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特許7211626無症候性脳虚血に関する血清学的アッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】無症候性脳虚血に関する血清学的アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230117BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20230117BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20230117BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230117BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20230117BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20230117BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/53 P
C12Q1/6813 Z
A61P9/10
A61P3/00
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
A61K45/00
A61K31/616
C07K14/47
C07K14/54
C07K14/475
C07K14/50
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019543299
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018018836
(87)【国際公開番号】W WO2018152537
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】62/461,161
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヒンマン,ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,グアンシ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-107116(JP,A)
【文献】国際公開第2007/124439(WO,A2)
【文献】特表2012-520463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0119269(US,A1)
【文献】国際公開第2015/038065(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/057160(WO,A2)
【文献】特表2010-505420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
C12Q 1/6813
A61P 1/00 -43/00
A61K 45/00
A61K 31/616
C07K 14/47 -14/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において脳血管状態を監視するための方法であって:
(a)被験体から得られた試料を、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程と;
(b)マーカーへの結合のレベルを測定する工程と;
(c)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程と;
を含み、前記状態スコアが1より有意に大きいことが、前記被験体に脳血管疾患のリスクがあることを示す、方法。
【請求項2】
マーカーが、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)またはC-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)である、請求項1の方法。
【請求項3】
マーカーが、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、およびIL-17Bからなる群より選択されるマーカーである、請求項1の方法。
【請求項4】
工程(b)の測定が、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも3つのマーカーに関して行われる、請求項1の方法。
【請求項5】
IL-6またはTNF-αから選択されるマーカーを測定する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
試料がCSF試料、尿試料、血液試料、または他の体液である、請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
被験体における無症候性脳卒中の診断を補助するための方法であって:
(a)被験体から得られた試料を、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程と;
(b)マーカーへの結合のレベルを測定する工程と;
(c)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程と;
を含み、前記状態スコアが1より有意に大きいことが、前記被験体に無症候性脳卒中のリスクがあることを示す、方法。
【請求項8】
被験体において無症候性脳卒中を監視するための方法であって:
(a)メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中の治療の前に前記被験体から得られた第1の試料を、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程と;
(b)メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中の治療の後に前記被験体から得られた第2の試料を、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程と;
(c)マーカーへの結合のレベルを測定する工程と;
(d)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程と;
を含み、前記第2の試料についての状態スコアが前記第1の試料についての状態スコアに比べて低下しないことが、前記治療が有効でないことを示す、方法。
【請求項9】
被験体に無症候性脳卒中ならびに/またはメタボリックシンドロームの治療が必要かどうかを決定するための方法であって:
(a)C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、およびIL-17Bからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定する工程;
を含み、マーカーのレベルが上昇していることが、前記被験体に前記治療が必要であることを示す、方法。
【請求項10】
少なくとも1つのマーカーが、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)および/またはC-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)を含む、請求項9の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのマーカーがIGFBP2を含む、請求項9の方法。
【請求項12】
工程(a)の測定が、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、およびIL-17Bからなる群より選択される少なくとも2つのマーカーに関して行われる、請求項9の方法。
【請求項13】
工程(a)の測定が、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)、C-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも3つのマーカーに関して行われる、請求項9の方法。
【請求項14】
IL-6またはTNF-αから選択されるマーカーを測定する工程をさらに含む、請求項9~13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
試料がCSF試料、尿試料、血液試料、または他の体液である、請求項9~14のいずれか一項の方法。
【請求項16】
前記試薬が抗体または核酸プローブである、請求項1~8のいずれか一項の方法。
【請求項17】
測定がイムノアッセイを含む、請求項1~16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
脳血管状態の監視または無症候性脳卒中の監視もしくは診断のためのキットであって、
CXCL5、CXCL6、IGFBP2、ITGB3、IL-17B、IL-17A、GDF-15、FGF-23およびCCL2/MCP-1からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの試薬
を含む、キット。
【請求項19】
IL-18、フィブリノーゲン、BDNF、ST2、SRAGE、MPOおよびLpPLA2からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを測定する工程をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項の方法。
【請求項20】
TNF-α、IL-18、IL-6、フィブリノーゲン、BDNF、ST2、SRAGE、MPOおよびLpPLA2からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬をさらに含む、請求項18のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年2月20日出願の米国仮特許出願第62/461,161号の恩典を請求し、該出願の全内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
肥満は、米国において、主要な公衆衛生上の問題である。成人の1/3より多くが肥満である。肥満は、メタボリックシンドロームの発展と緊密に関連しており、メタボリックシンドロームは、高血糖症、高脂血症、高血圧および低い高密度リポタンパク質を含む、多様な血管リスク要因を生じる。これらの要因は、慢性血管疾患、特に脳血管疾患の発展のリスクを増加させる。メタボリックシンドロームの患者は、脳において微小血管梗塞を発展させるリスクが6倍増加していることが研究によって示されており、こうした梗塞は主に脳白質を傷つけ、認知症、身体障害およびさらには死を導く。
【0003】
毎年数百万人の米国人が無症候性脳卒中を有し、これらの無症候性脳卒中の別の名称は、脳における微小血管梗塞である。無症候性脳卒中の間、血流の中断は、生命維持に必要な機能を制御しない脳の部分に損傷を与える。損傷は、MRIまたはCTスキャン上で検出されうるが、何らかの明らかな症状を生じるには小さすぎる。
【0004】
現在、臨床医は、臨床症状の開始後に脳MRIを利用して、脳微小血管疾患を診断する。このアプローチは非常に限定され、かつ持続性の脳損傷が入り込むよりもはるかに前に、より積極的な薬理学的およびライフスタイルの介入から潜在的に利益を得られうる、リスクがある患者を同定するよりも、むしろ、さらなる損傷を防止するためにしか有用でない。脳卒中の予測アッセイに関する現在の技術分野の標準は、身体障害、認知症および死を含む、長期的結果のリスクを増加させる、脳卒中の無症候型を同定するよりも、むしろ、急性脳卒中の時点で医療提供者に辿り着いた患者に基づく。さらに、これらの予測アッセイのいずれも、発見に基づく研究には基づかず、むしろ、必然的に限定され、かつ一般的にターゲットアレイではなく単一の分子プロファイルを用いる、症例対照方法論を用いている。
【0005】
脳卒中の個人リスクを予測しうる診断試験はなく、脳血管健康状態を実際に示しうるものもない。無症候性脳卒中のリスクがある患者およびこれに罹患している患者を同定し、時宜を得た療法介入を促進するための実用的でかつ利用可能な診断ツールに関する必要性がなおある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載するアッセイ試薬および方法は、脳微小血管疾患の特異的指標を提供することによって、これらの必要性およびその他を満たす。本明細書に記載するようなアッセイは、多くの専門分野の開業医が、無症候性脳虚血(SBI)の発展のリスクがある患者を同定するために非常に有用であろう。本明細書に記載するのは、無症候性脳虚血および/またはメタボリックシンドロームを有する被験体を治療する方法である。該方法は、2つ以上のSBIマーカーのレベルが上昇した際に、被験体にアスピリン療法、血圧療法、体重管理、ならびに/または食餌および運動のプログラムを施す工程を含む。
【0007】
本明細書に記載するのは、肥満、高脂血症、高血圧、およびグルコース不耐性を含む慢性血管リスク要因に曝露された脳内皮細胞によって産生される分子である。これらのストレス分子は脳内皮細胞によって産生され、血清中で検出可能である。これらの分子は、脳特異的内皮細胞損傷の診断指標として働き、無症候性脳卒中および損なわれた認知機能のMRI指標と相関する。
【0008】
本明細書の以下に提供するのは、このアッセイのためのマーカーのリストである。第1層の分子(CXCL5/6、IGFBP2、ITGB3、IL-17B)は好ましい分子であり、各々、無症候性脳血管傷害の独立のマーカーとして働きうる。第2層の分子(IL-17A、GDF-15、FGF-23、MCP-1)は、さらなるマーカーを提供する。これらの第2層のマーカーならびに他のマーカー(例えばTNFa、IL-18、IL-6、フィブリノーゲン、BDNF、ST2、SRAGE、MPO、およびLpPLA2)は、1またはそれより多い第1層のマーカーと組み合わせて使用されうる。これらのマーカーの1つまたはそれより多くと、第1層のマーカーの1つまたはそれより多くの組み合わせは、各々の任意の1つのアッセイ構成要素を超える、さらなる診断正確性を提供するであろう。マーカーのパネルは、長期予測値を提供し、多様な薬理学的またはライフスタイルの介入によって調節されうる。
【0009】
1つの実施形態において、方法、キット、またはアッセイは、被験体から得た試料における、IGFBP2、ITGB3、CXCL5、および/またはCXCL6のいずれか1つ、またはその組み合わせの検出および/または測定に関する。1つの実施形態において、測定すべきマーカーはCXCL5である。1つの実施形態において、測定すべきマーカーはCXCL6である。別の実施形態において、測定すべきマーカーはIGFBP2である。1つの実施形態において、測定すべきマーカーはITGB3である。典型的には、少なくとも2つまたは3つのマーカーを測定する。特定の実施形態において、CXCL5およびIGFBP2の両方を測定する。いくつかの実施形態において、CXCL5、CXCL6、およびIGFBP2を測定する。他の実施形態において、CXCL5、IGFBP2、およびITGB3を測定する。
【0010】
1つの実施形態において、マーカーは、表1または表2より選択される少なくとも1つのマーカーである。1つの実施形態において、表1、2、および/または3の少なくとも2つ以上のマーカーを組み合わせて用いる。マーカーの組み合わせの例には:CXCL5および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;CXCL6および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IGFBP2および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;ITGB3および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IL-17Bおよび表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IL-17Aおよび表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;GDF-15および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;FGF-23および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;CCL2/MCP-1および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IL-6および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;TNF-アルファおよび表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;CXCL5およびCXCL6および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;表1、2および3より選択される3つ以上のマーカーの任意の組み合わせ;表1、2および3の4、5、6、7、8、9、10、または11のマーカーの任意の組み合わせが含まれる。1つの実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1より選択される、2、3、4、または5のマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1からの少なくとも1つのマーカー、および表2からの少なくとも1つのマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1からの少なくとも1つのマーカー、および表3からの少なくとも1つのマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表2からの少なくとも1つのマーカー、および表3からの少なくとも1つのマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1、2、および3の各々からの少なくとも1つのマーカーである。
【0011】
上記の表4は、示すように、新規のものおよび以前報告されたものの両方のマーカーを列挙する。いくつかの実施形態において、表4に列挙するマーカーの2つ以上の組み合わせを、本明細書に記載するような方法またはアッセイで用いる。いくつかの実施形態において、表4に列挙するマーカーの3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16すべてのマーカーをアッセイにおいてともに用いる。場合によって、これらのマーカーのすべてまたはサブセットを、本明細書または別の箇所に記載されるような他のマーカーと組み合わせて用いることも可能である。
【0012】
本発明は、被験体において無症候性脳卒中を診断するため、被験体から得た試料における脳血管状態を監視するための方法、ならびに無症候性脳卒中、脳血管傷害、および/またはメタボリックシンドロームを予測し、治療し、かつ/または監視するための方法を提供する。
【0013】
典型的な実施形態において、方法は:
(a)被験体から得た試料を、表1または表2より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程;
(b)マーカーへの結合のレベルを測定する工程;
(c)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程;
(d)状態スコアが1より有意に大きい場合、メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中の治療に、被験体を差し向ける工程
を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、方法は、メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中に関して被験体を治療する工程をさらに含む。治療の例には、限定されるわけではないが、アスピリン療法、血圧療法、体重管理、ならびに/または食餌および運動のプログラムが含まれる。
【0015】
やはり提供するのは、被験体において無症候性脳卒中を監視する方法である。1つの実施形態において、方法は:
(a)被験体から得た試料を、表1または表2より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程;
(b)マーカーへの結合のレベルを測定する工程;
(c)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程;
(d)状態スコアが1より有意に大きい場合、メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中に関して被験体を治療する工程;
(e)工程(a)~(c)を繰り返す工程;ならびに
(f)状態スコアが1に向かう傾向がない場合、治療を調整する工程
を含む。
【0016】
やはり提供するのは、治療が必要な被験体において無症候性脳卒中および/またはメタボリックシンドロームを治療する方法である。1つの実施形態において、方法は:
(a)表1より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定する工程;
(b)マーカーのレベルが上昇している場合、アスピリン療法、血圧療法、体重管理、ならびに/または食餌および運動のプログラムを被験体に施す工程
を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのマーカーは、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)および/またはC-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのマーカーはIGFBP2を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)の測定は、表1のマーカーの少なくとも2つに関して行われる。他の実施形態において、工程(a)の測定は、表1および/または表2のマーカーの少なくとも3つに関して行われる。いくつかの実施形態において、方法は、表3のマーカーを測定する工程をさらに含む。
【0018】
典型的な実施形態において、試料は血清試料、CSF試料、尿試料、血液試料、または他の体液試料である。本明細書に記載する方法における使用のため、試料の代表的な例には、限定されるわけではないが、血液、血漿または血清、唾液、尿、脳脊髄液、母乳、子宮頸部分泌物、精液、および他の体液が含まれる。
【0019】
被験体は、典型的には哺乳動物被験体、例えばヒトである。いくつかの実施形態において、被験体は獣医学的被験体、例えばペットまたは他のコンパニオン動物である。
【0020】
いくつかの実施形態において、試薬は抗体である。他の実施形態において、試薬は、検出のため、ターゲットと特異的にハイブリダイズすることが可能である核酸プローブである。試薬は、場合によって、検出可能マーカーで標識されることも可能である。方法は、例えば、イムノアッセイ技術、例えば酵素イムノアッセイ、多重アッセイを用いて実行することも可能である。当業者に理解されるであろうように、他のアッセイ、例えばプローブハイブリダイゼーションを使用することも可能である。
【0021】
本発明は、本明細書に記載するような試薬、例えば本発明の1つまたはそれより多いマーカーに特異的に結合する抗体、および場合によって、本発明の試薬を含有する1つまたはそれより多い適切な容器のセットを含む、キットを提供する。試薬には、本発明の1つまたはそれより多いマーカーに特異的に結合する分子が含まれる。試薬の1つの例は、マーカーに特異的な抗体である。試薬には、場合によって、検出可能標識が含まれることも可能である。標識は、蛍光、発光、酵素、発色性または放射性であることも可能である。
【0022】
本発明のキットは、場合によって、アッセイ標準またはアッセイ標準セットを、他の試薬と別個にまたは一緒にのいずれかで含む。アッセイ標準は、健康な個体の代表である所定のマーカーに関する正常発現の参照レベルを提供することによって、正常対照として働きうる。
【0023】
キットには、タンパク質検出のため、抗体に加えて、代替遺伝子発現産物の検出のためのプローブが含まれることも可能である。キットには、場合によって緩衝剤が含まれる。
【0024】
1つの実施形態において、キットは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、および/またはITGB3の発現産物に特異的に結合する抗体またはプローブを含む。1つの実施形態において、キットは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、およびITGB3に特異的に結合する試薬を含む。いくつかの実施形態において、キットは、CXCL5およびIGFBP2に特異的に結合する試薬を含む。こうしたキットは、場合によって、CXCL6および/またはITGB3に特異的に結合する試薬をさらに含むことも可能である。典型的には、キットは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、および/またはITGB3の少なくとも2つに特異的に結合する抗体またはプローブを含む。いくつかの実施形態において、キットの抗体またはプローブは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、および/またはITGB3の少なくとも3つ、または場合によって4つすべてに特異的である。場合によって、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または最大10のさらなる発現産物に特異的に結合する抗体またはプローブをさらに含むことも可能である。さらなる発現産物は、本明細書の表2、3、または4より選択されることも可能である。場合によって、さらなる発現産物は、関心対象の他のマーカーであることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、CXCL5の重量調整血清レベルを示す棒グラフであり、上方制御された疾患内皮マーカーの1つがマウスにおいて分泌され、メタボリックシンドロームを有するマウスにおける脳由来の後眼窩血液排出において上方制御されていることを確認する。
図2図2は、CXCL5およびCXCL6データを示すスキャッタープロットである。
図3図3は、CXCL5およびCXCL6の血清レベル、ならびにTrails A成績の間に有意な相関が見られたことを示すスキャッタープロットである。
図4図4は、Trails A成績において、500pg/mLを超えるCXCL5血清レベルを有する被験体に対して、500pg/mL未満の被験体の間で、有意な相違がみられたことを示す棒グラフである。
図5図5は、Digit Span成績における、500pg/mLを超えるCXCL5血清レベルを有する被験体に対して、500pg/mL未満の被験体の間で、有意な相違がみられたことを示す棒グラフである。
図6図6は、白質病変の測定値であるFazekasスコアを示す棒グラフである。
図7図7は、健康な対照において、プレート間で観察される変動係数パーセント(CoV)を分析した、技術的検証の結果を示す。
図8図8は、被験体の間で観察される変動係数パーセント(CoV)を分析した、技術的検証の結果を示す。
図9図9は、弱く相関する、Fazekasスコア(FS)の関数としての血清ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを示すスキャッタープロットである。
図10図10は、IGFPB2血清レベルがFSスコアと有意に相関したことを示すスキャッタープロットである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、肥満、高脂血症、高血圧、およびグルコース不耐性を含む、慢性血管リスク要因に曝露された脳内皮細胞によって産生される分子の予期せぬ発見に基づく。これらのストレス分子は、脳内皮細胞によって産生され、血清中で検出可能である。本発明は、脳特異的内皮細胞損傷の診断指標として、これらの分子を用いるアッセイを提供し、かつこれらの分子は、無症候性脳卒中および損なわれた認知機能のMRI指標と相関する。本明細書記載のアッセイ試薬および方法は、脳微小血管疾患の特異的指標を提供する。これらの指標は、多くの専門分野の開業医が、そうでなければ未検出のままでありうる、無症候性脳虚血(SBI)の発展のリスクがある患者を同定することを可能にするために非常に有用である。該マーカーはまた、小血管虚血性疾患(SVID)および他の型の脳血管疾患(CVD)の検出および治療のための非侵襲性スクリーニングツールとしても用いられうる。
【0027】
定義
本出願で用いるすべての科学的および技術的用語は、別に明記しない限り、当該技術分野で一般的に用いる意味を有する。本出願で用いた際、以下の単語または句は明記する意味を有する。
【0028】
本明細書で用いた際、「対照」試料は、正常で健康な対照被験体から得られるであろうようなそれぞれのマーカーの正常測定値の代表である試料、または比較のために用いられるマーカーのベースライン量を意味する。典型的には、ベースラインは、同じ被験体または患者から得た測定値であろう。試料は、試験のために用いる実際の試料、または対応するマーカーの既知の正常測定値に基づく参照レベルもしくは範囲であることも可能である。
【0029】
本明細書で用いた際、用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖型のいずれかのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーの配列を指し、別に限定しない限り、天然存在ヌクレオチドに類似の方式で、核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む。
【0030】
本明細書で用いた際、「ハイブリダイズする(hybridizes)」、「ハイブリダイズすること(hybridizing)」、および「ハイブリダイゼーション(hybridization)」は、オリゴヌクレオチドが、標準条件下で、ターゲットDNA分子と非共有相互作用を形成することを意味する。標準ハイブリダイズ条件は、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーが、ターゲットDNA分子にハイブリダイズすることを可能にする条件である。こうした条件は、当業者に周知の技術を用いて、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーおよびターゲットDNA分子に関して、容易に決定される。ターゲットポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、一般的に、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブに相補的な配列である。ハイブリダイズオリゴヌクレオチドは、非共有相互作用の形成に干渉しない、非ハイブリダイズヌクレオチドを含有することも可能である。オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブの非ハイブリダイズヌクレオチドは、ハイブリダイズオリゴヌクレオチドの末端に、またはハイブリダイズオリゴヌクレオチド内部に位置していることも可能である。したがって、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、標準ハイブリダイゼーション条件下で、ハイブリダイゼーションが起こる限り、ターゲット配列のすべてのヌクレオチドに相補的である必要はない。
【0031】
本明細書で用いた際、「有意な相違」は、当業者によって信頼可能と見なされる方式で検出されうる相違、例えば統計的に有意な相違、またはその状況下で、信頼性の妥当なレベルで検出されうる十分な度合いである相違を意味する。本明細書で用いた際、「a」または「an」は、別に明らかに示されない限り、少なくとも1つを意味する。
【0032】
本明細書で用いた際、状態または疾患を「防止する」またはこれら「に対して防御する」は、状態または疾患の開始または進行を妨害するか、減少させるかまたは遅延させることを意味する。
【0033】
本明細書で用いた際、「a」または「an」は、別に明らかに示されない限り、少なくとも1つを意味する。
【0034】
マーカー
本明細書に記載するのは、肥満、高脂血症、高血圧、およびグルコース不耐性を含む慢性血管リスク要因に曝露された脳内皮細胞によって産生される分子である。これらのストレス分子は、脳内皮細胞によって産生され、血清中で検出可能である。これらの分子は、脳特異的内皮細胞損傷の診断指標として働き、無症候性脳卒中および損なわれた認知機能のMRI指標と相関する。
【0035】
以下に提供するのは、このアッセイのためのマーカーのリストである。第1層の分子(表1)は、本発明者らの最強の候補分子であり、各々は、無症候性脳血管傷害の独立のマーカーとして働きうる。第2層の分子(表2)はさらなるマーカーを提供する。これらのマーカーの組み合わせは、各々の任意の1つのアッセイ構成要素を超える、さらなる診断正確性を提供するであろう。マーカーのパネルは、長期予測値を提供し、多様な薬理学的またはライフスタイルの介入によって調節されうる。心臓血管疾患(CVD)の以前から知られるマーカー、例えば表3に列挙するものを、表1および2に列挙する1つまたはそれより多いマーカーと組み合わせて用いることも可能である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0036】
1つの実施形態において、マーカーは、表1または表2より選択される少なくとも1つのマーカーである。1つの実施形態において、表1、2、および/または3の少なくとも2つ以上のマーカーを組み合わせて用いる。マーカーの組み合わせの例には:CXCL5および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;CXCL6および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IGFBP2および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;ITGB3および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IL-17Bおよび表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IL-17Aおよび表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;GDF-15および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;FGF-23および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;CCL2/MCP-1および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;IL-6および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;TNF-アルファおよび表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;CXCL5およびCXCL6および表1、2、または3より選択されるさらなるマーカー;表1、2および3より選択される3つ以上のマーカーの任意の組み合わせ;表1、2および3の4、5、6、7、8、9、10、または11のマーカーの任意の組み合わせが含まれる。1つの実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1より選択される、2、3、4、または5のマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1からの少なくとも1つのマーカー、および表2からの少なくとも1つのマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1からの少なくとも1つのマーカー、および表3からの少なくとも1つのマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表2からの少なくとも1つのマーカー、および表3からの少なくとも1つのマーカーである。別の実施形態において、マーカーの組み合わせは、表1、2、および3の各々からの少なくとも1つのマーカーである。
【0037】
C-X-Cモチーフケモカインリガンド5(CXCL5)は、ケモカインのCXCサブファミリーのメンバーである。CXCL5はまた、小分子誘導性サイトカインサブファミリーB(Cys-X-Cys)、メンバー5(SCYB5)およびENA-78としても知られる。白血球を補充し、かつ活性化するケモカインは、機能(炎症性または恒常性)によって、または構造によって分類される。このタンパク質は、G-タンパク質共役型受容体ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2に結合して、好中球を補充し、血管新生を促進し、かつ結合組織をリモデリングすると提唱される。このタンパク質は、癌細胞増殖、遊走、および侵襲に役割を果たすと考えられる。
【0038】
C-X-Cモチーフケモカインリガンド6(CXCL6)は、ケモカインのCXCサブファミリーの別のメンバーである。CXCL6はまた、顆粒球走化性タンパク質2(GCP2)、CKA-3、およびSCYB6としても知られる。さらに、好中球顆粒球に関して走化性であり(その受容体、CXCR1およびCXCR2の結合および活性化を通じてシグナル伝達し)、かつ血管新生性であるため、グラム陽性およびグラム陰性細菌に対して強い抗細菌活性を有する(CXCL5およびCXCL7に比較した際、90倍より高い)。
【0039】
インスリン様増殖因子結合タンパク質2(IGFBP2)は、IGF仲介性増殖および発生速度を阻害する。IGF結合タンパク質は、IGFの半減期を延長させ、細胞培養に対するIGFの増殖促進効果を阻害するかまたは刺激するかいずれかであることが示されてきている。これらは、細胞表面受容体とIGFの相互作用を改変する。
【0040】
インテグリンベータ-3(ITGB3)タンパク質産物は、インテグリンベータ鎖ベータ3である。インテグリンは、アルファ鎖およびベータ鎖で構成される膜内在型細胞表面タンパク質である。所定の鎖は、多数のパートナーと組み合わせ可能であり、異なるインテグリンを生じる。インテグリンベータ3は、血小板において、アルファIIb鎖とともに見出される。インテグリンは、細胞接着ならびに細胞表面仲介性シグナル伝達に関与することが知られる。
【0041】
1つの実施形態において、方法、キット、またはアッセイは、被験体から得た試料におけるIGFBP2、ITBG3、CXCL5、および/またはCXCL6の検出および/または測定に関する。
【表4】
【0042】
上記の表4は、示すように、新規のものおよび以前報告されたものの両方のマーカーを列挙する。いくつかの実施形態において、表4に列挙するマーカーの2つ以上の組み合わせを、本明細書に記載するような方法またはアッセイで用いる。いくつかの実施形態において、表4に列挙するマーカーの3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16すべてのマーカーをアッセイにおいてともに用いる。場合によって、これらのマーカーのすべてまたはサブセットを、本明細書または別の箇所に記載されるような他のマーカーと組み合わせて用いることも可能である。
【0043】
発明の方法
本明細書に記載するのは、無症候性脳虚血および/またはメタボリックシンドロームを有する被験体を治療する方法である。該方法は、2つ以上のSBIマーカーのレベルが上昇した際に、被験体にアスピリン療法、血圧療法、血糖管理、コレステロール管理、体重管理、ならびに/または食餌および運動のプログラムを施す工程を含む。
【0044】
本発明は、被験体における無症候性脳卒中を診断するため、被験体から得た試料において脳血管状態を監視するための方法、ならびに無症候性脳卒中、脳血管傷害、認知障害、および/またはメタボリックシンドロームを予測し、治療し、かつ/または監視するための方法を提供する。
【0045】
典型的な実施形態において、方法は:
(a)被験体から得た試料を、表1または表2より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程;
(b)マーカーへの結合のレベルを測定する工程;
(c)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程;
(d)状態スコアが1より有意に大きい場合、メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中の治療に、被験体を差し向ける工程
を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、方法は、メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中に関して、被験体を治療する工程をさらに含む。治療の例には、限定されるわけではないが、アスピリン療法、血圧療法、体重管理、ならびに/または食餌および運動のプログラムが含まれる。
【0047】
やはり提供するのは、被験体において無症候性脳卒中を監視する方法である。1つの実施形態において、該方法は:
(a)被験体から得た試料を、表1または表2より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する試薬と接触させる工程;
(b)マーカーへの結合のレベルを測定する工程;
(c)正常対照に比較したマーカーの測定量を反映する状態スコアを割り当てる工程;
(d)状態スコアが1より有意に大きい場合、メタボリックシンドロームおよび/または脳卒中に関して被験体を治療する工程;
(e)工程(a)~(c)を繰り返す工程;ならびに
(f)状態スコアが1に向かう傾向がない場合、治療を調整する工程
を含む。
【0048】
やはり提供するのは、治療が必要な被験体において無症候性脳卒中および/またはメタボリックシンドロームを治療する方法である。1つの実施形態において、該方法は:
(a)表1より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定する工程;
(b)マーカーのレベルが上昇している場合、アスピリン療法、血圧療法、体重管理、ならびに/または食餌および運動のプログラムを被験体に施す工程
を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのマーカーは、C-X-Cモチーフケモカイン5(CXCL5)および/またはC-X-Cモチーフケモカイン6(CXCL6)を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのマーカーはIGFBP2を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)の測定は、表1のマーカーの少なくとも2つに関して行われる。他の実施形態において、工程(a)の測定は、表1および/または表2のマーカーの少なくとも3つに関して行われる。いくつかの実施形態において、方法は、表3のマーカーを測定する工程をさらに含む。
【0050】
典型的な実施形態において、試料はCSF試料、尿試料、血液試料、または他の体液である。本明細書に記載する方法における使用のため、試料の代表的な例には、限定されるわけではないが、血液、血漿または血清、唾液、尿、脳脊髄液、母乳、子宮頸部分泌物、精液、および他の体液が含まれる。
【0051】
被験体は、典型的には哺乳動物被験体、例えばヒトである。いくつかの実施形態において、被験体は獣医学的被験体、例えばペットまたは他のコンパニオン動物である。
【0052】
方法は、例えば、イムノアッセイ技術、例えば酵素イムノアッセイを用いて実行することも可能である。当業者に理解されるであろうように、他のアッセイを使用することも可能である。
【0053】
キットおよびアッセイ標準
本発明は、本明細書に記載するような試薬、例えば本発明の1つまたはそれより多いマーカーに特異的に結合する抗体、および場合によって、本発明の試薬を含有する1つまたはそれより多い適切な容器のセットを含む、キットを提供する。試薬には、本発明の1つまたはそれより多いマーカーに特異的に結合する分子が含まれる。試薬の1つの例は、マーカーに特異的な抗体である。試薬には、場合によって、検出可能標識が含まれることも可能である。標識は、蛍光、発光、酵素、発色性または放射性であることも可能である。
【0054】
本発明のキットは、場合によって、アッセイ標準またはアッセイ標準セットを、他の試薬と別個にまたは一緒にのいずれかで含む。アッセイ標準は、健康な個体の代表である所定のマーカーに関する正常発現の参照レベルを提供することによって、正常対照として働きうる。
【0055】
キットには、タンパク質検出のため、抗体に加えて、代替遺伝子発現産物の検出のためのプローブが含まれることも可能である。キットには、場合によって緩衝剤が含まれる。
【0056】
1つの実施形態において、キットは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、および/またはITGB3の発現産物に特異的に結合する抗体またはプローブを含む。典型的には、キットは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、および/またはITGB3の少なくとも2つに特異的に結合する抗体またはプローブを含む。いくつかの実施形態において、キットの抗体またはプローブは、CXCL5、CXCL6、IGFBP2、および/またはITGB3の少なくとも3つ、または場合によって4つすべてに特異的である。場合によって、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または最大10のさらなる発現産物に特異的に結合する抗体またはプローブをさらに含むことも可能である。さらなる発現産物は、本明細書の表2、3、または4より選択されることも可能である。場合によって、さらなる発現産物は、関心対象の他のマーカーであることも可能である。
【0057】
実施例
以下の例は、本発明を例示し、かつ本発明を実行しかつ用いる際に、一般の当業者を補助するために提示される。例は、いかなる意味でも、本発明の範囲を別に制限するために意図されない。
【0058】
実施例1:メタボリックシンドロームのマウスにおける、微小血管複雑性および内皮細胞遺伝子発現の劇的な改変
本実施例は、脳微小血管系に対するメタボリックシンドロームの影響を記載し、これらの変化を制御する分子機構を明らかにする。マウスにおけるこのシンドロームは、肥満、コレステロール上昇、および損なわれたグルコース耐性によって特徴付けられる、ヒト状態を強く模倣する。症状のこの集まりは、脳卒中(6倍)、特に無症候性脳卒中のリスクを非常に増加させる。無症候性脳卒中は、脳白質を損傷し、かつ身体障害、認知症および死を導く。
【0059】
方法
トランスジェニックマウス(Tie2-Cre:flox-stop tdtomatoプラスflox-RiboTAG)に、脂肪食餌から60%kCalを給餌して、メタボリックシンドロームを誘導した。被験体に高脂肪食餌を2ヶ月齢で12週間給餌し、そして脂肪食餌から10%kCalを対照として用いた。Tie2-Cre:flox-stop tdtomatoマウスの内皮細胞におけるレポーター遺伝子発現によって、白質中の脳血管系の体積を評価した。Ribotagリボソーム免疫沈降技術(Tie2-Cre:flox-RiboTAG)を用いて、脳内皮細胞からトランスクリプトームを単離した。リボソーム会合トランスクリプトーム単離後、RNA-seqを行った。
【0060】
結果
食餌誘導性肥満は、以下の表に示すように、メタボリックシンドローム血清学的プロファイルを生成する。
【表5】
【0061】
メタボリックシンドロームは、大血管(30±2.2%、P<0.04)および微小血管(23±3.7%、P<0.01)の両方で、白質血管体積の有意な減少を生じる。白質内皮細胞の転写プロファイリングは、正常マウスおよびメタボリックシンドロームのマウスの間の発現プロファイルの相違を明らかにする。内皮細胞遺伝子発現の有意な変化(実施例2を参照されたい)は、血管新生受容体リガンドにおける変化を通じて、メタボリックシンドロームの白質における血管体積の減少と関連する。
【0062】
メタボリックシンドロームは、白質における大血管および微小血管の体積を減少させ、かつ内皮細胞遺伝子発現を有意に変化させる。これらの知見は、メタボリックシンドロームの患者のための、脳卒中を含む脳微小血管合併症を防止する分子療法アプローチの開発を補助する。
【0063】
実施例2:脳内皮血管損傷のマーカーに関するイムノアッセイ
本実施例は、実施例1で記載する「メタボリックシンドローム」を生成する肥満のマウスモデルを用いる。この肥満のマウスモデルとともに、新規トランスジェニックマウス技術を用いて、本発明者らは肥満およびこれらの一般的な代謝障害のセッティングで起こる初期脳血管損傷の一連の分子指標を同定している。これらの遺伝子のいくつかは、血中に分泌されるタンパク質をコードし、したがって、初期脳血管損傷を示すために用いられうる。
【0064】
これは、脳内皮血管損傷を特徴付ける、本明細書記載の内皮データセットにおける分泌分子に関するマルチスポット酵素イムノアッセイ(EIA)試験の発展を導いた。
【0065】
方法
患者血漿の試料を連続希釈して、マイクロタイタープレートの個々のウェル内にピペッティングした。5~10の本発明者らのユニークな肥満誘導性脳内皮遺伝子に対して生成した新規抗体を、第一に、蛍光指標で標識する。重複しない蛍光指標を含む最大4つの異なる抗体を、各患者試料ウェルとインキュベーションする。プレートを繰り返し洗浄して、非特異的結合を取り除き、次いで、マルチチャネル蛍光分光光度計でスキャンし、各ウェルに関する各チャネルの蛍光強度を記録する。プロファイル中のすべての分子が測定されるまで、このアプローチを繰り返す。累積蛍光強度をすべてのターゲットに渡って平均して、規範的値に比較する。
【0066】
以下は、このアッセイで使用可能なマーカーのリストであり、内部対照として働く、いくつかの以前同定された分子が含まれる。表1の分子が好ましい分子であり、各々が、無症候性脳血管傷害の独立のマーカーとして働きうる(例えば単独で用いられる)。CXCL5およびCXCL6は、実験研究において、独立の予測能が示されてきている。表2の分子には、本明細書に記載するような無症候性脳卒中の指標として使用するため、血清中で検出可能な、疾患内皮および脳血管傷害と関連するさらなるマーカーが含まれる。表3の分子には、本明細書に記載するような無症候性脳卒中の指標として使用するため、血清中で検出可能な疾患内皮および脳血管傷害と関連するさらなる既知のマーカーが含まれる。これらのマーカーの組み合わせの使用は、単一アッセイ試薬の使用を超える、さらなる診断正確性を提供するであろう。マーカーのパネルは、長期予測値を提供し、多様な薬理学的またはライフスタイルの介入によって調節されうる。
【表6】
【表7】
【表8】
【0067】
実施例3:脳内皮血管損傷のマーカーの開発
本実施例は、小血管脳血管疾患(SVD)の新規脳内皮バイオマーカーの同定につながる研究を記載する。肥満、高血圧、高脂血症、および糖尿病は、すべて、白質損傷の有病率を増加させ、相乗的に、脳微小血管系内のシグナル伝達の改変に寄与する。しかし、これらの慢性状態によって、脳微小血管系において活性化される正確な分子経路は未知のままである。この知識のギャップに取り組むため、新規翻訳アプローチを利用して、肥満/メタボリックシンドロームのマウスモデルにおいて、白質内の脳内皮の細胞特異的転写プロファイルを同定した。主要リボソームタンパク質が赤血球凝集素抗原で遺伝子修飾されている、RiboTAGトランスジェニック技術を用いて、細胞特異的Cre-loxPトランスジェニックモデリングと組み合わせると、脳内皮の転写プロファイルを単離することが可能である。この非バイアスアプローチは、慢性血管状態、例えばすべてSVDと直接関連する、肥満、グルコース不耐性、および高脂血症の最初の直接のおよび単離された脳血管シグネチャーを同定する。新規SVDバイオマーカーを合理的に同定するため、このモデリングアプローチを用いて、本実施例は、細胞表面、および血清中で検出されうる分泌分子を含む、肥満誘導性脳血管シグネチャーを同定する。
【0068】
疾患脳内皮内で上方制御される主要な遺伝子の経路分析によって、血栓症(ITGB3)、アルツハイマー病(IGFBP2)および炎症シグナル伝達(CXCL5)に対する直接の関連が明らかになり、それによって、慢性血管リスクとアルツハイマーおよび血管性認知症の直接の関連が明らかになる。上方制御される遺伝子(十分に低い偽発見率を有する、またはFDR<0.1)を選抜して、血流内に脱落する、分泌されたかまたは細胞表面分子である可能性が高いものを同定した(表1を参照されたい)。表5は、mRNAレベルによって検出されるような、上方制御される遺伝子を列挙する。LogFCは、mRNA検出における倍変化相違のlog変換を指す。このリストから、分泌される可能性がある遺伝子およびヒト血清中で以前検出されている遺伝子を選択した。
【表9】
【0069】
本発明者らは、上方制御される疾患内皮マーカーの1つが、マウスにおいて分泌され、かつメタボリックシンドロームのマウスにおいて、脳由来の後眼窩血液排出中で上方制御されていることを確認した(図1)。したがって、これらのデータは、脳内皮が、血流中で測定可能な疾患シグネチャーを生じうることを立証する。
【0070】
実施例4:ヒトにおける脳内皮血管損傷のマーカーの検出
この脳内皮分子シグネチャーの適切性を確認するため、本発明者らは、Freesurferを用いて、白質低信号(hypointensity)の体積によって指標化されるような、多様な度合いの白質疾患を有するUCSF MAC(記憶および加齢センター)の15人の認知的に正常な被験体におけるCXCL5およびCXCL6(マウスCXCL5に対するヒトオルソログ)のレベルを決定した。少なくとも軽度のSVDを持つ被験体において、白質低信号体積および本発明者らのシグナル伝達因子の間の相関は、本発明者らの少ない試料においてさえ、有意性に近付いた(CXCL5に関するスピアマン・ロー=0.56;CXCL6=0.57;p<0.10)。CXCL5およびCXCL6データを示すスキャッタープロットを図2に示す。これらのデータは、内皮細胞レベルで、脳微小血管疾患を反映するヒト・バイオマーカーとして、マウスにおいて最近発見されたこれらの脳内皮分子を用いることの、変換の妥当性を立証する。
【0071】
CXCL5およびCXCL6は、CXC受容体2に結合するケモカインリガンドのELRファミリーの2つである。これらの分子は、傷害部位への好中球ホーミングに役割を有することが知られており、したがって、傷害部位で、細胞によって上方制御される。近年、どちらの分子も、アテローム性動脈硬化症およびSVDリスク要因の病因形成および進行に関連付けられているが、正確な機構は未知であり、好中球遊走の制御よりも免疫調節の役割を伴う可能性が高い。ケモカインのCXCファミリー、特にCXCL5は、血管新生促進特性を有することが示されてきており、したがって、血管新生のためのユニークな脳SVDシグナルを提供しうる。
【0072】
インテグリンアルファ-V/ベータ-3(ITGB3)は多機能内皮受容体であり、その主な機能は可溶性フィブリノーゲンに結合することであり、それによって、血小板を活性化して、血栓症を生じる。フィブリノーゲンレベルの増加は、すでに白質病巣および血管性認知症に関連すると確立されてきている。しかし、血清フィブリノーゲンレベルは非常に多様な刺激によって修飾可能であり、かつ以前同定されたORが低い(<2)ため、フィブリノーゲンの潜在的なリガンドとしての脳内皮ITGB3の同定は、血清フィブリノーゲンレベルよりも高い感受性を持つバイオマーカーを生じる可能性が高い。
【0073】
インスリン様増殖因子結合タンパク質-2(IGF-BP2)は、血清中で他のタンパク質に複合体化し、インスリン様増殖因子(IGF)の半減期を調節するよう機能する、ペプチドホルモンである。IGF-BP2はまた、血管新生促進特性も有しうる。IGF-BP2は、以前、アルツハイマー病における皮質萎縮および年齢特異的認知減退に関連付けられてきている。白質病変に対するその関係は、研究されてきていない。
【0074】
本発明者らは、最近、フラミンガム心臓研究から3374人の脳卒中および認知症を持たない個体のほぼ12年に渡る長期追跡調査を行い、偶発的脳卒中およびSVDに対するGDF-15血清レベルの影響を評価した。伝統的な心臓血管リスク要因、例えばB型ナトリウム利尿ペプチド、高感度C反応性タンパク質、および尿アルブミンレベルに関して調整した後、より高いGDF-15レベルは、視覚的記憶試験のより悪い成績(GDF-15に関して、Q4対Q1のβ=-0.62、p=0.009)およびより大きいlog変換白質高信号体積(Q4対Q1のβ=0.19、p=0.01)と横断的に関連した。この証拠によって、GDF-15は、初期SVDの優れたマーカーでありうるが、この仮説を試験する長期研究は実行されてきていない。
【0075】
循環炎症性因子:本発明者らの研究室および他の研究室の以前の研究は、C反応性タンパク質(CRP)およびインターロイキン-6(il-6)のようなよく研究されたサイトカインがSVDに関連する証拠を提供する。
【0076】
本発明者らは、ここで、内皮機能のより直接的なマーカーとして働きうるサイトカインおよびケモカインを調べている。単球化学誘引タンパク質(CCL-2;MCP-1)は、例えば、単球の、管腔から、泡沫細胞になる内皮下空間への血管外漏出を引き起こし、動脈硬化性プラーク形成につながる脂肪線条形成を開始することによって、血管疾患の発展に非常に重要な役割を果たしうる。本発明者らは、長期3T構造的MRIを有する、131の機能的に損なわれていない(intact)より高齢の被験体(平均年齢=72.7歳)を調べた。Mesoscale vplexケモカインパネルを用いて、血漿中のMCP-1を測定した。本発明者らは、白質完全性の一般的なマーカーとして、脳梁の総体積を用い、本発明者らの一次依存変数は、脳梁体積変化の年率であった。年齢および頭蓋内体積に関する多変数回帰対照を用いて、本発明者らは、より高いレベルのMCP-1が、長期間に渡る脳梁体積のより急勾配の低下に関連することを見出した。これらのデータは、脳血管健康状態における内皮特異的炎症性分子のありうる役割を裏付ける。
【0077】
本発明者らは、初期SVDに対する感受性を改善し、かつSVD進行の予測因子として働きうる、脳内皮機能不全のいくつかの重要なプロテオミクスマーカーを同定している。
【0078】
実施例5:認知障害および小血管虚血性疾患とマーカーの関連
本実施例は、表1に列挙したマーカーと認知障害の関連を裏付け、かつまた、無症候性脳卒中の画像証拠と、マーカーIGFBP2の関連を裏付ける。これらの初期傷害血清指標は、小血管虚血性疾患(SVID)とも称される、脳小血管疾患(CSVD)の画像指標と相関する。
【0079】
以前の研究から、遺産である血清試料を得て、血管疾患の比較的低い負荷を有する65人の被験体の小さいサブコホートを選択した。トレイル作成試験に関するTrails A成績、視覚的注意力の神経心理学的試験、および短期間記憶評価ツールであるDigit Span成績を用いて、被験体を認知的に表現型決定した。
【0080】
CXCL5およびCXCL6の血清レベル、ならびにTrails A成績の間には有意な相関がみられた(図3)。Trails A成績(図4)およびDigit Span成績(図5)の両方において、500pg/mLを超えるCXCL5血清レベルを有する被験体に対して、500pg/mL未満の被験体の間で、有意な相違もまた見られた。
【0081】
最近の脳卒中患者の研究には、6ヶ月の期間に渡って救急科を受診した、急性神経学的症状(最近24時間以内)を伴う、18歳を超える、同意した患者を含めた。修飾Fazekasスコアリングを用いて、軸方向T2強調液体減弱反転回復(FLAIR)画像上で、白質高信号を測定した。最初に登録された202人の被験体のうち、168人のみでMRIを撮影した。これらのうち(MRI撮影)、100人が、急性虚血性脳卒中を検出する拡散強調画像に関して陰性であった。これらの100人の被験体のうち、42人が脳卒中/TIAの画像化上の証拠を示す一方、58人は脳卒中の証拠を示さなかった。図6は、白質病変の測定値であるFazekasスコアを示す棒グラフである。
【0082】
図7および8は、健康な対照(図7)におけるプレート間および被験体間(図8)で観察される変動係数パーセント(CoV)を分析する、技術的検証の結果を示す。これらの図は、試料間変動のレベルを示す。
【0083】
図9は、Fazekasスコア(FS)の関数としての血清ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを示し、これらは弱く相関した。図10に示すように、IGFPB2血清レベルは、FSスコアと有意に相関した。
【0084】
これらの結果は、血清マーカー、例えばCXCL5/6およびIGFBP2を用いて、無症候性脳卒中を検出可能であることを確認する。これらのアッセイは、早期治療を可能にして、脳卒中および内皮疾患の他の有害な結果のリスクを減少させうる。
【0085】
本出願全体で、多様な刊行物を引用する。これらの刊行物の開示は、その全体が、本発明が属する技術分野の最新技術をより詳細に記載するために、本出願に援用される。
【0086】
当業者は、前述の説明に開示される概念および特定の実施形態が、本発明の同じ目的を実行するために、修飾するかまたは他の実施形態を設計するための基礎として容易に利用されうることを認識するであろう。当業者はまた、こうした同等の実施形態が、付随する請求項に示すような、本発明の精神および範囲から逸脱することがないことも認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10