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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】艶消し感を有する3層有色フィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230117BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019202028
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021075295
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390000387
【氏名又は名称】福助工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】薦田 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】宇高 一良
(72)【発明者】
【氏名】山下 茂樹
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-258258(JP,A)
【文献】米国特許第04996096(US,A)
【文献】特開2018-069459(JP,A)
【文献】特開2002-037317(JP,A)
【文献】特許第4255215(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
艶消し感を有する3層有色フィルムであって、前記3層有色フィルムは、外層と、中間層と、内層とから構成され、前記外層が、下記原料:融点が124℃~127℃である直鎖状低密度ポリエチレン90~98質量%、高圧低密度ポリエチレン又は透明な低密度ポリエチレン0~7質量%及び開口剤2~3質量%からなり;前記中間層が、下記原料:融点が124℃~127℃である直鎖状低密度ポリエチレン70~90質量%と、融点が120℃~122℃である直鎖状低密度ポリエチレン0~10質量%と、高圧低密度ポリエチレン0~10質量%と、有色マスターバッチ10~20質量%からなり;前記内層が、下記原料:融点が124℃~127℃である直鎖状低密度ポリエチレン35~60質量%と、融点が120℃~122℃である直鎖状低密度ポリエチレン27~40質量%と、高圧低密度ポリエチレン10~25質量%と、開口剤2.5~4質量% からなり、前記有色マスターバッチは、無機系顔料を含有する淡色有色マスターバッチであり、前記有色マスターバッチにおける前記無機系顔料の濃度が20質量%以下であることを特徴とする艶消し感を有する3層有色フィルム。
【請求項2】
前記3層有色フィルムは、光沢度が9.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の3層有色フィルム。
【請求項3】
前記外層、中間層及び内層の層間比率は、外層:中間層:内層=1.0~1.2:1.0~2.0:0.5~1.0であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の3層有色フィルム。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の3層有色フィルムの製造方法であって、前記外層を構成する樹脂組成物と、前記中間層を構成する樹脂組成物と、前記内層を構成する樹脂組成物とを共押出してインフレーション成形することを特徴とする3層有色フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装薄フィルムの技術分野に関し、具体的に艶消し感を有する3層有色フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販されている生理ナプキン商品の主流は、ポリエチレン(以下、PEと略する場合がある。)透明フィルム、乳白フィルムに印刷されたものであり、生理ナプキンの包装袋は、一般に複合フィルム製品、PE乳白フィルム製品に大別される。そのうち、複合フィルム製品は、外層で艶消しを行い、中間層で印刷を、内面PEにおいて全体的印刷を行う方法が採用されている。PE乳白フィルム製品は、単層、3層フィルムに全体的に印刷する方法が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記製品は主に以下の問題が存在する。すなわち、透明な艶消しフィルムは単層のものが多く、100%の艶消し直鎖状低密度ポリエチレンに開口剤を添加して製造されるが、需要者のニーズに応えるために、高圧低密度ポリエチレン、艶消し直鎖状低密度ポリエチレンと混合すると、単層フィルムにしても3層にしても、艶消し感に影響する。
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、印刷面積を減少させて環境保護に有利な艶消し感を有する3層有色フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様としての3層有色フィルムは、艶消し感を有するものであって、外層と、中間層と、内層とから構成され、前記外層が、下記原料:艶消し直鎖状低密度ポリエチレン90~98質量%、高圧低密度ポリエチレン又は透明な低密度ポリエチレン0~7質量%及び開口剤2~3質量%からなり;前記中間層が、下記原料:艶消し直鎖状低密度ポリエチレン70~90質量%と、透明な直鎖状低密度ポリエチレン0~10質量%と、高圧低密度ポリエチレン0~10質量%と、有色マスターバッチ10~20質量%からなり;前記内層が、下記原料:艶消し直鎖状低密度ポリエチレン35~60質量%と、透明な直鎖状低密度ポリエチレン27~40質量%と、高圧低密度ポリエチレン10~25質量%と、開口剤2.5~4質量%からなる。
【0006】
前記3層有色フィルムは、光沢度が9.0以下としてもよい。
【0007】
前記有色マスターバッチは、無機系顔料を含有する淡色有色マスターバッチであり、前記有色マスターバッチにおける前記無機系顔料の濃度が20質量%以下としてもよい。
【0008】
前記外層、中間層及び内層の層間比率は、外層:中間層:内層=1.0~1.2:1.0~2.0:0.5~1.0としてもよい。また、前記3層有色フィルムの製造方法として、前記外層を構成する樹脂組成物と、前記中間層を構成する樹脂組成物と、前記内層を構成する樹脂組成物とを共押出してインフレーション成形するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、艶消し感を有する3層有色フィルムを得ることができ、それにより、印刷面積を減少させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は艶消し感を有する3層有色フィルムを提供し、当該3層有色フィルムは、外層と、中間層と、内層とから構成され、前記外層が、下記原料:艶消し直鎖状低密度ポリエチレン90~98質量%、高圧低密度ポリエチレン又は透明な低密度ポリエチレン0~7質量%及び開口剤2~3質量%からなり;前記中間層が、下記原料:艶消し直鎖状低密度ポリエチレン70~90質量%と、透明な直鎖状低密度ポリエチレン0~10質量%と、高圧低密度ポリエチレン0~10質量%と、有色マスターバッチ10~20質量%からなり;前記内層が、下記原料:艶消し直鎖状低密度ポリエチレン35~60質量%と、透明な直鎖状低密度ポリエチレン27~40質量%と、高圧低密度ポリエチレン10~25質量%と、開口剤2.5~4質量%から製造される。有色マスターバッチは、無機系淡色有色マスターバッチで、無機系淡色有色マスターバッチにおける無機系顔料の濃度が20質量%以下である。3層有色フィルムは、インフレーション成形され、3層有色フィルムの光沢度(本発明で、光沢度とはJIS K7105に規定する光沢度をいう。)が9.0以下であり、3層有色フィルムの3層の層間比率が、外層:中間層:内層=1.0~1.2:1.0~2.0:0.5~1.0である。
【0011】
本実施形態では、3層インフレーション成形を採用し、有色艶消しフィルム(光沢度9.0以下)を成形し、且つ3層の層間比率を制御することにより、艶消し感を最大に発揮することができる。淡色マスターバッチは、無機系顔料を含有し、層間比率に基づいて算出した結果より、無機系顔料の濃度が20質量%以下、樹脂組成物中における無機系顔料の含有濃度が1.5質量%以下の有色マスターバッチを使用し、混合してからインフレーション成形する。直鎖状低密度ポリエチレンは融点が高いため、低温ヒートシール性能に難があったところ、艶消し感(光沢度が9.0以下)を発揮させつつ、低温ヒートシール性能を改善した。
【0012】
有色マスターバッチは、有機系色マスターバッチ及び無機系色マスターバッチに分けられる。有機系はカラー系の青、緑、黄、ピンク、紫などがあり、有機系顔料は金属との密着性が強いので、押出機のポンプ、ダイヘッドに付着するため、原料の切り替えの際に脱色しにくい。無機系色マスターバッチは、通常、乳白を主とし、金属との密着性が悪いので、押出機のポンプ及びダイヘッドに付着しないため、原料の切り替えの際に脱色しやすい。従来、有機系色マスターバッチは、耐候性に劣り、問題となっていたが、無機系色マスターバッチを用いることで耐候性に優れた3層有色フィルムを得ることができる。したがって、本発明の特徴は更に、この3層有色フィルムが無機系有色マスターバッチ(濃度が20質量%以下)を使用して製造されたことにある。
【0013】
既存の艶消し直鎖状低密度ポリエチレンとして、2タイプ(FB2230、FB2310)があり、外層、中間層、内層が全て艶消し直鎖状低密度ポリエチレン+有色マスターバッチ+開口剤とすると、光沢度が上がり、艶消し感の低下を引き起こす。外層が艶消し原料100%、中間層が艶消し原料+有色マスターバッチである場合、内層原料の処方により、艶消し感(光沢度が9.0以下)が影響される。そのため、艶消し感(光沢度が9.0以下)を確保すべく、鋭意検討することにより、本発明を完成させるに至った。
【0014】
艶消し直鎖状低密度ポリエチレンFB2230の融点は124℃、FB2310の融点は127℃であり、高圧低密度ポリエチレンの融点が112℃、透明な直鎖状低密度ポリエチレンの融点が120℃~122℃である。艶消し直鎖状低密度ポリエチレンの低温ヒートシール性能が悪いことが前記から分かる。通常の場合、低温ヒートシール性能を改善するために、低融点樹脂と混合することが考えられる。しかし、ヒートシール性能は改善されるが、光沢度は上がるため、艶消し感が低下する。そのために、艶消し感(光沢度が9.0以下)を確保しつつ、低温ヒートシール性能を改善する必要がある。本発明の3層有色フィルムの特徴の一つは、原料の設計改良を通じて低温ヒートシール性能を改善したことにある。
【0015】
本実施形態では、3層ダイヘッドにおける各層の層間比率1.2:2.0:0.8を採用し、たとえば、外層が艶消し直鎖状低密度ポリエチレン+開口剤、中間層が艶消し直鎖状低密度ポリエチレン+有色マスターバッチ、内層が艶消し直鎖状低密度ポリエチレン+透明な直鎖状低密度ポリエチレン+高圧低密度ポリエチレン+開口剤を採用することで、最終的に最大限度で艶消し感を発揮した。3層押出機の3層ダイヘッドの層間比率は非常に重要であり、3層押出機に押出計量制御装置が取り付けられていない場合、ダイヘッドの層間厚みの安定性を確保することができず、層間厚みが安定していない場合、直接に艶消し感の変化、ヒートシール強度の不安定を引き起こす。本発明の3層押出機は外層押出機と、中間層押出機と、内層押出機とに分けられ、設定比率に基づき、自動押出計量制御装置により3層ダイヘッドの内部各層間の樹脂が一定の量で押し出される。通常、計量制御装置がない場合、層間比率の設定に従って制御することができない。一般にPEフィルム成形の3層ダイヘッドの層間比率が1:2:1である。需要者のニーズに応えるため、本発明では有色艶消しフィルムのダイヘッドの層間比率を変更しており、目的は最大限度で艶消し感(光沢度が8.0以下)を奏することである。本発明の3層有色フィルムの特徴は更に、層間比率=外層1.0~1.2:中間層1.0~2.0:内層0.5~1.0とすることにより、原料設計だけでは実現できない光沢度の低減を実現可能としたことにある。
【0016】
本発明の艶消し感(光沢度が9.0以下)を有する3層有色フィルムは以下の特徴を有する。
【0017】
(1)淡色有色マスターバッチは通常に有機系マスターバッチを主とする。有機系マスターバッチの欠点は、耐候性が悪く、使用に制限がある。一方、無機系の淡色有色マスターバッチは、金属との密着性が悪いことから脱色しやすく、脱色にかかる時間を短縮することが可能な3層艶消し有色フィルムの製造が可能となる。
【0018】
(2)艶消し感(光沢度が9.0以下)は光沢度に反比例する。3層の原料樹脂の設計及びダイヘッドの層間比率を調整することにより、艶消し感(光沢度が9.0以下)を最大に引き出しつつ、低温ヒートシール性優れた3層艶消し有色フィルムを得ることが可能となる。
【0019】
(3)衛生材料の分野では、通常、包装袋は全て全面印刷される。本発明の艶消し有色フィルムは、高級感が感じられるだけでなく、印刷面積も減少するため、環境保護に非常に有利な包装袋となる。
【0020】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、本発明の思想の本日及び原理を逸脱しない範囲で行われる種々の変更、置換、代替、簡素化を行って実施することができる。