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特許7210944映像符号化装置、映像符号化方法および映像符号化プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】映像符号化装置、映像符号化方法および映像符号化プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/142 20140101AFI20230117BHJP
   H04N 19/105 20140101ALI20230117BHJP
   H04N 19/172 20140101ALI20230117BHJP
【FI】
H04N19/142
H04N19/105
H04N19/172
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018166289
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020039086
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雷 旭穎
(72)【発明者】
【氏名】三好 秀誠
【審査官】岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118459(JP,A)
【文献】特開平10-229563(JP,A)
【文献】特開平07-107460(JP,A)
【文献】特開平06-030396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピクチャを逐次受け付け、前記複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出する検出部と、
前記検出部によって前記シーンチェンジが検出された場合に、前記シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が符号化において前方向に参照する第2ピクチャとの距離が第1閾値未満であり、かつ、後方向に参照する第3ピクチャとの距離が第2閾値以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定する判定部と、
前記第1ピクチャの位置が前記所定の条件を満たす位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の前記第2ピクチャを、前記第1ピクチャの代わりにリピートするリピート処理部と
を有することを特徴とする映像符号化装置。
【請求項2】
前記リピート処理部は、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、参照するピクチャを前方向のピクチャに設定し、動きベクトルをゼロベクトルに設定し、変換係数をゼロに設定した符号化ピクチャを生成することを特徴とする請求項1に記載の映像符号化装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1閾値未満であり、かつ、前記第2閾値であるSOP(structure of picture)に区切られるピクチャの数の3分の1以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の映像符号化装置。
【請求項4】
前記判定部は、SOP(structure of picture)に区切られるピクチャの数が16である場合に、前記検出部により検出された前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置であるか否かを判定し、前記リピート処理部は、前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、リピートすることを特徴とする請求項1に記載の映像符号化装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する映像符号化方法であって、
複数のピクチャを逐次受け付け、
前記複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出し、
前記シーンチェンジが検出された場合に、前記シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が符号化において前方向に参照する第2ピクチャとの距離が第1閾値未満であり、かつ、後方向に参照する第3ピクチャとの距離が第2閾値以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定し、
前記第1ピクチャの位置が前記所定の条件を満たす位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の前記第2ピクチャを、前記第1ピクチャの代わりにリピートする
処理を実行することを特徴とする映像符号化方法。
【請求項6】
コンピュータに、
複数のピクチャを逐次受け付け、
前記複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出し、
前記シーンチェンジが検出された場合に、前記シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が符号化において前方向に参照する第2ピクチャとの距離が第1閾値未満であり、かつ、後方向に参照する第3ピクチャとの距離が第2閾値以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定し、
前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、前記第1ピクチャの代わりにリピートする
処理を実行させることを特徴とする映像符号化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像符号化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
HEVC(High Efficiency Video Coding)は、映像の符号化に関する規格であり、時間方向の階層符号化を容易に実現する階層的な参照構造に対応している。たとえば、ARIB(Association of Radio Industries and Business)規格(STD-B32)では、HEVCを用いた120Hz/60Hz階層符号化を規定している。120Hz/60Hz階層符号化は、120Hz映像を符号化する場合に、60Hz成分のみを容易に取り出すための時間方向階層符号化である。
【0003】
ARIB規格STD-B32では、120Hz再生時と60Hz再生時とでPTS/DTS(Presentation/Decoding time stamp)を共通化するために、TID(Temporal ID)6のピクチャの復号順序及び参照関係が変更されている。TIDは、ピクチャの階層を示すものであり、TIDの番号が大きいほど、階層がより深くなる。
【0004】
図15は、時間方向階層符号化に関するSOP(structure of picture)の構造の一例を示す図である。SOPでは、各符号化対象のピクチャ(I(Intra coded)ピクチャ、P(Predictive Coded)ピクチャ、B(Bi-directional Predictive Coded)ピクチャ)をTIDと表示順番とにより示す。図15において、縦軸は、TIDに対応する軸であり、横軸は表示順番を示す軸である。1つのSOPに割り当てられる情報量には上限がある。なお、n番目に符号化(復号)するBピクチャを、Bnと表記する。
【0005】
B1,B3,B5,B7,B9,B11,B13,B15のTIDは「6」となる。B6,B8,B12,B14のTIDは「3」となる。B4,B10のTIDは「2」となる。B2のTIDは「1」となる。I,I/P/B0のTIDは「0」となる。各ピクチャが復号されて表示される順番は、I,B1,B6,B3,B4,B5,B8,B7,B2,B9,B12,B11,B10,B13,B14,B15,I/P/B0となる。
【0006】
図15に示す各矢印は、ピクチャを符号化する場合に参照する参照ピクチャを示す。B1の参照ピクチャは、I,I/P/B0となる。B6の参照ピクチャは、I,B4となる。B3の参照ピクチャは、I,B2となる。B4の参照ピクチャは、I,B2となる。B5の参照ピクチャは、B4,B2となる。B8の参照ピクチャは、B4,B2となる。B7の参照ピクチャは、B4,B2となる。B9の参照ピクチャは、B2,I/P/B0となる。B12の参照ピクチャは、B2,B10となる。B11の参照ピクチャは、B2,10となる。B10の参照ピクチャは、B2,I/P/B0となる。B13の参照ピクチャは、B10,B14となる。B14の参照ピクチャは、B10,I/P/B0となる。B15の参照ピクチャは、B14,I/P/B0となる。
【0007】
参照ピクチャは、参照元のピクチャよりも浅い階層となる。時間方向階層化の特徴の一つは、階層が深くなると、参照元のピクチャと参照ピクチャとの距離が近くなる。参照元のピクチャと参照ピクチャとの距離が近くなると、差分が少ないため、符号化効率が高まり、符号化に必要な情報量が少なくなる。参照ピクチャが複数存在する場合には、最大2つの参照ピクチャを用いて、ピクチャを符号化することができる。たとえば、Pピクチャは、前の「Iフレーム」を参照しないと差分しか表現できないフレームである。Bピクチャは、前後の「Iフレーム」、「Pフレーム」、「Bフレーム」を参照しないと差分しか表現できないフレームである。ここで、第1のピクチャと、第2のピクチャとの距離は、第1のピクチャの表示順番と、第2のピクチャの表示順番との差を示すものである。
【0008】
図16は、TID6のピクチャの特徴を説明するための図である。図16において、TID6のピクチャは、B1,B3,B5,B7,B9,B11,B13,B15となる。TID6のピクチャは、一番階層の深いピクチャであり、他のピクチャから参照されないため、「非参照ピクチャ」となる。TID6の各ピクチャは、参照ピクチャと近いため、符号化に必要な情報量が少ない。TID6の各ピクチャに割り当てられる情報量の合計は、1つのSOP全体に割り当てられる情報量の10~20%であり、1ピクチャあたりでは、1~2%となる。
【0009】
符号化対象ピクチャは、2つの参照ピクチャを参照している場合、符号化対象ピクチャと、このピクチャの前方向に存在する参照ピクチャとの距離を「前方向参照距離」と定義する。符号化対象ピクチャと、このピクチャの後方向に存在する参照ピクチャとの距離を「後方向参照距離」と定義する。なお、符号化対象ピクチャは、必ずしも2つの参照ピクチャを参照しなくてもよい。符号化対象ピクチャは、前方方向か、後ろ方向のうち、一つの参照ピクチャを参照してもよい。
【0010】
図16に示す例では、B1の前方向参照距離は「1」であり、後方向参照距離は「15」である。B3の前方向参照距離は「3」であり、後方向参照距離は「5」である。B5の前方向参照距離は「1」であり、後方向参照距離は「3」である。B7の前方向参照距離は「3」であり、後方向参照距離は「1」である。B9の前方向参照距離は「1」であり、後方向参照距離は「7」である。B11の前方向参照距離は「3」であり、後方向参照距離は「1」である。B13の前方向参照距離は「1」であり、後方向参照距離は「3」である。B15の前方向参照距離は「1」であり、後方向参照距離は「1」である。
【0011】
なお、ピクチャの表示順番によっては、後方向参照距離が長くなる場合がある。たとえば、B1の後方向参照距離は「15」である。B9の後方向参照距離は「7」である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平10-229563号公報
【文献】特開平6-165159号公報
【文献】特開2011-239255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来技術では、TID6のピクチャでシーンチェンジが発生すると、画質が劣化するという問題がある。
【0014】
たとえば、TID6のピクチャでシーンチェンジが発生すると、前方向の参照ピクチャを参照できなくなる。また、後方向の参照ピクチャとの距離が遠くなるため、ピクチャと後方向の参照ピクチャとの差分が大きくなり、符号化効率が悪くなる。また、符号化効率が悪くなることで、全体的に画質が劣化してしまう。
【0015】
図17は、従来技術の問題を説明するための図(1)である。たとえば、B1からシーンチェンジとなる場合には、IとB1とが大きく異なるため、B1を符号化する場合には、B0を参照することになる。ここで、B1を符号化する場合に、B0を参照すると、距離が遠いため、B1とB0との差分が大きくなり、符号化効率が悪くなり、画像が劣化する。
【0016】
B1とB0との差分が大きい場合には、B1に割り当てる情報量を大きくすればよいが、1つのSOPに割り当てられる情報量には限りがあるため、B1の情報量の増加に伴い、他のピクチャの情報量が削減されてしまう。これによって、他のピクチャのPSNR(Peak signal-to-noise ratio)が低下してしまう。
【0017】
図18は、従来技術の問題を説明するための図(2)である。たとえば、B9からシーンチェンジとなる場合には、B2とB9とが大きく異なるため、B9を符号化する場合には、B0を参照することとなる。ここで、B9を符号化する場合に、B0を参照すると、距離が遠いため、B9とB0との差分が大きくなり、符号化効率が悪くなり、画像が劣化する。
【0018】
B0とB9との差分が大きい場合には、B9に割り当てる情報量を大きくすればよいが、1つのSOPに割り当てられる情報量には限りがあるため、B9の情報量の増加に伴い、他のピクチャの情報量が削減されてしまう。参照ピクチャの情報減少によって、全体のピクチャのPSNRが低下してしまう。
【0019】
1つの側面では、本発明は、TID6のピクチャでシーンチェンジが発生しても、画質を劣化させない映像符号化装置、映像符号化方法および映像符号化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の案では、映像符号化装置は、検出部と、判定部と、リピート処理部とを有する。検出部は、複数のピクチャを逐次受け付け、複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出する。判定部は、検出部によってシーンチェンジが検出された場合に、シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であるか否かを判定する。リピート処理部は、第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、第1ピクチャの代わりにリピートする。
【発明の効果】
【0021】
TID6のピクチャでシーンチェンジが発生しても、画質を劣化させないという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施例1に係るシステムの構成を示す図である。
図2図2は、本実施例1に係る映像符号化装置の処理を説明するための図(1)である。
図3図3は、本実施例1に係る映像符号化装置の処理を説明するための図(2)である。
図4図4は、前方向の参照ピクチャで置き換える理由を説明するための図である。
図5図5は、後方向の参照ピクチャを参照して符号化しない理由を説明するための図である。
図6図6は、本実施例1に係る映像符号化装置の構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、本実施例1に係る参照距離設定情報のデータ構造の一例を示す図である。
図8図8は、リピートさせる場合の符号化ピクチャのデータ構造の一例を示す図である。
図9図9は、各符号化ピクチャの復号結果を説明するための図である。
図10図10は、本実施例1に係る映像符号化装置の処理手順を示すフローチャートである。
図11図11は、本実施例2に係る映像符号化装置の構成を示す機能ブロック図である。
図12図12は、本実施例2に係る映像符号化装置の処理手順を示すフローチャートである。
図13図13は、映像符号化装置のその他の処理を説明するための図である。
図14図14は、本実施例に係る映像符号化装置と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図15図15は、時間方向階層符号化に関するSOPの構造の一例を示す図である。
図16図16は、TID6のピクチャの特徴を説明するための図である。
図17図17は、従来技術の問題を説明するための図(1)である。
図18図18は、従来技術の問題を説明するための図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本願の開示する映像符号化装置、映像符号化方法および映像符号化プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1は、本実施例1に係るシステムの構成を示す図である。図1に示すように、このシステムは、カメラ10と、映像符号化装置100と、映像復号装置20と、表示装置30とを有する。カメラ10と、映像符号化装置100とは相互に接続される。映像符号化装置100と、光回線などを用いたIPネットワーク伝送を通じて、映像復号装置20とは、相互に接続される。映像復号装置20と、表示装置30とは、相互に接続される。
【0025】
カメラ10は、映像を撮影するカメラである。カメラ10は、撮影した映像の情報を、映像符号化装置100に送信する。映像の情報には、時刻毎の複数のピクチャが含まれているものとする。
【0026】
映像符号化装置100は、カメラ10から受け付ける映像の情報をエントロピ(Entropy)符号化することで、ストリーム情報を生成する装置である。映像符号化装置100は、ストリーム情報を、映像復号装置20に送信する。
【0027】
映像復号装置20は、映像符号化装置100からストリーム情報を受信し、受信したストリーム情報を復号することで、映像を生成する装置である。映像復号装置20は、映像の情報を表示装置30に出力する。
【0028】
表示装置30は、映像復号装置20から映像の情報を受け付け、映像を表示する表示装置である。たとえば、表示装置30は、液晶ディスプレイ、タッチパネル、テレビモニタ等に対応する。
【0029】
次に、本実施例1に係る映像符号化装置100の処理の一例について説明する。図2および図3は、本実施例1に係る映像符号化装置の処理を説明するための図である。映像符号化装置100は、時間方向階層符号化を行う場合に、シーンチェンジがピクチャに発生した場合には、シーンチェンジの発生したピクチャが、特別位置のピクチャであるか否かを判定する。映像符号化装置100は、シーンチェンジの発生したピクチャが特別位置のピクチャである場合には、かかるピクチャの前方向の参照ピクチャをリピートすることで、シーチェンジに伴う情報の発生量を減少させる。
【0030】
映像符号化装置100は、シーンチェンジの発生したピクチャの後方向参照距離が閾値Th1以上であり、かつ、前方向参照距離が1の場合に、シーンチェンジの発生したピクチャが特別位置のピクチャであると判定する。以下の説明において、「シーンチェンジの発生したピクチャの後方向参照距離が閾値Th1以上であり、かつ、前方向参照距離が1である」という条件を、「特別位置条件」と表記する。また、特別位置条件で用いる閾値Th1を、式(1)により定義する。式(1)において、PicNumInSOPは、1SOP内のピクチャの枚数である。
【0031】
Th1=PicNumInSOP/3・・・(1)
【0032】
図2では、現SOPの「B1」において、シーンチェンジが発生した場合について説明する。B1の前方向の参照ピクチャを、前SOPのB0とする。また、現SOPのB1の前方向参照距離を「1」、後方向参照距離を「15」とする。図2に示すものは、1SOP内のピクチャ数が、「16」であるため、特別位置条件の閾値Thは、約「5.3」となり、B1は、特別位置条件を満たすピクチャとなる。
【0033】
映像符号化装置100は、B1において、シーンチェンジが発生し、B1が特別位置条件を満たすため、B1の前方向の参照ピクチャとなる前SOPのB0をリピートする。図3に示すように、符号化前の各ピクチャは、B0(前SOPのB0),B1,B6,B3,B4,B5,・・・の順に、映像符号化装置100に入力される。映像符号化装置100は、B0(前SOPのB0)を符号化した後に、B1に対してB1の復号ピクチャがB0(前SOPのB0)をリピートできるためのリピート処理を行う。その後、映像符号化装置100は、B6,B3,B4,B5,・・・の順に符号化する。映像復号装置20は、映像符号化装置100から、各符号化ピクチャを受信し、B0(前SOPのB0),B1,B6,B3,B4,B5,・・・の順に復号する。B1はB0(前SOPのB0)をリピートしたため、図3に示すように、復号ピクチャは、B0(前SOPのB0),B0(前SOPのB0),B6,B3,B4,B5,・・・になる。復号した映像を表示装置30に表示させる。
【0034】
仮に、シーンチェンジが発生していない場合や、B1が特別位置条件を満たさない場合には、映像符号化装置100は、B1はリピート処理を行なわず、B0(前SOPのB0),B1,B6,B3,B4,B5,・・・を順に普通に符号化することで、符号化ピクチャを生成する。
【0035】
図2の説明に戻り、現SOPの「B9」において、シーンチェンジが発生した場合について説明する。B9の前方向の参照ピクチャを、B2とする。また、B1の前方向参照距離を「1」、後方向参照距離を「7」とする。特別位置条件の閾値Thは、約「5.3」であるため、B9は、特別位置条件を満たすピクチャとなる。映像符号化装置100は、B9において、シーンチェンジが発生し、B9が特別位置条件を満たすため、B9の前方向の参照ピクチャとなるB2をリピートする。
【0036】
続いて、前方向の参照ピクチャで置き換える理由について説明する。図4は、前方向の参照ピクチャで置き換える理由を説明するための図である。図4では一例として、B1をB0(前SOPのB0)で置き換える場合について説明する。まず、TID6のピクチャは非参照ピクチャであるため、置き換えても他のピクチャに影響を与えない。また、8K120pの映像では、各ピクチャの表示の間隔は「8.3ms」となる。B0は、B1の直前のピクチャかつ、表示時間の間隔が短いため、B1をB0に置き換えても利用者に気付かれにくい。これに対して、B1をB0(前SOPのB0)に置き換えないと、位置の遠い(現SOPのB0)を参照ピクチャとして符号化されるため、符号化効率が悪化し、画質が劣化してしまう。きれいなB0(前SOPのB0)から、画質の劣化したB1が表示されると、かかる劣化が目立ち、劣化に気付かれやすい。
【0037】
続いて、後方向の参照ピクチャをリピートしない理由について説明する。図5は、後方向の参照ピクチャをリピートしない理由を説明するための図である。通常の表示順番は、「前SOPのB0,B1,B6,B3,B4,B5,・・・,B15,現SOPのB0」となる。これに対して、後方向の参照ピクチャをリピートすると、表示の順番は、「前SOPのB0,現SOPのB0,B6,B3,B4,B5,・・・,B15」となる。このように、後方向の参照ピクチャをリピートすると、表示順番が後ろのピクチャが、表示順番が先のピクチャよりも先に表示されてしまい、復号後の映像を視聴する利用者に違和感を与える。
【0038】
次に、図1に示した映像符号化装置の構成の一例について説明する。図6は、本実施例1に係る映像符号化装置の構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、この映像符号化装置100は、記憶部110、検出部120、特別位置判定部130、リピート部140、動き探索部151、動き補償画像生成部152、差分画像生成部153を有する。また、映像符号化装置100は、直交変換部154、量子化部155、逆量子化部156、逆直交変換部157、復号画像生成部158、エントロピー符号化部160を有する。特別位置判定部130は、判定部の一例である。リピート部140およびエントロピー符号化部160は、リピート処理部の一例である。
【0039】
映像符号化装置100は、カメラから映像の情報(時系列の複数のピクチャ)を受け付けると、1SOP毎に、各ピクチャにピクチャ番号を割り当てるものとする。各ピクチャに割り当てられるピクチャ番号を、先頭から順に、B1,B6,B3,B4,B5,B8,B7,B2,B9,B12,B11,B10,B13,B14,B15,B0とする。
【0040】
記憶部110は、参照距離設定情報110aを有する。記憶部110は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子や、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に対応する。
【0041】
参照距離設定情報110aは、非参照ピクチャの前方向参照距離および後方向参照距離を定義する情報である。図7は、本実施例1に係る参照距離設定情報のデータ構造の一例を示す図である。図7に示すように、この参照距離設定情報110aは、ピクチャ番号と、前方向参照距離と、後方向参照距離とを対応付ける。ピクチャ番号は、非参照ピクチャ(TID6のピクチャ)を一意に識別する番号である。前方向参照距離は、ピクチャと、このピクチャの前方向に存在する参照ピクチャとの距離を示す。後方向参照距離は、ピクチャと、このピクチャの後方向に存在する参照ピクチャとの距離を示す。
【0042】
検出部120は、カメラ10から映像の情報(複数のピクチャ)を逐次受け付け、複数のピクチャを基にして、シーンチェンジを検出する処理部である。検出部120は、シーンチェンジを検出した場合には、シーンチェンジの検出信号を、特別位置判定部130に出力する。検出部120は、シーンチェンジを検出していない場合は、シーンチェンジの非検出信号を、動き探索部151に出力する。
【0043】
検出部120がシーンチェンジを検出する処理の一例について説明する。検出部120は、現ピクチャと前ピクチャとの同一位置の輝度の差分の絶対値を算出する。検出部120は、1画面内の各位置について、絶対値を算出する処理を行い、各絶対値を累積加算することで、第1の画像相関値を算出する。
【0044】
検出部120は、現ピクチャが次のピクチャに移行する度に、現ピクチャと前ピクチャとの第1の画像相関値を算出する。検出部120は、各タイミングで算出した第1の画像相関値の差分を第2の画像相関値として算出する。検出部120は、第2の画像相関値が、閾値Th2以上となった場合に、シーンチェンジを検出する。検出部120は、シーンチェンジを検出すると、シーンチェンジの発生したピクチャのピクチャ番号を、検出信号に含め、この検出信号を、特別位置判定部130に出力する。
【0045】
たとえば、図2において、B7とB2とから算出される第1の画像相関値と、B2とB9とから算出される第1の画像相関値との差分を、第2の画像相関値とする。検出部120は、この第2の画像相関値が、閾値Th2以上となった場合に、シーンチェンジを検出する。また、シーンチェンジの発生したピクチャを「B9」と判定する。なお、検出部120は、特開2000-324499号公報に記載された技術を用いて、シーンチェンジを検出してもよい。
【0046】
特別位置判定部130は、シーンチェンジの発生したピクチャが、特別位置条件を満たすピクチャであるか否かを判定する処理部である。特別位置判定部130は、検出部120から受け付けた検出信号に含まれるピクチャ番号と、参照距離設定情報110aとを基にして、検出信号に含まれるピクチャ番号のピクチャが、特別位置条件を満たすか否かを判定する。特別位置判定部130は、検出信号に含まれるピクチャ番号のピクチャが、特別位置条件を満たす場合には、制御情報を、リピート部140に出力する。特別位置判定部130は、検出信号に含まれるピクチャ番号のピクチャが、特別位置条件を満たさない場合には、制御情報を、動き探索部151に出力する。
【0047】
特別位置判定部130は、式(1)を基にして、閾値Th1を予め算出しておく。式(1)のPicNumInSOPの値は、予め設定されているものとする。特別位置判定部130は、特別位置条件を満たす場合には、制御情報に特別位置条件を満たすピクチャ番号を含め、制御情報をリピート部140に出力する。
【0048】
たとえば、特別位置判定部130は、検出部120から、ピクチャ番号「B1」を含む検出信号を受け付けた場合について説明する。特別位置判定部130は、ピクチャ番号「B1」と、参照距離設定情報とを比較すると、ピクチャ番号「B1」の前方向参照距離が「1」で、後方向参照距離が「15」である。このため、特別位置判定部130は、ピクチャ番号「B1」のピクチャが特別位置条件を満たすと判定する。特別位置判定部130は、ピクチャ番号「B1」を、制御情報に含め、制御情報をリピート部140に出力する。
【0049】
リピート部140は、特別位置判定部130から制御情報を受け付けた場合には、制御情報に含まれるピクチャ番号の表示順番に一つ前のピクチャをリピートさせる処理部である。たとえば、図3で説明したように、制御情報にピクチャ番号「B1」が含まれる場合には、リピート部140は、「前SOPのB0」をリピートさせることになる。
【0050】
リピート部140が、一つ前のピクチャをリピートさせる処理の一例について説明する。リピート部140は、リピート処理を行い、リピート結果を、エントロピー符号化部160に出力する。「リピート処理」は、符号化対象ピクチャに対して、参照ピクチャを前方向の参照ピクチャに設定し、全てのブロックの動きベクトルをゼロに設定し、全てのブロックの変換係数をゼロに設定する。
【0051】
図8は、リピートさせる場合の符号化ピクチャのデータ構造の一例を示す図である。図8に示すように、符号化ピクチャは、符号化ブロックb11~b34が含まれる。符号化ブロックb11は、動きベクトルおよび変換係数の情報を格納するブロックである。リピート部140は、「前SOPのB0」をリピートさせる場合には、符号化ブロックb11に設定する全ての動きベクトルをゼロベクトルに設定し、全ての変換係数をゼロに設定する。また、リピート部140は、残りの符号化ブロックb12~34をスキップモードに設定する。
【0052】
HEVC規格には、スキップモードと呼ばれるモードがある。このスキップモードは、動きベクトルや変換係数を転送しないことで、最小限の符号量で、符号化ブロックの符号化を可能とする。スキップモードは、隣接するブロックの動きベクトル情報から、適する動きベクトル情報を選択し、選択した動きベクトル情報を識別するインデックスだけを伝送する。スキップモードでは、全ての変換係数がゼロとなる。
【0053】
全ての動きベクトルをゼロベクトルに設定し、全ての変換係数をゼロに設定することで、復号処理が完了したら、B1の復号ピクチャは参照ピクチャ「前SOPのB0」の復号ピクチャと同じになる。復号ピクチャから見ると、B1位置のピクチャは前方向参照ピクチャ「前SOPのB0」ピクチャのリピートピクチャとなる。また、全ての動きベクトルをゼロベクトルに設定し、全ての変換係数をゼロに設定することでB1の符号化に必要な情報量を抑えることができる。他のピクチャから情報量の奪いがなくなり、全体のPSNRの低下を防ぐことができる。
【0054】
動き探索部151は、カメラ10から映像の情報(複数のピクチャ)を逐次受け付け、復号画像生成部158から復号されたピクチャを逐次受け付ける。動き検索部151は、現ピクチャと、前後ピクチャとを比較して、ピクチャに含まれる物体の動きを探索する。動き探索部151は、探索した動きの情報を、動き補償画像生成部152に出力する。
【0055】
たとえば、動き探索部151は、検出部120から非検出信号を受け付け、かつ、特別位置判定部130から制御情報を受け付けている間に、カメラ10から取得した各ピクチャについて、上記の処理を実行する。
【0056】
動き補償画像生成部152は、動き探索部151から受け付ける動きの情報と、復号画像生成部158から受け付けるピクチャとを基にして、動き補償画像を生成する処理部である。動き補償画像生成部152は、動き補償画像を、差分画像生成部153と復号画像生成部158に出力する。たとえば、動き補償画像は、参照ピクチャから現ピクチャまでの間に移動した物体を、参照ピクチャの位置まで戻したピクチャとなる。理想的には、参照ピクチャと、動き補償画像とは同一のピクチャとなる。
【0057】
差分画像生成部153は、動き補償画像と、カメラ10から取得した各ピクチャの原画像との差分画像を生成する処理部である。差分画像生成部153は、差分画像を、直交変換部154に出力する。
【0058】
直交変換部154は、差分画像に対して直交変換を行うことで、直交係数を算出する処理部である。直交変換部154は、直交係数の情報を、量子化部155に出力する。
【0059】
量子化部155は、直交変換部154から直交係数の情報を受け付け、直交係数を量子化する処理部である。直交係数を量子化したものが、変換係数となる。量子化部155は、変換係数の情報を、逆量子化部156およびエントロピー符号化部160に出力する。
【0060】
逆量子化部156は、量子化部155から受け付けた変換係数に対して逆量子化を行うことで、直交係数を生成する処理部である。逆量子化部156は、直交係数の情報を、逆直交変換部157に出力する。
【0061】
逆直交変換部157は、逆量子化部156から受け付けた直交係数に対して、逆直交変換を行うことで、ピクチャ(差分画像生成部153に生成される差分画像と同等のピクチャ)を生成する処理部である。逆直交変換部157は、生成したピクチャを、復号画像生成部158に出力する。
【0062】
復号画像生成部158は、逆直交変換部157から取得したピクチャと動き補償画像生成部で生成した動き補償画像とを基にして、動き探索部151が利用する前ピクチャを復号する処理部である。たとえば、逆直交変換部157から取得したピクチャは、現ピクチャと前ピクチャとの差分画像であるため、復号画像生成部158は、現ピクチャと差分画像とを基にして、前ピクチャを復号する。
【0063】
エントロピー符号化部160は、量子化部155から取得する変換係数に対してエントロピー符号化を行うことで、符号化ピクチャを生成する処理部である。エントロピー符号化部160は、各符号化ピクチャを多重化して、ストリーム情報を生成する。エントロピー符号化部160は、ストリーム情報を、映像復号装置20に送信する。
【0064】
映像復号装置20は、映像符号化装置100からストリーム情報を受信し、ストリーム情報に含まれる各符号化ピクチャを基にして、ピクチャを復号することになる。映像復号装置20は、図8に示す情報が設定された符号化ピクチャを復号する場合には、決められた参照ピクチャをリピートすることとなる。
【0065】
図9は、各符号化ピクチャの復号結果を説明するための図である。図9に示すように、従来技術のように、リピートを行わない場合には、復号される各ピクチャは、B0(前SOPのB0),B1,B6,B3,B4,B5,・・・の順になる。これに対して、符号化ピクチャB0(前SOPのB0)の次の符号化ピクチャが、図8の符号化ピクチャとなっている場合には、符号化ピクチャB0(前SOPのB0)が復号された後に、復号されたB0が再度生成される(リピートされる)。すなわち、復号される各ピクチャは、順に、B0(前SOPのB0),B0(前SOPのB0),B6,B3,B4,B5,・・・となる。
【0066】
次に、本実施例1に係る映像符号化装置100の処理手順の一例について説明する。図10は、本実施例1に係る映像符号化装置の処理手順を示すフローチャートである。図10に示すように、この映像符号化装置100は、カメラ10からピクチャを受け付け、ピクチャにピクチャ番号を割り当てる(ステップS101)。検出部120は、シーンチェンジを検出した場合には(ステップS102,Yes)、ステップS103に移行する。一方、検出部120は、シーンチェンジを検出していない場合には(ステップS102,No)、ステップS106に移行する。
【0067】
映像符号化装置100の特別位置判定部130は、シーンチェンジの検出されたピクチャが特別位置条件を満たすか否かを判定する(ステップS103)。特別位置判定部130は、特別位置条件を満たす場合には(ステップS104,Yes)、ステップS105に移行する。一方、特別位置判定部130は、特別位置条件を満さない場合には(ステップS104,No)、ステップS106に移行する。
【0068】
映像符号化装置100のリピート部140は、前方向の参照ピクチャをリピートさせる処理を行い、その結果を、エントロピー符号化部160に出力する(ステップS105)。
【0069】
ステップS106の説明に移行する。映像符号化装置100の動き探索部151は、動き探索処理を実行する(ステップS106)。映像符号化装置100の動き補償画像生成部152は、動き補償画像を生成する(ステップS107)。映像符号化装置100の差分画像生成部153は、差分画像を生成する(ステップS108)。
【0070】
映像符号化装置100の直交変換部154は、差分画像に対して直交変換処理を実行する(ステップS109)。映像符号化装置100の量子化部155は、直交変換処理で得られる直交係数に対して、量子化処理を実行する(ステップS110)。
【0071】
映像符号化装置100のエントロピー符号化部160は、エントロピー符号化処理を実行する(ステップS111)。
【0072】
次に、本実施例1に係る映像符号化装置100の効果について説明する。映像符号化装置100は、シーンチェンジを検出し、シーンチェンジを検出したピクチャの位置が特別位置条件を満たす場合に、特別位置条件を満たすピクチャの前方向の参照ピクチャをリピートする処理を行う。これにより、TID6のピクチャでシーンチェンジが発生した場合でも、シーンチェンジピクチャの情報量を抑えながら画質劣化を改善でき、全体的に画像の劣化を抑止することができる。
【0073】
たとえば、図3で説明したように、映像符号化装置100は、B0(前SOPのB0)を符号化した後に、B1に対してB0(前SOPのB0)のリピート処理をする。その後、映像符号化装置100は、B6,B3,B4,B5,・・・の順に符号化する。映像復号装置20は、映像符号化装置100から、各符号化ピクチャを受信し、復号処理を行う。B1位置のピクチャは前SOPのB0をリピートするため、復号ピクチャは、B0(前SOPのB0),B0(前SOPのB0),B6,B3,B4,B5,・・・の順となる。復号した映像を表示装置30に表示させる。
【0074】
TID6のピクチャは非参照ピクチャであるため、置き換えても他のピクチャに影響を与えない。また、8K120pの映像では、各ピクチャの表示の間隔は「8.3ms」となる。B0は、B1の直前のピクチャかつ、表示時間の間隔が短いため、B1をB0に置き換えても利用者に気付かれにくい。これに対して、B1をB0(前SOPのB0)に置き換えないと、位置の遠い(現SOPのB0)を参照ピクチャとして符号化されるため、符号化効率が悪化し、画質が劣化してしまう。きれいなB0(前SOPのB0)から、画質の劣化したB1が表示されると、かかる劣化が目立ち、劣化に気付かれやすい。
【実施例2】
【0075】
図11は、本実施例2に係る映像符号化装置の構成を示す機能ブロック図である。本実施例2に係る映像符号化装置200は、実施例1で説明した映像符号化装置100と同様にして、カメラ10、映像復号装置20に接続される。図11に示すように、この映像符号化装置200は、検出部120、特別位置判定部210、リピート部140、動き探索部151、動き補償画像生成部152、差分画像生成部153を有する。また、映像符号化装置200は、直交変換部154、量子化部155、逆量子化部156、逆直交変換部157、復号画像生成部158、エントロピー符号化部160を有する。特別位置判定部210は、判定部の一例である。リピート部140は、リピート処理部の一例である。
【0076】
本実施例2に係る映像符号化装置200は、実施例1で説明した映像符号化装置100と比較して、特別位置判定部210の処理が異なる。映像符号化装置200がその他の処理部の処理は、映像符号化装置100の処理部の処理と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
特別位置判定部210は、検出部120から、検出信号を受け付けた場合に、1つのSOPに含まれるピクチャの数が所定の数であり、かつ、検出信号に含まれるピクチャ番号が、所定のピクチャ番号である場合に、ピクチャ番号のピクチャが特別位置条件を満たすと判定する。具体的には、特別位置判定部210は、1つのSOPに含まれるピクチャの数が「16」であり、検出信号のピクチャ番号が「B1」または「B9」である場合に、ピクチャ番号のピクチャが特別位置条件を満たすと判定する。
【0078】
ピクチャ番号「B1」のピクチャは、1つのSOPに関して、先頭から1番目のピクチャである。ピクチャ番号「B9」のピクチャは、1つのSOPに関して、先頭から9番目のピクチャである。
【0079】
特別位置判定部210は、検出部120から、ピクチャ番号「B1」を含む検出信号を受け付けた場合、ピクチャ番号「B1」を、制御情報に含め、制御情報をリピート部140に出力する。また、特別位置判定部210は、検出部120から、ピクチャ番号「B9」を含む検出信号を受け付けた場合、ピクチャ番号「B9」を、制御情報に含め、制御情報をリピート部140に出力する。
【0080】
特別位置判定部210は、検出信号に含まれるピクチャ番号が「B1」、「B9」以外の場合には、制御情報を、動き探索部151に出力する。
【0081】
特別位置判定部210が、ピクチャ番号「B1」を含んだ制御情報をリピート部140に出力することで、B1の前方向の参照ピクチャがリピートされる。また、特別位置判定部210が、ピクチャ番号「B9」を含んだ制御情報をリピート部140に出力することで、B9の前方向の参照ピクチャがリピートされる。
【0082】
次に、本実施例2に係る映像符号化装置200の処理手順の一例について説明する。図12は、本実施例2に係る映像符号化装置の処理手順を示すフローチャートである。図12に示すように、映像符号化装置200は、カメラ10からピクチャを受け付け、ピクチャにピクチャ番号を割り当てる(ステップS201)。映像符号化装置200の検出部120は、シーンチェンジを検出した場合には(ステップS202,Yes)、ステップS203に移行する。一方、検出部120は、シーンチェンジを検出していない場合には(ステップS202,No)、ステップS206に移行する。
【0083】
映像符号化装置200の特別位置判定部210は、シーンチェンジの検出されたピクチャのピクチャ番号が、所定のピクチャ番号(B1またはB9)であるか否かを判定する(ステップS203)。特別位置判定部210は、所定のピクチャ番号である場合には(ステップS204,Yes)、ステップS205に移行する。一方、特別位置判定部210は、所定のピクチャ番号でない場合には(ステップS204,No)、ステップS206に移行する。
【0084】
映像符号化装置200のリピート部140は、前方向の参照ピクチャをリピートさせた結果を、エントロピー符号化部160に出力する(ステップS205)。
【0085】
ステップS206の説明に移行する。映像符号化装置200の動き探索部151は、動き探索処理を実行する(ステップS206)。映像符号化装置200の動き補償画像生成部152は、動き補償画像を生成する(ステップS207)。映像符号化装置200の差分画像生成部153は、差分画像を生成する(ステップS208)。
【0086】
映像符号化装置200の直交変換部154は、差分画像に対して直交変換処理を実行する(ステップS209)。映像符号化装置200の量子化部155は、直交変換処理で得られる直交係数に対して、量子化処理を実行する(ステップS210)。
【0087】
映像符号化装置200のエントロピー符号化部160は、エントロピー符号化処理を実行する(ステップS211)。
【0088】
次に、本実施例2に係る映像符号化装置200の効果について説明する。映像符号化装置200は、シーンチェンジを検出し、シーンチェンジを検出したピクチャのピクチャ番号が所定のピクチャ番号である場合に、ピクチャの前方向の参照ピクチャをリピートする処理を行う。これにより、TID6のピクチャでシーンチェンジが発生した場合でも、シーンチェンジピクチャの情報量を抑えながら画質劣化を改善でき、全体的に画像の劣化を抑止することができる。
【0089】
ところで、上述した映像符号化装置100,200は、参照ピクチャをリピートする場合に、図8で説明したような符号化ピクチャを生成していたが、これに限定されるものではなく、符号化を行う前のピクチャ(原画)をリピートしてもよい。
【0090】
図13は、映像符号化装置のその他の処理を説明するための図である。従来技術では、「前SOPのB0,B1,B6,B3,B4,B5,・・・」の各ピクチャを受け付け、B1でシーンチェンジが発生した場合でもそのままであった。これに対して、映像符号化装置100(200)は、B1でシーンチェンジが検出し、B1が特別位置条件を満たす場合には、前SOPのB0(原画)をコピーし、コピーしたB0を、B1の代わりに挿入することで、符号化を行う前の原画ピクチャをリピートする。これにより、TID6のB1ピクチャでシーンチェンジが発生した場合でも、B1位置のピクチャは参照ピクチャB0(前SOP)と全く同じ画像になり、差分データがすべて0になることで符号化効率が高くなり、画像の劣化を抑止することができる。
【0091】
次に、上記実施例1、2に示した映像符号化装置100,200と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例について説明する。図14は、本実施例に係る映像符号化装置と同様の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0092】
図14に示すように、コンピュータ300は、各種演算処理を実行するCPU301と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置302と、ディスプレイ303とを有する。また、コンピュータ300は、記憶媒体からプログラム等を読み取る読み取り装置304と、有線または無線ネットワークを介して、カメラ10、映像復号装置20等との間でデータの授受を行うインタフェース装置305とを有する。コンピュータ300は、各種情報を一時記憶するRAM306と、ハードディスク装置307とを有する。そして、各装置301~307は、バス308に接続される。
【0093】
ハードディスク装置307は、検出プログラム307a、特別位置判定プログラム307b、リピートプログラム307c、エントロピー符号化プログラム307d、各種プログラム307eを有する。CPU301は、検出プログラム307a、特別位置判定プログラム307b、リピートプログラム307c、エントロピー符号化プログラム307d、各種プログラム307eを読み出してRAM306に展開する。
【0094】
検出プログラム307aは、検出プロセス306aとして機能する。特別位置判定プログラム307bは、特別位置判定プロセス306bとして機能する。リピートプログラム307cは、リピートプロセス306cとして機能する。エントロピー符号化プログラム307dは、エントロピー符号化プロセス306dとして機能する。各種プログラム307aは、各種プロセス306aとして機能する。
【0095】
検出プロセス306aの処理は、検出部120の処理に対応する。特別位置判定プロセス306bの処理は、特別位置判定部130,210の処理に対応する。リピートプロセス306cの処理は、リピート部140の処理に対応する。エントロピー符号化プロセス306dの処理は、エントロピー符号化部160の処理に対応する。各種プロセス306eの処理は、動き探索部151、動き補償画像生成部152、差分画像生成部153、直交変換部154、量子化部155、逆量子化部156、逆直交変換部157、復号画像生成部158の処理に対応する。
【0096】
なお、各プログラム307a~307eについては、必ずしも最初からハードディスク装置307に記憶させておかなくてもよい。例えば、コンピュータ300に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ300が各プログラム307a~307eを読み出して実行するようにしてもよい。
【0097】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0098】
(付記1)複数のピクチャを逐次受け付け、前記複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出する検出部と、
前記検出部によって前記シーンチェンジが検出された場合に、前記シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であるか否かを判定する判定部と、
前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、前記第1ピクチャの代わりにリピートするリピート処理部と
を有することを特徴とする映像符号化装置。
【0099】
(付記2)前記リピート処理部は、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、参照するピクチャを前方向のピクチャに設定し、動きベクトルをゼロベクトルに設定し、変換係数をゼロに設定した符号化ピクチャを生成することを特徴とする付記1に記載の映像符号化装置。
【0100】
(付記3)前記判定部は、前記第1ピクチャの位置と前記第2ピクチャの位置との距離が第1閾値未満であり、かつ、前記第1ピクチャが参照する後方向の第3ピクチャの位置と前記第1ピクチャとの距離が第2閾値以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定することを特徴とする付記1または2に記載の映像符号化装置。
【0101】
(付記4)前記判定部は、SOP(structure of picture)に区切られるピクチャの数が16である場合に、前記検出部により検出された前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置であるか否かを判定し、前記リピート処理部は、前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、リピートすることを特徴とする付記1に記載の映像符号化装置。
【0102】
(付記5)コンピュータが実行する映像符号化方法であって、
複数のピクチャを逐次受け付け、
前記複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出し、
前記シーンチェンジが検出された場合に、前記シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であるか否かを判定し、
前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、前記第1ピクチャの代わりにリピートする
処理を実行することを特徴とする映像符号化方法。
【0103】
(付記6)前記リピートする処理は、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、参照するピクチャを前方向のピクチャに設定し、動きベクトルをゼロベクトルに設定し、変換係数をゼロに設定した符号化ピクチャを生成することを特徴とする付記5に記載の映像符号化方法。
【0104】
(付記7)前記判定する処理は、前記第1ピクチャの位置と前記第2ピクチャの位置との距離が第1閾値未満であり、かつ、前記第1ピクチャが参照する後方向の第3ピクチャの位置と前記第1ピクチャとの距離が第2閾値以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定することを特徴とする付記5または6に記載の映像符号化方法。
【0105】
(付記8)前記判定する処理は、SOP(structure of picture)に区切られるピクチャの数が16である場合に、前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置であるか否かを判定し、前記リピートする処理は、前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、リピートすることを特徴とする付記5に記載の映像符号化方法。
【0106】
(付記9)コンピュータに、
複数のピクチャを逐次受け付け、
前記複数のピクチャを基にしてシーンチェンジを検出し、
前記シーンチェンジが検出された場合に、前記シーンチェンジを検出した第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であるか否かを判定し、
前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、前記第1ピクチャの代わりにリピートする
処理を実行させることを特徴とする映像符号化プログラム。
【0107】
(付記10)前記リピートする処理は、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置である場合に、参照するピクチャを前方向のピクチャに設定し、動きベクトルをゼロベクトルに設定し、変換係数をゼロに設定した符号化ピクチャを生成することを特徴とする付記9に記載の映像符号化プログラム。
【0108】
(付記11)前記判定する処理は、前記第1ピクチャの位置と前記第2ピクチャの位置との距離が第1閾値未満であり、かつ、前記第1ピクチャが参照する後方向の第3ピクチャの位置と前記第1ピクチャとの距離が第2閾値以上である場合に、前記第1ピクチャの位置が所定の条件を満たす位置であると判定することを特徴とする付記9または10に記載の映像符号化プログラム。
【0109】
(付記12)前記判定する処理は、SOP(structure of picture)に区切られるピクチャの数が16である場合に、前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置であるか否かを判定し、前記リピートする処理は、前記第1ピクチャの位置が、1番目の位置、または9番目の位置である場合に、前記第1ピクチャが参照する複数のピクチャのうち、前方向の第2ピクチャを、リピートすることを特徴とする付記9に記載の映像符号化プログラム。
【符号の説明】
【0110】
10 カメラ
20 映像復号装置
30 表示装置
100,200 映像符号化装置
110 記憶部
110a 参照距離設定情報
120 検出部
130 特別位置判定部
140 リピート部
151 動き探索部
152 動き補償画像生成部
153 差分画像生成部
154 直交変換部
155 量子化部
156 逆量子化部
157 逆直交変換部
158 復号画像生成部
160 エントロピー符号化部
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