(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】フレキシブル画像表示装置用粘着シート、フレキシブル画像表示装置用積層体及び、フレキシブル画像表示装置。
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20230117BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230117BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230117BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J7/38
G09F9/00 313
G09F9/30 308Z
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2021111615
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 智文
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108498(JP,A)
【文献】特開2021-088697(JP,A)
【文献】特表2019-529963(JP,A)
【文献】特開2017-095654(JP,A)
【文献】特開2021-080421(JP,A)
【文献】特開2020-083936(JP,A)
【文献】特開2020-128532(JP,A)
【文献】特開2020-076097(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/20
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーレスポリイミドと粘着剤層を貼付するための、粘着剤層およびセパレータを有するフレキシブル画像表示装置用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、
ゲル分率が55~90%であって、
かつ、-30℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以上8MPa以下であって、
かつ、レオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量αが200~700%であって、
かつ、下記数式(1)により求められる復元率が70%以上であり、
前記粘着剤層は(メタ)アクリル共重合体および硬化剤を含むアクリル系粘着剤を用いて形成され、
前記
(メタ)アクリル共重合体は脂環式モノマーおよび炭素数8以上の分岐アルキル基を有するアクリルモノマーを
原料として含み、
前記アクリル系粘着剤の重量平均分子量(Mw)が100万以上であることを特徴とするフレキシブル画像表示装置用粘着シート。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
(ここでβとはα計測後、ひずみを0kPaとしてから5分後の残留変形量を表す。)
【請求項2】
カラーレスポリイミドに対する粘着剤層の粘着力が10~50N/25mmである請求項1記載のフレキシブル画像表示装置用粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤が数平均分子量の3000~25000のマクロモノマーを含む請求項1又は2記載のフレキシブル画像表示装置用粘着シート。
【請求項4】
カラーレスポリイミドと粘着剤層を貼付するための、粘着剤層およびセパレータを有するフレキシブル画像表示装置用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、
ゲル分率が55~90%であって、
かつ、-30℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以上8MPa以下であって、
かつ、レオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで2
0kPaのひずみを5分間与えた時の変形量αが200~700%であって、
かつ、下記数式(1)により求められる復元率が70%以上であり、
前記粘着剤層は(メタ)アクリル共重合体および硬化剤を含むアクリル系粘着剤を用いて形成され、
前記
(メタ)アクリル共重合体は数平均分子量の3000~25000のマクロモノマー、脂環式モノマーおよび炭素数8以上の分岐アルキル基を有するアクリルモノマーを
原料として含むことを特徴とするフレキシブル画像表示装置用粘着シート。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
(ここでβとはα計測後、ひずみを0kPaとしてから5分後の残留変形量を表す。)
【請求項5】
カラーレスポリイミドに粘着剤層が貼付されたフレキシブル画像表示装置用積層体であって、
前記粘着剤層は、
ゲル分率が55~90%であって、
かつ、-30℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以上8MPa以下であって、
かつ、レオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量αが200~700%であって、
かつ、下記数式(1)により求められる復元率が70%以上であり、
前記粘着剤層は(メタ)アクリル共重合体および硬化剤を含むアクリル系粘着剤を用いて形成され、
前記
(メタ)アクリル共重合体は脂環式モノマーおよび炭素数8以上の分岐アルキル基を有するアクリルモノマーを
原料として含み、
前記アクリル系粘着剤の重量平均分子量(Mw)が100万以上であることを特徴とするフレキシブル画像表示装置用積層体。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
(ここでβとはα計測後、ひずみを0kPaとしてから5分後の残留変形量を表す。)
【請求項6】
カラーレスポリイミドに粘着剤層が貼付されたフレキシブル画像表示装置用積層体であって、
前記粘着剤層は、
ゲル分率が55~90%であって、
かつ、-30℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以上8MPa以下であって、
かつ、レオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量αが200~700%であって、
かつ、下記数式(1)により求められる復元率が70%以上であり、
前記粘着剤層は(メタ)アクリル共重合体および硬化剤を含むアクリル系粘着剤を用いて形成され、
前記
(メタ)アクリル共重合体は数平均分子量の3000~25000のマクロモノマー、脂環式モノマーおよび炭素数8以上の分岐アルキル基を有するアクリルモノマーを
原料として含むことを特徴とするフレキシブル画像表示装置用積層体。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
(ここでβとはα計測後、ひずみを0kPaとしてから5分後の残留変形量を表す。)
【請求項7】
請求項5または6記載のフレキシブル画像表示装置用積層体を含むフレキシブル画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル画像表示装置用粘着シート、フレキシブル画像表示装置用積層体及び、フレキシブル画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ(OLED)等の画像表示装置とタッチパネルを組み合わせて用いる入力装置が普及している。タッチパネルに用いる透明導電性フィルムは、支持ガラス等の部材に粘着剤層を介して積層されている。また、画像装置に用いる偏光板フィルムは、液晶モジュールや有機ELモジュールに粘着剤層を介して貼付される。
【0003】
前記画像表示装置としては、ガラス基板を用いたフラットディスプレイが主流であったが、近年、プラスチック等の可撓性基板を用いたフォルダブルディスプレイ(Foldable display)やローラブルディスプレイ(Rollable display)等の、フレキシブルディスプレイが開発されている。このようなフレキシブルディスプレイは、従来のガラス基板を用いたフラットディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等に優れており、また意匠性にも優れている等の種々の利点を有する。
【0004】
前記粘着剤層には、従来から高温環境や高温高湿環境で発泡や剥がれが生じない性質が必要であったが、近年ではさらに、フレキシブル性が必要となってきている。フレキシブル性とは、例えば、フォルダブルディスプレイにおいては、フォルダブルディスプレイに使用することができるよう、ディスプレイの屈曲に対応する適性(屈曲性)である。一般に、屈曲性としては、折り曲げを繰り返した際、発泡、浮きやハガレが生じない特性(動的屈曲性)が必要とされる。
【0005】
これらの問題を解決すべく、特許文献1は、繰り返し屈曲させても粘着剤層の浮きや剥がれの発生を抑制することを課題とした粘着剤を開示している。特許文献2には、-20℃及び85℃における貯蔵弾性率G’を特定の数値範囲とする屈曲デバイス用粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-513451号公報
【文献】特開2020-139034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォルダブルディスプレイには強度と透明性からカラーレスポリイミドが用いられており粘着剤層とカラーレスポリイミドを貼り合わせた積層体を屈曲すると特に屈曲部で粘着剤に浮きが発生する、或いは粘着剤層中に発泡が生じ白化する問題があった。また、繰り返し屈曲すると端部で粘着剤層のズレが生じ、その粘着剤層が周辺の部材と接触し折り曲げ性が悪化する問題があった。
【0008】
本発明は、繰り返し屈曲しても屈曲部が白化せず、粘着剤のズレが生じないフレキシブル画像表示装置用粘着シート、フレキシブル画像表示装置用積層体及び、フレキシブル画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、カラーレスポリイミドと粘着剤層を貼付するための、粘着剤層およびセパレータを有するフレキシブル画像表示装置用粘着シートであって、前記粘着剤層は、ゲル分率が50~90%であって、かつ、-30℃での貯蔵弾性率が10MPa以下であって、かつ、レオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量αが200~1000%であって、かつ、下記数式(1)により求められる復元率が70%以上であることを特徴とするフレキシブル画像表示装置用粘着シートに関する。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
(ここでβとはα計測後、ひずみを0kPaとしてから5分後の残留変形量を表す。)
【発明の効果】
【0010】
上記構成の本発明によれば曲げ箇所の白化が無く、端部のズレが無い高精度なフレキシブル画像表示装置用粘着シートを提供できる。これにより、折り曲げても視認性及びコントラストが良好且つ折り曲げ性も良好なフレキシブル画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本発明の粘着シートは、粘着フィルム、粘着テープおよび粘着ラベルと同義である。また、特に言及しない限り、粘着剤中の各種配合成分は、それぞれ独立に、単独または2種類以上を併用できる。また、(メタ)アクリルはアクリル或いはメタクリルを、(メタ)アクリレートはアクリレート或いはメタクリレートをそれぞれ意味する。
【0012】
<フレキシブル画像表示装置用粘着シート>
本願発明のフレキシブル画像表示装置用粘着シート(以下、粘着シートとも省略する)は粘着剤層およびセパレータからなり、粘着剤層の一方面にセパレータが積層された形態、並びに粘着剤層の両面をセパレータで挟みこむ形態のいずれも含まれる。中でも両面を挟み込む形態が好ましい。
尚、粘着剤層は単層であることが好ましいが、間に芯材を設ける形態も好ましい。
芯材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドを用いることができる。
【0013】
<粘着剤層>
本願発明の粘着剤層は所定のゲル分率、弾性率、変形量α、及び復元率を満たし、カラーレスポリイミドと貼り合わせフレキシブル画像表示装置として曲げて使用した際に、曲げ部の白化と端部のズレを抑制することができる。
【0014】
[ゲル分率]
粘着剤層のゲル分率は50~90%であって、55~90%がより好ましい。ゲル分率を上記範囲とすることで、曲げ箇所の白化が良化する。ゲル分率は養生時間、温度の調整並びに、硬化剤量や数平均分子量が6000程度のアクリルモノマーや炭素数10以上の低極性成分、ヒドロキシ基含有モノマーの割合によって上記範囲に制御できる。
【0015】
[-30℃の貯蔵弾性率]
粘着剤層の-30℃での貯蔵弾性率(以下、貯蔵弾性率とも省略する)は10MPa以下であって、8MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。貯蔵弾性率を上記範囲とすることで、曲げ部の白化を抑制できる。また、貯蔵弾性率の上限は0.5MP以上が好ましい。
上記弾性率はアクリル系粘着剤に2―エチルへキシルアクリレートなどの炭素数10以上のアルキル基を用いることで調整できる。
【0016】
[変形量α]
粘着剤層の変形量αは200~1000%であって、200~700%か好ましく、300~600%がより好ましい。粘着剤層の変形量αを上記範囲とすることで、端部のズレが抑制される。ここで、本発明における粘着剤層の変形量αとは、厚さ1mmの粘着剤層をレオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量である。変形量αは粘着剤の硬化剤量を低下させると向上し、硬化剤量を増加させると変形量αが低下する。
【0017】
[復元率]
粘着剤層の復元率は70%以上であって、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。復元率を70%以上とすることで曲げ箇所の白化が良化する。
本発明における復元率とは、数式1により算出される値である。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
(ここでβとは上述したレオメータによるα計測後、ひずみを0kPaとした後、5分後の残留変形量αを表す。)
復元率は粘着剤層の硬化剤量を増加させると向上する。また、2―エチルへキシルアクリレートなどの炭素数10以上の分岐アルキル基や数平均分子量が6000程度のアクリルモノマーの割合を増やすことで向上する。
【0018】
<カラーレスポリイミド>
本フレキシブル画像表示装置用粘着シートはカラーレスポリイミドと貼り合わせることを特徴とする。カラーレスポリイミドとは400nm~700nmにおける透過率が80%以上であって、ガラス転移温度が250℃以上のポリイミドフィルムである。厚みは好ましくは10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
本発明の粘着シートのカラーレスポリイミドに対する粘着力は、10~50N/25mmであることが好ましく、15~45N/25mmがより好ましい。上記範囲とすることでカラーレスポリイミドと粘着剤層界面の端部のズレが抑制される。
粘着力を上記範囲内とするためカラーレスポリイミド表面にコロナ処理又はプラズマ処理を施してもよい。
【0019】
[粘着剤]
粘着剤層はアクリル系、ウレタン系、ゴム系等種々の粘着剤を用いて形成することが好ましく、特にアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
アクリル系粘着剤とは(メタ)アクリル共重合体からなる粘着剤である。この(メタ)アクリル共重合体)は、硬化剤と架橋し得る官能基を有する反応性官能基含有モノマーに由来するユニットを有することが好ましい。上記の粘着剤より形成された粘着剤層中の(メタ)アクリル共重合体と硬化剤との間で架橋を促すことにより、粘着剤層は硬化せしめられ、架橋構造が形成される。
【0020】
≪マクロモノマーの数平均分子量≫
アクリル系粘着剤は数平均分子量が3000~25000のマクロモノマーを含むことが好ましい。マクロモノマー数平均分子量は4000~10000が好ましく、5000~8000がより好ましい。上記範囲とすることで曲げ箇所の白化が良化する。
上記のマクロモノマーの市販品を挙げると、例えば、分子末端がメタクリロイル基であって、ポリマー鎖がポリメチルメタクリレートであるマクロモノマー(製品名:AA-6、AA-6S、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がポリスチレンであるマクロモノマー(製品名:AS-6S、AS-6、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がスチレン/ アクリルニトリルの共重合体であるマクロモノマー(製品名:AN-6S、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB-6、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB-8、数平均分子量8000;東亞合成社製)等が挙げられる。
【0021】
マクロモノマーは、単独または2種以上を使用できる。
【0022】
マクロモノマーは、モノマー混合物100質量%中に、1~10質量%を含むことが好ましく、4~8質量%がより好ましい。含有量が1質量%以上になると硬さかと柔らかさをより高い水準で両立できる。また、含有量が10質量%以下になると屈曲性がさらに向上する。
【0023】
≪脂環式モノマー≫
アクリル系粘着剤は脂環式モノマーを含むことで、粘着力や復元率が向上するため好ましい。前記脂環式モノマーは、ハードセグメントとして凝集力の向上に寄与するため粘着力の剥離強度や復元率が向上すると考えられる。
【0024】
前記脂環式モノマーは(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ脂環構造含有基を有するものである。ここで、「脂環構造含有基」とは、少なくとも一つの脂環構造を含む部分をいい、以下、脂環式基と呼ぶことがある。脂環式基としては脂環構造を有する炭化水素基や炭化水素オキシ基が挙げられる。前記脂環式モノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
脂環式モノマーは、モノマー混合物100質量%中に、1~20質量%を含むことが好ましく、5~15質量%がより好ましい。含有量が1質量%以上になると硬さかと柔らかさをより高い水準で両立できる。また、含有量が20質量%以下になると屈曲性がさらに向上する。
【0026】
[硬化剤]
前記アクリル系粘着剤は硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤とはエポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、アジリジン系硬化剤、アミン系硬化剤、チオール系硬化剤、酸無水物系硬化剤から選択でき、なかでもエポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤が好ましい。
粘着剤100質量%に対して、0.1~80質量%を含むことが好ましい。この範囲とすることにより、凝集力が高く復元率を向上することできる。より好ましい範囲は、0.1~30質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0027】
≪芳香族系化合物≫
硬化剤は芳香族系化合物であることが好ましい。具体的にはエポキシ系の芳香族系化合物としてフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールエタン型、ビキシレノール型もしくはビフェノール型、複素環を有するエポキシなどがあげられる。イソシアネート系の芳香族系化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびこれらのアロファネート体、ビウレット体、イソシアヌレート体、プレポリマー体およびアダクト体があげられる。アミン系の芳香族系化合物としては、例えばメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環を含むアミンなどがあげられる。チオール系の芳香族系化合物としては、例えばN,N-ジメチルアニリン等の三級アミン、メルカプトベンゾイミダゾールなどがあげられる。酸無水物系の芳香族系化合物としては、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などがあげられる。
【0028】
[Zn含有量]
粘着剤層はZnが0.01%以上、0.2%以下含むことが好ましい。粘着剤層にZnを上記範囲含有することで、復元率が良化する。Znは粘着剤層を形成する原料としてZn化合物を含有させることが好ましい。Zn化合物としてステアリン酸亜鉛等、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛が挙げられる。これらの中では、粘着剤層での分散性に優れるために、透明性が良好な、粘着剤組成物が得られることから、酢酸亜鉛が特に好ましい
【0029】
<粘着剤層の形成>
本発明の粘着剤層は、粘着剤組成物から形成される。粘着剤組成物とは、後述する粘着剤に必要に応じて硬化剤や粘着付与樹脂、溶剤を配合したものである。粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物をセパレータに塗布し、溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成する方法が挙げられる。一方、カラーレスポリイミドに前記粘着剤組成物を直接塗布し溶剤等を乾燥して粘着剤層を形成しても良い。
【0030】
セパレータは紙、プラスチックフィルム、合成紙等の基材に、剥離剤を塗工して形成した剥離層を有する。剥離剤は、例えばシリコーン、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、セパレータの厚さは特に制限はないが10~200μm程度である。
【0031】
上述の溶剤の乾燥温度は、好ましくは40~200℃であり、さらに好ましくは、50~180℃であり、特に好ましくは70~170℃である。乾燥温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0032】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0033】
前記粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0034】
本発明の粘着剤層の厚みは、好ましくは5~150μmであり、より好ましくは15~100μmである。粘着剤層は、単一層であってもよく、組成の異なる粘着剤を積層してもよい。前記範囲内であれば、屈曲を阻害することなく、また、密着性の点でも、好ましい態様となる。150μmを超える場合、繰り返し屈曲時に、粘着剤層中のポリマー鎖が動きやすなり、劣化が激しくなるため、ハガレが発生する恐れがあり、5μm未満の場合、屈曲時の応力を緩和できず、破断が発生する恐れがある。
【0035】
フレキシブル画像表示装置用粘着シートをフレキシブル画像表示装置に用いる場合の一例として、まず一方の面のセパレータを剥がし、露出した粘着剤層にカラーレスポリイミドを貼り合わせる。次いで対向するもう一方のセパレータを剥がし露出した粘着剤層と偏光板や透明導電膜を貼り合わせることによりフレキシブル画像表示装置用積層体を形成する。
尚、粘着剤層とカラーレスポリイミドの積層面にハードコート層や、易接着用コーティング層が積層されていても良い。
【0036】
<フレキシブル画像表示装置>
フレキシブル画像表示装置は、屈曲機能を有することが大きな特徴の1つであり、上記のフレキシブル画像表示装置用積層体と、折り曲げ可能に構成された有機EL表示パネルとを含み、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル画像表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。また、有機EL表示パネルに代えて、液晶パネルであってもよく、更に、フレキシブル画像表示装置用積層体に対して視認側にウインドウが配置されていてもよい。
【0037】
本発明のフレキシブル画像表示装置としては、フレキシブルの液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの画像表示装置として好適に用いることができる。また、抵抗膜方式や静電容量方式といったタッチパネル等の方式に関係なく使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」に基づく値である。
【0039】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用いた。重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : -30℃
【0040】
<粘着剤の合成>
粘着剤の合成に用いたモノマー並びに、市販の粘着剤、添加剤、硬化剤の詳細を下記に示す。
2EHA:2-エチルへキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
CH:シクロヘキシルアクリレート
AA-6:マクロモノマー(片末端メタクリロイル基ポリメチルメタクリレート、数平均分子量6000(東亜合成社製))
AK-32:マクロモノマー(片末端メタクリロイル基ポリジメチルシロキサン、数平均分子量20000(東亜合成社製))
AA:アクリル酸
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
Am:アクリルアミド
P6010:ポリ3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート
MDI:ポリイソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体
D-110N:ポリイソシアネート化合物としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体
D-160N:ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体
EX-313:多官能エポキシ化合物(グリセロールポリグリシジルエーテル)
PZ-33:3官能アジリジン化合物
X-40-3229:シリコーン系粘着剤;信越シリコーン社製
KR3700:シリコーン系粘着剤;信越シリコーン社製
TUFTEC H1272:水添スチレンエラストマー(SEBS);旭化成社製
LA2330:PMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体、Mw:99400、PMMA/PnBA=20/80(質量比);クラレ社製
LA4285:PMMA-PnBAブロック共重合体、Mw:60000、PMMA/PnBA=55/45(質量比);クラレ社製
FTR6100:スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体、軟化点95℃;三井化学社製
XK-614:非スズ系ウレタン硬化触媒
CAT-PL-50T:白金触媒;信越化学社製
【0041】
<粘着剤R1の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、マクロモノマーAA-6(東亜合成社製、片末端メタクリロイル基アクリル酸ブチル)(AA-6)5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)5部、2-エチルへキシルアクリレート(EHA)60部、n-ブチルアクリレート(BA)20部、イソボルニルアクリレート(IBXA)10部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を50℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度3000mPa・sのアクリル系共重合体である、粘着剤(R1)を得た。得られた粘着剤(R1)の重量平均分子量は140万であった。
【0042】
(粘着剤R2~R12)
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、粘着剤(R1)の製造と同様の方法でR2~R12を合成した。得られた粘着剤の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0043】
【0044】
(粘着剤R13の合成)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリオール「P1010(2官能ポリエステルポリオール、クラレ社製)」25.0部、「PPG1000(2官能ポリプロピレングリコール、三洋化成工業社製)」75.0部、「イソホロンジイソシアネート」20.0部、トルエン23.6部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った-30℃まで冷却し、酢酸エチル76.4部を加えた。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。このウレタン樹脂(R13)の分子量(Mw)は200,000不揮発分30%のウレタン系の粘着剤(R13)を得た。
【0045】
<実施例1に係る粘着シートの作成>
粘着剤(R1)100部と、硬化剤であるD-110Nを0.40重量部配合し、更に酢酸エチルを加えて不揮発分を20%に調整した粘着剤組成物を得た。
【0046】
前記粘着剤組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータに、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、100℃で2分間熱風乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータを貼り合せ、実施例1の粘着シートを得た。
【0047】
<ゲル分率の測定>
粘着シートを30mm×100mmの大きさに裁断し、一方面のセパレータを剥離し露出した粘着剤層を、秤量した300メッシュのステンレス製金網(重量W0)に貼り付け、もう一方のセパレータを剥離して試料とした。前記試料を秤量した重量をW1とし、試料を酢酸エチル中で24時間静置後、100℃で1時間乾燥させ秤量した重量をW2とし、下記式で算出した。
ゲル分率(%)={(W2-W0)/(W1-W0)}×100
【0048】
<-30℃の貯蔵弾性率の測定>
粘着シートの一方面のセパレータを剥がしたシートを2組用意し、粘着剤層同士をラミネータで貼り合わせ、セパレータ/粘着剤層/セパレータの積層体を作成した。前記積層体から一方面のセパレータを剥離して貼り合わせを繰り返すことで、厚さ1mmの粘着剤層の積層物を形成した。この積層物に対し、レオメータ(TAインスツルメント社製、DHR-2)にてφ8mmの測定プローブを用いて、歪み0.1%、周波数1Hz、-70℃から200℃まで昇温速度10℃/分の条件で貯蔵弾性率G’を測定した。
【0049】
<変形量αと復元率の測定>
粘着シートの一方面のセパレータを剥がしたシートを2組用意し、粘着剤層同士をラミネータで貼り合わせ、セパレータ/粘着剤層/セパレータの積層体を作成した。前記積層体から一方面のセパレータを剥離して貼り合わせを繰り返すことで、厚さ1mmの粘着剤層の積層物を形成した。この積層物に対し、レオメータ(TAインスツルメント社製、DHR-2)にてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量を変形量αとし、変形量α計測後ひずみを0KPaとした後、5分後の残留変形量をβとし、下記数式1にて「復元率」を算出とした。
復元率=(α-β)/α×100・・・(数式1)
【0050】
<カラーレスポリイミドに対する粘着剤層の粘着力>
粘着シートの一方面のセパレータを剥がして50μmのPETフィルムにラミネータを用いて貼り付けた。続いて、もう一方のセパレータを剥がし、一方の面に出力300Wでコロナ処理を施した厚さ50μmのカラーレスポリイミド(KOLON社製)のコロナ処理面にラミネータにより貼り付けた。その後50℃、5気圧のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、23℃で1日放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。
【0051】
<曲げ試験による曲げ箇所の白化及び端部のズレの評価>
作製した粘着シートからセパレータを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気でカラーレスポリイミド(KOLON社製、50μm)にラミネータを用いて貼着し、もう一方のセパレータを剥がして、厚みが188μmのPETフィルムにラミネータを用いて貼り合わせ、PETフィルム/粘着剤層/カラーレスポリイミドからなる試験用積層体を得た。次いで試験用積層体を、常態試験として25℃、相対湿度50%雰囲気にて折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)を用いて、折り曲げた時の内径(直径)が6mm条件に設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。別途、内径(直径)が3mmの条件に変更した試験も行った。試験後の外観を曲げ箇所の白化と端部のズレについて下記基準で評価した。
外観:試験用積層体の気泡の有無および粘着剤層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
[曲げ箇所の白化]
5:折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が見られない。
4:折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が10個以下である。
3:折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が11個以上50個以下である。
2:折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が51個以上100個以下である。
1:折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が100個以上である。
[端部のズレ]
5:PETフィルムと偏光板のズレが1mm未満である。
4:PETフィルムと偏光板のズレが1mm以上、2mm未満である。
3:PETフィルムと偏光板のズレが2mm以上、3mm未満である。
3:PETフィルムと偏光板のズレが3mm以上、4mm未満である。
1:PETフィルムと偏光板のズレが4mm以上である。
【0052】
(実施例2~21、比較例1~3)
実施例1と同様の方法で実施例2~21、比較例1~3の粘着シートを得た。配合比率及び評価結果を表2~3に示す。
【0053】
【0054】
【要約】
【課題】
繰り返し屈曲しても屈曲部が白化せず、粘着剤のズレが生じないフレキシブル画像表示装置用粘着シート、フレキシブル画像表示装置用積層体及び、フレキシブル画像表示装置の提供。
【解決手段】
粘着剤層およびセパレータからなるフレキシブル画像表示装置用粘着シートであって、前記粘着剤層のゲル分率が50~90%であって、かつ、-30℃での貯蔵弾性率が10MPa以下であって、かつ、レオメータにてφ8mmの測定プローブを用いて25℃、パラレルプレートで20kPaのひずみを5分間与えた時の変形量αが200~1000%であって、復元率が70%以上であることを特徴とするフレキシブル画像表示装置用粘着シートにより解決される。
【選択図】なし