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  • 特許-缶体加工方法及び缶体加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】缶体加工方法及び缶体加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/26 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
B21D51/26 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019016061
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121337
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 靖広
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-188423(JP,A)
【文献】特開平02-220723(JP,A)
【文献】特許第5443161(JP,B2)
【文献】特開2003-200235(JP,A)
【文献】特開2012-040572(JP,A)
【文献】特開平10-094847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口された有底円筒形状の缶体の胴部開口側に縮径加工を施す缶体加工方法であって、
前記缶体の開口側に対峙するインナーツール及びアウターツールと、前記缶体の底面側に対峙するボトムツールとを有し、
前記インナーツール及び前記アウターツールと前記ボトムツールとの間に前記缶体を配置し、
前記アウターツールの位置が固定された状態で、前記インナーツール及び前記ボトムツールを前記缶体に向かって進行させて、前記ボトムツールで前記缶体の底部を保持して前記インナーツールを前記缶体の開口部に挿入し、
前記アウターツールの位置が固定され、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールの相対位置を固定した状態で、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールを前記アウターツールに向けて進行させ、前記アウターツールによって前記缶体の胴部開口側に外面から縮径加工を施し、
前記インナーツール及び前記アウターツールの位置を固定した状態で、前記缶体及び前記ボトムツールを後退させて、前記インナーツール及び前記アウターツールから前記缶体を引き抜くことを特徴とする缶体加工方法。
【請求項2】
一端が開口された有底円筒形状の缶体の胴部開口側に縮径加工を施す缶体加工装置であって、
前記缶体の開口側に対峙するインナーツール及びアウターツールと、前記缶体の底面側に対峙するボトムツールとを有し、
前記インナーツール及び前記ボトムツールをそれぞれ前記缶体に向かって進退させるツール駆動部と、前記ツール駆動部の動作を制御する駆動制御部を有し、
前記駆動制御部は、
縮径加工時には、前記アウターツールの位置が固定された状態で、前記インナーツール及び前記アウターツールと前記ボトムツールとの間に配置された前記缶体に向かって、前記インナーツール及び前記ボトムツールを進行させて、前記ボトムツールで前記缶体の底部を保持して前記インナーツールを前記缶体の開口部に挿入し、
前記アウターツールの位置が固定され、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールの相対位置を固定した状態で、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールを前記アウターツールに向けて進行させ、前記アウターツールによって前記缶体の胴部開口側に外面から縮径加工を施し、
引き抜き時には前記インナーツール及び前記アウターツールの位置を固定した状態で、前記缶体及び前記ボトムツールを後退させて、前記インナーツール及び前記アウターツールから前記缶体を引き抜くように構成されていることを特徴とする缶体加工装置。
【請求項3】
前記アウターツールの内面は、前記缶体の開口部を案内する導入部と、前記缶体の胴部開口側の縮径加工を行う縮径部及びランド部と、前記ランド部の奧に設けた逃げ部とを有し、
前記ランド部と前記逃げ部との半径方向距離(逃げ量)が、0.07mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の缶体加工装置。
【請求項4】
前記ランド部と前記逃げ部との半径方向距離(逃げ量)が、0.13mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の缶体加工装置。
【請求項5】
前記インナーツールの進退方向における前記アウターツールの前記ランド部の長さが、1mm以上、10mm以下であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の缶体加工装置。
【請求項6】
前記インナーツールの進退方向における前記アウターツールの前記ランド部の長さが、5mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の缶体加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端が開口された有底円筒形状の缶体の胴部開口側に縮径加工を施す缶体加工方法及び缶体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等を充填する缶体において、円形状に打ち抜いた板材に対して絞り・しごき加工などを施して有底円筒形状に成形し、さらに縮径加工等を行うものが公知である。
例えば、特許文献1には、缶体(100)の開口側(開口部103)に対峙するインナーツール(42)及びアウターツール(41)と、缶体(100)の底面側(102)に対峙するボトムツール(50)とを有し、インナーツール(42)を缶体(100)の開口部(103)に挿入し、アウターツール(41)によって缶体(100)の開口部(103)の外面から縮径加工を施すものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5851529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の縮径加工では、縮径加工後にインナーツール及びアウターツールを缶体から離脱させる際に、加工と逆の手順で、インナーツールとボトムツールと缶体が一体となってアウターツールに対して後退して、まずインナーツールを缶体から離脱させ、続けてインナーツールをボトムツールに対して後退して、アウターツールを缶体から離脱させる。
このような加工方法では、ボトル缶等の縮径加工の範囲が長いものでは、縮径工程の時間が長くなる。
縮径加工を、縮径加工ターレット上で行う場合、縮径工程の時間を長くするためにはターレットのピッチ円を大きくせざるを得ず、設備が大型化するという問題があった。
また、図1に示すように、縮径加工ターレット101を複数備えて搬送ターレット102で順次搬送しながら複数回の縮径加工を行うのが一般的であり、ボトル缶のように口部が細い場合は縮径量も大きくなるため、縮径加工ターレット101の数も多くする必要があり、各縮径加工ターレット101が大きくなるとさらに設備全体が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するものであり、縮径加工の範囲が長く、縮径量の大きい縮径加工であっても、設備が大型化することなく加工時間を短縮可能な缶体加工方法及び缶体加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る缶体加工方法は、一端が開口された有底円筒形状の缶体の胴部開口側に縮径加工を施す缶体加工方法であって、前記缶体の開口側に対峙するインナーツール及びアウターツールと、前記缶体の底面側に対峙するボトムツールとを有し、前記インナーツール及び前記アウターツールと前記ボトムツールとの間に前記缶体を配置し、前記アウターツールの位置が固定された状態で、前記インナーツール及び前記ボトムツールを前記缶体に向かって進行させて、前記ボトムツールで缶体の底部を保持して前記インナーツールを前記缶体の開口部に挿入し、前記アウターツールの位置が固定され、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールの相対位置を固定した状態で、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールを前記アウターツールに向けて進行させ、前記アウターツールによって前記缶体の胴部開口側に外面から縮径加工を施し、前記インナーツール及び前記アウターツールの位置を固定した状態で、前記缶体及び前記ボトムツールを後退させて、前記インナーツール及び前記アウターツールから前記缶体を引き抜くことにより、前記課題を解決するものである。
【0007】
また、本発明に係る缶体加工装置は、一端が開口された有底円筒形状の缶体の胴部開口側に縮径加工を施す缶体加工装置であって、前記缶体の開口側に対峙するインナーツール及びアウターツールと、前記缶体の底面側に対峙するボトムツールとを有し、前記インナーツール及び前記ボトムツールをそれぞれ缶体に向かって進退させるツール駆動部と、前記ツール駆動部の動作を制御する駆動制御部を有し、前記駆動制御部は、縮径加工時には、前記アウターツールの位置が固定された状態で、前記インナーツール及び前記アウターツールと前記ボトムツールとの間に配置された前記缶体に向かって、前記インナーツール及び前記ボトムツールを進行させて、前記ボトムツールで前記缶体の底部を保持して前記インナーツールを前記缶体の開口部に挿入し、前記アウターツールの位置が固定され、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールの相対位置を固定した状態で、前記缶体、前記インナーツール及び前記ボトムツールを前記アウターツールに向けて進行させ、前記アウターツールによって前記缶体の胴部開口側に外面から縮径加工を施し、引き抜き時には前記インナーツール及び前記アウターツールの位置を固定した状態で、前記缶体及び前記ボトムツールを後退させて、前記インナーツール及び前記アウターツールから前記缶体を引き抜くように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る缶体加工方法、及び、缶体加工装置によれば、インナーツール及びアウターツールの相対位置を固定した状態で、缶体及びボトムツールを後退させて、インナーツール及びアウターツールから缶体を引き抜くことにより、縮径工程の時間を短縮することが可能となり、範囲が長く、縮径量の大きい縮径加工であっても、縮径加工ターレットのピッチ円を大きくしたり、縮径加工ターレットの数を多くすることなく対応でき、設備が大型化することなく加工時間を短縮可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】缶体加工装置における縮径加工ターレットの配置説明図。
図2】加工ポケットの説明図。
図3】アウターツールの形状説明図。
図4】本発明の一実施形態に係る缶体加工装置の動作説明図
図5】従来の缶体加工装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る缶体加工装置は、一端が開口された有底円筒形状の缶体Kの開口部をボトル形状に縮径加工するため、例えば図1に示すように、缶体Kが複数の縮径加工ターレット101と搬送ターレット102を受け渡され、その間に順次加工するように配置されている。
各縮径加工ターレット101は、複数の加工ポケット103が設けられ、各加工ポケット103は、受け渡された缶体Kを下流の搬送ターレット102に受け渡すまでの間に縮径加工する。
【0011】
加工ポケット103は、図2に示すように、缶体Kの底部を支持するボトムツール110と、缶体Kの開口部の外周部に嵌合して縮径させるアウターツール130と、缶体Kの開口部に挿入されるインナーツール120とを備えている。
ボトムツール110には、缶体Kの底部を吸引保持するための吸引孔111が設けられている。
ボトムツール110、インナーツール120は、駆動機構(図示せず)により、缶体Kの上下方向にそれぞれ独立して往復動可能に構成されている。
【0012】
アウターツール130は、図3に示すように、内面に、缶体Kの開口部を案内する導入部131と、缶体Kの開口部の真円度を向上させるストレート部134と、缶体の胴部開口側の縮径加工を行う縮径部135及びランド部132と、ランド部132の奧に設けた逃げ部133とを有している。ただし、ストレート部134は必須ではなく、必要に応じて適宜設けられる。
ランド部132に対する逃げ部133の径方向距離である逃げ量CLは、0.07mm以上に設定され、0.13mm以上であるとさらに好適である。
逃げ量CLが0.07mm未満の場合、縮径加工後に缶体Kを引き抜く際アウターツール130及びインナーツール120と缶体Kの摩擦抵抗が大きくなり、引き抜き不良となる虞がある。
なお、逃げ量CLが大きすぎると、アウターツール130の外径が大きくなり、加工ポケット103のピッチが広くなり、縮径加工ターレット101のピッチ円が大きくなってしまうので、逃げ量CLを必要以上に大きくしなくてもよい。
【0013】
アウターツール130の進退方向におけるランド部132の長さLLは、1mm以上、10mm以下に設定され、5mm以下であるとさらに好適である。
ランド部132の長さLLが1mm未満の場合、縮径加工時に缶体Kとの接触距離が短くなり、開口端部にシワが発生する虞がある。
また、ランド部132の長さLLが10mmより大きい場合、縮径加工後に缶体Kを引き抜く際のアウターツール130及びインナーツール120と缶体Kの摩擦抵抗が大きくなり、引き抜き不良となる虞がある。
【0014】
以上のような一実施形態に係る缶体加工装置における縮径加工時の動作について説明する。
従来の缶体加工方法にならえば、まず、図5(a)に示すように、缶体Kの開口側に対峙するインナーツール120及びアウターツール130と、缶体Kの底面側に対峙するボトムツール110との間に、缶体Kが配置される。
つぎに、アウターツール130を固定したまま、インナーツール120及びボトムツール110を矢印で示すように缶体Kに向かって進行させて、図5(b)に示すように、ボトムツール110で缶体Kの底部を保持してインナーツール120を缶体Kの開口部に挿入する。
【0015】
ついで、缶体K、インナーツール120及びボトムツール110の相対位置を固定した状態で、アウターツール130に向けて進行させ、図5(c)に示すように、アウターツール130によって缶体Kの開口部の外面から縮径加工を施す。
縮径加工が完了すると、缶体K、インナーツール120及びボトムツール110の相対位置を固定した状態で、アウターツール130から離れる方向に進行させ、図5(d1)に示すように、缶体Kをアウターツール130から引き抜く。
最後に、インナーツール120及びボトムツール110を矢印で示すように缶体Kから離れる方向にて進行させて、図5(d2)に示すように、缶体Kからインナーツール120を引き抜き、缶体Kを解放して次工程に送る。
【0016】
これに対し、本発明に係る缶体加工方法によれば、まず、図4(a)に示すように、缶体Kの開口側に対峙するインナーツール120及びアウターツール130と、缶体Kの底面側に対峙するボトムツール110との間に、缶体Kが配置される。
つぎに、アウターツール130を固定したまま、インナーツール120及びボトムツール110を矢印で示すように缶体Kに向かって進行させて、図4(b)に示すように、ボトムツール110で缶体Kの底部を保持してインナーツール120を缶体Kの開口部に挿入する。
ついで、缶体K、インナーツール120及びボトムツール110の相対位置を固定した状態で、アウターツール130に向けて進行させ、図4(c)に示すように、アウターツール130によって缶体Kの開口部の外面から縮径加工を施す。この時、給気孔112より缶体Kに圧縮エアを供給し、缶体Kを陽圧化して缶胴部の座屈を防止しても良い。
【0017】
ここまでは、前述した図5によるものと同様であるが、本発明に係る缶体加工方法による引き抜きは、インナーツール120及びアウターツール130の相対位置を固定した状態で、缶体K及びボトムツール110を後退させて、図4(d)に示すように、インナーツール120及びアウターツール130から缶体Kを引き抜くことで、1動作で缶体Kを解放して次工程に送る。またこの時、給気孔112より缶体Kに圧縮エアを供給することで、引き抜きに必要な力を低減させ引き抜き不良を抑制している。
【0018】
このことで、図5(d2)におけるインナーツール120を後退させる動作が不要となり、縮径加工の範囲が長く、縮径量の大きい縮径加工であっても、設備が大型化することなく加工時間を短縮可能となる。
また、アウターツール130の内面に、缶体の開口部を案内する導入部131と、縮径加工を行う縮径部134及びランド部132と、ランド部の奧に設けた逃げ部133とを有することで、確実に縮径加工を施しつつ、インナーツール120及びアウターツール130から缶体Kを引き抜く際の摩擦抵抗が低減され、円滑に1動作で缶体Kを引き抜くことが可能となると共に、引き抜き時の圧縮エアの供給圧力を低く出来るためランニングコストを低減することができる。
さらに、逃げ量CL及びランド部132の長さLLを最適化することで、より確実に縮径加工を施しつつ円滑に1動作で缶体Kを引き抜くことが可能となる。
【0019】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態により限定されるものではない。

【符号の説明】
【0020】
101 ・・・ 縮径加工ターレット
102 ・・・ 搬送ターレット
103 ・・・ 加工ポケット
110 ・・・ ボトムツール
111 ・・・ 吸引孔
112 ・・・ 給気孔
120 ・・・ インナーツール
130 ・・・ アウターツール
131 ・・・ 導入部
132 ・・・ ランド部
133 ・・・ 逃げ部
134 ・・・ ストレート部
135 ・・・ 縮径部
CL ・・・ 逃げ量
K ・・・ 缶体
図1
図2
図3
図4
図5