(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】不整地走行用の自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20230117BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20230117BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/03 300A
B60C11/00 F
B60C11/00 D
B60C11/03 300E
B60C11/01 B
(21)【出願番号】P 2019014606
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】居石 誠
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030658(JP,A)
【文献】特開2017-013727(JP,A)
【文献】中国実用新案第202826988(CN,U)
【文献】実開昭49-060404(JP,U)
【文献】特開2007-131111(JP,A)
【文献】特開昭61-092903(JP,A)
【文献】特開平06-320916(JP,A)
【文献】特開昭60-244605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用の自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、トレッド端を形成する複数のショルダーブロックと、前記ショルダーブロックのタイヤ軸方向内側に隣接した複数のミドルブロックとを含み、
正規内圧で正規リムに装着されかつ無負荷である正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記複数のショルダーブロックの踏面のタイヤ軸方向の内側エッジは、前記ミドルブロックの踏面のプロファイルを前記ショルダーブロックまで延長した仮想プロファイルよりもタイヤ半径方向外側に突出しており、
前記複数のショルダーブロックのそれぞれにおいて、
前記仮想プロファイルからの前記内側エッジの突出量Pは、2.0mm以上であり、かつ、
前記突出量P(mm)、前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ周方向の長さL(mm)、及び、前記ショルダーブロックのゴム硬度Hs(°)からなる各パラメータの無次元量の積P×L×Hsが1900~3600である、
不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記内側エッジは、タイヤ周方向に平行に延びている、請求項1記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記ゴム硬度Hsは、47~58°である、請求項1又は2記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記ミドルブロックのゴム硬度Hmは、47~58°である、請求項1ないし3のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記突出量Pは、2.5~4.0mmである、請求項1ないし4のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記長さLは、14~18mmである、請求項1ないし5のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記ミドルブロックの踏面の前記プロファイルは、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状である、請求項1ないし6のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ軸方向の幅は、前記ミドルブロックの踏面のタイヤ軸方向の幅よりも小さい、請求項1ないし7のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記ショルダーブロックの踏面とそのタイヤ軸方向内側の側壁との間の角度は、前記ミドルブロックの踏面とそのタイヤ軸方向外側の側壁との間の角度より小さい、請求項1ないし8のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行用の自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、複数のブロックが設けられた不整地走行用の自動二輪車用タイヤが提案されている。特許文献1のタイヤでは、ショルダーブロックの内側エッジは、仮想トレッド面から突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、不整地走行用の自動二輪車用タイヤは、舗装路面走行用のタイヤに比べて、低い内圧の下で使用される傾向がある。特に、不整地でのトライアル競技用のタイヤは、例えば、30~40KPa程度の極めて低い内圧で用いられる。したがって、不整地走行用の自動二輪車用タイヤは、路面の凹凸に応じてトレッド部が容易に変形し、ショルダーブロック及びミドルブロックのそれぞれに大きな接地圧が作用し、ひいてはこれらが十分なグリップを発揮できる。
【0005】
低い内圧の下で使用される前記タイヤは、大きなキャンバー角が付与された状態では、ショルダーブロックの内側エッジに大きな接地圧が作用する一方、ミドルブロックのエッジが路面から浮き易く、ミドルブロックが十分なグリップを発揮しない傾向があった。
【0006】
発明者らは、種々の実験の結果、ショルダーブロックの寸法及びゴム硬度の関係を特定することにより、ショルダーブロックだけでなく、ミドルブロックも十分なグリップを発揮できるという知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、優れたグリップ性能を発揮し得る不整地走行用の自動二輪車用タイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用の自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、トレッド端を形成する複数のショルダーブロックと、前記ショルダーブロックのタイヤ軸方向内側に隣接した複数のミドルブロックとを含み、正規内圧で正規リムに装着されかつ無負荷である正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記複数のショルダーブロックの踏面のタイヤ軸方向の内側エッジは、前記ミドルブロックの踏面のプロファイルを前記ショルダーブロックまで延長した仮想プロファイルよりもタイヤ半径方向外側に突出しており、前記複数のショルダーブロックのそれぞれにおいて、前記仮想プロファイルからの前記内側エッジの突出量Pは、2.0mm以上であり、かつ、前記突出量P(mm)、前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ周方向の長さL(mm)、及び、前記ショルダーブロックのゴム硬度Hs(°)からなる各パラメータの無次元量の積P×L×Hsが1900~3600である。
【0009】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記内側エッジは、タイヤ周方向に平行に延びているのが望ましい。
【0010】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記ゴム硬度Hsは、47~58°であるのが望ましい。
【0011】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルブロックのゴム硬度Hmは、47~58°であるのが望ましい。
【0012】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記突出量Pは、2.5~4.0mmであるのが望ましい。
【0013】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記長さLは、14~18mmであるのが望ましい。
【0014】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記ショルダーブロックと前記ミドルブロックとの間の溝底面におけるゴム厚さは、前記ミドルブロックを含んだ前記トレッド部のゴム厚さの0.15~0.25倍であるのが望ましい。
【0015】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルブロックの踏面の前記プロファイルは、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状であるのが望ましい。
【0016】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ軸方向の幅は、前記ミドルブロックの踏面のタイヤ軸方向の幅よりも小さいのが望ましい。
【0017】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤにおいて、前記ショルダーブロックの踏面とそのタイヤ軸方向内側の側壁との間の角度は、前記ミドルブロックの踏面とそのタイヤ軸方向外側の側壁との間の角度より小さいのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤのトレッド部は、トレッド端を形成する複数のショルダーブロックと、前記ショルダーブロックのタイヤ軸方向内側に隣接した複数のミドルブロックとを含む。正規内圧で正規リムに装着されかつ無負荷である正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記複数のショルダーブロックの踏面のタイヤ軸方向の内側エッジは、前記ミドルブロックの踏面のプロファイルを前記ショルダーブロックまで延長した仮想プロファイルよりもタイヤ半径方向外側に突出している。前記複数のショルダーブロックのそれぞれにおいて、前記仮想プロファイルからの前記内側エッジの突出量Pは、2.0mm以上である。これにより、前記各ショルダーブロックの前記内側エッジが大きなグリップを提供する。
【0019】
発明者らは、種々の実験の結果、前記ショルダーブロックだけでなく前記ミドルブロックにも十分なグリップを発揮させるためには、前記ショルダーブロックを適度に変形させることにより、前記ミドルブロックにも大きな接地圧を作用させることが重要である点を見出した。また、発明者らは、前記ショルダーブロックの変形に関連する要素として、前記突出量P(mm)、前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ周方向の長さL(mm)、及び、前記ショルダーブロックのゴム硬度Hs(°)に着目し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
本発明は、前記複数のショルダーブロックのそれぞれにおいて、前記突出量P(mm)、前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ周方向の長さL(mm)、及び、前記ショルダーブロックのゴム硬度Hs(°)からなる各パラメータの無次元量の積P×L×Hsが1900~3600である。これにより、前記ショルダーブロックの前記内側エッジによって高いグリップが発揮される一方、前記ショルダーブロックが適度に変形することができる。このため、前記ミドルブロックの踏面のタイヤ軸方向の外側エッジにも大きな接地圧が作用し、前記ミドルブロックも十分なグリップを発揮する。以上のように、本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤは、前記ショルダーブロック及び前記ミドルブロックの双方によって、優れたグリップ性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態の不整地走行用の自動二輪車用タイヤを示す断面図である。
【
図3】
図1のミドルブロック及びショルダーブロックの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1として、トライアル競技用の後輪用のタイヤが例示される。このため、本実施形態のタイヤ1は、例えば、30~40kPaの低い内圧が充填された状態で用いられる。
図1は、タイヤ1の正規状態でのタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。
図2は、
図1のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図2のA-A線断面図が、
図1に示されている。
【0023】
前記「正規状態」とは、タイヤを正規リムにリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、又はETRTOであれば"Measuring Rim"を意味する。
【0025】
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味する。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、カーカス6と、ベルト層7とを含んでいる。カーカス6は、例えば、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4に埋設されたビードコア5に至るトロイド状に構成されている。ベルト層7は、例えば、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内方に配され、トレッド部2を補強している。これらカーカス6及びベルト層7は、公知の構成が好適に採用される。
【0027】
トレッド部2の2つのトレッド端Teの間の外表面は、タイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲し、溝底面9から隆起した複数のブロック10が設けられている。トレッド端Teは、例えば、トレッド部2に配されたブロック10の内、最もタイヤ軸方向外側に位置するブロックのタイヤ軸方向の最も外側のエッジを意味する。
【0028】
図2に示されるように、トレッド部2は、例えば、第1領域14、第2領域15及び第3領域16とを含んでいる。第1領域14は、トレッド端Teからトレッド展開半幅TWhの25%の領域である。第2領域15は、トレッド展開半幅TWhの50%の幅を有し、かつ、その中心がタイヤ赤道Cに位置する領域である。第3領域16は、第1領域14と第2領域15との間の領域である。トレッド展開半幅TWhは、トレッド部2を展開したときのタイヤ赤道Cからトレッド端Teまでの距離である。
【0029】
ブロック10は、例えば、ショルダーブロック11、ミドルブロック12及びクラウンブロック13を含む。ショルダーブロック11は、その図心が第1領域14に配され、トレッド端Teを形成している。ミドルブロック12は、その図心が第3領域16に配されている。クラウンブロック13は、その図心が第2領域15に配されている。本実施形態のクラウンブロック13は、例えば、タイヤ赤道C上に配されている。
【0030】
ミドルブロック12は、ショルダーブロック11のタイヤ軸方向内側に隣接している。ミドルブロック12は、少なくとも、ショルダーブロック11をタイヤ軸方向内側に延長した領域と重複する。本実施形態のミドルブロック12の図心は、ショルダーブロック11の図心に対してタイヤ周方向に位置ずれしている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0031】
図3には、ミドルブロック12及びショルダーブロック11の拡大断面図が示されている。
図3に示されるように、前記正規状態でのタイヤ回転軸を含む子午線断面において、ショルダーブロック11の踏面のタイヤ軸方向の内側エッジ20は、ミドルブロック12の踏面のプロファイルをショルダーブロック11まで延長した仮想プロファイル18よりもタイヤ半径方向外側に突出している。また、仮想プロファイル18からの内側エッジ20の突出量Pは、2.0mm以上である。これにより、各ショルダーブロック11の内側エッジ20が大きなグリップを提供する。
【0032】
発明者らは、種々の実験の結果、ショルダーブロック11だけでなくミドルブロック12にも十分なグリップを発揮させるためには、ショルダーブロック11を適度に変形させることにより、ミドルブロック12にも大きな接地圧を作用させることが重要である点を見出した。また、発明者らは、ショルダーブロック11の変形に関連する要素として、前記突出量P(mm)、ショルダーブロック11の踏面のタイヤ周方向の長さL(mm)、及び、ショルダーブロック11のゴム硬度(°)に着目し、本発明を完成させるに至った。
【0033】
本発明では、突出量P(mm)、ショルダーブロックの踏面のタイヤ周方向の長さL(mm)、及び、ショルダーブロックのゴム硬度Hs(°)からなる各パラメータの無次元量の積P×L×Hsが1900~3600である。なお、前記ゴム硬度Hsは、JIS-K6253に準拠したJIS-A硬度により示されるゴム硬度に相当する。
【0034】
図4には、本発明のタイヤの走行時の断面図が示されている。
図4に示されるように、本発明のタイヤは、ショルダーブロック11の内側エッジ20によってグリップが発揮される一方、ショルダーブロック11が適度に変形することができる。このため、ミドルブロック12のタイヤ軸方向の外側エッジ21にも大きな接地圧が作用し、ミドルブロック12も十分なグリップを発揮する。一方、例えば、
図5に示されるように、前記積P×L×Hsが3600を超える場合、ショルダーブロックaの適度な変形が期待できず、ミドルブロックbの外側エッジcが浮き上がる傾向がある。また、前記積P×L×Hsが1900よりも小さい場合、ショルダーブロックaが発揮するグリップが小さくなる傾向がある。
【0035】
以上のように、本発明の不整地走行用の自動二輪車用タイヤは、ショルダーブロック11及びミドルブロック12の双方によって、優れたグリップ性能を発揮できる。
【0036】
図3に示されるように、突出量Pは、望ましくは2.5mm以上、より望ましくは3.0mm以上であり、望ましくは4.5mm以下、より望ましくは4.0mm以下である。これにより、ショルダーブロック11及びミドルブロック12がバランス良くグリップを発揮する。
【0037】
前記ゴム硬度Hsは、好ましくは47°以上、より望ましくは50°以上であり、好ましくは58°以下、より好ましくは56°以下である。このようなゴム硬度Hsを有するショルダーブロック11は、低荷重又は高荷重のいずれの状態でも優れたグリップ性能を発揮する。
【0038】
ミドルブロック12のゴム硬度Hmは、例えば、47~58°である。本実施形態では、ミドルブロック12とショルダーブロック11とが同じゴム硬度で構成されている。
【0039】
図2に示されるように、ショルダーブロック11の内側エッジ20は、タイヤ周方向に平行に延びているのが望ましい。これにより、内側エッジ20がタイヤ軸方向に大きなグリップを発揮する。
【0040】
ショルダーブロック11の踏面のタイヤ周方向の長さLは、例えば、ショルダーブロック11の踏面の面積をタイヤ軸方向の最大の幅で除した値で特定されるのが望ましい。別の態様では、前記長さLは、例えば、ショルダーブロック11のタイヤ周方向の最大の長さで特定されても良い。
【0041】
前記長さLは、望ましくは12mm以上、より望ましくは14mm以上であり、望ましくは20mm以下、より望ましくは18mm以下である。
【0042】
本実施形態では、ショルダーブロック11のタイヤ周方向の長さがタイヤ軸方向内側に向かって漸増している。これにより、本実施形態のショルダーブロック11は、台形状の踏面を有している。
【0043】
ショルダーブロック11の踏面のタイヤ軸方向の幅W1は、ミドルブロックの踏面のタイヤ軸方向の幅W2よりも小さいのが望ましい。前記幅W1は、例えば、前記幅W2の0.70~0.85倍である。このようなショルダーブロック11は、適度に変形し易く、ミドルブロック12に作用する接地圧を大きくするのに役立つ。
【0044】
ミドルブロック12は、例えば、矩形状の踏面を有している。このようなミドルブロック12は、高い剛性を有し、とりわけトライアル走行で優れたグリップ性能が得られる。
【0045】
図3に示されるように、ミドルブロック12の踏面のプロファイルは、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状であるのが望ましい。
【0046】
ショルダーブロック11の踏面とそのタイヤ軸方向内側の側壁との間の角度θ1は、ミドルブロック12の踏面とそのタイヤ軸方向外側の側壁との間の角度θ2より小さいのが望ましい。望ましい態様では、前記角度θ1が鋭角とされる。また、前記角度θ2が鈍角とされる。このようなショルダーブロック11は、低荷重でも路面に食い込み易く、優れたグリップ性能を発揮する。
【0047】
ショルダーブロック11とミドルブロック12との間の溝底面23におけるゴム厚さt2は、ミドルブロック12を含んだトレッド部2のゴム厚さt1の0.15~0.25倍であるのが望ましい。これにより、前記溝底面22が適度に変形し易くなり、ショルダーブロック11とミドルブロック12とが協働してグリップ性能を高める。なお、前記ゴム厚さは、ベルト層7の外面から測定される。
【0048】
以上、本発明の一実施形態の不整地走行用の自動二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0049】
図1に示す基本構造をなし、かつ、
図2のトレッドパターンを有するのトライアル競技用の後輪タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、前記積P×L×Hsが1900~3600の範囲の外にあるタイヤが複数試作された。比較例のタイヤは、上述の構成を除き、
図1及び
図2で示されるものと同様の構成を具えている。各テストタイヤの低荷重時及び高荷重時におけるグリップ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
使用車両:排気量300cc トライアル競技専用二輪車
タイヤサイズ:120/100-18(後輪)
リムサイズ:2.15×18(後輪)
内圧:30kPa
テスト方法は以下の通りである。
【0050】
<低荷重時及び高荷重時のグリップ性能>
各テストタイヤを装着した車両でトライアルコースを実車走行したときの、低荷重時のグリップ性能(主にリアサスペンションのストローク量が60%未満の状態におけるグリップ性能である。)と、高荷重時のグリップ性能(主にリアサスペンションのストローク量が60%以上の状態におけるグリップ性能である。)とが、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、各グリップ性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0051】
【0052】
テストの結果、実施例のタイヤは、低荷重時及び高荷重時の双方において優れたグリップ性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0053】
2 トレッド部
11 ショルダーブロック
12 ミドルブロック
18 仮想プロファイル
20 内側エッジ
Te トレッド端