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特許7211612テンベルメクチンBの結晶形、その調製方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】テンベルメクチンBの結晶形、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/08 20060101AFI20230117BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C07H17/08 L
A61K31/7048
A61P33/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021517088
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2019088333
(87)【国際公開番号】W WO2019228260
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】201810521893.2
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520470246
【氏名又は名称】深▲せん▼市天維生物薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Tenver Biopharm Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 805,Changsheng Building,Huaqiang North Road,Futian District,Shenzhen,Guangdong 518028 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王継棟
(72)【発明者】
【氏名】李建宋
(72)【発明者】
【氏名】張輝
(72)【発明者】
【氏名】張霊堅
(72)【発明者】
【氏名】黄▲ジャン▼
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107513088(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110540556(CN,A)
【文献】国際公開第2006/060616(WO,A1)
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,p.57-84
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
A61P 33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンベルメクチンBの結晶形Iの結晶の調製方法であって、
前記テンベルメクチンBの結晶形Iの結晶は、Cu-Kα放射線を使用したX線粉末回折パターンにおいて、9.62±0.20°、11.33±0.20°、11.79±0.20°、12.48±0.20°、13.48±0.20°、21.12±0.20°及び23.70±0.20°の2θ度に特性ピークを示し、
前記方法は、ホルムアミドを含有する溶媒系から前記テンベルメクチンBの結晶形Iの結晶を沈殿させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記テンベルメクチンBの結晶形Iの結晶は、Cu-Kα放射線を使用したX線粉末回折パターンにおいて、6.71±0.20°、9.22±0.20°、12.02±0.20°、14.95±0.20°、17.39±0.20°、18.33±0.20°、22.97±0.20°、26.53±0.20°及び27.16±0.20°の2θ度に特性ピークをさらに示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンベルメクチンBの結晶形Iの結晶は、Cu-Kα放射線を使用したX線粉末回折パターンにおいて、4.63±0.20°、15.45±0.20°、15.80±0.20°、16.64±0.20°、17.74±0.20°、19.20±0.20°、19.75±0.20°、22.14±0.20°、22.52±0.20°、25.01±0.20°、25.54±0.20°及び29.60±0.20°の2θ度に特性ピークをさらに示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホルムアミドを含有する前記溶媒系は、低級アルコール、ホルムアミド及び水の組み合わせ、又は低級ケトン、ホルムアミド及び水の組み合わせであり、
前記低級アルコールは、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択され、
前記低級ケトンは、アセトンである、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ホルムアミドを含有する前記溶媒系は、エタノール、ホルムアミド及び水の組み合わせである、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、テンベルメクチンBをエタノールに溶かし、次いでホルムアミド、水を順に加え、このようにして得られた混合物を撹拌し、結晶化し、前記テンベルメクチンBの結晶形Iの結晶を得る工程を含む、請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
テンベルメクチンBの質量と、エタノールの体積と、ホルムアミドの体積と、水の体積と、の比は、1g:2ml:4~5ml:2mlである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、医薬の分野に関する。より具体的には、本発明は、テンベルメクチン(tenvermectin)Bの結晶形、その調製方法及びその使用に関する。
【0002】
〔背景〕
ストレプトマイセス(streptomyces)によって産生される16員環マクロライドは、高い活性及び広いスペクトル活性を有する。さらに、この種の化合物は、自然環境において土壌と密接に結合し、洗浄及び浸透するのは容易ではない。当該化合物は、光条件下又は土壌微生物の作用下で急速に不活性化合物へと分解し、それらの分子断片は最終的に、植物及び微生物によって分解され、残留毒性を全く伴わずに炭素源として利用される。この種の化合物は、農業及び動物において使用される高効率の生物学的殺虫剤となっている。
【0003】
この種の化合物の顕著な特性のために、当該化合物のホモログは、世界中で広く研究されている。より高い活性を有する新規化合物を見出すために、一方では、分子構造修飾が合成によって行われ、他方では、それによって産生された株が遺伝子改良法によって変異される。Zhejiang Hisun Pharmaceutical Co., Ltdのチームは、DNAの大きな断片をシームレススプライシングする技術により、ミルベマイシン(Milbemycins)PKS遺伝子をアベルメクチン(avermectins)産生株ストレプトマイセスアベルミチリス(avermitilis)の初期モジュールに組み込み、テンベルメクチンを産生するための遺伝子工学株MA220を得た(WO2015135242参照)。テンベルメクチンは、主成分:テンベルメクチンA及びテンベルメクチンB(それらの構造を以下に示す)を有する。CN201410208660.9及びWO2015135467は、テンベルメクチンA及びテンベルメクチンBがテトラニチュスシンナバリナス(tetranychus cinnabarinus)、テトラニチュスウルチカエ(tetranychus urticae)、プルテラキシロステラ(plutella xylostella)、スポドプテラエキシグア(spodoptera exigua)、スポドプテラリツラ(spodoptera litura)、コットンボールワーム(cotton bollworm)、アグロチスイプシロン(agrotis ypsilon)、ワイヤーワーム(wireworm)、アーミーワーム(armyworm)、パインカーターピラー(pine caterpillar)、パインウッドネマトード(pine wood nematode)、及びライスボアー(rice borer)等の、農作物及び林業作物の害虫及びダニを防除できることを開示する。
【0004】
【化1】
【0005】
また、CN201410208660.9及びWO2015135467はまた、テンベルメクチンA及びテンベルメクチンBを調製するための方法を開示しており、ここでは、遺伝子工学株MA220の発酵液をフィルタークロスで濾過して濾過ケーキを得、これをエタノールで二回抽出してエタノール抽出液を得、このようにして得られたエタノール抽出液を減圧濃縮し、乾燥させ、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィによって分離し、次いでセミ分取高圧液相(溶離液:メタノール/アセトニトリル/水=46/46/8)で分離精製し、このようにして得られた画分を直接濃縮、乾燥させ、テンベルメクチンA及びテンベルメクチンBを得る。DE4031039は、テンベルメクチンBの調製方法を開示する。当該方法によると、テンベルメクチンBの粗生成物を合成し、次いでシリカゲル(酢酸エチル/ヘキセン=2:1)で精製し、テンベルメクチンBを得る。しかしながら、2つの調製方法はいずれも、得られたテンベルメクチンBの結晶形を検討していない。
【0006】
多数の実験の後、第1に、本発明の発明者らは、上記2つの調製方法に従って得られた生成物がテンベルメクチンBの非晶質粉末であることを見出し、第2に、それらの検討の間に、本発明者らは、非晶質粉末が非常に不安定であり、生成物のその後の開発のためのコストの増加につながることを見出した。最後に、本発明者らは、結晶形Iと呼ばれるテンベルメクチンBの結晶形を発見した。それは、より安定であり、分解しにくく、したがって、テンベルメクチンBのその後の開発のための確かな基礎を敷く。
【0007】
〔概要〕
本発明の1つの目的は、良好な化学的安定性及び物理的安定性を有する、結晶形Iと呼ばれるテンベルメクチンBの結晶形を提供することである。当該結晶形は、より安定であり、分解しにくく、生成物のその後の開発のためにより有利である。
【0008】
本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形Iは、Cu-Kα放射線を使用したX線粉末回折パターンにおいて、9.62±0.20°、11.33±0.20°、11.79±0.20°、12.48±0.20°、13.48±0.20°、21.12±0.20°及び23.70±0.20°の2θ度に特性ピークを示す。
【0009】
好ましくは、本発明に係る前記テンベルメクチンBの結晶形Iは、Cu-Kα放射線を使用したX線粉末回折パターンにおいて、6.71±0.20°、9.22±0.20°、12.02±0.20°、14.95±0.20°、17.39±0.20°、18.33±0.20°、22.97±0.20°、26.53±0.20°及び27.16±0.20°の2θ度に特性ピークをさらに示す。
【0010】
より好ましくは、本発明に係る前記テンベルメクチンBの結晶形Iは、Cu-Kα放射線を使用したX線粉末回折パターンにおいて、4.63±0.20°、15.45±0.20°、15.80±0.20°、16.64±0.20°、17.74±0.20°、19.20±0.20°、19.75±0.20°、22.14±0.20°、22.52±0.20°、25.01±0.20°、25.54±0.20°及び29.60±0.20°の2θ度に特性ピークをさらに示す。
【0011】
さらに、本発明に係る前記テンベルメクチンBの結晶形IのX線粉末回折パターンにおける、特性ピークが示される2θ度、示される特性ピークのd値及び相対強度データは、以下の表1に示される。
【0012】
【表1】
【0013】
本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形IのXRPDパターンを図1に示す。
【0014】
加えて、本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形Iは、KBrペレットによって測定された赤外吸収スペクトルによって特性付けることができ、当該スペクトルによれば、3481cm-1、2930cm-1、1732cm-1、1678cm-1、1371cm-1、1183cm-1、1124cm-1、984cm-1、877cm-1及び761cm-1に特性ピークがある。
【0015】
本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形Iの赤外スペクトルを図2に示す。
【0016】
本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形Iの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムには、160.8±2℃の発熱ピークがある。
【0017】
本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形IのDSCサーモグラムを図3に示す。
【0018】
本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形Iの熱重量分析(TGA)サーモグラムを図4に示す。
【0019】
本発明の別の目的は、ホルムアミドを含有する溶媒系からテンベルメクチンBの結晶形Iを沈殿させる工程を含む、テンベルメクチンBの結晶形Iを調製するための方法を提供することである。
【0020】
好ましくは、ホルムアミドを含有する溶媒系は、低級アルコール、ホルムアミド及び水の組み合わせ、又は低級ケトン、ホルムアミド及び水の組み合わせであり、ここで、低級アルコールは、好ましくはメタノール、エタノール又はイソプロパノールからなる群より選択され、低級ケトンは、好ましくはアセトンである。より好ましくは、ホルムアミドを含有する溶媒系は、好ましくはエタノール、ホルムアミド及び水の組み合わせである。
【0021】
好ましくは、テンベルメクチンBの質量と、低級アルコールの体積と、ホルムアミドの体積と、水の体積と、の比は、1g:2ml:4~5ml:2mlであり、テンベルメクチンBの質量と、低級ケトンの体積と、ホルムアミドの体積と、水の体積と、の比は、1g:2ml:4~5ml:2mlである。
【0022】
好ましくは、本発明に係るテンベルメクチンBの結晶形Iを調製するための方法は、テンベルメクチンBをエタノールに溶かし、次いでホルムアミド、水を順にそこに加え、このようにして得られた混合物を撹拌し、結晶化し、テンベルメクチンBの結晶形Iを得る工程を含むが、ここで、より好ましくは、テンベルメクチンBの質量と、エタノールの体積と、ホルムアミドの体積と、水の体積と、の比は、1g:2ml:4~5ml:2mlである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、又はそれらの組み合わせをさらに含む、テンベルメクチンBの結晶形Iを含有する組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、寄生虫及び害虫を防除するための薬剤の調製における、テンベルメクチンBの結晶形I、又はテンベルメクチンBの結晶形Iを含有する組成物の使用を提供することである。防除されるべき対象は、作物、ヒト、動物、水産物等における寄生虫及び害虫を包含する。CN201610213645.2(ヒト又は動物における寄生虫を防除するためのテンベルメクチンの使用)、及びCN201610211064.5(農作物及び林業作物の害虫を防除するためのテンベルメクチンの使用)を参照することができる。
【0025】
本発明はまた、抗寄生虫性の調製物、及び害虫を防除するための調製物の調製における、テンベルメクチンBの結晶形Iを含有する原料の使用に関する。調製物は、注ぎ込み溶液、錠剤、注入及び乾燥懸濁液を包含する。
【0026】
一実施形態において、テンベルメクチンBをエタノールに溶かし、次いで水をそこに加え、撹拌及び結晶化によって、テンベルメクチンBの非晶質粉末を得る。別の実施形態において、テンベルメクチンBをエタノールに溶かし、次いでホルムアミド、水を順に加え、撹拌及び結晶化によって、テンベルメクチンBの結晶形Iを得る。さらに別の実施形態において、非晶質テンベルメクチンBは、安定性に関して、テンベルメクチンBの結晶形Iと比較され、テンベルメクチンBの結晶形Iの安定性は、非晶質テンベルメクチンBのそれよりもはるかに良好であることが分かる。
【0027】
本発明によって提供されるテンベルメクチンBの結晶形Iは、現在公知のテンベルメクチンBの唯一の結晶形であり、従来技術を超える重要なブレークスルーである。この結晶形の生成物は、より高い純度を有し、より均一な結晶を有し、その後の生成物の乾燥工程は、より制御可能である。また、この結晶形の生成物の安定性実験において、結晶変質現象は発生せず、劣化も見られない。
【0028】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形IのX線粉末回折パターンである。
【0029】
図2は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形Iの赤外吸収スペクトルである。
【0030】
図3は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形IのDSCサーモグラムである。
【0031】
図4は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形IのTGAサーモグラムである。
【0032】
図5は、比較例1で得られたテンベルメクチンBの非晶質粉末のX線粉末回折パターンである。
【0033】
〔実施形態〕
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、本発明を限定するものではない。
【0034】
本発明において使用されるテンベルメクチンB原料は、CN201410208660.9における実施例1に従って調製され、X線粉末回折試験により非晶質テンベルメクチンBであることが確認される。
【0035】
本発明において、X線粉末回折計及び試験条件は、以下の通りである。X線粉末回折計モデル:Rigaku D/max-2200 Cuターゲット;運転条件:走査速度、4°/min、走査ステップ幅、0.01°。
【0036】
本発明において、赤外分光光度計及び試験条件は、以下の通りである。赤外分光光度計モデル:BRWKER VECTOR 22;運転方法:KBrペレット法、走査範囲400~4000cm-1
【0037】
示差走査熱量計及び試験条件は、以下の通りである。示差走査熱量計モデル:PERKIN ELMER DSC8000;運転条件:加熱速度、10℃/min、温度範囲、20℃~280℃。
【0038】
熱重量分析器及び試験条件は、以下の通りである。熱重量分析器モデル:PerkinElmer TGA400;運転条件:加熱速度、10℃/min、温度範囲、30℃~300℃。
【0039】
本発明において、高速液体クロマトグラフ(HPLC)及び試験条件は、以下の通りである。高速液体クロマトグラフ、Agilent1100;クロマトグラフィーカラム:C18、4.6mm×250mm;移動相、アセトニトリル:0.1%リン酸水溶液=65:35(v:v);検出波長:240nm;流量、1.0ml/min;カラム温度:25℃。
【0040】
特に明記しない限り、本発明に含まれる溶解工程及び結晶化工程は、一般に撹拌を必要とし、これは、磁気撹拌、機械的撹拌等のような公知の方法で行うことができる。
【0041】
〔実施例1:テンベルメクチンBの結晶形Iの調製〕
テンベルメクチンB原料(HPLCによる純度98.2%)5.0gをエタノール10mlに溶かし、次いで濾過して透明な濾液を得た。ホルムアミド25ml及び水10mlをそこに加え、このようにして得られた混合物をマグネチックスターラー上に置き、200r/minで撹拌した。25℃で10時間撹拌した後、混合物を濾過して固形物を得、これを50℃で48時間減圧乾燥して、テンベルメクチンBの結晶形I(HPLCによる純度99.1%)を得た。得られた生成物を試験のためにサンプリングした。図1にX線粉末回折パターンを示し、図2に生成物の赤外吸収スペクトルを示し、図3に生成物のDSCサーモグラムを示し、図4に生成物のTGAサーモグラムを示した。
【0042】
〔実施例2:テンベルメクチンBの結晶形Iの調製〕
テンベルメクチンB原料(HPLCによる純度98.2%)5.0gをアセトン10mlに溶かし、次いで濾過して透明な濾液を得た。ホルムアミド20ml及び水10mlをそこに加え、このようにして得られた混合物をマグネチックスターラー上に置き、200r/minで撹拌した。25℃で10時間撹拌した後、混合物を濾過して固形物を得、これを50℃で48時間減圧乾燥して、テンベルメクチンBの結晶I(HPLCによる純度98.8%)を得た。得られた生成物を試験のためにサンプリングした。X線粉末回折パターンにより、生成物が結晶形Iであることを確認した。
【0043】
〔比較例1:テンベルメクチンBの非晶質粉末の調製〕
テンベルメクチンB原料(HPLCによる純度98.2%)5.0gをエタノール溶媒200mlに溶かし、次いで濾過して透明な濾液を得た。水800mlを20分かけてそこに滴下し、このようにして得られた混合物をマグネチックスターラー上に置き、200r/minで撹拌した。25℃で10時間撹拌した後、混合物を濾過して固形物を得、これを50℃で48時間減圧乾燥した。生成物を試験のためにサンプリングした。生成物のX線粉末回折パターンを図5に示し、試料がテンベルメクチンBの非晶質粉末(HPLCによる純度98.3%)であることを示した。
【0044】
〔比較例2:非晶質テンベルメクチンBの調製〕
テンベルメクチンB原料1.0g(HPLCによる純度98.2%)を酢酸エチル200mlに溶かし、次いでヘキセン100mlをそこに加えた。均一に混合した後、このようにして得られた混合物を濾過して透明な濾液を得、50℃で減圧濃縮し、乾燥させた。このようにして得られた固形物を50℃で48時間減圧乾燥した。得られた生成物を試験のためにサンプリングした。生成物のX線粉末回折パターンの試験結果は、生成物がテンベルメクチンBの非晶質粉末(HPLCによる純度97.6%)であることを示した。生成物のX線粉末回折パターンは、比較例1で得られた非晶質テンベルメクチンBのそれと一致した。
【0045】
〔安定性試験〕
実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形I10g、及び比較例1で得られた非晶質テンベルメクチンB10gを採取し、袋当たり1gずつ、二重層PE袋に入れた。袋を電熱的に密封し、次いでアルミニウム箔袋に入れ、これもまた電熱的に密封した。密封された箔袋を温度40±2℃、湿度75±5%の条件に置くと、非晶質テンベルメクチンB試料は最初の1ヶ月間で15%分解した一方、テンベルメクチンBの結晶形Iは6ヶ月間の貯蔵後も基本的に安定であった。データを以下の表2に示した。
【0046】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形IのX線粉末回折パターンである。
図2図2は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形Iの赤外吸収スペクトルである。
図3図3は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形IのDSCサーモグラムである。
図4図4は、実施例1で得られたテンベルメクチンBの結晶形IのTGAサーモグラムである。
図5図5は、比較例1で得られたテンベルメクチンBの非晶質粉末のX線粉末回折パターンである。
図1
図2
図3
図4
図5