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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】マウスピース
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20230117BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61F5/56
A61C19/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021090397
(22)【出願日】2021-05-28
(62)【分割の表示】P 2019525678の分割
【原出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2021126530
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2017122364
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018025034
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018058743
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠川 仁悟
(72)【発明者】
【氏名】田上 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】緒方 絹子
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 耕平
(72)【発明者】
【氏名】浜 大吾
(72)【発明者】
【氏名】大和 淳司
(72)【発明者】
【氏名】雪田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 在
(72)【発明者】
【氏名】土谷 穏史
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235888(WO,A1)
【文献】特表2013-508050(JP,A)
【文献】特開2004-159850(JP,A)
【文献】実開昭51-034959(JP,U)
【文献】特開昭62-062012(JP,A)
【文献】実開昭60-108812(JP,U)
【文献】特表2014-506158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090371(US,A1)
【文献】米国特許第06012920(US,A)
【文献】特開2017-086591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0047805(US,A1)
【文献】国際公開第2006/070805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/56
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎および下顎マウスピースと、
雌ねじと、
雄ねじと、
前記上顎または下顎マウスピースに固定され、前記雌ねじを保持する固定部材と、
前記下顎または上顎マウスピースに固定され、前記雄ねじを保持するスライド部材と、
を備え、
前記雄ねじおよび雌ねじは、前記雌ねじに螺合した前記雄ねじの回転により前記スライド部材を前記固定部材に対して前後方向に位置決めして、前記下顎マウスピースを上顎マウスピースに対して前後方向に位置決めするマウスピースであって、
前記雌ねじに対する前記雄ねじの軸方向に対する回転を規制するストッパを備える、マウスピース。
【請求項2】
前記ストッパは、前記雄ねじの回転に応じて断続的に衝突音または振動を発生させ、前記衝突音または振動の回数に応じて前記上顎マウスピースに対する前記下顎マウスピースの位置を調整する、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記雄ねじは、前記雌ねじに螺合するねじ部と、外周に凹部を備える回転規制部と、を備え、
前記ストッパは、前記固定部材またはスライド部材に保持され、前記雄ねじの回転によって前記凹部に断続的に係合する弾性部材である、請求項1または2に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記スライド部材に保持される、請求項3に記載のマウスピース。
【請求項5】
前記弾性部材は、折り返し部により折り返された板状の形状を有する、請求項3または4に記載のマウスピース。
【請求項6】
前記固定部材またはスライド部材は、内周に凹部を備える回転規制部を備え、
前記ストッパは、前記雄ねじに保持され、前記雄ねじの回転によって前記凹部に断続的に係合する弾性部材である、請求項1または2に記載のマウスピース。
【請求項7】
前記ストッパは、前記雄ねじの前方端部に配置される、請求項6に記載のマウスピース。
【請求項8】
前記雄ねじは、前記スライド部材に着脱可能な留め具により、前記スライド部材に回転自在に保持される、請求項1~7のいずれか1項に記載のマウスピース。
【請求項9】
前記スライド部材は、前記留め具の端部を嵌め込み可能な貫通孔を有する、請求項8に記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠時無呼吸症候群の予防および治療などに、マウスピースが用いられている。
【0003】
上記マウスピースは、下顎マウスピースを上顎マウスピースより前方に位置決めして装着することにより、これを装着した使用者の下顎の後方への変位を制限して気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を予防可能である。また、上記マウスピースは、上顎マウスピースに対する下顎マウスピースの前進量を調整して、使用者の顎の形状に適合した量だけ下顎を上顎より前方に移動させ、使用者の気道をより狭窄しにくくすることが可能である。
【0004】
たとえば、特許文献1には、対向する一対の湾曲状部材(上顎および下顎マウスピース)のうち上顎側の湾曲状部材(上顎マウスピース)に固定され、下顎側の湾曲状部材(下顎マウスピース)に引掛けられることで湾曲状部材同士の位置を前後に調整する、フック状の下顎前進装置が記載されている。上記下顎前進装置は、ねじ部材によって位置決めされて、上記湾曲状部材同士の前後の位置を設定する。
【0005】
また、特許文献2には、上顎マウスピースに保持される雄ねじと、下顎マウスピースに保持される雌ねじと、によって上顎および下顎マウスピースの前後方向の位置を調整可能な下顎前進装置が記載されている。特許文献2に記載の下顎前進装置は、上記雄ねじおよび雌ねじをマウスピースの前部に配置できるため、特許文献1に記載のフック状の留め具とは異なり、舌の動きが妨げられることによる不快感が低減されるとされている。
【0006】
また、特許文献3には、上顎および下顎マウスピースの双方から前方に延びた一対の舌状部と、それぞれの舌状部に設けた複数の係止孔のうちいずれかを貫通して舌状部同士を位置決めする係止柱と、によって上顎および下顎マウスピースの前後方向の位置を調整可能な下顎前進装置が記載されている。特許文献3に記載の下顎前進装置は、係止柱を通す係止孔を適宜選択することによって、下顎マウスピースの前進量を調整できるため、上顎および下顎マウスピースの位置合わせが容易であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2002/0000230号明細書
【文献】特表2007-501641号公報
【文献】特表2013-523221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の下顎前進装置は、ねじの回転により上顎マウスピースに対する下顎前進装置の位置を調整し、その後に上顎マウスピースに固定されて、下顎マウスピースに引掛けられる。そのため、下顎前進装置を位置決めするときには、下顎マウスピースの前進量が直感的にわかりにくく、下顎マウスピースを前進させるための下顎前進装置の位置調整に手間がかかりやすい。
【0009】
一方で、特許文献2および特許文献3に記載の下顎前進装置は、上顎および下顎マウスピースを対向させて配置させた状態で、下顎マウスピースの前進量を調整できるので、下顎マウスピースを前進させるための下顎前進装置の位置調整がより容易である。しかし、特許文献2および特許文献3に記載の下顎前進装置は、歯列より前方に配置されるため、マウスピースの大型化を必要としたり、下顎前進装置が唇へ当接することがあったり、下顎前進装置によって唇を合わせての閉口が困難になったりすることなどにより、使用者の装着感が低下しかねない。
【0010】
上記問題に鑑み、本発明は、その第1の側面において、マウスピースを大型化することなく、下顎マウスピースの前進量をより容易に調整できる、マウスピースを提供することを目的とする。
【0011】
また、特許文献1および特許文献2に記載の下顎前進装置は、マウスピースの使用中の振動などによりねじが勝手に回転してしまうと、上顎および下顎マウスピースの位置が、最適な位置からずれてしまうことがある。
【0012】
一方で、特許文献3に記載の下顎前進装置は、下顎マウスピースの前進量を係止孔の組み合わせによって設定可能であるため、上顎および下顎マウスピースの位置ずれが生じにくい。しかし、特許文献3に記載の下顎前進装置は、下顎マウスピースを位置決めするためには少なくとも2本の係止柱が必要であり、これらの係止柱を保持するための係止部材も必要であるため、当該下顎前進装置を備えるマウスピースが大型化され、使用者の装着感が低下しかねない。
【0013】
また、上記問題に鑑み、本発明は、その第2の側面において、マウスピースを大型化することなく、上顎および下顎マウスピースの位置ずれを抑制できるマウスピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための本発明の第1の側面の一態様に関するマウスピースは、対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、雄ねじと、雌ねじと、前記上顎および下顎マウスピースの一方のマウスピースに配置され、前記雄ねじまたは雌ねじを保持する前方保持部と、前記上顎および下顎マウスピースの他方のマウスピースに配置され、前記前方保持部より後方で前記雌ねじまたは雄ねじを保持する後方保持部と、を備え、前記前方配置部は、前記一方のマウスピースの歯列面または歯列面より後方に配置され、前記雌ねじおよび雄ねじは、前記歯列面または歯列面より後方で前記雌ねじに螺合した前記雄ねじの回転により、前記下顎マウスピースを上顎マウスピースに対して前後方向に位置決めする。
【0015】
また、上記の課題を解決するための本発明の第2の側面の一態様に関するマウスピースは、上顎および下顎マウスピースと、雌ねじと、雄ねじと、上記上顎または下顎マウスピースに固定され、上記雌ねじを保持する固定部材と、上記下顎または上顎マウスピースに固定され、上記雄ねじを保持するスライド部材と、を備え、上記雄ねじおよび雌ねじは、上記雌ねじに螺合した上記雄ねじの回転により上記スライド部材を上記固定部材に対して前後方向に位置決めして、上記下顎マウスピースを上顎マウスピースに対して前後方向に位置決めする。上記マウスピースは、上記雌ねじに対する上記雄ねじの軸方向に対する回転を規制するストッパを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の側面によれば、マウスピースを大型化することなく、下顎マウスピースの前進量をより容易に調整できる、マウスピースが提供される。
【0017】
本発明の第2の側面によれば、マウスピースを大型化することなく、上顎および下顎マウスピースの位置ずれを抑制できるマウスピースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に関するマウスピースの構成を示す模式的な斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に関するマウスピースを装着しながら下顎を前進させる様子を示す側面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な斜視図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な分解斜視図である。
図5図5Aは、本発明の第2の実施形態における前方保持部の第1の構成を模式的に示す斜視図であり、図5Bは、上記第1の構成を模式的に示す断面平面図である。
図6図6Aは、本発明の第2の実施形態における前方保持部の第2の構成を模式的に示す正面図であり、図6Bは、上記第2の構成を模式的に示す断面図であり、図6Cは、上記第2の構成を模式的に示す部分斜視図である。
図7図7Aは、本発明の第2の実施形態における前方保持部の第3の構成を模式的に示す正面図であり、図7Bは、上記第3の構成を模式的に示す断面図であり、図7Cは、上記第3の構成を模式的に示す部分斜視図である。
図8図8Aは、本発明の第2の実施形態における前方保持部の第4の構成を模式的に示す正面図であり、図8Bは、上記第4の構成を模式的に示す断面図であり、図8Cは、上記第4の構成を模式的に示す部分斜視図である。
図9図9Aは、本発明の第2の実施形態における後方保持部の第1の構成を模式的に示す正面図であり、図9Bは、上記第1の構成を模式的に示す断面図であり、図9Cは、上記第1の構成を模式的に示す部分斜視図である。
図10図10Aは、本発明の第2の実施形態における後方保持部の第2の構成を模式的に示す正面図であり、図10Bは、上記第2の構成を模式的に示す断面図であり、図10Cは、上記第2の構成を模式的に示す部分斜視図である。
図11図11Aは、本発明の第2の実施形態における後方保持部の第3の構成を模式的に示す斜視図であり、図11Bは、上記第3の構成を模式的に示す断面平面図である。
図12図12Aは、本発明の第2の実施形態における後方保持部の第4の構成を模式的に示す斜視図であり、図12Bは、上記第4の構成を模式的に示す断面平面図である。
図13図13は、本発明の第3の実施形態に関するマウスピースの構成を模式的に示す側面図である。
図14図14は、本発明に関するマウスピースの構成を示す模式的な斜視図である。
図15図15は、本発明に関するマウスピースを装着しながら下顎を前進させる様子を示す側面図である。
図16図16は、本発明の第4の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な斜視図である。
図17図17は、本発明の第4の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な分解斜視図である。
図18図18は、本発明の第4の実施形態に関する下顎前進装置の先端部の透視図である。
図19図19は、本発明の第5の実施形態に関する下顎前進装置の先端部の斜視図である。
図20図20は、本発明の第5の実施形態に関する下顎前進装置の、図19のA-A線における断面図である。
図21図21は、本発明の第6の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な斜視図である。
図22図22は、本発明の第6の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な分解斜視図である。
図23図23は、本発明の第7の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な分解斜視図である。
図24図24は、本発明の第8の実施形態に関する下顎前進装置の模式的な分解斜視図である。
図25図25は、本発明の第8の実施形態に関する下顎前進装置の先端部の模式的な拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、複数の実施形態を用いて、本発明のマウスピースを説明する。
【0020】
なお、以下の説明において、「前方」および「後方」は、それぞれ、マウスピースを装着した使用者の前方に向かう方向(口腔内で舌体から見て口唇側に向かう方向)および後方に向かう方向(口腔内で舌体から見て喉側に向かう方向)を意味し、「左右方向」は、マウスピースを装着した使用者の上顎の正中を基準として、使用者に前方に向かって左右の方向(具体的には上顎の正中からみて両側の頬に向かう方向)を意味し、「開口方向」は、マウスピースを装着した使用者が開口するときに下顎が動く方向を意味し、「歯列面」は、マウスピースを装着した使用者の歯の前方表面に相当する面を意味し、「内周」および「外周」は、それぞれ、マウスピースを装着した使用者の体表に近い側の周表面および体表から遠い側の周表面を意味する。
【0021】
1.第1の側面に関するマウスピース
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に関するマウスピース1100は、マウスピース1100の構成を示す模式的な斜視図である図1、およびマウスピースを装着しながら下顎を前進させる様子を示す側面図である図2に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピース、ならびに下顎前進装置1200を有する。
【0022】
上顎マウスピース1110は、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部1112が形成されて、使用者の上顎に装着可能に構成される。また、下顎マウスピース1120は、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部1122が形成されて、使用者の下顎に装着可能に構成される。下顎マウスピース1120は、下顎前進装置1200により、対向して配置された上顎マウスピース1110に連結され、かつ、上顎マウスピース1110より前方に位置決め可能である。
【0023】
なお、以下、上顎マウスピース1110のうち、マウスピース1100を装着した使用者が閉口したとき(以下、単に「閉口時」ともいう。)に、下顎マウスピース1120と対向する領域を下向対向面1114といい、下顎マウスピース1120のうち、閉口時に上顎マウスピース1110と対向する領域を上向対向面1124という。また、上顎マウスピース1110および下顎マウスピース1120のうち、マウスピースを装着した使用者の舌部側を向いた面を舌側面といい、唇側を向いた面を唇側面という。
【0024】
下顎前進装置1200は、その模式的な斜視図である図3および分解斜視図である図4に示すように、上顎マウスピース1110に固着された前方保持部1210と、下顎マウスピース1120に固着された後方保持部1220と、前方保持部1210と後方保持部1220とが所定の間隔を開けて配置されるように前方保持部1210と後方保持部1220とを連結する雄ねじ1230および雌ねじ1240と、を備える。
【0025】
下顎前進装置1200は、図2に示すように、ねじ回し1400によって雄ねじ1230と雌ねじ1240との螺合量を調整し、前方保持部1210に対して後方保持部1220を前後方向に位置決めすることにより、後方保持部1220が固着された下顎マウスピース1120を、前方保持部1210が固着された上顎マウスピース1110よりも前方に位置決め可能である。
【0026】
これにより、下顎前進装置1200は、閉口時に、下顎マウスピース1120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース1120の後方への変位を制限可能である。また、これにより、マウスピース1100は、マウスピース1100を装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
【0027】
前方保持部1210は、上顎マウスピース1110に固着する固着部1212と、固着部1212から開口方向に突出して、後方保持部1220が有する後方対向部1224と閉口時に対向する位置に配置された前方対向部1214と、を備え、前方対向部1214には、雄ねじ1230を保持する保持孔1216が形成されている。前方保持部1210は、上顎マウスピース1110の切歯(好ましくは一対の上顎中切歯(歯列番号1番))に対応する下向対向面1114に配置されて、上記切歯に対応する下向対向面1114から下方に突出した前方対向部1214により、マウスピース1100を装着した使用者の、上顎の切歯と下顎の切歯との間の間隔を広げて、上記切歯間の間隔に雄ねじ1230を保持する。
【0028】
固着部1212は、上顎マウスピース1110のうち、切歯に対応する下向対向面1114を被覆するように配置されて、上顎マウスピース1110に固着される。上顎マウスピース1110への前方保持部1210の接合強度を高める観点からは、固着部1212は、切歯を唇側面から下顎側を通って舌側面へと取り囲むように、上顎マウスピース1110の下向対向面1114を被覆することが好ましい。
【0029】
前方対向部1214は、固着部1212の一部または全体が下顎マウスピース1120に向けて突出して形成されて、後方対向部1224と閉口時に前後方向に対向する位置に配置される。また、前方対向部1214には、後方対向部1224に固定された雌ねじ1240と前後方向に対向する位置に、雄ねじ1230を挿通させる保持孔1216が形成されている。下顎マウスピース1120に向けての突出長さは、後述する雄ねじ1230の係合部1232を挿通させることが可能な大きさの保持孔1216を前方対向部1214に形成できる程度であればよいが、上記切歯間の間隔が広がりすぎることによる装着感の低下を同時に抑制する観点からは、雄ねじ1230の係合部1232の外径に対して1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.0倍以上2.0倍以下がさらに好ましく、1.0倍以上1.5倍以下が極めて好ましい。
【0030】
前方対向部1214には、雄ねじ1230の円筒部1235を挿通させて雄ねじ1230を保持する保持孔1216と、保持孔1216の前方で雄ねじ1230の係合部1232を嵌め込んで配置する嵌込部1218と、が形成されている。保持孔1216は、前方対向部1214の後方側に形成された、前方対向部1214を前後方向に貫通する貫通孔であり、嵌込部1218は、前方対向部1214のうち保持孔1216の前方側に形成された、雄ねじ1230の係合部1232と相補する形状の窪みである。マウスピース1100の前方へ雄ねじ1230が突出し、突出した雄ねじ1230が唇または頬の内側に当接することによる使用者の違和感を低減する観点からは、嵌込部1218は、雄ねじ1230の係合部1232を収容できる大きさであることが好ましい。具体的には、嵌込部1218は、その前後方向の幅が、マウスピース1100に配置されたときの雄ねじ1230の係合部1232の前後方向の幅より大きいことが好ましい。
【0031】
前方対向部1214のうち、保持孔1216の外周となる表面は、回転する雄ねじ1230との当接による前方対向部1214の摩耗などを抑制するために、金属などで被覆された保護面1217としてもよい。同様に、嵌込部1218において雄ねじ1230の係合部1232と対向する表面は、回転する雄ねじ1230との当接による前方対向部1214の摩耗などを抑制するために、金属などで被覆された保護面1219としてもよい。
【0032】
後方保持部1220は、下顎マウスピース1120に固着して下顎マウスピース1120の舌側面から後方(舌部側)に突出して配置された突出部1222と、突出部1222の後端部において上方に延出して形成され、前方保持部1210が有する前方対向部1214と閉口時に前後方向に対向する位置に配置された平板状の後方対向部1224と、を備え、後方対向部1224には、雌ねじ1240が固定される。後方保持部1220は、下顎マウスピース1120の切歯(好ましくは一対の下顎中切歯(歯列番号1番))に対応する舌側面に突出部1222の先端が固着され、上記切歯に対応する舌側面から後方に突出した突出部1222の後端部から上方に延出した後方対向部1224により、マウスピース1100よりも舌側の空間に、雌ねじ1240を保持する。
【0033】
突出部1222は、下顎マウスピース1120の舌側面に一端が固定され、舌部側に突出することにより、後方対向部1224を歯列より後方に配置する。下顎マウスピース1120への後方保持部1220の接合強度を高める観点からは、突出部1222は、切歯を前方(唇側面)から下顎側を通って後方(舌側面)へと取り囲むように、下顎マウスピース1120の下向対向面1114を被覆してその一端が下顎マウスピース1120に固定されてもよい。しかし、マウスピース1100を装着した使用者の開口量を減らして装着感を高める観点からは、突出部1222は、下顎マウスピース1120の舌側面にのみ接触して下顎マウスピース1120に固定されることが好ましい。
【0034】
突出部1222は、側面視において下顎マウスピース1120の上向対向面1124よりも下方となる位置で、下顎マウスピースの舌側面から後方に突出する。本実施形態において、突出部1222は、その上面を、前方側では下顎マウスピース1120からなだらかに下降し、後方側では後方対向部1224に向けてなだらかに上昇する湾曲形状とし、突出部1222から連続的に後方対向部1224が形成される形状とすることで、使用者の舌からの当接圧を分散して後方保持部1220の破損を抑制している。
【0035】
後方対向部1224は、前方対向部1214と閉口時に前後方向に対向する位置に配置される。また、後方対向部1224は、前方対向部1214の保持孔1216と閉口時に対向する位置に、雌ねじ1240を固定する。これにより、また、雄ねじ1230および雌ねじ1240は、マウスピース1100の側面視において、上顎マウスピース1110の下向対向面1114と下顎マウスピース1120の上向対向面1124との間の高さに配置される。
【0036】
後方対向部1224の前後方向への厚みは、マウスピース1100に配置されたときの雌ねじ1240の前後方向の長さと同じか、それより大きければよいが、装着感の低下を抑制する観点からは、雌ねじ1240の上記前後方向の長さに対して1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.0倍以上2.0倍以下がさらに好ましく、1.0倍以上1.5倍以下が極めて好ましい。
【0037】
雄ねじ1230は、ねじ回し1400と係合可能な係合部1232、前方係止部1234および後方係止部1236、前方係止部1234と後方係止部1236との間に配置された環状の円筒部1235、ならびに雌ねじ1240と螺合可能なねじ部1238を備える。係合部1232、前方係止部1234、円筒部1235、後方係止部1236、およびねじ部1238は、雄ねじ1230の一方の先端から他方の先端に向けて、この順に配置される。
【0038】
係合部1232は、雄ねじ1230の前方端または前方端と前方係止部1234との間に配置される。係合部1232は、ねじ回し1400と係合可能であり、係合したねじ回し1400を回転させることで、雄ねじ1230を回転させることができる形状であればよい。たとえば、係合部1232は、六角穴として、これに嵌め込み可能な六角柱状のねじ回し1400(六角棒スパナ)の先端を挿入して雄ねじ1230を回転可能な形状とすることができる。あるいは、係合部1232は、楕円柱状の穴として、これに嵌め込み可能な楕円柱状のねじ回しの先端を挿入して雄ねじ1230を回転可能な形状とすることができる。
【0039】
前方係止部1234、円筒部1235および後方係止部1236は、雄ねじ1230が前方保持部1210の前方対向部1214に形成された保持孔1216に挿通されたときに、雄ねじ1230を前方保持部1210に対して回転自在に位置固定する。
【0040】
具体的には、前方係止部1234は、保持孔1216より大きい形状に形成された略U字状の薄板状の部材であり、円筒部1235の前方に形成された前方くびれ部に嵌め込まれて前方くびれ部の周囲に取り付けられる。また、後方係止部1236は、保持孔1216より大きい形状に形成された略U字状の薄板状の部材であり、円筒部1235の後方に形成された後方くびれ部に嵌め込まれて後方くびれ部の周囲に取り付けられる。これにより、雄ねじ1230は、前方係止部1234および後方係止部1236において、その外周の半径が、保持孔1216の半径より大きく形成され、円筒部1235において、その外周の半径が、保持孔1216の半径より小さく形成される。そのため、雄ねじ1230は、前方保持部1210に対する前後方向の移動が前方係止部1234および後方係止部1236の間隔に制限されつつ、前方保持部1210に対して回転可能に位置固定され得る。
【0041】
ねじ部1238は、雄ねじ1230の後方部に配置される。ねじ部1238は、雌ねじ1240と螺合可能なねじ形状を有すればよい。前方保持部1210に対する後方保持部1220の前進量をより多くして、上顎マウスピース1110に対する下顎マウスピース1120の前進量をより多くする観点から、ねじ部1238は、雄ねじ1230の半分以上の長さを有することが好ましい。
【0042】
雌ねじ1240は、後方保持部1220の後方対向部1224に、前方保持部1210の保持孔1216と対向して固定される。これにより、雌ねじ1240は、上顎および下顎マウスピースの、歯列面より後方で、雄ねじ1230と螺合する。
【0043】
上記構成を有するマウスピース1100によれば、前方保持部1210によって上顎マウスピース1110に保持された雄ねじ1230のねじ部1238を、後方保持部1220によって下顎マウスピース1120に保持された雌ねじ1240に螺合させることで、後方保持部1220が前方保持部1210に連結され、下顎マウスピース1120が上顎マウスピース1110に連結される。さらに、雄ねじ1230のねじ部1238と雌ねじ1240との螺合量を調整することで、後方保持部1220は、前方保持部1210に対して前後方向に位置決めされる。これにより、後方保持部1220が固着された下顎マウスピース1120も、前方保持部1210が固着された上顎マウスピース1110に対して前方に位置決め可能である。
【0044】
このとき、雄ねじ1230のねじ部1238と雌ねじ1240との螺合量を適宜調整することで、上顎マウスピース1110に対する下顎マウスピース1120の前進量を調整可能である。このようにして、使用者の顎の形状に適合した量だけ下顎マウスピース1120を上顎マウスピース1110より前方に移動させることで、マウスピース1100を装着した使用者の気道をより狭窄しにくくすることが可能である。
【0045】
また、上記構成を有するマウスピース1100によれば、雄ねじ1230は、上顎および下顎マウスピースの歯列面から、歯列面より後方にかけて配置される。そのため、雄ねじ1230が歯列面より前方に配置されることによるマウスピースの大型化、および雄ねじ1230が唇へ当接したり、雄ねじ1230によって唇を合わせての閉口が困難になったりすることにより、使用者の装着感の低下が抑制される。
【0046】
上顎マウスピース1110および下顎マウスピース1120は、ヒトの通常の咬合力によって破損しにくい材料から形成される。
【0047】
たとえば、上顎マウスピース1110および下顎マウスピース1120は、JIS T 6501に準じて測定される曲げ弾性率が2000MPa以上3000MPa以下の単一の硬い材料(たとえばアクリル樹脂)や、10MPa以上300MPa以下の柔らかい材料と1000MPa以上3000MPa以下の硬い材料とを組み合わせた材料から形成されてもよい。
【0048】
また、上顎マウスピース1110および下顎マウスピース1120は、使用者の歯への追従性を高めるため、引張強度150N以上2000N未満、好ましくは150N以上500N以下の比較的柔らかい材料から形成されてもよい。
【0049】
なお、引張強度は、ニッシン標準模型を用いて作製したマウスピース(厚さ3mm)の上顎マウスピースにおける歯列6番にφ1.5mmの穴を開け、臼歯方向(後方)に引張試験をした際に、上記上顎マウスピースが裂けた強度を意味する。
【0050】
上記引張強度150N以上2000N未満の材料の例には、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびアクリル系ゴム樹脂が含まれる。これらのうち、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0051】
オレフィン系樹脂は、オレフィンを単独重合してなる重合体、またはオレフィンと他の単量体とを重合してなる共重合体である。上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン、およびヘキセンなどを含む炭素数が2~6のオレフィンが好ましい。上記他の単量体の例には、酢酸ビニルなどが含まれる。
【0052】
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂、およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などが好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂などがより好ましい。
【0053】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸(ジカルボン酸など)とポリアルコール(ジオールなど)との重縮合体である。上記ポリエステル系樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれる。
【0054】
ウレタン系樹脂は、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物との重縮合体である。上記ウレタン系樹脂の例には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などが含まれる。
【0055】
ポリアミド系樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできた(共)重合体である。上記ポリアミド系樹脂の例には、ナイロン、パラ系アミド、およびメタ系アミドなどが含まれる。
【0056】
アクリル系ゴム樹脂は、アクリル系ゴムを主成分とした(共)重合体である。上記アクリル系樹脂の例には、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体などが含まれる。
【0057】
引張強度150N以上2000N未満の材料としては、プライムポリマー株式会社製のF327(ポリプロピレン系樹脂)などの市販されているものを用いてもよい。
【0058】
前方保持部1210および後方保持部1220は、JIS T 6501に準じて測定される曲げ弾性率が1000MPa以上3000MPa以下の硬い樹脂材料(たとえばポリカーボネート樹脂)、ならびに、チタンまたはチタンを含む合金、鉄(ステンレスを含む鋼など)、ならびに金、銀、白金、コバルトおよびクロムなどの合金などの金属材料などから形成することができる。なお、上記金属材料は、化成皮膜などにより耐食性を高められていてもよい。
【0059】
雄ねじ1230および雌ねじ1240は、チタンまたはチタンを含む合金、鉄(ステンレスを含む鋼など)、ならびに金、銀、白金、コバルトおよびクロムなどの合金などの金属材料、ならびに、JIS T 6501に準じて測定される曲げ弾性率が1000MPa以上3000MPa以下の硬い樹脂材料(たとえばポリカーボネート樹脂)などから形成することができる。なお、上記金属材料は、化成皮膜などにより耐食性を高められていてもよい。
【0060】
前方保持部1210は、たとえば、雄ねじ1230を配置した前方保持部1210用の型に光硬化性材料を流し込み、紫外線などを照射して上記光硬化性材料を硬化させることで、雄ねじ1230を保持させることができる。あるいは、前方保持部1210は、上記樹脂または金属により形成し、雄ねじ1230を保持孔1216に挿通させた後に、前方くびれ部に前方係止部1234が嵌め込まれ、かつ、後方くびれ部に後方係止部1236が嵌め込まれた状態として、雄ねじ1230を保持させることができる。
【0061】
前方保持部1210は、たとえば上記した方法で上顎マウスピース1110とは別個に製造されて、上顎マウスピース1110に接着されてもよい。あるいは、前方保持部1210は、これを配置した上顎マウスピース1110用の型に光硬化性材料を流し込み、紫外線などを照射して上記光硬化性材料を硬化させることで、上顎マウスピース1110に固定させることができる。
【0062】
後方保持部1220は、たとえば、雌ねじ1240を配置した前方保持部1210用の型に光硬化性材料を流し込み、紫外線などを照射して上記光硬化性材料を硬化させることで、雌ねじ1240を保持させることができる。あるいは、後方保持部1220は、雌ねじ1240を保持できる形状の窪みまたは貫通孔を有する形状に、雌ねじ1240とは別個に作製された後に、雌ねじ1240を嵌め込んで、雌ねじ1240を保持させてもよい。あるいは、後方保持部1220は、雌ねじ1240と同一の材料により、雌ねじ1240と一体的に成形されてもよい。
【0063】
後方保持部1220は、たとえば上記した方法で下顎マウスピース1120とは別個に製造されて、下顎マウスピース1120に接着されてもよい。あるいは、後方保持部1220は、これを配置した下顎マウスピース1120用の型に光硬化性材料を流し込み、紫外線などを照射して上記光硬化性材料を硬化させることで、下顎マウスピース1120に固定させることができる。
【0064】
(効果)
本実施形態によれば、マウスピースを大型化することなく、下顎マウスピースの前進量をより容易に調整することが可能となる。
【0065】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に関するマウスピースは、前方保持部および後方保持部が、雄ねじを左右に変位または左右方向へ回動可能に保持する点において、第1の実施形態に関するマウスピース1100とは異なる。そのため、以下、重複する説明は省略し、第1の実施形態に関するマウスピース1100とは異なる前方保持部1210および後方保持部1220の構成のみを説明する。
【0066】
(前方保持部の第1の構成)
図5Aは、本実施形態における前方保持部の第1の構成を模式的に示す斜視図であり、図5Bは、上記第1の構成を模式的に示す断面平面図である。説明の容易のため、図5Aおよび図5Bには、雄ねじ1230も記載している。
【0067】
本構成例に関する前方保持部1210aは、前方対向部1214aに形成された保持孔1216aが左右に幅広に形成された略楕円形状の貫通孔となっている。なお、保持孔1216aに保護面が形成されているときは、当然ながら、保護面も略楕円柱状となる。これにより、前方保持部1210aは、保持孔1216aに雄ねじ1230の円筒部1235を挿通させて、雄ねじ1230を左右に変位または左右方向へ回動可能に保持する。
【0068】
(前方保持部の第2の構成)
図6Aは、本実施形態における前方保持部の第2の構成を模式的に示す正面図であり、図6Bは、上記第2の構成を模式的に示す断面図であり、図6Cは、上記第2の構成を模式的に示す部分斜視図である。説明の容易のため、図6A図6Bおよび図6Cには、雄ねじ1230も記載している。
【0069】
本構成例に関する前方保持部1210bは、前方対向部1214bが、固着部1212bの下端部に左右方向に延在するガイドフック1252aと、ガイドフック1252aに保持されたスライド部材1252cと、を有する。スライド部材1252cは、その上端に固定された引掛フック1252bをガイドフック1252aに引掛ることによって、左右方向に移動可能にガイドフック1252aに取り付けられる。前方保持部1210bは、スライド部材1252cに形成された中空円筒状の保持孔1216bを有し、保持孔1216bに雄ねじ1230の円筒部1235を挿通させて雄ねじ1230をスライド部材1252cに対して位置固定し、左右に変位または左右方向へ回動可能に雄ねじ1230を保持する。
【0070】
(前方保持部の第3の構成)
図7Aは、本実施形態における前方保持部の第3の構成を模式的に示す正面図であり、図7Bは、上記第3の構成を模式的に示す断面図であり、図7Cは、上記第3の構成を模式的に示す部分斜視図である。説明の容易のため、図7A図7Bおよび図7Cには、雄ねじ1230も記載している。
【0071】
本構成例に関する前方保持部1210cは、前方対向部1214cが、固着部1212cの下端部において左右方向に延在する、互いに異なる高さに配置された2本のガイド棒1254aおよびガイド棒1254bと、ガイド棒1254aおよびガイド棒1254bに保持されたスライド部材1254cと、を有する。スライド部材1254cは、ガイド棒1254aおよびガイド棒1254bを挿通させて、上記2本のガイド棒1254aおよびガイド棒1254bに沿って左右方向に移動可能に、取り付けられる。前方保持部1210cは、スライド部材1254cに形成された中空円筒状の保持孔1216cを有し、保持孔1216cに雄ねじ1230の円筒部1235を挿通させて雄ねじ1230をスライド部材1254cに対して位置固定し、左右に変位または左右方向へ回動可能に雄ねじ1230を保持する。
【0072】
(前方保持部の第4の構成)
図8Aは、本実施形態における前方保持部の第4の構成を模式的に示す正面図であり、図8Bは、上記第4の構成を模式的に示す断面図であり、図8Cは、上記第4の構成を模式的に示す部分斜視図である。説明の容易のため、図8A図8Bおよび図8Cには、雄ねじ1230も記載している。
【0073】
本構成例に関する前方保持部1210dは、前方対向部1214dが、固着部1212dの下端部の内部に形成された左右方向に延在する中空状の空間であり、かつ左右方向に延在する開口を下端側に形成してなるガイドレール1256aと、ガイドレール1256aに保持されたスライド部材1256cと、を有する。スライド部材1256cは、その上端から連続して形成されたハンマー状の槌部1256bをガイドレール1256aに引掛ることによって、左右方向に移動可能にガイドレール1256aに取り付けられる。このとき、ガイドレール1256aは、固着部1212dの下端部の内部に形成された中空状の空間の前後方向への幅が、下端側への開口の前後方向への幅より大きくなるように形成され、槌部1256bは、上端部が固着部1212dの下端部の内部に形成された上記中空状の空間に嵌め込まれるように前後方向に拡幅する。これにより、槌部1256bは、ガイドレール1256aに沿って左右方向に移動可能である。前方保持部1210dは、スライド部材1256cに形成された中空円筒状の保持孔1216dを有し、保持孔1216dに雄ねじ1230の円筒部1235を挿通させて雄ねじ1230をスライド部材1256cに対して位置固定し、左右に変位または左右方向へ回動可能に雄ねじ1230を保持する。
【0074】
(後方保持部の第1の構成)
図9Aは、本実施形態における後方保持部の第1の構成を模式的に示す正面図であり、図9Bは、上記第1の構成を模式的に示す断面図であり、図9Cは、上記第1の構成を模式的に示す部分斜視図である。説明の容易のため、図9A図9Bおよび図9Cには、雄ねじ1230および雌ねじ1240も記載している。
【0075】
本構成例に関する後方保持部1220aは、突出部1222aの後端部の内部に、上端側に開口し、かつ、開口径が縮小した引掛部を開口と底面との間に有する回動保持孔1262aを有する。また、後方対向部1224aは、回動保持孔1262aに挿入され、かつ、引掛部に引掛る形状の縮径部1262bを有するストッパ1262cと、ストッパ1262cから連続して上方に形成されて回動保持孔1262aの外部で雌ねじ1240を固定する回動保持部1262dと、を有する。後方保持部1220aは、ストッパ1262cが回動保持孔1262aに回動可能に挿入され、かつ、縮径部1262bにより回動保持部の上下方向への変位を規制して回動保持部1262dを回動可能に位置固定することにより、回動保持部1262dに固定された雌ねじ1240を回動可能に保持する。このようにして後方保持部1220aが雌ねじ1240を回動可能に保持することで、雌ねじ1240に螺合した雄ねじ1230も左右方向に回動可能となる。
【0076】
上記第1の構成に関する後方保持部1220aは、前方保持部の第1の構成、第2の構成、第3の構成および第4の構成のいずれと組み合わせて用いてもよい。
【0077】
なお、本構成において、回動保持孔1262aは、開口径が縮小した引掛部のかわりに開口径が拡大した引掛部を有し、後方対向部1224aは、引掛部に引掛る縮径部のかわりに開口径が拡大した拡径部を有してもよい。
【0078】
(後方保持部の第2の構成)
図10Aは、本実施形態における後方保持部の第2の構成を模式的に示す正面図であり、図10Bは、上記第2の構成を模式的に示す断面図であり、図10Cは、上記第2の構成を模式的に示す部分斜視図である。説明の容易のため、図10A図10Bおよび図10Cには、雄ねじ1230および雌ねじ1240も記載している。
【0079】
本構成例に関する後方保持部1220bは、突出部1222bの後端部が前後方向に延在する薄板状となっており、上記薄板状となっている後端部を上下方向に貫通する貫通孔1264aが形成されている。後方対向部1224bは、貫通孔1264aに回動可能に挿通される挿通棒1264bと、ストッパ1264cと、雌ねじ1240を回動可能に保持する回動保持部1264dと、を有し、ストッパ1264cおよび回動保持部1264dは、いずれも、貫通孔1264aよりも幅広の形状を有する。後方対向部220bは、挿通棒1264bが回動保持孔1264aに回動可能に挿入され、かつ、ストッパ1264cが回動保持部1264dの上下方向への変位を規制して回動保持部1264dを回動可能に位置固定することにより、回動保持部1264dに固定された雌ねじ1240を回動可能に保持する。このようにして後方保持部1220bが雌ねじ1240を回動可能に保持することで、雌ねじ1240に螺合した雄ねじ1230も左右方向に回動可能となる。
【0080】
上記第2の構成に関する後方保持部1220bは、前方保持部の第1の構成、第2の構成、第3の構成および第4の構成のいずれと組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(後方保持部の第3の構成)
図11Aは、本実施形態における後方保持部の第3の構成を模式的に示す斜視図であり、図11Bは、上記第3の構成を模式的に示す断面平面図である。説明の容易のため、図11Aおよび図11Bには、前方保持部1210、雄ねじ1230および雌ねじ1240も記載している。
【0082】
本構成例に関する後方保持部1220cは、後方保持部1266aが有する左右に幅広に形成された略楕円形状の後方保持孔1266bに雌ねじ1240を挿通させ、雌ねじ1240を左右に変位可能に保持する。一方で、後方保持部1220cは、後方保持孔1266bより幅広に形成されて後方保持孔1266bを通過できない雌ねじ後端部1242と、雌ねじ1240に固定されて後方保持孔1266bの前方で雌ねじ1240を係止する雌ねじ係止部1266cと、によって雌ねじ1240の前後方向への移動を制限する。上記第3の構成に関する後方保持部1220cは、前方保持部の第1の構成、第2の構成、第3の構成および第4の構成のいずれと組み合わせて用いてもよいが、図11Aおよび図11Bに示すように、前方保持部の第1の構成と組み合わせることが、前方保持部1210および後方保持部1220の構成を簡素化する観点から好ましい。
【0083】
(後方保持部の第4の構成)
図12Aは、本実施形態における後方保持部の第4の構成を模式的に示す斜視図であり、図12Bは、上記第4の構成を模式的に示す断面平面図である。説明の容易のため、図12Aおよび図12Bには、前方保持部1210、雄ねじ1230および雌ねじ1240も記載している。
【0084】
本構成例において、雌ねじ1240dは、略球状の雌ねじであり、後方保持部1220dは、先端側に開口し、かつ、上記略球状の雌ねじ1240dを収容する、球形の雌ねじ孔1268aを有する。雌ねじ孔1268aは、前方保持部1210側の端面に、上下方向には雌ねじ1240dの直径よりも小さい幅(たとえば、雄ねじ1230の外径と略同じ幅)を有し、左右方向にはより広い幅に形成された開口を有する。これにより、雌ねじ1240dに螺合した雄ねじ1230も左右方向に回動可能となる。上記第4の構成に関する後方保持部1220dは、前方保持部の第1の構成、第2の構成、第3の構成および第4の構成のいずれと組み合わせて用いてもよい。
【0085】
(効果)
本実施形態によれば、雄ねじ1230が左右方向に変位または回動可能であるため、下顎マウスピース1120が上顎マウスピース1110に対して位置固定されず、下顎マウスピース1120を上顎マウスピース1110に対して左右方向に変位または回動させることも可能となる。そのため、本実施形態に関するマウスピースを装着した使用者は、装着中に下顎を左右方向に変位させることができる。これにより、本実施形態に関するマウスピースは、下顎が上顎に対して位置固定されることによる使用者の違和感を低減することができる。また歯ぎしりなどの左右方向の力により上顎マウスピース及び下顎マウスピースが破損することを防ぐことができる。
【0086】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に関するマウスピース1300は、後方保持部が、閉口時に使用者の舌部を押下する、押下部を有する点において、第1の実施形態に関するマウスピースまたは第2の実施形態に関するマウスピースとは異なる。そのため、以下、重複する説明は省略し、第1の実施形態に関するマウスピースまたは第2の実施形態に関するマウスピースとは異なる後方保持部の構成のみを説明する。
【0087】
図13は、本実施形態に関するマウスピース1300の構成を模式的に示す側面図である。マウスピース1300は、後方保持部1220が、押下部1270を有する。
【0088】
押下部1270は、後方保持部から後方に延在するへら状の部材であって、閉口時に使用者の舌部を押下する。マウスピース1300を装着した使用者の舌部を押下部1270が押下すると、使用者の気道がより開放されやすくなる。
【0089】
なお、押下部1270の形状は特に限定されず、たとえば、後方および左右方向の両方に延在してもよい。
【0090】
(効果)
本実施形態によれば、マウスピース1300を装着した使用者の舌部を押下部1270が押下することにより、使用者の気道がより開放されやすくなるため、マウスピース1300を装着した使用者の気道の狭窄を予防し、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
【0091】
[第1実施形態~第3の実施形態の変形例]
なお、第1の実施形態~第3の実施形態はそれぞれ本発明の第1の側面の一例を示すものであり、本発明の第1の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
【0092】
たとえば、第1の実施形態~第3の実施形態では、雌ねじは後方保持部と一体的に成形されるかまたは後方保持部に接合されていたが、雌ねじは後方保持部に着脱可能に保持されてもよい。一方で、第1の実施形態~第3の実施形態では、雄ねじは前方保持部に着脱可能に保持されていたが、雄ねじは前方保持部に回転可能に固定されていてもよい。
【0093】
また、第1の実施形態~第3の実施形態では、雄ねじを保持する前方保持部が上顎マウスピースに固定され、雌ねじを保持する後方保持部が下顎マウスピースに固定されていたが、雄ねじを保持する前方保持部が下顎マウスピースに固定され、雌ねじを保持する後方保持部が上顎マウスピースに固定されてもよい。このとき、雌ねじと螺合させるときの雄ねじの回転方向を逆向きにすることで、雄ねじの回転により下顎マウスピースを上顎マウスピースより前方に移動させることができる。
【0094】
あるいは、雌ねじを保持する前方保持部が上顎マウスピースまたは下顎マウスピースに固定され、雄ねじを保持する後方保持部が下顎マウスピースまたは上顎マウスピースに固定されてもよい。このとき、雌ねじは、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースの歯列面で雄ねじと螺合してもよい。また、このとき、雄ねじの向きは第1の実施形態~第3の実施形態とは反対になり、雄ねじの係合部はマウスピースの後方に面して配置されることになる。このとき、たとえば、第2の実施形態において、後方保持部に保持された雄ねじを左右方向に回動または変位可能とし、前方保持部に保持された雌ねじを左右方向に変位させてもよい。
【0095】
また、第1の実施形態~第3の実施形態では、前方保持部は上顎および下顎マウスピースの歯列間に配置されているが、前方保持部および後方保持部の両方を上顎および下顎マウスピースの歯列面より後方に配置してもよい。
【0096】
また、第1の実施形態~第3の実施形態において、雄ねじまたは雌ねじは、これらを係合させるためのトルクが部分的に異なってもよい。
【0097】
たとえば、雄ねじのねじ部は、後方側の先端部側の外径が鍔部側の外径よりも大きくなるような2種類の外径を有してもよいし、鍔部側から後方側の先端部側にかけて外径が連続的に広がっていく形状を有してもよい。あるいは、雄ねじのねじ部は、後方側の先端から鍔部方向に空隙部またはスリットが設けられて、後方側の先端部の外径が外側に広げられて拡大されてもよい。上記スリットは、後方側の先端部の幅がより大きくなるように、深さ方向に幅を変化させることで、後方側の先端部をより外側に開かせて、後方側の先端部の外径をより大きくさせることができる。あるいは、雌ねじは、前方側の内径が後方側の内径よりも小さくなるような2種類の内径を有してもよいし、後方側から前方側にかけて内径が連続的に狭まっていく形状を有してもよい。
【0098】
あるいは、雄ねじのねじ部または雌ねじは、ねじのピッチが部分的に小さくなる小ピッチ部を有してもよい。上記小ピッチ部は、その他の領域よりも小さい一定幅のピッチを有してもよいし、前方または後方に連続的に小さくなるピッチを有してもよい。
【0099】
また、第1の実施形態~第3の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であれば歯列型を有さなくてもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部にだけ歯列型取部を有してもよい。
【0100】
また、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていても良い。
【0101】
[第1の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第1の側面によれば、
対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、
雄ねじと、
雌ねじと、
前記上顎および下顎マウスピースの一方のマウスピースに配置され、前記雄ねじまたは雌ねじを保持する前方保持部と、
前記上顎および下顎マウスピースの他方のマウスピースに配置され、前記前方保持部より後方で前記雌ねじまたは雄ねじを保持する後方保持部と、
を備え、
前記雌ねじおよび雄ねじは、前記歯列面または歯列面より後方で前記雌ねじに螺合した前記雄ねじの回転により、前記下顎マウスピースを上顎マウスピースに対して前後方向に位置決めする、
マウスピースが提供される。
【0102】
当該マウスピースは、小型である一方で、下顎マウスピースの前進量をより容易に調整できる。
【0103】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記前方配置部は、前記一方のマウスピースの歯列面または歯列面より後方に配置された、上記マウスピースが提供される。
【0104】
当該マウスピースは、前方配置部が歯列より前方に突出しないため、使用者の装着感に優れる。
【0105】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記後方保持部は、舌部側に突出した突出部と、
前記突出部により歯列より後方に配置されて、前記前方保持部と対向して前記雌ねじまたは雄ねじを保持する後方対向部と、
を備える、
上記マウスピースが提供される。
【0106】
当該マウスピースは、雄ねじまたは雌ねじを歯列面より後方に配置できるため、雄ねじと雌ねじとの間の螺合量を増やし、下顎マウスピースの位置を調整できる範囲をより長くすることができる。
【0107】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記前方保持部は、左右方向へ変位または回動可能に前記雄ねじまたは雌ねじを保持し、
前記後方保持部は、左右方向へ変位または回動可能に前記雌ねじまたは雄ねじを保持する、
上記マウスピースが提供される。
【0108】
当該マウスピースは、これを装着した使用者が下顎マウスピースを左右に移動させることができるため、使用者の装着感に優れる。または歯ぎしりなどの左右方向の力がかかっても上顎マウスピース又は下顎マウスピースの破損を防ぐことができる。
【0109】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記後方保持部は、左右方向に回動する回動部材を備え、
前記雌ねじまたは雄ねじは、前記回動部材に固定されて左右方向に回動可能に前記後方保持部に保持されて、前記雄ねじの左右方向への回動を可能とされた、
上記マウスピースが提供される。
【0110】
当該マウスピースは、これを装着した使用者が下顎マウスピースを左右に移動させることができるため、使用者の装着感に優れる。
【0111】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記回動部材は、雌ねじまたは雄ねじを保持する回動保持部と、前記回動保持部を回動可能に位置固定するストッパと、を備える
上記マウスピースが提供される。
【0112】
当該マウスピースは、これを装着した使用者が下顎マウスピースを左右に移動させることができるため、使用者の装着感に優れる。
【0113】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記前方保持部は、左右方向に幅広に形成された保持孔を備え、
前記雄ねじまたは雌ねじは、前記保持孔に挿通されて左右方向に変位可能に前記前方保持部に保持されて、前記雄ねじの左右方向への変位または回動を可能とされた、
上記マウスピースが提供される。
【0114】
当該マウスピースは、これを装着した使用者が下顎マウスピースを左右に移動させることができるため、使用者の装着感に優れる。
【0115】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記前方保持部は、左右方向に変位するスライド部材を備え、
前記雄ねじまたは雌ねじは、前記スライド部材に対して位置固定されて前記前方保持部に保持されて、前記雄ねじの左右方向への変位または回動を可能とされた、
上記マウスピースが提供される。
【0116】
当該マウスピースは、これを装着した使用者が下顎マウスピースを左右に移動させることができるため、使用者の装着感に優れる。
【0117】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記前方保持部は、左右方向に幅広に形成された開口部を備え、
前記雄ねじまたは雌ねじは、前記開口部に挿入されて前記前方保持部に保持され、
前記後方保持部は、左右方向に幅広に形成された開口部を備え、
前記雌ねじまたは雄ねじは、前記開口部に挿入されて前記後方保持部に保持されて、
前記雄ねじの左右方向への変位が可能とされた、
上記マウスピースが提供される。
【0118】
当該マウスピースは、これを装着した使用者が下顎マウスピースを左右に移動させることができるため、使用者の装着感に優れる。
【0119】
また、本発明の第1の側面によれば、
前記後方保持部は、閉口時に使用者の舌部を押下する、押下部を備える、上記マウスピースが提供される。
【0120】
当該マウスピースは、これを装着した使用者の舌部を押下部が押下することにより、使用者の気道がより開放されやすくなるため、マウスピースを装着した使用者の気道の狭窄を予防し、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
【0121】
2.第2の側面に関するマウスピース
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係るマウスピース2100は、マウスピース2100の構成を示す模式的な斜視図である図14、およびマウスピースを装着しながら下顎を前進させる様子を示す側面図である図15に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有する。上顎マウスピース2110は使用者の上顎に、下顎マウスピース2120は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
【0122】
上顎マウスピース2110は、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部2112が形成されて、使用者の上顎に装着可能に構成される。また、下顎マウスピース2120は、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部2122が形成されて、使用者の下顎に装着可能に構成される。また、下顎マウスピース2120は、その前方に配置された下顎前進装置2200により、対向して配置された上顎マウスピース2110に連結され、かつ、上顎マウスピース2110より前方に位置決め可能である。
【0123】
下顎前進装置2200は、その模式的な斜視図である図16および分解斜視図である図17に示すように、上顎マウスピース2110に固着された固定部材2210(後方保持部でもある)と、下顎マウスピースに固着されたスライド部材2220(前方保持部でもある)と、固定部材2210とスライド部材2220とを連結しつつスライド部材2220を固定部材2210に対して前方に位置決めする雄ねじ2230および雌ねじ2240と、雄ねじ2230の回転を規制するストッパ2250と、を備える。
【0124】
下顎前進装置2200は、図15に示すように、ねじ回し2400によって雄ねじ2230と雌ねじ2240との螺合量を調整し、スライド部材2220を固定部材2210に対して前後方向に位置決めすることにより、スライド部材2220が固着された下顎マウスピース2120を、固定部材2210が固着された上顎マウスピース2110よりも前方に位置決め可能である。
【0125】
これにより、下顎前進装置2200は、マウスピース2100を装着した使用者が上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120を装着して咬合したとき(以下、単に「咬合時」ともいう。)に、下顎マウスピース2120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース2120の後方への変位を制限可能である。また、これにより、マウスピース2100は、マウスピース2100を装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
【0126】
具体的には、下顎前進装置2200は、スライド部材2220を固定部材2210に対向して配置し、スライド部材2220を固定部材2210に対して前後方向に位置決めすることで、下顎マウスピース2120を上顎マウスピース2110にして前後方向に位置決め可能である。スライド部材2220の上記位置は、スライド部材2220に保持された雄ねじ2230を、固定部材2210が保持する雌ねじ2240に螺合させ、雄ねじ2230を回転させて雄ねじ2230と雌ねじ2240との螺合量を調整することにより、調整可能である。また、雄ねじ2230を回転させないときは、ストッパ2250が、雄ねじ2230が意図せず回転して上記螺合量が変化することによる、スライド部材2220の位置の変化を抑制可能である。
【0127】
固定部材2210は、スライド部材2220との対向面が略半円形の溝部2212となる略半円筒状のカバー部2214を有し、スライド部材2220は、固定部材2210との対向面が半円形の溝部2222となる、固定部材2210と略同一形状である略半円筒状のカバー部2224を有する。これにより、固定部材2210とスライド部材2220とは、溝部2212および溝部2222が対向するように配置されたときに、カバー部2214およびカバー部2224が、溝部2212および溝部2222が雄ねじ2230を挿通可能な略円筒状の挿通孔を形成する。
【0128】
なお、カバー部2214およびカバー部2224の形状はこれらに限定されず、対向配置されたときに略円錐台筒状、略楕円筒状、略楕円錐台筒状などとしてもよい。また、カバー部2214の外形とカバー部2224の外形とは略同一でなくてもよく、上記挿通孔が形成され得る限りにおいて、異なる形状であってもよい。
【0129】
固定部材2210は、溝部2212がスライド部材2220との対向面に設けられたカバー部2214、および固定部材2210を上顎マウスピース2110に固着するための取付部2216を備え、雌ねじ2240を保持する。
【0130】
カバー部2214は、たとえば、半円筒状に形成された薄板状の部材とすることができる。カバー部2214は、前方端から取付部2216に連続する後方端まで略同一の厚みで形成されてもよいし、マウスピースの装着中に左右方向への応力が印加されやすい後方端の厚みをより厚く形成されてもよい。
【0131】
取付部2216は、カバー部2214の後方から連続して左右方向に延びた薄板状の部材であり、上顎マウスピース2110の前方面の形状に沿って湾曲状に形成される。取付部2216は、たとえば上顎マウスピース2110と同一の素材である樹脂材料などによって、上顎マウスピース2110の前方面に固着され、これにより、固定部材2210を上顎マウスピース2110の前方に固着する。
【0132】
取付部2216は、取付部2216を変形させて上顎マウスピース2110の前方面に固着させやすくするための複数の貫通孔2216aを備えていてもよい。また、貫通孔2216aは、上記樹脂材料が貫通孔2216aの内部を通じて取付部2216の前方と後方とを接続可能とするため、上顎マウスピース2110への取付部2216の固着強度を高め、上顎マウスピース2110からの取付部2216の剥離による上顎マウスピース2110からの固定部材2210の脱離を抑制可能である。
【0133】
雌ねじ2240は、溝部2212の内周の、上記挿通孔の後方となる位置に配置される。雌ねじ2240は、本実施形態においては固定部材2210と同一の材料により、固定部材2210と一体的に形成される。
【0134】
雌ねじ2240は、溝部2212の後端に配置することができる。一方で、雌ねじ2240に深く螺合して上記挿通孔の後端から飛び出した雄ねじ2230が使用者の舌に当接することによる、使用者の装着感の低下を抑制する観点からは、雌ねじ2240は溝部2212の後端から間隔を空けて配置されることが好ましい。
【0135】
スライド部材2220は、上記溝部2222が固定部材2210との対向面に設けられたカバー部2224、スライド部材2220をマウスピースに固着するための取付部2226、および雄ねじ2230を保持するU字型の留め具2228を備える。
【0136】
カバー部2224は、たとえば、半円筒状に形成された薄板状の部材とすることができる。カバー部2224は、前方端から取付部2226に連続する後方端まで略同一の厚みで形成されてもよいし、マウスピースの装着中に左右方向への応力が印加されやすい後方端の厚みをより厚く形成されてもよい。
【0137】
カバー部2224は、留め具2228の端部を嵌め込み可能な貫通孔2224aおよび2224bを備える。また、カバー部2224は、その縁部に、後述するストッパ2250の端部2252を配置可能な皿部2224cを有してもよい。
【0138】
取付部2226は、カバー部2224の後方から連続して左右方向に延びた薄板状の部材であり、下顎マウスピース2120の前方面の形状に沿って湾曲状に形成される。取付部2226は、たとえば下顎マウスピース2120と同一の素材である樹脂などによって、下顎マウスピース2120の前方面に固着され、これにより、スライド部材2220を下顎マウスピース2120の前方に固着する。
【0139】
取付部2226は、取付部2226を変形させて下顎マウスピース2120の前方面に固着させやすくするための複数の貫通孔2226aを備えていてもよい。また、貫通孔2226aは、上記樹脂材料が貫通孔2226aの内部を通じて取付部2226の前方と後方とを接続可能とするため、下顎マウスピース2120への取付部2226の固着強度を高め、下顎マウスピース2120からの取付部2226の剥離による下顎マウスピース2120からのスライド部材2220の脱離を抑制可能である。
【0140】
留め具2228は、留め具2228の端部を形成する一対の略直方体状の嵌込部2228aおよび2228bと、略半円形に湾曲して嵌込部2228aと2228bとを連結する湾曲部2228cと、を備えるU字型の部材である。留め具2228は、スライド部材の溝部2222に沿って配置された雄ねじ2230の、後述する環状のくびれ部2235に湾曲部2228cを係合させ、一対の嵌込部2228aおよび2228bを、対応する貫通孔2224aおよび2224bにそれぞれ嵌め込むことで、雄ねじ2230をスライド部材2220に回転自在に位置固定する。また、留め具2228は、固定部材2210とスライド部材2220とが連結されていない状態(雄ねじ2230と雌ねじ2240とが螺合していない状態)で、貫通孔2224aおよび2224bのいずれか一方、好ましくは貫通孔2224aおよび2224bの双方、にピン状の部材を挿入することで、容易にスライド部材2220から取り外し可能である。これにより、留め具2228は、雄ねじ2230をスライド部材から容易に取り外し得る。
【0141】
雄ねじ2230は、ねじ回し2400と係合可能な係合部2232、2か所に対向して配置された鍔部2234および2236、鍔部2234および2236の間に配置された環状のくびれ部2235、ならびに雌ねじ2240と螺合可能なねじ部2238を備える。係合部2232、鍔部2234、くびれ部2235、鍔部2236、およびねじ部2238は、雄ねじ2230の一方の先端から他方の先端に向けて、この順に配置される。
【0142】
係合部2232は、雄ねじ2230の前方端に配置される。係合部2232は、ねじ回し2400と係合可能であり、係合したねじ回し2400を回転させることで、雄ねじ2230を回転させることができる形状であればよい。たとえば、係合部2232は、六角穴として、これに嵌め込み可能な六角柱状のねじ回し2400(六角棒スパナ)の先端を挿入して雄ねじ2230を回転可能な形状とすることができる。
【0143】
また、係合部2232の外周には、ストッパ2250が係合可能な8つの凹部2232aが周方向に形成されている。ストッパ2250が係合することにより、係合部2232は、雄ねじ2230の回転を規制するための回転規制部2260としても作用し得る(図18参照)。
【0144】
鍔部2234、くびれ部2235および鍔部2236は、雄ねじ2230がスライド部材の溝部2222に沿って配置され、くびれ部2235の周囲に取り付けた留め具2228がスライド部材2220に固定されることで、雄ねじ2230をスライド部材2220に回転自在に位置固定および取り外し可能とする。
【0145】
具体的には、鍔部2234および2236は、その外周の半径が、留め具2228が有する湾曲部2228cの内周の半径より大きく形成され、くびれ部2235は、その外周の半径が、留め具2228が有する湾曲部2228cの内周の半径より小さく形成される。これにより、雄ねじ2230は、スライド部材2220に固定された留め具2228に対する前後方向の移動が鍔部2234および2236の間隔に制限され、スライド部材2220に対して回転可能に位置固定され得る。また、上述したように、留め具2228はスライド部材2220から取り外し可能であるため、雄ねじ2230もスライド部材2220から容易に取り外し可能である。
【0146】
ねじ部2238は、雄ねじ2230の後方端に配置される。ねじ部2238は、雌ねじ2240と螺合可能なねじ形状を有すればよい。固定部材2210に対するスライド部材2220の前進量をより多くして、上顎マウスピース2110に対する下顎マウスピース2120の前進量をより多くする観点から、ねじ部2238は、雄ねじ2230の半分以上の長さを有することが好ましい。
【0147】
スライド部材2220は、スライド部材2220に保持された雄ねじ2230のねじ部2238を、固定部材2210に保持された雌ねじ2240に螺合することで、固定部材2210に対向して配置され、かつ、固定部材2210に連結される。さらに、雄ねじ2230のねじ部2238と雌ねじ2240との螺合量を調整することで、スライド部材2220は、固定部材2210に対して前後方向に位置決めされる。これにより、スライド部材2220を固着する下顎マウスピース2120も、固定部材2210を保持する上顎マウスピース2110に対して前方に位置決め可能である。
【0148】
このとき、雄ねじ2230のねじ部2238と雌ねじ2240との螺合量を適宜調整することで、上顎マウスピース2110に対する下顎マウスピース2120の前進量を調整可能である。このようにして、使用者の顎の形状に適合した量だけ下顎マウスピース2120を上顎マウスピース2110より前方に移動させることで、マウスピース2100を装着した使用者の気道をより狭窄しにくくすることが可能である。
【0149】
本実施形態において、ストッパ2250は、下顎前進装置2200の先端部の透視図である図18に示すように、スライド部材2220の溝部2222の内周に沿って配置され、雄ねじ2230の回転規制部2260(係合部2232)の外周に設けられた凹部2232aに係合可能な、板ばねなどの弾性部材である。
【0150】
ストッパ2250は、雄ねじ2230の回転に応じて、断続的に凹部2232aに係合する。このとき、ストッパ2250は、雄ねじ2230を回転させるときに、上記断続的な係合により、断続的に衝突音および振動を発生することが可能である。
【0151】
具体的には、ストッパ2250は、スライド部材2220が有する溝部2222の縁部に固定される端部2252と、第1板状部2254と、折り返し部2255と、第2板状部2256と、凹部2232aに係合可能な折れ曲がり構造を有する爪部2258とを備える。
【0152】
端部2252は、ストッパ2250をスライド部材2220に位置固定する。第1板状部2254は、スライド部材2220が備える溝部2222の内周に沿って溝部2222の一方の縁部から他方の縁部に向けて延在し、第2板状部2256は、溝部2222の内周に沿って溝部2222の他方の縁部から一方の縁部に向けて延在する。また、折り返し部2255は、溝部2222の他方の端部において、第1板状部2254と第2板状部2256とを接続する。爪部2258は、雄ねじ2230の凹部2232aに係合することで、マウスピース2100を装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2230の回転を規制する。
【0153】
特許文献1および特許文献2に記載の下顎前進装置は、上顎および下顎マウスピースの位置を再調整するときに、どの程度ねじを回転させれば上顎および下顎マウスピースの位置を最適な位置に調整できるかがわからない。そのため、下顎マウスピースの前進量を調整する医師などや、医師の指導を受けて自身が装着する下顎マウスピースの前進量を調整する使用者(以下、これらをまとめて単に「調整者」ともいう。)などは、毎回、少しずつねじを回して装着感を確認しながらの位置調整を行う必要がある。これに対し、本実施形態では、ストッパ2250は、雄ねじ2230の回転時に断続的に爪部2258が雄ねじ2230の凹部2232aに係合し、雄ねじ2230の回転に応じて断続的に雄ねじ2230の回転を規制する。これにより、雄ねじ2230を回転させる調整者は、上記衝突音または振動の回数により、雄ねじ2230の回転量を知覚可能である。そのため、上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120の位置を再調整する調整者は、上記衝突音または振動の回数を前回の調整時の回数に合わせることで、上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120を好適な位置に容易に調整可能である。
【0154】
また、ストッパ2250は、第1板状部2254、折り返し部2255、および第2板状部2256を備えることにより、ストッパ2250の板ばねとしての有効長を長くすることで、雄ねじ2230の回転により爪部2258が凹部2232aに係合するための弾力を高め、上記係合時に爪部2258が凹部2232aに撥ね当たるときに発生する衝突音および振動をより大きくすることが可能である。
【0155】
また、ストッパ2250は、爪部2258が雄ねじ2230の凹部2232aに係合することで、マウスピース2100を装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2230の回転を規制する。一方で、ストッパ2250は、ねじ回し2400を雄ねじ2230の係合部2232に挿入して人力で雄ねじ2230を回転させたり、またはモーターなどを使用して機械的に雄ねじ2230を回転させたりするような、調整者が意図的に雄ねじ2230を回転させることは許容する。このように、ストッパ2250は、雄ねじ2230の軸方向に対する回転を規制することで、マウスピース2100の装着中などに雄ねじ2230と雌ねじ2240との螺合量が変化することによる、上顎マウスピース2110と下顎マウスピース2120との意図せぬ位置ずれを抑制可能である。
【0156】
上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120は、ヒトの通常の咬合力によって破損しにくい材料から形成される。上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120を形成するための材料の例は、上述した第1の側面に関するマウスピースに関する上顎マウスピースおよび下顎マウスピースを形成するための材料と同様とし得るため、重複する記載は省略する。
【0157】
固定部材2210、スライド部材2220、および雄ねじ2230および雌ねじは、チタンまたはチタンを含む合金、鉄(ステンレスを含む鋼など)、ならびに金、銀、白金、コバルトおよびクロムなどの合金などの金属材料、ならびに、JIS T 6501に準じて測定される曲げ弾性率が1000MPa以上3000MPa以下の硬い樹脂材料(たとえばポリカーボネート樹脂)などから形成することができる。なお、上記金属材料は、化成皮膜などにより耐食性を高められていてもよい。
【0158】
固定部材2210は、これを配置した上顎マウスピース2110用の型に光硬化性材料を流し込み、紫外線などを照射して上記光硬化性材料を硬化させることで、上顎マウスピース2110に固着させることができる。また、スライド部材2220は、これを配置した下顎マウスピース2120用の型に光硬化性材料を流し込み、紫外線などを照射して上記光硬化性材料を硬化させることで、下顎マウスピース2120に固着させることができる。
【0159】
雌ねじ2240は、固定部材2210と同一の材料により、固定部材2210と一体的に成形されてもよい。また、雌ねじ2240は、固定部材2210とは別個に作製された後に、固定部材2210に接合されてもよい。
【0160】
また、ストッパ2250は、溶接などにより、スライド部材2220が有する溝部2222の縁部に固定することができる。熱などによる下顎マウスピースの変形を防止するため、ストッパ2250の固定は、スライド部材2220を下顎マウスピース2120に固着させる前に行うことが好ましい。
【0161】
なお、ストッパ2250は、固定部材2210側に配置されてもよい。ただし、スライド部材が前進したときにもストッパ2250と雄ねじとを係合させやすくする観点からは、ストッパ2250は、スライド部材2220に配置されることが好ましい。
【0162】
また、ストッパ2250の形状や構造は特に限定されず、たとえば、固定部材2210の溝部2212またはスライド部材2220の溝部2222の内周に沿って配置されたコイルばねなどであり、コイルばねの先端に雄ねじ凹部2232aに係合可能な形状の部材などが設けられていてもよい。
【0163】
また、凹部2232aは雄ねじ2230の係合部2232の外周に設けられる必要はなく、係合部2232と鍔部2234の間、または鍔部2236とねじ部2238との間などの外周に設けられてもよい。ただし、上記衝突音または振動を調整者により感知させやすくする観点からは、凹部2232aは、雄ねじ2230の前方端に近い側に設けられることが好ましく、係合部2232の外周に設けられることがより好ましい。
【0164】
また、凹部2232aの数は特に限定されず、1個のみでもよいし、2個、3個、4個、6個、8個などとすることができる。凹部2232aが複数設けられるときは、複数の凹部2232aは、雄ねじ2230の回転中心に対して回転対称となる位置に設けられることが好ましい。
【0165】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係るマウスピースは、ストッパの構成が異なるほかは、第4の実施形態に係るマウスピース2100と同様の構成を有する。そのため、以下、第4の実施形態と異なる構成であるストッパ2270について説明し、その他の共通する構成については説明を省略する。
【0166】
本実施形態において、ストッパ2270は、下顎前進装置2200の先端部の斜視図である図19および図19のA-A線における断面図である図20に示すように、雄ねじ2230に保持されて雄ねじ2230の外周に配置され、固定部材2210の溝部2212およびスライド部材2220の溝部2222の内周に設けられた凹部2222a(回転規制部2280でもある)に係合可能な、板ばねなどの弾性部材である。
【0167】
本実施形態においても、ストッパ2270は、雄ねじ2230の回転に応じて、断続的に凹部2222aに係合する。このとき、ストッパ2270は、雄ねじ2230を回転させるときに、上記断続的な係合により、断続的に衝突音および振動を発生することが可能である。
【0168】
具体的には、ストッパ2270は、雄ねじ2230の係合部2232の外周に固定される端部2272と、挿通孔の内周に向けて屈曲して設けられた板状部2274と、凹部2222aに係合可能な折れ曲がり構造を有する爪部2278とを備える。
【0169】
端部2272は、ストッパ2270を雄ねじ2230が有する係合部2232の外周に位置固定する。板状部2274は、挿通孔の内周に沿って屈曲しつつ、雄ねじ2230から挿通孔の内周に向けて延在する。爪部2278は、固定部材2210およびスライド部材2220の凹部2222aに係合することで、マウスピースを装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2230の回転を規制する。
【0170】
ストッパ2270は、雄ねじ2230の回転時に断続的に爪部2278が固定部材2210およびスライド部材2220の凹部2222aに係合し、雄ねじ2230の回転に応じて断続的に雄ねじ2230の回転を規制する。これにより、雄ねじ2230を回転させる調整者は、上記衝突音または振動の回数により、雄ねじ2230の回転量を知覚可能である。そのため、上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120の位置を再調整する調整者は、上記衝突音または振動の回数を前回の調整時の回数に合わせることで、上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120を好適な位置に容易に調整可能である。
【0171】
また、ストッパ2270は、板状部2274の長さを調整して、ストッパ2270の板ばねとしての有効長を長くすることで、雄ねじ2230の回転により爪部2278が凹部2222aに係合するための弾力を高め、上記係合時に爪部2278が凹部2222aに撥ね当たるときに発生する衝突音および振動をより大きくすることが可能である。
【0172】
また、ストッパ2270は、爪部2278が固定部材2210の溝部2212またはスライド部材2220の溝部2222に係合することで、マウスピースを装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2230の回転を規制する。一方で、ストッパ2270は、ねじ回し2400を雄ねじ2230の回転規制部2280に挿入して人力で雄ねじ2230を回転させたり、またはモーターなどを使用して機械的に雄ねじ2230を回転させたりするような、調整者が意図的に雄ねじ2230を回転させることは許容する。このように、ストッパ2270は、雄ねじ2230の軸方向に対する回転を規制することで、マウスピースの装着中などに雄ねじ2230と雌ねじ2240との螺合量が変化することによる、上顎マウスピース2110と下顎マウスピース2120との意図せぬ位置ずれを抑制可能である。
【0173】
なお、凹部2222aは、固定部材2210のみに設けられてもよいし、スライド部材2220のみに設けられてもよい。
【0174】
また、凹部2222aの数は特に限定されず、1個のみでもよいし、2個、3個、4個、6個、8個などとすることができる。凹部2222aが複数設けられるときは、複数の凹部2222aは、雄ねじ2230の回転中心に対して回転対称となる位置に設けられることが好ましい。
【0175】
また、ストッパ2270は雄ねじ2230の係合部2232の外周に設けられる必要はなく、係合部2232と鍔部2234の間、または鍔部2236とねじ部2238との間などの外周に設けられてもよい。ただし、上記衝突音または振動を調整者により感知させやすくする観点からは、ストッパ2270は、雄ねじ2230の前方端に近い側に設けられることが好ましく、係合部2232の外周に設けられることがより好ましい。
【0176】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係るマウスピースは、下顎前進装置の構成が異なるほかは、第4の実施形態に係るマウスピース2100と同様の構成を有する。そのため、以下、第4の実施形態と異なる構成である下顎前進装置2300について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0177】
下顎前進装置2300は、その模式的な斜視図である図21および分解斜視図である図22に示すように、下顎マウスピース2120に固着された固定部材2310(後方保持部でもある)と、上顎マウスピース2110に固着されたスライド部材2320(前方保持部でもある)と、固定部材2310とスライド部材2320とを連結しつつスライド部材2320を固定部材2310に対して前方に位置決めする雄ねじ2330および雌ねじ2340と、雄ねじ2330の回転を規制するストッパ2350と、を備える。
【0178】
下顎前進装置2300は、第4の実施形態と同様に、ねじ回しによって雄ねじ2330と雌ねじ2340との螺合量を調整し、スライド部材2320を固定部材2310に対して前後方向に位置決めすることにより、固定部材2310が固着された下顎マウスピース2120を、スライド部材2320が固着された上顎マウスピース2110よりも前方に位置決め可能である。
【0179】
固定部材2310は、スライド部材2320との対向面が略半円形の溝部2312となる略半円筒状のカバー部2314を有し、スライド部材2320は、固定部材2310との対向面が半円形の溝部2322となる略半円筒状のカバー部2324を有する。これにより、固定部材2310とスライド部材2320とは、溝部2312および溝部2322が対向するように配置されたときに、カバー部2314およびカバー部2324が、上記溝部2312および溝部2322が雄ねじ2330を挿通可能な略円筒状の挿通孔を形成する。なお、本実施形態において、スライド部材2320は、前後方向の長さが固定部材2310よりも短く形成されており、固定部材2310とスライド部材2320とは、対向配置されたときに、先端部において雄ねじ2330が露出するような切り欠け部を有する略円筒状の部材となる。
【0180】
なお、カバー部2314およびカバー部2324の形状はこれらに限定されず、対向配置されたときに略円錐台筒状、略楕円筒状、略楕円錐台筒状などとしてもよい。また、カバー部2314とカバー部2324とは、前後方向の長さが略同一であり、対向配置されたときに、先端部において雄ねじ2330が露出しない部材となってもよい。
【0181】
固定部材2310は、上記溝部2312がスライド部材2320との対向面に設けられたカバー部2314、固定部材2310を下顎マウスピース2120に固着するための取付部2316を備える。
【0182】
カバー部2314は、たとえば、半円筒状に形成された薄板状の部材とすることができる。カバー部2314は、前方端から取付部2316に連続する後方端まで略同一の厚みで形成されてもよいし、マウスピースの装着中に左右方向への応力が印加されやすい後方端の厚みをより厚く形成されてもよい。本実施形態において、カバー部2314は、取付部2316を嵌め込む溝部2314aを後方の外周上に有する。
【0183】
取付部2316は、溝部2314aに嵌め込まれてカバー部2314の後方側に設置される、左右方向に延びる平板状の部材であり、下顎マウスピース2120の前方面の内部に埋め込まれて下顎マウスピース2120の前方面に固着され、これにより、固定部材2310を下顎マウスピース2120の前方に固着する。
【0184】
取付部2316は、取付部2316を下顎マウスピース2120の前方面に固着させやすくするための複数の貫通孔2316aを備えていてもよい。貫通孔2316aは、上記樹脂材料が貫通孔2316aの内部を通じて取付部2316の前方と後方とを接続可能とするため、下顎マウスピース2120への取付部2316の固着強度を高め、下顎マウスピース2120からの取付部2316の剥離による下顎マウスピース2120からの固定部材2310の脱離を抑制可能である。
【0185】
スライド部材2320は、上記溝部2322が固定部材2310との対向面に設けられたカバー部2324、およびスライド部材2320を上顎マウスピース2110に固着するための取付部2326、および雄ねじを保持する留め具2328を備える。
【0186】
カバー部2324は、たとえば、半円筒状に形成された薄板状の部材とすることができる。カバー部2324は、前方端から取付部2326に連続する後方端まで略同一の厚みで形成されてもよいし、マウスピースの装着中に左右方向への応力が印加されやすい後方端の厚みをより厚く形成されてもよい。本実施形態において、カバー部2324は、取付部2326を嵌め込む溝部2324aを後方の外周上に有する。
【0187】
取付部2326は、溝部2324aに嵌め込まれてカバー部2324の後方側に設置される、左右方向に延びる平板状の部材であり、上顎マウスピース2110の前方面の内部に埋め込まれて上顎マウスピース2110の前方面に固着され、これにより、スライド部材2320を上顎マウスピース2110の前方に固着する。
【0188】
取付部2326は、取付部2326を上顎マウスピース2110の前方面に固着させやすくするための複数の貫通孔2326aを備えていてもよい。貫通孔2326aは、上記樹脂材料が貫通孔2326aの内部を通じて取付部2326の前方と後方とを接続可能とするため、上顎マウスピース2110への取付部2326の固着強度を高め、上顎マウスピース2110からの取付部2326の剥離による上顎マウスピース2110からのスライド部材2320の脱離を抑制可能である。
【0189】
留め具2328は、雄ねじ2330を挿通させて保持する挿通孔2328aを有する中空円柱状の部材である。挿通孔2328aは、後述する雄ねじ2330の円筒部2335の外径よりは大きいが、後述する雄ねじ2330の鍔部2334および係止部材2354の外径よりは小さい大きさの貫通孔を有し、上記貫通孔に挿通された雄ねじ2330を、雄ねじ2330を固定部材2310に回転自在に位置固定して、雄ねじ2330をスライド部材2320に保持させる。
【0190】
雄ねじ2330は、ねじ回しと係合可能な係合部2332、鍔部2334、円筒部2335、雄ねじ2330が固定部材2310に固着されたときに留め具2328より後方となる位置に形成された環状のくびれ部2336、ならびに雌ねじ2340と螺合可能なねじ部2338を備える。係合部2332、鍔部2334、くびれ部2336、およびねじ部2338は、雄ねじ2330の一方の先端から他方の先端に向けて、この順に配置される。
【0191】
係合部2332は、雄ねじ2330の前方端または前方端と留め具2328との間に配置される。係合部2332は、ねじ回しと係合可能であり、係合したねじ回しを回転させることで、雄ねじ2330を回転させることができる形状であればよい。たとえば、係合部2332は、楕円柱状の穴として、これに嵌め込み可能な楕円柱状のねじ回しの先端を挿入して雄ねじ2330を回転可能な形状とすることができる。
【0192】
鍔部2334は、その外周の半径が、上記留め具2328が有する挿通孔2328aの内周の半径より大きく形成される。円筒部2335は、留め具2328が有する挿通孔2328aに雄ねじ2330が挿通されたときに挿通孔2328aの内部に配置される部分であり、その外周の半径が、留め具2328が有する挿通孔2328aの内周の半径より小さく形成される。くびれ部2336は、その外周の半径が、円筒部2335の外周の半径より小さく、かつ、後述する係止部材2354を嵌め込み可能な大きさに、形成される。
【0193】
ねじ部2338は、雄ねじ2330の後方部に配置される。ねじ部2338は、雌ねじ2340と螺合可能なねじ形状を有すればよい。固定部材2310に対するスライド部材2320の前進量をより多くして、上顎マウスピース2110に対する下顎マウスピース2120の前進量をより多くする観点から、ねじ部2338は、雄ねじ2330の半分以上の長さを有することが好ましい。
【0194】
雌ねじ2340は、スライド部材2320が有する溝部2322の内周の、溝部2312および溝部2322により形成される上記挿通孔の後方となる位置に配置される。雌ねじ2340は、本実施形態においてはスライド部材2320と同一の材料により、スライド部材2320と一体的に形成される。
【0195】
雌ねじ2340は、溝部2322の後端に配置することができる。一方で、雌ねじ2340に深く螺合して上記挿通孔の後端から飛び出した雄ねじ2330が使用者の舌に当接することによる、使用者の装着感の低下を抑制する観点からは、雌ねじ2340は溝部2322の後端から間隔を空けて配置されることが好ましい。
【0196】
スライド部材2320は、スライド部材2320に保持された雄ねじ2330のねじ部2338を、固定部材2310に保持された雌ねじ2340に螺合させることで、固定部材2310に対向して配置され、かつ、固定部材2310に連結される。さらに、雄ねじ2330のねじ部2338と雌ねじ2340との螺合量を調整することで、スライド部材2320は、固定部材2310に対して前後方向に位置決めされる。これにより、固定部材2310を保持する下顎マウスピース2120を、スライド部材2320を固着する上顎マウスピース2110に対して前方に位置決め可能である。
【0197】
このとき、雄ねじ2330のねじ部2338と雌ねじ2340との螺合量を適宜調整することで、上顎マウスピース2110に対する下顎マウスピース2120の前進量を調整可能である。このようにして、使用者の顎の形状に適合した量だけ下顎マウスピース2120を上顎マウスピース2110より前方に移動させることで、マウスピース2100を装着した使用者の気道をより狭窄しにくくすることが可能である。
【0198】
本実施形態において、ストッパ2350は、図22に示すように、雄ねじ2330の円筒部2335を挿通させるコイル状の弾性部材である圧縮コイルばね2352、および雄ねじ2330のくびれ部2336に嵌め込まれる略U字状の係止部材2354、を有する。圧縮コイルばね2352および係止部材2354は、いずれも、その外周の半径が、留め具2328が有する挿通孔2328aの内周の半径より大きく形成される。ストッパ2350は、雄ねじ2330が留め具2328に挿通されたときに、圧縮コイルばね2352に雄ねじ2330の円筒部2335を挿通させ、かつ、係止部材2354が雄ねじ2330のくびれ部2336に嵌め込まれた状態となる。そのため、雄ねじ2330が留め具2328に挿通されたときに、雄ねじ2330の鍔部2334、圧縮コイルばね2352、留め具2328(雄ねじ2330の円筒部2335)、および係止部材2354(雄ねじ2330のくびれ部2336)が、雄ねじ2330の一方の先端から他方の先端に向けて、この順に配置される。このとき、圧縮コイルばね2352および係止部材2354は、いずれも、留め具2328が有する挿通孔2328aを通過できないため、スライド部材2320に固定された留め具2328に対する雄ねじ2330の前後方向の移動を制限して、雄ねじ2330をスライド部材2320に対して回転自在に位置固定する。
【0199】
ストッパ2350は、雄ねじ2330のねじ部2338と雌ねじ2340とを螺合させたときに、圧縮コイルばね2352が雄ねじ2330の鍔部2334を前方(雌ねじ2340から離れる方向)に付勢し、一方で係止部材2354を留め具2328に当接させて雄ねじ2330の前方(雌ねじ2340から離れる方向)への変位を規制する。上記付勢および変位の規制により、ストッパ2350は、雄ねじ2330を留め具2328に圧接させて、マウスピース2100を装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2330の回転を規制する。一方で、ストッパ2350は、ねじ回しを雄ねじ2330の係合部2332に挿入して人力で雄ねじ2330を回転させたり、またはモーターなどを使用して機械的に雄ねじ2330を回転させたりするような、調整者が意図的に雄ねじ2330を回転させることは許容する。このように、ストッパ2350は、雄ねじ2330の軸方向に対する回転を規制することで、マウスピース2100の装着中などに雄ねじ2330と雌ねじ2340との螺合量が変化することによる、上顎マウスピース2110と下顎マウスピース2120との意図せぬ位置ずれを抑制可能である。
【0200】
なお、本実施形態においても、第4の実施形態および第5の実施形態と同様に、留め具2328は、スライド部材2320のカバー部2324に形成された貫通孔に嵌め込まれる一対の略直方体状の嵌込部を有するU字型の部材であってもよく、スライド部材2320のカバー部2324は、上記留め具2328の嵌込部を嵌め込み可能な貫通孔を備えてもよい。このとき、留め具2328は、固定部材2310とスライド部材2320とが連結されていない状態(雄ねじ2330と雌ねじ2340とが螺合していない状態)で、上記カバー部2314が備える貫通孔のいずれか一方、好ましくは双方、にピン状の部材を挿入することで、容易にスライド部材2320から取り外し可能である。これにより、留め具2328は、雄ねじ2330をスライド部材2320から容易に取り外し得る。
【0201】
また、本実施形態においても、雄ねじ2330のくびれ部2336に係止部材2354を嵌め込む代わりに、留め具2328が有する挿通孔2328aの内周の半径より大きい外径を有する鍔部を雄ねじ2330の円筒部2335の後方に形成して、上記後方の鍔部が留め具2328に当接することにより雄ねじ2330の前方(雌ねじ2340から離れる方向)への変位を規制してもよい。
【0202】
また、圧縮コイルばね2352は、雄ねじ2330と雌ねじ2340との螺合量が大きくなったとき(下顎マウスピース2120が上顎マウスピース2110より前方に移動したとき)に雄ねじ2330の鍔部2334を前方に付勢できればよく、ゴムなどの弾性体であってもよい。
【0203】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係るマウスピースは、下顎前進装置の一部の構成が異なるほかは、第6の実施形態に係るマウスピースと同様の構成を有する。そのため、以下、下顎前進装置の構成のうち、第6の実施形態と異なる構成について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0204】
下顎前進装置2300aは、その模式的な分解斜視図である図23に示すように、雄ねじ2330aが一対のくびれ部2336aおよび2336bを有し、ストッパ2350aが一対の係止部材2354aおよび係止部材2354bを有する。係止部材2354aおよび係止部材2354bは、いずれも、その外周の半径が、留め具2328が有する挿通孔2328aの内周の半径より大きく形成される。ストッパ2350aは、雄ねじ2330aが留め具2328に挿通されたときに、係止部材2354aが雄ねじ2330aのくびれ部2336aに嵌め込まれ、かつ、係止部材2354bが雄ねじ2330aのくびれ部2336bに嵌め込まれた状態となる。そのため、雄ねじ2330aが留め具2328に挿通されたときに、雄ねじ2330aの鍔部2334、係止部材2354a(雄ねじ2330aのくびれ部2336a)、留め具2328(雄ねじ2330aの円筒部2335)、および係止部材2354b(雄ねじ2330aのくびれ部2336b)が、雄ねじ2330の一方の先端から他方の先端に向けて、この順に配置される。このとき、係止部材2354aおよび係止部材2354bは、いずれも、留め具2328が有する挿通孔2328aを通過できないため、スライド部材2320に固定された留め具2328に対する雄ねじ2330aの前後方向の移動を制限して、雄ねじ2330aをスライド部材2320に対して回転自在に位置固定する。
【0205】
さらに、ストッパ2350aは、雄ねじ2330aのねじ部2338aの表面に付着された弾性コーティング2338bを有する。弾性コーティング2338bは、雄ねじ2330aのねじ部2338aと雌ねじ2340との間の摩擦力を高めて、雌ねじ2340に対して雄ねじ2330aを螺合させるためのトルクを高め、マウスピースを装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2330aの回転を規制する。一方で、弾性コーティング2338bは、ねじ回しを雄ねじ2330aの係合部2332に挿入して人力で雄ねじ2330aを回転させたり、またはモーターなどを使用して機械的に雄ねじ2330aを回転させたりするような、調整者が意図的に雄ねじ2330aを回転させることは許容する。このように、ストッパである弾性コーティング2338bは、雄ねじ2330aの軸方向に対する回転を規制することで、マウスピースの装着中などに雄ねじ2330aと雌ねじ2340との螺合量が変化することによる、上顎マウスピース2110と下顎マウスピース2120との意図せぬ位置ずれを抑制可能である。
【0206】
弾性コーティング2338bは、ねじ部2338aの全面に付与されていてもよいし、一部にのみ付与されていてもよい。一部にのみ付与されているとき、ねじ部2338aと雌ねじ2340との間の摩擦力をより効率的に高める観点からは、弾性コーティング2338bは、ねじ部2338aの回転軸に対して同じ方向を向く表面に付与されていることが好ましい。
【0207】
弾性コーティング2338bの例には、ウレタン系樹脂などが含まれる。
【0208】
なお、本実施形態においても、第6の実施形態と同様に、係止部材2354aのかわりに圧縮コイルばねを配置して、圧縮コイルばねによる付勢と係止部材2354bによる変位の規制による雄ねじ2330aの軸方向に対する回転の規制を、同時に行ってもよい。
【0209】
[第8の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係るマウスピースは、下顎前進装置の一部の構成が異なるほかは、第6の実施形態に係るマウスピースと同様の構成を有する。そのため、以下、下顎前進装置の構成のうち、第6の実施形態と異なる構成について説明し、共通する構成については説明を省略する。なお、本実施形態においては、固定部材2310は上顎マウスピース2110に固着され、スライド部材2320は下顎マウスピース2120に固着される。
【0210】
下顎前進装置2300bは、その模式的な分解斜視図である図24および先端部の拡大斜視図である図25に示すように、スライド部材2320が、雄ねじ2330を挿通させて保持する挿通孔2328aを有する中空円柱状の部材である留め具2328を有し、固定部材2310が、雌ねじ2340を有する。
【0211】
また、本実施形態において、ストッパ2350は、図22に示すように、雄ねじ2330の円筒部2335を挿通させるコイル状の弾性部材である圧縮コイルばね2352、雄ねじ2330のくびれ部2336に嵌め込まれる略U字状の係止部材2354、雄ねじ2330の鍔部2334から突出して形成された係止片2355、および固定部材2310またはスライド部材2320の内周面のうち、雄ねじ2330の係止片2355と係合する位置に突出して形成された突出係止部2356を有する。
【0212】
係止片2355は、雄ねじ2330の鍔部2334の前方面に、上記前方面の外周に沿って円周状に配置された、上記前方面から前方に突出する部材である。係止片2355は、複数の係止片2355の間に、固定部材2310またはスライド部材2320の内周面から突出する突出係止部2356が配置されて、上記柱状である係止片2355の側面が突出係止部2356の側面に接触できるような、隙間が形成されるように配置される。なお、図24では、係止片2355は略三角柱状の形状を有するが、上記隙間が形成され得る限りにおいて、四角柱および円柱などの他の柱状の形状でもよい。あるいは、係止片2355は、上記隙間を有する同心円柱状の形状でもよい。また、図24では、5つの係止片2355が上記前方面に形成されているが、係止片2355の数は限定されず、1個でも複数でもよい。なお、係止片2355の、上記前方面から突出する高さは、平常時は係止片2355の側面が突出係止部2356の側面に接触できるが、圧縮コイルばね2352が圧縮されて雄ねじ2330が後方に移動したときには係止片2355の側面も突出係止部2356の側面に接触しない位置に移動するような高さである。
【0213】
突出係止部2356は、固定部材2310またはスライド部材2320の内周面から突出して配置された部材である。突出係止部2356は、係止片2355により形成される上記隙間に嵌まり込み、平常時には係止片2355の側面に接触して、雄ねじ2330の、軸方向に対する回転を規制する。一方で、突出係止部2356は、ねじ回しを雄ねじ2330aの係合部2332に挿入して雄ねじ2330を押圧し、圧縮コイルばね2352が圧縮されて雄ねじ2330が後方に移動したときは、係止片2355の側面に接触せず、雄ねじ2330の回転を規制しない。このように、圧縮コイルばね2352は、係止片2355と突出係止部2356とが係合して雄ねじ2330の回転が規制された状態と、係止片2355と突出係止部2356とが係合せず雄ねじ2330の回転が規制されない状態と、を切り替える、接触切替部として作用する。
【0214】
なお、本実施形態においても、第6の実施形態と同様に、圧縮コイルばね2352は、雄ねじ2330のねじ部2338と雌ねじ2340とを螺合させたときに、雄ねじ2330の鍔部2334を前方(雌ねじ2340から離れる方向)に付勢し、係止部材2354を留め具2328に当接させて、雄ねじ2330の前方(雌ねじ2340から離れる方向)への変位を規制する。上記付勢および変位の規制により、雄ねじ2330を留め具2328に圧接させることによっても、ストッパ2350は、マウスピース2100を装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2330の回転を規制する。
【0215】
一方で、ストッパ2350は、ねじ回しを雄ねじ2330の係合部2332に挿入して人力で雄ねじ2330を回転させたり、またはモーターなどを使用して機械的に雄ねじ2330を回転させたりするような、調整者が意図的に雄ねじ2330を回転させることは許容する。このように、ストッパ2350は、雄ねじ2330の軸方向に対する回転を規制することで、マウスピース2100の装着中などに雄ねじ2330と雌ねじ2340との螺合量が変化することによる、上顎マウスピース2110と下顎マウスピース2120との意図せぬ位置ずれを抑制可能である。
【0216】
なお、本実施形態においても、第7の実施形態と同様に、雄ねじ2330aのねじ部2338aの表面に弾性コーティング2338bを付着し、雄ねじ2330aのねじ部2338aと雌ねじ2340との間の摩擦力を高めて、雌ねじ2340に対して雄ねじ2330aを螺合させるためのトルクを高め、マウスピースを装着中の振動などによる意図せぬ雄ねじ2330aの回転を規制してもよい。
【0217】
[第4の実施形態~第8の実施形態の変形例]
なお、第4の実施形態~第8の実施形態はそれぞれ本発明の第2の側面の一例を示すものであり、本発明の第2の側面は第4の実施形態~第8の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
【0218】
たとえば、第4の実施形態~第8の実施形態では、雌ねじは固定部材と一体的に成形されるかまたは固定部材に接合されていたが、雌ねじは固定部材に着脱可能に保持されてもよい。一方で、第4の実施形態~第8の実施形態では、雄ねじはスライド部材に着脱可能に保持されていたが、雄ねじはスライド部材に固着されていてもよい。
【0219】
また、第4の実施形態~第8の実施形態において、雄ねじまたは雌ねじは、これらを螺合させるためのトルクが部分的に異なってもよい。
【0220】
たとえば、雄ねじのねじ部は、後方側の先端部側の外径が鍔部側の外径よりも大きくなるような2種類の外径を有してもよいし、鍔部側から後方側の先端部側にかけて外径が連続的に広がっていく形状を有してもよい。あるいは、雄ねじのねじ部は、後方側の先端から鍔部方向に空隙部またはスリットが設けられて、後方側の先端部の外径が外側に広げられて拡大されてもよい。上記スリットは、後方側の先端部の幅がより大きくなるように、深さ方向に幅を変化させることで、後方側の先端部をより外側に開かせて、後方側の先端部の外径をより大きくさせることができる。あるいは、雌ねじは、前方側の内径が後方側の内径よりも小さくなるような2種類の内径を有してもよいし、後方側から前方側にかけて内径が連続的に狭まっていく形状を有してもよい。
【0221】
あるいは、雄ねじのねじ部または雌ねじは、ねじのピッチが部分的に小さくなる小ピッチ部を有してもよい。上記小ピッチ部は、その他の領域よりも小さい一定幅のピッチを有してもよいし、前方または後方に連続的に小さくなるピッチを有してもよい。
【0222】
また、第4の実施形態~第8の実施形態では、固定部材が上顎マウスピースに固着され、スライド部材が下顎マウスピースに固着されていたが、雄ねじを保持するスライド部材が上顎マウスピースに固着され、雌ねじを保持する固定部材が下顎マウスピースに固着されてもよい。このとき、雄ねじおよび雌ねじの向きは第4の実施形態~第8の実施形態とは反対になり、雄ねじの係合部はマウスピースの後方に面して配置されることになる。
【0223】
また、第4の実施形態~第8の実施形態では、下顎前進装置は、固定部材もしくはスライド部材に保持されたストッパか、または雄ねじに保持されたストッパか、のいずれかを備えているが、固定部材またはスライド部材に保持されるストッパと、雄ねじに保持されるストッパと、の両方を、前後方向に位置をずらせて備えていてもよい。
【0224】
また、第4の実施形態~第8の実施形態では、下顎前進装置は上顎および下顎マウスピースの前方に配置されているが、下顎前進装置は上顎および下顎マウスピースの歯列間に配置されてもよいし、上顎および下顎マウスピースの後方に配置されてもよい。
【0225】
また、第4の実施形態~第8の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であれば歯列型を有さなくてもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部にだけ歯列型取部を有してもよい。
【0226】
また、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていても良い。
【0227】
また、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースは、その当接面が略平面であってもよい。当接面が略平面であると、マウスピースを装着した使用者の顎が左右または開口方向に移動するときに上顎マウスピースおよび下顎マウスピースが当接して生じる衝撃は当接面の全体に分散されるため、使用者の歯や顎などを上記衝撃から保護することもできる。
【0228】
また、第4の実施形態および第5の実施形態では、固定部材およびスライド部材はそれぞれの取付部と一体的に形成されており、第6の実施形態~第8の実施形態では、固定部材およびスライド部材は取付部を嵌め込む溝部を有していたが、第4の実施形態および第5の実施形態において、固定部材およびスライド部材は取付部を嵌め込む溝部を有してもよく、第6の実施形態~第8の実施形態において、固定部材およびスライド部材はそれぞれの取付部と一体的に形成されてもよい。また、取付部の形状も限定されることはなく、第4の実施形態および第5の実施形態において、取付部は、左右方向に延びる平板状の部材であってもよく、第6の実施形態~第8の実施形態において、取付部は、上顎マウスピースまたは下顎マウスピースの前方面の形状に沿って湾曲状に形成されてもよい。
【0229】
[第4の実施形態~第8の実施形態の効果]
第4の実施形態~第8の実施形態によれば、ストッパが雄ねじの軸方向に対する回転を制限するため、マウスピースの装着中などに雄ねじと雌ねじとの螺合量が変化することによる、上顎マウスピースと下顎マウスピースとの意図せぬ位置ずれが生じにくい。
【0230】
また、第4の実施形態~第8の実施形態によれば、雄ねじの回転の規制は、比較的小さい部材であるストッパによって可能であるため、マウスピースを大型化することなく上顎マウスピースと下顎マウスピースとの位置ずれを抑制可能であり、使用者の違和感を大きくしにくい。
【0231】
また、第4の実施形態~第8の実施形態によれば、下顎前進装置がマウスピースの前方に配置され、ねじ回しを挿入可能な雄ねじの係合部がマウスピースのうち最も前方に配置される。そのため、第4の実施形態~第8の実施形態に係るマウスピースは、マウスピースを取り外しせず、装着したままで上顎マウスピースに対する下顎マウスピースの前進量を調整可能であり、前進量の調製がより容易である。
【0232】
[第2の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第2の側面によれば、
上顎および下顎マウスピースと、
雌ねじと、
雄ねじと、
前記上顎または下顎マウスピースに固定され、前記雌ねじを保持する固定部材と、
前記下顎または上顎マウスピースに固定され、前記雄ねじを保持するスライド部材と、
を備え、
前記雄ねじおよび雌ねじは、前記雌ねじに螺合した前記雄ねじの回転により前記スライド部材を前記固定部材に対して前後方向に位置決めして、前記下顎マウスピースを上顎マウスピースに対して前後方向に位置決めするマウスピースであって、
前記雌ねじに対する前記雄ねじの軸方向に対する回転を規制するストッパを備える、マウスピースが提供される。
【0233】
当該マウスピースは、小型であり、かつ、上顎および下顎マウスピースの位置ずれを抑制できる。
【0234】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記ストッパは、前記雄ねじの回転に応じて断続的に前記雄ねじの回転を規制する、上記マウスピースが提供される。
【0235】
当該マウスピースは、雄ねじを回転させる調整者が、上記衝突音または振動の回数により、雄ねじの回転量を知覚可能である。そのため、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースの位置を再調整する調整者は、上記衝突音または振動の回数を前回の調整時の回数に合わせることで、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースを好適な位置に容易に調整可能である。
【0236】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記雄ねじは、前記雌ねじに螺合するねじ部と、外周に凹部を備える回転規制部と、を備え、
前記ストッパは、前記固定部材またはスライド部材に保持され、前記雄ねじの回転によって前記凹部に断続的に係合する弾性部材である、上記マウスピースが提供される。
【0237】
当該マウスピースは、雄ねじを回転させる調整者が、上記衝突音または振動の回数により、雄ねじの回転量を知覚可能である。そのため、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースの位置を再調整する調整者は、上記衝突音または振動の回数を前回の調整時の回数に合わせることで、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースを好適な位置に容易に調整可能である。
【0238】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記固定部材またはスライド部材は、内周に凹部を備える回転規制部を備え、
前記ストッパは、前記雄ねじに保持され、前記雄ねじの回転によって前記凹部に断続的に係合する弾性部材である、上記マウスピースが提供される。
【0239】
当該マウスピースは、雄ねじを回転させる調整者が、上記衝突音または振動の回数により、雄ねじの回転量を知覚可能である。そのため、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースの位置を再調整する調整者は、上記衝突音または振動の回数を前回の調整時の回数に合わせることで、上顎マウスピースおよび下顎マウスピースを好適な位置に容易に調整可能である。
【0240】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記ストッパは、前記雄ねじを前記雌ねじから離れる方向に付勢する弾性部材と、
前記雌ねじから離れる方向への前記雄ねじの変位を規制する係止部材と、
を有する、上記マウスピースが提供される。
【0241】
当該マウスピースは、ストッパが雄ねじの軸方向に対する回転を規制することで、マウスピースの装着中などに雄ねじと雌ねじとの螺合量が変化することによる、上顎マウスピースと下顎マウスピースとの意図せぬ位置ずれを抑制可能である。
【0242】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記雄ねじは、前記スライド部材に着脱可能な留め具により、前記スライド部材に回転自在に保持される、上記マウスピースが提供される。
【0243】
当該マウスピースは、雄ねじの回転が容易である。
【0244】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記スライド部材は、前記留め具の端部を嵌め込み可能な貫通孔を有する、上記マウスピースが提供される。
【0245】
当該マウスピースは、雄ねじを着脱可能であり、メンテナンスが容易である。
【0246】
また、本発明の第2の側面によれば、
前記上顎マウスピースおよび下顎マウスピースは、当接面が略平面である、上記マウスピースが提供される。
【0247】
当該マウスピースは、マウスピースを装着した使用者の顎が左右または開口方向に移動するときに上顎マウスピースおよび下顎マウスピースが当接して生じる衝撃は当接面の全体に分散されるため、使用者の歯や顎などを上記衝撃から保護する。
【0248】
本出願は、2017年6月22日出願の日本国出願番号2017-122364号、2018年2月15日出願の日本国出願番号2018-025034号、および2018年3月26日出願の日本国出願番号2018-058743号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の明細書、特許請求の範囲および図面に記載された内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明の第1の側面のマウスピースによれば、これを装着した使用者の下顎の位置を調整しつつ、下顎の後方への変位を制限可能である。また、本発明のマウスピースは、下顎前進装置や雄ねじが前方に突出しないため、従来よりも使用者の装着感が良好である。そのため、本発明のマウスピースは、睡眠時無呼吸症候群の予防および治療のほか、顎関節症の予防および治療や歯ぎしりの抑制などにも使用可能である。
【0250】
また、本発明の第2の側面のマウスピースによれば、これを装着した使用者の下顎の位置を調整しつつ、下顎の後方への変位を制限可能である。また、本発明のマウスピースは、従来よりも下顎マウスピースの前進量の調整が容易である。そのため、本発明のマウスピースは、睡眠時無呼吸症候群の予防および治療のほか、顎関節症の予防および治療や歯ぎしりの抑制などにも使用可能である。
【符号の説明】
【0251】
1100、1300 マウスピース
1110 上顎マウスピース
1112 歯列型取部
1114 下向対向面
1120 下顎マウスピース
1122 歯列型取部
1124 上向対向面
1200 下顎前進装置
1210、1210a、1210b、1210c、1210d 前方保持部
1212、1212b、1212c、1212d 固着部
1214、1214a、1214b、1214c、1214d 前方対向部
1216、1216a、1216b、1216c、1216d 保持孔
1217 保護面
1218 嵌込部
1219 保護面
1220、1220a、1220b、1220c、1220d 後方保持部
1222、1222a、1222b 突出部
1224、1224a、1224b 後方対向部
1230 雄ねじ
1232 係合部
1234 前方係止部
1235 円筒部
1236 後方係止部
1238 ねじ部
1240、1240d 雌ねじ
1242 雌ねじ後端部
1252a ガイドフック
1252b 引掛フック
1252c スライド部材
1254a、1254b ガイド棒
1254c スライド部材
1256a ガイドレール
1256b 槌部
1256c スライド部材
1262a 回動保持孔
1262b 縮径部
1262c ストッパ
1262d 回動保持部
1264a 貫通孔
1264b 挿通棒
1264c ストッパ
1264d 回動保持部
1266a 後方保持部
1266b 後方保持孔
1266c 雌ねじ係止部
1268a 雌ねじ孔
1270 押下部
1400 ねじ回し
2100 マウスピース
2110 上顎マウスピース
2112 歯列型取部
2120 下顎マウスピース
2122 歯列型取部
2200、2300、2300a、2300b 下顎前進装置
2210、2310 固定部材
2212、2312 溝部
2214、2314 カバー部
2216、2316 取付部
2216a、2316a 貫通孔
2220、2320 スライド部材
2222、2322 溝部
2222a 凹部
2224、2324 カバー部
2224a、2224b 貫通孔
2224c 皿部
2226、2326 取付部
2226a、2326a 貫通孔
2228 留め具
2228a、2228b 嵌込部
2228c 湾曲部
2230、2330 雄ねじ
2232、2332 係合部
2232a 凹部
2234、2236、2334 鍔部
2235 くびれ部
2238、2338、2338a ねじ部
2240、2340 雌ねじ
2250、2350、2350a ストッパ
2252 端部
2254 第1板状部
2255 折り返し部
2256 第2板状部
2258 爪部
2260 回転規制部
2270 ストッパ
2272 端部
2274 板状部
2278 爪部
2280 回転規制部
2314a 溝部
2324a 溝部
2328 留め具
2328a 挿通孔
2335 円筒部
2336、2336a、2336b くびれ部
2338b 弾性コーティング
2352 圧縮コイルばね
2354、2354a、2354b 係止部材
2355 係止片
2356 突出係止部
2400 ねじ回し
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25