IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排気浄化装置 図1
  • 特許-排気浄化装置 図2
  • 特許-排気浄化装置 図3
  • 特許-排気浄化装置 図4
  • 特許-排気浄化装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20230117BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230117BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
F01N3/023 K ZAB
F02D45/00
F01N3/24 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019056956
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159240
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築城 政隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
(72)【発明者】
【氏名】幸田 逸男
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-83036(JP,A)
【文献】特開2002-303123(JP,A)
【文献】特開2003-155916(JP,A)
【文献】特開2006-77761(JP,A)
【文献】特開2006-214312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
F02D 45/00
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の排気が流れる排気通路に配置され、前記排気に含まれる微粒子を捕集するフィルタ部と、
前記排気通路において、前記フィルタ部の上流および下流の前記排気の温度差を測定する温度差測定部と、
前記フィルタ部で捕集された前記微粒子に含まれる不燃性粒子の堆積量と、前記フィルタ部の上流と下流での前記排気の温度差との対応関係を前記車両の加速度に応じて示すマップを格納するマップ格納部と、
前記微粒子に含まれる可燃性粒子を前記フィルタ部から除去して前記フィルタ部を再生させる再生制御部と、
前記再生制御部により再生が実施された以後、所定期間内に前記フィルタ部に堆積した前記不燃性粒子の堆積量を前記排気の温度差に基づいて推定する堆積量推定部と、を備える
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記車両の加速度を検出する加速度検出部と、
前記内燃機関の温度を含む前記車両の走行状況を検出する走行状況検出部と、を備え、
前記堆積量推定部は、前記内燃機関の温度が所定温度以上であり、かつ前記車両の加速度が所定加速度以下であると判定された状態が所定時間以上継続している定常運転状態である場合に、前記車両の加速度に応じて前記マップを照会して、前記不燃性粒子の堆積量を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記堆積量推定部は、前記排気の温度差と、前記定常運転状態において前記フィルタ部に前記不燃性粒子が堆積されていない場合における前記排気の温度差との比較に基づいて、前記不燃性粒子の堆積量を推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記定常運転状態は、前記車両が停止していることをさらに要件とする
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記堆積量推定部は、推定した前記不燃性粒子の堆積量と、所定閾値との比較に基づいて、前記不燃性粒子の堆積に伴って要する警告を行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気を浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば車両に搭載されるガソリンエンジンの排気は、大気汚染の原因となる微粒子(PM:Particulate Matter)を含んでいる。微粒子は、例えばカーボン(煤)やエンジンオイル由来の灰分(アッシュ)などの粒子状物質の総称である。このため、ガソリンエンジンが搭載された車両には、排気を浄化する排気浄化装置が備えられている(特許文献1参照)。排気浄化装置は、ガソリンエンジンの排気中から微粒子を除去し、微粒子除去後のクリーンガスを大気中に放出する。
【0003】
排気浄化装置は、排気を浄化するためのフィルタ(例えば、ガソリンパティキュレートフィルタ)を備えて構成され、フィルタで排気から微粒子を捕集し、排気中から除去する。
【0004】
フィルタで微粒子を捕集し続けると、堆積した微粒子によってフィルタに目詰まりが生じ、例えば排気圧の増大によって燃費を低下させるおそれがある。このため、フィルタは、微粒子を適切に捕集可能な状態に適宜再生される。再生時には、例えば捕集された微粒子を燃焼させ、フィルタから除去する。しかしながら、この時、可燃性粒子である煤は、燃焼されて除去されるが、不燃性粒子であるアッシュは、燃焼されずにそのままフィルタに堆積される。アッシュは、主にリン、亜鉛、カルシウム化合物で構成される。アッシュの堆積が進むと、いずれはフィルタの保守や交換などが必要になる。
【0005】
アッシュの堆積に伴うフィルタの保守や交換などの要否を適切に判断するためには、フィルタにおけるアッシュの堆積量を精度よく推定する必要がある。例えば、フィルタが目詰まりすると、フィルタへの排気の入口側と出口側の圧力に差が生じる。具体的には、入口側の圧力が高く、出口側の圧力が低くなり、微粒子堆積量が増えるにつれて両者の差圧は大きくなる。したがって、このような差圧との対応関係によれば、アッシュ堆積量を推定することは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-2213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アッシュの堆積量が少ない段階(堆積の初期段階)では、排気の差圧が小さく、差圧に基づいて堆積量を推定することが難しい。また、アッシュの堆積態様、例えば偏りなどによっても、堆積量の推定誤差が生じやすい。このため、差圧による推定に代えてもしくはこれを補完して、アッシュの堆積量を推定することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排気浄化装置は、フィルタ部と、温度差測定部と、マップ格納部と、再生制御部と、堆積量推定部とを備える。フィルタ部は、車両の内燃機関の排気が流れる排気通路に配置され、排気に含まれる微粒子を捕集する。温度差測定部は、排気通路において、フィルタ部の上流および下流の排気の温度差を測定する。マップ格納部は、フィルタ部で捕集された微粒子に含まれる不燃性粒子の堆積量と、フィルタ部の上流と下流での排気の温度差との対応関係を車両の加速度に応じて示すマップを格納する。再生制御部は、微粒子に含まれる可燃性粒子をフィルタ部から除去してフィルタ部を再生させる。堆積量推定部は、再生制御部により再生が実施された以後、所定期間内にフィルタ部に堆積した不燃性粒子の堆積量を排気の温度差に基づいて推定する。
【0009】
さらに、排気浄化装置は、車両の加速度を検出する加速度検出部と、内燃機関の温度を含む車両の走行状況を検出する走行状況検出部とを備える。堆積量推定部は、内燃機関の温度が所定温度以上であり、かつ車両の加速度が所定加速度以下であると判定された状態が所定時間以上継続している定常運転状態である場合に、車両の加速度に応じてマップを照会して、不燃性粒子の堆積量を推定する。
【0010】
堆積量推定部は、排気の温度差と、定常運転状態においてフィルタ部に不燃性粒子が堆積されていない場合における排気の温度差との比較に基づいて、不燃性粒子の堆積量を推定する。
【0011】
定常運転状態は、車両が停止していることをさらに要件とする。
【0012】
堆積量推定部は、推定した不燃性粒子の堆積量と、所定閾値との比較に基づいて、不燃性粒子の堆積に伴って要する警告を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排気浄化装置によれば、排気の差圧による推定に代えてもしくはこれを補完して、アッシュの堆積量を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の概略構成を模式的に示すブロック図。
図2】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置において、一定速度での走行時におけるアッシュの堆積量と排気の温度差(入口温度と出口温度の差)との関係を示すマップの一例を示す図。
図3】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置におけるアッシュ堆積量推定処理の前提となる車速、排気の入口温度と出口温度、排気温度差のそれぞれの時間変化の一例を示す図。
図4】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置における排気浄化制御の流れを示すフロー図。
図5】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置におけるフィルタの再生処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置について、図1から図5を参照して説明する。本実施形態の排気浄化装置は、内燃機関の排気を浄化する装置である。内燃機関は、例えば車両に搭載された各種のエンジンであり、本実施形態ではガソリンエンジンを適用する。ただし、ディーゼルエンジンやハイブリッド車に搭載されたエンジンなどであっても構わない。車両は、自家用の乗用自動車、あるいはトラックやバスなどの事業用自動車のいずれであってもよく、用途や車種は特に問わない。また、右ハンドル車、左ハンドル車のいずれであってもよい。
【0016】
図1は、本実施形態の排気浄化装置1の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、排気浄化装置1は、エンジン2の燃焼室21から排出される排気を浄化する構成となっている。
【0017】
エンジン2の燃焼室21には、吸気弁22を開いて吸気通路3から吸気が吸入される。燃焼室21への吸気量は、吸気絞り弁23の開閉によって調整される。次いで、加熱圧縮された吸気にインジェクタ24から燃焼室21に向けて燃料(ガソリン)が噴射される。続いて、点火プラグ25が点火し、空気と燃料を含む混合気が燃焼室21で燃焼する。混合気の燃焼により、燃焼室21内でピストン26が往復運動し、このエネルギーがピストン26に連結されたクランクシャフト27の回転運動に変換されて出力される。燃焼後の混合気(排気)は、排気弁28を開いて燃焼室21から排気通路4を通して排出され、排気浄化装置1で浄化された後に大気中へ放出される。なお、本実施形態では、エンジン2をガソリン直噴型とするが、ポート噴射型やディーゼルエンジンであってもよい。
【0018】
エンジン2は、排気通路4から分岐して排気を燃焼室21へ循環させる排気循環路5を有している。循環気は、排気循環路5に設けられた循環気クーラやターボチャージャ(いずれも図示省略)などを経由し、循環気弁6の開閉によって吸気通路3の最下流などに導入される。
【0019】
排気浄化装置1は、触媒部11と、フィルタ部12と、温度差測定部13と、圧力測定部14とを備える。触媒部11およびフィルタ部12は、排気を通流させる通気路11a,12aを内部に有する略筒状の構造体であり、燃焼室21と繋がる排気通路4の途中に配置され、排気通路4の一部を構成する。なお、本実施形態では、触媒部11とフィルタ部12を別体としているが、これらは一体化させてもよい。いずれの場合も、触媒部11を排気の流れの上流側、フィルタ部12を下流側に配置すればよいが、これとは逆の配置であってもよい。
【0020】
触媒部11は、排気通路4に配置され、排気中に含まれる炭化水素や一酸化炭素を触媒11cにより酸化除去するとともに、一酸化窒素を還元して窒素を生成させる。また、触媒部11は、燃焼室21で燃焼されなかった燃料(ガソリン)やエンジンオイルの燃え残りなどを酸化させて除去する。
【0021】
フィルタ部12は、排気通路4に配置され、燃焼室21から排出された排気に含まれる微粒子をフィルタ(例えば、ガソリンパティキュレートフィルタ)12fで捕集して除去し、排気を浄化する。微粒子(PM:Particulate Matter)は、粒子状物質の総称であるが、本実施形態ではカーボン(煤)やエンジンオイル由来の灰分(アッシュ)などを含み、フィルタ12fに捕集されて堆積される物質とする。煤は可燃性粒子、アッシュは不燃性粒子である。フィルタ12fの構成は特に限定されないが、例えば炭化ケイ素やコージライトなどを素材とした多孔質セラミックからなるウォールフロー型のフィルタとして構成できる。フィルタ12fを通過した排気は、微粒子が除去され、浄化された状態で排気浄化装置1から流出する。ただし、捕集された微粒子がフィルタ12fに堆積していくため、フィルタ12fは徐々に目詰まりする。このため、堆積した微粒子、具体的には煤を適宜燃焼させてフィルタ12fから取り除き、微粒子を適切に捕集可能な状態にフィルタ12fを再生させねばならない。
【0022】
温度差測定部13は、排気通路4において、フィルタ部12の上流および下流の排気の温度差を測定する。本実施形態において、温度差測定部13は、2つの温度センサ13a,13bを有する。第1の温度センサ13aは、排気通路4のフィルタ部12の上流で排気の温度を測定する。一例として、第1の温度センサ13aは、排気通路4におけるフィルタ部12の入口12iの近傍に配置される。一方、第2の温度センサ13bは、排気通路4のフィルタ部12の下流で排気の温度を測定する。一例として、第2の温度センサ13bは、排気通路4におけるフィルタ部12の出口12oの近傍に配置される。入口12iは、排気通路4からフィルタ部12への排気の流入口であり、出口12oは、フィルタ部12から排気通路4への排気の流出口である。入口12iからフィルタ部12に流入した排気は、フィルタ12fを通過して出口12oから排気通路4に流出する。以下、第1の温度センサ13aで測定された排気温度を入口温度、第2の温度センサ13bで測定された排気温度を出口温度という。温度差測定部13は、2つの温度センサ13a,13bで測定されたそれぞれの排気温度に基づいて、入口温度と出口温度の差、すなわちフィルタ部12の上流の排気温度と下流の排気温度の差を検出する。温度差測定部13で検出された入口温度、出口温度、およびこれらの温度差のデータは、有線もしくは無線を介して、後述する制御部7に送られる。
【0023】
圧力測定部14は、排気通路4を流れる排気の圧力を測定する。本実施形態において、圧力測定部14は、2つの圧力センサ14a,14bを有する。第1の圧力センサ14aは、排気通路4のフィルタ部12の上流で排気の圧力を測定する。一例として、第1の圧力センサ14aは、排気通路4におけるフィルタ部12の入口12iの近傍に配置される。一方、第2の圧力センサ14bは、排気通路4のフィルタ部12の下流で排気の圧力を測定する。一例として、第2の圧力センサ14bは、排気通路4におけるフィルタ部12の出口12oの近傍に配置される。圧力測定部14は、2つの圧力センサ14a,14bで測定されたそれぞれの排気圧力に基づいて、フィルタ部12の上流の排気圧と下流の排気圧の差を検出する。圧力センサ14a,14bで測定されたそれぞれの排気圧およびこれらの圧力差(差圧)のデータは、有線もしくは無線を介して、後述する制御部7に送られる。
【0024】
排気浄化装置1は、排気の浄化を制御する制御部7を備えている。制御部7は、CPU、メモリ、記憶装置、入出力回路、タイマなどを含んで構成される。例えば、制御部7は、制御に関する各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理を行う。処理結果に基づき、制御部7は、排気浄化制御を行う。制御部7は、車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)として構成されていてもよいし、車両ECUとは独立して構成されていてもよい。
【0025】
図1に示すように、制御部7は、具体的な制御を実行するため、検出部71(加速度検出部71aおよび走行状況検出部71b)、マップ格納部72、堆積量推定部73、再生制御部74を備える。
【0026】
検出部71は、排気浄化制御に寄与する車両の走行状況を検出し、各種の情報(検出データ)を取得する。車両は、排気浄化装置1が搭載された自車両である。検出部71は、堆積量推定部73および再生制御部74に対して検出データを適宜与える。検出データには、車両の加速度およびエンジン2の温度が含まれる。したがって、検出部71は、加速度検出部71aと走行状況検出部71bを備える。加速度検出部71aは、例えば加速度センサを有し、車両の加速度を検出する。走行状況検出部71bは、例えばエンジン2の冷却水温やエンジンオイルの温度を検出する各種のセンサを有し、エンジン2の温度を含む車両の走行状況を検出する。
【0027】
マップ格納部72は、フィルタ部12に堆積したアッシュの堆積量を推定する際に用いるマップ72mを格納して管理する。マップ72mは、アッシュの堆積量と排気の温度差(入口温度と出口温度の差)との関係を、車両の加速度に応じて示す。アッシュの堆積量と排気の温度差との関係を示すレコードは、適宜更新(追加、変更、削除)され、マップ72mは、常に最新の情報に維持される。
【0028】
図2には、マップ72mの一例を示す。図2において、L21,L22,L23は、アッシュの堆積量と排気の温度差との対応関係をそれぞれ示している。L21は車両がアイドル状態である場合、L22は車両が所定加速度以下で低速走行している場合、L23は車両が所定加速度以下で高速走行している場合における対応関係である。アイドル状態は、暖機運転が終了し、エンジン2の温度が所定温度以上で車両が停止している状態である。所定温度(以下、基準温度という)は、エンジン2が暖機したとみなせる温度であり、例えばエンジン2の冷却水温の値として設定される。エンジン2の冷却水温の値であれば、基準温度は60℃程度である。また、エンジン2の温度をエンジンオイルの温度で測定してもよく、この場合には基準温度をエンジンオイルの温度の値として設定する。所定加速度(以下、基準加速度という)は、例えば0.02m/sから0.07m/s程度の範囲内であり、一例として0.05m/sである。図2に示すように、排気温度差は、アッシュ堆積量が少ないほど大きく、多いほど小さくなり、所定量に達するとゼロになる。
【0029】
堆積量推定部73は、検出部71の検出結果、温度差測定部13の測定結果、およびマップ72mに基づいて、フィルタ12fにおけるアッシュの堆積量を推定する。堆積量推定部73は、例えばプログラムとしてメモリに格納されている。なお、かかるプログラムをクラウド上に格納し、制御部7をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。この場合、制御部7は、クラウドとの通信モジュールなどを備えた構成とする。
【0030】
堆積量推定部73は、再生制御部74により後述するようなフィルタ12fの再生が実施された以後、所定期間内に所定条件の成否に応じてアッシュ堆積量の推定を実施する。堆積量推定部73は、所定条件下において、車両の加速度に対応するマップ72mを照会し、排気温度差に基づいてアッシュ堆積量を推定する。所定条件は、エンジン2の温度が基準温度以上で、かつ車両の加速度が基準加速度以下である状態が所定時間以上継続している場合である。本実施形態では、所定条件を満たした車両の運転状態を定常運転状態と規定する。基準温度および基準加速度は、上述したとおりである。所定時間(以下、基準時間という)は、例えば10秒から60秒程度の範囲であり、一例として30秒である。排気温度差は、フィルタ部12の上流と下流での排気の温度差であり、本実施形態では入口温度と出口温度の差分である。アッシュ堆積量は、フィルタ部12で捕集されて堆積したアッシュの捕集量(堆積量)である。堆積量推定部73は、推定したアッシュ堆積量を再生制御部74に与える。
【0031】
堆積量推定部73において、排気温度差に基づいてアッシュ堆積量が推定可能であるのは、次のような理由による。図3には、車速、排気の入口温度と出口温度、排気温度差のそれぞれの時間変化の一例を示す。図3において、L31は、車速の時間変化である。L32とL33は、未堆積状態における排気の入口温度と出口温度の時間変化である。未堆積状態は、フィルタ12fにアッシュが堆積していない状態、例えばフィルタ12fの新品状態や保守後の状態である。L34とL35は、堆積状態における排気の入口温度と出口温度の時間変化である。堆積状態は、フィルタ12fの保守や交換が奨励される程度までフィルタ12fにアッシュが堆積した状態である。L36は、未堆積状態における排気温度差の時間変化である。L37は、堆積状態における排気温度差の時間変化である。
【0032】
図3に示すように、車速の時間変化(加速度)と、アッシュ堆積量と、排気温度差との間には、相関関係がある。例えば、未堆積状態においては、出口温度よりも入口温度が高く、排気温度差が生じている。これは、フィルタ12f自体が熱容量を持っており、排気熱がフィルタ12fで吸熱されるためと考えられる。これに対し、堆積状態においては、車速の時間変化の大きさに応じて、排気温度差が生じている。具体的には、上述したアイドル状態において、排気温度差はほぼ生じない。その後、車速の時間変化が大きい状態では排気温度差が生じ、車速の時間変化が小さい状態では再び排気温度差がほぼ生じなくなる。
【0033】
これは、次のような現象によるものと考えられる。例えばアッシュが堆積すると、堆積したアッシュによって、排気熱が吸熱される。また、アッシュ自体も熱を持ち、アッシュからの放熱によっても排気温度が高められる。このため、アイドル状態や車速の時間変化が小さい状態では、排気熱がアッシュで吸熱され難くなるとともに、アッシュからの放熱によって排気温度が高められ、排気温度差がほぼ生じなくなると考えられる。これに対し、車速の時間変化が大きい状態では、このようなアッシュによる吸熱低下や放熱の影響を受け難くなり、排気温度差が生じると考えられる。
【0034】
したがって、堆積状態では、アイドル状態、例えば図3のL34とL35に示す0秒から40秒までの間では、L31に示すように車速の時間変化がなく(加速度がゼロ)、排気温度差がほぼ生じない。次いで、アイドル状態からの加速時、例えばL34とL35に示す40秒から100秒までの間では、車速の時間変化(L31)が大きく、排気温度差が生じる。その後、定常運転状態が継続した場合、例えばL34とL35に示す100秒から250秒までの間では、車速の時間変化(L31)が小さく、再び排気温度差がほぼ生じなくなる。
【0035】
アイドル状態は、定常運転状態の一例である。車速の時間変化が大きい状態は、車速が急激に変化する状態であり、例えば図3のL31に示すように40秒から100秒までの60秒間に車速が時速15km上昇した状態である。この状態は、加速度が0.07m/s程度であり、定常運転状態には相当しない。車速の時間変化が小さい状態は、車速が緩やかに変化する状態であり、例えば図3のL31に示すように100秒から250秒までの150秒間に車速が時速15km上昇した状態である。この状態は、加速度が0.02m/s程度であり、定常運転状態の一例である。
【0036】
このように、定常運転状態では、アッシュ堆積量に応じた排気温度差が生じる。特に、車両が走行している間の定常運転状態と比べ、車速の時間変化がより小さい定常運転状態であるアイドル状態では、アッシュ堆積量に応じた排気温度差が顕著に生じる。かかる排気温度差は、マップ72m(図2)に示すように、アッシュ堆積量が少ないほど大きく、多いほど小さい。
【0037】
したがって、本実施形態では、アイドル状態を含む定常運転状態でアッシュ堆積量の推定を行う。一方、定常運転状態ではない状態、例えばアイドル状態からの加速時など、車速の時間変化が比較的大きい状態では、アッシュが堆積していても排気温度差が生じる。このため、定常運転状態ではない状態での推定を避け、定常運転状態で推定を行う方がより正確な推定を実施できる。
【0038】
再生制御部74は、フィルタ12fの再生条件を判定し、フィルタ12fにおける微粒子の堆積量が所定量(後述する再生開始閾値)に達した場合にフィルタ12fの再生処理を行う。再生処理として、再生制御部74は、微粒子の燃焼処理もしくは触媒11cの昇温処理を行う。
【0039】
微粒子の燃焼処理(以下、微粒子燃焼処理という)において、再生制御部74は、フィルタ部12を通過する排気の温度を調整する。具体的には、可燃性粒子である煤が燃焼可能な温度まで排気温度を上昇させて維持する。排気温度を上昇させるため、再生制御部74は、例えば燃料のポスト噴射や吸気絞りなどを行う。この場合、再生制御部74は、インジェクタ24や吸気絞り弁23などの動作を制御することで、通気路12aへの燃料の送り量や燃焼室21への吸気量などを適宜調整する。また例えば、再生制御部74は、循環気弁6などの動作を制御し、循環気を適宜導入して酸素濃度の調整を行う。排気温度の上昇により、フィルタ12fに堆積した微粒子に含まれる煤などの可燃性粒子が燃焼して除去される。これにより、フィルタ12fが微粒子を適切に捕集可能な状態に再生される。ただし、不燃性粒子であるアッシュは、燃焼されることなく、フィルタ12fに堆積されたままである。
【0040】
触媒11cの昇温処理(以下、触媒昇温処理という)において、再生制御部74は、触媒部11を通過する排気の温度、あるいは触媒11cの温度を調整する。具体的には、触媒11cを活性化可能な温度まで排気温度を上昇させて維持する。排気温度の上昇手段は、微粒子燃焼処理の場合と同様である。触媒11cの温度は、例えばヒータなどにより上昇させる。その結果、触媒11cにおける酸化反応により生成された二酸化窒素による酸化反応により、フィルタ12fに堆積した煤などの可燃性粒子は、燃焼してフィルタ12fから除去される。
【0041】
図4は、排気浄化装置1における排気浄化制御のフローを示す。以下、排気浄化制御の具体例およびその作用について、図4に示すフローに従って説明する。本実施形態の排気浄化制御は、フィルタ12fにおけるアッシュ堆積量の推定に特徴を有する。アッシュ堆積量推定処理は、フィルタ12fの再生処理(以下、フィルタ再生処理という)がなされたことを前提として行われる。したがって、アッシュ堆積量推定処理が開始される際には、フィルタ12fから煤などの可燃性粒子が燃焼して除去された状態となっている。すなわち、堆積量推定部73は、再生制御部74により再生が実施されて完了された以後で、所定期間内にアッシュ堆積量の推定を実施する。
【0042】
図4に示すように、排気浄化制御にあたっては、まず、フィルタ再生処理を行う(S101)。フィルタ再生処理は、再生を要するまでフィルタ12fに微粒子が堆積した場合に行われる。その際、例えば温度差測定部13で測定したフィルタ部12の上流と下流での排気の温度差に基づいて、フィルタ12fにおける微粒子の堆積量を推定する。あるいは、圧力測定部14で測定したフィルタ部12の上流と下流での排気の差圧に基づいて、微粒子堆積量を推定する。これらの温度差による推定および差圧による推定は、併用可能である。そして、推定した微粒子堆積量を再生開始閾値と比較し、例えば再生開始閾値以上であれば、フィルタ再生処理が実行される。再生開始閾値は、フィルタ12fの再生を要する微粒子堆積量の値である。
【0043】
図5は、排気浄化装置1におけるフィルタ再生処理の一例を示すフロー図である。
図5に示すように、フィルタ再生処理にあたって、再生制御部74は、排気の入口温度が所定範囲内であるかを確認する。このため、再生制御部74は、入口温度が第1の閾値以上、第2の閾値未満であるか否かを判定する(S201)。第1の閾値および第2の閾値は、フィルタ再生処理として、微粒子燃焼処理もしくは触媒昇温処理のいずれを行うかを判定するための閾値である。第1の閾値および第2の閾値は、例えばメモリに格納され、再生制御部74の引数(プログラムのパラメータ)として、再生処理内容の判定時に読み出される。第1の閾値(T1)は、例えば450℃から550℃程度の範囲であり、一例として500℃である。第2の閾値(T2)は、例えば600℃から700℃程度の範囲であり、一例として650℃である。650℃は、可燃性粒子である煤が燃焼可能な温度に相当する。
【0044】
入口温度が第1の閾値以上、第2の閾値未満である場合、再生制御部74は、昇温条件を判定する(S202)。昇温条件は、触媒11cを活性化可能な温度まで、排気温度を上昇させられるか否かを判定するための条件である。
【0045】
昇温条件を満たす場合、再生制御部74は、触媒昇温処理を行う(S203)。触媒昇温処理において、再生制御部74は、燃料のポスト噴射や吸気絞りなどを行い、触媒部11を通過する排気の温度を上昇させる。あるいは、ヒータなどの温調手段を動作させ、再生制御部74は、触媒11cの温度を上昇させる。触媒昇温処理を所定時間継続させた後、再生制御部74は、フィルタ再生処理を終了する。これにより、フィルタ12fに堆積した煤などの可燃性粒子は、触媒11cによる酸化反応で燃焼して除去される。
これに対し、昇温条件を満たさない場合、再生制御部74は、触媒昇温処理を行うことなく、フィルタ再生処理を終了し、排気浄化制御も終了する。
【0046】
一方、S201において、入口温度が第1の閾値以上、第2の閾値未満である場合、再生制御部74は、入口温度が第2の閾値以上であるか否かを判定する(S204)。
【0047】
入口温度が第2の閾値以上である場合、再生制御部74は、微粒子燃焼処理を行う(S205)。微粒子燃焼処理において、再生制御部74は、燃料のポスト噴射や吸気絞りなどを行い、フィルタ部12を通過する排気の温度を煤が燃焼可能な温度に維持する。微粒子燃焼処理を所定時間継続させた後、再生制御部74は、フィルタ再生処理を終了する。これにより、フィルタ12fに堆積した微粒子に含まれる煤などの可燃性粒子が燃焼して除去される。
これに対し、入口温度が第2の閾値未満である場合、再生制御部74は、微粒子燃焼処理を行うことなく、フィルタ再生処理を終了し、排気浄化制御も終了する。
【0048】
フィルタ再生処理において、触媒昇温処理もしくは微粒子燃焼処理が行われた場合、アッシュ堆積量推定処理を開始する。例えば、触媒昇温処理もしくは微粒子燃焼処理を行った場合、再生制御部74は、処理フラグをONにする。処理フラグは、触媒昇温処理の実行状況もしくは微粒子燃焼処理の実行状況を示すフラグであり、初期値はOFFである。したがって、処理フラグがONである場合、触媒昇温処理もしくは微粒子燃焼処理が行われたことを示す。すなわち、処理フラグがONである場合、フィルタ12fから煤などの可燃性粒子が燃焼して除去された状態となっている。この状態、すなわち、再生制御部74により再生が実施されて完了された以後で、所定期間内であれば、アッシュ堆積量推定処理を開始可能となる。処理フラグをONにすると、再生制御部74は、アッシュ堆積量推定処理の開始トリガーとして処理フラグを堆積量推定部73に所定期間内に付与する。
【0049】
図4に示すように、アッシュ堆積量推定処理にあたって、堆積量推定部73は、開始トリガーの有無を確認する(S102)。
開始トリガーが付与されていない場合、堆積量推定部73は、アッシュ堆積量推定処理を開始することなく、排気浄化制御を終了する。
これに対し、開始トリガーが付与されている場合、堆積量推定部73は、アッシュ堆積量推定処理を開始する。
【0050】
アッシュ堆積量推定処理を開始すると、検出部71は、車両の走行状況を検出し、検出した走行状況の情報(データ)を取得する(S103)。具体的には、加速度検出部71aが車両の加速度を検出し、走行状況検出部71bがエンジン2の温度(冷却水温)を検出し、それぞれこれらのデータを取得する。取得したデータは、堆積量推定部73に与えられる。
【0051】
次いで、堆積量推定部73は、定常運転条件を判定する(S104)。定常運転条件は、車両が定常運転状態であるか否かを判定するための条件である。本実施形態では、次の3つの要件をいずれも満たす場合、定常運転条件が満たされる。第1の要件は、エンジン2の温度(冷却水温)が基準温度以上であることである。第2の要件は、車両の加速度が基準加速度以下であることである。第3の要件は、車両の加速度が基準加速度以下である状態が基準時間以上継続していることである。したがって、エンジン2の温度が基準温度以上で、かつ基準時間以上継続して加速度が基準加速度以下である場合、堆積量推定部73は、定常運転条件を満たすと判定する。一方、3つの要件うち1つでも満たさない場合、堆積量推定部73は、定常運転条件を満たさないと判定する。
【0052】
なお、本実施形態では一例として、上記3つの要件を満たす場合に定常運転条件を成立させているが、成立要件はこれに限定されない。例えば、上記3つの要件に加えて、車速がゼロ、つまり車両が停止していることを成立要件としてもよい。したがって、エンジン2の温度が基準温度以上で、かつ車速がゼロ、つまり車両が基準時間以上停止している場合に定常運転条件が成立する。これにより、暖機運転が終了し、エンジン2の温度が基準温度以上で車両が基準時間以上停止している状態、つまりアイドル状態に限定してアッシュ堆積量を推定できる。アイドル状態では、アッシュ堆積量に応じた排気温度差が顕著に生じるため、以降の微粒子堆積量の推定精度を高めることができる。
【0053】
定常運転条件を満たす場合、堆積量推定部73は、フィルタ12fが堆積状態(フィルタ12fの保守や交換が奨励される程度までフィルタ12fにアッシュが堆積した状態)であるか否かを判定する。
このため、温度差測定部13は、排気の入口温度および出口温度をそれぞれ測定し、これらの温度差のデータを取得する(S105)。取得したデータは、堆積量推定部73に与えられる。
【0054】
続いて、堆積量推定部73は、推定開始条件を判定する。推定開始条件は、微粒子堆積量の推定を開始するか否かを判定するための条件である。推定開始条件の判定にあたって、堆積量推定部73は、温度差測定部13から付与された排気温度差が推定開始閾値未満であるか否かを判定する(S106)。推定開始閾値は、車両が定常運転状態で、かつフィルタ12fが未堆積状態である場合における排気温度差の値である。したがって、排気温度差が推定開始閾値未満であれば、未堆積状態からフィルタ12fに微粒子が堆積された状態であると見做すことができる。推定開始閾値は、例えばメモリに格納され、堆積量推定部73の引数(プログラムのパラメータ)として、推定開始条件の判定時に読み出される。
【0055】
排気温度差が推定開始閾値未満である場合、堆積量推定部73は、アッシュ堆積量を推定する(S107)。推定にあたって、堆積量推定部73は、車両の加速度に対応するマップ72mを照会し、排気温度差に基づいてアッシュ堆積量を推定する。
【0056】
アッシュ堆積量を推定すると、堆積量推定部73は、警告条件を判定する(S108)。警告条件は、フィルタ12fの保守や交換が奨励されるか否かを判定するための条件である。警告条件の判定にあたって、堆積量推定部73は、アッシュ堆積量を警告閾値と比較する。警告閾値は、フィルタ12fの保守や交換が奨励されるアッシュ堆積量の値である。警告閾値は、例えばメモリに格納され、堆積量推定部73の引数(プログラムのパラメータ)として、警告条件の判定時に読み出される。一例として、堆積量推定部73は、アッシュ堆積量が警告閾値以上であれば、警告条件を満たすと判定し、アッシュ堆積量が警告閾値未満であれば、警告条件を満たさないと判定する。
【0057】
警告条件を満たす場合、堆積量推定部73は、所定の警告を行う(S109)。警告は、アッシュの堆積に伴うフィルタ12fの保守や交換が奨励される旨を車両の乗員に通知するものである。これにより、フィルタ12fの保守や交換などの措置を乗員に促すことができる。具体的には、警告灯の点灯(点滅)、メッセージの表示、警報音の発報などを行えばよい。警告を完了すると、堆積量推定部73は、アッシュ堆積量推定処理を終了する。ただし、このような警告は省略してもよいし、アッシュ堆積量に応じて、段階的に警告内容を変更してもよい。
【0058】
これに対し、警告条件を満たさない場合、堆積量推定部73は、警告を行うことなく、アッシュ堆積量推定処理を終了する。この場合、フィルタ12fの保守や交換が奨励されるほどにはアッシュが堆積していないため、特段の警告は必要ない。また、S104において定常運転条件を満たさない場合、およびS106において排気温度差が推定開始閾値以上である場合も、同様にアッシュ堆積量推定処理を終了する。
【0059】
そして、アッシュ堆積量推定処理を終了すると、堆積量推定部73は、排気浄化制御を終了させる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、排気温度差、つまりフィルタ部12の上流と下流での排気の温度差に基づいて、アッシュ堆積量を推定することができる。本実施形態では、圧力測定部14の圧力センサ14a,14bでフィルタ部12の上流と下流の排気の圧力を測定し、これらの差圧に基づいてアッシュ堆積量を推定することもできる。したがって、かかる差圧に基づく推定を、温度差に基づく推定によって補完できる。特に、差圧に基づいた推定では、アッシュ堆積量が少ない段階(堆積の初期段階)では差圧が小さく、堆積量の推定が難しく、アッシュの堆積態様、例えば偏りなどによっても、推定誤差が生じやすい。温度差に基づく推定で差圧に基づく推定を補完することで、堆積の初期段階や堆積態様にかかわらず、アッシュ堆積量を精度よく推定できる。また、圧力センサ14a,14bに何らかの不具合が生じたような場合であっても、温度センサ13a,13bで入口温度と出口温度の測定を継続できる。したがって、温度差に基づいて推定することで、アッシュ堆積量を継続して推定できる。
【0061】
これにより、アッシュ堆積量の推定精度を高め、アッシュの堆積に伴うフィルタ12fの保守や交換の要否を適切に判断できる。その結果、エンジン2の燃費改善や燃費向上をより一層適切に図ることが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…排気浄化装置、2…エンジン、3…吸気通路、4…排気通路、5…排気循環路、6…循環気弁、7…制御部、11…触媒部、11a…通気路、11c…触媒、12…フィルタ部、12a…通気路、12f…フィルタ、12i…入口、12o…出口、13…温度差測定部、13a…第1の温度センサ、13b…第2の温度センサ、14…圧力測定部、14a…第1の圧力センサ、14b…第2の圧力センサ、21…燃焼室、22…吸気弁、23…吸気絞り弁、24…インジェクタ、25…点火プラグ、26…ピストン、27…クランクシャフト、28…排気弁、71…検出部、71a…加速度検出部、71b…走行状況検出部、72…マップ格納部、72m…マップ、73…堆積量推定部、74…再生制御部。
図1
図2
図3
図4
図5