(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム及びエネルギーマネジメント方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230117BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 311T
H02J13/00 301A
H02J13/00 301J
(21)【出願番号】P 2018135504
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】中島 由晴
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037131(US,A1)
【文献】特開2017-108560(JP,A)
【文献】特開2018-093719(JP,A)
【文献】特開2014-033591(JP,A)
【文献】特開2016-077079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00- 5/00
H02J 13/00
H03J 9/00- 9/06
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器と、端末装置と、前記電力変換器及び前記端末装置と通信するサーバコンピュータとを含むエネルギーマネジメントシステムであって、
前記電力変換器は、
充放電可能な蓄電部と、
前記蓄電部の充放電動作を制御する制御部と、
前記電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器及び前記蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集する情報収集部と、
収集された前記情報を前記サーバコンピュータにアップロードする通信部とを備え、
前記電力変換器はさらに、各々が複数の充放電パターンを有する複数の動作モードを切替えて動作することが可能であり、
前記電気機器は、発電装置としての第1の電気機器及び電力を消費する第2の電気機器を含み、
前記複数の充放電パターンの各々は、前記第1の電気機器による電力の出力状態及び前記第2の電気機器による電力の消費状態に基づいて、前記電力変換器から供給される電力の目標値により定められ、
前記サーバコンピュータは、アップロードされた前記情報を用いて
各動作モードにおける前記住宅の電力消費に伴う費用を予測し、予測結果に応じて前記複数の動作モードの中から一の動作モードを選択し、選択した前記動作モードを推奨する推奨情報を生成し
て前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、
前記推奨情報を受信する受信部と、
受信された前記推奨情報を提示する提示部とを備える、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
前記端末装置は、
提示された前記推奨情報に対する指示を入力する入力部と、
入力された前記指示を前記サーバコンピュータに送信する送信部とをさらに備え、
前記サーバコンピュータは、受信した前記指示に応じて、前記電力変換器の動作に関する設定情報を前記電力変換器に送信し、
前記電力変換器の前記通信部は、前記設定情報を受信し、
前記制御部は、受信された前記設定情報に応じて、前記蓄電部の充放電動作を制御する、請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
前記サーバコンピュータは、前記推奨情報の生成に関する限定事項が指定されたことを受けて、前記限定事項を満たす推奨情報を生成する、請求項1
又は2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
前記限定事項は、前記電力変換器の動作に関する事項である、請求項
3に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
前記サーバコンピュータは、アップロードされた前記情報に加えて、電力会社の電力料金プランに関する情報を用いて、前記推奨情報を生成する、請求項1~
4のいずれか1項に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
前記サーバコンピュータは、アップロードされた前記情報に加えて、電力会社の電力料金プランに関する情報を用いて、前記推奨情報を生成し、
前記限定事項は、前記電力料金プランに関する事項である、請求項
3に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
前記サーバコンピュータは、アップロードされた前記情報を用いた機械学習により、前記推奨情報を生成する、請求項1~
6のいずれか1項に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項8】
電力変換器と、前記電力変換器及び端末装置と通信するサーバコンピュータとを含むエネルギーマネジメントシステムであって、
前記電力変換器は、
充放電可能な蓄電部と、
前記蓄電部の充放電動作を制御する制御部と、
前記電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器及び前記蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集する情報収集部と、
収集された前記情報を前記サーバコンピュータにアップロードする通信部とを備え、
前記電力変換器はさらに、各々が複数の充放電パターンを有する複数の動作モードを切替えて動作することが可能であり、
前記電気機器は、発電装置としての第1の電気機器及び電力を消費する第2の電気機器を含み、
前記複数の充放電パターンの各々は、前記第1の電気機器による電力の出力状態及び前記第2の電気機器による電力の消費状態に基づいて、前記電力変換器から供給される電力の目標値により定められ、
前記サーバコンピュータは、アップロードされた前記情報を用いて各動作モードにおける前記住宅の電力消費に伴う費用を予測し、予測結果に応じて前記複数の動作モードの中から一の動作モードを選択し、選択した前記動作モードを推奨する推奨情報を生成し、
前記サーバコンピュータはさらに、前記端末装置に前記推奨情報を提示させるために、生成した前記推奨情報を前記端末装置に送信する、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項9】
蓄電部を備えた電力変換器と、端末装置と、前記電力変換器及び前記端末装置と通信可能なサーバコンピュータとを含むシステムにおけるエネルギーマネジメント方法であって、
前記電力変換器は、複数の動作モードを切替えて動作することが可能であり、
前記複数の動作モードの各々は、複数の充放電パターンを有し、前記複数の充放電パターンの各々は、前記電力変換器が設置されている住宅に配置されている発電装置による電力の出力状態及び前記住宅に配置されている電気機器による電力の消費状態に基づいて、前記電力変換器から供給される電力の目標値により定められ、
前記エネルギーマネジメント方法は、
前記電力変換器が、前
記電気機器
、前記発電装置及び前記蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集するステップと、
前記電力変換器が、収集した前記情報を前記サーバコンピュータにアップロードするステップと、
前記サーバコンピュータが、アップロードされた前記情報を用いて
各動作モードにおける前記住宅の電力消費に伴う費用を予測し、予測結果に応じて前記複数の動作モードの中から一の動作モードを選択し、選択した動作モードを推奨する推奨情報を生成し
て前記端末装置に送信するステップと、
前記端末装置が、前記推奨情報を受信し、受信した前記推奨情報を提示するステップとを含む、エネルギーマネジメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーマネジメントシステム及びエネルギーマネジメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
系統から供給される商用電力、又は家庭に設置された、太陽光発電システム等の発電装置の出力電力を一旦蓄電池に蓄え、停電時等に、蓄えた電力を直流から交流に変換して負荷に供給する電力変換器(蓄電装置)が知られている。
【0003】
また近年、通信機能を備えた次世代型電力メータであるスマートメータの普及に伴い、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれる、家庭内の電気機器(空調機器、照明機器等)の電力消費量を管理するシステムも普及しつつある。こうしたシステムでは、電力変換器からの電力が供給されることもある。
【0004】
このようなシステムとして、後掲の特許文献1には、生活行動によってエネルギー消費量がどのように変化したかをユーザに提示できるエネルギーマネジメントシステムが開示されている。後掲の特許文献2には、需要家が受電した電力の情報を累積的に管理することができる電力情報管理システムが開示されている。後掲の特許文献3には、節電効果を高めるために、節電要請に応じることにより得られる効果をユーザに分かりやすく提示するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-228229号公報
【文献】特開2013-65169号公報
【文献】特開2017-200438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3に開示のシステムでは、電力消費に関する情報がユーザに提示されるものの、例えば、従来の技術では、電力変換器の運転モード(以下、動作モードともいう)はユーザ主導で選択されるために、用途に合わせた最適な運転モードを選択できていない問題がある。その原因としては、電力変換器の稼働情報をユーザ自身で判断できないことが挙げられる。また、従来のシステムは、エネルギー情報を収集してユーザに提示することが主目的であり、収集した情報を具体的なアクション(運転モードの選択)へブレークダウンできていない問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、電力変換器の動作モードを適切に選択するための情報をユーザに提供することができ、且つ、選択された動作モードのユーザによる設定操作を不要にできるエネルギーマネジメントシステム及びエネルギーマネジメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に係るエネルギーマネジメントシステムは、電力変換器と、端末装置と、電力変換器及び端末装置と通信可能なサーバコンピュータとを含むエネルギーマネジメントシステムであって、電力変換器は、充放電可能な蓄電部と、電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器及び蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集する情報収集部と、収集された情報をサーバコンピュータにアップロードする通信部とを備え、サーバコンピュータは、アップロードされた情報を用いて、電力変換器の動作に関する推奨情報を生成し、推奨情報を端末装置に送信し、端末装置は、推奨情報を受信する受信部と、受信された推奨情報を提示する提示部とを備える。
【0009】
本発明の別の局面に係るエネルギーマネジメント方法は、蓄電部を備えた電力変換器と、端末装置と、電力変換器及び端末装置と通信可能なサーバコンピュータとを含むシステムにおけるエネルギーマネジメント方法であって、電力変換器が、電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器及び蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集するステップと、電力変換器が、収集した情報をサーバコンピュータにアップロードするステップと、サーバコンピュータが、アップロードされた情報を用いて、電力変換器の動作に関する推奨情報を生成し、推奨情報を端末装置に送信するステップと、端末装置が、推奨情報を受信し、受信した推奨情報を提示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力変換器の動作モードを適切に選択するための情報をユーザに提供することができ、選択された動作モードのユーザによる設定操作を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したエネルギーマネジメントシステムにおける電力供給に関係する構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したエネルギーマネジメントシステムにおける動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示したリコメンドモード決定処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、端末装置に表示される画面を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の試算パターンに基づく試算結果の第1例を表形式で示す図である。
【
図7】
図7は、第1の試算パターンに基づく試算結果の第2例を表形式で示す図である。
【
図8】
図8は、第1の試算パターンに基づく試算結果の第3例を表形式で示す図である。
【
図9】
図9は、第1の試算パターンに基づく試算結果の第4例を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施の形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本発明のある局面に係るエネルギーマネジメントシステムは、電力変換器と、端末装置と、電力変換器及び端末装置と通信可能なサーバコンピュータとを含むエネルギーマネジメントシステムであって、電力変換器は、充放電可能な蓄電部と、電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器及び蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集する情報収集部と、収集された情報をサーバコンピュータにアップロードする通信部とを備え、サーバコンピュータは、アップロードされた情報を用いて、電力変換器の動作に関する推奨情報を生成し、推奨情報を端末装置に送信し、端末装置は、推奨情報を受信する受信部と、受信された推奨情報を提示する提示部とを備える。これにより、電力変換器の動作モードを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0014】
(2)好ましくは、電力変換器は、蓄電部の充放電動作を制御する制御部をさらに備え、端末装置は、提示された推奨情報に対する指示を入力する入力部と、入力された指示をサーバコンピュータに送信する送信部とをさらに備え、サーバコンピュータは、受信した指示に応じて、電力変換器の動作に関する設定情報を電力変換器に送信し、電力変換器の通信部は、設定情報を受信し、制御部は、受信された設定情報に応じて、蓄電部の充放電動作を制御する。これにより、電力変換器の動作モードを、ユーザが了承した動作モードに自動的に設定することができ、ユーザによる設定操作を不要にすることができる。
【0015】
(3)より好ましくは、電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器は、発電装置を含む。これにより、発電装置を備えた住宅において、電力変換器の動作モード又は電力会社の料金プランを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0016】
(4)さらに好ましくは、サーバコンピュータは、推奨情報の生成に関する限定事項が指定されたことを受けて、限定事項を満たす推奨情報を生成する。これにより、ユーザが電力変換器の動作モード又は電気会社の電力料金プランを指定した場合にも、指定されていない電力会社の料金プラン又は電力変換器の動作モードを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0017】
(5)好ましくは、限定事項は、電力変換器の動作に関する事項である。これにより、ユーザが電力変換器の動作モードを指定した場合にも、電力会社の料金プランを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0018】
(6)より好ましくは、サーバコンピュータは、アップロードされた情報に加えて、電力会社の電力料金プランに関する情報を用いて、推奨情報を生成する。これにより、電力会社の料金プランを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0019】
(7)さらに好ましくは、限定事項は、電力料金プランに関する事項である。これにより、ユーザが電気会社の電力料金プランを指定した場合にも、電力変換器の動作モードを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0020】
(8)好ましくは、サーバコンピュータは、アップロードされた情報を用いた機械学習により、推奨情報を生成する。これにより、より信頼性の高い推奨情報を生成することができる。
【0021】
(9)本発明の別の局面に係るエネルギーマネジメント方法は、蓄電部を備えた電力変換器と、端末装置と、電力変換器及び端末装置と通信可能なサーバコンピュータとを含むシステムにおけるエネルギーマネジメント方法であって、電力変換器が、電力変換器が設置されている住宅に配置されている電気機器及び蓄電部における電力の入出力に関する情報を収集するステップと、電力変換器が、収集した情報をサーバコンピュータにアップロードするステップと、サーバコンピュータが、アップロードされた情報を用いて、電力変換器の動作に関する推奨情報を生成し、推奨情報を端末装置に送信するステップと、端末装置が、推奨情報を受信し、受信した推奨情報を提示するステップとを含む。これにより、電力変換器の動作モード又は電力会社の料金プランを適切に選択するための情報を、推奨情報としてユーザに提供することができる。
【0022】
[本発明の実施形態の詳細]
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
(実施の形態)
[全体構成]
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るエネルギーマネジメントシステム100は、住宅102に配置された太陽光発電パネル104、PCS(パワーコンディショナ)106、第1リモコン108、電力変換器110、第2リモコン112、HEMS120、ルータ122、スマートメータ124及び端末装置130と、住宅102外に配置された統合サーバ140とを備える。住宅102には、系統電源150から電力が供給される電気機器126が設けられている。住宅102外には、電力会社サーバ142及び仲介会社サーバ144も存在する。
図1において、矢印は、主として情報の通信経路を示しており、電力を供給するための電気配線は一部(スマートメータ124と系統電源150との間、太陽光発電パネル104とPCS106との間)のみ示している。
【0024】
太陽光発電パネル104及びPCS106は発電装置を構成する。PCS106は、太陽光発電パネル104により発電された直流電力を交流電力に変換して出力する。第1リモコン108はユーザにより操作され、PCS106に対して種々の設定を行なう。また、第1リモコン108は、HEMS120と通信し、PCS106の動作状況に関する情報(発電電力量等)をHEMS120に送信する。
【0025】
電力変換器110は、蓄電池114及びパワーコンディショナ(以下、PCSともいう)116を備えた蓄電装置である。電力変換器110は、外部から供給される交流電力をPCS116により直流に変換して、蓄電池114に蓄える。第2リモコン112は、制御部(CPU等)、記憶部(半導体メモリ等)、通信部、表示部及び操作部を備えている。第2リモコン112はユーザにより操作され、PCS116に対して種々の設定(動作モードの設定等)を行なう。第2リモコン112はHEMS120と通信し、電力変換器110の動作状況に関する情報(出力電力量等)をHEMS120に送信する。また、第2リモコン112は後述するように、HEMS120を介して統合サーバ140から、電力変換器110の動作に関する設定情報を受信し、受信した情報にしたがって電力変換器110が動作するように、電力変換器110を設定する。
【0026】
HEMS120は、通信機能を有する電気機器(例えば、通信機能を有する空調機器、冷蔵庫、給湯器、照明機器及びEVスイッチ(電気自動車等の充電装置)等)、及び後述するスマートメータ124と、無線又は有線により通信する。HEMS120は、これらの機器との通信により、各機器からそれぞれの電力消費に関するデータを受信し、受信したデータを内部の記憶装置(図示せず)に記憶する。HEMS120はさらに、第1リモコン108及び第2リモコン112とも無線又は有線により通信し、受信した電力消費に関するデータを内部の記憶装置に記憶する。このとき、HEMS120は、電力消費に関するデータに、受信時刻を表す情報を付して記憶する。HEMS120は、ルータ122を介してネットワーク152にアクセスする機能を持つ。ネットワーク152は、例えばインターネットである。ルータ122は、無線又は有線により、ネットワーク152にアクセス可能な通信機器である。HEMS120は、内部の記憶装置に記憶されている電力消費に関するデータ(時刻情報を含む)を、所定のタイミング(例えば、所定時刻、又は所定の時間間隔)で、統合サーバ140にアップロードする。なお、HEMS120から統合サーバ140に送信する電力消費に関するデータは、全て同じタイミングで送信されなくてもよい。例えば、電気機器に応じたタイミングで送付されてもよい。
【0027】
スマートメータ124は、通信機能を有する。スマートメータ124は、系統電源150から供給される電力を計測し、計測した電力量の情報をHEMS120に送信する。ここでは、電力会社との契約により、PCS106から供給される電力量が住宅102内で消費される電力量よりも多い場合、余剰電力を電力会社に売ること(以下、売電ともいう)ができるとする。したがって、スマートメータ124の計測値は、負の値になり得る。
【0028】
電気機器126は、HEMS120との通信機能を有する。ここでは、電気機器126として、HEMS120に自己の電力消費に関する情報を送信可能な機器を代表的に示している。電気機器126は、通信機能を有する空調機器、冷蔵庫、給湯器、照明機器及びEVスイッチ等を含む。
【0029】
端末装置130は、制御部(CPU等)、記憶部(半導体メモリ等)、通信部、表示部及び操作部を備えている。端末装置130は、例えば、スマートフォン等の携帯型端末である。端末装置130は、無線通信の基地局を介して、又は、ルータ122を介してネットワーク152にアクセスできる。
【0030】
統合サーバ140、電力会社サーバ142及び仲介会社サーバ144はそれぞれ、制御部(CPU)、記憶部(半導体メモリ、ハードディスクドライブ等)、通信部及び操作部を備えたサーバコンピュータである。統合サーバ140は、住宅102の第2リモコン112、HEMS120及び端末装置130と通信し、住宅102における電力消費に関する情報を収集する。統合サーバ140は、後述するように、予測される電力消費に伴う費用を算出して、推奨情報を端末装置130に提供するリコメンド動作を実行する。リコメンド動作については後述する。電力会社サーバ142及び仲介会社サーバ144は、それぞれ、自社が提供している電力供給サービスに関する情報(以下、電力料金プランともいう)を、内部の記憶装置に記憶しており、ネットワーク152を介して外部からの要求を受けて情報を送信する。統合サーバ140は、定期的に電力会社サーバ142及び仲介会社サーバ144から各社の電力料金プランを取得し、内部の記憶装置に記憶する。統合サーバ140は、後述するように、リコメンド動作において、記憶装置に記憶されている最新の電力料金プランを適宜参照する。
【0031】
図1において、上側の破線は、第2リモコン112、HEMS120及び統合サーバ140の相互間で情報が交換されることを示している。下側の破線は、端末装置130及び統合サーバ140の間で情報が交換されることを示している。
【0032】
[電力変換器の動作モード]
電力変換器110は、複数のモードで動作することができる。電力変換器110がいずれのモードで動作するかは、第2リモコン112を介して外部から(例えば、ユーザの操作により)設定され得る。
図1に示した構成のうち、電力供給に直接関係する構成を
図2に示す。
【0033】
図2を参照して、系統電源150から電力を供給するための電気配線154には、PCS106、電力変換器110、スマートメータ124及び負荷128が接続されている。なお、負荷128は、電気機器126を含み、住宅102に配置されており、系統電源150から電力を供給され得る電気機器全体を示している。
【0034】
Swは、PCS106の入出力電力、即ち、PCS106と電気配線154との間で交換される電力量を表す。SwはPCS106から供給される電力量であり、max(Sw)を供給可能な最大電力として、0≦Sw≦max(Sw)である。
【0035】
PDwは、電力変換器110の入出力電力、即ち、電力変換器110と電気配線154との間で交換される電力量を表す。電力変換器110は、蓄電池114の充電及び放電を行なうので、max(PDx)を供給(充電)可能な最大電力として、-max(PDx)≦PDw≦max(PDx)である。PDwが負である場合、充電を意味し、正である場合、放電を意味する。なお、PDxは電力変換器110を意味し、max(PDx)は、電力変換器110の充電状態に依存して変化する。
【0036】
Rwは、負荷128の入出力電力、即ち、負荷128と電気配線154との間で交換される電力量を表す。Rwは負荷128で消費される電力であり、max(Rw)を最大消費電力として、-max(Rw)≦Rw≦0である。
【0037】
なお、Sw、PDw及びRwの値はいずれも、電気配線154を基準として正負が定められている。即ち、
図2において、電気配線154に流入する矢印は正の値であり、電気配線154から流出する矢印は負の値である。
【0038】
電力変換器110は、例えば3種類のモードで動作し得るとする。表1に、Aモード(シングルモード)に関して取り得る状態と、それに対応する電力変換器110の設定とを示す。
【0039】
【0040】
表1において、「条件」は、Sw、Rw及びmax(PDx)(電力変換器110の充電状態に対応)の大小関係に関して取り得る状態を示しており、電力変換器110の動作を決定するための条件である。この条件には、例えば6種類(A1~A6)のパターンがある。「PDxの設定」は、電力変換器110から供給される電力目標値である。
【0041】
パターンA1~A3では、電力変換器110の目標値PDwは0に設定され、電力変換器110は放電しないように設定される。パターンA1~A3は、PCS106から供給される電力により負荷128の消費電力をまかなうことが可能な状態であり、余剰電力は売電可能である。
【0042】
パターンA4~A6では、電力変換器110の目標値PDwは、|Rw|-|Sw|に設定される。即ち、PCS106から供給される電力だけでは、負荷128の消費電力をまかなうことができない状態であり、不足分は電力変換器110及び系統電源150から供給される。パターンA4では、電力変換器110だけで負荷128の不足分を供給することができ、売買は行なわれない(電力変換器110がより多くの電力を供給可能であっても、売電は行なわれない)。パターンA5及びA6では、(|Rw|-|Sw|)-PDwの値の正負に応じて売買が行なわれる。正の場合、PCS106及び電力変換器110だけでは、負荷128の消費電力をまかなうことができず、系統電源150から電力の供給を受ける(買電)。一方、負の場合、PCS106及び電力変換器110だけで、負荷128の消費電力をまかなうことができ、売買は行なわれない。
【0043】
表2にBモード(ダブルモード)に関して取り得る状態と、それに対応する電力変換器110の設定とを示す。
【0044】
【0045】
「条件」及び「PDxの設定」の意味は、表1と同じである。表1と同様に6種類(B1~B6)のパターンがある。
【0046】
パターンB2~B4では、電力変換器110の目標値PDwは、|Rw|に設定される。即ち、PCS106から供給される電力で負荷128の消費電力をまかなう。したがって、PCS106の発電電力(余剰電力)を売ることができる(売電)。
【0047】
パターンB1、B5及びB6では、電力変換器110の目標値PDwは、max(PDx)に設定される。即ち、電力変換器110から可能な限り電力を供給する。パターンB1では、負荷128の消費電力のうち、電力変換器110から供給できない電力はPCS106から供給される。さらに、PCS106から供給される電力のうち、負荷128に供給されない余剰電力を売ることができる。一方、パターンB5及びB6では、|Sw|-(|Rw|-PDw)の値の正負に応じて、締結されている売買契約の範囲内で、売買が可能である。即ち、負の場合、買電が行なわれる。正の場合には、売電契約が締結されていれば、売電が行なわれる。
【0048】
表3にCモード(グリーンモード)に関して取り得る状態と、それに対応する電力変換器110の設定とを示す。
【0049】
【0050】
「条件」及び「PDxの設定」の意味は、表1と同じである。表1と同様に6種類(C1~C6)のパターンがある。Cモードでは、いずれのパターンにおいても、電力変換器110の目標値PDwは|Rw|-|Sw|に設定され、(|Rw|-|Sw|)-PDwの値の正負に応じて、売買が行なわれる。即ち、正の場合、買電が行なわれ、負の場合、売電が行なわれる。
【0051】
[リコメンド動作]
図3を参照して、リコメンド動作に関するエネルギーマネジメントシステム100全体の動作を説明する。この動作は、所定のタイミング(例えば、所定時刻、所定時間間隔等)で、統合サーバ140により開始される。
【0052】
ステップ300において、統合サーバ140は、リコメンドモード決定処理を実行する。リコメンドモード決定処理は、
図4を参照して後述する処理である。リコメンドモード決定処理により、統合サーバ140は、住宅102における電力消費に関し、ユーザへの推奨情報(電力料金プラン、電力変換器110の動作モード等)を決定する。
【0053】
ステップ302において、統合サーバ140は、ステップ300で決定された推奨情報が、住宅102に関する現在の電力消費の前提条件(例えば、現在の電力料金プラン、電力変換器110の動作モード、それらの組合せ等)と同じであるか否かを判定する。異なると判定された場合、制御はステップ304に移行する。そうでなければ(同じである場合)、本リコメンド動作は終了する。
【0054】
ステップ304において、統合サーバ140は、ステップ300で決定された推奨情報を含むデータを端末装置130に送信する。統合サーバ140から端末装置130へのデータ送信は、例えば、電子メール、又は、端末装置130に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを介して行なわれ得る。端末装置130の送信アドレスは、ユーザが端末装置130を操作して、予め統合サーバ140に登録しておけばよい。送信されるデータ形式は任意である。推奨内容を示すものであればよく、テキストのみであっても、画像データを含むものであってもよい。
【0055】
端末装置130は、統合サーバ140から推奨情報を含むデータを受信すると、受信したことをLEDの点滅、音響等により通知し、ユーザの操作を受けて、推奨情報を表示部に表示する。例えば、推奨する内容と、推奨を受け入れるか否かを選択するための操作ボタンとが表示される。端末装置130は、例えば、
図5に示すような画面を表示部132に表示し、ユーザによる操作ボタン134又は136の選択を待受ける。ユーザが操作ボタン134及び136のいずれかを操作したことを受けて、制御はステップ306に移行する。
【0056】
ステップ306において、端末装置130は、ユーザが推奨情報を了承したか否かを判定する。具体的には、端末装置130は、ユーザが操作ボタン134を選択したと判定した場合、推奨が了承されたと判定し、制御はステップ308に移行する。そうでなければ(ユーザが操作ボタン136を選択した場合)、推奨が拒否されたと判定し、制御はステップ310に移行する。
【0057】
ステップ308において、端末装置130は、推奨を了承することを示す所定のコード(以下、了承コードともいう)を統合サーバ140に送信する。その後、制御はステップ312に移行する。
【0058】
ステップ310において、端末装置130は、推奨を拒否することを示す所定のコード(以下、拒否コードともいう)を統合サーバ140に送信する。その後、制御はステップ312に移行する。
【0059】
ステップ312において、統合サーバ140は、ステップ308又は310により送信されたコードを受信し、受信したコードに応じた処理を実行する。具体的には、統合サーバ140は、了承コードを受信した場合、例えば、推奨情報が電力変換器110の動作モードであれば、電力変換器110の第2リモコン112に、推奨情報に対応する動作モードを示す所定のコードを送信する。例えば、推奨情報が電力料金プランであれば、電力会社サーバ142又は仲介会社サーバ144等に、ユーザが電力料金プランの変更を希望している旨を送信する。一方、統合サーバ140は、拒否コードを受信した場合、住宅102に関する現在の電力消費の前提条件を変更せず、本リコメンド動作は終了する。
【0060】
これにより、例えば、推奨情報が電力変換器110の動作モードであれば、第2リモコン112は、電力変換器110を、指定された動作モードで動作するように設定する。例えば、推奨情報が電力料金プランであれば、電力会社又は仲介会社は、自動的に、又はユーザに連絡した後、電力料金プランを変更することができる。
【0061】
図4を参照して、統合サーバ140が行なうリコメンドモード決定処理に関して説明する。なお、上記したように、所定のタイミングで、第2リモコン112及びHEMS120から統合サーバ140に電力消費に関するデータがアップロードされ、統合サーバ140は、例えば、受信時刻の情報を付加して、内部の記憶装置に記憶しているとする。
【0062】
ステップ400において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されている住宅102に関する電力消費に関するデータ(以下、アップロードデータともいう)から、電力変換器110の最新のSOCの値を取得する。
【0063】
ステップ402において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータを用いて、所定の将来(例えば翌日)における、太陽光発電パネル104及びPCS106による余剰電力の予測データを作成する。例えば、住宅102における過去の余剰電力に関する情報等を用いて、公知の外挿法、移動平均法等により余剰電力の予測データを生成することができる。
【0064】
ステップ404において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータを用いて、402で予測データを作成した同じ将来における、電気機器126の消費電力の予測データを作成する。例えば、住宅102における過去の消費電力に関する情報等を用いて、公知の外挿法、移動平均法等により消費電力の予測データを生成することができる。
【0065】
ステップ406において、統合サーバ140は、ステップ400で取得した電力変換器110のSOC、ステップ402及び404で作成した予測データ、及び、必要に応じて、予め電力会社サーバ142及び仲介会社サーバ144から取得している電力料金プランに基づいて、電力消費の前提条件のそれぞれに関して、予測コスト(電力料金)を試算する。予測コストの試算方法に関して、例えば、次のような3種類の試算パターンが考えられる。統合サーバ140がいずれの試算パターンで試算するかは、ユーザにより予め指定されている条件に依存する。
【0066】
・第1の試算パターン
ユーザが電力料金プランを指定している場合に実行される。統合サーバ140は、指定された電力料金プランの下で、電力変換器110の各動作モードにおける予測コストを試算する。例えば、ユーザが現在の電力料金プランの変更を希望しない場合には、ユーザは、現在の電力料金プランを指定すればよい。その場合、統合サーバ140は内部の記憶装置に記憶されている各社の電力料金プランを考慮せずに、予測コストを試算する。
【0067】
・第2の試算パターン
ユーザが電力変換器110の動作モードを指定する。統合サーバ140は、指定された動作モードで電力変換器110を動作させるときの予測コストを、電力料金プラン毎に試算する。例えば、自分の家に設置している太陽光パネルで発電した電力で、自分の家の電力消費を賄うことを希望するユーザは、上記のCモード(グリーンモード)を選択すればよい。エコ意識の高い人は、エコに準ずる動作モードしか選択しない、というような個々人の思考に合わせて、ユーザのポリシーも尊重しながら、より良い電力料金プランを提案することができる。
【0068】
・第3の試算パターン
ユーザが、電力料金プランも電力変換器110の動作モードも指定しない。統合サーバ140は、可能な電力料金プラン及び電力変換器110の動作モードの組合せのそれぞれに関して、予測コストを試算する。例えば、統合サーバ140は、既に設置済みの全国の電力変換器(蓄電装置)から収集した動作モードのデータ、及び、電力料金プランの情報に基づき、新設(設置予定を含む)のユーザ、又は既設のユーザに対して、動作モード及び電力料金プランの組合せを提案する。全国各地に電力変換器が敷設されていて、その各々からデータ(電力情報(余剰電力等)、電力関連情報(電力料金プラン等)、電力変換器の能力、機種名、メーカ名、関連データ(住所等)等)が収集されると、収集されたデータはビッグデータとなる。このビッグデータから、ユーザに対して、「あなたがお住いの地域付近では電力変換器はAAモード、電力プランはBBプランで利用されている傾向があります。その組み合わせはいかがでしょうか?」というように推奨することができる。この推奨によって、ユーザにとって動作モード及び電力料金プランも決定が容易となるので、利便性が向上する。
【0069】
ステップ408において、統合サーバ140は、ステップ406で試算した予測コストのうち、最も小さい予測コスト(最も安い電力料金)に対応する電力消費の前提条件を、リコメンドモードとして決定する。なお、リコメンドモードは、必ずしも1つには決定されない。複数の予測コストが同じ値であれば、それらに対応する複数の電力消費の前提条件が、リコメンドモードとして決定される。
【0070】
以上により、所定の将来において、電力料金がより安くなる電力消費の前提条件を、リコメンドモードとして決定できる。したがって、上記したように、決定されたリコメンドモードをユーザに提示することにより、ユーザは、現在の電力消費の前提条件を、より電気料金が安くなるものに変更することができる。さらに、変更に必要な処理(手続を含む)の全て又は一部が自動的に実行されることにより、ユーザの負担及び煩雑さを軽減することができる。
【0071】
以下に示すように、リコメンドモード決定処理300を、機械学習により行なうことができる。例えば、統合サーバ140は、次のように電力会社別に学習データ及びモデル(ニューラルネットワーク)を準備する。毎月1回、各電力会社に属する各ユーザの情報について、過去1年間の消費電力の推移に基づき、電力変換器の各動作モードを選択したときの費用を計算し、過去1年間の消費電力の推移と、最も安価になる電力変換器の動作モードとの組合せを学習データとして準備する。
【0072】
統合サーバ140は、準備した学習データを用いてニューラルネットワークを学習させる。ニューラルネットワークへの入力は、過去1年間の消費電力の推移とし、教師データは各動作モードについて最適(“1”を付与)とそれ以外(“0”を付与)とを要素とするベクトルとする。例えば、上記した3つの動作モード(A~Cモード)の場合、2番目の動作モードが最も安価であれば、その状態をベクトル[0,1,0]で表す。ニューラルネットワークの出力は、各動作モードが最適である確率を各動作モードについて表す要素からなるベクトルである。出力層は、例えば、ベクトルの各要素の値の和が1となるように各要素の値を変換する公知のsoftmax関数を用いたsoftmax層である。統合サーバ140は、上記の学習データの生成及びニューラルネットワークの学習を全てのユーザに関して行ない、学習後のニューラルネットワークを記憶部に記憶する。
【0073】
以上のようにして、学習後のニューラルネットワークが得られた後には、統合サーバ140は、住宅102からのアップロードデータに基づき、過去1年間の消費電力を、住宅102の住人が契約している電力会社に対応する学習後のニューラルネットワークに入力し、その出力(ベクトル)のうち最も確率が高い要素に対応する動作モードをリコメンドモードとして決定することができる。
【0074】
[リコメンドモードの決定例]
(第1の試算パターン)
第1の試算パターンに基づく試算結果の例を、
図6~
図9に示す。以下では、現在の電力料金プランでは、電力変換器110の充電に要する費用は、昼間であればSOC1%当たり10円であり、夜間であればSOC1%当たり1円であるとする。また、電力変換器110は、翌朝の所定時刻までにSOCがエネルギーマネジメントシステム100%になるように充電されるとし、発電の余剰電力があれば売電することができるとする。
【0075】
図6~
図9において、「売買」は、電力の売買の金額を示す。正の値は買電額を示し、負の値は売電額を示す。「PDx昼間充電量」は、電力変換器110が昼間に充電する電力量に対応するSOC(%)を示し、「PDx昼間費用」は、「PDx昼間充電量」に対応する電力料金を示す。「PDx夜間充電量」は、電力変換器110が夜間に充電する電力量に対応するSOC(%)を示し、「PDx夜間費用」は、「PDx夜間充電量」に対応する電力料金を示す。「合計」は、「売買」、「PDx昼間費用」及び「PDx夜間費用」の合計値であり、予測コストを意味する。
【0076】
(第1例)
ある日において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータから、電力変換器110のSOCが10%であり、発電の余剰電力の見込みが「小さく」、負荷の消費電力の見込みが「大きい」と予測したとする。よって、統合サーバ140は、Bモードに関しては、電力変換器110は充電せず、電力変換器110から負荷に電力を供給(SOC10%分を放電)し、その日の夜までに電力変換器110の蓄電池114の蓄電電力は0(SOC=0(%))になり、電力変換器110は夜間にSOC=100(%)になるように充電すると予測する。したがって、
図6のBモードの行に示すように、電力の売買額を1000円(電力の購入費用)とすると、電力変換器110の昼間の充電量は0%(費用0円)、夜間の充電量は100%(費用100円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は1100円になる。
【0077】
一方、Cモードに関しては、統合サーバ140は、電力変換器110を充電したくても発電による余剰電力が少なく、電力変換器110を充電するために電力を購入する必要があり、昼間の間に電力変換器110はSOC=100(%)になるように充電されると予測する。したがって、
図6のCモードの行に示すように、電力の売買額を1000円(電力の購入費用)とすると、電力変換器110の昼間の充電量は90%(費用900円)、夜間の充電量は0%(費用0円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は1900円になる。このような場合には、統合サーバ140は、合計額がより小さいBモードをリコメンドモードとして決定する。
【0078】
(第2例)
ある日において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータから、電力変換器110のSOCが90%であり、発電の余剰電力の見込みが小さく、負荷の消費電力の見込みが大きいと予測したとする。よって、統合サーバ140は、Bモードに関しては、電力変換器110は充電せず、電力変換器110から負荷に電力を供給(SOC=90(%)分を放電)し、その日の夜までに電力変換器110の蓄電池114の蓄電電力は0(SOC=0(%))になり、電力変換器110は夜間にSOC=100(%)になるように充電すると予測する。したがって、
図7のBモードの行に示すように、電力の売買額は第1例の場合(1000円)よりも少なく800円となり、電力変換器110の昼間の充電量は0%(費用0円)、夜間の充電量は100%(費用100円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は900円になる。
【0079】
一方、Cモードに関しては、統合サーバ140は、電力変換器110を充電したくても発電による余剰電力が少なく、電力変換器110を充電するために電力を購入する必要があり、昼間の間に電力変換器110はSOC=100(%)になるように充電されると予測する。したがって、
図7のCモードの行に示すように、電力の売買額は第1例の場合と同じ1000円であり、電力変換器110の昼間の充電量は10%(費用100円)、夜間の充電量は0%(費用0円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は1100円になる。このような場合には、統合サーバ140は、合計額がより小さいBモードをリコメンドモードとして決定する。
【0080】
(第3例)
ある日において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータから、電力変換器110のSOCが10%であり、発電の余剰電力の見込みが「大きく」、負荷の消費電力の見込みが「小さい」と予測したとする。よって、統合サーバ140は、Bモードに関しては、電力変換器110は充電せず、電力変換器110から負荷に電力を供給(SOC=10(%)分を放電)し、その日の夜までに電力変換器110の蓄電池114の蓄電電力は0(SOC=0(%))になり(電力変換器110は夜間にSOC=100(%)になるように充電する)、発電の余剰電力が大きいので、700円の売電が可能であると予測する。したがって、
図8のBモードの行に示すように、電力の売買額は-700円となり、電力変換器110の昼間の充電量は0%(費用0円)、夜間の充電量は100%(費用100円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は-600円になる。
【0081】
一方、Cモードに関しては、統合サーバ140は、発電による余剰電力が大きく、負荷の消費電力が小さいので、発電電力で電力変換器110を充電し、さらに余剰電力を売ることができ、500円の売電が可能であると予測する。したがって、
図8のCモードの行に示すように、電力の売買額は-500円となり、電力変換器110の昼間の充電量は90%であるが費用は0円、夜間の充電量は0%(費用0円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は-500円になる。このような場合には、統合サーバ140は、合計額がより小さい(より利益が出る)Bモードをリコメンドモードとして決定する。
【0082】
(第4例)
ある日において、第3例と同様に、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータから、電力変換器110のSOCが10%であり、発電の余剰電力の見込みが「大きく」、負荷の消費電力の見込みが「小さい」と予測したとする。但し、法律が改正されて、売電による収入が得られなくなったとする。よって、統合サーバ140は、Bモードに関して、第3例と同様に、電力変換器110は充電せず、電力変換器110から負荷に電力を供給(SOC=10(%)分を放電)し、その日の夜までに電力変換器110の蓄電池114の蓄電電力は0(SOC=0(%))になり(電力変換器110は夜間にSOC=100(%)になるように充電する)、売電が可能であると予測する。但し、第3例と異なり、売電による収入は0円である。したがって、
図9のBモードの行に示すように、電力の売買額は0円となり、電力変換器110の昼間の充電量は0%(費用0円)、夜間の充電量は100%(費用100円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は100円になる。
【0083】
統合サーバ140は、Cモードに関しても、第3例と同様に、発電による余剰電力が大きく、負荷の消費電力が小さいので、発電電力で電力変換器110を充電し、さらに余剰電力を売ることができると予測する。但し、第3例と異なり、売電による収入は0円である。したがって、
図9のCモードの行に示すように、電力の売買額は0円となり、電力変換器110の昼間の充電量は90%であるが費用は0円、夜間の充電量は0%(費用0円)であり、合計額(翌朝の予測コスト)は0円になる。このような場合には、統合サーバ140は、合計額がより小さいCモードをリコメンドモードとして決定する。
【0084】
(第2の試算パターン)
第2の試算パターンに基づく試算例を示す。ここでは、ユーザが電力変換器110の動作モードとしてCモード(グリーンモード)を指定しているとする。
【0085】
ある日において、統合サーバ140は、内部の記憶装置に記憶されているアップロードデータから、電力変換器110のSOCが90%であり、発電の余剰電力の見込みが「小さく」、負荷の消費電力の見込みが「大きい」と予測したとする。よって、統合サーバ140は、電力変換器110を充電したくても発電による余剰電力が少なく、電力変換器110を充電するために電力を購入する必要があり、昼間の間に電力変換器110はSOC=100(%)になるように充電されると予測する。したがって、統合サーバ140は、昼間に電力変換器110をSOC=10(%)だけ充電するのに要する買電費用(x円)及び負荷による消費電力の買電費用(y円)を、内部の記憶装置に記憶されている各電力料金プランを用いて試算する。統合サーバ140は、電力料金プラン毎に得られた予測コスト(x+y(円))を比較し、最小の予測コストに対応する電力料金プランを、リコメンドモードとして決定する。決定されたリコメンドモードの情報は、上記したように統合サーバ140から端末装置130に送信されて、端末装置130の表示部132に表示される。例えば、現在指定されている動作モード(Cモード)で、電気代が最も安くなる電力会社及びその電力料金プランが表示部132に表示される。
【0086】
(第3の試算パターン)
第3の試算パターンに基づく試算例を示す。ユーザが電力変換器110の動作モードも電力料金プランも指定していない場合に、第3の試算パターンに基づく試算が行なわれる。ここでは、統合サーバ140は、例えば、日本全国に設置された電力変換器が稼働している動作モードの情報と、そこで採用されている電力料金プランの情報とを、ネットワーク152を介して収集し、対応させて内部の記憶装置に記憶しているとする。
【0087】
例えば、ユーザが、電力変換器(例えば電力変換器110)を新設したが、どの電力会社のどの電力料金プランに契約し、電力変換器をどの動作モードで稼働させるかについて、自分で検討するつもりがないような状態であるとする。そのような場合、統合サーバ140は、内部の記憶装置を参照して、動作モードの情報及び電力料金プランの情報の中から、ユーザが住んでいる地域における動作モードの情報及び電力料金プランを抽出し、リコメンドモードとして端末装置130に送信する。端末装置130は、受信した電力変換器の動作モード及び電力料金プランを、表示部132に表示する。ユーザがいずれかを選択すれば、端末装置130は、選択された動作モード及び電力料金プランに関する情報を統合サーバ140に送信する。
【0088】
統合サーバ140は、端末装置130から受信した動作モードに関する情報に応じて、電力変換器110の第2リモコン112に、動作モードに関する情報を送信する。これにより、第2リモコン112は、電力変換器110をその動作モードで動作するように設定することができる。また、統合サーバ140は、端末装置130から受信した電力料金プランに関する情報に応じて、電力会社、仲介会社等に、ユーザが新規に電力料金プランを締結することを希望している旨を送信する。これにより、ユーザは、電力会社、仲介会社等から新規契約の打診を受け、適切な電力料金プランを締結することができる。
【0089】
(変形例)
上記では、ユーザが端末装置130に表示されたリコメンドモードを了承すると、統合サーバ140が第2リモコン112に対して電力変換器110の動作モードの設定情報を送信し、第2リモコン112がそれにしたがって電力変換器110の動作モードを設定する場合を説明したが、これに限定されない。端末装置130にリコメンドモードが提示されるだけであってもよい。ユーザは、提示されたリコメンドモード(動作モード)が適切であると判断すれば、第2リモコン112を操作して、電力変換器110の動作モードをリコメンドモードに設定することができる。また、リコメンドモードが電力会社の料金プランである場合には、ユーザは、それが適切であると判断すれば、電力会社に連絡することができる。
【0090】
上記では、住宅102内の電気機器(電力変換器110及びPCS106を含む)の電力情報(発電量、蓄電量、電力消費量)を、HEMS120が収集して統合サーバ140にアップロードする場合を説明したがこれに限定されない。電力変換器110の第2リモコン112が、住宅102内の電気機器の電力情報を収集して、統合サーバ140にアップロードしてもよい。例えば、電力変換器110の第2リモコン112が、HEMSとしての機能を有していてもよい。また、第2リモコン112がルータ122との無線通信機能(例えばWiFi通信機能)を有していれば、第2リモコン112が、HEMS120が収集した電力情報をHEMS120から取得して、ルータ122を介して統合サーバ140にアップロードしてもよい。
【0091】
上記では、電力変換器110が3種類の動作モードで動作可能である場合を説明したが、電力変換器110は、これら以外の動作モードで動作可能であってもよい。また、予測コストの試算方法は、上記の第1~第3の試算パターンに限定されない。
【0092】
上記では、発電システムとして太陽光発電システムを示したが、これに限定されない。太陽光発電システム以外の発電システムであってもよい。また、太陽光発電システムに加えて、太陽光発電システム以外の発電システムを備えていてもよい。さらには、住宅102には、少なくとも電力変換器が装備されていればよく、発電システムを備えていなくてもよい。
【0093】
上記では、住宅102における電力情報(発電及び電力消費に関する情報)を、所定のタイミングで統合サーバ140にアップロードする場合を説明したが、これに限定されない。統合サーバ140が、任意のタイミングで第2リモコン112又はHEMS120に、電力情報の一部又は全ての送信を要求してもよい。要求を受信した第2リモコン112又はHEMS120は、記憶している電力情報を統合サーバ140に送信すればよい。例えば、統合サーバ140が、第2リモコン112に現在の電力変換器110のSOCの値を要求すれば、それに対して第2リモコン112は、統合サーバ140にSOCの値を送信すれば、統合サーバ140による予測コストの算出精度を向上することができる。
【0094】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0095】
100 エネルギーマネジメントシステム
102 住宅
104 太陽光発電パネル
106、116 PCS
108 第1リモコン
110 電力変換器
112 第2リモコン
114 蓄電池
120 HEMS
122 ルータ
124 スマートメータ
126 電気機器
128 負荷
130 端末装置
132 表示部
134、136 操作ボタン
140 統合サーバ
142 電力会社サーバ
144 仲介会社サーバ
150 系統電源
152 ネットワーク
154 電気配線