(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】果実保持部材
(51)【国際特許分類】
B65D 85/34 20060101AFI20230117BHJP
B65D 81/127 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B65D85/34 160
B65D81/127 Z
(21)【出願番号】P 2018091108
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】599105470
【氏名又は名称】株式会社エバーウィングス
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】大垣 恵一
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-244024(JP,A)
【文献】特開2010-260308(JP,A)
【文献】特開平11-334778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/34
B65D 81/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イチゴを収容する容器内に配置され、前記
イチゴを保持する果実保持部材であって、
柔軟性を有するシート状の本体を備え、
前記本体は、前記
イチゴが載置される載置位置において、スリットである切断部と、スリットになっていない非切断部と、が連なる環形状の変形部が、マトリックス状に複数配列形成され、
前記変形部は、
前記容器の底から離れた位置に配置され、
前記
イチゴが前記載置位置に載置されることで、変形し、前記容器の前記底に接触しない位置において、前記
イチゴを保持し、
前記変形部が形成された載置位置は、
前記イチゴの形状を模した略楕円形状に形成され、
略楕円形状の長軸が、前記変形部の配列方向に対して傾いていることを特徴とする果実保持部材。
【請求項2】
前記変形部は、内側に向かって複数形成され、
互いに隣接する前記変形部は、前記非切断部が、前記載置位置の中心からの放射方向において、互いに重ならない位置に形成されている、請求項1に記載の果実保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実を箱詰め・搬送する際に、当該果実を保持するために用いられる果実保持部材に関する。さらに詳細には、本発明は、果実を収容する容器内に配置される果実保持部材であって、表面が損傷し易いイチゴ等の果実を、損傷させることなく箱詰め・搬送することを可能にする果実保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴ等の表面は比較的損傷し易いため、イチゴ等を安全に箱詰め・搬送することができる包装容器の開発が切望されていた。
【0003】
そこで、従来、かかる要望に応えるべく、以下のような収容トレイ(果実保持部材)を有する包装容器が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に開示された収容トレイ(果実保持部材)は、果実を収容する収容部が形成される第1シートと、第1シートの背面側に設けられ、第1シートの弾性よりも低い弾性を有する第2シートと、を備える。第1シートには、収容部の略中心から放射状に複数延出した切り込みで形成された、可撓性を有する複数の第1フラップが形成されている。また、第2シート上の第1フラップの投影位置において第1フラップと同じ形状に形成された、可撓性を有する複数の第2フラップが形成されている。そして、第1及び第2フラップそれぞれが湾曲しつつ収容部に収容された果実を保持できるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案されている収容トレイ(果実保持部材)では、果実同士の荷重のかかり合いによる損傷を防止することはできるが、個々の果実は収容部のフラップを構成するシートと点や線で接触することとなるため(特許文献1の
図4等を参照)、長時間の搬送や強い衝撃時に損傷を受ける虞がある。また、特許文献1で提案されている収容トレイ(果実保持部材)は、第1シートと、第1シートの背面側に設けられ、第1シートの弾性よりも低い弾性を有する第2シートと、を備えるものであるため、製造コストが高くなるという問題点も有している。
【0007】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、果実を、損傷させることなく箱詰め・搬送することを可能にする低コストな果実保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る果実保持部材の構成は、
(1) 果実を収容する容器内に配置され、前記果実を保持する果実保持部材であって、
柔軟性を有するシート状の本体を備え、
前記本体は、前記果実が載置される載置位置において、スリットである切断部と、スリットになっていない非切断部と、が連なる環形状の変形部が形成され、
前記変形部は、
前記容器の底から離れた位置に配置され、
前記果実が前記載置位置に載置されることで、変形し、前記容器の前記底に接触しない位置において、前記果実を保持することを特徴とする。
【0009】
本発明の果実保持部材の上記(1)の構成によれば、果実を、変形部が形成された載置位置に載置する。このとき、果実の自重で、変形部が果実の表面形状に追随して変形し、当該果実が容器の底に接触しない位置において保持された状態となる。即ち、本発明の果実保持部材は、それぞれ表面の形状が異なる果実を、当該果実の形状に応じた形状の面で支持し、かつ、容器の底に接触しないハンモックのような宙吊り状態で保持することができる。従って、上記のようなスリットを入れるだけのシンプルな形状の低コストな果実保持部材を用いて、表面が損傷し易いイチゴ等の果実を、損傷させることなく箱詰め・搬送することが可能となる。なお、箱詰め・搬送時の果実は、その大きさや形状が様々であるが、本発明の果実保持部材を用いることにより、その全ての果実の損傷を防止することが可能となる。
【0010】
本発明の果実保持部材の上記(1)の構成においては、以下の(2)のような構成にすることが好ましい。
【0011】
(2)前記変形部は、内側に向かって複数形成され、
互いに隣接する前記変形部は、前記非切断部が、前記載置位置の中心からの放射方向において、互いに重ならない位置に形成されている。
【0012】
上記(2)の好ましい構成によれば、各載置位置の内側に向かって複数の変形部を形成し、互いに隣接する変形部の非切断部を重ならないように形成することで、本体の載置位置に果実が載置された場合、本体が網形状となり載置された果実の表面形状に沿って変形部を変形させることが可能となる。従って、上記(2)の好ましい構成によれば、表面形状の異なる果実を、同じ果実保持部材を用いて、より確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、果実を、損傷させることなく箱詰め・搬送することを可能にする低コストな果実保持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態における果実保持部材が配置された容器(果実収容容器)を、斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における果実保持部材の構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態における果実保持部材が張設される張設部材を、斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態における果実保持部材が配置される容器を、斜め上方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の一実施の形態における果実保持部材によって果実(イチゴ)を保持している状態を示す、斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】本発明の果実保持部材における、変形部が形成された載置位置の他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
[果実保持部材の構成]
まず、本発明の一実施の形態における果実保持部材の構成について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態における果実保持部材が配置された容器(果実収容容器)を、斜め上方から見た斜視図、
図2は、
図1のII-II線矢視断面図、
図3は、当該果実保持部材の構成を示す平面図、
図4は、当該果実保持部材が張設される張設部材を、斜め上方から見た斜視図、
図5は、当該果実保持部材が配置される容器を、斜め上方から見た斜視図である。
【0018】
図1~
図3に示す本実施の形態の果実保持部材1は、果実を収容する直方体状の容器2内に配置され、果実を保持するために用いられる部材である(
図6,
図7を参照)。
【0019】
図1~
図3に示すように、果実保持部材1は、所要の柔軟性を有する長方形シート状の本体3を備えている。本体3は、果実が載置される載置位置において、スリットである切断部4aと、スリットになっていない非切断部4bと、が連なる環形状の変形部4が形成されている。変形部4は、容器2の底から離れた位置に配置され、果実が載置位置に載置されることで、変形し、容器2の底に接触しない位置において、果実を保持する(
図6,
図7を参照)。
【0020】
なお、本体3は、矩形状の容器本体と、容器本体の主面上に設けられた、果実を載置するための果実載置部と、を備え、果実載置部を、容器本体側の面が開口した、天壁と周壁とを有する内部が空洞の凸部として形成し、凸部の少なくとも天壁が、果実の重量により当該果実の表面形状に追随して変形するように構成されていてもよい。この場合、変形部4は、凸部に形成される。
【0021】
ここで、変形部4が形成された載置位置は12個設けられており、これら12個の載置位置は、3×4のマトリックス状に配列されている。なお、載置位置は、3×4のマトリックス状に限らず、1×2、3×2等のマトリックス状の他、1つだけ設けられていてもよい。また、本実施の形態の説明では、イチゴを果実の一例として説明するが、果実保持部材1は、イチゴに限らず、表面が損傷し易い、任意の果実に適用することができる。
【0022】
本実施の形態の果実保持部材1の構成によれば、果実を、変形部4が形成された載置位置に載置するだけで、果実の自重で、変形部4を果実の表面形状に追随して変形させて、当該果実が容器2の底に接触しない位置において保持された状態に持って行くことができる(
図6,
図7を参照)。即ち、本実施の形態の果実保持部材1は、それぞれ表面の形状が異なる果実を、当該果実の形状に応じた形状の面で支持し、かつ、容器2の底に接触しないハンモックのような宙吊り状態で保持することができる。従って、上記のようなスリットを入れるだけのシンプルな形状の低コストな果実保持部材1を用いて、表面が損傷し易いイチゴ等の果実を、損傷させることなく箱詰め・搬送することが可能となる。なお、箱詰め・搬送時の果実は、その大きさや形状が様々であるが、本実施の形態の果実保持部材1を用いることにより、その全ての果実の損傷を防止することが可能となる。
【0023】
果実保持部材1の本体3の材料としては、不織布が好ましく、中でも、エラストマー繊維を含む伸縮性繊維不織布がより好ましい。ランダムに結合された不織布は、強度や伸びなどに方向性を持たないため、果実の自重で、変形部4を果実の表面形状に追随してうまく変形させることができる。
【0024】
変形部4は、内側に向かって複数形成されている。そして、互いに隣接する変形部4は、非切断部4bが、載置位置の中心からの放射方向において、互いに重ならない位置に形成されている。このように、各載置位置の内側に向かって複数の変形部4を形成し、互いに隣接する変形部4の非切断部4bを重ならないように形成することで、本体3の載置位置に果実が載置された場合、載置された果実の表面形状に沿って変形部4を変形させることが可能となる。
図6において、符号を付した載置位置は、複数の変形部4が変形し、切断部4aのスリットが開き、網形状となった状態を示している。従って、この構成によれば、表面形状の異なる果実を、同じ果実保持部材1を用いて、より確実に保持することができる。
【0025】
図1,
図3に示すように、本実施の形態において、変形部4が形成された載置位置は、イチゴの形状を模した略楕円形状に形成されている。また、変形部4が形成された載置位置は、若干右斜め上方を向いている。
【0026】
図5に示すように、容器2は、上部が開口した段ボール製の容器である。容器2の内部には、同じく段ボール製の2枚の支持板6a,6bが一定間隔を空けて縦方向に固設されており、これにより、後述する張設部材5を、容器2の底から離れた位置で支持しておくことができるようにされている。ここで、支持板6a,6bの高さは、容器2の内部の高さのほぼ半分である。
【0027】
図2~
図4に示すように、果実保持部材1の本体3は、段ボール製の張設部材5に張設される。張設部材5は、果実保持部材1の本体3が張設される天板5aと、天板5aの左右側辺にそれぞれ一体に設けられた脚板5b,5cと、により、断面略コの字状に形成されている。そして、果実保持部材1の本体3が張設された状態の天板5aを、容器2の内部の2枚の支持板6a,6b上に載せることにより、果実保持部材1の本体3を、容器2の底から離れた位置に配置できるようにされている。なお、果実保持部材1の本体3は、例えば、ホッチキスの針や接着剤で、その上下の縁部が天板5aに固着されて、張設される。
【0028】
図2,
図4に示すように、張設部材5の天板5aには、変形部4が形成された載置位置の大きさよりも少し大きめの円孔5dが穿設されている。ここで、円孔5dは、載置位置に対応させて3×4のマトリックス状に配列されている。また、2枚の支持板6a,6bは、マトリックス状に配列された円孔5dの各列間に位置している。これにより、果実の自重による変形部4の変形が支持板6a,6bによって妨げられることはない。
【0029】
[果実保持部材の使用方法]
次に、本発明の一実施の形態における果実保持部材の使用方法について、果実がイチゴである場合を例に挙げて、
図6,
図7をも参照しながら説明する。
【0030】
図6は、本発明の一実施の形態における果実保持部材によって果実(イチゴ)を保持している状態を示す、斜め上方から見た斜視図、
図7は、
図6のVI-VI線矢視断面図である。
【0031】
まず、
図3に示す果実保持部材1の本体3を、
図4に示す張設部材5の天板5aに張設する。このとき、本体3上の、変形部4が形成された12個の載置位置は、天板5a上の12個の円孔5d内にそれぞれ位置した状態となる。次いで、
図1,
図2,
図5に示すように、果実保持部材1の本体3が張設された状態の張設部材5の天板5aを、容器2の内部の2枚の支持板6a,6b上に載せることにより、果実保持部材1の本体3を、容器2の底から離れた位置に配置する。このとき、天板5aの左右側辺は、脚板5b,5cによってしっかりと支持された状態となっている。以上により、果実(イチゴ)を収容するための果実収容容器(
図1)が完成する。
【0032】
果実収容容器が完成したら、まず、
図6に示すように、果実保持部材1の本体3の載置位置(変形部4が形成された箇所)に、イチゴ7をそれぞれ載置する。これにより、
図7に示すように、果実保持部材1の本体3の変形部4が、イチゴ7の自重で、イチゴ7の表面形状に追随して変形し、当該イチゴ7が容器2の底に接触しない位置において保持された状態となる。即ち、それぞれ表面の形状が異なるイチゴ7が、当該イチゴ7の形状に応じた形状の面で支持され、かつ、容器2の底に接触しないハンモックのような宙吊り状態で確実に保持される。そして、これにより、イチゴ7の搬送時における衝撃を吸収することができるので、イチゴ7の搬送時に当該イチゴ7が損傷を受けることを、より確実に防止することが可能となる。
【0033】
最後に、イチゴ7が収容された果実収容容器(容器2)の上部開口を覆うようにして、包装用フィルム(図示せず)を被せる。包装用フィルムが被せられた果実収容容器は、数箱まとめて大きめの段ボール箱等に箱詰めされ、搬送される。
【0034】
なお、上記実施の形態においては、長方形シート状の本体3を備えた果実保持部材1を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。本体は、容器の形状に応じた、正方形、五角形、六角形等の、種々の形状を採り得る。
【0035】
また、上記実施の形態においては、変形部4が形成された載置位置がイチゴの形状を模した略楕円形状に形成されている場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。変形部4が形成される載置位置の形状は、例えば
図8(a)に示すような、円形に近いものであってもよい。この形状の載置位置には、例えば、イチゴを、蔕(ヘタ)を下に向けた状態で載置することができる。また、変形部4が形成された載置位置の形状は、例えば
図8(c)に示すような、台形に近いものであってもよい。この形状の載置位置は、例えば、比較的横に大きなイチゴを載置するのに好適である。なお、
図8(b)に示す、変形部4が形成された載置位置の形状は、
図1,
図3に示す上記実施の形態のものと同じであり、比較のために挙げたものである。
【0036】
また、変形部4の中心部分には、所定形状(例えば、
図3に示すハート形状や、
図8(c)に示すイチゴの外形を示す形状)のスリットが形成されており、この所定形状は部分的にスリットになっていない非切断部としてもよい。この所定形状を形成する部分をそのまま残しておいてもよいし、切り取ってもよい。そして、この所定形状の部分を切り取る場合、例えば、本体3の色と異なる色のシートや紙を、本体3の下に配置してもよい。これにより、例えば、本体3を白色の部材で構成し、本体3の下に配置したシートや紙を赤色にすることで、消費者が果実保持部材1の載置位置に配置された果実を取り出すことで、所定形状が浮き出るように現れ、消費者を楽しませることが可能となる。
【0037】
また、上記実施の形態においては、果実保持部材1の本体3の材料が不織布、特に、エラストマー繊維を含む伸縮性繊維不織布である場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。果実保持部材1の本体3は、柔軟性を有するものであれば、不織布以外の材料からなっていてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態においては、環形状の変形部4が、内側に向かって複数形成されている場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。環形状の変形部を1つだけ形成する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、果実を、損傷させることなく箱詰め・搬送することを可能にする低コストな果実保持部材を提供することができる。従って、本発明の果実保持部材は、表面が損傷し易いイチゴ等の果実を箱詰め・搬送する際に、当該果実を保持する使い捨ての部材として有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 果実保持部材
2 容器
3 本体
4 変形部
4a 切断部
4b 非切断部
5 張設部材
5a 天板
5b,5c 脚板
5d 円孔
6a,6b 支持板
7 イチゴ