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特許7211185接着剤組成物及びその製造方法、積層フィルム並びに包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びその製造方法、積層フィルム並びに包装体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20230117BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230117BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230117BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/04
B65D65/40 D
B32B27/00 D
B32B27/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019052923
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020152824
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土屋 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】尾内 良行
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-154363(JP,A)
【文献】特開2017-110043(JP,A)
【文献】国際公開第2013/027609(WO,A1)
【文献】特開平5-97156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B65D 65/40
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び紫外線吸収剤(C)を含有する接着剤組成物であって、下記(1)~(4)の条件の全てを満たす接着剤組成物。
(1)前記ポリエステルポリオール(A)は、酸価が0.8~15mgKОH/gであり、ガラス転移温度が-10℃~20℃であり、数平均分子量が4,000~50,000である。
(2)前記ポリエステルポリオール(A)を100質量%とした場合、前記ポリイソシアネート成分(B)の含有率が10~60質量%である。
(3)前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリイソシアネート成分(B)、及び前記紫外線吸収剤(C)の合計を100質量%とした場合、前記紫外線吸収剤(C)の含有率が10~50質量%である。
(4)前記紫外線吸収剤(C)が、酸化亜鉛を含み、前記酸化亜鉛の平均一次粒子径が10~80nmである。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(A)の構成単量体である酸成分(a1)とアルコール成分(a2)との合計100質量%中、芳香族単量体の含有率が35質量%以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記酸化亜鉛が、シロキサン結合を有する処理剤で処理されたものである、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記シロキサン結合を有する処理剤がハイドロゲンジメチコンを含む、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)とを含む主剤、及びポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤を含有し、
前記主剤における紫外線吸収剤(C)の体積換算のメジアン径D50値が50~300nmである、請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記接着剤組成物より形成される、波長350nmの光の透過率が1%である膜のヘイズ値が15%以下である、請求項1~5いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムであって、前記接着剤層が請求項1~6いずれか1項に記載の接着剤組成物より形成される層である、積層フィルム。
【請求項8】
第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムを袋状に成形してなる包装体であって、
前記接着剤層が請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物より形成される層である、包装体。
【請求項9】
ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び紫外線吸収剤(C)を含有する接着剤組成物の製造方法であって、下記(1)~(4)の条件の全てを満たし、且つ、ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)とを混合して紫外線吸収剤(C)を分散する工程を含む、接着剤組成物の製造方法。
(1)前記ポリエステルポリオール(A)は、酸価が0.8~15mgKОH/gであり、ガラス転移温度が-10℃~20℃であり、数平均分子量が4,000~50,000である。
(2)前記ポリエステルポリオール(A)を100質量%とした場合、前記ポリイソシアネート成分(B)の含有率が10~60質量%である。
(3)前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリイソシアネート成分(B)、及び前記紫外線吸収剤(C)の合計を100質量%とした場合、前記紫外線吸収剤(C)の含有率が10~50質量%である。
(4)前記紫外線吸収剤(C)が、酸化亜鉛を含み、前記酸化亜鉛の平均一次粒子径が10~80nmである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及びその製造方法、積層フィルム並びに包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品等の包装材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン等のプラスチックフィルムを多層ラミネートして複合化した積層体が用いられている。これらプラスチックフィルムをラミネートする接着剤として、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネート化合物からなるものが知られており、内容物が紫外線によって劣化するのを防ぐために、接着剤に紫外線吸収剤を添加する場合がある。
例えば特許文献1には、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネート化合物からなる、紫外線吸収性と接着剤特性とを兼ね備える接着剤が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/027609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベンゾフェノンのような有機系の紫外線吸収剤は、一般的に低分子化合物であるため、レトルト処理による抽出が発生する。一方、無機系の紫外線吸収剤は一般には分散安定性に劣り、ポリオール等との混合体とした場合に沈降や分離が発生しやすい傾向にある。
よって本発明の課題は、沈降や分離が発生せず分散安定性に優れ、可視光高透過性と紫外線高吸収性とを両立し、さらに接着性及び低抽出性に優れる接着剤組成物、並びに該組成物を用いた積層フィルム及び包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下の発明〔1〕~〔9〕に関する。
【0006】
〔1〕 ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び紫外線吸収剤(C)を含有する接着剤組成物であって、下記(1)~(4)の条件の全てを満たす接着剤組成物。
(1)前記ポリエステルポリオール(A)は、酸価が0.8~15mgKОH/gであり、ガラス転移温度が-10℃~20℃であり、数平均分子量が4,000~50,000である。
(2)前記ポリエステルポリオール(A)を100質量%とした場合、前記ポリイソシアネート成分(B)の含有率が10~60質量%である。
(3)前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリイソシアネート成分(B)、及び前記紫外線吸収剤(C)の合計を100質量%とした場合、前記紫外線吸収剤(C)の含有率が10~50質量%である。
(4)前記紫外線吸収剤(C)が、酸化亜鉛を含み、前記酸化亜鉛の平均一次粒子径が10~80nmである。
【0007】
〔2〕 前記ポリエステルポリオール(A)の構成単量体である酸成分(a1)とアルコール成分(a2)との合計100質量%中、芳香族単量体の含有率が35質量%以上である、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0008】
〔3〕 前記酸化亜鉛が、シロキサン結合を有する処理剤で処理されたものである、〔1〕又は〔2〕に記載の接着剤組成物。
【0009】
〔4〕 前記シロキサン結合を有する処理剤がハイドロゲンジメチコンを含む、〔3〕に記載の接着剤組成物。
【0010】
〔5〕 ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)とを含む主剤、及びポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤を含有し、
前記主剤における紫外線吸収剤(C)の体積換算のメジアン径D50値が50~300nmである、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0011】
〔6〕 前記接着剤組成物より形成される、波長350nmの光の透過率が1%である膜のヘイズ値が15%以下である、〔1〕~〔5〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0012】
〔7〕 第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムであって、前記接着剤層が〔1〕~〔6〕いずれか1項に記載の接着剤組成物より形成される層である、積層フィルム。
【0013】
〔8〕 第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムを袋状に成形してなる包装体であって、
前記接着剤層が〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の接着剤組成物より形成される層である、包装体。
【0014】
〔9〕 ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び紫外線吸収剤(C)を含有する接着剤組成物の製造方法であって、下記(1)~(4)の条件の全てを満たし、且つ、ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)とを混合して紫外線吸収剤(C)を分散する工程を含む、接着剤組成物の製造方法。
(1)前記ポリエステルポリオール(A)は、酸価が0.8~15mgKОH/gであり、ガラス転移温度が-10℃~20℃であり、数平均分子量が4,000~50,000である。
(2)前記ポリエステルポリオール(A)を100質量%とした場合、前記ポリイソシアネート成分(B)の含有率が10~60質量%である。
(3)前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリイソシアネート成分(B)、及び前記紫外線吸収剤(C)の合計を100質量%とした場合、前記紫外線吸収剤(C)の含有率が10~50質量%である。
(4)前記紫外線吸収剤(C)が、酸化亜鉛を含み、前記酸化亜鉛の平均一次粒子径が10~80nmである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、沈降や分離が発生せず分散安定性に優れ、可視光高透過性と紫外線高吸収性とを両立し、さらに接着性及び低抽出性に優れた接着剤組成物及びその製造方法、並びに該組成物を用いた積層フィルム及び包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の接着剤組成物は、ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び紫外線吸収剤(C)を含有し、下記(1)~(4)の条件の全てを満たすことを特徴とする。
(1)前記ポリエステルポリオール(A)は、酸価が0.8~15mgKОH/gであり、ガラス転移温度が-10℃~20℃であり、数平均分子量が4,000~50,000である。
(2)前記ポリエステルポリオール(A)を100質量%とした場合、前記ポリイソシアネート成分(B)の含有率が10~60質量%である。
(3)前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリイソシアネート成分(B)、及び前記紫外線吸収剤(C)の合計を100質量%とした場合、前記紫外線吸収剤(C)の含有率が10~50質量%である。
(4)前記紫外線吸収剤(C)が、酸化亜鉛を含み、前記酸化亜鉛の平均一次粒子径が10~80nmである。
【0017】
上述のとおり、本発明の接着剤組成物は、特定ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び所定の平均一次粒子径を有する酸化亜鉛を含む紫外線吸収剤(C)を含み、さらに、(A)~(C)の含有量の所定範囲とするものであり、前記特定ポリエステルポリオール(A)と、前記所定の平均一次粒子径を有する酸化亜鉛を含む紫外線吸収剤(C)と、を組み合わせることで、特定ポリエステルポリオール(A)が酸化亜鉛を含む紫外線吸収剤(C)の分散性を高め、紫外線吸収剤(C)の沈降や分離が抑制されて分散安定性に優れ、さらに該接着剤組成物を用いて得られる積層フィルムが、可視光高透過性と紫外線高吸収性とを両立し、且つ高い接着強度及び低抽出性を示すという優れた効果を発揮する。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
<ポリエステルポリオール(A)>
本発明の接着剤組成物は、ポリオール成分として酸価が0.8~15mgKОH/gであり、ガラス転移温度が-10℃~20℃であり、数平均分子量が4,000~50,000であるポリエステルポリオール(A)を含む。ポリエステルポリオール(A)は、後述する紫外線吸収剤(C)の分散性の観点から、酸価が0.8~15mg/KОHであることが重要であり、好ましくは2~6mgKОH/gである。また、接着力の観点から、ガラス転移温度が-10~20℃であることが重要であり、好ましくは0~10℃である。また、接着力や分散性の観点から、数平均分子量は4,000~50,000であることが重要であり、好ましくは4,000~20,000である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS-K-7121に準じて測定した値を用いる。また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算分子量である。
【0019】
ポリエステルポリオール(A)は、ポリエステルポリオール(A)の構成単量体である酸成分(a1)とアルコール成分(a2)とのエステル化反応、又はエステル交換反応によって製造することができ、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0020】
[酸成分(a1)]
酸成分(a1)としては、公知の酸成分を使用でき、芳香族単量体、脂環族単量体及び脂肪族単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸成分を用いることができる。
芳香族単量体としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、p-t-ブチル安息香酸又はそれらの酸無水物や低級エステル化物等が挙げられる。
脂環族単量体としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸又はそれらの酸無水物や低級エステル化物等が挙げられる。
脂肪族単量体としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸又はそれらの酸無水物や低級エステル化物等が挙げられる。
上記酸成分単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0021】
[アルコール成分(a2)]
アルコール成分(a2)としては公知のアルコール成分を使用でき、芳香族単量体、脂環族単量体及び脂肪族単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコール成分を用いることができる。
芳香族単量体としては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、2-フェノキシエタノール等が挙げられる。
脂環族単量体としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール等が挙げられる。
脂肪族単量体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
上記アルコール成分単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
また、ポリエステルポリオール(A)は、さらに酸無水物を反応させてもよく、該酸無水物も酸成分(a1)に含まれる。酸無水物としては、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物等が好適に用いられ、トリメリット酸エステル無水物としては、エチレングリコールアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。
【0023】
さらに接着力の観点から、ポリエステルポリオール(A)の構成単量体である酸成分(a1)とアルコール成分(a2)との合計100質量%中、芳香族単量体の含有率は35質量%以上であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上50質量%以下である。
ここで「芳香族単量体の含有率」とは、酸変性を含むポリステルポリオール(A)製造時に使用する全酸成分(a1)及び全アルコール成分(a2)の合計量に対する、芳香環を有する単量体の合計量の比率であり、下記式で表される。
「芳香族単量体の含有率(%)」=(芳香族系酸成分及び芳香族系アルコール成分の合計量)/(全酸成分(a1)及び全アルコール成分(a2)の合計量)×100
【0024】
また、ポリエステルポリオール(A)として、ポリイソシアネートを反応させたポリエステルポリウレタンポリオールを使用することもできる。
ポリエステルポリウレタンポリオールは、1分子中にウレタン結合を有するものであり、例えば、数平均分子量200~20,000のポリエステルポリオールとジイソシアネートとを、官能基比率(NCO/OH)が1未満の条件で反応させて得られるものが好ましく、より好ましくは、NCO/OHが0.9以下の条件で反応させて得られるものである。
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0025】
また、ポリエステルポリオール(A)としては、上記エステル化反応においてジアミン等のポリアミンを併用して得られるポリエステルアミドポリオールを使用することもできる。前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンが好適に用いられる。
【0026】
(その他ポリオール成分)
本発明の接着剤組成物は、上記ポリエステルポリオール(A)以外のその他ポリオール成分を含んでもよい。その他ポリオール成分としては、特に限定されるものではなく、例えばポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、又はフッ素系ポリオール等が挙げられる。
【0027】
<ポリイソシアネート成分(B)>
本発明の接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分(B)を含み、ポリエステルポリオール(A)を100質量%とした場合の、前記ポリイソシアネート成分(B)の含有率は10~60質量%である。接着力の観点から、ポリオール(A)に対するポリイソシアネート成分(B)の含有率が10~60質量%であることが重要であり、より好ましくは20~40質量%である。
【0028】
ポリイソシアネート成分(B)としては、例えば、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;
1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;
1,3-1,4-キシリレンジイソシアネート又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-2,6-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
トリフェニルメタン-4,4’,4’ ’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン等の有機トリイソシアネートや、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネート等の有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体;
上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート;
炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオールと上記ポリイソシアネート単量体との付加体;
分子量200~20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等と上記ポリイソシアネート単量体との付加体;
ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとをNCO/OHが1未満で反応させて得られるポリウレタンポリオールと上記ポリイソシアネート単量体の付加体;等が挙げられる。
これらポリイソシアネート化合物は、接着剤の用途により単独或いは2種以上の混合物として適宜用いることができる。
【0029】
<紫外線吸収剤(C)>
本発明の接着剤組成物には、紫外線吸収のために、紫外線吸収剤(C)として平均一次粒子径が10~80nmの酸化亜鉛を含有する。可視光高透過性と紫外線高吸収性の両立の観点から、酸化亜鉛の平均一次粒径が10~80nmであることが重要であり、より好ましくは10~50nmである。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて倍率1万倍以上で写真撮影し、自動画像処理装置を用いて体積基準の円相当径を算出することによって求めることができる。
【0030】
また、紫外線吸収剤(C)の含有率は、ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び前記紫外線吸収剤(C)の合計を100質量%とした場合に10~50質量%であることが好ましい。この範囲であると、紫外線吸収性に優れるため好ましい。より好ましくは、20~50質量%であり、特に好ましくは20~30質量%である。
【0031】
酸化亜鉛は、表面処理の有無に関わらず使用することができ、経時安定性の観点から、シロキサン結合を有する処理剤で処理された粒子であることが好ましい。シロキサン結合を有する表面処理剤としては、シリコーン及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくはシリコーンであり、特に好ましくはハイドロゲンジメチコンである。上記紫外線吸収剤は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明において使用可能な、ハイドロゲンジメチコンで処理された酸化亜鉛の市販品としては、堺化学工業株式会社製のFINEX-50S-LP2、FINEX-30S-LP2、FINEX50W-LP2、FINEX-52W-LP2、FINEX-30W-LP2、FINEX-33W-LP2、住友大阪セメント株式会社製のZnO-610Si(4)G、ZnO-650Si(5)G、ZnO-CXSi(2)G、ZnO-510SID、ZnO-650SID、SIH-10 ZnO-610Si(4)、GSIH-10 ZnO-510SIDM等が挙げられる。
【0033】
また、ハイドロゲンジメチコン以外のシロキサン結合を有する表面処理剤で表面処理された酸化亜鉛の市販品としては、テイカ株式会社製の堺化学工業株式会社製のFINEX-50W(シリカ処理)、FINEX-30W(シリカ処理)等が挙げられ、無処理の酸化亜鉛の市販品としては、テイカ株式会社製のMZ-300、MZ-500、堺化学工業株式会社製のFINEX-50、FINEX-30、住友大阪セメント株式会社製のZnO-510、ZnO-610、ZnO-650等が挙げられる。
【0034】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)とを含む主剤、及びポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤、を含有する2液型の接着剤組成物であることが好ましく、ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)とを混合して、アイガーミル、ペイントシェーカー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、サンドミル、ボールミル、コロイドミル等の公知の分散機や、ジスパー、ホモミキサー等の公知の攪拌機を用いて、紫外線吸収剤(C)を分散した後、ポリイソシアネート成分(B)を混合して製造することができる。
前記主剤において、ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)との質量比は、80/20~60/40であることが好ましい。また、前記主剤における紫外線吸収剤(C)の体積換算のメジアン径D50値は、50~300nmであると、可視光高透過性と紫外線高吸収性とを両立できるため好ましい。なお、メジアン径D50値は、レーザー光回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0035】
また、前記接着剤組成物より形成される、波長350nmの光の透過率が1%である膜のヘイズ値が15%以下であると、可視光高透過性と紫外線高吸収性とを両立できるため好ましい。より好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下である。
光の透過率は、紫外可視近赤外分光光度計により求めることができる。また、膜のヘイズ値は、JIS K-7136に準拠した測定により求めることができる。
【0036】
また、本発明の接着剤組成物の粘度は、常温~150℃好ましくは常温~100℃において好ましくは100~10,000mPa・sであり、より好ましくは100~5,000mPa・sである。無溶剤型で100~5,000mPa・sである場合は無溶剤型接着剤組成物として用いることができる。また、粘度調整のために接着剤組成物を有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものから適宜選択することができる。
【0037】
また、接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で後述の各種添加剤を含んでもよい。該添加剤は、ポリエステルポリオール(A)と紫外線吸収剤(C)との分散時やポリイソシアネート成分(B)の混合時に添加することが好ましい。
【0038】
<添加剤>
[シランカップリング剤]
接着剤組成物には、耐熱水性を高めるため、さらに、シランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、ポリエステルポリオール(A)に対して0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0039】
[リンの酸素酸]
また、接着剤組成物には、耐酸性を高めるため、さらに、リンの酸素酸又はその誘導体を含有させることができる。リンの酸素酸又はその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸又はその誘導体の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
【0040】
[リン酸エポキシ]
また、接着剤組成物は、金属に対する密着性能向上のために、リン酸エポキシを含有させることができる。リン酸エポキシとしては、DSM Resins社製URAD-DD79等が挙げられる。リン酸エポキシの添加量は、接着剤の固形分を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
【0041】
[その他の添加剤]
さらに、接着剤組成物には、酸化防止剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等のほか、硬化反応を調節するために、従来公知の触媒や添加剤等を必要に応じて含有させることができる。
【0042】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に、本発明の前記接着剤組成物より形成される接着剤層を積層してなる。具体的には、接着剤組成物を第一のプラスチックフィルムに塗布し、必要に応じて乾燥工程を経て溶剤を除去し、次いで塗布面に第二のプラスチックフィルムを積層し、常温又は加温下で接着剤層を硬化させて得られるものである。積層体の厚さは通常10μm以上であり、接着剤組成物の塗布量は通常、無溶剤型では1.0~5.0g/m、溶剤型では固形物量3.0~10.0g/mの範囲であることが好ましい。
【0043】
また、前記第一のプラスチックフィルム上には、印刷層が積層されていてもよい。印刷層は、印刷インキをグラビア、フレキソ又はインクジェット印刷したものを用いてもよく、この場合であっても良好な接着強度を示すことができる。前述の印刷インキは溶剤型、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキ等の従来公知のものを使用することがきる。
【0044】
第一のプラスチックフィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ナイロンフィルム、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ポリ塩化ビニリデン等のKコートフィルム、各種蒸着フィルム等のベースフィルムやアルミ箔等が挙げられ、第二のプラスチックフィルムとしては、上述したプラスチックフィルムに加え、さらに、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム等のシーラントフィルムが挙げられる。
【0045】
<包装体>
本発明の包装体は、前記積層フィルムを袋状に成形してなるものである。具体的には前記積層フィルムをヒートシールすることにより包装体の形態となる。また、包装体としての用途、必要とされる性能、包装体として要求される剛性や耐久性等を考慮した場合、必要に応じて他の層を積層してもよい。他の層を積層する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、他の層との層間に接着剤層を設けてドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法などにより積層することができる。接着剤としては、前記接着剤組成物を使用してもよいし、その他公知の接着剤を用いてもよい。
【0046】
具体的な積層体構成としては、一般の包装体や蓋材、詰め替え容器などに好適に用いることが可能な「第一のプラスチックフィルム層/接着層/第二のプラスチックフィルム層」等が挙げられる。これら積層体は、必要に応じて、印刷層やトップコート層などを有していても構わない。
【0047】
第一のプラスチックフィルム層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が用いられる。なかでも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムが好ましく用いられる。
【0048】
また、第一のプラスチックフィルム層は、バリア機能を付与するためにアルミニウム箔等の軟質金属箔の他、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着等の蒸着層;塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロン等からなる有機バリア層などを採用できる。
【0049】
第二のプラスチックフィルム層としては、従来から知られたシーラント樹脂を使用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0050】
本発明の包装体の態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、など種々ある。また、本発明の包装体に易開封処理や再封性手段を適宜設けてあってもよい。
【0051】
本発明の包装体は、主に食品、洗剤、薬剤を充填する包装体として工業的に使用することができる。具体的な用途としては、洗剤、薬剤として、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、医薬用タブレット等が挙げられる。また、上記の容器を包装する2次包装体にも使用できる。また、低抽出性に優れるため、溶出が問題となるような食品、医薬品用途の包装体としても好適に使用することができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0053】
(酸価)
酸価(AV)は、日本工業規格「K0070:1992.化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定された数値であり、ポリエステルポリオール(A)1gを完全に中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
【0054】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、セイコー電子工業株式会社製DSC(SSC-5200)を用いて、JIS-K-7121に準じた方法で測定を行った。
【0055】
(数平均分子量)
TSKgel superHZM-Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC-8220GPCシステムにより、溶離液にテトラヒドロフラン、流量毎分0.35ml、カラム温度40℃の条件にて測定した。サンプルは、2mgのポリエステルポリオール樹脂(A)を、2mlのテトラヒドロフランに溶解して調整した。また、数平均分子量は標準ポリスチレン換算で算出した。
【0056】
(平均一次粒子径)
紫外線吸収剤の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて倍率1万倍以上で写真撮影し、自動画像処理装置を用いて体積基準の円相当径を算出することによって求めた。
【0057】
<ポリエステルポリオールの合成>
(合成例1)ポリエステルポリオール(a-1)溶液
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、酸成分としてテレフタル酸150部、イソフタル酸250部及びアジピン酸220部を、アルコール成分として1,6-ヘキサンジオール50部、エチレングリコール85部、2-メチル-1,3-プロパンジオール230部及びトリメチロールプロパン10部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、0.13kPaで反応を継続し、余剰のアルコールを除去した後、無水トリメリット酸5部を加え、180℃で1時間保持し、酸価2mgKOH/g、数平均分子量10,000、Tg0℃、芳香族単量体含有量40.5質量%の、ポリエステルポリオール(a-1)を得、酢酸エチルで希釈して固形分濃度50質量%の溶液を得た。
【0058】
(合成例2、3、6~10、14)ポリエステルポリオール(a-2、3、6~10、14)溶液
表1に示す組成に変更した以外は合成例1と同様にして、ポリエステルポリオール(a-2、3、6~10、14)の溶液を得た。
【0059】
(合成例4)ポリエステルポリオール(a-4)溶液
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、酸成分としてテレフタル酸250部、イソフタル酸250部、アジピン酸80部を、アルコール成分として1,6-ヘキサンジオール100部、エチレングリコール90部、ネオペンチルグリコール180部、トリメチロールプロパン10部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、0.13kPaで反応を継続し、余剰のアルコールを除去した後、150℃の雰囲気中で、イソホロンジイソシアネート10部添加し、攪拌を継続した。IR分析にて未反応のNCO由来の吸収が消失するまで攪拌を続けた後、無水トリメリット酸42部を添加し、180℃で1時間保持し、酸価が13.1mgKOH/g、数平均分子量21,000、Tg20℃、芳香族単量体含有量54.2質量%の、ウレタン結合を有するポリエステルポリオール(a-4)を得、酢酸エチルで希釈して固形分濃度50質量%の溶液を得た。
【0060】
(合成例5、11~13)ポリエステルポリオール(a-5、11~13)溶液
表1に示す組成に変更した以外は合成例4と同様にして、ウレタン結合を有するポリエステルポリオール(a-5、11~13)の溶液を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
表1中の略称を以下に示す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
ADA:アジピン酸
TMA:無水トリメリット酸
TMEG:エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート
HD:1,6-ヘキサンジオール
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
DEG:ジエチレングリコール
TMP:トリメチロールプロパン
IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0063】
<ポリオール組成物(主剤)の調製>
(調整例1)ポリオール組成物(A-1)
固形分濃度50質量%のポリエステルポリオール(a-1)の溶液140部(ポリエステルポリオール(a-1)を70部含む)、酸化亜鉛1(FINEX-50S-LP2、堺化学工業(株)製)30部、及び酢酸エチル30部を、攪拌混合しサンドミルで練肉し、固形分濃度50質量%のポリオール組成物(A-1)を得た。
【0064】
(調整例2~20)ポリオール組成物(A-2~20)
表2の組成に変更した以外は調整例1と同様にして、ポリオール組成物(A-2~20)を得た。
【0065】
<ポリオール組成物(主剤)の評価>
得られたポリオール組成物について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0066】
(初期粒度分布(メジアン径D50値))
D50値は、動的光散乱式粒子径分布測定装置 マイクロトラック・ベル株式会社製Nanotrac Wave2を用いて、体積換算のメジアン径を測定した。
【0067】
(経時安定性)
ポリオール組成物を蓋付きガラス瓶に入れ、温度40℃の条件下で1ヶ月間保存した。保存後のポリオール組成物について、外観観察と、上述の初期粒度分布と同様にして体積換算のメジアン径を測定し、保存前後での変化率を算出した。結果を基に以下の基準で評価した。なお、経時安定性が使用不可レベルのものは、接着剤組成物としての実用性を有していないため、接着剤組成物の製造及び評価を実施しなかった。
○:紫外線吸収剤の分離や底面への沈降がなく、D50変化率が±20%未満である(良好)
△:紫外線吸収剤の分離や底面への沈降がなく、D50変化率が±20%以上である(使用可能)
×:紫外線吸収剤の分離又は底面への沈降がある(使用不可)
【0068】
【表2】
【0069】
表2中紫外線吸収剤を以下に示す。
酸化亜鉛1: ハイドロゲンジメチコンで処理された酸化亜鉛、FINEX-50S-LP2(堺化学工業株式会社製)、平均一次粒子径20nm。
酸化亜鉛2: シリカで処理された酸化亜鉛、FINEX-30W(堺化学工業株式会社製)、平均一次粒子径50nm。
酸化亜鉛3: 無処理の酸化亜鉛、FINEX-50(堺化学工業株式会社製):酸化亜鉛、平均一次粒子径20nm。
酸化亜鉛4: ハイドロゲンジメチコンで処理された酸化亜鉛、FINEX-25-LPT(堺化学工業株式会社製)、平均一次粒子径85nm。
二酸化チタン1: 無処理の二酸化チタン、STR-100N(堺化学工業株式会社製)、平均一次粒子径20nm。
酸化ビスマス1: 無処理の酸化ビスマスナノ粒子(関東化学株式会社製)、平均一次粒子径20nm。
【0070】
<接着剤組成物の製造>
[実施例1]
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、調整例1で得た固形分濃度50質量%のポリオール組成物(A-1)100部、ポリイソシアネート成分(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(HDI-ビウレット)の酢酸エチル希釈液(不揮発分95質量%)を7部、酢酸エチル34.6部を配合し、固形分濃度40質量%の接着剤組成物1を得た。
【0071】
[実施例2~15、比較例1~7]
表3記載の組成に変更した以外は実施例1と同様にして、各々固形分濃度40質量%の接着剤組成物を得た。
【0072】
[比較例8]
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得た固形分濃度50質量%のポリエステルポリオール(a-1)溶液70部、有機系紫外線吸収剤(シプロ化成(株)製「SEESORB106」、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン)を15部、ポリイソシアネート成分(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(HDI-ビウレット)の酢酸エチル希釈液(不揮発分95質量%)を7部、酢酸エチル49.6部を配合し、固形分濃度40質量%の接着剤組成物を得た。
【0073】
<接着剤組成物の評価>
得られた接着剤組成物について、以下の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0074】
(ヘイズ値評価)
基材(PETフィルム、東洋紡株式会社製、厚み50μm)上に、接着剤組成物より形成される接着剤層の波長350nmの光の透過率が1%となる膜厚にて、接着剤組成物を塗布・乾燥して、基材フィルム上に接着剤層を積層した塗工フィルムを得た。得られた塗工フィルムのヘイズ値を、TOYOSEKI製HAZE-GRAD2を用いて測定し、塗工フィルムのヘイズ値から、基材フィルム単独のヘイズ値を除した値を、接着剤層のヘイズ値とした。
【0075】
(積層フィルムの作製)
接着剤組成物を、常温下でラミネーターを用いて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、塗工速度200m/分、固形分塗布量3.0g/mで塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面を厚さ70μmの未延伸ポリエチレン(CPP)フィルムのコロナ放電処理面と貼り合せ、40℃で3日間保温し、PETフィルム/接着剤層/CPPフィルムの積層フィルムを作製した。
【0076】
(可視光透過性)
得られた積層フィルムから40mm×20mmの大きさの試験片を切り取り、日本分光株式会社製 V―550を用いて、大気中、室温条件下で、積層フィルムの平均可視光透過率(380-700nm)を測定した。得られた可視光透過率を基に、以下の基準で評価した。
〇:70%以上(良好)
△:50%以上70%未満(使用可能)
×:50%未満(使用不可)
【0077】
(紫外線吸収性)
得られた積層フィルムから40mm×20mmの大きさの試験片を切り取り、日本分光株式会社製 V-550を用いて、大気中、室温条件下で、積層フィルムの平均紫外線透過率(300-380nm)を測定した。得られた紫外線透過率を基に、以下の基準で評価した。
〇:10%未満(良好)
△:10%以上20%未満(使用可能)
×:20%以上(使用不可)
【0078】
(接着強度(初期))
得られた積層体から15mm×300mmの大きさの試験片を切り取り、引張り試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%RHの条件下で、T型剥離により剥離速度30cm/分で、PETフィルム/CPPフィルム間の接着強度(N/15mm)を測定した。5回測定した平均値を初期の接着強度とし、以下の基準で評価した。
〇:10N以上(良好)
△:3N以上、10N未満(使用可能)
×:3N未満(使用不可)
【0079】
(包装体の作製、接着強度(レトルト後))
得られた積層体を用いて、10cm×20cmのパウチを作製し、内容物として超純水を100ml加えて閉封し、(株)日坂製作所製「RCS-40RTGN」高温高圧調理殺菌試験機により、10r.p.m.、135℃、30分、3MPaの加圧下で熱水殺菌を行った。熱水殺菌後の積層体について、前記接着強度(初期)と同様の方法で接着強度を測定した。5回測定した平均値をレトルト後の接着強度とし、以下の基準で評価した。
〇:10N以上(良好)
△:3N以上、10N未満(使用可能)
×:3N未満(使用不可)
【0080】
(レトルト後の内容物抽出性)
上述のレトルト処理を行った積層体の内容物を取り出し、150℃で水分を揮発させ、残分を秤量することで抽出量を測定し、以下の基準で評価した。
〇:抽出量が100ppm未満である(使用可能)
×:抽出量が100ppm以上である(使用不可)
【0081】
【表3】
【0082】
表3中の略称を以下に示す。
HDI-ビウレット:ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体
TDI-TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
IPDI-TMP:イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
XDI-TMP:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
IPDI-TMP/XDI-TMP:IPDI-TMPとXDI-TMPとの6:4(質量比)の混合物
【0083】
表3から、特定ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び所定の平均一次粒子径を有する酸化亜鉛を含む紫外線吸収剤(C)を含み、さらに、(A)~(C)の含有量の所定範囲である本願発明の接着剤組成物は、紫外線吸収剤(C)の分散安定性に優れ、また、該接着剤組成物を用いて得られる積層フィルムは、可視光高透過性と紫外線高吸収性とを両立し、接着性に優れ、かつ低抽出性であることが示された。
特に、ハイドロゲンジメチコンで処理された酸化亜鉛を用いると、処理されていない酸化亜鉛やシリカ処理された酸化亜鉛を用いた場合と比較して、可視光透過率に優れていた(実施例1、7、8)。また、芳香族単量体含有量が35質量%以上であると、35質量%未満である場合と比較して、特にレトルト後の接着強度に優れていた(実施例1、14、15)。
【0084】
一方比較例1は、ポリイソシアネート成分が少ないため耐熱性が低下し、レトルト後接着力が低下し、比較例2はポリイソシアネート成分が多いため接着剤組成が硬くなり初期接着力が低下し、比較例3は屈折率の高い酸化チタンを用いたことでヘイズ増加し、比較例4は平均一次粒径が大きくなることでヘイズ増加し、比較例5ではTgの高いポリエステルポリオール (a-9) を用いたため初期接着力が低下し、比較例6ではTgの低いポリエステルポリオール (a-10) を用いたためレトルト後接着力が低下し、比較例7では分子量の高いポリエステルポリオール(a-13)を用いたためレトルト後接着力が低下し、比較例8では有機系の紫外線吸収剤分子量を用いたためレトルト後の抽出量が増加した。