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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20230117BHJP
   G11C 11/16 20060101ALI20230117BHJP
   G11C 11/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H01L27/105 447
G11C11/16
G11C11/00 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019111966
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020205329
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 峰信
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-101123(JP,A)
【文献】特開2012-014787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0066746(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0063221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0002466(US,A1)
【文献】国際公開第2019/046197(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/037143(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/110537(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0267957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/105
H01L 21/8239
G11C 11/16
G11C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのロジック部である対象ロジック部によりアクセスされる2種類の磁気抵抗メモリである、第1磁気抵抗メモリと第2磁気抵抗メモリとを備え、
前記対象ロジック部と前記第1磁気抵抗メモリと前記第2磁気抵抗メモリとが1つの半導体チップに形成され、
前記第1磁気抵抗メモリは、前記第2磁気抵抗メモリよりも保磁力が大き
前記第1磁気抵抗メモリには、前記対象ロジック部の動作プログラムを含む設定データが記憶され、
前記第2磁気抵抗メモリには、前記対象ロジック部による演算結果を含むワークデータが記憶され、
前記対象ロジック部は、前記動作プログラムに従った演算処理を行う演算回路を備え、
前記第2磁気抵抗メモリは、前記第1磁気抵抗メモリよりも前記演算回路に近い位置に配置され、
前記第1磁気抵抗メモリ及び前記第2磁気抵抗メモリは、前記対象ロジック部に対して、前記半導体チップの厚さ方向の一方側である表側に配置され、
前記第2磁気抵抗メモリの少なくとも一部は、前記厚さ方向に沿った方向視で、前記演算回路と重複する位置に配置されている、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記厚さ方向に対して直交する方向を直交方向として、前記半導体チップの前記表側において、前記第1磁気抵抗メモリは、前記第2磁気抵抗メモリとは前記直交方向の異なる位置に配置され、
前記対象ロジック部は、第1回路と第2回路とを備え、
前記半導体チップの前記表側とは反対側の裏側において、前記第1回路及び前記第2回路は、前記演算回路とは前記直交方向の異なる位置に配置され、
前記第1磁気抵抗メモリの少なくとも一部は、前記厚さ方向に沿った方向視で、前記第1回路又は前記第2回路と重複する位置に配置されている、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1磁気抵抗メモリを構成するメモリセルの体積が、前記第2磁気抵抗メモリを構成するメモリセルの体積よりも大きい、請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置が用いられる装置の一例として、特開2016-184233号公報(特許文献1)に記載されているような、メモリに対して信号ラインを介してデータ伝送を行うメモリコントローラを挙げることができる。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1の図2に示されているように、このメモリコントローラ(C)は、半導体記憶装置として記憶回路(15)を備えている。そして、特許文献1の段落0021,0022に記載されているように、このメモリコントローラ(C)は、当該記憶回路(15)を、作業用データを格納するためのワークメモリとして用いて、置換処理や復元処理等の各種処理を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-184233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、データの書き換えが比較的頻繁に行われる半導体記憶装置(上述したワークメモリ等)には、これまで一般的に揮発性メモリが用いられていたが、この揮発性メモリを、書き換え可能な不揮発性メモリの一種である磁気抵抗メモリ(MRAM)に置き換えることが検討されている。このように半導体記憶装置に磁気抵抗メモリを用いる場合、ワークデータのように比較的頻繁に書き換えられるデータだけでなく、設定データ(プログラムや初期設定データ等)のように書き換え頻度が低いデータも磁気抵抗メモリに記憶させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、磁気抵抗メモリは、その構造上、データの書き換え可能回数を多く確保しようとするとデータの保持期間が短くなるため、揮発性メモリとの置き換えが可能な程度の書き換え可能回数が得られるように、磁気抵抗メモリを構成すると、設定データのような書き換え頻度が低いデータの保持期間が短くなりやすい。この結果、半導体記憶装置が用いられる装置の起動時に設定データを他の記憶装置からロードする必要が生じて、起動時間が長くなるおそれや、そのような処理のために消費電力が増大するおそれがある。
【0006】
そこで、半導体記憶装置に磁気抵抗メモリを用いる場合に、データの書き換え可能回数とデータの保持期間との双方を適切に確保することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体記憶装置は、1つのロジック部である対象ロジック部によりアクセスされる2種類の磁気抵抗メモリである、第1磁気抵抗メモリと第2磁気抵抗メモリとを備え、前記対象ロジック部と前記第1磁気抵抗メモリと前記第2磁気抵抗メモリとが1つの半導体チップに形成され、前記第1磁気抵抗メモリは、前記第2磁気抵抗メモリよりも保磁力が大きい。
【0008】
この構成によれば、第1磁気抵抗メモリが第2磁気抵抗メモリよりも保磁力が大きいため、第2磁気抵抗メモリについては、保磁力を比較的小さくしてデータの書き換え可能回数を多く確保しつつ、第1磁気抵抗メモリについては、保磁力を比較的大きくしてデータの保持期間を長く確保することができる。すなわち、2種類の磁気抵抗メモリを用いることで、半導体記憶装置の中に、第2磁気抵抗メモリにより形成される、データの書き換え可能回数が多いメモリ領域と、第1磁気抵抗メモリにより形成される、データの保持期間が長いメモリ領域との、2種類のメモリ領域を形成することができる。そして、上記の構成によれば、このような2種類のメモリ領域に対象ロジック部がアクセス可能な半導体チップを実現することができる。
【0009】
以上のように、上記の構成によれば、半導体記憶装置に磁気抵抗メモリを用いる場合に、データの書き換え可能回数とデータの保持期間との双方を適切に確保することが可能となる。
【0010】
半導体記憶装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体チップの一例の概略構成を示すブロック図
図2】機能モジュールの一例の概略構成を示すブロック図
図3】半導体記憶装置の一例の概略構成を示す斜視図
図4】半導体記憶装置と対象ロジック部との配置関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
半導体記憶装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、半導体記憶装置がレジスタ(レジスタファイル)として用いられる場合を例として説明する。
【0013】
半導体記憶装置20は、半導体チップ1に形成される記憶装置である。そのため、半導体記憶装置20(例えば、半導体記憶装置20を構成するメモリセルや、メモリセルに対するデータの書き換えを行う書き換え回路)は、半導体材料を用いて形成される。
【0014】
図1に、半導体記憶装置20が形成される半導体チップ1の一例を示す。半導体チップ1は、例えば、SoC(System on a Chip)とされる。半導体チップ1は、1枚のチップに集積された複数の回路(半導体集積回路)を備えている。半導体チップ1には、後述するロジック部40を構成する回路や、半導体記憶装置20(メモリ部)を構成する回路が形成されている。半導体チップ1に、他の機能部(例えば、アナログ部)を構成する回路が形成されていてもよい。半導体チップ1が備える複数の回路は、当該半導体チップ1が内蔵する半導体基板(シリコンダイ等の半導体ダイ)に形成される。例えば、半導体チップ1が1枚の半導体基板を備え、半導体チップ1が備える全ての回路が、当該1枚の半導体基板に形成された構成とすることができる。
【0015】
図1に示すように、半導体チップ1は、内部バス12によって互いに接続された複数の機能モジュール10を備えている。また、半導体チップ1は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ11を備えており、プロセッサ11は、内部バス12によって機能モジュール10のそれぞれに接続されている。機能モジュール10のそれぞれは、例えば、プロセッサ11の周辺機能(サポート機能等)を実現する周辺ロジック部として機能し、又は、半導体チップ1と外部装置2(半導体チップ1の外部に設けられる装置)との間でデータ又は信号をやり取りするインタフェース部として機能する。外部装置2は、例えば、半導体チップ1の外部に設けられる記憶装置や、センサ等とされる。図1に示す例では、複数の機能モジュール10の一部が、外部装置2との間でデータ又は信号をやり取りする機能モジュール10とされている。
【0016】
機能モジュール10及びプロセッサ11のそれぞれは、ロジック部40を備えている。ロジック部40は、ロジック回路(論理回路)を備えており、当該ロジック回路を用いて処理(演算処理や変換処理等)を行う。図2に示すように、本実施形態では、半導体記憶装置20は、機能モジュール10に付属する半導体記憶装置とされており、当該機能モジュール10が備えるロジック部40によりアクセスされる。すなわち、半導体記憶装置20にアクセスする1つのロジック部40を対象ロジック部41とすると、本実施形態では、対象ロジック部41は、1つの機能モジュール10が備えるロジック部40である。本実施形態では、半導体記憶装置20は、対象ロジック部41を備える機能モジュール10のレジスタとして機能し、対象ロジック部41(具体的には、後述する演算回路50)は、半導体記憶装置20に記憶されているデータに基づいて動作する。
【0017】
図2に、対象ロジック部41を備える機能モジュール10の一例を示す。以下では、図2に示す機能モジュール10以外の機能モジュール10を、他の機能モジュール10と称する。図2に示すように、対象ロジック部41は、演算回路50と第1回路51とを備えている。演算回路50は、動作プログラムに従った演算処理を行うように構成されている。演算回路50を動作させる動作プログラムは、半導体記憶装置20(具体的には、後述する第1磁気抵抗メモリ21)に記憶されている。
【0018】
第1回路51は、内部バス12と半導体記憶装置20とに接続されており、半導体記憶装置20と、他の機能モジュール10又はプロセッサ11との間の、内部バス12を介したデータ伝送を制御するように構成されている。すなわち、第1回路51は、内部バス制御部として機能する制御回路である。第1回路51と半導体記憶装置20との間には、半導体記憶装置20内のアドレスを指定するためのアドレスバスと、データをやり取りするためのデータバスとが形成されており、第1回路51は、指定したアドレスのデータを読み書きするように構成されている。
【0019】
図2に示す機能モジュール10は、外部装置2との間で信号をやり取りする機能モジュールとされており、対象ロジック部41は、第2回路52を備えている。第2回路52は、演算回路50に接続されていると共に、外部バスを介して外部装置2に接続されている。第2回路52は、外部信号制御部として機能する制御回路である。第2回路52は、演算回路50から入力されたデータを信号に変換して外部装置2に出力するように構成されていると共に、外部装置2から入力された信号をデータに変換して演算回路50に出力するように構成されている。なお、第2回路52から外部装置2への信号の出力と、外部装置2から第2回路52への信号の入力との、いずれか一方のみが行われる構成としてもよい。
【0020】
図2に示すように、半導体記憶装置20は、対象ロジック部41によりアクセスされる2種類の磁気抵抗メモリである、第1磁気抵抗メモリ21と第2磁気抵抗メモリ22とを備えている。磁気抵抗メモリ(MRAM;Magnetoresistive Random Access Memory)は、磁気トンネル接合をメモリセル30とする不揮発性メモリである。図3に模式的に示すように、磁気抵抗メモリを構成するメモリセル30(磁気トンネル接合)は、絶縁体層である第2層32を、2つの強磁性体層である第1層31と第3層33とで挟んだ構造を備える。強磁性体層は、例えば、強磁性半導体材料を用いて形成される。
【0021】
第1層31及び第3層33の一方は、磁化が固定される固定層とされ、第1層31及び第3層33の他方は、磁化が可変な自由層とされる。自由層の磁化方向を変化させてメモリセル30(磁気トンネル接合)の電気抵抗値の高低を切り替えることで、メモリセル30に1ビットの情報を記憶させることができる。メモリセル30は、半導体チップ1の厚さ方向Dに直交する面にアレイ状(2次元アレイ状)に並べて配置されており、詳細は省略するが、メモリセル30に対するデータの書き換えを行う書き換え回路は、トランジスタ(セル選択用トランジスタ)を用いて書き換え対象のメモリセル30を選択するように構成されている。
【0022】
図3及び図4に模式的に示すように、対象ロジック部41と第1磁気抵抗メモリ21と第2磁気抵抗メモリ22とは、1つの半導体チップ1に形成されている。すなわち、第1磁気抵抗メモリ21及び第2磁気抵抗メモリ22は、埋め込みMRAMである。ここでは、対象ロジック部41と第1磁気抵抗メモリ21と第2磁気抵抗メモリ22とは、同じ半導体基板(半導体ダイ)に混載されている。具体的には、第1磁気抵抗メモリ21及び第2磁気抵抗メモリ22は、対象ロジック部41に対して表側D1(表層側)に一体的に形成されている。言い換えれば、対象ロジック部41は、半導体チップ1における、第1磁気抵抗メモリ21及び第2磁気抵抗メモリ22よりも裏側D2(内層側)に形成されている。ここで、表側D1は、厚さ方向Dの一方側(半導体基板に対して各素子が形成される側)であり、裏側D2は、厚さ方向Dの他方側(表側D1とは反対側)である。
【0023】
第1磁気抵抗メモリ21は、第2磁気抵抗メモリ22よりも保磁力が大きい。具体的には、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の保磁力(具体的には、自由層の保磁力)は、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の保磁力(具体的には、自由層の保磁力)よりも大きい。本実施形態では、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の体積を、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の体積よりも大きくすることで、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の保磁力を、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の保磁力よりも大きくしている。メモリセル30の体積は、例えば、第1層31、第2層32、及び第3層33の各層の体積の合計とすることができる。
【0024】
第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の体積が、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の体積よりも大きい構成の一例として、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の面積(厚さ方向Dに沿う方向視での面積、以下同様)が、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の面積よりも大きい構成とすることができる。この場合、第1層31の厚さ、第2層32の厚さ、及び第3層33の厚さを、第1磁気抵抗メモリ21と第2磁気抵抗メモリ22との間で共通とすることができるため、2種類の磁気抵抗メモリを半導体チップ1に形成することによる製造工程の複雑化を抑制することができる。
【0025】
上記のように、第1磁気抵抗メモリ21は、第2磁気抵抗メモリ22よりも保磁力が大きいため、第2磁気抵抗メモリ22については、保磁力を比較的小さくしてデータの書き換え可能回数を多く確保しつつ、第1磁気抵抗メモリ21については、保磁力を比較的大きくしてデータの保持期間を長く確保することができる。すなわち、対象ロジック部41がアクセス可能なメモリ領域として、第2磁気抵抗メモリ22により形成される、データの書き換え可能回数が多いメモリ領域と、第1磁気抵抗メモリ21により形成される、データの保持期間が長いメモリ領域との、2種類のメモリ領域を半導体チップ1に形成することが可能となっている。
【0026】
第1磁気抵抗メモリ21はデータの保持期間が長いため、半導体チップ1が用いられる装置の起動時間の短縮の観点から、当該装置の起動時に対象ロジック部41が必要とするデータは、第1磁気抵抗メモリ21に記憶される構成とすることが望ましい。このような観点から、本実施形態では、第1磁気抵抗メモリ21に設定データが記憶される構成としている。第1磁気抵抗メモリ21に記憶される設定データには、対象ロジック部41(具体的には、演算回路50)の動作プログラムが含まれる。第1磁気抵抗メモリ21に記憶される設定データに更に別のデータが含まれていてもよく、例えば、対象ロジック部41(具体的には、演算回路50)の初期設定データが含まれる構成とすることや、対象ロジック部41(具体的には、演算回路50)での演算に用いられる定数(制御定数等)のデータが含まれる構成とすることができる。
【0027】
一方、第2磁気抵抗メモリ22はデータの書き換え可能回数が多いため、半導体記憶装置20の寿命の長期化の観点から、比較的頻繁に書き換えられるデータは、第2磁気抵抗メモリ22に記憶される構成とすることが望ましい。このような観点から、本実施形態では、第2磁気抵抗メモリ22にワークデータが記憶される構成としている。第2磁気抵抗メモリ22に記憶されるワークデータには、対象ロジック部41(具体的には、演算回路50)による演算結果が含まれる。第2磁気抵抗メモリ22に記憶されるワークデータに更に別のデータが含まれていてもよく、例えば、対象ロジック部41(具体的には、演算回路50)に入力される入力データが含まれる構成とすることや、対象ロジック部41(具体的には、演算回路50)から出力される出力データが含まれる構成とすることができる。
【0028】
図4に模式的に示すように、本実施形態では、第2磁気抵抗メモリ22は、第1磁気抵抗メモリ21よりも演算回路50に近い位置に配置されている。本実施形態では、上述したようにワークデータが第2磁気抵抗メモリ22に記憶されるため、第1磁気抵抗メモリ21に比べて第2磁気抵抗メモリ22の方が、演算回路50との間でのデータのやり取りがより頻繁に行われる。よって、演算回路50との間でのデータのやり取りが頻繁に行われる第2磁気抵抗メモリ22を、演算回路50の近くに配置することで、演算回路50と第2磁気抵抗メモリ22との間の配線経路長を短く抑えることができる。この結果、クロック信号を各部に供給するためのクロックツリー60の長さを短く抑えて、消費電力の低減を図ることが可能となっている。
【0029】
例えば、第2磁気抵抗メモリ22の少なくとも一部を、厚さ方向Dに沿った方向視で演算回路50と重複する位置に配置し、第1磁気抵抗メモリ21の少なくとも一部を、当該方向視で第1回路51又は第2回路52と重複する位置に配置することで、第2磁気抵抗メモリ22が、第1磁気抵抗メモリ21よりも演算回路50に近い位置に配置される構成を実現することができる。
【0030】
〔その他の実施形態〕
次に、半導体記憶装置のその他の実施形態について説明する。
【0031】
(1)上記の実施形態では、半導体記憶装置20が、レジスタ(レジスタファイル)として用いられる場合を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、半導体記憶装置20がレジスタ以外の記憶装置として用いられる構成とすることもできる。
【0032】
例えば、半導体記憶装置20が、プロセッサ11のキャッシュとして用いられる構成とすることができる。この場合、対象ロジック部41は、プロセッサ11が備えるロジック部40とされる。そして、第1磁気抵抗メモリ21に、キャッシュされたブロックのタグ(アドレス)が記憶され、第2磁気抵抗メモリ22に、キャッシュされたブロックの内容が記憶される。すなわち、第1磁気抵抗メモリ21はタグアレイ(アドレスアレイ)とされ、第2磁気抵抗メモリ22はデータアレイとされる。なお、プロセッサ11はCPU以外にGPU(Graphics Processing Unit)等であってもよい。
【0033】
また、例えば、半導体記憶装置20が、内部バス12を介してプロセッサ11に接続される記憶装置として用いられる構成とすることもできる。この場合、対象ロジック部41は、プロセッサ11が備えるロジック部40とされる。そして、第1磁気抵抗メモリ21により形成されるメモリ領域が、プログラム領域として用いられ、第2磁気抵抗メモリ22により形成されるメモリ領域が、データ領域として用いられる。
【0034】
(2)上記の実施形態では、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の体積を、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の体積よりも大きくすることで、第1磁気抵抗メモリ21の保磁力を、第2磁気抵抗メモリ22の保磁力よりも大きくする構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30と第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30との間で構造及び材料の少なくとも一方を異ならせることで、第1磁気抵抗メモリ21の保磁力を、第2磁気抵抗メモリ22の保磁力よりも大きくしてもよい。この場合、上記の実施形態とは異なり、第1磁気抵抗メモリ21を構成するメモリセル30の体積が、第2磁気抵抗メモリ22を構成するメモリセル30の体積以下である構成とすることもできる。
【0035】
(3)上記の実施形態では、第2磁気抵抗メモリ22が、第1磁気抵抗メモリ21よりも演算回路50に近い位置に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1磁気抵抗メモリ21が、第2磁気抵抗メモリ22よりも演算回路50に近い位置に配置される構成とすることもできる。
【0036】
(4)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0037】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した半導体記憶装置の概要について説明する。
【0038】
半導体記憶装置(20)は、1つのロジック部(40)である対象ロジック部(41)によりアクセスされる2種類の磁気抵抗メモリである、第1磁気抵抗メモリ(21)と第2磁気抵抗メモリ(22)とを備え、前記対象ロジック部(41)と前記第1磁気抵抗メモリ(21)と前記第2磁気抵抗メモリ(22)とが1つの半導体チップ(1)に形成され、前記第1磁気抵抗メモリ(21)は、前記第2磁気抵抗メモリ(22)よりも保磁力が大きい。
【0039】
この構成によれば、第1磁気抵抗メモリ(21)が第2磁気抵抗メモリ(22)よりも保磁力が大きいため、第2磁気抵抗メモリ(22)については、保磁力を比較的小さくしてデータの書き換え可能回数を多く確保しつつ、第1磁気抵抗メモリ(21)については、保磁力を比較的大きくしてデータの保持期間を長く確保することができる。すなわち、2種類の磁気抵抗メモリ(21,22)を用いることで、半導体記憶装置(20)の中に、第2磁気抵抗メモリ(22)により形成される、データの書き換え可能回数が多いメモリ領域と、第1磁気抵抗メモリ(21)により形成される、データの保持期間が長いメモリ領域との、2種類のメモリ領域を形成することができる。そして、上記の構成によれば、このような2種類のメモリ領域に対象ロジック部(41)がアクセス可能な半導体チップ(1)を実現することができる。
【0040】
以上のように、上記の構成によれば、半導体記憶装置(20)に磁気抵抗メモリを用いる場合に、データの書き換え可能回数とデータの保持期間との双方を適切に確保することが可能となる。
【0041】
ここで、前記第1磁気抵抗メモリ(21)を構成するメモリセル(30)の体積が、前記第2磁気抵抗メモリ(22)を構成するメモリセル(30)の体積よりも大きいと好適である。
【0042】
この構成によれば、第1磁気抵抗メモリ(21)と第2磁気抵抗メモリ(22)との間で構造や材料を共通としつつ、メモリセル(30)の体積を異ならせることで第1磁気抵抗メモリ(21)の保磁力を第2磁気抵抗メモリ(22)の保磁力よりも大きくすることができる。よって、第1磁気抵抗メモリ(21)と第2磁気抵抗メモリ(22)との間で構造や材料を異ならせる必要がある場合に比べて、半導体チップ(1)の製造コストの低減を図ることができる。
【0043】
また、前記第1磁気抵抗メモリ(21)には、前記対象ロジック部(41)の動作プログラムを含む設定データが記憶され、前記第2磁気抵抗メモリ(22)には、前記対象ロジック部(41)による演算結果を含むワークデータが記憶されると好適である。
【0044】
この構成によれば、設定データをデータの保持期間が長い第1磁気抵抗メモリ(21)に記憶させることで、半導体チップ(1)が用いられる装置の起動時に設定データを第1磁気抵抗メモリ(21)に書き込む必要を基本的になくして、起動時間の短縮を図ることができると共に、そのような書き込み処理のために必要な消費電力の低減を図ることができる。また、上記の構成によれば、比較的頻繁に書き換えられるワークデータをデータの書き換え可能回数の多い第2磁気抵抗メモリ(22)に記憶させることで、半導体記憶装置(20)の寿命を適切に確保することもできる。
【0045】
なお、第1磁気抵抗メモリ(21)に比べてデータの保持期間は短いものの、第2磁気抵抗メモリ(22)にもある程度の期間はデータを保持させることができる。そのため、半導体チップ(1)が用いられる装置の起動時に第2磁気抵抗メモリ(22)にワークデータが記憶されている場合には、当該ワークデータを利用することによって起動時間の更なる短縮を図ることもできる。
【0046】
上記のように、前記第1磁気抵抗メモリ(21)に前記設定データが記憶され、前記第2磁気抵抗メモリ(22)に前記ワークデータが記憶される構成において、前記対象ロジック部(41)は、前記動作プログラムに従った演算処理を行う演算回路(50)を備え、前記第2磁気抵抗メモリ(22)は、前記第1磁気抵抗メモリ(21)よりも前記演算回路(50)に近い位置に配置されていると好適である。
【0047】
第1磁気抵抗メモリ(21)に設定データが記憶され、第2磁気抵抗メモリ(22)にワークデータが記憶される場合には、第1磁気抵抗メモリ(21)に比べて第2磁気抵抗メモリ(22)の方が、演算回路(50)との間でのデータのやり取りがより頻繁に行われる。上記の構成によれば、演算回路(50)との間でのデータのやり取りが頻繁に行われる第2磁気抵抗メモリ(22)を、演算回路(50)の近くに配置することで、演算回路(50)と第2磁気抵抗メモリ(22)との間の配線経路長を短く抑えて、消費電力の低減を図ることができる。
【0048】
本開示に係る半導体記憶装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0049】
1:半導体チップ
20:半導体記憶装置
21:第1磁気抵抗メモリ
22:第2磁気抵抗メモリ
30:メモリセル
40:ロジック部
41:対象ロジック部
50:演算回路
図1
図2
図3
図4