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特許7210994着色樹脂組成物、カラーフィルタ基板および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物、カラーフィルタ基板および表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/18 20060101AFI20230117BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230117BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230117BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230117BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20230117BHJP
   C09B 45/22 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09B67/18 Z
G02B5/20 101
G02B5/20
G03F7/004 505
G02F1/1335 505
G02F1/13357
C09B45/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018194818
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2019077861
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017206862
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昇太
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 敬造
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅仁
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016132(JP,A)
【文献】特開2017-120407(JP,A)
【文献】特開2011-242568(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164155(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106918999(CN,A)
【文献】特開2014-012838(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141795(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
G02B 5/20
G03F 7/004
G02F 1/1335
G02F 1/13357
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントグリーン59、
C.I.ピグメントブルー16、
下記一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と、下記一般式(ii)で表される化合物との付加生成物、および、
バインダー樹脂を含み、
前記C.I.ピグメントブルー16の含有量100重量部に対して、前記付加生成物を150~1400重量部含有する、着色樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(i)中、RおよびRは互いに独立して、OHまたはNHRを表し、RおよびRは互いに独立して、OまたはNRを表す。ただし、Rは、水素または炭素数1~20のアルキル基を表す。Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、(Al3+2/3、Fe2+、(Fe3+2/3、Co2+または(Co3+2/3を示す。ただし、Me中において、Ni2+およびZn2+の合計含有量が95~100モル%であり、Cu2+、(Al3+2/3、Fe2+、(Fe3+2/3、Co2+および(Co3+2/3の合計含有量が0~5モル%であり、Ni2+およびZn2+のモル比(Ni2+:Zn2+)が1:9~9:1である。上記一般式(ii)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルを表す。)
【請求項2】
前記C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16および付加生成物の合計含有量100重量部に対して、前記C.I.ピグメントグリーン59を20~60重量部含有する請求項記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
固形分酸価が15~40mgKOH/gである請求項1または2記載の着色樹脂組成物。
【請求項4】
さらに光重合開始剤を固形分中1.5重量%以下含有する請求項1~3いずれか一項記載の着色樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の着色樹脂組成物の硬化物から形成された緑色画素を有するカラーフィルタ基板。
【請求項6】
前記緑色画素の膜厚が1.5~3μmである請求項記載のカラーフィルタ基板。
【請求項7】
前記緑色画素の波長490~570nmの間の透過スペクトルのピークの半値幅が55~65nmである請求項または記載のカラーフィルタ基板。
【請求項8】
CIE1931で定義されたC光源における前記緑色画素の色度が、x=0.070~0.210、y=0.640~0.720である請求項5~7いずれか一項記載のカラーフィルタ基板。
【請求項9】
前記緑色画素の幅が55μm以上である請求項5~8いずれか一項記載のカラーフィルタ基板。
【請求項10】
請求項6~10いずれか一項記載のカラーフィルタ基板およびバックライトを有する表示装置。
【請求項11】
前記バックライトの波長490~570nmにおける強度のピークの波長が510~530nmの範囲にある請求項10記載の表示装置。
【請求項12】
前記バックライトが、下記一般式(iii)で表される化合物を含む色変換組成物からなる、入射光を入射光の波長よりも長波長の光に変換する色変換フィルムを有する請求項11の表示装置。
【化2】
(上記一般式(iii)中、Xは、C-R15またはNを表す。R~R17は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、アミド基、隣接置換基との間に形成される縮合環または脂肪族環を表す。前記アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、カラーフィルタ基板および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力等の特性を活かし、テレビ、ノートパソコン、携帯情報端末、スマートフォン、デジタルカメラ等様々な用途で使用されている。
【0003】
表示装置の色域としては、sRGB規格が長く一般的であったが、近年では、超高精細度テレビジョン(UHDTV:Ultra-High Defenition Television)の番組制作及び国際番組交換のための映像フォーマットを規定したRec.ITU-R BT.2020が発行され、高色域が求められつつある。表色系はスペクトル軌跡上のRGBを三原色とする広域系システムが規定され、RGBの波長はそれぞれ630nm、532nm、467nmの単一波長光源に相当する。しかしながら、一般的なディスプレイにおいては、発光波長が分布を有しており、発光波長を単一波長に近づけることが求められている。
【0004】
このような状況下、液晶表示装置の色性能を担うカラーフィルタ基板の画素を構成する着色樹脂組成物に最適な色材が探索されている。
【0005】
緑色画素色材として、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン58などの顔料と、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150などの黄色顔料を組み合わせることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる技術を用いて色純度を高めるためには、画素を厚膜に形成する必要があった。
【0006】
このような状況下、高輝度で高色再現を実現するグリーン顔料として、C.I.ピグメントグリーン59が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。C.I.ピグメントグリーン59は、Rec.ITU-R BT.2020色に適しているが、色純度を高めるためには、画素を厚膜に形成する必要があった。
【0007】
また、緑色画素に用いられる黄色顔料として、C.I.ピグメントイエロー185を使用することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、かかる技術を用いてもなお、色純度を高めるためには画素を厚膜に形成する必要があった。
【0008】
そこで、薄膜かつ適度な着色剤濃度であっても良好な明度を示すことができ、Rec.ITU-R BT.2020の色域の包含率が高いカラーフィルタを形成する技術として、着色剤、樹脂、重合性化合物及び重合開始剤を含み、着色剤は、C.I.ピグメントブルー16及びC.I.ピグメントグリーン59を含む、着色感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、かかる技術を用いても、色純度はなお不十分であった。
【0009】
一方、C.I.ピグメントグリーン36のグリーンの色相を色合い調節するために傑出して適する顔料として、金属アゾ顔料が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-41341号公報
【文献】特開2014-2314号公報
【文献】特開2017-120407号公報
【文献】特開2014-012838号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】DIC、「高色再現を実現するカラーフィルタ用の新グリーン顔料を開発」、[online]、2014年9月9日、[平成28年9月12日検索]、インターネット〈URL:http://www.dic-global.com/ja/release/2014/20140909_01.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献4には、金属アゾ顔料とC.I.ピグメントグリーン59との組み合わせは開示されておらず、特許文献4に記載の技術を用いてもなお、色純度を高めるためには画素を厚膜に形成する必要があった。画素を厚膜に形成する場合、画素欠けが発生しやすくなることから、高い色純度の画素を薄膜に形成することができる着色樹脂組成物が求められている。そこで、本発明は、薄膜であっても高い色純度の緑色画素を形成することができる着色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するため、本発明は、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16、下記一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と、下記一般式(ii)で表される化合物との付加生成物、および、バインダー樹脂を含む着色樹脂組成物である。
【0014】
【化1】
【0015】
上記一般式(i)中、RおよびRは互いに独立して、OHまたはNHRを表し、RおよびRは互いに独立して、OまたはNRを表す。ただし、Rは、水素または炭素数1~20のアルキル基を表す。Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、(Al3+2/3、Fe2+、(Fe3+2/3、Co2+または(Co3+2/3を示す。ただし、Me中において、Ni2+およびZn2+の合計含有量が95~100モル%であり、Cu2+、(Al3+2/3、Fe2+、(Fe3+2/3、Co2+および(Co3+2/3の合計含有量が0~5モル%であり、Zn2+およびNi2+のモル比(Ni2+:Zn2+)が1:9~9:1である。上記一般式(ii)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の着色樹脂組成物によれば、薄膜であっても高い色純度の緑色画素を形成することができる。このため、本発明の着色樹脂組成物を用いたカラーフィルタ基板において、画素欠けを抑制し、高い色純度の緑色を表示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者らは、高色純度を薄膜で実現する着色樹脂組成物について鋭意検討したところ、緑色画素の透過率のピーク波長を500~530nmとし、ピーク波長の半値幅を適切な範囲にすることにより、薄膜で高色純度を達成できることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明の着色樹脂組成物は、C.I.ピグメントグリーン59と、C.I.ピグメントブルー16と、特定の構造を有する金属アゾ化合物の付加生成物と、バインダー樹脂とを含む。C.I.ピグメントグリーン59は、透過率のピークが520nmであることから、種々の色材の中からC.I.ピグメントグリーン59を選択することによって特異的に緑色画素の透過率のピーク波長を前記範囲にすることができる。C.I.ピグメントグリーン7(ピーク波長495nm)やC.I.ピグメントグリーン58(ピーク波長550nm)などの色材の場合には、ピーク波長を所望の範囲にすることが困難となる。このため、色純度を高めるためには画素を厚膜に形成する必要があり、画素欠けが発生しやすい。また、C.I.ピグメントブルー16は波長550nm以上の長波長側の光の透過を抑制し、特定の構造を有する金属アゾ化合物の付加生成物は波長500nm未満の短波長側の光の透過を抑制することから、これらをC.I.ピグメントグリーン59と組み合わせることにより、ピーク波長の半値幅を後述する好ましい範囲に容易に調整することができる。
【0019】
本発明の着色樹脂組成物は、特定の顔料とともに、下記一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と、下記一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(以下、「付加生成物」と記載する場合がある)を含むことを特徴とする。下記一般式(i)で表される金属アゾ化合物は、所望の吸光特性を有する一方、着色樹脂組成物中において微細に分散させることが困難であるため、光を散乱させやすい傾向にある。下記一般式(ii)で表される化合物との付加生成物とすることにより、着色樹脂組成物中において容易に微細化させることができ、光散乱を抑えて前述の短波長側の光の透過を抑制することができる。
【0020】
【化2】
【0021】
上記一般式(i)中、RおよびRは互いに独立して、OHまたはNHRを表し、RおよびRは互いに独立して、OまたはNRを表す。ただし、Rは、水素または炭素数1~20のアルキル基を表す。溶媒親和性の観点から、RおよびRはOHが好ましい。熱安定性の観点から、RおよびRはOが好ましい。
【0022】
上記一般式(i)中、Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、(Al3+2/3、Fe2+、(Fe3+2/3、Co2+または(Co3+2/3を示す。ただし、Me中において、Ni2+およびZn2+の合計含有量が95~100モル%であり、Cu2+、(Al3+2/3、Fe2+、(Fe3+2/3、Co2+および(Co3+2/3の合計含有量が0~5モル%であり、Ni2+およびZn2+のモル比(Ni2+:Zn2+)が1:9~9:1である。Meの種類により、その電子状態に応じて透過スペクトルの立ち上がり波長が異なる。本発明においては、Meの主成分としてNi2+およびZn2+を選択することにより、緑色画素の透過率のピーク波長を前記範囲にすることができる。Ni2+およびZn2+の金属イオンの合計含有量が95モル%未満であると、短波長側の光の透過の抑制効果が低く、薄膜における色純度が低下するため、高色純度化のためには厚膜化が必要となる。また、これらの金属イオンの中でも、Ni2+は立ち上がり波長を比較的短波長側に、Zn2+は立ち上がり波長を比較的長波長側にシフトさせることから、そのモル比(Ni2+:Zn2+)を1:9~9:1とすることにより、薄膜における色純度をより向上させることができる。モル比(Ni2+:Zn2+)は6:4~9:1がより好ましく、70:30~85:15がさらに好ましい。
【0023】
上記一般式(ii)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキル基を表す。付加生成物の形成のしやすさから、水素が好ましい。
【0024】
上記一般式(i)で表される金属アゾ化合物の互変異性体としては、例えば、以下に示す異性体群が挙げられる。
【0025】
【化3】
【0026】
上記付加生成物は、例えば、特開2014-012838号公報に記載の方法により得ることができる。また、上記付加生成物としては、例えば、ランクセス製“LEVASCREEN”(登録商標)Yellow TP LXS 51084(Ni2+:Zn2+=78:22)などを用いることができる。
【0027】
本発明の着色樹脂組成物は、短波長側の光の透過と長波長側の光の透過とをよりバランスよく抑制して、より薄膜で高純度化する観点から、C.I.ピグメントブルー16の含有量100重量部に対して、付加生成物を150~1400重量部含有することが好ましい。付加生成物の含有量を150重量部以上とすることにより、短波長側の光の透過をより抑制するため、より薄膜で高純度化することができ、画素欠けをより抑制することができる。また、明るさYを向上させることができる。付加生成物の含有量は200重量部以上がより好ましい。一方、付加生成物の含有量を1400重量部以下とすることにより、より薄膜で高純度化することができ、画素欠けをより抑制することができる。また、BT.2020単純面積比を向上させることができる。付加生成物の含有量は、1300重量部以下がより好ましい。
【0028】
本発明の着色樹脂組成物は、より薄膜で高純度化する観点から、前記C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16および付加生成物の合計含有量100重量部に対して、C.I.ピグメントグリーン59を20~60重量部含有することが好ましい。C.I.ピグメントグリーン59の含有量を20重量部以上とすることにより、より薄膜で高純度化することができ、画素欠けをより抑制することができる。C.I.ピグメントグリーン59の含有量は30重量部以上がより好ましい。一方、C.I.ピグメントグリーン59の含有量を60重量部以下とすることにより、より薄膜で高純度化することができ、画素欠けをより抑制することができる。C.I.ピグメントグリーン59の含有量は45重量部以下がより好ましい。
【0029】
本発明の着色樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、着色材として、C.I.ピグメントグリーン59と、C.I.ピグメントブルー16と、付加生成物とともに、さらに他の着色材を含んでもよい。他の着色材としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58や、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、211、213、218、220、221、228、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、60などの顔料が挙げられる。これらの中でも、コントラストを高くする観点から、C.I.ピグメントイエロー129、138、139、150、C.I.ピグメントブルー15:3、60が好ましい。
【0030】
本発明の着色樹脂組成物において、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16、付加生成物および他の着色材を含む着色材の合計含有量は、着色樹脂組成物の硬化物の強度の観点から、固形分中80重量%以下が好ましい。
【0031】
なお、着色樹脂組成物中の着色材は、着色樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥した着色樹脂組成物膜を用いて、レーザーラマン(例えば、HOLIBA Jobin Yvon製Ramanor T-64000)分析や、FT-IR(例えば、SPECTR-TECH社製FT-IR MICROSCOPE)分析を行い、標本と比較することにより同定することができる。また、必要に応じて、遠心分離、濾過、GPC分取等採取法、NMRなどを組み合わせることにより、高精度に同定することができる。また、金属を含む場合は、ICP発光分光分析装置、LDI-MS分析により金属を検出することができる。
【0032】
本発明の着色樹脂組成物において、バインダー樹脂は、着色樹脂組成物の形態や各成分を保持する作用を奏する。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂や、高分子分散剤等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、安定性の面からアクリル樹脂が好ましい。
【0033】
アクリル系樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸の重合体や、不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和化合物の共重合体などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体が好ましい。
【0034】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0035】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソ-ブチル、メタクリル酸イソ-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ペンチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル;スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;1,3-ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン;末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどが挙げられる。
【0036】
アクリル樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有することが好ましく、着色樹脂組成物が感光性を有する場合の感度を向上させることができる。エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。エチレン性不飽和基をアクリル樹脂の側鎖に導入する方法としては、アクリル樹脂がカルボキシル基や水酸基などを有する場合には、これらにエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどを付加反応させる方法、イソシアネートを利用してエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させる方法などが挙げられる。
【0037】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス(株)製、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45重量%溶液、酸価110mgKOH/g、重量平均分子量20,000)、ADEKA(株)製、“アデカアークルズ”WR301(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45重量%溶液、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量5,900)、KRX-3802(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45重量%溶液、酸価80mgKOH/g、重量平均分子量5,500)、アルカリ可溶性カルド樹脂などが挙げられる。
【0038】
バインダー樹脂の重量平均分子量Mwは、着色樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の強度を向上させる観点から、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。一方、着色樹脂組成物の安定性を向上させる観点から、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。なお、ここでいうMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した標準ポリスチレン換算値を指す。
【0039】
高分子分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-102(固形分酸価101mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、103(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、106、108(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価71mgKOH/g)、109(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価140mgKOH/g)、110(固形分酸価53mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、111、112、116、130(固形分酸価3mgKOH/g、アミン価190mgKOH/g)、140(固形分酸価73mgKOH/g、アミン価76mgKOH/g)、142(固形分酸価46mgKOH/g、アミン価43mgKOH/g)、145(固形分酸価76mgKOH/g、アミン価71mgKOH/g)、161(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価11mgKOH/g)、162(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価13mgKOH/g)、163(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価10mgKOH/g)、164(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価18mgKOH/g)、166(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価13mgKOH/g)、167(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価13mgKOH/g)、168(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価11mgKOH/g)、170(固形分酸価11mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、171(固形分酸価13mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、174(固形分酸価22mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、180(固形分酸価9mgKOH/g、アミン価94mgKOH/g)、182(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価13mgKOH/g)、2000(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価4mgKOH/g)、2001(固形分酸価19mgKOH/g、アミン価29mgKOH/g)、2050(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価30mgKOH/g)、2070、2150(固形分酸価0mgKOH/g、アミン価57mgKOH/g)、6919(固形分酸価4mgKOH/g、アミン価19mgKOH/g)、21116(固形分酸価10mgKOH/g、アミン価20mgKOH/g)(以上、商品名、ビックケミー)等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、固形分酸価が30mgKOH/g以下であるもの、アミン価が10mgKOH/g以上であるものが好ましい。固形分酸価が30mgKOH/g以下であると、画素欠けをより抑制することができる。アミン価が10mgKOH/g以上であると、分散性を向上させることができる。
【0040】
本発明の着色樹脂組成物におけるバインダー樹脂の含有量は、画素欠けをより抑制する観点から、固形分中1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。一方、色純度をより向上させる観点から、固形分中99重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。
【0041】
本発明の着色樹脂組成物は、さらに、有機溶剤、密着改良剤、界面活性剤、分散剤、反応性モノマー、光重合開始剤、連鎖移動剤、増感剤、重合禁止剤などを含んでもよい。
【0042】
本発明の着色樹脂組成物に有機溶剤を含むことにより、基板上に塗布するために適した流動特性を得ることができる。有機溶剤としては、例えば、アセテート系溶剤、(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤、脂肪族エステル系溶剤、脂肪族アルコール類溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。アセテート系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、ベンジルアセテート(沸点214℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、エチルベンゾエート(沸点213℃)、メチルベンゾエート(沸点200℃)、マロン酸ジエチル(沸点199℃)、2-エチルヘキシルアセテート(沸点199℃)、2-ブトキシエチルアセテート(沸点192℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点188℃)、シュウ酸ジエチル(沸点185℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、シクロヘキシルアセテート(沸点174℃)、3-メトキシ-ブチルアセテート(沸点173℃)、アセト酢酸メチル(沸点172℃)、エチル-3-エトキシプロピオネート(沸点170℃)、2-エチルブチルアセテート(沸点162℃)、イソペンチルプロピオネート(沸点160℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、酢酸ペンチル(沸点150℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)などが挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点193℃)、モノエチルエーテル(沸点135℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃、EDM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル(沸点153℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)などが挙げられる。脂肪族エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸ブチル(沸点126℃)、酢酸イソペンチル(沸点142℃)などが挙げられる。脂肪族アルコール系溶剤としては、例えば、ブタノール(沸点118℃)、3-メチル-2-ブタノール(沸点112℃)、3-メチル-3-メトキシブタノール(沸点174℃)などが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、キシレン(沸点144℃)、エチルベンゼン(沸点136℃)、ソルベントナフサ(石油留分:沸点165~178℃)などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、C.I.ピグメントグリーン59およびC.I.ピグメントブルー16の安定性の観点から、アセテート系溶剤を主溶剤とすることが好ましい。アルカリ現像液に対する溶解性を向上させる観点から、有機溶剤全量中に、沸点が200℃以上のアセテート系溶剤を10重量%以上含有することがより好ましく、55重量%以上含有することがさらに好ましい。一方、塗布品位を向上させる観点から、有機溶剤全量中に、沸点が200℃以上のアセテート系溶剤を90重量%以下含有することが好ましい。沸点が200℃以上のアセテート系溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点213℃)が好ましい。
【0043】
本発明の着色樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、塗布性を向上させる観点から、着色樹脂組成物中の40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。一方、乾燥特性を向上させる観点から、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0044】
本発明の着色樹脂組成物に密着改良剤を含むことにより、着色樹脂組成物からなる塗膜の基板との密着性を向上させることができる。密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0045】
本発明の着色樹脂組成物における密着改良剤の含有量は、相溶性を向上させる観点から、固形分中10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の着色樹脂組成物に界面活性剤を含むことにより、着色樹脂組成物の塗布性、および着色樹脂組成物からなる塗布膜の表面平滑性を向上させることができる。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0047】
本発明の着色樹脂組成物における界面活性剤の含有量は、塗布性および塗布膜の表面平滑性を向上させる観点から、0.001重量%以上が好ましい。一方、塗布性を向上させる観点から、1重量%以下が好ましい。
【0048】
本発明の着色樹脂組成物に分散剤を含むことにより、分散安定性を向上させることができる。分散剤としては、例えば、顔料骨格のアルキルアミン変性体やカルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体などの顔料誘導体などが挙げられ、シナジストとして顔料の湿潤や微細顔料の安定化に有効である。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、有機顔料のスルホン酸誘導体がより好ましく、微細顔料の分散安定性をより向上させることができる。
【0049】
本発明の着色樹脂組成物に反応性モノマーおよび光重合開始剤を含むことにより、感光性を付与することができる。さらに連鎖移動剤および/または増感剤を含むことにより、感度を向上させることができる。
【0050】
反応性モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートなどのオリゴマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ジシクロペンタンジエニルジアクリレートまたはこれらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物やアルキルエステル変性物などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。バインダー樹脂との相溶性の観点から、反応性モノマーの分子量は400以上が好ましい。
【0051】
本発明の着色樹脂組成物における反応性モノマーの含有量は、現像時の表面荒れを抑制する観点から、固形分中10重量%以上が好ましく、相溶性の観点から、固形分中80重量%以下が好ましい。
【0052】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、オキシムエステル化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物、チタネート等の無機系光重合開始剤が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。光重合開始剤の含有量を後述する好ましい範囲に容易に調整するためには、h線にも感光するニトロカルバゾール系オキシムエステル化合物が好ましい。
【0053】
より具体的には、ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン、“イルガキュア”(登録商標)369(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン)、同379(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン)などが挙げられる。アントラキノン系化合物としては、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノンなどが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体などが挙げられる。ベンゾチアゾール系化合物としては、2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。ベンゾオキサゾール系化合物としては、2-メルカプトベンゾオキサゾールが挙げられる。トリアジン系化合物としては、4-(p-メトキシフェニル)-2,6-ジ-(トリクロロメチル)-s-トリアジンが挙げられる。オキシムエステル化合物としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](“IRGACURE”(登録商標)OXE01、BASF(株)製)、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-、1-(O-アセチルオキシム)(“IRGACURE”OXE03)、“IRGACURE”OXE04、“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-930、“アデカアークルズ”NCI-831、“アデカアークルズ”N-1919、常州強力電子新材料(株)製PBG-345などが挙げられる。これらの中でも、高感度の点から、オキシムエステル化合物が好ましく、酸素遮断時の輝度低下抑制から、ニトロカルバゾール系オキシムエステル化合物がより好ましい。ニトロカルバゾール系オキシムエステル化合物としては、NCI-831、PBG-345などが好ましい。
【0054】
本発明の着色樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、現像時の表面荒れを抑制する観点から、固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.4重量%以上がより好ましい。一方、相溶性の観点から、固形分中10重量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましい。さらに、画素欠けをより抑制する観点から、0.5重量%以下がさらに好ましい。
【0055】
光重合開始剤の含有量を前述の好ましい範囲に調整するために、光重合開始剤と合わせて連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-メルカプトニコチン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N-(3-メルカプトプロピオニル)アラニン、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、4-メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4-メチルチオ)フェニルエーテル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、メルカプトフェノール、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、昭和電工(株)製“カレンズ”(登録商標)MT PE-1(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))、昭和電工(株)製“カレンズ”MT NR-1(1,3,5トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン))、昭和電工(株)製“カレンズ”MT BD-1(1,4ビス(3メルカプトブチリルオキシ)ブタン)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2-ヨードエタノール、2-ヨードエタンスルホン酸、3-ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、“カレンズ”MT PE-1が、感度向上効果が高くより好ましい。
【0056】
本発明の着色樹脂組成物における連鎖移動剤の含有量は、感度をより向上させる観点から、固形分中0.01重量%以上が好ましく、バインダー樹脂との相溶性を向上させる観点から、固形分中10重量%以下が好ましい。
【0057】
増感剤としては、例えば、チオキサントン系増感剤、芳香族または脂肪族の第3級アミンなどが挙げられる。より具体的には、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン(“KAYACURE”(登録商標)DETX-S(日本化薬(株)))等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0058】
本発明の着色樹脂組成物における増感剤の含有量は、固形分中10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0059】
本発明の着色樹脂組成物に重合禁止剤を含むことにより、安定性を向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、tert-ブチルカテコールなどが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0060】
本発明の着色樹脂組成物における重合禁止剤の含有量は、安定性を向上させる観点から、固形分中0.0001重量%以上が好ましく、0.005重量%以上がより好ましい。一方、感度を向上させる観点から、固形分中1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。
【0061】
本発明の着色樹脂組成物の固形分酸価は、15~40mgKOH/gが好ましい。固形分酸価が15mgKOH/g以上であると、カラーフィルタ基板の画素の現像工程において、着色樹脂組成物に現像液が適度に浸透しやすいことから、現像時のシャワー圧を低減することができ、現像時の画素欠けをより抑制することができる。着色樹脂組成物の固形分酸価は、17mgKOH/g以上がより好ましい。一方、固形分酸価が40mgKOH/g以下であると、基板との界面への現像液の浸透を抑制することができ、画素欠けをより抑制することができる。着色樹脂組成物の固形分酸価は、26mgKOH/g以下がより好ましい。なお、かかる低酸価の着色樹脂組成物を効率的に現像するためには、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の親水性の基を導入することや、沸点が200℃を超える溶媒を用いてプリベイク膜に残留溶媒を含有させることなどが好ましい。
【0062】
ここで、着色樹脂組成物の固形分酸価は、中和滴定法により測定することができる。ディスカップ中に着色樹脂組成物5.00gをエタノール40.00gで希釈し、スターラーチップで撹拌しながら、(株)堀場製作所製pH mater D51によりpHを測定しながら、0.1mol/L KOH水溶液を滴下し、滴下量とpHをプロットし変曲点を中和点とする。一方、着色樹脂組成物をアルミカップに秤量し、100℃3時間乾燥した後の重量から、着色樹脂組成物の固形分濃度を算出する。着色樹脂組成物の固形分濃度から算出した中和滴定に用いた着色樹脂組成物の固形分重量と、中和点までに滴下したKOH量から、下記式により固形分酸価を求めることができる。
固形分酸価(mgKOH/g)=中和点までに要したKOH水溶液量(mL)×5.611(mg/mL)/着色樹脂組成物の固形分重量(g)
なお、固形分酸価は、着色樹脂組成物中の固形分の各成分の酸価の加重平均値であるため、各成分の酸価と含有量が既知の場合には、計算により求めることもできる。また、固形分酸価は、各成分の酸価や配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
【0063】
次に、本発明の着色樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の着色樹脂組成物は、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16、付加生成物、バインダー樹脂と、有機溶剤とを分散機により分散して顔料分散液を調製した後、必要に応じてその他の成分を添加して混合することによって製造することが好ましい。顔料分散液と、その他の成分を混合した希釈ワニスとを混合して着色樹脂組成物を製造することがより好ましい。着色樹脂組成物が分散剤を含む場合には、顔料分散液調製時に分散剤を添加することが好ましい。
【0064】
分散機としては、例えば、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル、アトライター等が挙げられる。これらの中でも、分散効率に優れるビーズミルが好ましい。ビーズミルに用いられる分散ビーズとしては、例えば、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズが挙げられる。これらの中でも、ジルコニアビーズが好ましい。
【0065】
次に、本発明のカラーフィルタ基板について説明する。本発明のカラーフィルタ基板は、本発明の着色樹脂組成物の硬化物から形成された緑色画素を有する。透明な基板上に、樹脂ブラックマトリクスと、赤色、緑色および青色の画素を有するカラーフィルタ基板が好ましく、少なくとも緑色の画素が本発明の着色樹脂組成物の硬化物から形成される。さらに、必要に応じてオーバーコート膜を有してもよく、オーバーコート膜の上に、透明導電膜を有してもよい。
【0066】
透明な基板としては、例えば、ガラス基板、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などのプラスチック板やフィルムなどが挙げられる。光線透過率が高く、機械的強度、寸法安定性に優れることからガラス基板が好ましく、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどの透明ガラス基板がより好ましい。
【0067】
樹脂ブラックマトリクスを形成する材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのバインダー樹脂と黒色顔料を含有する材料が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック7、カーボンブラック、黒鉛、酸化鉄、酸化マンガン、チタンブラックなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよいし、他の色の顔料をさらに含有してもよい。黒色顔料は表面処理されたものであってもよい。樹脂ブラックマトリクスの厚みは0.5~2μmが好ましい。
【0068】
少なくとも緑色画素は本発明の着色樹脂組成物の硬化物から形成され、赤色画素および青色画素は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのバインダー樹脂と顔料を含有する着色樹脂組成物の硬化物から形成されることが好ましい。
【0069】
赤色画素に使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254、255、256、257、258,260、261、264、266、267、268、269、273、274、291などの赤色顔料、C.I.ピグメントイエロー12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185などの黄色顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71などのオレンジ色顔料などが挙げられる。
【0070】
青色画素に使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64などの青色顔料、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50などの紫色顔料、アシッドレッド59、289、特開2011-032298に示された色材等が挙げられる。
【0071】
オーバーコート膜としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素含有ポリイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂などからなる膜などが挙げられる。
【0072】
カラーフィルタ基板の画素中の着色材は、カラーフィルタ基板から画素に接する他の層を表面研磨により除去し、画素サンプルをマニュピュレーターで採取した後に、着色樹脂組成物中の着色材の分析と同様に同定することができる。
【0073】
透明導電膜としては、例えば、ITO等の金属酸化物薄膜が挙げられる。
【0074】
本発明のカラーフィルタ基板は、さらに、固定されたスペーサーを有してもよい。固定されたスペーサーとは、カラーフィルタ基板の特定の場所に固定され、液晶表示装置を作製した際に対向基板と接するものをいう。固定されたスペーサーにより、対向基板との間に一定のギャップが保持され、このギャップに液晶化合物が充填される。固定されたスペーサーを有することにより、液晶表示装置の製造工程において球状スペーサーを散布する行程や、シール剤内にロッド状のスペーサーを混練りする工程を省略することができる。
【0075】
本発明のカラーフィルタ基板において、緑色画素における波長490~570nmの間の透過スペクトルのピークの半値幅は、55~65nmが好ましい。表示装置の緑色の色純度を一定の値にする場合、カラーフィルタの緑色画素の490nm~570nmの間のピークの半値幅を55nm以上とすることにより、明るさを向上させることができる。一方、上記ピークの半値幅を65nm以下とすることにより、BT.2020カバー率をより向上させることができる。
【0076】
ここで、BT.2020カバー率とは、(x、y)座標系において定義された3点(Red(0.708、0.292)、Green(0.170、0.797)、Blue(0.131、0.046))で囲まれる領域の面積を100%として、Green(0.170、0.797)の座標を本発明の表示装置における緑色画素の色度の座標に置換した際のRed、Green、Blueで囲まれる領域との重なりの面積割合を指す。
【0077】
BT.2020カバー率と緑色画素の明るさYは、トレードオフの関係にあるため、これらを両立する指標として、BT.2020カバー率と緑色画素の明るさYとの積を用いることができる。BT.2020カバー率と緑色画素の明るさYの積が高いほど、表示性能のバランスに優れる。緑色画素における波長490~570nmの間の透過スペクトルのピークの半値幅を、55~65nmとすることにより、BT.2020カバー率と緑色画素の明るさYを、よりバランスよく向上させることができる。
【0078】
カラーフィルタ基板における緑色画素について、大塚電子(株)製顕微分光測定器“LCF-100MA”を用いて380~780nmの透過スペクトルを測定することにより、490~570nmの間のピーク波長およびその半値幅を測定することができる。
【0079】
例えば、前述の本発明の着色樹脂組成物の硬化物を用い、画素膜厚を後述する好ましい範囲とすることにより、ピークの半値幅を容易に上記範囲に調整することができる。
【0080】
本発明のカラーフィルタ基板の緑色画素において、CIE1931規格で定義されたC光源における色度は、x=0.070~0.210、y=0.640~0.720が好ましい。xを0.070以上とすることにより、明るさYを向上させることができる。xは0.164以上がより好ましく、(x、y)座標系において定義されたGreen(0.170、0.797)とBlue(0.131、0.046)を結ぶ線分の内側に入るため、カバー率を大きくすることができる。一方、xを0.210以下とすることにより、BT.2020単純面積比を大きくすることができる。xは0.176以下がより好ましく、(x、y)座標系において定義されたGreen(0.170、0.797)とBlue(0.131、0.046)を結ぶ線分の内側に入るため、カバー率を大きくすることができる。また、yを0.640以上とすることにより、BT.2020カバー率を大きくすることができる。一方、yを0.720以下とすることにより、明るさYを向上させることができる。
【0081】
ここで、BT.2020単純面積比とは、(x、y)座標系において定義された3点(Red(0.708、0.292)、Green(0.170、0.797)、Blue(0.131、0.046))で囲まれる領域の面積を100%として、Green(0.170、0.797)の座標を本発明の表示装置における緑色画素の色度の座標に置換した際のRed、Green、Blueで囲まれる領域の面積割合を指す。
【0082】
カラーフィルタ基板における緑色画素について、大塚電子(株)製顕微分光測定器“LCF-100MA”を用いて380~780nmの透過スペクトルを測定することにより、CIE1931規格に基づく、C光源における色度x、y、明るさYを測定することができる。
【0083】
例えば、前述の本発明の着色樹脂組成物の硬化物を用い、画素膜厚を後述する好ましい範囲とすることにより、色度を容易に上記範囲に調整することができる。
【0084】
本発明のカラーフィルタ基板における緑色画素の膜厚は、表面平滑性の観点から、1.5μm以上が好ましい。一方、緑色画素の膜厚は、C光源における透過スペクトルのピーク半値幅や色度を前述の好ましい範囲に調整し、画素欠けをより抑制する観点から、3μm以下が好ましく、2.9μm以下がより好ましく、2.4μm以下がより好ましく、2.2μm以下がさらに好ましい。
【0085】
本発明のカラーフィルタ基板における画素の幅は、55μm以上が好ましい。ここで、画素の幅とは、画素の中で一番狭い部分の幅を指す。表示装置の画素欠けは、ストライプパターンが太い方が生じにくいことから、画素幅を55μm以上とすることにより、画素欠けをより抑制することができる。本発明のカラーフィルタ基板は、テレビ用途などの画素幅が比較的大きい表示装置に好ましく用いることができる。
【0086】
次に、本発明のカラーフィルタ基板の製造方法について、透明な基板上に、樹脂ブラックマトリクスと、赤色、緑色および青色の画素を有するカラーフィルタ基板を例に説明する。
【0087】
まず、着色樹脂組成物を基板上に塗布する。塗布方法としては、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法などを用いて基板に着色樹脂組成物を塗布する方法、基板を着色樹脂組成物中に浸漬する方法、着色樹脂組成物を基板に噴霧する方法などが挙げられる。
【0088】
着色樹脂組成物を透明基板上に塗布した後、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより、着色樹脂組成物の塗膜を形成することが好ましい。
【0089】
次に、着色樹脂組成物が感光性を有する場合には、着色樹脂組成物の塗膜上にマスクを設置し、紫外線等により選択的に露光を行う。光源としては、例えば、超高圧水銀灯、ケミカル灯、高圧水銀灯などが挙げられる。露光機としては、プロキシミティ、ミラープロジェクション、レンズスキャン等の方式が挙げられる。これらの中でも、精度の観点からレンズスキャン方式が好ましい。
【0090】
その後、アルカリ性現像液により現像を行い、パターンを形成する。アルカリ性現像液に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン等の2級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ類等が挙げられる。
【0091】
その後、得られたパターンを加熱処理することによって、着色樹脂組成物を硬化させ、樹脂ブラックマトリクスまたは画素を形成する。加熱処理は、空気中、窒素雰囲気中、真空中などで行うことができる。加熱温度は、150~350℃が好ましく、180~250℃がより好ましい。加熱時間は、0.5~5時間が好ましく、連続的に加熱しても段階的に加熱してもよい。ブラックマトリクスと3~6原色の各画素について、前記パターニング工程を順次行う。
【0092】
次に、本発明の表示装置について説明する。本発明の表示装置は、本発明のカラーフィルタ基板とバックライトを有することが好ましい。
【0093】
バックライトはカラーフィルタ基板に概白色の光を入射させる機能を有する。バックライトの構成としては、例えば、青色LEDに蛍光体がチップ化された白色光を発光する素子を画面全体にならべた構成や、青色LEDと色変換フィルムを組み合わせることにより青色光を白色光に変換する構成などが挙げられる。前者の構成を有するバックライトとしては、例えば、青色LEDと無機蛍光体がチップ化された発光ダイオードとして、(「NS2W364F」、商品名、日亜化学(株)製)や、「NSSW703B-HG」、商品名、日亜化学(株)製)などが挙げられる。
【0094】
バックライトの材料としては、例えば、青色LEDとYAG蛍光体からなる二波長(白色)LED、青色LEDとβ-サイアロン、KSF蛍光体からなる三波長(白色)LED、青色LEDとγALON、KSF蛍光体からなる三波長(白色)LEDなどの無機蛍光体や、特開2002-348568号公報に記載のピリジンーフタルイミド、特開2007-273440号公報に記載のクマリン誘導体、特開2002-317175号公報に記載のペリレン誘導体、特開2011-241160号公報に記載のローダミン誘導体、特開2011-241160号公報に記載のジピロメテン誘導体などの有機蛍光体などが挙げられる。無機蛍光体としては、β-サイアロンとKSF蛍光体を組み合わせたものが、波長490~570nmにおける発光スペクトルのピークの半値幅が狭いことから好ましく用いられる。有機蛍光体としては、ジピロメテン誘導体が、波長490~570nmにおける発光スペクトルのピークの半値幅が狭く、寿命が長いことから好ましく用いられる。
【0095】
バックライトの波長490~570nmにおける強度のピークの波長は、510~530nmが好ましい。ピークの波長が510nm以上であると、青色との色分離がしやすく、530nm以下であると、赤色との色分離がしやすい。
【0096】
バックライトの波長490~570nmにおける強度のピークの半値幅は、31~50nmが好ましい。ピークの半値幅が31nm以上であると、輝度を向上させることができ、50nm以下であると、色純度をより向上させることができる。
【0097】
バックライトの光度は、表示装置の視認性の観点から、8,000cd/m以上が好ましく、10,000cd/m以上がより好ましく、15,000cd/m以上がさらに好ましい。一方、着色材の光安定性の観点から、1,000,00cd/m以下が好ましく、50,000cd/m以下がより好ましく、30,000cd/m以下がさらに好ましい。
【0098】
バックライトの波長490~570nmにおける強度のピークの波長およびその半値幅は、10000cd/mになる出力で発光したバックライトの発光スペクトルを、大塚電子(株)製LCD評価装置LCD-720を用いて測定することにより測定することができる。
【0099】
バックライトは、さらに、入射光を入射光の波長よりも長波長の光に変換する色変換フィルムを有することが好ましい。例えば、青色LEDを光源とする場合、色変換フィルムを有することにより、青色光を白色光に変換することができる。
【0100】
色変換フィルムは、入射光を入射光の波長よりも長波長の光に変換するフィルムである。下記一般式(iii)で表される化合物を含む色変換組成物からなることが好ましい。下記一般式(iii)で表される化合物を含むことにより、バックライトの波長490~570nmにおける強度のピークの半値幅を小さくすることができる。
【0101】
【化4】
【0102】
上記一般式(iii)中、Xは、C-R15またはNを表す。R~R17は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、アミド基、隣接置換基との間に形成される縮合環または脂肪族環を表す。前記アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニ基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、アミド基、ホスフィンオキシド基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0103】
色変換組成物は、前記一般式(iii)で表される化合物とともに、樹脂を含有することが好ましい。
【0104】
色変換フィルムの膜厚は200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0105】
次に、本発明の表示装置の製造方法について、液晶表示装置を例に説明する。まず、対向基板は、薄膜トランジスタ(TFT)素子、走査線、信号線および透明電極を有する駆動素子基板上に、液晶配向のためのラビング処理を施した液晶配向膜を設け、対向基板を得る。本発明のカラーフィルタ基板に液晶配向のためのラビング処理を施し、前述の対向基板と対向させ、シール材を用いて貼合せる。次に、シール部に設けられた注入口から、対向基板とカラーフィルタ基板の間のギャップに液晶化合物を注入した後に、注入口を封入する。次に、バックライトを取り付け、ICドライバ等を実装することにより、液晶表示装置を得ることができる。
【実施例
【0106】
(ブラックマトリクス用樹脂組成物の作製)
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK”(登録商標)6919、60重量%溶液) 75g、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45重量%溶液、酸価110mgKOH/g、分子量20,000) 100g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA) 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ブラックマトリクス用分散液(BMD-1)を作製した。
【0107】
BMD-1 56.54、“サイクロマー”P(ACA)Z250 3.14g、DPHAモノマー(日本化薬(株)製“カヤラッド”(登録商標)DPHA) 2.64g、光重合開始剤((株)ADEKA製“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831(以下NCI-831)) 0.330g、界面活性剤(ビックケミー製“BYK”(登録商標)-333(以下BYK-333)) 0.04g、重合禁止剤(DIC(株)製ターシャリブチルカテコール(TBC)) 0.01gPMA 37.30gを添加し、ブラックマトリクス用のブラックマトリクス用樹脂組成物1(BM-1)を作製した。
【0108】
(赤色樹脂組成物の作製)
C.I.ピグメントレッド177(チバスペシャリティケミカル(株)製“クロモフタール”レッド(登録商標) A2B) 150g、“BYK”6919 75g、“サイクロマー”P(ACA)Z250 100g、PMA 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、赤用分散液(RD-1)を作製した。
【0109】
RD-1 56.54、“サイクロマー”P(ACA)Z250 3.14g、DPHAモノマー 2.64g、光重合開始剤(NCI-831) 0.330g、界面活性剤(BYK-333) 0.04g、重合禁止剤(TBC) 0.01g、PMA 37.30gを添加し、赤色樹脂組成物(R-1)を作製した。
【0110】
(青色樹脂組成物の作製)
C.I.ピグメントブルー15:6(DIC(株)製 EP193) 150g、“BYK”6919 75g、“サイクロマー”P(ACA)Z250 100g、PMA 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、青用分散液(BD-1)を作製した。
【0111】
BD-1 29.02、“サイクロマー”P(ACA)Z250 12.70g、DPHAモノマー 4.68g、光重合開始剤(NCI-930) 0.585g、界面活性剤(BYK-333) 0.04g、重合禁止剤(TBC) 0.01g、PMA 52.96gを添加し、青色樹脂組成物(B-1)を作製した。
【0112】
(一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物の付加生成物(F-1)との調製)
550gの蒸留水の中に、23.1g(0.15モル)のジアゾバルビツール酸および19.2g(0.15モル)のバルビツール酸を導入した。次いで、10重量%の水酸化カリウム水溶液100gを滴下し、90分間撹拌してアゾバルビツール酸(0.3モル)を調製し、750gの蒸留水と混合した後、38.7g(0.3モル)のメラミンを導入し、下記構造式で表されるアゾ化合物および/またはその互変異性体と、一般式(ii)におけるR~Rが水素であるメラミンとの付加生成物(F-0)を得た。
【0113】
【化5】
【0114】
次いで、30重量%の塩化ニッケル水溶液 101.08g(0.234モル)と30重量%の塩化亜鉛水溶液 29.98g(0.066モル)を混合して添加し、80℃で8時間撹拌した。濾過により生成物を単離し、洗浄し、120℃で乾燥し、乳鉢で磨砕し、一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-1)を得た。F-1を硝酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解して定容とした。日立ハイテクサイエンス(株)製ICP発光分光分析装置 PS3520VDDIIを用いて、Ni、Zn、Cu、Al、FeおよびCoを測定し、金属イオン含有量を求めたところ、Me中におけるNi2+とZn2+の合計含有量は100モル%であり、Ni2+:Zn2+=78:22(モル比)であった。
【0115】
(一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-2)の調製)
前記方法により得られた付加生成物(F-0)に、30重量%の塩化ニッケル水溶液(115.33g 0.267モル)と30重量%の塩化亜鉛水溶液(13.50g 0.033モル)を混合して添加し、80℃で8時間撹拌した。濾過により顔料を単離し、洗浄し、120℃で乾燥し、乳鉢で磨砕し、一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-2)を得た。F-2を硝酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解して定容とした。前記方法により金属イオン含有量を求めたところ、Me中におけるNi2+とZn2+の合計含有量は100モル%であり、Ni2+:Zn2+=89:11(モル比)であった。
【0116】
(一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-3)の調製)
前記方法により得られた付加生成物(F-0)に、30重量%の塩化ニッケル水溶液(86.83g 0.201モル)と30重量%の塩化亜鉛水溶液(44.98g 0.099モル)を混合して添加し、80℃で8時間撹拌した。濾過により顔料を単離し、洗浄し、120℃で乾燥し、乳鉢で磨砕し、一般式(i)で表される金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-3)を得た。F-3を硝酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解して定容とした。前記方法により金属イオン含有量を求めたところ、Me中におけるNi2+とZn2+の合計含有量は100モル%であり、Ni2+:Zn2+=67:33(モル比)であった。
【0117】
(金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-4)の調製)
前記方法により得られた付加生成物(F-0)に、30重量%の塩化ニッケル水溶液(129.59g 0.3モル)を添加し、80℃で8時間撹拌した。濾過により顔料を単離し、洗浄し、120℃で乾燥し、乳鉢で磨砕し、金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-4)を得た。F-4を硝酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解して定容とした。前記方法により金属イオン含有量を求めたところ、Me中におけるNi2+とZn2+の合計含有量は100モル%であり、Ni2+:Zn2+=100:0(モル比)であった。
【0118】
(金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-5)の調製)
前記方法により得られた付加生成物(F-0)に、30重量%の塩化ニッケル水溶液(116.63g 0.27モル)と30重量%の塩化銅水溶液(13.63g 0.03モル)を混合して添加し、80℃で8時間撹拌した。濾過により顔料を単離し、洗浄し、120℃で乾燥し、乳鉢で磨砕し、金属アゾ化合物および/またはその互変異性体と一般式(ii)で表される化合物との付加生成物(F-5)を得た。F-5を硝酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解して定容とした。前記方法により金属イオン含有量を求めたところ、Me中のNi2+とZn2+の合計含有量は90モル%であり、Ni2+:Cu2+=90:10(モル比)であった。
【0119】
(着色材分散液の作製)
C.I.ピグメントグリーン59(FASTGEN Green C100) 150g、高分子分散剤(“BYK”6919) 75g、バインダー樹脂(“アデカアークルズ”WR301) 100g、PMA 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントグリーン59分散液(D-1)を作製した。
【0120】
着色材、高分子分散剤、バインダー樹脂、有機溶剤の種類と添加量を表1に記載のとおり変更したこと以外は(D-1)と同様にして、着色材分散液(D-2)~(D-19)を得た。
【0121】
【表1】
【0122】
(カラーフィルタ基板作製)
30cm×35cmの無アルカリガラス上に、硬化後膜厚みが1.5μmになるようにブラックマトリクス用樹脂BM-1を塗布し、真空乾燥した。画素ピッチ50μm、ブラックマトリクス幅5μm幅のストライプ状フォトマスクを介して、i線40mJ/cmで露光し、0.3重量%テトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、ブラックマトリクスを形成した。
【0123】
その上に、膜厚が2.5μmになるように赤色樹脂組成物R-1を塗布し、真空乾燥した。50μm幅のストライプ状フォトマスクを介して、i線40mJ/cmで露光し、0.3重量%テトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、画素ピッチ50μmの赤色画素を形成した。
【0124】
さらにその上に、膜厚が2.5μmになるように青色樹脂組成物B-1を塗布し、真空乾燥した。50μm幅のストライプ状フォトマスクを介して、i線40mJ/cmで露光し、0.3重量%テトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行い、230℃30分間加熱硬化を行い、画素ピッチ50μmの青色画素を形成した。
【0125】
さらにその上に、各実施例および比較例により得られた着色樹脂組成物を塗布し、90℃で10分間加熱乾燥した。塗布膜厚は、色度y=0.680となる膜厚とした。実施例1~31および比較例は50μm幅、実施例32は45μm幅、実施例33は55μm幅、実施例34は60μm幅のストライプ形状フォトマスクを介して、i線100mJ/cmで露光し、0.3重量%テトラメチルアンモニウム水溶液により60秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、画素ピッチ45~60μmの緑色画素を形成した。
【0126】
その後、透明電極を形成し、透過スペクトル、色度、画素膜厚、BT.2020カバー率、BT.2020単純面積比および画素欠け評価用のカラーフィルタ基板を得た。
【0127】
一方、10cm×10cmの無アルカリガラス基板上に、各実施例および比較例により得られた着色樹脂組成物を塗布し、90℃で10分間加熱乾燥した。塗布膜厚は、色度y=0.680となる膜厚とした。フォトマスクを介さずに、i線100mJ/cmで露光し、0.3重量%テトラメチルアンモニウム水溶液により60秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、緑色画素を形成し、コントラスト評価用のカラーフィルタ基板を得た。
【0128】
(バックライト1:青色LED+βサイアロン蛍光体+KSF蛍光体の作製)
容積300mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂OE-6630A/B(東レ・ダウコーニング(株)製)を86重量%、βサイアロン蛍光体(デンカ(株)製 GR-240)を7重量%、KSF蛍光体(デンカ(株)製、RE-315)を7重量%の比率で混合した。得られた混合液を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(倉敷紡績(株)製)を用いて、1000rpmで20分間撹拌・脱泡してシート作製用樹脂液を得た。
【0129】
得られたシート作製用樹脂液を、スリットダイコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム“セラピール”(登録商標)BLK(東レフィルム加工(株)製)上に塗布し、130℃で2時間加熱、乾燥して膜厚200μmの蛍光体シートを得た。得られた蛍光体シートを、ダイシング装置を用いて1mm角に小片化した。
【0130】
小片化した蛍光体シート上に、ダイボンドペーストEN-4900GC(日立化成工業(株)製)を塗布した後、1mm角のフリップチップタイプ青色LEDチップが実装された基板に、チップ表面にダイボンドペースト塗布面が接触するようにシートを配置し、密着させた。密着させた蛍光体シートとチップ実装基板を、ホットプレートを用いて100℃で1分間加熱し、ダイボンドペーストを硬化させた。封止剤OE-6630A/B(東レ・ダウコーニング(株)製)を用いて封止し、バックライト1を得た。
【0131】
得られたバックライト1を後述する方法により評価したところ、発光スペクトルの490~570nmにおけるピーク波長は540nm、その半値幅は55nmであった。
【0132】
(バックライト2:青色LED+βサイアロン蛍光体+KSF蛍光体の作製)
βサイアロン蛍光体として、デンカ(株)製 GR-240にかえてデンカ(株)製 GR-SW529Yを用いたこと以外はバックライト1の作製と同様の方法により、バックライト2を得た。得られたバックライト2をバックライト1と同様に評価したところ、発光スペクトルの490~570nmにおけるピークの波長は528nm、その半値幅は48nmであった。
【0133】
(バックライト3:青色LED+色変換フィルムの作製)
化合物G-1の合成
3,5-ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4-t-ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。ここに脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、有機層を、分液した後に飽和食塩水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3,5-ビス(4-t-ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
【0134】
3,5-ビス(4-t-ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4-ジメチルピロール(0.7g)を反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて、4時間撹拌した後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記構造を有する化合物G-1を0.4g得た(収率18%)。
【0135】
【化6】
【0136】
化合物R-1の合成
4-(4-t-ブチルフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ピロール300mg、2-メトキシベンゾイルクロリド201mgとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱した。室温に冷却後、エバポレートした。エタノール20mlで洗浄し、真空乾燥した後、2-(2-メトキシベンゾイル)-3-(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)ピロール260mgを得た。
【0137】
次に、2-(2-メトキシベンゾイル)-3-(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)ピロール260mg、4-(4-t-ブチルフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ピロール180mg、メタンスルホン酸無水物206mgと脱気したトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、125℃で7時間加熱した。室温に冷却後、水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、エバポレートし、真空乾燥した。
【0138】
次に、得られたピロメテン体とトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、ジイソプロピルエチルアミン305mg、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体670mgを加え、室温で3時間撹拌した。水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、下記構造を有する赤紫色粉末R-1 0.27gを得た。
【0139】
【化7】
【0140】
シリコーン樹脂OE-6630A/B(東レ・ダウコーニング(株)製)を100重量部、化合物G-1を0.20重量部混合した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(倉敷紡績(株)製)を用いて、300rpmで1時間撹拌し、組成物G-1を製造した。
【0141】
シリコーン樹脂OE-6630A/B(東レ・ダウコーニング(株)製)を100重量部、化合物R-1を0.08重量部混合した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(倉敷紡績(株)製)を用いて、300rpmで1時間撹拌し、組成物R-1を製造した。
【0142】
得られた組成物G-1を、バーコーターを用いて延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工(株)製“セラピール”BLK)に塗布し、120℃で5分間加熱乾燥して平均膜厚10μmのコーティング層を形成した。その上に、バーコーターを用いて組成物R-1を塗布し、120℃で5分間加熱乾燥して平均膜厚10μmのコーティング層を形成した。その後、拡散フィルムTexcell TDF127(Toray Advanced Materials Korea.Inc製)を積層した後、60℃で1時間熟成して、色変換フィルムを得た。
【0143】
得られた色変換フィルムに青色LEDを張り合わせ、色変換フィルムを用いたバックライト3を得た。得られたバックライト3をバックライト1と同様に評価したところ、発光スペクトルの490~570nmにおけるピーク波長は528nm、その半値幅は31nmであった。
【0144】
実施例における評価方法は以下のとおりである。
【0145】
(緑色画素の波長490~570nmの間の透過スペクトルのピーク波長とピークの半値幅、色度x、y、Y)
上記方法により作製した透過スペクトルおよび色度測定用カラーフィルタ基板の緑色画素について、大塚電子(株)製顕微分光測定器LCF-100MAを用いて380~780nmの透過スペクトルを測定し、CIE1931規格に基づく、C光源における色度(x、y、Y)、490~570nmの間のピーク波長と半値幅を測定した。
【0146】
(コントラスト)
熱陰極管を用いた明拓工業(株)製バックライトユニット(FL8A-EX/70)の上に、日東電工(株)製偏光子(“NPF”(登録商標)-G1220DUN)、コントラスト評価用カラーフィルタ基板、日東電工(株)製検光子(“NPF”-G1220DUN)をこの順に配置し、トプコン(株)製色彩輝度計(BM-5A)を用いて、偏光子と検光子とが平行な時の光線透過率(I1)と、偏光子と検光子とが直行したときの光線透過率(I2)を測定し、光線透過率比(I1/I2)からコントラストを算出した。
【0147】
(画素膜厚)
大塚電子(株)製顕微分光測定器LCF-100MAを用いて透過スペクトルを測定した箇所の膜厚を、(株)東京精密製膜厚計“サーフコム”1400Dを用いて測定した。
【0148】
(BT.2020カバー率)
(x、y)座標系においてBT.2020の定義された3点(Red(0.708、0.292)、Green(0.170、0.797)、Blue(0.131、0.046))で囲まれる領域の面積を100%として、RedとBlueは定義された点のまま、Greenの座標を各実施例および比較例において測定された緑色画素の色度に置換した際のRed、Green、Blueで囲まれる領域との重なりの面積割合を算出した。
【0149】
(BT.2020単純面積比)
(x、y)座標系においてBT.2020の定義された3点(Red(0.708、0.292)、Green(0.170、0.797)、Blue(0.131、0.046))で囲まれる領域の面積を100%として、RedとBlueは定義された点のまま、Greenの座標を各実施例および比較例において測定された緑色画素の色度に置換した際のRed、Green、Blueで囲まれる領域の面積割合を算出した。
【0150】
(画素欠け)
前述の方法により作製したカラーフィルタ基板の緑色画素を、Nikon製顕微鏡OPTIPHOT 300を用いて、倍率50倍の条件で5cm×5cmの視野を観察し、欠け面積の割合から下記基準により画素欠けを評価した。
A:欠け面積が0%
B:欠け面積が0%を超え0.01%以下
C:欠け面積が0.01%を超え0.1%以下
D:欠け面積が0.1%を超え1%以下
E:欠け面積が1%を超え20%以下
F:欠け面積が20%を超える。
【0151】
(バックライトの波長490~570nmにおける強度のピークの波長、半値幅)
前述の方法により作製したバックライト1~3を10000cd/mになる出力で点灯させ、大塚電子(株)製LCD評価装置LCD-720を用いて、波長490~570nmの間の発光スペクトルを測定し、ピーク波長と半値幅を測定した。
【0152】
(表示装置の色度x、y)
実施例35~37により得られた表示装置の緑色画素について、大塚電子(株)LCD評価装置LCD-720を用いて、色度x、色度yを測定した。
【0153】
(表示装置のBT.2020単純面積比)
(x、y)座標系においてBT.2020の定義された3点(Red(0.708、0.292)、Green(0.170、0.797)、Blue(0.131、0.046))で囲まれる領域の面積を100%として、RedとBlueは定義された点のまま、Greenの座標を実施例35~37において測定された表示装置の緑色画素の色度x、yに置換した際のRed、Green、Blueで囲まれる領域の面積割合を算出した。
【0154】
(実施例1)
上記着色材分散液D-1 4.736g、着色材分散液D-6 17.316g、着色材分散液D-11 25.309g、WR301 1.111g DPHAモノマー(日本化薬(株)製“カヤラッド”(登録商標)DPHA 酸価0.1mgKOH/g) 1.863g、光重合開始剤((株)ADEKA製“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831) 0.192g、連鎖移動剤(昭和電工(株)製“カレンズ”(登録商標)MT-PE1 0.021g)、密着改良剤(信越化学工業(株)製 KBM-503) 0.160g、界面活性剤(ビックケミー製“BYK”(登録商標)-333) 0.040g、重合禁止剤(DIC製ターシャリブチルカテコール(TBC)) 0.009g、PMA 7.243g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA) 42.001gを添加し、着色材としてC.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16および付加生成物を、10:36.6:53.4(重量比)で含む緑色樹脂組成物を作製した。ピグメントブルー16の含有量100重量部に対する付加生成物の含有量は146重量部であった。固形分酸価は22.4mgKOH/gであった。光重合開始剤の配合量は固形分中1.33重量%であった。得られた緑色樹脂組成物を前述の方法により評価したところ、Y=8.3、x=0.077、膜厚は2.96μm、ピーク波長は506nm、半値幅は38nm、BT2020単純面積比は89.5%、BT2020カバー率は77.5%となった。カバー率と明るさのバランスの指標である、BT2020カバー率と緑色画素のYの積(カバー率×明るさ)は7.5であった。画素欠け評価はEであった。緑色樹脂組成物の組成および評価結果を表2に示す。
【0155】
実施例2~34、比較例1~13
各成分の種類と配合量を表2~5に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、緑色樹脂組成物を作製した。前述の方法により評価した結果を表6~13に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
【表6】
【0161】
【表7】
【0162】
【表8】
【0163】
【表9】
【0164】
【表10】
【0165】
【表11】
【0166】
【表12】
【0167】
【表13】
【0168】
着色材に、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16、付加生成物を含む実施例1~34は、y=0.680の高色純度で、膜厚が3μm以下であり、画素欠けがE以上の実用上充分な画素欠け耐性を有していた。一方、C.I.ピグメントグリーン59を含まない比較例1~4、C.I.ピグメントブルー16を含まない比較例5は、いずれも膜厚が3μmを超え、画素欠けがFの不十分なものであった。C.I.ピグメントグリーン59にかえてC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン58を用いた比較例6~7、C.I.ピグメントブルー16にかえてC.I.ピグメントブルー15:3やC.I.ピグメントブルー60を用いた比較例8~9も、いずれも膜厚が3μmを超え、画素欠けがFの不十分なものであった。付加生成物を含まない比較例10~11は、いずれも膜厚が3μmを超え、画素欠けがFの不十分なものであった。付加生成物の金属イオン含有量が本発明に規定する範囲外である比較例12~13も、いずれも膜厚が3μmを超え、画素欠けがFの不十分なものであった。
【0169】
(実施例1~8)
実施例1~8から、C.I.ピグメントブルー16の含有量100重量部に対する付加生成物の含有量を150~1400重量部とすることにより画素欠けをより抑制することができることが分かる。
【0170】
また、x=0.070~0.210、y=0.640~0.720とすることにより、BT.2020単純面積比を向上させることができることが分かる。
【0171】
(実施例13、26~27)
実施例13と26~27から、Me中におけるNi2+およびZn2+のモル比(Ni2+:Zn2+)を70:30~85:15にすることにより、画素欠けをより抑制することができることが分かる。
【0172】
(実施例4、10、14、17、20、23)
実施例4、10、14、17、20、23から、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16および付加生成物の合計含有量100重量部に対して、C.I.ピグメントグリーン59を20~60重量部含有することにより、画素欠けをより抑制することができることが分かる。
【0173】
(実施例5、11、15、18、21、24)
実施例5、11、15、18、21、24から、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントブルー16および付加生成物の合計含有量100重量部に対して、C.I.ピグメントグリーン59を20~60重量部含有することにより、画素欠けをより抑制することができることが分かる。
【0174】
(実施例3、28~29、31)
実施例3、28~29、31から、固形分酸価を15~40mgKOH/gとすることにより、画素欠けをより抑制することができ、固形分酸価を17~26mgKOH/gとすることにより、画素欠けをさらに抑制することができることが分かる。
【0175】
(実施例9~12)
実施例9~12から、緑色画素の波長490~570nmの間の透過スペクトルのピークの半値幅を55~65nmとすることにより、BT.2020カバー率と明るさYの積が向上することが分かる。
【0176】
(実施例17、19~20、22、24~25)
実施例17、19~20、22、24~25から、x=0.164~0.176、y=0.640~0.720とすることにより、BT.2020カバー率を向上させることができることが分かる。
【0177】
(実施例28、30)
実施例28、30から、光重合開始剤含有量を固形分中1.5重量%以下とすることにより、画素欠けをより抑制することができることが分かる。
【0178】
実施例35
(表示装置の作製)
無アルカリガラス上にTFT素子、透明電極等を形成し、アレイ基板を作製した。実施例14により得られたカラーフィルタ基板とアレイ基板に、それぞれポリイミド配向膜を形成し、ラビング処理を行った。アレイ基板にマイクロロッドを練り込んだシール剤を印刷し、ビーズスペーサーを散布した後、アレイ基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせた。シール部に設けられた注入口からネマティック液晶(JNC(株)製“LIXON”(登録商標)JC-5007LA)を注入した後、液晶セルの両面に偏光フィルムを偏光軸が垂直になるようにして貼り合わせ、液晶パネルを得た。この液晶パネルに、バックライト光源としてバックライト1を取り付け、TABモジュール、プリント基板等を実装し、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、前述の方法により評価したところ、表示装置のBT2020単純面積比は88.6%であった。その他の評価結果をあわせて表14に示す。
【0179】
実施例36~37
バックライトの種類を表14記載のとおりに変更したこと以外は実施例35と同様にして、液晶表示装置を作製した。前述の方法により評価した結果を表14に示す。
【0180】
【表14】
【0181】
(実施例35~37)
実施例35~37から、バックライトの490~570nmにおけるピーク波長を510~530nmの範囲することにより、表示装置のBT.2020単純面積比を向上することが分かる。
【0182】
実施例36、37から、バックライトが色変換フィルムを有することにより、表示装置のBT.2020単純面積比が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明の着色樹脂組成物は、表示装置に好ましく用いられるカラーフィルタ基板の画素を形成するための着色樹脂組成物として好適に使用できる。