(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】排熱構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230117BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H01L23/46 C
(21)【出願番号】P 2019011150
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁島 幸二
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-301905(JP,A)
【文献】米国特許第04628992(US,A)
【文献】中国実用新案第205052033(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0150634(US,A1)
【文献】実開昭62-120398(JP,U)
【文献】中国実用新案第211128747(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体の外側に配置され、発熱する電子部品と、
前記筐体の外側に配置され、前記電子部品で生じた熱を放熱させる放熱部材と、
前記筐体の外側に形成され、発熱した前記電子部品によって温められた空気を流出させる排熱流路と、
前記筐体の内側から外側へ空気を排気する排気ファンと、
を備え、
前記排気ファンは、前記排熱流路の下流側の端部の近傍に配置され、
前記放熱部材は、前記排熱流路の下流側において、前記排気ファンと向かい合う延長部、を有し、
前記排熱流路の下流側の端部から流出した空気は、前記排気ファンが動作している場合、前記筐体から離間する方向に流れる、
ことを特徴とする排熱構造。
【請求項2】
前記延長部は、少なくとも1つの通気孔部、を有する、
請求項
1に記載の排熱構造。
【請求項3】
前記延長部は、前記排気ファンと離間して配置されている、
請求項
1または
2に記載の排熱構造。
【請求項4】
前記延長部は、前記排気ファンに近接して配置されている、
請求項
1または
2に記載の排熱構造。
【請求項5】
前記筐体の内側に配置され、発熱する第二電子部品と、
前記筐体の内側に配置され、前記第二電子部品で生じた熱を放熱させる第二放熱部材と、
前記筐体の内側に形成され、発熱した前記第二電子部品によって温められた空気を流出させる第二排熱流路と、
を備え、
前記排気ファンは、前記第二排熱流路の下流側の端部の近傍に配置され、
前記第二排熱流路の空気は、前記排気ファンが動作している場合、前記排気ファンに向かって流れる、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の排熱構造。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の排熱構造と、
前記電子部品が搭載された基板と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱構造および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の基板に搭載されている制御回路などの電子部品は発熱するため、排熱構造を備えることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、複数の発熱部品が固着された放熱部材が、筐体内に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の高機能化に伴って、基板上に配置される部品の省スペース化が望まれている。また、例えば、ヒートシンクのような放熱部材が筐体の内側に配置されている場合、筐体の内側に熱がこもるおそれがある。そこで、放熱部材は、電子部品の冷却効果を維持するために、適切に冷却されることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板上を省スペース化し、より高い冷却効果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る排熱構造は、電子機器の筐体の外側に配置され、発熱する電子部品と、前記筐体の外側に配置され、前記電子部品で生じた熱を放熱させる放熱部材と、前記筐体の外側に形成され、発熱した前記電子部品によって温められた空気を流出させる排熱流路と、前記筐体の内側から外側へ空気を排気する排気ファンと、を備え、前記排気ファンは、前記排熱流路の下流側の端部の近傍に配置され、前記排熱流路の下流側の端部から流出した空気は、前記排気ファンが動作している場合、前記筐体から離間する方向に流れる、ことを特徴とする。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、上記の排熱構造と、前記電子部品が搭載された基板と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板上を省スペース化し、より高い冷却効果を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る排熱構造を有する電子機器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る排熱構造の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る第一ヒートシンクを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る排熱構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る排熱構造を有する電子機器を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る排熱構造の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る第一ヒートシンクを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係る排熱構造を示す断面図である。
【
図9】
図9は、従来の排熱構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る排熱構造10を備えた電子機器1の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る排熱構造を有する電子機器を示す斜視図である。
図2は、第一実施形態に係る排熱構造の分解斜視図である。
図3は、第一実施形態に係る第一ヒートシンクを示す斜視図である。
図4は、第一実施形態に係る排熱構造を示す断面図である。電子機器1は、例えば、AV一体型のカーナビゲーションシステムまたはカーオーディオなどである。電子機器1は、第一基板(基板)2と、第二基板3と、筐体9と、排熱構造10とを備える。
【0012】
第一基板2は、板状のプリント基板である。より詳しくは、第一基板2は、絶縁体で形成された板材上に配置した、例えば、第一集積回路(IC:Integrated Circuit、電子部品)20、抵抗器、コンデンサ、トランジスタなどの電子部品を、電気的に接続し構成されている。第一基板2は、電子機器1の各部に制御信号を出力する。第一基板2は、第一集積回路20の端子を挿入する図示しないスルーホールが形成されている。第一基板2のスルーホールが形成された部分は、筐体9の外側に露出している。第一基板2は、例えば、電子機器1の電源電圧を制御する回路を構成する電子部品が搭載されている。本実施形態では、第一基板2は、電子機器1の下部に配置されている。
【0013】
第二基板3は、板状のプリント基板である。より詳しくは、第二基板3は、絶縁体で形成された板材上に配置した、例えば、第二集積回路(第二電子部品)50、抵抗器、コンデンサ、トランジスタなどの電子部品を、電気的に接続し構成されている。第二基板3は、電子機器1の各部に制御信号を出力する。第二基板3は、第二集積回路50の端子を挿入する図示しないスルーホールが形成されている。第二基板3は、例えば、電子機器1の各機能を制御する回路を構成する電子部品が搭載されている。第二基板3には、第二集積回路50を含む発熱部品と、熱の耐性が低いフラッシュメモリーなどの半導体とが共存して配置されている。本実施形態では、第二基板3は、第一基板2より上側に配置されている。
【0014】
筐体9は、電子機器1の外周を覆う。筐体9は、背面パネルであるパネル板91を有する。パネル板91には、第一集積回路20を覆ったブラケット25が組み付けられている。パネル板91には、第一集積回路20と向かい合って排熱構造10の第一ヒートシンク30が組み付けられている。
【0015】
排熱構造10は、電子機器1において生じる熱を排熱させる。排熱構造10は、第一集積回路20と、第一ヒートシンク(放熱部材)30と、第二集積回路50と、第二ヒートシンク(第二放熱部材)60と、排気ファン80とを有する。
【0016】
第一集積回路20は、電源電圧を供給する電源ICである。第一集積回路20は、筐体9の外側に配置され、電子機器1の動作により発熱する。第一集積回路20は、第一基板2上に配置されている。第一集積回路20は、電子機器1の中で最も高温になるので、筐体9の外側に配置して筐体9の内側に熱がこもりにくしている。第一集積回路20は、薄い直方体状の箱型のケース21に、発熱する電子部品が搭載された基板が収容されている。第一集積回路20は、搭載した電子部品の発熱により、ケース21が高温になる。
【0017】
ケース21は、主面21aと、主面21aと向かい合う主面21bとを有する。ケース21は、ケース21の横幅方向の両端部に保持部22と保持部23とが形成されている。保持部22と保持部23とは、ケース21の高さ方向の中央部に形成されている。保持部22と保持部23とは、ケース21を横幅方向の内側に凹状に凹ませて形成されている。保持部22は、第一締結部材S1の軸部の外周よりわずかに大きく形成されている。保持部23は、第一締結部材S2の軸部の外周よりわずかに大きく形成されている。保持部22は、第一締結部材S1の軸部が挿通されている。保持部23は、第一締結部材S2の軸部が挿通されている。ケース21の下部からは、複数の端子24が下方に突出している。端子24は、第一集積回路20内の基板で生成された電気信号を出力する。端子24は、第一基板2のスルーホールに挿通されて半田付けされている。
【0018】
ブラケット25は、第一集積回路20を覆った状態で筐体9の外側に支持するケースである。ブラケット25は、板材を曲げ加工して形成されている。ブラケット25は、ケース21の主面21bと面同士で密着する。ブラケット25は、第一集積回路20のケース21および第一ヒートシンク30より熱伝導性の低い材料で構成されている。ブラケット25には、第一集積回路20で生じた熱が伝導されにくい。
【0019】
第一ヒートシンク30は、第一集積回路20で生じた熱を放熱させる。第一ヒートシンク30は、筐体9の外側に配置されている。言い換えると、第一ヒートシンク30は、筐体9の外側に露出している。第一ヒートシンク30は、筐体9のパネル板91に沿って配置されている。第一ヒートシンク30は、第一集積回路20のケース21とブラケット25と筐体9より熱伝導性が高い材料で構成されている。第一ヒートシンク30は、例えば、アルミニウム材で形成されている。第一ヒートシンク30がケース21より低温である場合、第一ヒートシンク30には、第一集積回路20で生じた熱が伝導される。第一ヒートシンク30は、筐体9の外側の空気より高温である場合、筐体9の外側の空気によって常時空冷されるため、第一ヒートシンク30は、ブラケット25と筐体9より高温である場合でも、ブラケット25と筐体9へ熱が伝導されにくい。
【0020】
第一ヒートシンク30は、上面視で、断面形状がU字型に形成されている。より詳しくは、第一ヒートシンク30は、壁部31と、壁部31の横幅方向の一方の端部から壁部31と直交する平面内に配置された壁部32と、壁部32と向かい合って配置され、壁部31の横幅方向の他方の端部から壁部31と直交する平面内に配置された壁部33と、パネル板91との接触部34と、切欠部35とを有する。壁部31と壁部32と壁部33と接触部34とは一体に形成されている。
【0021】
壁部31は、ブラケット25より大きい面積を有する矩形状に形成されている。壁部31は、筐体9のパネル板91と平行に配置されている。壁部31は、外周が筐体9の外側に露出している。壁部31は、ブラケット25に収容された第一集積回路20の主面21aと面同士が密着する。壁部31は、第一集積回路20の主面21aより低温である場合、第一集積回路20の主面21aから熱が伝導される。壁部31に伝導された熱は、壁部32と壁部33と接触部34とに伝導される。
【0022】
壁部32は、ブラケット25から離間して配置されている。壁部32は、外周が筐体9の外側に露出している。
【0023】
壁部33は、ブラケット25から離間して配置されている。壁部33は、外周が筐体9の外側に露出している。
【0024】
接触部34は、壁部31の上部と向かい合って配置されている。接触部34は、壁部31より高さ方向の長さが短い。接触部34は、壁部32の上部と壁部33の上部とを接続する。接触部34と壁部31の上部と壁部32の上部と壁部33の上部とは、筒状に配置されている。接触部34より下側に、第一集積回路20が配置されている。接触部34は、筐体9のパネル板91と面同士が密着する。接触部34は、パネル板91より高温である場合、筐体9へ熱を伝導する。
【0025】
切欠部35は、壁部31の下部を矩形状に切り欠いて形成されている。切欠部35は、第一ヒートシンク30の外側と内側とを連通する。切欠部35は、第一ヒートシンク30の外側から内側へ空気が流入する流入口である。
【0026】
このように構成された第一ヒートシンク30は、第一締結部材S1と第一締結部材S2とによって筐体9の外側に組み付けられている。
【0027】
ここで、第一締結部材S1と第一締結部材S2とについて説明する。第一締結部材S1と第一締結部材S2とは、第一ヒートシンク30が第一集積回路20を覆った状態で筐体9のパネル板91に締結する。第一締結部材S1は、第一ヒートシンク30に形成された締結孔38と、第一集積回路20のケース21の保持部22と、筐体9に組み付けられたブラケット25に形成された図示しない雌ネジとに挿入されている。このとき、第一ヒートシンク30の締結孔38と、保持部22と、ブラケット25の雌ネジとが同軸上に重なり合っている。
【0028】
第一締結部材S2は、第一ヒートシンク30に形成された締結孔39と、第一集積回路20のケース21の保持部23と、筐体9に組み付けられたブラケット25に形成された図示しない雌ネジとに挿入されている。このとき、第一ヒートシンク30の締結孔39と、保持部23と、ブラケット25の雌ネジとが同軸上に重なり合っている。
【0029】
第一締結部材S1および第一締結部材S2は、第一集積回路20のケース21の主面21aと第一ヒートシンク30の壁部31との面同士が密着し、ケース21の主面21bとブラケット25との面同士が密着した状態で、第一ヒートシンク30を筐体9のパネル板91に組み付ける。
【0030】
このように筐体9に組み付けられた第一ヒートシンク30は、壁部31と壁部32と壁部33と接触部34との間に、筒状の第一排熱流路40を形成する。第一ヒートシンク30は、第一排熱流路40を流れる空気より高温である場合、第一排熱流路40を流れる空気によって空冷される。第一ヒートシンク30は、第一排熱流路40を流れる空気より低温である場合、第一排熱流路40を流れる空気の熱が伝導される。
【0031】
第一排熱流路40は、発熱した第一集積回路20によって温められた空気を流出させる。第一排熱流路40は、第一集積回路20で生じた熱によって温められた空気が流れる流路である。第一排熱流路40は、第一集積回路20で生じた熱を排熱する。第一排熱流路40は、壁部31と壁部32と壁部33と接触部34との間に形成された空間である。第一排熱流路40は、筐体9の外側に形成されている。第一排熱流路40は、上下方向に沿って延在しており、下側から上側に向かって空気が対流する。より詳しくは、空気は、下側の端部の切欠部35から第一ヒートシンク30の内側へ流入する。そして、流入した空気は、第一集積回路20で生じた熱によって温められる。そして、温められた空気は、第一排熱流路40を下側から上側に向かって対流して、第一排熱流路40の上側の端部の開口から流出する。
【0032】
第二集積回路50は、車両の各機能を制御するSoC(System On Chip)である。第二集積回路50は、筐体9の内側に配置され、発熱する。第二集積回路50は、第二基板3上に配置されている。第二基板3には第二集積回路50を含む発熱部品と熱の耐性が低い半導体とが共存して配置されているので、排気ファン80によって直接排気して、強制的に第二集積回路50を冷却している。第二集積回路50は、薄い直方体状の箱型のケース51に、発熱する電子部品が搭載された基板が収容されている。第二集積回路50は、搭載した電子部品の発熱により、ケース51が高温になる。
【0033】
ケース51は、主面51aと、主面51aと向かい合う主面51bとを有する。ケース51の主面51bからは、複数の図示しない端子が下方に突出している。端子は、第二集積回路50内の基板で生成された電気信号を出力する。端子は、第二基板3のスルーホールに挿通されて半田付けされている。
【0034】
第二ヒートシンク60は、第二集積回路50で生じた熱を放熱する。第二ヒートシンク60は、筐体9の内側に配置されている。第二ヒートシンク60は、第二集積回路50の近傍から筐体9のパネル板91に向かって延在する。第二ヒートシンク60は、第二集積回路50のケース51と筐体9より熱伝導性が高い材料で構成されている。第二ヒートシンク60は、例えば、アルミニウム材で形成されている。第二ヒートシンク60がケース51より低温である場合、第二ヒートシンク60には、第二集積回路50で生じた熱が伝導される。第二ヒートシンク60は、ケース51と筐体9より熱伝導性が高いので、ケース51と筐体9より高温である場合でも、ケース51と筐体9へ熱が伝導されにくい。第二ヒートシンク60は、壁部61と、壁部61の一方の端部から斜め上方に向かって延在する壁部62と、壁部62の上側の端部から延在する壁部63とを有する。
【0035】
壁部61は、第二集積回路50のケース51より大きい面積を有する矩形状に形成されている。壁部61は、第二基板3と平行に配置されている。壁部61は、第二集積回路50の主面51aと面同士が密着する。壁部61は、第二集積回路50の主面51aより低温である場合、第二集積回路50の主面51aから熱が伝導される。壁部61に伝導された熱は、壁部62と壁部63とに伝導される。
【0036】
壁部62は、第二基板3に対して傾斜して配置されている。壁部62は、壁部61から離間するにつれて、第二基板3から離間して配置されている。
【0037】
壁部63は、第二基板3と平行に配置されている。壁部63は、壁部61に比べて、第二基板3から離間して配置されている。
【0038】
このように構成された第二ヒートシンク60は、壁部61と壁部62と壁部63と第二基板3の表面3aとの間に、筒状の第二排熱流路70を形成する。第二ヒートシンク60は、第二排熱流路70を流れる空気より低温である場合、第二排熱流路70を流れる空気の熱が伝導される。第二ヒートシンク60は、第二排熱流路70を流れる空気より高温である場合、第二排熱流路70を流れる空気によって空冷される。
【0039】
第二排熱流路70は、発熱した第二集積回路50によって温められた空気を流出させる。第二排熱流路70は、第二集積回路50で生じた熱によって温められた空気が流れる流路である。第二排熱流路70は、第二集積回路50で生じた熱を排熱する。第二排熱流路70は、壁部61と壁部62と壁部63と第二基板3の表面3aとの間に形成された空間である。第二排熱流路70の中間部は、第二集積回路50側から排気ファン80側に向かうにつれて、流路の断面積が拡大する。第二排熱流路70では、排気ファン80が動作している場合、空気は、第二集積回路50側から排気ファン80側に向かって流れる。第二排熱流路70内の空気は、第一集積回路20で生じた熱によって温められる。そして、温められた空気は、排気ファン80によって筐体9の外側へ排気される。
【0040】
排気ファン80は、電子機器1の動作時、筐体9の内側から外側に空気を排気する。排気ファン80は、筐体9の内側に配置されている。排気ファン80は、第一ヒートシンク30と第二ヒートシンク60との近傍に配置されている。より詳しくは、排気ファン80は、第一ヒートシンク30の上側に配置されている。言い換えると、排気ファン80は、第一排熱流路40の下流側の端部、言い換えると、第一排熱流路40の上側の端部の近傍に配置されている。排気ファン80は、第二ヒートシンク60の下流側に配置されている。言い換えると、排気ファン80は、第二排熱流路70の下流側の端部の近傍に配置されている。
【0041】
このように構成された排気ファン80が動作している場合、第二集積回路50で生じた熱によって温められた空気が、第二排熱流路70を通過して、筐体9の外側へ排気される。また、排気ファン80が動作している場合、第一集積回路20で生じた熱によって温められた空気は、第一排熱流路40の上側の端部から流出した後、筐体9の内側から外側へ向かう空気の流れに乗って、筐体9から離間する方向に流れる。
【0042】
また、排気ファン80は、温度センサによって検出された筐体9の内側の温度、第一ヒートシンク30の温度、または、第二ヒートシンク60の温度に応じて、動作の開始と停止とを制御してもよい。例えば、排気ファン80は、いずれかの温度が閾値以上である場合、動作を開始する。例えば、排気ファン80は、いずれかの温度も閾値未満である場合、動作を停止させる。
【0043】
次に、このように構成された電子機器1の排熱構造10の作用について説明する。
【0044】
第一ヒートシンク30の壁部31は、第一集積回路20のケース21の主面21aと面同士が密着している。第一ヒートシンク30は、ケース21より熱伝導性の高い材料で構成されている。第一ヒートシンク30がケース21より低温である場合、第一ヒートシンク30には、第一集積回路20で生じた熱がケース21を介して伝導される。
【0045】
第一ヒートシンク30は、筐体9の外側に配置されている。第一ヒートシンク30は、筐体9の外側の空気より高温である場合、熱を排熱する。第一ヒートシンク30は、排気ファン80の動作状態によらず、筐体9の外側の空気によって常時空冷される。
【0046】
第一排熱流路40の上側の端部の近傍には、排気ファン80が配置されている。排気ファン80は、電子機器1の動作時、筐体9の内側から外側へ排気する。第一排熱流路40より下側の空気は、第一集積回路20で生じた熱によって温められて上昇する。上昇した空気は第一排熱流路40へ流入して、第一排熱流路40を下側から上側に向かって対流する。排気ファン80が動作している場合、第一排熱流路40の上側の端部から流出した空気は、筐体9から離間させる方向に流される。第一ヒートシンク30は、第一排熱流路40を対流する空気より高温である場合、熱を排熱する。第一ヒートシンク30は、第一排熱流路40を流れる空気によって強制的に冷却される。
【0047】
第二集積回路50と第二ヒートシンク60とは、面同士が密着している。第二ヒートシンク60は、第二集積回路50のケース51より熱伝導性の高い材料で構成されている。第二ヒートシンク60がケース51より低温である場合、第二ヒートシンク60には、第二集積回路50で生じた熱が伝導される。
【0048】
第二排熱流路70の下流側の端部の近傍には、排気ファン80が配置されている。第二排熱流路70内の空気は、排気ファン80が動作している場合、第二集積回路50側から排気ファン80側に向かって流れる。第二ヒートシンク60は、第二排熱流路70を流れる空気より高温である場合、熱を排熱する。第二ヒートシンク60は、第二排熱流路70を流れる空気によって強制的に空冷される。
【0049】
このようにして、第一集積回路20で生じた熱が第一ヒートシンク30によって排熱され、第一集積回路20は、冷却される。また、第二集積回路50で生じた熱が第二ヒートシンク60によって排熱され、第二集積回路50は、冷却される。
【0050】
上述したように、本実施形態では、第一ヒートシンク30の壁部31は、第一集積回路20のケース21の主面21aと面同士が密着している。本実施形態では、第一ヒートシンク30は、ケース21より熱伝導性が高い。本実施形態によれば、第一ヒートシンク30がケース21より低温である場合、第一ヒートシンク30に、第一集積回路20で生じた熱をケース21を介して伝導させることができる。
【0051】
本実施形態では、第一ヒートシンク30は、筐体9の外側に配置されている。本実施形態では、第一ヒートシンク30は、筐体9の外側の空気より高温である場合、熱を排熱できる。本実施形態によれば、第一ヒートシンク30は、排気ファン80の動作状態によらず、筐体9の外側の空気によって常時空冷できる。
【0052】
本実施形態では、第一排熱流路40の上側の端部の近傍には、排気ファン80が配置されている。本実施形態では、排気ファン80は、電子機器1の動作時、筐体9の内側から外側へ排気する。また、本実施形態では、第一排熱流路40より下側の空気は、第一集積回路20で生じた熱によって温められて上昇する。本実施形態では、上昇した空気は第一排熱流路40へ流入して、第一排熱流路40を下側から上側に向かって対流する。本実施形態によれば、排気ファン80が動作している場合、第一排熱流路40の上側の端部から流出した空気を筐体9から離間する方向に流すことができる。本実施形態によれば、第一ヒートシンク30は、第一排熱流路40を対流する空気より高温である場合、熱を排熱できる。このように、本実施形態は、第一排熱流路40を流れる空気によって、第一ヒートシンク30を強制的に冷却できる。
【0053】
このように、本実施形態は、第一ヒートシンク30の熱を、排気ファン80が動作して生じる空気の流れによって強制的に空冷できる。また、本実施形態は、排気ファン80が停止している場合、筐体9の外側の空気によって自然に冷却できる。このように、本実施形態は、第一ヒートシンク30の放熱効果が高まるので、より高い冷却効果を得ることができる。これにより、本実施形態は、第一ヒートシンク30を小型化することができる。さらに、本実施形態は、第一ヒートシンク30の熱が、筐体9の内側にこもることを抑制できる。
【0054】
本実施形態では、第一ヒートシンク30は、筐体9の外側に配置されている。本実施形態によれば、筐体9の内側における第一基板2の設置スペースを拡大できる。
【0055】
本実施形態では、ブラケット25は、第一集積回路20のケース21の主面21bと面同士が密着している。本実施形態では、ブラケット25は、ケース21より熱伝導性が低い。本実施形態によれば、ブラケット25がケース21より低温である場合でも、ブラケット25に、第一集積回路20で生じた熱が伝導されることを抑制できる。
【0056】
本実施形態では、第一ヒートシンク30の接触部34は、筐体9のパネル板91と面同士が密着している。本実施形態では、筐体9は、第一ヒートシンク30より熱伝導性が低い。本実施形態によれば、パネル板91が第一ヒートシンク30より低温である場合でも、筐体9には、第一ヒートシンク30に伝導された熱が伝導されることを抑制できる。
【0057】
本実施形態では、第二集積回路50と第二ヒートシンク60とは、面同士が密着している。本実施形態では、第二ヒートシンク60は、第二集積回路50のケース51より熱伝導性が高い。本実施形態によれば、第二ヒートシンク60がケース51より低温である場合、第二ヒートシンク60に、第二集積回路50で生じた熱を伝導させることができる。
【0058】
本実施形態では、排気ファン80は、第二排熱流路70の下流側の端部に面して配置されている。
【0059】
ここで比較のために、
図9を用いて、従来の排熱構造10Zにおける排気ファン80Zについて説明する。
図9は、従来の排熱構造の一例を示す断面図である。第一ヒートシンク30Zは、筐体9の内側に配置されている。排気ファン80Zは、筐体9の外側に配置されている。筐体9の内側において、言い換えると、排気ファン80Zの上流において、第一排熱流路40Zと第二排熱流路70Zとが合流する。排気ファン80Zは、第一排熱流路40Zを流れる空気と第二排熱流路70Zを流れる空気とを、筐体9の内側から外側に排気する。第一排熱流路40Zを流れる空気と第二排熱流路70Zを流れる空気との合計の風量が、排気ファン80Zの風量である。
【0060】
これに対して、本実施形態では、排気ファン80は、第二排熱流路70を流れる空気のみを排気する。このため、従来と同じ風量の排気ファン80でも、従来に比べて、第二排熱流路70を流れる空気の風量を増加させることができる。本実施形態によれば、第二排熱流路70をより速い速度で排気して、第二集積回路50をより効率的に冷却できる。
【0061】
本実施形態では、第二ヒートシンク60は、第二排熱流路70を流れる空気によって強制的に空冷できる。本実施形態によれば、第二ヒートシンク60は、第二排熱流路70を流れる空気より高温である場合、熱を排熱できる。
【0062】
このようにして、本実施形態は、第一集積回路20で生じた熱を排熱させて、第一集積回路20を冷却できる。本実施形態は、第二集積回路50で生じた熱を排熱させて、第二集積回路50を冷却できる。
【0063】
[第二実施形態]
図5ないし
図8を参照しながら、本実施形態に係る排熱構造について説明する。
図5は、第二実施形態に係る排熱構造を有する電子機器を示す斜視図である。
図6は、第二実施形態に係る排熱構造の分解斜視図である。
図7は、第二実施形態に係る第一ヒートシンクを示す斜視図である。
図8は、第二実施形態に係る排熱構造を示す断面図である。本実施形態の排熱構造10Aは、第一ヒートシンク30Aの構成が、第一実施形態と異なる。その他の構成は、第一実施形態の排熱構造10と同様である。以下の説明においては、排熱構造10と同様の構成要素は、その詳細な説明は省略する。
【0064】
第一ヒートシンク30Aは、壁部31Aと、壁部32Aと、壁部33Aと、接触部34Aと、切欠部35Aと、延長部36Aと、通気孔部(通気孔)37Aとを有する。壁部31Aと壁部32Aと壁部33Aと接触部34Aと延長部36Aとは一体に形成されている。
【0065】
延長部36Aは、壁部31Aの上側の端部から上側に延設されている。延長部36Aは、第一排熱流路40の下流側において、排気ファン80と向かい合って配置されている。延長部36Aは、排気ファン80から離間して配置されている。延長部36Aは、排気ファン80が動作している場合、排気ファン80が動作して生じる空気の流れによって強制的に空冷される。延長部36Aは、排気ファン80から排気された空気より高温である場合、冷却される。延長部36Aは、少なくとも1つの通気孔部37Aを有する。
【0066】
通気孔部37Aは、延長部36Aに形成されている。通気孔部37Aは、排気ファン80から排気された空気が吹き付ける位置に配置されている。通気孔部37Aは、第一ヒートシンク30Aの放熱効果を損なわず、かつ、排気ファン80の風量を低下させないように形状、大きさ、数が設定されている。
【0067】
次に、このように構成された電子機器1Aの排熱構造10Aの作用について説明する。
【0068】
第一ヒートシンク30Aの延長部36Aには、排気ファン80が動作している場合、排気ファン80から排気された空気が吹き付ける。第一ヒートシンク30Aは、延長部36Aを介して、排気ファン80から排気された空気によって冷却される。第一ヒートシンク30Aは、排気ファン80から排気された空気より高温である場合、熱を排熱する。
【0069】
上述したように、本実施形態では、第一ヒートシンク30Aの延長部36Aには、排気ファン80が動作している場合、排気ファン80から排気された空気が吹き付ける。本実施形態によれば、第一ヒートシンク30Aは、排気ファン80から排気された空気より高温である場合、熱を排熱できる。本実施形態によれば、第一ヒートシンク30Aを効果的に冷却できる。
【0070】
本実施形態は、第一ヒートシンク30Aの延長部36Aが、排気ファン80と向かい合って配置されている。本実施形態によれば、電子機器1を車両に取り付けた際に、排気ファン80が電線類を巻き込むことを規制できる。
【0071】
さて、これまで本発明に係る排熱構造10および電子機器1について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよいものである。上記で説明した排熱構造10の構成は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0072】
上記の実施形態で説明した第一ヒートシンク30の構成は一例であり、第一ヒートシンク30は、第一集積回路20で生じた熱を排熱させる構成であればよい。
【0073】
第二実施形態において、延長部36Aは排気ファン80から離間して配置されているものとして説明したがこれに限定されない。延長部36Aは、接触部34Aの上側の端部から上側に延設されていてもよい。この場合、延長部36Aは、排気ファン80に近接して配置されている。これにより、第一ヒートシンク30Aを効果的に冷却できる。
【符号の説明】
【0074】
1 電子機器
2 第一基板(基板)
3 第二基板
9 筐体
10 排熱構造
20 第一集積回路(電子部品)
30 第一ヒートシンク(放熱部材)
40 第一排熱流路(排熱流路)
50 第二集積回路(第二電子部品)
60 第二ヒートシンク(第二放熱部材)
70 第二排熱流路
80 排気ファン