において左振幅が右振幅より大きい場合である。また例えば、歩行支援装置10を左に旋回させる左旋回モードは、右持ち手傾きが“内傾”つまり持ち手20Rを使用者側に傾け、前後振幅において左振幅が右振幅より小さい場合である。なお、使用者が直進を所望していると判定する直進モード、使用者が右旋回を所望していると判定する右旋回モード、使用者が左旋回を所望していると判定する左旋回モード、の各判定方法は、上記の判定方法に限定されるものではない。
【0073】
ステップS270において、動作モードが右旋回モードの場合(Yes、使用者が右旋回を所望している場合)は、ステップS275に進み、動作モードが右旋回モードでない場合(No)は、ステップS280に進む。
【0074】
ステップS275において、駆動制御手段40は、後輪60RRの速度がVC-VD/2になるように駆動手段64Rを制御し、後輪60RLの速度がVC+VD/2になるように駆動手段64Lを制御して左右の後輪の回転数に差を生じさせて歩行支援装置10を右旋回させ、歩行制御(ステップS200)を終了し、全体処理へ戻る。
【0075】
ステップS280において、動作モードが左旋回モードの場合(Yes、使用者が左旋回を所望している場合)は、ステップS285に進み、動作モードが左旋回モードでない場合(No)は、ステップS290に進む。
【0076】
ステップS285において、駆動制御手段40は、後輪60RRの速度がVC+VD/2になるように駆動手段64Rを制御し、後輪60RLの速度がVC-VD/2になるように駆動手段64Lを制御して左右の後輪の回転数に差を生じさせて歩行支援装置10を左旋回させ、歩行制御(ステップS200)を終了し、全体処理へ戻る。
【0077】
ステップS290において、駆動制御手段40は、後輪60RRの速度がVCになるように駆動手段64Rを制御し、後輪60RLの速度がVCになるように駆動手段64Lを制御することで歩行支援装置10を直進させ、歩行制御(ステップS200)を終了し、全体処理へ戻る。
【0078】
●[段差乗越処理(ステップS300)(図8図9)]
以下、ステップS300(段差乗越処理)の各ステップについて詳細に説明する。
【0079】
ステップS305において、駆動制御手段40(図5参照)は、段差乗越処理フラグ1=ONである場合(Yes)は、ステップS310に進み、段差乗越処理フラグ1=ONでない場合(No)は、ステップS370に進む。
【0080】
ステップS310において、駆動制御手段40は、持ち手固定完了フラグ1=ONである場合(Yes)は、ステップS325に進み、持ち手固定完了フラグ1=ONでない場合(No)は、ステップS315に進む。
【0081】
ステップS315において、駆動制御手段40は、持ち手移動制限手段(35R、35L)(図5参照)を制御して、左右両方の持ち手(20R、20L)のレール(30R、30L)におけるそれぞれの位置を固定して(図1参照)、ステップS320に進む。
【0082】
ステップS320において、駆動制御手段40は、持ち手固定完了フラグ1をONに設定(持ち手固定完了フラグ1=ON)して、ステップS325に進む。
【0083】
ステップS325において、駆動制御手段40は、把持検出手段(25R、25L、25aR、25aL)(図5参照)の情報に基づいて、前方向へ加えられる力Ffが後方向へ加えられる力Fbよりも小さいと判定した場合(Yes)は、ステップS345に進み、前方向へ加えられる力Ffが後方向へ加えられる力Fbよりも小さくないと判定した場合(No)は、ステップS330に進む。
【0084】
ステップS330において、駆動制御手段40は、持ち手移動制限手段(35R、35L)を制御して、左右両方の持ち手(20R、20L)のレール(30R、30L)におけるそれぞれの位置を固定し、歩行支援装置10(図1参照)を停止して、ステップS335に進む。なお、駆動制御手段40は、駆動手段(64R、64L)を制御し、駆動輪である後輪(60RR、60RL)を停止させて、歩行支援装置10を停止する。
【0085】
ステップS335において、駆動制御手段40は、ステップ330において歩行支援装置10を停止させてから所定時間を経過したと判定した場合(Yes)は、ステップS340に進み、歩行支援装置10を停止させてから所定時間を経過していないと判定した場合(No)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0086】
ステップS340において、駆動制御手段40は、把持検出手段(25R、25L、25aR、25aL)の情報に基づいて、前方向へ加えられる力Ffが後方向へ加えられる力Fbよりも大きいと判定した場合(Yes)は、A1(図9)におけるステップSA305に進み、前方向へ加えられる力Ffが後方向へ加えられる力Fbよりも大きくないと判定した場合(No)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。駆動制御手段40は、前方向へ加えられる力Ffが後方向へ加えられる力Fbよりも大きいと判定した場合、使用者が、段差の乗越えを所望する段差乗越意思を有していると判定する。
【0087】
ステップS345において、駆動制御手段40は、後進処理フラグ=ONでない場合(No)は、ステップS350に進み、後進処理フラグ=ONである場合(Yes)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0088】
ステップS350において、駆動制御手段40は、左右両方の持ち手(20R、20L)の第1目標移動距離Lm1を決定し、歩行支援装置10の後進距離Ld1を決定して、ステップS355に進む。なお、第1目標移動距離Lm1と後進距離Ld1は、予め記憶されている所定の値であり、Ld1≧Lm1である。
【0089】
ステップS355において、駆動制御手段40は、左右両方の持ち手(20R、20L)を第1目標移動距離Lm1だけ前方向に移動するようにモータ(32R、32L)(図5参照)を駆動し、歩行支援装置を後進距離Ld1だけ後進するように駆動輪(後輪60RR、60RL)を駆動して、ステップS360に進む。
【0090】
ステップS360において、駆動制御手段40は、左右の持ち手(20R、20L)が(第1目標移動距離Lm1だけ前方向に移動し、かつ、歩行支援装置10が後進距離Ld1だけ後進した)と判定した場合(Yes)は、ステップS365に進み、(第1目標移動距離Lm1だけ前方向に移動し、かつ、歩行支援装置10が後進距離Ld1だけ後進した)でないと判定した場合(No)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0091】
ステップS365において、駆動制御手段40は、後進処理フラグをONに設定(後進処理フラグ=ON)して、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0092】
ステップS370において、駆動制御手段40は、持ち手固定完了フラグ2=ONである場合(Yes)は、A1(図9)におけるステップSA305に進み、持ち手固定完了フラグ2=ONでない場合(No)は、ステップS375に進む。
【0093】
ステップS375において、駆動制御手段40は、持ち手移動制限手段(35R、35L)を制御して、左右両方の持ち手(20R、20L)のレール(30R、30L)におけるそれぞれの位置を固定して、ステップS380に進む。
【0094】
ステップS380において、駆動制御手段40は、持ち手固定完了フラグ2をONに設定(持ち手固定完了フラグ2=ON)して、A1(図9)におけるステップSA305に進む。
【0095】
ステップSA305において、駆動制御手段40は、前進処理フラグ=ONでない場合(No)は、ステップSA310に進み、前進処理フラグ=ONである場合(Yes)は、ステップSA335に進む。
【0096】
ステップSA310において、駆動制御手段40は、左右両方の持ち手(20R、20L)の第2目標移動距離Lm2を決定し、歩行支援装置10の前進距離Ld2を決定して、ステップS355に進む。なお、第2目標移動距離Lm2と前進距離Ld2は、予め記憶されている所定の値であり、Ld2≧Lm2である。
【0097】
ステップSA315において、駆動制御手段40は、駆動輪(後輪60RR、60RL)における駆動トルクを段差乗越トルクに設定して、ステップSA320に進む。なお、段差乗越トルクは、段差と接触したと判定した場合に、段差を乗越えるように歩行支援装置を前進させる場合の駆動輪(後輪60RR、60RL)における最大駆動トルクである。
【0098】
ステップSA320において、駆動制御手段40は、左右両方の持ち手(20R、20L)を第2目標移動距離Lm2だけ後方向に移動するようにモータ(32R、32L)を駆動し、歩行支援装置を前進距離Ld2だけ前進するように駆動輪(後輪60RR、60RL)を駆動して、ステップSA325に進む。なお、駆動制御手段40は、駆動輪(後輪60RR、60RL)における駆動トルクを増加させるように駆動手段(64R、64L)を制御して段差を乗越えるように、歩行支援装置10を前進させ、持ち手(20R、20L)をレール(30R、30L)における後方向に所定距離だけ移動させるようにモータ(32R、32L)を制御する(段差乗越制御に相当)。
【0099】
ステップSA325において、駆動制御手段40は、左右の持ち手(20R、20L)が(第2目標移動距離Lm2だけ後方向に移動し、かつ、歩行支援装置10が前進距離Ld2だけ前進した)と判定した場合(Yes)は、ステップSA330に進み、(第2目標移動距離Lm2だけ後方向に移動し、かつ、歩行支援装置10が前進距離Ld2だけ前進した)でないと判定した場合(No)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0100】
ステップSA330において、駆動制御手段40は、前進処理フラグをONに設定(前進処理フラグ=ON)して、ステップSA335に進む。
【0101】
ステップSA335において、駆動制御手段40は、持ち手情報取得手段42の情報に基づいて、|Ff-Fb|<Ferrと判定した場合(Yes)は、ステップSA345に進み、|Ff-Fb|<Ferrでないと判定した場合(No)は、ステップSA340に進む。なお、|Ff-Fb|は、前方向へ加えられる力Ffと後方向へ加えられる力Fbの大きさの差の絶対値である。また、Ferrは、予め記憶されている所定の値である。駆動制御手段40は、|Ff-Fb|が、所定の値であるFerrより小さくなった場合に、段差乗越制御を終了する。
【0102】
ステップSA340において、駆動制御手段40は、持ち手(20R、20L)のそれぞれの位置がレール(30R、30L)の後端近傍位置にあると判定した場合(Yes)は、ステップSA345に進み、持ち手(20R、20L)のそれぞれの位置がレール(30R、30L)の後端近傍位置にないと判定した場合(No)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0103】
ステップSA345において、駆動制御手段40は、持ち手固定完了フラグ3=ONでない場合(No)は、ステップSA350に進み、持ち手固定完了フラグ3=ONである場合(Yes)は、ステップSA370に進む。
【0104】
ステップSA350において、駆動制御手段40は、左右両方の持ち手(20R、20L)の目標固定位置Ptを決定して、ステップSA355に進む。なお、目標固定位置Ptは、予め記憶されている所定の値である。
【0105】
ステップSA355において、駆動制御手段40は、左右両方の持ち手(20R、20L)の目標固定位置Ptに移動するようにモータ(32R、32L)を駆動し、歩行支援装置10を停止するように駆動輪(後輪60RR、60RL)の駆動を停止して、ステップSA360に進む。
【0106】
ステップSA360において、駆動制御手段40は、(左右の持ち手(20R、20L)が目標固定位置Ptに移動し、かつ、歩行支援装置10が停止した)と判定した場合(Yes)は、ステップSA365に進み、(左右の持ち手(20R、20L)が目標固定位置Ptに移動し、かつ、歩行支援装置10が停止した)でないと判定した場合(No)は、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0107】
ステップSA365において、駆動制御手段40は、持ち手固定完了フラグ3をONに設定(持ち手固定完了フラグ3=ON)して、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。
【0108】
ステップSA370において、駆動制御手段40は、全てのフラグを初期化(OFF)して、段差乗越処理(ステップS300)を終了し、全体処理へ戻る。具体的には、駆動制御手段40は、段差乗越処理フラグ1と、段差乗越処理フラグ2と、持ち手固定完了フラグ1と、持ち手固定完了フラグ2と、持ち手固定完了フラグ3と、後進処理フラグと、前進処理フラグと、をOFFに設定する。
【0109】
●[歩行支援装置10の段差乗越え動作を説明(図11)]
図11は、歩行支援装置(10、10A、10B、10C)の段差乗越え動作を説明する図である。歩行支援装置10は、通常の状態(段差に接触していない状態)での歩行支援装置の動作を説明する図である。歩行支援装置10Aは、路面上の段差STPに接触し、歩行支援装置が停止している状態での歩行支援装置の動作を説明する図である。歩行支援装置10Bは、路面上の段差に接触し、更に、使用者が歩行支援装置を後進させた状態での歩行支援装置の動作を説明する図である。歩行支援装置10Cは、使用者が歩行支援装置を後進させた後、更に、使用者が歩行支援装置を前進させ、段差を乗り越えるまでの状態の歩行支援装置の動作を説明する図である。なお、各ステップは、図6図9における処理のステップを示す。
【0110】
歩行支援装置10の状態において、駆動制御手段40(図5参照)は、移動負荷制御(ステップS100)、歩行制御(ステップS200)により、使用者の腕振りに合わせて、歩行支援装置を前進、右旋回、左旋回をさせる。
【0111】
歩行支援装置10Aの状態において、駆動制御手段40は、3軸加速度・角速度センサー52(図5参照)からの情報に基づいて、段差STPへの接触に伴う車輪(前輪60FR、60FL)への衝撃の有無を判定する(ステップS10)。例えば、段差STPへ車輪(前輪60FR、60FL)が接触して車輪(前輪60FR、60FL)が段差STPに乗り上げると、歩行支援装置10AにはZ軸方向の加速度FzとY方向の加速度Fyが瞬間的に発生する。駆動制御手段40は、予め記憶されている所定値と加速度FzとY方向の加速度Fyのそれぞれを比較して、車輪(前輪60FR、60FL)への衝撃の有無を判定するとともに、段差STPとの接触の有無を判定する。
【0112】
歩行支援装置10Aの状態において、駆動制御手段40は、段差STPとの接触有りと判定した場合、段差乗越処理(ステップS300)の処理を実行する。駆動制御手段40は、使用者が持ち手(20R、20L)を後方向に引いた場合(前方向へ加えられる力Ff<後方向へ加えられる力Fb)は、使用者が歩行支援装置を後退させることを所望していると判定する(ステップS325)。駆動制御手段40は、k×Lm1の距離だけレール(30R、30L)における前方向に持ち手(20R、20L)を移動させるとともに、k×Ld1の距離だけ歩行支援装置を後進させる(ステップS350~S355)。持ち手(20R、20L)を前方向に移動させた距離よりも、歩行支援装置を後進させる距離が大きいため(Ld1≧Lm1)、持ち手(20R、20L)は、位置P1から後方の位置である位置P2へ移動する。また、歩行支援装置は、歩行支援装置10Aの位置からZ軸方向にk×Ld1の距離だけ後方の歩行支援装置10Bの位置に移動する。なお、kは、適合定数であり、歩行支援装置を構成する部品の特性等のバラツキに起因する目標性能のバラツキを低減し、目標性能に適合させるための定数である。
【0113】
歩行支援装置10Bの状態において、駆動制御手段40は、使用者が持ち手(20R、20L)を前方向に押した場合(前方向へ加えられる力Ff>後方向へ加えられる力Fb)は、歩行支援装置を前進さることを所望していると判定する(ステップS340)。駆動制御手段40は、k×Lm2の距離だけレール(30R、30L)における後方向に持ち手(20R、20L)を移動させるとともに、k×Ld2の距離だけ歩行支援装置を前進させる(ステップSA310~SA320)。持ち手(20R、20L)を後方向に移動させた距離よりも、歩行支援装置を前進させる距離が大きいため(Ld2≧Lm2)、持ち手(20R、20L)は、位置P2から前方の位置である位置P3へ移動する。また、歩行支援装置は、歩行支援装置10Bの位置からZ軸方向にk×Ld2の距離だけ前方の歩行支援装置10Cの位置に移動する。
●[本願の効果]
【0114】
以上に説明したように、本発明の、歩行支援装置は、他の部品を追加することなく、段差に遭遇した場合、容易に段差を乗り越えることができる。
【0115】
本発明の、歩行支援装置は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【0116】
本実施の形態では、歩行支援装置を四輪車として2個の駆動輪を設けた例を説明したが、歩行支援装置を前一輪、後ろ二輪の三輪車にして、前輪を駆動輪、後輪の二輪をキャスタ輪としてもよい。つまり、歩行支援装置は、少なくとも1つの駆動輪を有していればよい。また、本実施の形態では、段差を乗り越える際、歩行支援装置を後進させた後、前進させて段差を乗り越える実施の例を説明したが、後進させず前進のみで段差を乗り越えさせても良い。
【0117】
本実施の形態の説明では、使用者の腕の振りで歩行支援装置における歩行制御(前進、右旋回、左旋回)をする実施例を説明しているが、段差を乗り越える際に持ち手がレールの前後方向に移動可能であれば腕の振りで歩行制御をしない歩行支援装置であっても良い。レール30R、30Lが上方向に凹状に湾曲した形状を有している例を説明したが、レール30R、30Lを、直線形状としても良い。また、本実施の形態にて説明した歩行支援装置は、レールと持ち手を備え、持ち手をレールに沿って、前後方向に移動させる構成の例を説明した。しかし、レールに代えて、フレームに設けられた回転軸に揺動可能に突出して設けられたストック状の部材の先端に持ち手を備え、当該持ち手を、フレームに対して前後方向に揺動させるものでも良い。
【0118】
また、フレーム50に対してそれぞれの持ち手20R、20Lを前後方向に移動させる把持部駆動手段は、本実施の形態にて説明した電動モータ(モータ32R、32L)とプーリー及びワイヤーの構成に限定されず、種々の構成にて、フレーム50に対してそれぞれの持ち手20R、20Lを前後方向に移動できる。また、それぞれの持ち手20R、20Lの位置を検出する右持ち手位置検出手段34R、左持ち手位置検出手段34Lの構成や配置等は、本実施の形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lの傾きを検出する右持ち手傾き検出手段33R、左持ち手傾き検出手段33Lの構成や配置等は、本実施の形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lに印加された力を検出する把持検出手段25R、25Lと、本実施の形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lには、付勢手段(バネ等)が設けられている例(図3図4参照)を説明したが、バネ等に限定されず種々の弾性部材を適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0119】
10 歩行支援装置
10A、10B、10C 歩行支援装置
20R、20L 持ち手
21a 持ち手軸部
21b 軸部嵌入孔
22 スライダ
22A 持ち手保持部
22B アンカー部
24 付勢手段
25R、25L 把持検出手段
25aR、25aL 把持検出手段
26a グリップ部
26b スイッチグリップ部
26ba スイッチグリップ部
28 グリップ付勢手段
30R、30L レール(アーム部)
32R、32L モータ
33R 右持ち手傾き検出手段
33L 左持ち手傾き検出手段
34R 右持ち手位置検出手段
34L 左持ち手位置検出手段
35R、35L 持ち手移動制限手段
36 信号ケーブル
38 レールスリット部
40 駆動制御手段
42 持ち手情報取得手段
44 記憶手段
50 フレーム
52 3軸加速度・角速度センサー
60FR、60FL 前輪
60RR、60RL 後輪
62 ベルト
64R、64L 駆動手段
70 コントロールパネル
72 メインスイッチ
74a アシスト量調整ボリューム
74b 負荷量調整ボリューム
76 移動負荷制御モード切替
78 モニター
B バッテリー
BKL ブレーキレバー
JK 持ち手支持軸
PB、PF プーリー
W ワイヤー
k 適合定数
Lm1 第1目標移動距離
Lm2 第2目標移動距離
Ld1 後進距離
Ld2 前進距離
Fz 加速度
Fy 加速度
P1 位置
P2 位置
P3 位置
Pt 目標固定位置
STP 段差
Fb 後方向へ加えられる力
Ff 前方向へ加えられる力
301 段差越え用車輪
310 固定ホルダ
311 固定ホルダ軸
312 固定バネ支持部
320 可動ホルダ
321 可動ホルダ長孔
322 前バネ支持部
323 後バネ支持部
324 後部車輪軸部材
325 前バネ
326 後バネ
331 前部車輪
332 後部車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13