IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20230117BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20230117BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/007
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018242784
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105641
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】竹光 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】羽根 亮一
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-175959(JP,A)
【文献】特許第2952892(JP,B2)
【文献】特開平10-140422(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159978(WO,A1)
【文献】特開2017-222971(JP,A)
【文献】特開2017-222972(JP,A)
【文献】特表2013-517392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/00 - 8/18
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂からなる繊維から構成されたスパンボンド不織布であって、前記繊維は芯鞘複合繊維であり、前記繊維の平均単繊維径が6.5μm以上14.5μm以下であり、前記繊維表面の酸化チタン粒子の露出数が0(個/100本)以上10(個/100本)以下であり、さらに前記スパンボンド不織布の白色度が60以上95以下であることを特徴とするスパンボンド不織布。
【請求項2】
前記スパンボンド不織布のMFRが、155g/10分以上500g/10分以下である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
目付当たりの耐水圧が、7mmHO/(g/m)以上20mmHO/(g/m)以下である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
MD方向の引張強度が、1.0(N/2.5cm)/(g/m)以上である、請求項1~3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
以下の工程(A)~(D)を含む、スパンボンド不織布の製造方法。
工程(A):MFRが155g/10分以上500g/10分以下のポリオレフィン系樹脂(P1)に、前記ポリオレフィン系樹脂(P1)の総質量を100質量%として、酸化チタン粒子を0.05質量%以上5.00質量%以下添加して、芯成分を調製する。
工程(B):MFRが155g/10分以上500g/10分以下のポリオレフィン系樹脂(P2)を鞘成分とし、前記芯成分と前記鞘成分とを、芯鞘複合紡糸口金から吐出して、冷却固化させたのち、エジェクターにて紡糸速度3500m/分以上6500m/分以下で牽引、延伸して長繊維の芯鞘複合糸を形成する。
工程(C):前記芯鞘複合糸を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化する。
工程(D):前記不織ウェブを熱接着してスパンボンド不織布を得る。
【請求項6】
前記芯成分のMFRが、前記鞘成分のMFRよりも高い、請求項5に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い白色度を有し、均一性や強度に優れたスパンボンド不織布に関するものであり、特に衛生材料用途に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料用の不織布には、風合い、肌触り、柔軟性および高い生産性が求められている。しかし近年では、紙おむつや生理用ナプキンの製造工程で多用される超音波接着での加工安定性のため、均一性の高い不織布が求められているほか、不織布のテカリ感や透け感を防止するため、高い白色度を有する不織布が求められるようになってきた。
【0003】
均一性の高い不織布として、例えば特許文献1や2には、比較的高いメルトフローレート(以下、MFRと略することがある。)を有する樹脂を用い、不織布を構成する繊維の繊維径を細くした不織布が提案されている。
【0004】
一方、高い白色性を有する不織布として、例えば特許文献3のように、酸化チタン粒子を添加させた不織布が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2007/091444号
【文献】特開2011-099196号公報
【文献】国際公開1997/049853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、孔径と繊維径とから算出されるドラフト比を1500以上とすることにより、単繊維繊度を1.5デニール以下とする技術であり、この技術においては、MFRの大きい、すなわち低粘度の原料を大きい孔径の口金で紡糸するものであるため、口金圧が掛かりにくく均一な紡出ができずに糸切れや繊維径ムラを発生させ、安定して均一な不織布を得がたいという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された技術においては、MFRが100~2000g/10分のポリプロピレンを含む樹脂を用いることが記載されているが、実施例で示される繊維径は19μm以上と非常に大きく、均一な不織布を得ることは出来ていない。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、不織布を構成する繊維の平均単繊維径が細く、均一性に優れ、強度が高く、かつ白色度に優れたスパンボンド不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、特許文献3に開示されているような酸化チタン粒子を特許文献1や2に記載された、比較的高いメルトフローレートの原料に添加した場合には、原料である樹脂が低粘度であるため、酸化チタン粒子が不織布を構成する繊維の表面に多く存在する状態、すなわちブリードする状態となってしまうことが分かった。この結果、酸化チタン粒子が製造工程に使用される金属ロールなどに傷を付けるという問題、あるいは、製造過程において繊維ウェブを熱接着する際に、酸化チタン粒子がこれを阻害するため、十分な強度を有する不織布を得がたいという問題が生じるという知見を得た。
【0010】
そこで、さらに検討を重ねた結果、スパンボンド不織布を構成する繊維の平均繊維径を小さくし、かつ芯鞘複合繊維状とすることで、酸化チタン粒子の繊維表面への析出を抑制する一方、不織布の均一性が向上し、芯鞘複合繊維状としても白色度を高く維持できるという知見を得た。さらに、このスパンボンド不織布は、構成する繊維の平均単繊維径を小さくすることができているため、従来のスパンボンド不織布に比べて強度や耐水性といった物性の向上を可能とすることも判明した。
【0011】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0012】
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維から構成されたスパンボンド不織布であって、前記繊維は芯鞘複合繊維であり、前記の繊維の平均単繊維径が6.5μm以上14.5μm以下であり、前記の繊維表面の粒子径0.1μm以上の酸化チタン粒子の露出数が0(個/100本)以上10(個/100本)以下であり、さらに前記のスパンボンド不織布の白色度が60以上95以下である。
【0013】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布のMFRが、155g/10分以上500g/10分以下である。
【0014】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、目付当たりの耐水圧が、7mmHO/(g/m)以上20mmHO/(g/m)以下である。
【0015】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、MD方向の引張強度が、1.0(N/2.5cm)/(g/m)以上である。
【0016】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、以下の工程(A)~(D)を含む。
工程(A):MFRが155g/10分以上500g/10分以下のポリオレフィン系樹脂(P1)に、前記のポリオレフィン系樹脂(P1)の総質量を100質量%として、酸化チタン粒子を0.05質量%以上5.00質量%以下添加して、芯成分を調製する。
工程(B):MFRが155g/10分以上500g/10分以下のポリオレフィン系樹脂(P2)を鞘成分とし、前記の芯成分と前記の鞘成分とを、芯鞘複合紡糸口金から吐出して、冷却固化させたのち、エジェクターにて紡糸速度3500m/分以上6500m/分以下で牽引、延伸して長繊維の芯鞘複合糸を形成する。
工程(C):前記の芯鞘複合糸を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化する。
工程(D):前記の不織ウェブを熱接着してスパンボンド不織布を得る。
【0017】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記の芯成分のMFRが、前記の鞘成分のMFRよりも高い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不織布を構成する繊維の平均単繊維径が細く、製造過程においても使用する樹脂が紡糸性に優れているため、不織布としての均一性に優れ、かつ強度が高いスパンボンド不織布が得られる。また、本発明のスパンボンド不織布は、白色度に優れるという特徴から、特に衛生材料用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維から構成されてなるものであって、前記繊維は芯鞘複合繊維であり、前記の繊維の平均単繊維径が6.5μm以上14.5μm以下であり、前記の繊維表面の酸化チタン粒子の露出数が0(個/100本)以上10(個/100本)以下であり、さらに前記スパンボンド不織布の白色度が60以上95以下である。以下に、この詳細について説明する。
【0020】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂については、例えば、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、もしくは、プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。また、ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、もしくは、エチレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。この中でも、紡糸性や強度の特性から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
また、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂は、2種以上のポリオレフィン系樹脂の混合物であってもよく、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等を含有する樹脂組成物を混合させた樹脂をポリオレフィン系樹脂として用いることもできる。
【0023】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂の融点は、80℃以上200℃以下であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の融点を80℃以上、より好ましくは100℃以上とすることにより、スパンボンド不織布の耐熱性を向上させることができ、より実用に適した耐熱性とすることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂の融点を200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることにより、口金から吐出される糸条を冷却しやすくすることができ、繊維同士の融着を抑制して安定した紡糸を行いやすくすることができる。
【0024】
本発明のポリオレフィン系樹脂のMFRは、155g/10分以上500g/10分以下の範囲であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂のMFRが155g/10分以上とすることで、生産性を高くするために高い紡糸速度で延伸したとしても、粘度が低いため、繊維が変形に対し容易に追従することができることから安定した紡糸を可能とすることができる。さらに、高い紡糸速度で延伸することが可能となるため、不織布を構成する繊維の結晶配向を整えることができ、高い機械強度を有する繊維、そしてスパンボンド不織布とすることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂のMFRを500g/10分以下、より好ましくは400g/10分以下、さらに好ましくは300g/10分以下とすることで、低粘度による強度の低下を抑制することができる。
【0025】
本発明でいうMFRは、ASTM D1238に従って、押し出し式プラストメーターにより、荷重が2.16kg、測定温度が230℃の条件で測定される値を指すものとする。
【0026】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。ただし、後述する鞘成分には、酸化チタン粒子などの顔料を添加しないものとする。
【0027】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、スパンボンド不織布の柔軟性を向上させるため、ポリオレフィン系樹脂に炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物が含有されていることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂に混合される脂肪酸アミド化合物の炭素数により、脂肪酸アミド化合物の繊維表面への移動速度が変わることが知られている。脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは23以上、より好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に出ることを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れ、高い生産性を保持することができる。また、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下、より好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面に出やすくなり、スパンボンド不織布の高速生産に適した滑り性と柔軟性を付与することができる。
【0028】
本発明で使用される炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物、および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。具体的には、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物として、テトラドコサン酸アミド、ヘキサドコサン酸アミド、オクタドコサン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサエンタペン酸アミド、ニシン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられ、これらは複数組み合わせて用いることもできる。
【0029】
本発明では、これらの脂肪酸アミド化合物の中でも、特に、飽和脂肪酸ジアミド化合物であるエチレンビスステアリン酸アミドが好ましく用いられる。エチレンビスステアリン酸アミドは、熱安定性に優れているため溶融紡糸が可能であり、このエチレンビスステアリン酸アミドが配合されたポリオレフィン繊維により、高い生産性を保持しながら、柔軟性に優れたスパンボンド不織布を得ることができる。
【0030】
本発明では、このポリオレフィン系樹脂に対する脂肪酸アミド化合物の添加量は、0.01以上5.00質量%以下であることが好ましい態様である。脂肪酸アミド化合物の添加量を0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、滑剤効果が発現し、滑らかなタッチ、柔軟性を付与することができる。一方、5.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下、さらに好ましくは1.00質量%以下とすることにより、噴射時の繊維の吹き流れによる均一性悪化を抑制することができる。
【0031】
ここでいう脂肪酸アミド化合物の添加量とは、ポリオレフィン系樹脂全体に対して添加した脂肪酸アミド化合物の質量パーセントを言う。例えば、芯鞘型複合繊維を構成する鞘成分のみに脂肪酸アミド化合物を添加する場合でも、芯鞘成分全体量に対する添加割合を算出している。
【0032】
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリオレフィン系樹脂の一部に酸化チタン粒子を含むものであり、特に、後述する芯成分にのみ含むものである。ただし、本出願における酸化チタン粒子とは、特段の記載がない限り、少なくとも数平均粒子径が0.04μm以上のものを指すものとする。
【0033】
[繊維]
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリオレフィン系樹脂からなる繊維から構成されてなる。
【0034】
この繊維の平均単繊維径は、6.5μm以上14.5μm以下であることが重要である。ポリオレフィン繊維の平均単繊維径を6.5μm以上、好ましくは7.5μm以上、より好ましくは8.4μm以上とすることにより、安定して製造可能な均一性の高い不織布を得ることができる。一方、ポリオレフィン繊維の平均単繊維径を14.5μm、好ましくは13.5μm、より好ましくは11.8μmとすることにより、均一性と耐水圧を高いレベルで発現することができる。
【0035】
本発明の平均単繊維径は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡(例えば、キーエンス社製「VHX-D500」)で500~3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の単繊維の幅を測定し、その算術平均値(μm)を小数点以下第二位で四捨五入して得られる値(μm)のことを指すものとする。
【0036】
また、前記の繊維は、繊維表面の酸化チタン粒子の露出数が0(個/100本)以上10(個/100本)以下であることが重要である。繊維表面の酸化チタン粒子の露出数を0(個/100本)以上10(個/100本)以下とすること熱接着性が良好で強度に優れ、かつ繊維表面が滑らかなタッチに優れた風合いの不織布を得ることができる。さらに、繊維表面の酸化チタン粒子の露出数を10(個/100本)以下、好ましく5(個/100本)以下、より好ましくは3(個/100本)以下とすることにより、繊維表面の酸化チタン粒子の露出により製造工程に使用される金属ロールなどに傷を付けることを防止でき、また、熱接着性を阻害せずに強度に優れた不織布を得ることができる。
【0037】
繊維表面の酸化チタン粒子の露出数は不織布からランダムに小片サンプル10個以上を採取し、走査型電子顕微鏡(例えば、キーエンス社製「VHX-D500」)を用いて2000倍で表面写真を撮影し、各サンプルから繊維長が50μm以上である繊維表面画像を計100本になるまで観察し、それぞれの繊維表面に露出している粒子径0.1μm以上の酸化チタン粒子の数をカウントして、その合計値を指すものとする。
【0038】
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布は、前記の繊維からなる。
【0039】
本発明のスパンボンド不織布の白色度は60以上95以下であることが重要である。白色度を60以上、好ましくは65以上、より好ましくは70以上とすることにより、スパンボンド不織布のテカリ感や透け感を無くすことができ、特に、衛生材料に好適に用いることができる。一方、白色度を95以下とすることにより、繊維表面の酸化チタン粒子の露出を抑制することができる。
【0040】
白色度の測定方法としては、黒色台紙上に不織布を4枚重ねて置き、色彩計(例えば、コニカミノルタ社製「CR-20」)を用いて、ASTM E313-73に準拠して計測し、求めることができる。
【0041】
本発明のスパンボンド不織布の目付は、5~100g/mであることが好ましい。目付を5g/m以上、より好ましくは10g/m以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、不織布を衛生材料用途で使用する場合には、目付を100g/m以下、より好ましくは50g/m以下、さらに好ましくは30g/m以下とすることにより、衛生材料に適した適度な柔軟性を有するスパンボンド不織布が得られる。
【0042】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付とは、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その算術平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した値のことを指すものとする。
【0043】
また、本発明のスパンボンド不織布のMFRは、155g/10分以上500g/10分以下の範囲であることが好ましい。スパンボンド不織布のMFRが155g/10分以上とすることで、生産性を高くするために構成する繊維を形成する際に高い紡糸速度で延伸したとしても、粘度が低いため、繊維が変形に対し容易に追従することができることから安定した紡糸を可能とすることができる。さらに、高い紡糸速度で延伸することが可能となるため、不織布を構成する繊維の結晶配向を整えることができ、高い機械強度を有する繊維、そしてスパンボンド不織布とすることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂のMFRを500g/10分以下、より好ましくは400g/10分以下、さらに好ましくは300g/10分以下とすることで、低粘度による強度の低下を抑制することができる。なお、スパンボンド不織布のMFRの測定方法も、前記のポリオレフィン系樹脂のMFRの測定方法と同様に測定されるものとする。
【0044】
また、本発明のスパンボンド不織布の単位目付当たりの耐水圧は、7.0mmHO/(g/m)以上20.0mmHO/(g/m)であることが好ましい。単位目付当たりの耐水圧を7.0mmHO/(g/m)以上、より好ましくは8.0mmHO/(g/m)以上、さらに好ましくは9.0mmHO/(g/m)以上とすることにより、耐水圧が求められる衛生材料、たとえばサイドギャザー等へ適用することが可能となる。一方、スパンボンド不織布の単位目付当たりの耐水圧を20.0mmHO/(g/m)以下、好ましくは17.0mmHO/(g/m)以下、より好ましくは15.0mmHO/(g/m)以下とすることにより、柔軟で風合いの良いスパンボンド不織布とすることができる。
【0045】
ここで、スパンボンド不織布の単位目付当たりの耐水圧は、JIS L1092:2009「繊維製品の防水性試験方法」の「7.1.1 A法(低水圧法)」に準じて、以下の方法により測定・算出される値を指すものとする。
(1)幅150mm×150mmの試験片を「ランダムに5枚(シート状不織布から採取する場合は、シート幅方向等間隔に5枚)」等間隔に5枚採取する。
(2)耐水圧試験機(例えば、スイス・テクステスト社「FX-3000-IV耐水圧試験機「ハイドロテスター」」)を用いて、試験片をクランプ(試験片への水の接触面積が100cmのもの)にセットする。
(3)水を入れた耐水圧試験機を600mm/min±30mm/minの速さで水位を上昇させる。
(4)試験片を水が透過し、裏側の3か所で水滴が発生したときの水位をmm単位で測定する。
(5)この測定を5枚の試験片で行い、その算術平均値(mmHO)を耐水圧(mmHO)とした。このようにして求めた耐水圧を、次の式に基づいて上記の四捨五入前の目付で除し、小数点以下第二位を四捨五入して目付あたりの耐水圧(mmHO/(g/m))を求めた。
・目付あたりの耐水圧(mmHO/(g/m))=[耐水圧(mmHO)]/[目付(g/m)]
本発明のスパンボンド不織布の単位目付当たりのMD方向の引張強度は、1.0(N/2.5cm)/(g/m)以上であることが好ましい。単位目付当たりのMD方向の引張強度を1.0(N/2.5cm)/(g/m)以上、好ましくは1.1(N/2.5cm)/(g/m)以上、さらに好ましくは1.2(N/2.5cm)/(g/m)以上とすることにより、紙おむつ等を製造する際の工程通過性や製品としての使用に耐え得るものとなる。また、上限値については、あまりに高い場合は、柔軟性を損なう恐れがあるため、2.0(N/2.5cm)/(g/m)以下であることが好ましい。MD方向の引張強度は、主には繊維の紡糸速度、エンボスロール圧着率、温度および線圧等により、調整される。ただし、構成する繊維の表面に酸化チタン粒子が露出している場合、エンボスロールでの熱接着を阻害してしまい十分な強度を得ることができない場合がある。
なお、本発明で言うMD方向とは不織布を製造する際の機械進行の方向を指すものとする。
【0046】
ここで、スパンボンド不織布の単位目付当たりのMD方向の引張強度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」の「6.3.1 標準時」に準じ、サンプルサイズ幅2.5cm×30cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分の条件でMD方向の各3点の引張試験を行い、サンプルが破断した時の強度を引張強度(N/2.5cm)とし、平均値について小数点以下第二位を四捨五入して算出した。続いて、算出した引張強度(N/2.5cm)を、上記で求めた目付(g/m)から、次の式より小数点以下第二位を四捨五入して単位目付当たりの引張強度を算出した。
・単位目付当たりのMD方向の引張強度=MD方向の引張強度(N/2.5cm)/目付(g/m)。
【0047】
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に本発明のスパンボンド不織布の製造方法について述べる。
【0048】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、前記の工程(A)~(D)を含む。以下、各工程について説明する。
【0049】
(工程(A))
本工程では、MFRが155g/10分以上500g/10分以下のポリオレフィン系樹脂(P1)に、前記ポリオレフィン系樹脂(P1)の総質量を100質量%として、酸化チタン粒子を0.05質量%以上5.00質量%以下添加して、芯成分を調製する。なお、ポリオレフィン系樹脂(P1)のMFRは、前記のポリオレフィン系樹脂のMFRの測定方法によって測定されるものである。
【0050】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法においては、芯成分に酸化チタン粒子を0.05以上5質量%以下で添加することが重要である。酸化チタン粒子の添加量を0.05質量%以上、より好ましくは0.30質量%、さらに好ましくは0.50質量%とすることで白色度を高い値とすることができる。一方、酸化チタン粒子の添加量を5.00質量%、より好ましくは3.00質量%、さらに好ましくは2.00質量%とすることで繊維表面への酸化チタン粒子の露出を抑制し、紡糸性、白色度、強度を高いレベルで達成することができる。ここでいう酸化チタン粒子の添加量とは、本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維、具体的には、繊維を構成するポリオレフィン系樹脂全体に対して添加した酸化チタン粒子の質量パーセントを言う。例えば、芯鞘型複合繊維を構成する芯成分のみに酸化チタン粒子を添加する場合でも、芯鞘成分全体量に対する添加割合を算出している。
【0051】
また、本発明では上記酸化チタン粒子を芯成分のみに添加することで高いMFRを有する原料を使用した場合でも酸化チタン粒子の表面へのブリードを鞘成分が抑制し、繊維表面への露出が極めて少なく、高い酸化チタン粒子の添加を可能とするものである。ただし、後述する鞘成分に対しても、表面への酸化チタン粒子の露出数が本発明の規定の範囲内になる程度に調整された添加量であるか、前記した酸化チタン粒子の平均粒子径の下限未満の酸化チタンが混入することは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特に構わないものとする。
【0052】
(工程(B))
本工程では、MFRが155g/10分以上500g/10分以下のポリオレフィン系樹脂(P2)を鞘成分とし、前記芯成分と前記鞘成分とを、芯鞘複合紡糸口金から吐出して、冷却固化させたのち、エジェクターにて紡糸速度3500m/分以上6500m/分以下で牽引、延伸して長繊維の芯鞘複合糸を形成する。なお、ポリオレフィン系樹脂(P2)のMFRは、前記のポリオレフィン系樹脂のMFRの測定方法によって測定されるものである。
【0053】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法においては、芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRが鞘成分のポリオレフィン系樹脂のMFRよりも高いことが好ましい。芯成分のポリオレフィン系樹脂のMFRを鞘成分のポリオレフィン系樹脂のMFRよりも高くすることにより、芯成分に添加した酸化チタン粒子の繊維表面への露出をより抑制することができる。
【0054】
本発明のスパンボンド不織布の繊維は、前記の芯成分および鞘成分をそれぞれ別の押出機にて、溶融、計量し、複合紡糸口金へと供給し、芯鞘複合繊維として紡出することによって形成される。
【0055】
紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくい点から矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましい。
【0056】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂を溶融し紡糸する際の紡糸温度は、200以上270℃以下であることが好ましい。紡糸温度を200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。一方、紡糸温度を270℃以下、より好ましくは260℃以下、さらに好ましくは250℃以下とすることにより、口金から吐出される糸条を冷却しやすくすることができ、繊維同士の融着を抑制して安定した紡糸を行いやすくすることができる。
【0057】
紡糸口金の孔径については、特に規定するものではないが、本発明で使用されるポリオレフィン系樹脂は比較的高いMFRであることから、孔径0.5mm以下が好ましく、より好ましくは孔径0.4mm以下、さらに好ましくは孔径0.3mm以下である。孔径の大きい口金で細い繊維を紡糸すると、口金背圧が掛かりづらく、吐出不良による繊維ムラ、地合の不均一性(厚みムラ)、さらには糸切れを引き起こすため好ましくない。次のノズル径と平均単繊維径の関係式で1500未満が好ましい態様である。
・(ノズル径(mm))/(平均単繊維径(mm))<1500
続いて、紡出された長繊維の糸条を冷却する。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
【0058】
次に、冷却して固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
【0059】
紡糸速度は、3500m/分以上6500m/分以下であることが好ましい。紡糸速度を3500以上、より好ましくは4000m/分以上とすることにより高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み高い強度の長繊維を得ることができる。このため高い強度の繊維で構成される不織布も強力に優れたものとなる。一方、紡糸速度を6500m/分以下とすることにより、紡糸を安定して行うことができる。
【0060】
ここで、紡糸速度は、平均単繊維径と使用する樹脂の固形密度から長さ10000m当たりの質量を単繊維繊度として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した単繊維繊度(dtex)と、各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。単位はg/分)から、次の式に基づき、紡糸速度を算出して求められる。
・紡糸速度(g/分)=(10000×単孔吐出量(g/分))/単繊維繊度(dtex)
また、前述したとおり、通常では紡糸速度を上げていくと、紡糸性は悪化して糸条を安定して生産することができないが、本発明では、特定の範囲のMFRを有するポリオレフィン系樹脂を用いることにより、意図する芯鞘複合糸を安定して紡糸することができる。
【0061】
(工程(C))
本工程においては、前記芯鞘複合糸を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化する。
【0062】
本発明においては、高い紡糸速度で延伸するため、エジェクターから出た繊維は、高速の気流で制御された状態でネットに捕集されることとなり、繊維の絡みが少なく均一性の高い不織布を得ることができる。
【0063】
(工程(D))
本工程においては、前記不織ウェブを熱接着してスパンボンド不織布を得る。
【0064】
不織繊維ウェブを熱接着により一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど各種ロールにより、熱接着する方法が挙げられる。
【0065】
熱接着時のエンボス接着面積率は、5%以上30%以下であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上とすることにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下とすることにより、特に衛生材料用のスパンボンド不織布として用いる場合に、十分な柔軟性を得ることができる。
【0066】
ここでいう接着面積とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。
【0067】
熱エンボスロールに施される彫刻の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。
【0068】
熱ロールの表面温度は、使用しているポリオレフィン系樹脂の融点に対し-50℃以上融点以下とすることが好ましい態様である。熱ロールの表面温度を好ましくは(融点-50℃以上)、より好ましくは(融点-45℃以上)とすることにより、適度に熱接着させ不織布形態を保持することができる。また、熱ロールの表面温度をポリオレフィン系樹脂の融点以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、特に衛生材料用のスパンボンド不織布として用いる場合に、十分な柔軟性を得ることができる。
【0069】
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50N/cm以上500N/cm以下であることが好ましい。ロールの線圧を好ましくは50N/cm以上、より好ましくは100N/cm以上、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、十分に熱接着させ不織布として実用に供しうる強度を得ることができる。一方、ロールの線圧を好ましくは500N/cm以下、より好ましくは450N/cm以下、さらに好ましくは400N/cm以下とすることにより、特に衛生材料用の不織布として用いる場合に、十分な柔軟性を得ることができる。
【0070】
本発明のスパンボンド不織布は、高い均一性と白色度を有し、かつ強度や耐水圧に優れることから、使い捨て紙おむつやナプキンなどの衛生材料用途に好適に利用することができる。
【実施例
【0071】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0072】
(測定方法)
(1)平均単繊維径(μm)、繊維表面の粒子径0.1μm以上の酸化チタン粒子露出数(個/100本):
走査型電子顕微鏡として、キーエンス社製「VHX-D500」を用いた。なお、繊維表面の酸化チタン粒子露出数の測定において、露出数が多く、カウントが困難な場合は「100<」と表記する。
【0073】
(2)白色度:
色彩計として、コニカミノルタ社製「CR―20」を用いた。
【0074】
(3)スパンボンド不織布の目付当たりの耐水圧:
耐水圧試験機として、スイス・テクステスト社製「FX-3000-IV耐水圧試験機「ハイドロテスター」」を用いた。
【0075】
(実施例1)
酸化チタン粒子を1.80%添加した、MFRが240g/10分であるポリプロピレン樹脂を芯成分用の押出機で溶融した。一方、酸化チタン粒子を添加していない、MFRが227g/10分であるポリプロピレン樹脂を鞘成分用の押出機で溶融した。これらを、芯成分と鞘成分との質量比が50:50、繊維全体への酸化チタン粒子量が0.9%となるように計量し、紡糸温度が235℃で、孔径φが0.30mmの矩形芯鞘口金から、単孔吐出量が0.36g/分で紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターでエジェクターの圧力を0.55MPaとした圧縮エアによって、牽引し延伸した。続いて、これを移動するネット上に捕集してポリプロピレン長繊維からなる不織繊維ウェブを得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.4μmであり、これから換算した紡糸速度は4,675m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが0回と良好であった。
【0076】
引き続き、得られた不織繊維ウェブを、上ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率11%のエンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧が300N/cmで、熱接着温度が145℃の温度で熱接着し、目付が15g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2)
芯成分に酸化チタン粒子の添加量を0.60質量%とし、MFRが232g/10分のポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.6μmであり、これから換算した紡糸速度は4489m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが0回と良好であった。得られたスパンボンド不織布について、評価した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例3)
芯成分に酸化チタン粒子の添加量を3.00質量%とし、MFRが245g/10分のポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.2μmであり、これから換算した紡糸速度は4412m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが0回と良好であった。得られたスパンボンド不織布について、評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例4)
芯成分、鞘成分ともに脂肪酸アミド化合物として、エチレンビスステアリン酸アミドを1.0質量%添加したこと以外は、実施例3と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.2μmであり、これから換算した紡糸速度は4412m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが0回と良好であった。得られたスパンボンド不織布について、評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
芯成分と鞘成分の原料を入れ替えたこと以外は、実施例1と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.4μmであり、これから換算した紡糸速度は4675m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが0回と良好であった。得られたスパンボンド不織布について、評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
芯成分、鞘成分ともに酸化チタン粒子の添加量を0.90質量%ずつとしたこと以外は、実施例1と同じ方法により、スパンボンド不織布を得た。得られたポリプロピレン長繊維の特性は、平均単繊維径は10.4μmであり、これから換算した紡糸速度は4677m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れが0回と良好であった。得られたスパンボンド不織布について、評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
芯成分、鞘成分ともにMFRが35g/10分のポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により紡糸を実施した。しかしながら、糸切れが多発し、シート化することができなかった。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1~4は、高い紡糸速度でも紡糸性が良好であり、高い生産性と安定性を有する結果であった。また、実施例1~4は、比較的高いMFRの原料を用いているにも関わらず、芯成分に酸化チタン粒子を添加することで繊維表面の粒子径0.1μm以上の酸化チタン粒子の露出がなく、高い白色度と強度および耐水圧を有していた。
【0082】
一方、比較例1と2で示すように、鞘成分に酸化チタン粒子を添加した水準は、繊維表面の粒子径0.1μm以上の酸化チタン粒子の露出が多く、熱接着が不良となり、強度、耐水圧が劣位であった。また、比較例3に示すように、比較的MFRの小さいポリプロピレン樹脂を用いた場合は、高い紡糸速度では糸切れが発生し、安定して生産できないという問題が発生した。