(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20230117BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230117BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20230117BHJP
C08G 8/12 20060101ALI20230117BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G03F7/038
G03F7/038 503
G03F7/004 501
G03F7/075 501
C08G8/12
H01L21/312 D
G03F7/004 503A
(21)【出願番号】P 2022526584
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2021019805
(87)【国際公開番号】W WO2021241581
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2020094819
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】北畑 太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 清治
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070832(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088469(WO,A1)
【文献】特開2019-053220(JP,A)
【文献】特開2019-109425(JP,A)
【文献】特開2012-123378(JP,A)
【文献】特開2019-101052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08G 8/12
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):アルカリ可溶性樹脂、
成分(B):架橋剤、
成分(C):酸発生剤、および
成分(D):シランカップリング剤
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記成分(A)が、
成分(a1):ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、および、
成分(a2):前記成分(a1)以外のフェノール樹脂
を含み、
前記成分(B)が、成分(b1):2官能性の
フェノキシ型エポキシ樹脂を含み、
前記成分(C)が、成分(c1):スルホニウム化合物またはその塩を含み、
以下の条件1にて測定される、当該感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率が、10%以上200%以下である、感光性樹脂組成物(ただし、フェノール樹脂、感光剤、架橋剤、および、窒素原子を有する基と、シラノール基または加水分解によりシラノール基を発生する基とを1分子中に含む化合物を含む永久膜形成用ネガ型感光性樹脂組成物を除く。)。
(条件1)
(i)当該感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して前記硬化膜を形成し、前記硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製する。
(ii)JIS K7161に基づき、23℃、試験速度5mm/minの条件で前記試料の引張試験を実施して前記引張伸び率を求める。
【請求項2】
前記成分(a1)の重量平均分子量が、2000以上50000以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記成
分(c1)
が、下記一般式(1)で示されるスルホニウム化合物またはその塩を含む、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1
は水素原子またはアシル基である。R
2
は鎖状もしくは分岐鎖を有する炭化水素基または置換基を有してもよいベンジル基である。R
3
は鎖状もしくは分岐鎖を有する炭化水素基である。)
【請求項4】
当該感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が150℃以上260℃以下である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
以下の条件2で測定される前記硬化膜の膜強度が70MPa以上150MPa以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
(条件2)
装置:引張・圧縮試験機
温度:常温
引張速度:5mm/min
試験片サイズ:6.5mm×20mm×10μm厚
【請求項6】
バッファーコート膜または配線用絶縁膜に用いられる、請求項1乃至5いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、感光性樹脂組成物の分野では、低温で硬化した場合でも、脆くなく、耐熱性に富んだ硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ようとして、様々な技術が開発されている。この種の技術としては、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
特許文献1には、特定の構造を有するポリアミドに対して、フェノール性水酸基を有する化合物を含む樹脂組成物を塗布し、200℃以下で硬化した膜は、高い破断伸び率を示す、と記載されている(段落0008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が特許文献1に記載の技術について検討したところ、低温での硬化性に優れる膜を得るという点で依然として改善の余地があることが明らかになった。
【0005】
本発明は、低温での硬化性に優れる樹脂膜を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
成分(A):アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物であって、
前記成分(A)が、成分(a1):ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を含み、
以下の条件1にて測定される、当該感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率が、10%以上200%以下である、感光性樹脂組成物が提供される。
(条件1)
(i)当該感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して前記硬化膜を形成し、前記硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製する。
(ii)JIS K7161に基づき、23℃、試験速度5mm/minの条件で前記試料の引張試験を実施して前記引張伸び率を求める。
【0007】
また、本発明によれば、たとえば前記本発明における感光性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂膜、および、前記樹脂膜を備える電子装置を提供することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温での硬化性に優れる樹脂膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における電子装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。以下の実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上を組み合わせ含むことができる。
本明細書において、数値範囲の「x~y」は「x以上y以下」を表し、下限値xおよび上限値yをいずれも含む。また、以下の図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0011】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態において、感光性樹脂組成物は、成分(A):アルカリ可溶性樹脂を含み、成分(A)は、成分(a1):ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を含む。そして、以下の条件1にて測定される、感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率が、10%以上200%以下である。
(条件1)
(i)当該感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して硬化膜を形成し、硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製する。
(ii)JIS K7161に基づき、23℃、試験速度5mm/minの条件で試料の引張試験を実施して引張伸び率を求める。
【0012】
本発明者は、感光性樹脂組成物の低温硬化性を向上すべく検討をおこなった。その結果、感光性樹脂組成物が特定の成分を含む構成とするとともに、感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率が特定の範囲にある構成とすることにより、上述の課題が解決されることを見出した。
【0013】
硬化膜の引張伸び率は、脆性破壊を抑制する観点から、10%以上であり、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。
また、硬化膜をより安定的に得る観点から、硬化膜の引張伸び率は、200%以下であり、好ましくは150%以下、より好ましくは125%以下、さらに好ましくは100%以下、さらにより好ましくは90%以下である。
【0014】
本実施形態において、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性向上の観点から、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上、さらにより好ましくは210℃以上である。
また、脆性悪化を抑制する観点から、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは260℃以下であり、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0015】
ここで、感光性樹脂組成物の硬化物のTgは、所定の試験片(幅3mm×長さ10mm×厚み0.005~0.015mm)に対して、熱機械分析装置(TMA)を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~440℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定をおこなった結果から算出される。
【0016】
感光性樹脂組成物の硬化物の信頼性を向上する観点から、以下の条件2で測定される硬化膜の膜強度は、好ましくは70MPa以上であり、より好ましくは90Pa以上、さらに好ましくは100MPa以上、さらにより好ましくは105MPa以上である。
また、脆性破壊を抑制する観点から、硬化膜の上記膜強度は、好ましくは150MPa以下であり、より好ましくは140MPa以下、さらに好ましくは130MPa以下、さらにより好ましくは120MPa以下である。
(条件2)
装置:引張・圧縮試験機
温度:常温(25℃)
引張速度:5mm/min
試験片サイズ:6.5mm×20mm×10μm厚
【0017】
また、感光性樹脂組成物の硬化物の信頼性を向上する観点から、50~100℃の温度領域における硬化膜の線膨張係数は、好ましくは25ppm/℃以上であり、より好ましくは30ppm/℃以上、さらに好ましくは35ppm/℃以上であり、また、好ましくは40ppm/℃以下である。
ここで、50~100℃の温度領域における硬化膜の線膨張係数は、具体的には、200℃、180分の条件で得られた硬化膜の試験片(幅3mm×長さ10mm×厚み10mm)に対して、熱機械分析装置(TMA)を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~440℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定を行った結果から算出される。
【0018】
次に、各成分についてさらに具体的に説明する。
(成分(A))
成分(A)は、アルカリ可溶性樹脂であり、成分(a1):ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を含む。
【0019】
成分(a1)は、低温での硬化性を向上する観点から、好ましくは下記一般式(2)で表される。
【0020】
【0021】
上記一般式(2)中、nは、低温での硬化性を向上する観点から、好ましくは6以上であり、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、さらにより好ましくは14以上である。
また、溶剤溶解性の観点から、nは、好ましくは72以下であり、より好ましくは54以下、さらに好ましくは36以下である。
【0022】
成分(a1)の重量平均分子量は、低温での硬化性を向上する観点から、たとえば500以上であってよく、好ましくは2000以上であり、より好ましくは3000以上、さらに好ましくは4000以上である。
また、成分(a1)の重量平均分子量は、たとえば50000以下であってよく、溶剤溶解性の観点から、好ましくは20000以下であり、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは10000以下、さらにより好ましくは8000以下である。
ここで、成分(a1)の重量平均分子量は、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算される。
【0023】
感光性樹脂組成物中の成分(a1)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の靭性向上の観点から、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
また、熱機械特性悪化の観点から、感光性樹脂組成物中の成分(a1)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらにより好ましくは40質量部以下である。
【0024】
また、成分(A)は、成分(a1)以外のものを含んでもよい。かかる樹脂の具体例として、成分(a1)以外のフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0025】
成分(A)は、低温での硬化性および硬化膜の信頼性を向上する観点から、好ましくは成分(a2):成分(a1)以外のフェノール樹脂をさらに含む。
成分(a2)として、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂、アリル化ノボラック型フェノール樹脂、キシリレンノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのフェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物;フェノールアラルキル樹脂などのフェノール化合物とジメタノール化合物との反応物からなる群から選択される1種または2種以上を含む。成分(a2)は好ましくはノボラック型フェノール樹脂である。
【0026】
また、成分(a2)は、低温での硬化性および硬化膜の信頼性を向上する観点から、好ましくは、下記一般式(4)で表される構造単位を有する。
【0027】
【0028】
(上記一般式(4)中、R41、およびR42は、それぞれ独立して、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1~20の飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1~20のアルキルエーテル基、炭素数3~20の飽和または不飽和の脂環式基、または炭素数6~20の芳香族構造を有する有機基からなる群から選ばれる1価の置換基であり、これらはエステル結合、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合を介して結合していてもよく、r、およびsは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、Y4、およびZ4は、それぞれ独立して、単結合、または不飽和結合を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族基、炭素数3~20の脂環式基、および炭素数6~20の芳香族構造を有する有機基からなる群から選択され、Z4は、2つのベンゼン環のうちいずれか一方に結合する。)
【0029】
一般式(4)で表される構造単位を有するフェノール樹脂は、具体的には、特開2018-155938号公報の記載の方法を用いて得ることができる。
【0030】
感光性樹脂組成物中の成分(a2)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の硬化性向上の観点から、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
また、靭性悪化の観点から、感光性樹脂組成物中の成分(a2)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらにより好ましくは40質量部以下である。
【0031】
また、感光性樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温での硬化性および硬化膜の信頼性を向上する観点から、好ましくは30質量部以上であり、より好ましくは45質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、また、たとえば55質量部以上であってもよい。
また、耐薬性や感光性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは95質量部以下であり、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下、さらにより好ましくは70質量部以下である。
【0032】
(成分(B))
感光性樹脂組成物は、硬化膜の信頼性および耐薬性を向上する観点から、好ましくは成分(B):架橋剤をさらに含む。
成分(B)は、具体的には成分(A)と熱により反応可能な基を有する化合物であり、たとえば、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール(パラキシレングリコール)、1,3,5-ベンゼントリメタノール、4,4-ビフェニルジメタノール、2,6-ピリジンジメタノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4,4'-メチレンビス(2,6-ジアルコキシメチルフェノール)などのメチロール基を有する化合物;フロログルシドなどのフェノール類;1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸メチル、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメトキシメチルフェノール)などのアルコキシメチル基を有する化合物;ヘキサメチロールメラミン、ヘキサブタノールメラミン等から代表されるメチロールメラミン化合物;ヘキサメトキシメラミンなどのアルコキシメラミン化合物;テトラメトキシメチルグリコールウリルなどのアルコキシメチルグリコールウリル化合物;メチロールベンゾグアナミン化合物、ジメチロールエチレンウレアなどのメチロールウレア化合物;アルキル化尿素樹脂;ジシアノアニリン、ジシアノフェノール、シアノフェニルスルホン酸などのシアノ化合物;1,4-フェニレンジイソシアナート、3,3'-ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナートなどのイソシアナート化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル、フェノキシ型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂などのエポキシ基含有化合物;N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-メチレンジマレイミドなどのマレイミド化合物等が挙げられる。
【0033】
感光性樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂膜の耐薬品性を向上させる観点から、成分(B)は、好ましくは、成分(b1):2官能性のエポキシ樹脂を含み、より好ましくは2官能のフェノキシ型エポキシ樹脂を含む。同様の観点から、成分(B)が成分(b1)およびアルキル化尿素樹脂を含むことも好ましい。フェノキシ型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型フェノキシ樹脂、ノボラック型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂、フルオレン型フェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノキシ樹脂、ノルボルネン型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、アントラセン型フェノキシ樹脂、アダマンタン型フェノキシ樹脂、テルペン型フェノキシ樹脂、およびトリメチルシクロヘキサン型フェノキシ樹脂等を用いることができる。また、フェノキシフェノキシ型エポキシ樹脂の市販品の具体例として、樹脂JER-1256、YX-7105(以上、三菱ケミカル社製)、LX-01(大阪ソーダ社製)が挙げられる。
【0034】
感光性樹脂組成物中の成分(b1)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の靭性向上の観点から、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上である。
また、低温硬化時の熱機械特性を保持する観点から、感光性樹脂組成物中の成分(b1)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0035】
また、感光性樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の靭性及び耐薬性向上の観点から、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上である。
また、硬化膜の耐薬性を高める観点から、感光性樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0036】
(成分(C))
感光性樹脂組成物は、硬化膜を安定的に形成する観点から、好ましくは成分(C):酸発生剤をさらに含む。成分(C)は、具体的には、熱エネルギーまたは光エネルギーを吸収することにより酸を発生する化合物である。
【0037】
低温での硬化性および耐薬性を向上する観点から、成分(C)は、好ましくは成分(c1):スルホニウム化合物またはその塩を含む。
成分(c1)は、具体的には、カチオン部としてスルホニウムイオンを有するスルホニウム塩である。このとき、成分(c1)のアニオン部は、具体的には、ホウ化物イオン、アンチモンイオン、リンイオンまたはトリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオンであり、低温での反応速度を向上する観点から、好ましくはホウ化物イオンまたはアンチモンイオンであり、より好ましくはホウ化物イオンである。これらのアニオンは置換基を有してもよい。
【0038】
成分(c1)は、好ましくは下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩を含む。
【0039】
【0040】
上記一般式(1)中、R1は水素原子または一価の有機基であり、低温での反応性を向上する観点から、好ましくは水素原子またはアシル基であり、より好ましくはアシル基であり、さらに好ましくはCH3C(=O)-基である。
R2は一価の有機基であり、低温での反応性を向上する観点から、好ましくは鎖状もしくは分岐鎖を有する炭化水素基または置換基を有してもよいベンジル基であり、より好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基で置換されてもよいベンジル基または炭素数1以上4以下のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基または芳香環部がメチル基で置換されてもよいベンジル基である。
R3は一価の有機基であり、低温での反応性を向上する観点から、好ましくは鎖状もしくは分岐鎖を有する炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0041】
成分(c1)の他の好ましい例として、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩が挙げられる。
また、成分(c1)は、ジ(トリフルオロメタンスルホン)イミド (4,8-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチル)ジブチルスルホニウム等の光酸発生剤であってもよい。
【0042】
感光性樹脂組成物中の成分(c1)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温での硬化性を向上する観点から、好ましくは0.005質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.02質量部以上である。
また、信頼性低下を抑制する観点から、感光性樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であり、また、たとえば0.5質量部以下、たとえば0.2質量部以下、またはたとえば0.1質量部以下であることも好ましい。
【0043】
(成分(D))
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の硬化膜の基板への密着性を高める観点から、好ましくは成分(D):シランカップリング剤をさらに含む。シランカップリング剤としては、たとえば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシランが挙げられる。同様の観点から、成分(D)は、好ましくはエポキシシランおよび(メタ)アクリルシランからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの少なくとも1つである。また、成分(D)の具体例として、アミノ基、アミド基およびウレア基からなる群から選択される1または2以上の基を有するケイ素化合物と酸二無水物または酸無水物とを反応することにより得られるケイ素化合物も挙げられる。
【0044】
感光性樹脂組成物中の成分(D)の含有量は、密着性と、感光性樹脂組成物の保存性とを両立する観点から、成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらにより好ましくは5質量部以下である。
【0045】
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外の成分を含んでもよい。このような成分として、たとえば成分(D)以外の密着助剤、界面活性剤、酸化防止剤、溶解促進剤、フィラー、増感剤等の添加剤を添加してもよい。
【0046】
成分(D)以外の密着助剤として、感光性樹脂組成物の硬化膜の金属への密着性を向上する観点から、具体的には、トリアゾール化合物およびイミド化合物からなる群から選択される1または2以上の化合物が挙げられる。これにより、さらに窒素原子に由来する孤立電子対の数を増やすことができる。
【0047】
このうち、トリアゾール化合物としては、具体的には、メルカプトトリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4H-1,2,4-トリアゾール-3-アミン、4-アミノ-3,5-ジ-2-ピリジル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-アミン、3,4-ジアミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3,4,5-トリアミン、3-ピリジル-4H-1,2,4-トリアゾール、4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド、3,5-ジアミノ-4-メチル―1,2,4-トリアゾール、3-ピリジル-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、4-メチル-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドなどの1,2,4-トリアゾールからなる群から選択される1または2以上の化合物が挙げられる。
【0048】
感光性樹脂組成物中の密着助剤の含有量は、密着性をさらに高める観点から、成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である。
【0049】
界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(新秋田化成社製)、メガファックF171、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF177、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、フロラードFC-430、フロラードFC-431、ノベックFC4430、ノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-382、サーフロンS-383、サーフロンS-393、サーフロンSC-101、サーフロンSC-102、サーフロンSC-103、サーフロンSC-104、サーフロンSC-105、サーフロンSC-106、(AGCセイミケミカル社製)などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサン共重合体KP341(信越化学工業社製);(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57、95(共栄社化学社製)が挙げられる。
【0050】
これらのなかでも、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、上記具体例のうち、メガファックF171、メガファックF173、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-383、サーフロンS-393(AGCセイミケミカル社製)、ノベックFC4430及びノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0051】
また、界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤(たとえばポリエーテル変性ジメチルシロキサンなど)も好ましく用いることができる。シリコーン系界面活性剤として具体的には、東レダウコーニング社のSHシリーズ、SDシリーズおよびSTシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越化学工業株式会社のKPシリーズ、日油株式会社のディスフォーム(登録商標)シリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどを挙げることができる。
【0052】
感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、塗布性や塗膜の均一性などを向上させる観点から、感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対してたとえば0.001質量%(10ppm)以上であり、また、好ましくは1質量%(10000ppm)以下であり、より好ましくは0.5質量%(5000ppm)以下、さらに好ましくは0.1質量%(1000ppm)以下である。
【0053】
(感光性樹脂組成物の調製)
感光性樹脂組成物は、上述した各成分と、必要に応じてその他の成分と、を有機溶剤に混合して溶解することにより調製される。
また、本実施形態において、感光性樹脂組成物は、たとえば上述の成分および必要に応じその他の成分を有機溶剤に溶解し、ワニス状にして使用される。
また、感光性樹脂組成物は、成分(a1)および成分(a1)以外の成分(A)ならびに適宜その他の成分を事前に反応させて事前反応樹脂とした後、適宜さらに他の成分を加え、用いることもできる。
【0054】
有機溶剤としては、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチルおよびメチル-3-メトキシプロピオネートからなる群から選択される1または2以上の溶剤が挙げられる。
【0055】
(樹脂膜)
本実施形態における感光性樹脂組成物を硬化することにより樹脂膜が得られる。また、本実施形態における樹脂膜は、感光性樹脂組成物の乾燥膜または硬化膜である。すなわち、樹脂膜は、感光性樹脂組成物を乾燥または硬化させてなり、好ましくは感光性樹脂組成物を効果させてなる。
この樹脂膜は、たとえば永久膜、レジストなどの電子装置用の樹脂膜を形成するために用いられる。これらの中でも、低温で樹脂膜が得られる観点、優れた加工性を有する観点、および、信頼性に優れる樹脂膜が得られる観点から、永久膜を用いる用途に用いられることが好ましい。
本実施形態によれば、たとえば、感光性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜について、電子装置等を作製するために有用な樹脂膜とする上で求められる、加工性または信頼性に優れる膜を得ることも可能となる。
【0056】
上記永久膜は、感光性樹脂組成物に対してプリベーク、露光および現像をおこない、所望の形状にパターニングした後、ポストベークすることによって硬化させることにより得られた樹脂膜で構成される。永久膜は、バッファーコート膜等の電子装置の保護膜、再配線用絶縁膜等の層間膜、ダム材などに用いることができる。
また、感光性樹脂組成物は、好ましくはバッファーコート膜または配線用絶縁膜に用いられる。
【0057】
レジストは、たとえば、感光性樹脂組成物をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で、レジストにとってマスクされる対象に塗工し、感光性樹脂組成物から溶媒を除去することにより得られた樹脂膜で構成される。
【0058】
図1は、本実施形態における樹脂膜を有する電子装置の構成例を示す断面図である。
図1に示した電子装置100は、上記樹脂膜を備える電子装置とすることができる。具体的には、電子装置100のうち、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44からなる群の1つ以上を、樹脂膜とすることができる。ここで、樹脂膜は、上述した永久膜であることが好ましい。
【0059】
電子装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば電子装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。電子装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層(図示せず。)と、を備えている。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえば、アルミニウムAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0060】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
【0061】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。電子装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
【0062】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 成分(A):アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物であって、
前記成分(A)が、成分(a1):ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を含み、
以下の条件1にて測定される、当該感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率が、10%以上200%以下である、感光性樹脂組成物。
(条件1)
(i)当該感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して前記硬化膜を形成し、前記硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製する。
(ii)JIS K7161に基づき、23℃、試験速度5mm/minの条件で前記試料の引張試験を実施して前記引張伸び率を求める。
2. 前記成分(a1)の重量平均分子量が、2000以上50000以下である、1.に記載の感光性樹脂組成物。
3. 成分(B):架橋剤
をさらに含み、
前記成分(B)が、成分(b1):2官能性のエポキシ樹脂を含む、1.または2.に記載の感光性樹脂組成物。
4. 成分(C):酸発生剤
をさらに含み、
前記成分(C)が、成分(c1):スルホニウム化合物またはその塩を含む、1.乃至3.いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
5. 前記成分(A)が、成分(a2):前記成分(a1)以外のフェノール樹脂をさらに含む、1.乃至4.いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
6. 成分(D):シランカップリング剤をさらに含む、1.乃至5.いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
7. 当該感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が150℃以上260℃以下である、1.乃至6.いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
8. 以下の条件2で測定される前記硬化膜の膜強度が70MPa以上150MPa以下である、1.乃至7.いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
(条件2)
装置:引張・圧縮試験機
温度:常温
引張速度:5mm/min
試験片サイズ:6.5mm×20mm×10μm厚
9. バッファーコート膜または配線用絶縁膜に用いられる、1.乃至8.いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を参照して実施形態を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1~5、比較例1~5)
表1に記載の配合にて感光性樹脂組成物を調製した。具体的には、まず、表1に従い配合された各成分を、窒素雰囲気下で撹拌混合後、孔径0.2μmのポリエチレン製フィルターで濾過することにより、ワニス状の感光性樹脂組成物を得た。
表1に記載の各成分の詳細を以下に示す。また、表1において、各成分の含有量はアクティブ量である。
【0065】
((A)アルカリ可溶性樹脂)
(a2)アルカリ可溶性樹脂1:ノボラック型フェノール樹脂、後述の製造例1で得られたフェノール樹脂
(a2)アルカリ可溶性樹脂2:クレゾール型フェノール樹脂、PR-56001、住友ベークライト社製
(a2)アルカリ可溶性樹脂3:アリル型フェノール樹脂、MEH-8000H、明和化成社製
(a2)アルカリ可溶性樹脂4:ザイロック型フェノール樹脂、MEH-7800SS、明和化成社製
(a1)アルカリ可溶性樹脂5:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂1、重量平均分子量600、MEH-7851SS、明和化成社製
(a1)アルカリ可溶性樹脂6:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂2、重量平均分子量4000、GPH-103、日本化薬社製
(a1)アルカリ可溶性樹脂7:後述の製造例2で得られた事前反応樹脂
【0066】
((B)架橋剤)
(b1)架橋剤1:フェノキシ型エポキシ樹脂、YX-7105、三菱ケミカル社製
(b1)架橋剤2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、LX-01、大阪ソーダ社製
架橋剤3:アルキル化尿素樹脂、ニカラックMX-270 三和ケミカル社製
【0067】
(感光剤)
感光剤1:DS-427、ダイトーケミックス社製
【0068】
(溶媒)
溶媒1(樹脂中に含まれるもの):γ-ブチロラクトン
【0069】
(密着助剤)
(D)密着助剤1:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM-403、信越化学工業社製
密着助剤2:メルカプトトリアゾール
密着助剤3:シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM-503、信越化学工業社製
【0070】
((C)酸発生剤)
(c1)酸発生剤1:スルホニウム塩1(4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、SI-B5、三新化学工業社製
(c1)酸発生剤2:スルホニウム塩2(4-アセトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、SI-B3A、三新化学工業社製
(c1)酸発生剤3:スルホニウム塩3(ジ(トリフルオロメタンスルホン)イミド (4,8-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチル)ジブチルスルホニウム)、ZK-1232、DSP五協フード&ケミカル社製
【0071】
(界面活性剤)
界面活性剤1:フッ素系界面活性剤、FC4430、スリーエムジャパン社製
【0072】
(製造例1)アルカリ可溶性樹脂1の製造
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製丸底フラスコに、乾燥窒素気流下、m-クレゾール64.9g(0.60モル)、p-クレゾール43.3g(0.40モル)、30質量%ホルムアルデヒド水溶液65.1g(ホルムアルデヒド0.65モル)、及び蓚酸二水和物0.63g(0.005モル)を仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら100℃で4時間重縮合反応を行った。次いで、油浴の温度を200℃まで3時間かけて昇温した後に、フラスコ内の圧力を50mmHg以下まで減圧し、水分及び揮発分を除去した。その後、樹脂を室温まで冷却して、重量平均分子量3200のノボラック型フェノール樹脂であるフェノール樹脂(アルカリ可溶性樹脂1)を得た。
【0073】
(製造例2)アルカリ可溶性樹脂7の製造
アルカリ可溶性樹脂1 50質量部、アルカリ可溶性樹脂6 50質量部、架橋剤1 30質量部、触媒としてテトラフェニルホスフィン 0.4質量部、溶媒1 45質量部仕込み、150℃になるまで加熱して2時間フラスコで攪拌した。常温迄冷却後にフラスコから生成物を取り出し、事前反応樹脂(アルカリ可溶性樹脂7)を得た。
【0074】
以下、感光性樹脂組成物の特性測定方法を示す。
(伸び率)
各例で得られた感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して硬化膜を形成した。得られた硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製した。
試料の引張試験を、JIS K7161に基づき、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTA-100)、23℃、試験速度5mm/minの条件で実施した。1つの試料について8回測定をおこない、その平均値(表1中「ave.」)を引張伸び率(%)とした。結果を表1に示す。
【0075】
(Tg、線膨張係数(CTE)))
各例で得られた感光性樹脂組成物の硬化膜を200℃、180分の条件で作製し、得られた硬化膜から幅3mm×長さ10mm×厚み10mmの試験片を得た。
各例の試験片に対し、熱機械分析装置(TMA、Seiko Instruments Inc社製、SS6000)を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~440℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定をおこない、測定結果より、Tg(℃)および50~100℃の温度領域の線膨張係数(ppm/℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0076】
(引張強度)
各例で得られた感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して硬化膜を形成し、得られた硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試験片を作製した。得られた試験片の引張強度(MPa)を以下の条件で測定した。結果を表1に示す。
装置:オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTC-1210A)
温度:常温(25℃)
引張速度:5mm/min
【0077】
(加工性評価)
実施例1~4および比較例1~5のそれぞれについて、得られたワニス状感光性樹脂組成物をシリコンウェハへ塗布し、100℃/4分の条件下で熱処理を施すことにより、膜厚約7.0μmの樹脂膜を得た。この樹脂膜にi線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて最適量で露光を行い、現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、プリベーク後の膜厚と現像後の膜厚の差が0.3μmになるように現像時間を調節して2回パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した後、純水で10秒間リンスした。樹脂膜に形成されたパターンの開口部について、光学顕微鏡の倍率200倍で観察し、100μm□の開口部にて残渣発生の有無を確認した。
〇:残渣の大きさが5μm未満
×:残渣の大きさが5μm以上
評価結果を表1に示す。
【0078】
(低温硬化性)
低温硬化性の尺度として、各例で得られた組成物を用いて得られた硬化膜のフィルム破断性を評価した。
各例で得られた感光性樹脂組成物を、6インチシリコンウェハに硬化後の厚さが10μmとなるように塗布し、100℃/4分でプリベークをおこなった。次に、クリーンオーブンで酸素濃度を2000ppm以下に制御して、200℃、180分で硬化をおこなった。
得られた硬化膜から幅3mm×長さ10mm×厚み10mmの試験片を得た。試験片を半分に折り、その外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:破断無し
×:一部破断あり又は完全破断
評価結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
表1より、各実施例で得られた組成物は、優れた加工性を有するとともに、低温での硬化性に優れていた。
【0081】
この出願は、2020年5月29日に出願された日本出願特願2020-094819号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【符号の説明】
【0082】
30 層間絶縁膜
32 パッシベーション膜
34 最上層配線
40 再配線層
42、44 絶縁層
46 再配線
50 UBM層
52 バンプ
100 電子装置