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▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】光コネクタおよび光接続構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/38 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
G02B6/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019562939
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2018045389
(87)【国際公開番号】W WO2019131098
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2017248782
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 哲
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-056420(JP,A)
【文献】特開平08-106028(JP,A)
【文献】特開2015-187697(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157276(WO,A1)
【文献】米国特許第04964685(US,A)
【文献】特開2006-267649(JP,A)
【文献】特表2013-513131(JP,A)
【文献】米国特許第05724466(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含む光ファイバと、
外側にフランジが設けられて、内側に貫通穴を有し、前記貫通穴内に前記光ファイバの一端部において前記樹脂被覆から露出した前記ガラスファイバを保持したフェルールと、
前記フェルールを収容したプラグフレームと、
前記フェルールのフランジに当接して前記フェルールを前記フェルールにおいて保持されている前記光ファイバの一端部のある方向である前記貫通穴の軸の方向前方に付勢する弾性部材と、を備えた光コネクタであって、
前記フェルールのフランジは、外周面を構成する全ての面が前記貫通穴の軸に平行であり
前記プラグフレームの内周に前記貫通穴の軸の方向前方に向けて次第に内部空間を狭くして前記フェルールを前記プラグフレームに挿入するテーパ面と、前記テーパ面に対向する位置に形成されて前記フェルールのフランジの外周面を構成する平坦面に接触して前記弾性部材により付勢された前記フェルールを所定位置で回転不能に位置決めする、前記弾性部材による付勢方向に平行な平面であり前記テーパ面よりも前記貫通穴の軸の方向前方に延びたガイド面とを有し、
前記所定位置に対して前記フェルールを前記貫通穴の軸方向前方と反対方向の前記貫通穴の軸の方向後方に移動させた場合に、前記平坦面と前記ガイド面の接触状態が解除されて、前記フェルールが前記プラグフレームに対してフローティング状態になる、光コネクタ。
【請求項2】
前記所定位置で前記平坦面と前記ガイド面とが接触した場合に、前記フェルールのフランジが前記テーパ面と前記ガイド面とに挟持される、
請求項に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記フェルールのフランジは断面視略四角形状である、
請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記フェルールのフランジは断面視軸対称でない、
請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記フェルールのフランジは断面視D字形状である、
請求項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記フェルールのフランジは前記平坦面とは異なる面に、キー突起を有し、前記プラグフレームは、前記キー突起がその内部で摺動するキー溝を内周面に有する、
請求項に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記光ファイバが、シングルモードファイバ、マルチコアファイバ、偏波保持ファイバ、バンドルファイバのいずれかである、
請求項1からのいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記フェルールがジルコニア製である、
請求項1からのいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の光コネクタと、スリーブを介して前記光コネクタに連結される接続対象物と、を備え、前記光コネクタ側の光ファイバと前記接続対象物側の光ファイバとを光学的に接続する光接続構造であって、
前記フェルールを前記スリーブに挿入し、前記プラグフレームの前記所定位置に対して前記フェルールを前記貫通穴の軸の方向後方に移動させた場合に、前記平坦面と前記ガイド面の接触状態が解除される、光接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願では、2017年12月26日に日本国に出願された特許出願番号2017-248782に基づく優先権を主張し、当該出願の内容は引用することによりここに組み込まれているものとする。
【0002】
本開示は、光コネクタおよび光接続構造に関し、詳細には、フランジ付きのフェルールと、フェルールを付勢する弾性部材と、フェルールおよび弾性部材を収容したプラグフレームとを備えた光コネクタおよび光接続構造に関する。
【背景技術】
【0003】
インターネット等の情報通信の普及による通信の高速化や情報量の増大に加え、双方向通信と大容量通信に対応するために、光ネットワークの構築が進展している。光コネクタは、データセンターのネットワーク機器同士の接続や、FTTH(Fiber To The Home)等における宅内受信装置への光ファイバを接続する際に使用される。光コネクタは、光ファイバを保持したフェルールや、フェルールを収容するプラグフレームを有している。フェルールの外側にはフランジが設けられており、フランジは光ファイバの光軸方向に付勢されている。光コネクタはスリーブを介して別の光コネクタに結合され、各光ファイバのコア同士が光学的に接続される。
【0004】
プラグフレームに外力が加えられた場合にも、コア同士の光接続状態を維持することが要求される。このため、境目他、「MU形マルチコアファイバコネクタ」、電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B-13-9、2012年9月(非特許文献1)には、プラグフレーム(プラグハウジング)に加えられた外力がフェルールやフランジに及ばないように、フェルールやフランジをプラグフレームに対してフローティングさせるコネクタが開示されている。
【0005】
非特許文献1に記載された光コネクタは、フェルールとプラグフレームとの間にオルダム・カップリング機構を有している。フェルールがフランジとプラグフレームとの間にある結合部品に対してフェルール中心軸に対して垂直な一方向(左右方向)に移動可能となり、かつ、結合部品がプラグフレームに対してフェルール中心軸および上記一方向に対して垂直な方向(上下方向)に移動可能となっている。この光コネクタでは、フランジを複数個に分割して上下方向や左右方向に移動させており、光コネクタの部品点数が多くなり、また構造が複雑になるので、光コネクタの製造コストの低廉化を図り難い。また、非特許文献1に記載された光コネクタでは、フェルールがプラグフレーム内でフェルール中心軸に対して垂直な方向に移動できるようにフローティングするのみであり、フェルール中心軸の方向にも移動でき、回転もできるようにフローティングさせることについては記載されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光コネクタは、ガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含む光ファイバと、外側にフランジが設けられて、内側に貫通穴を有し、前記貫通穴内に前記光ファイバの一端部において前記樹脂被覆から露出した前記ガラスファイバを保持したフェルールと、前記フェルールを収容したプラグフレームと、前記フェルールのフランジに当接して前記フェルールを前記フェルールにおいて保持されている前記光ファイバの一端部のある方向である前記貫通穴の軸の方向前方に付勢する弾性部材と、を備えた光コネクタであって、前記フェルールのフランジは、外周面を構成する全ての面が前記貫通穴の軸に平行であり、前記プラグフレームの内周に前記貫通穴の軸の方向前方に向けて次第に内部空間を狭くして前記フェルールを前記プラグフレームに挿入するテーパ面と、前記テーパ面に対向する位置に形成されて前記フェルールのフランジの外周面を構成する平坦面に接触して前記弾性部材により付勢された前記フェルールを所定位置で回転不能に位置決めする、前記弾性部材による付勢方向に平行な平面であり前記テーパ面よりも前記貫通穴の軸の方向前方に延びたガイド面とを有し、前記所定位置に対して前記フェルールを前記貫通穴の軸方向前方と反対方向の前記貫通穴の軸の方向後方に移動させた場合に、前記平坦面と前記ガイド面の接触状態が解除されて、前記フェルールが前記プラグフレームに対してフローティング状態になる。
【0007】
ここで、「貫通穴の軸の方向前方」とは、フェルールにおいて保持されている光ファイバの端部のある方向のことであり、プラグフレームにおいて、光ファイバのフェルールに保持されている端部のある方向のことである。また「貫通穴の軸の方向後方」とは、その反対方向のことである。
【0008】
本開示に係る光接続構造は、本開示の光コネクタと、スリーブを介して本開示の光コネクタに連結される接続対象物と、を備え、光コネクタ側の光ファイバと接続対象物側の光ファイバとを光学的に接続する光接続構造であって、フェルールをスリーブに挿入し、プラグフレームの所定位置に対してフェルールを貫通穴の軸の方向後方に移動させた場合に、平坦面とガイド面の接触状態が解除される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様に係る光コネクタの外観斜視図である。
【0010】
図2図1の光コネクタを構成するフェルールの斜視図である。
【0011】
図3図1の光コネクタを構成するプラグフレームの一部であるフロントハウジングの斜視図である。
【0012】
図4A図3のフロントハウジングのA-A線矢視断面図である。
【0013】
図4B図3のフロントハウジングのB-B線矢視断面図である。
【0014】
図4C図3のフロントハウジングのC-C線矢視断面図である。
【0015】
図5図1の光コネクタの、フェルールをプラグフレームに収容する前の状態を示す断面図である。
【0016】
図6図1の光コネクタの、フェルールをプラグフレームに収容した後の状態を割スリーブと共に示す断面図である。
【0017】
図7図1の光コネクタが、割りスリーブを介して他の光コネクタに接続した状態を示す断面図である。
【0018】
図8】バンドルファイバが組みつけられたフェルールを説明するための概念図である。
【0019】
図9A】他の実施形態によるフェルールの斜視図である。
【0020】
図9B】他の実施形態によるフェルールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本開示による光コネクタおよび光接続構造の実施の形態について説明する。なお、以下では、光コネクタをLCコネクタの例で説明する。
【0022】
図1は、本開示の一態様に係る光コネクタ1の外観斜視図である。光コネクタ1は、フェルール10を収容したプラグフレーム20を備え、プラグフレーム20の後端には、光ファイバFを保護するブーツ34が設けられている。
【0023】
図2は、フェルール10の斜視図である。フェルール10は、フェルール本体11を有する。フェルール本体11は、金属製のフェルールに比べてフェルールの端面の反射を抑えることができるジルコニア製で、内部に貫通穴を有する円筒形であって、貫通穴には、光ファイバFの先端部分の樹脂被覆から露出したガラスファイバが保持される。光ファイバFは、例えば、複数コアを有するマルチコアファイバであり、フェルール本体11の後端13から挿入され、先端面が前端12から露出し、フェルール10の中心軸周りの所定の位置に複数コアが配置された状態で、フェルール10に固定される。以下では、フェルールの貫通孔の軸に平行にX軸を定義し、光ファイバFの先端が露出する方向を正とする。なお、貫通穴の方向を光ファイバFの光軸方向とも呼ぶ。
【0024】
フェルール本体11の略中央位置の外側には、例えば金属製のフランジ14が設けられている。フランジ14は、例えば、断面視略四角形状であり、フランジ14の外周面をなす上面15、「平坦面」である下面16、側面17を有している。上面15と下面16は、光ファイバFの光軸を挟んで対向しており、図示のZ軸方向で所定距離を置いて平行な平面である。両側面17は、上面15と下面16に対して直交方向に配置され、図示のY軸方向で所定距離を置いて平行な平面である。なお、上面15と側面17との境界位置や、下面16と側面17との境界位置は面取りされている。上面15に、回転位置の基準を示すためのマーク(図示省略)を付しておけば、フェルール10を正しい向きでプラグフレーム20に挿入できる。
【0025】
図3は、プラグフレーム20の一部であるフロントハウジング21の斜視図である。フロントハウジング21は、X軸方向に延びた角筒状の樹脂製であり、フランジ14付きのフェルール10を受け入れ可能な後端開口24と、フェルール本体11の前端12を突出させる前端開口23を有する。フロントハウジング21の外周面には、可撓性を有したラッチアーム22が設けられている。
【0026】
図4A図4B図4C各々は、フロントハウジング21のA-A線矢視断面図、B-B線矢視断面図、C-C線矢視断面図である。フロントハウジング21は、内部に上面25、下面26、側面27を有する。上面25と下面26は、図示のZ軸方向で所定距離を置いて平行であり、両側面27は、図示のY軸方向で所定距離を置いて平行である。
【0027】
フロントハウジング21の上面25には、X軸の正方向に向けて次第に内部空間を狭くするテーパ面28が設けられている。テーパ面28よりも開口23側(前方側)には、光軸方向に延びた平坦な嵌合面28aがある。フロントハウジング21の下面26には、テーパ面28に対向する位置に、ガイド面30aがある。ガイド面30aは、下面26よりも1段高い位置に設けられており、光軸方向に延びた平面である。このように、フロントハウジング21内の縦幅を前方に向けて次第に短くしているので、フェルール10をフロントハウジング21の後方からに挿入しやすい。さらにフェルール10を前進させると、フランジ14の外周面とフロントハウジング21の内周面との隙間が小さくなるため、フェルール10をフロントハウジング21に位置決めしやすくなる。
【0028】
なお、フロントハウジング21の側面27にも、X軸の正方向に向けて側面27間の幅を次第に狭くするテーパ面30bが設けられている。フロントハウジング21の下面26において、ガイド面30aよりも開口24側(後方側)には、X軸の正方向に向けて次第に競り上がるテーパ面30が設けられている。これらの点も、フェルール10の挿入しやすさに貢献する。
【0029】
一方、ガイド面30aのX軸方向の長さ(図4B中にLで示す)は後述のコネクタ接続時におけるフランジ14のX軸方向への移動量よりも短く、ガイド面30aの後方(X軸の負方向)は、フランジ14に係合しないクリアランス部29となっている。そして、クリアランス部29は、上面25、下面26、側面27からなる角筒状の内部空間であるが、上面25から下面26までの距離(図示のZ軸方向の長さ)が、フランジ14の厚みよりも長い。フランジ14付きのフェルール10は、フランジ14がクリアランス部29にあるときはフローティング可能になる。
【0030】
図5は、フェルール10をプラグフレーム20に収容する前の状態を示す断面図である。プラグフレーム20は、フロントハウジング21の後方に、リアハウジング31を有する。リアハウジング31は、例えば樹脂製であり、フェルール10の後端部分や「弾性部材」であるコイルばね19を収容可能な円筒状のばね収容部33を有する。コイルばね19は、フェルール10の後方に配置され、フランジ14の後端に当接してフェルール10を前方(X軸の正方向)に付勢する。
【0031】
リアハウジング31の外周面には、ラッチアーム22に係合可能なクリップ32が設けられている。フェルール10の後端部分およびコイルばね19をリアハウジング31に収容し、フェルール10の先端部分をフロントハウジング21に挿入する。フロントハウジング21とリアハウジング31とを突き合わせ、クリップ32がラッチアーム22に乗り上がると、フロントハウジング21がリアハウジング31にラッチされる。同時に、フランジ14は、コイルばね19の付勢力によって前方に押され、フランジ14の下面16がフロントハウジング21のテーパ面30に沿って前方に移動してフロントハウジング21のガイド面30aに乗り上がる。フランジ14の下面16とフロントハウジング21のガイド面30aの接触により、フランジ14とフロントハウジング21とが回転不能に保持され、フランジ14とフロントハウジング21との回転方向の位置合わせが行われる。
【0032】
図6は、フェルール10をプラグフレーム20に収容した後の状態を割スリーブ40と共に示す断面図である。フランジ14は、その下面16がガイド面30aに接触しながら、フロントハウジング21のテーパ面28,30bに沿って前方に移動し、例えば、フランジ14の上面15が、フロントハウジング21の嵌合面28aに接触すると、フェルール10は、その先端部分がフロントハウジング21から突出した位置で位置決めされ、X軸、Y軸、Z軸のいずれの方向にも移動不可になり、光軸回りの回転も不可になる。
【0033】
割りスリーブ40は、フェルール10,10’の直径と略同等、あるいは、フェルール10,10’の直径よりも僅かに小さい内径を有する。また、割りスリーブ40はスリット(図示省略)を有しており、このスリットを広げて内径を大きくすることが可能である。なお、割りスリーブ40を、同種又は異種のコネクタ同士を接続する部品であるアダプタに内蔵してもよい。
【0034】
図7は、光コネクタ1が割りスリーブ40を介して他の光コネクタに接続された光接続構造を示す断面図である。光接続構造は、光コネクタ1と、別の光コネクタ1’とを備えており、割りスリーブ40を用いて光コネクタ1側の光ファイバFと、光コネクタ1’側の光ファイバF’(図示省略)とが光学的に接続されている。光ファイバF’も、複数コアを有するマルチコアファイバであり、フェルール10’の中心軸周りの所定の位置に複数コアが配置された状態で、フェルール10’に固定されている。光コネクタ1’は、断面図で示していないが光コネクタ1と同様に構成され、プラグフレーム20’内に、光ファイバF’を保持したフェルール10’や、フェルール10’を付勢する弾性部材(図示省略)を有する。
【0035】
フェルール10を割りスリーブ40の一端から挿入し、フェルール10’を割りスリーブ40の他端から挿入して、フェルール10側の光ファイバFの端面とフェルール10’側の光ファイバF’の端面とを割りスリーブ40内で面接触させる(コネクタ接続ともいう)。割りスリーブ40がフロントハウジング21内に入り、フェルール10が後方に移動すると、フランジ14がコイルばね19の付勢力に抗して後方に移動するので、フロントハウジング21の嵌合面28aとフランジ14の上面15との接触状態が解除され、さらにフェルール10が後方に移動した場合、フロントハウジング21のガイド面30aとフランジ14の下面16との接触状態が解除される。
【0036】
そして、フランジ14がクリアランス部29に到達すると、フェルール10は、フロントハウジング21に対してフローティング状態になり、X軸、Y軸、Z軸のいずれの方向にも移動可能になり、光コネクタ1’側の光ファイバF’と共に光軸回りの回転も可能になる。
【0037】
このように、光コネクタ1と接続対象物である光コネクタ1’を連結するまで(フェルール10を前方から後方に移動させるまで)は、フランジ14の上面15,下面16とフロントハウジング21の嵌合面28a、ガイド面30aが接触状態になるので、フェルール10がフロントハウジング21に対して位置決めされ、回転も防止される。よって、プラグフレーム20をプラグフレーム20’に対向させることにより、光ファイバFが含む複数のコア各々と光ファイバF’が含む複数のコア各々とを正確に対向させることができる。
【0038】
一方、光コネクタ1と光コネクタ1’を連結した後(フェルール10を後方に移動させた後:コネクタ接続時)は、フランジ14の上面15、下面16とフロントハウジング21の嵌合面28a、ガイド面30aの接触状態が解除され、フェルール10をフロントハウジング21に対してフローティングさせる。フロントハウジング21やリアハウジング31に外力が加えられた場合でも外力はフェルール10に伝わらず、2本の光ファイバFと光ファイバF’による光接続状態を維持できる。
【0039】
このように、位置決め状態とフローティング状態をフランジ14の上面15、下面16とフロントハウジング21の嵌合面28a、ガイド面30aの設置だけで達成しており、光コネクタ1の部品点数が少なくて済み、また光コネクタ1の構造も簡単になる。この結果、構造が簡単で、光接続状態を維持しやすい光接続構造を提供することができる。
【0040】
ところで、上記実施形態では、フランジ14の下面16とフロントハウジング21のガイド面30aとが接触した場合に、フランジ14の上面15および下面16をフロントハウジング21の嵌合面28aおよびガイド面30aで挟持する例を挙げて説明した。この場合、テーパ面とガイド面とでフランジを容易に位置決めできる。しかし、本発明はこの例に限定されず、フロントハウジング21の嵌合面28aは省略してもよい。具体的には、例えばテーパ面28をより急角度に設定することにより、フランジ14の上面15および下面16を、フロントハウジング21のテーパ面28とガイド面30aで挟持することも可能である。
【0041】
また、本発明は、例えば、SCコネクタやMUコネクタを含む他の形式の光コネクタにも適用できる。さらに、本発明の光ファイバは、例えば、シングルモードファイバ、偏波保持ファイバ、あるいはバンドルファイバであってもよい。これらのうちマルチコアファイバ、偏波保持ファイバ、バンドルファイバは、光学的に接続させる際に、中心軸周りの回転角度の調整が必要な光ファイバである。
【0042】
偏波保持ファイバ(例えば応力付与型偏波保持ファイバ)は、図示は省略するが、コアの両側に円形の応力付与部を配置している。シングルモードファイバには、直交する2つの偏波面を持つモード(偏波モード)が存在するが、偏波保持ファイバは、これら2つの偏波モード間に伝搬定数差を生じさせ、一方の偏波モードから他方の偏波モードへの結合を抑制して偏波保持能力を高めたファイバである。
【0043】
バンドルファイバは、マルチコアファイバと光学的に接続させるために、複数のシングルコアファイバを集めたファイバである。詳しくは、例えばガラス径125μmのマルチコアファイバの先端を化学エッチングして例えばガラス径45μmに細径化にしたものを準備し、図8に示すように、複数本(例えば7本)を接着剤でまとめてフェルール10に挿入している。この例の場合、コア間の距離が45μmになるように配置できる。このように、シングルモードファイバの他、マルチコアファイバ、偏波保持ファイバ、バンドルファイバを用いた場合にも、確実に位置決めできるので、接続損失の低下を防止できる。
【0044】
上記実施形態では、製造が容易に断面視略四角形状であるフランジ14の例を挙げて説明した。しかし、本発明のフランジは、断面視軸対称ではない形、例えば断面視D字形や三角形、キーとなる突起を有する形であってもよい。
【0045】
図9Aは、断面視D字形状のフランジ14Aを有するフェルールの例である。フランジ14Aは、平坦な下面16と、下面16の上方に位置する湾曲面15aとを有している。
【0046】
図9Bは、キー突起18を有するフランジ14Bを有するフェルールの例である。フランジ14Bは、「平坦面」である下面16とは異なる側面17の前端部分に、キー突起18を有する。キー突起18は、フェルールの中心軸に対して垂直な断面において略四角形状である。この例の場合、フロントハウジング21は、コイルばね19による付勢方向に平行なキー溝を有し、キー突起18はキー溝の中で摺動する。
【0047】
このように、フランジ14を断面視軸対称ではない形にすれば、回転位置の基準を示すためのマークを付さなくても、フェルール10を正しい向きでプラグフレーム20に挿入できるので、フェルール10とプラグフレーム20との回転方向の位置合わせが容易になる。
【0048】
また、フロントハウジング21がテーパ面28,30bを有する例で説明したが、フランジ14が、上面15、下面16、側面17の光軸方向前方部分に、この光軸方向前方に向けて次第に細くするテーパ面を有してもよい。フランジ14の高さや幅を前方に向けて次第に短くすれば、フェルール10をプラグフレーム20の後方からに挿入しやすい。さらにフェルール10を前進させると、フランジ14とプラグフレーム20との隙間が小さくなるため、フェルール10をプラグフレーム20に位置決めしやすくなる。このようにフランジ14の前方を細くした場合、フロントハウジングは、上記実施形態と同様にテーパ面28,30bを設けて内部空間を狭くしてもよいし、テーパ面28,30bに替えて平坦な面を有してもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1,1’…光コネクタ、10,10’…フェルール、11…フェルール本体、12…前端、13…後端、14…フランジ、15…上面、15a…湾曲面、16…下面、17…側面、18…キー突起、19…コイルばね、20,20’…プラグフレーム、21…フロントハウジング、22…ラッチアーム、23…前端開口、24…後端開口、25…上面、26…下面、27…側面、28…テーパ面、28a…嵌合面、29…クリアランス部、30,30b…テーパ面、30a…ガイド面、31…リアハウジング、32…クリップ、33…ばね収容部、34…ブーツ、40…割りスリーブ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B