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  • 特許-電気部品用リード線及び電気部品 図1
  • 特許-電気部品用リード線及び電気部品 図2
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  • 特許-電気部品用リード線及び電気部品 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】電気部品用リード線及び電気部品
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/591 20210101AFI20230117BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20230117BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20230117BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20230117BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20230117BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20230117BHJP
【FI】
H01M50/591
H01G11/06
H01G11/74
H01M50/543
H01M50/553
H01M50/586
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021189645
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2020083455の分割
【原出願日】2016-07-21
(65)【公開番号】P2022033809
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】松村 友多佳
(72)【発明者】
【氏名】西川 信也
(72)【発明者】
【氏名】福田 豊
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智之
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179193(JP,A)
【文献】特開2003-168402(JP,A)
【文献】特開2004-63133(JP,A)
【文献】特開2002-203534(JP,A)
【文献】特開2004-263032(JP,A)
【文献】特開2004-200144(JP,A)
【文献】特開2001-256960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/591
H01G 11/06
H01G 11/74
H01M 50/543
H01M 50/553
H01M 50/586
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊状導体と、この短冊状導体の両面を被覆する一対の絶縁フィルムとを備える電気部品用リード線であって、
上記短冊状導体の弾性率Dmが50GPa以上300GPa以下であり、かつ
上記一対の絶縁フィルムの平均弾性率Diがいずれも100MPa以上1,400MPa以下である電気部品用リード線。
【請求項2】
180°折り曲げ後の曲げ戻り角度が20°以下である請求項1に記載の電気部品用リード線。
【請求項3】
上記短冊状導体の弾性率Dmが60GPa以上250GPa以下ある請求項1又は請求項2に記載の電気部品用リード線。
【請求項4】
上記一対の絶縁フィルムの平均弾性率Diがいずれも200MPa以上720MPa以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電気部品用リード線。
【請求項5】
上記短冊状導体の平均厚みが30μm以上200μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気部品用リード線。
【請求項6】
上記一対の絶縁フィルムの平均厚みがいずれも25μm以上200μm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気部品用リード線。
【請求項7】
上記一対の絶縁フィルムが複数層に積層されたものである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気部品用リード線。
【請求項8】
請求項1に記載の電気部品用リード線を備える電気部品。
【請求項9】
非水電解質電池である請求項8に記載の電気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品用リード線及び電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化の要求に伴い、その電源として用いられる電池の小型化、軽量化の要求が強まっている。一方、電池に対する高エネルギー密度化、高エネルギー効率化も求められている。こうした要求を満たすため、主として合成樹脂等からなる袋体の内部に電極及び電解液等が封入された非水電解質電池(例えばリチウムイオン電池等)への期待が高まっている。
【0003】
このような非水電解質電池においては、電流を外部に取り出すために、袋体からリード線が延びているのが一般的である。リード線としては、アルミニウム等の金属製のリード導体のみからなるものの他、リード導体を熱可塑性樹脂の絶縁層により被覆したものが知られている。そして、リード線は、例えば袋体の開口端部の内面によってリード線を挟んだ状態でその開口端部をヒートシールすることで、袋体に取り付けられる。
【0004】
このようなヒートシールによりリード導体を袋体に取り付ける方法では、絶縁層がヒートシール時の加熱時に溶融しリード導体が袋体の金属層とショートする可能性がある。そこで、絶縁層を架橋ポリオレフィンからなる架橋層を含むものとすることで、絶縁層の溶融を回避することが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-102016号公報
【文献】特開2009-259739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のリード線を備える非水電解質電池は、上記リード線を折り曲げた状態で電子機器に収納されることが多い。そのため、上記電子機器の製造の際、上記非水電解質電池の備えるリード線は、リード導体が絶縁層で被覆されている箇所で折り曲げられ、この折り曲げ形状を維持したまま下流工程に送られることがある。そのため、リード線を折り曲げて使用することを想定した場合、スプリングバックが生じ難く折り曲げ形状を好適に維持できるリード線が望まれている。
【0007】
ここで、リード導体はアルミニウム等の金属であり、折り曲げた際に塑性変形し、折り曲げ形状を保持しようとする力を生じる。一方で、絶縁層は樹脂等であるため、折り曲げた際に弾性変形し、折り曲げ形状から元の形状に復帰しようとする力を生じる。この2つの力のうち、絶縁層の弾性変形に起因する折り曲げ形状から元の形状に復帰しようとする力の方が強く作用した場合、上記リード線が曲げ形状を保持できずに少しだけ元の形状に復帰する現象(スプリングバック)が生じる。しかし、スプリングバックは、金属製リード導体及び樹脂製絶縁層という材質の異なる2つの部材の相互作用によって生じる複雑な現象であるため、リード導体及び絶縁層にどのような部材を適用すればスプリングバックを十分に抑制できるかを正確に予測することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、折り曲げ使用するときにスプリングバックが生じ難く、曲げ形状を好適に維持できる電気部品用リード線及び電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る電気部品用リード線は、短冊状導体と、この短冊状導体の両面を被覆する一対の絶縁フィルムとを備える電気部品用リード線であって、上記短冊状導体の弾性率Dmが50GPa以上300GPa以下であり、かつ上記一対の絶縁フィルムの平均弾性率Diがいずれも100MPa以上1,400MPa以下である。
【0010】
本発明の一形態に係る電気部品は、当該電気部品用リード線を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によれば、折り曲げ使用するときにスプリングバックが生じ難く、曲げ形状を好適に維持できる電気部品用リード線と、作業効率に優れる電気部品とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の別の一態様に係るリチウムイオン電池の一例を説明するための一部を破断して示した模式的斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿う模式的断面図である。
図3A図3Aは、本発明の一態様に係る電気部品用リード線における短冊状導体及び絶縁フィルムの断面二次モーメントを説明するための長手方向視の模式的断面図である。
図3B図3Bは、図3Aの電気部品用リード線の短冊状導体のみを示す模式的断面図である。
図3C図3Cは、図3Aの電気部品用リード線の絶縁フィルムのみを示す模式的断面図である。
図4A図4Aは、スプリングバック角度の評価に用いたリード線を説明するための模式的平面図である。
図4B図4Bは、図4Aのリード線の模式的断面図である。
図5A図5Aは、スプリングバック角度の評価方法の一工程を説明するための模式的断面図である。
図5B図5Bは、図5Aの次の工程を説明するための模式的断面図である。
図6図6は、スプリングバック角度の測定結果と、短冊状導体の幅1mm当たりの形状保持力Hに対する一対の絶縁フィルムの幅1mm当たりの弾性回復力Rの比(R/H)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一形態に係る電気部品用リード線は、短冊状導体と、この短冊状導体の両面を被覆する一対の絶縁フィルムとを備える電気部品用リード線であって、上記短冊状導体の弾性率をD[Pa]、幅1mm当たりの断面二次モーメントをI[m/1mm]とし、下記数式1で表される上記短冊状導体の幅1mm当たりの形状保持力H[N・m/1mm]が3.0×10N・m/1mm以上6.0×10-2N・m/1mm以下、かつ上記一対の絶縁フィルムの平均弾性率をD[Pa]、幅1mm当たりの断面二次モーメントをI[m/1mm]とし、下記数式2で表される上記絶縁フィルムの幅1mm当たりの弾性回復力R[N・m/1mm]が3.0×10-5N・m/1mm以上6.0×10-3N・m/1mm以下である。
H=D×I・・・(1)
R=D×I・・・(2)
【0014】
ここで、リード線にスプリングバックが生じる理由は、上述のように短冊状導体の塑性変形に起因する折り曲げ形状を保持しようとする力よりも、絶縁フィルムの弾性変形に起因する折り曲げ形状から元の形状に復帰しようとする力の方が強く作用するためであると考えられる。そのため、短冊状導体の塑性変形に起因する力を大きくし、一方で絶縁フィルムの弾性変形に起因する力を小さくすれば、スプリングバックが抑制されてリード線の折り曲げ形状を維持し易くなると考えられる。ここで、リード線が折り曲げ形状を維持できるか否か、すなわちスプリングバックの発生し易さは、短冊状導体や絶縁フィルムの材質だけでなく、これらの厚み、形状にも依存すると考えられる。そこで、本発明者らは、当該電気部品用リード線の短冊状導体がスプリングバックに与える影響をその弾性率及び幅1mm当たりの断面二次モーメントをパラメータとする上記数式(1)で表される幅1mm当たりの形状保持力で判断できることを見出した。また、本発明者らは、当該電気部品用リード線の絶縁フィルムがスプリングバックに与える影響をその弾性率及び幅1mm当たりの断面二次モーメントをパラメータとする上記数式(2)で表される幅1mm当たりの弾性回復力で判断できることを見出した。さらに、本発明者らは、当該電気部品用リード線の絶縁フィルム及び短冊状導体によるスプリングバックに対する影響を短冊状導体の幅1mm当たりの形状保持力に対する一対の絶縁フィルムの幅1mm当たりの弾性回復力の比に関連付け、その比を上記上限以下とすることで、折り曲げ使用するときにスプリングバックが生じ難く、曲げ形状を好適に維持できることを見出した。
【0015】
このように当該電気部品用リード線は、短冊状導体の幅1mm当たりの形状保持力に対する一対の絶縁フィルムの幅1mm当たりの弾性回復力の比を上記上限以下とすることで、スプリングバックが生じ難く、曲げ形状を好適に維持できる。そのため、リード線を折り曲げて使用する場合、その折り曲げ形状が維持され易いため、リード線を折り曲げた後に固着用テープ等を用いて折り曲げたリード線を他の要素に固定する必要がない。その結果、当該電気部品用リード線は、折り曲げて使用する場合の製造工程を簡略化でき、また折り曲げて使用することで省スペース化に寄与できる。
【0016】
ここで、「平均厚み」とは、任意の5点で測定した厚みの平均値を意味する。「弾性率」とは、短冊状導体及び絶縁フィルムに精密万能試験機(引張試験機)を用いて引張変形を加えた時のSSカーブ(応力-歪み曲線)の立ち上がりの傾きを指す。この弾性率の測定においては、引張試験機のサンプル把持(チャック)間隔を50mmとし、50mm/minで引っ張ることとする。但し、短冊状導体の弾性率測定の際には、試料と試験機のつかみ具との間での滑りの影響を考慮するため、微小変位を測定可能な歪みゲージを試料に取り付け測定するものとする。なお、この弾性率の測定で直接求められるのは(試験力[N]-移動距離[mm]曲線)となるが、下記数式(3)及び(4)に示すようにサンプルサイズ及びチャック間隔を用いて(応力[Pa]-歪み[%]曲線)に変換し、弾性率を求めることとする。また、短冊状導体及び絶縁フィルムが多層構造体である場合においても、上述した方法により弾性率を求めることができる。さらに、「一対の絶縁フィルムの平均弾性率」とは、2枚の絶縁フィルムのそれぞれの弾性率の測定値の平均を意味する。以下、「平均厚み」又は「弾性率」という場合には同様に定義される。
応力[Pa]=試験力[N]÷幅[mm]÷厚み[mm]・・・(3)
歪み[%]=移動距離[mm]÷チャック間隔[mm]×100・・・(4)
【0017】
当該電気部品用リード線は、180°折り曲げ後の曲げ戻り角度が20°以下であるとよい。このようなリード線によれば、180°折り曲げ後の曲げ戻り角度、すなわちスプリングバック角度が20°以下であることで、折り曲げ形状をより好適に維持できるため、リード線を折り曲げ、その形状を維持させる作業がより容易となり作業性がより向上する。
【0018】
上記弾性回復力Rとしては、3.0×10-5N・m/1mm以上6.0×10-3N・m/1mm以下が好ましい。このようなリード線によれば、上記弾性回復力Rが上記範囲であることで、当該電気部品用リード線の折り曲げ後のスプリングバックを適切に小さくできる。その結果、当該電気部品用リード線の折り曲げ作業がより容易となり作業性がより向上する。
【0019】
上記形状保持力Hとしては、3.0×10-4N・m/1mm以上6.0×10-2N・m/1mm以下が好ましい。このようなリード線によれば、上記形状保持力Hが上記範囲であることで、折り曲げ形状をより好適に維持できるため、当該電気部品用リード線に折り曲げ形状を適切に維持できる形状保持性を付与できる。その結果、当該電気部品用リード線の折り曲げ作業がより容易となり作業性がより向上する。
【0020】
上記短冊状導体の平均厚みとしては、30μm以上200μm以下が好ましく、上記短冊状導体の弾性率としては、50GPa以上300GPa以下が好ましい。このようなリード線によれば、短冊状導体の形状保持力を好適な範囲とし、当該電気部品用リード線に折り曲げ形状を適切に維持できる形状保持性を付与できる。その結果、当該電気部品用リード線の折り曲げ作業がより容易となり作業性がより向上する。
【0021】
上記各絶縁フィルムの平均厚みとしては、いずれも25μm以上200μm以下が好ましく、上記各絶縁フィルムの弾性率としては、いずれも100MPa以上1,400MPa以下が好ましい。このようなリード線によれば、絶縁フィルムの弾性回復力を好適な範囲とし、当該電気部品用リード線の折り曲げ後のスプリングバックを適切に小さくできる。その結果、当該電気部品用リード線の折り曲げ作業がより容易となり、作業性がより向上する。
【0022】
本発明の一形態に係る電気部品は、当該電気部品用リード線を備える。当該電気部品は、当該電気部品用リード線を備えるため、当該電気部品用リード線の折り曲げ、その形状を維持する作業を簡略化できることで、作業効率を向上できる。
【0023】
当該電気部品は、非水電解質電池であるとよい。このように、当該電気部品は、作業効率に優れるため、非水電解質電池として好適に用いることができる。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る電気部品用リード線及び電気部品の具体例について図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
<電気部品用リード線>
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る電気部品用リード線1は、短冊状導体2と、この短冊状導体2の両面を被覆する一対の絶縁フィルム3とを備える。
【0026】
(短冊状導体)
短冊状導体2は、リチウムイオン電池4等の電気部品の電極(正極5A及び負極5B)等に接続されるものである。この短冊状導体2は、導電性の高い材料により形成されている。このような導電性の高い材料としては、例えばアルミニウム、チタン、ニッケル、銅、アルミニウム合金、チタン合金、ニッケル合金、銅合金等の金属材料や、これら金属材料をニッケル、金等でメッキした材料などが挙げられる。リチウムイオン電池4等の電気部品の正極5Aに接続される短冊状導体2の形成材料としては、放電時に溶解しないもの、具体的にはアルミニウム、チタン、アルミニウム合金及びチタン合金が好ましい。一方、負極5Bに接続される短冊状導体2の形成材料としては、ニッケル、銅、ニッケル合金、銅合金、ニッケルメッキ銅及び金メッキ銅が好ましい。なお、短冊状導体2は、耐電解液性の向上等のため、クロメート処理、三価クロム処理、ノンクロメート処理、粗面化処理等の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理により、短冊状導体2の耐電解溶液性を向上できる。
【0027】
短冊状導体2の弾性率をD[Pa]、幅1mm当たりの断面二次モーメントをI[m/1mm]とした場合に下記数式(1)で表される短冊状導体2の幅1mm当たりの形状保持力H[N・m/1mm]の下限値としては、3.0×10-4N・m/1mmが好ましく、2.0×10-3N・m/1mmがより好ましい。この形状保持力Hの上限値としては、6.0×10-2N・m/1mmが好ましく、1.0×10-2N・m/1mmがより好ましい。
H=D×I・・・(1)
【0028】
短冊状導体2は、上記形状保持力Hが上記範囲であることで、折り曲げ形状をより好適に維持できるため、電気部品用リード線1に折り曲げ形状を適切に維持できる形状保持性を付与できる。その結果、電気部品用リード線1の折り曲げ、その形状を維持させる作業がより容易となり作業性がより向上する。
【0029】
ここで、上記数式(1)における短冊状導体2の幅1mm当たりの断面二次モーメントと、後述する数式(2)における一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの断面モーメントとの求め方について、図3Aの電気部品用リード線11を例に説明する。図3Aに示す電気部品用リード線11は、一対の絶縁フィルム13の平均厚みが同一であり、かつ平均幅が同一である。この電気部品用リード線11の平均厚みをT、短冊状導体12の平均厚みをT[m]、一対の絶縁フィルム13の各平均厚みをT[m]とする。また、短冊状導体12の平均幅をW[m]、一対の絶縁フィルム13の平均幅をW[m]とする。さらに、電気部品用リード線11を厚み方向に2等分する面(短冊状導体12を厚み方向に2等分する面)を電気部品用リード線11の曲げ変形の中心面Mと見做すことができる。
【0030】
次に、短冊状導体12の断面モーメントは、図3Bに示す断面形状をもとに下記数式(5)により算出できる。同様に、一対の絶縁フィルム13の断面モーメントは、図3Cに示す断面形状をもとに下記数式(6)により算出できる。
短冊状導体の幅1mm当たりの断面二次モーメント[m/1mm]=1/12×短冊状導体の平均幅W[m]×(短冊状導体の平均厚みT[m])/短冊状導体の平均幅W[mm]・・・(5)
一対の絶縁フィルムの幅1mm当たりの断面二次モーメント[m/1mm]=1/12×一対の絶縁フィルムの平均幅W[m]×{(電気部品用リード線の平均厚みT[m])-(短冊状導体の平均厚みT[m])}/一対の絶縁フィルムの平均幅W[mm]・・・(6)
【0031】
なお、電気部品用リード線1の一対の絶縁フィルム3の平均厚み又は平均幅が同一でない場合、一対の絶縁フィルム3の各平均厚み又は各平均幅の平均値を求め、一対の絶縁フィルム3の平均厚み又は平均幅がいずれも上記平均値であると仮定して上述の計算を行う。そして、この計算により得られる短冊状導体2及び一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの断面二次モーメントを用い、上記形状保持力H及び弾性回復力Rを求めるものとする。
【0032】
短冊状導体2の幅1mm当たりの断面モーメントの下限値としては、5.0×10-15/1mmが好ましく、2.0×10-14/1mmがより好ましい。一方、上記断面モーメントの上限値としては、8.0×10-13/1mmが好ましく、1.0×10-13/1mmがより好ましい。上記断面モーメントが上記範囲であることで、短冊状導体2の幅1mm当たりの形状保持力Hを容易かつ確実に上記範囲に調節することができる。
【0033】
短冊状導体2の平均厚みとしては、30μm以上200μm以下が好ましい。短冊状導体2の平均厚みの下限値としては、40μmがより好ましく、47μmがさらに好ましい。一方、短冊状導体2の平均厚みの上限値としては、150μmがより好ましく、120μmがさらに好ましい。短冊状導体2の平均厚みが上記下限未満の場合、電気部品用リード線1の電気抵抗値が増大するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記上限を超える場合、電気部品用リード線1が不用に厚くなり、薄肉化の要求に十分応えられないおそれがある。
【0034】
短冊状導体2の弾性率としては、50GPa以上300GPa以下が好ましい。短冊状導体2の弾性率の下限値としては、60GPaがより好ましく、67GPaがさらに好ましい。一方、短冊状導体2の弾性率の上限値としては、250GPaがより好ましく、210GPaがさらに好ましい。短冊状導体2の弾性率が上記下限未満の場合、電気部品用リード線1のスプリングバックを抑制し難くなるおそれがある。逆に、上記弾性率が上記上限を超える場合、電気部品用リード線1の折り曲げ作業に力を要することで作業性が低下するおそれがある。なお、短冊状導体2の弾性率は、その材質の変更により調節が可能であり、特に短冊状導体2を合金とすることで合金成分の変更によって微調節が可能である。
【0035】
また、短冊状導体2は、平均厚みが30μm以上200μm以下であり、かつ弾性率が50GPa以上300GPa以下であることで、その形状保持力Hを好適な範囲とし、電気部品用リード線1に折り曲げ形状を適切に維持できる形状保持性を付与できる。その結果、電気部品用リード線1の折り曲げ時の形状固定作業がより容易となり作業性がより向上する。
【0036】
(一対の絶縁フィルム)
一対の絶縁フィルム3は、短冊状導体2の両端部を露出させた状態で、短冊状導体2の中央部の両面を被覆するものであり、例えばリチウムイオン電池4等の電気部品の袋体6に固着される部分である。
【0037】
各絶縁フィルム3は、絶縁性が高い樹脂材料により形成されている。この樹脂材料は、短冊状導体2への接着性が高い樹脂材料であるか、袋体6をヒートシールするときの加熱により溶融し難い樹脂材料が好ましい。
【0038】
短冊状導体2への接着性が高い樹脂材料としては、例えば熱可塑性ポリオレフィン等が挙げられる。この熱可塑性ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン(例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレン)、アイオノマー等の反応性樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0039】
一方、袋体6をヒートシールするときの加熱により溶融し難い樹脂材料としては、例えば架橋ポリオレフィン等が挙げられる。この架橋ポリオレフィンとしては、先に例示したポリオレフィンを架橋したものを用いることができる。ポリオレフィンを架橋する方法としては、電子線やガンマ線等の電離放射線の照射による架橋、パーオキサイド等による化学架橋、シラン架橋等が用いられる。ポリオレフィンを電離放射線によって架橋する場合、必要に応じてポリオレフィンに架橋助剤が添加される。この架橋助剤としては、例えばトリメチロールプロパンメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が用いられる。
【0040】
架橋ポリオレフィンにおけるゲル分率としては、20%以上90%以下が好ましい。なお、ゲル分率は、架橋の度合いを示す指標であり、キシレン等の溶媒に不溶になった架橋ポリオレフィン中のゲル(不溶になった高分子鎖)の割合をいう。ゲル分率が20%未満では、架橋の度合いが不十分であり、ヒートシール時に絶縁フィルム3が溶融するおそれがある。逆に、ゲル分率が90%を超えると、架橋の度合いが大きすぎ、袋体6等との接着性が悪化するおそれがある。
【0041】
また、各絶縁フィルム3は、単層であっても、複数層に積層されたものであってもよい。絶縁フィルム3を複数層として構成する場合、短冊状導体2への接着性が高い樹脂材料により形成された絶縁層と、袋体6をヒートシールするときの加熱により溶融し難い樹脂材料により形成された絶縁層とを含むことが好ましい。このような積層構造の絶縁フィルム3を採用した場合、短冊状導体2への接着性を確保できると同時に、ヒートシール時の溶融を防止することができる。
【0042】
一対の絶縁フィルム3の平均弾性率をD[Pa]、幅1mm当たりの断面二次モーメントをI[m/1mm]とした場合に下記数式(2)で表される一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの弾性回復力R[N・m/1mm]の下限値としては、3.0×10-5N・m/1mmが好ましく、1.0×10-4N・m/1mmがさらに好ましい。一方、弾性回復力Rの上限値としては、6.0×10-3N・m/1mmが好ましく、1.0×10-3N・m/1mmがより好ましい。
R=D×I・・・(2)
【0043】
一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの弾性回復力が上記範囲であることで、電気部品用リード線1の折り曲げ後のスプリングバックを適切に抑制できる。その結果、電気部品用リード線1を折り曲げ、その形状を維持させる作業がより容易となり作業性がより向上する。なお、絶縁フィルム3の弾性率は、その材質の変更により調節が可能であり、各絶縁フィルム3を架橋樹脂により形成する場合には架橋度の変更によっても調節が可能である。
【0044】
一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの断面モーメントの下限値としては、1.0×10-13/1mmが好ましく、5.0×10-13/1mmがより好ましい。一方、上記断面モーメントの上限値としては、8.0×10-12/1mmが好ましく、1.0×10-12/1mmがより好ましい。上記断面モーメントが上記範囲であることで、一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの弾性回復力を容易かつ確実に上記範囲に調節することができる。
【0045】
各絶縁フィルム3の平均厚みとしては、いずれも25μm以上200μm以下が好ましい。上記平均厚みの下限値としては、40μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの上限値としては、120μmがより好ましく、80μmがさらに好ましい。各絶縁フィルム3の平均厚みが上記下限値未満である場合、絶縁フィルム3の厚みが短冊状導体2の厚み対して薄くなりすぎ、その結果、電気部品用リード線1を袋体6に取り付けるためにヒートシールした際に短冊状導体2及び袋体6の間でショートするおそれがある。このショートのおそれは、短冊状導体2のエッジ部(幅方向の両端)において特に顕著である。逆に、上記平均厚みが上記上限を超える場合、電気部品用リード線1のスプリングバックを十分に抑制できないおそれがある。
【0046】
各絶縁フィルム3のそれぞれの平均厚み及び弾性率は、略同一であることが好ましい。具体的には、一方側の絶縁フィルム3の平均厚みに対する他方側の絶縁フィルム3の平均厚みの比(一方側の絶縁フィルム3の平均厚み/他方側の絶縁フィルム3の平均厚み)が0.95以上1.05以下であることが好ましい。また、一方側の絶縁フィルム3の弾性率に対する他方側の絶縁フィルム3の弾性率の比(一方側の絶縁フィルム3の弾性率/他方側の絶縁フィルム3の弾性率)が0.7以上1.5以下であることが好ましい。
【0047】
また、短冊状導体2の平均厚みに対する各絶縁フィルム3の平均厚みの比(絶縁フィルムの平均厚み/短冊状導体の平均厚み)の下限値としては、いずれも0.2が好ましく、0.3がより好ましく、0.35がさらに好ましい。一方、上記比の上限値としては、1.5が好ましく、1.2がより好ましく、1.0がさらに好ましい。短冊状導体2の平均厚みに対する各絶縁フィルム3の平均厚みの比がいずれも上記範囲であることで、短冊状導体2の形状保持力に対する一対の絶縁フィルム3の弾性回復力の比を好適な範囲に調節でき、その結果、スプリングバック角度を小さくし、所望とする折り曲げ形状を維持することが可能となる。
【0048】
短冊状導体2の幅1mm当たりの断面二次モーメントに対する一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの断面二次モーメントの比(一対の絶縁フィルムの幅1mm当たりの断面二次モーメント/短冊状導体の幅1mm当たりの断面二次モーメント)の下限値としては、1.0が好ましく、3.0がより好ましい。一方、上記比の上限値としては、4.0×10が好ましく、2.5×10がより好ましい。上記比が上記範囲であることで、短冊状導体2の形状保持力に対する一対の絶縁フィルム3の弾性回復力の比を好適な範囲に調節でき、その結果、スプリングバック角度を小さくし、所望とする折り曲げ形状を維持することが可能となる。
【0049】
各絶縁フィルム3の弾性率としては、いずれも100MPa以上1,400MPa以下が好ましい。上記弾性率の下限値としては、150MPaがより好ましく、200MPaがさらに好ましい。一方、上記弾性率の上限値としては、720MPaがより好ましく、350MPaがさらに好ましい。絶縁フィルム3の弾性率が上記範囲であることで、絶縁フィルム3の弾性回復力を好適なものとすることができる。
【0050】
また、各絶縁フィルム3は、平均厚みがいずれも25μm以上200μm以下であり、弾性率がいずれも100MPa以上1,400MPa以下であることで、電気部品用リード線1の折り曲げ後のスプリングバック角度を適切に小さくできる。その結果、電気部品用リード線1を折り曲げ、その形状を維持させる作業がより容易となり、作業性がより向上する。
【0051】
短冊状導体2の弾性率に対する一対の絶縁フィルム3の平均弾性率の比(一対の絶縁フィルム3の平均弾性率/短冊状導体2の弾性率)の下限値としては、1.0×10-3が好ましく、2.0×10-3がより好ましい。一方、上記比の上限値としては、4.0×10-2が好ましく、1.5×10-2がより好ましい。上記比が上記範囲であることで、短冊状導体2の形状保持力に対する一対の絶縁フィルム3の弾性回復力の比を好適な範囲に調節でき、その結果、スプリングバック角度を小さくし、所望とする折り曲げ形状を維持することが可能となる。
【0052】
電気部品用リード線1は、短冊状導体2の幅1mm当たりの形状保持力Hに対する一対の絶縁フィルム3の幅1mm当たりの弾性回復力Rの比が0.15以下である。上記比の上限値としては、0.10が好ましく、0.05がより好ましい。なお、上記比の下限値については特に制限はないが、0.001が好ましく、0.002がより好ましい。
【0053】
電気部品用リード線1は、180°折り曲げ後の曲げ戻り角度(スプリングバック角度)が20°以下であることが好ましい。このような電気部品用リード線1によれば、180°折り曲げ後の曲げ戻り角度(スプリングバック角度)が20°以下であることで、折り曲げ形状をより好適に維持できるため、折り曲げ時の形状固定作業がより容易となり作業性がより向上する。なお、上記曲げ戻り角度は、小さければ小さいほどよく、12°以下がより好ましく、5°以下がさらに好ましく、0°が最も好ましい。
【0054】
<電気部品>
本発明の実施形態に係る電気部品は、電気部品用リード線1を備える。この電気部品用リード線1が使用される電気部品としては、例えばリチウムイオン電池等の非水電解質電池や、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層コンデンサ(Electric double-layer capacitor:EDLC)等のキャパシタが挙げられる。もちろん、電気部品用リード線1は、リード線を必要とする電気部品全般に適用可能であり、非水電解質電池以外の電池等に適用しても同様な効果を奏することができる。
【0055】
以下、電気部品用リード線1を備える非水電解質電池について、リチウムイオン電池を例として図面を参照しつつ説明する。
【0056】
(リチウムイオン電池)
図1及び図2に示すリチウムイオン電池4は、袋体6の内部に非水電解液を保持した電池素子を封入したものである。電池素子は、正極5Aと負極5Bとの間にセパレータ(図示略)を介在させた状態で非水電解液を保持したものである。非水電解液としては、例えばプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の有機溶媒に、リチウム化合物(LiClO、LiBF等)を溶解したものが用いられる。
【0057】
電気部品用リード線1は、絶縁フィルム3において袋体6に固定されている。電気部品用リード線1は、短冊状導体2の一方の端部2A及び他方の端部2Bが絶縁フィルム3から露出し、この短冊状導体2の露出した一方の端部2Aが電池素子の正極5A又は負極5Bに導通接続されていると共に、短冊状導体2の露出した他方の端部2Bが袋体6から突出している。
【0058】
このようなリチウムイオン電池4は、電気部品用リード線1を備えるため、電気部品用リード線1を折り曲げ、その形状を維持するための作業を簡略化できることで、作業効率を向上できる。
【0059】
なお、電気部品用リード線1をリチウムイオン電池4以外の電気部品に適用した場合であっても、折り曲げ形状を維持するための作業を簡略化できることで、作業効率を向上できる。
【実施例
【0060】
次に、実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実験例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0061】
本実験例では、リード線のスプリングバック角度を評価した。
【0062】
<リード線>
リード線は、短冊状導体の両端部が露出するように、短冊状導体の中央部を一対の絶縁フィルムにより被覆することで形成した。図4A及び図4Bに示すように、短冊状導体7としては、長さLが80mm、幅Wが5mmであり、弾性率及び平均厚みTが下記表1に示す値のものを用いた。絶縁フィルム8としては、いずれも長さLが6mm、幅Wが7mmであり、弾性率及び平均厚みTが下記表1に示す値のものを用いた。なお、2枚の絶縁フィルム8は、同一のものを用いた。また、短冊状導体7と一対の絶縁フィルム8との合計平均厚みをリード線の平均厚みTとした。
【0063】
<断面二次モーメント>
短冊状導体7の幅1mm当たりの断面二次モーメント[m/1mm]は、1/12×W[m]×(T[m])/W[mm]に各数値を代入して求めた。一対の絶縁フィルム8の断面二次モーメント[m/1mm]は、1/12×W[m]×{(T[m])-(T[m])}/W[mm]に各数値を代入して求めた。
【0064】
<スプリングバック角度の評価>
スプリングバック角度は、まず図5Aに示すように、リード線の一方側の絶縁フィルム8の長さ方向中央付近に厚さ0.5mmの板材Xの端面を当接させ、板材Xを狭持するようにリード線をゆっくりと180°折り曲げた後、他方側の絶縁フィルム8上に質量200gの錘を置くことで負荷Fを作用させ、この状態を10秒間保持した。次に、図5Bに示すように負荷を取り除いて5秒以上放置したときのスプリングバック角度θ[deg](リード線がなす角度)を測定することで評価した。スプリングバック角度の測定結果は下記表1に示した。また、スプリングバック角度θと、短冊状導体の幅1mm当たりの形状保持力Hに対する一対の絶縁フィルムの幅1mm当たりの弾性回復力Rの比(R/H)との関係を図6に示した。なお、リード線の弾性回復力R及び形状保持力Hは、それぞれ上記数式(1)及び(2)に基づき算出した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1及び図6に示すように、短冊状導体の平均厚みT1を変化させ、他の条件を同一としたグループA(製造例1~4)、グループB(製造例5~8)、及びグループC(製造例9~12)では、いずれのグループにおいても、短冊状導体の平均厚みT1の増大、すなわち弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)の低減に伴いスプリングバック角度θも小さくなった。また、グループA~C相互は絶縁フィルムの厚みT2が異なるものであるが、これらのグループA~Cを比較した場合、絶縁フィルムの厚みT2の増大、すなわち弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)の増大に伴いスプリングバック角度θも大きくなった。これらの結果から、リード線の短冊状導体の平均厚み及び絶縁フィルムの平均厚みを調節し、弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)を0.15以下とすることでスプリングバック角度20°以下という良好な曲げ形状の維持が可能となると判断される。
【0067】
絶縁フィルムの弾性率を変化させ、他の条件を同一としたグループD(製造例13~14)及びグループE(製造例15~16)では、グループD及びEのいずれも、絶縁フィルムの弾性率の増大、すなわち弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)の増大に伴いスプリングバック角度θも大きくなった。この結果から、リード線の絶縁フィルムの弾性率を調節し、弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)を0.15以下とすることでスプリングバック角度20°以下という良好な曲げ形状の維持が可能となると判断される。
【0068】
短冊状導体及び絶縁フィルムの厚みを一定とし、弾性率を変化させたグループF(製造例17~20)では、短冊状導体の弾性率の増大、絶縁フィルムの弾性率の低減又はこれらの組み合わせにより弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)を低減すると、これに伴いスプリングバック角度θが減少した。この結果から、リード線の絶縁フィルムの弾性率を調節し、弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)を0.15以下とすることでスプリングバック角度20°以下という良好な曲げ形状の維持が可能となると判断される。
【0069】
また、図6に示すように、弾性回復力Rの形状保持力Hに対する比(R/H)とスプリングバック角度とは高い相関性を示し、特に上記比(R/H)が小さい(例えば0.2以下)製造例ではより高い相関性を示した。そのため、スプリングバック角度を低減する上では、上記比(R/H)を調節することが非常に有効であることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
上記発明によれば、折り曲げ使用するときにスプリングバックが生じ難く、曲げ形状を好適に維持できる電気部品用リード線と、作業効率に優れる電気部品とを提供できる。
【符号の説明】
【0071】
1,11 電気部品用リード線
2,7,12 短冊状導体
2A 一方の端部
2B 他方の端部
3,8,13 絶縁フィルム
4 リチウムイオン電池
5A 正極
5B 負極
6 袋体
M 曲げ変形の中心面
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6