(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ニロチニブの医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230117BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K47/38
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/10
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/18
(21)【出願番号】P 2021548238
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020018564
(87)【国際公開番号】W WO2020172120
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】201941006393
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521362966
【氏名又は名称】スレイバック・ファーマ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SLAYBACK PHARMA LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,パラス・ピー
(72)【発明者】
【氏名】シン,アジャイ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】プリヤ,キールティ
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,ギリーシュ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】コレー,ギリシュ・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】バパツ,ハニミ・レディ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517040(JP,A)
【文献】特表2017-523205(JP,A)
【文献】特開2018-172393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含む医薬組成物であって、
前記非晶質固体分散体がさらに、薬学的に許容し得る担体を含み、
絶食状態での投与後のヒト対象におけるニロチニブの少なくとも1つの薬物動態パラメータが、摂食状態での投与後のヒト対象におけるニロチニブの薬物動態パラメータの約80%~約125%であり、前記少なくとも1つの薬物動態パラメータが、AUC
0-∞
、C
max
、AUC
0-t
、又はそれらの組み合わせから選択され、
前記医薬組成物が、摂食条件下及び絶食条件下参照製剤と生物学的に同等であり、
そして
前記薬学的に許容し得る担体がヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMC-AS)である、
医薬組成物。
【請求項2】
前記ニロチニブタルトラート対前記薬学的に許容し得る担体の重量比が約1:1~約1:6である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記非晶質固体分散体が、少なくとも約80%が非晶質形態である
ニロチニブタルトラートを含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記非晶質固体分散体が、少なくとも約90%が非晶質形態である
ニロチニブタルトラートを含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記非晶質固体分散体が、図3に示されるX線回折プロファイルによって特徴付けられる、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
絶食状態において
前記参照製剤と比較した場合に、増強されたバイオアベイラビリティを提供する、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ニロチニブタルトラート 約25mg~約200mgを含む、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
錠剤、カプセル、カプレット、ビーズ、顆粒又は経口懸濁液の形態である、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、可塑剤、可溶化剤、安定剤、酸化防止剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
(a)顆粒の形態
の前記ニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体、(b)少なくとも1種の顆粒内賦形剤、及び(c)少なくとも1種の顆粒外賦形剤を含む
、
錠剤の形態である、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
40℃/75%RH又は25℃/60%RHで少なくとも6ヶ月間安定なままである、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物中の任意の未知の不純物のレベルが、HPLCにより測定して約0.2%(w/w)未満である、請求項
1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月18日に出願されたインド特許出願第IN201941006393号に対する外国優先権を主張するものであり、その全体が参照により組み入れられる。
【0002】
ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体、並びにその医薬組成物が提供され、本発明の組成物は、参照製剤と比較して、絶食状態において増強されたバイオアベイラビリティを示す。好ましくは、本医薬組成物は、食物に関係なく投与され得るように、食物効果を排除又は低減する。組成物は、好ましくは、カプセルに充填するか、又は錠剤に圧縮することができる顆粒材料を含み得る。
【0003】
本出願はまた、薬学的有効量の医薬組成物を投与することによって、ヒト対象における慢性骨髄性白血病及び消化管間質腫瘍などの増殖障害を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
ニロチニブは、化学的には4-メチル-N-[3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-ベンズアミドとして記載され、タンパク質チロシンキナーゼ(TK)の阻害剤であり、特に、Bcr-Ablチロシンキナーゼの選択的阻害剤である。ニロチニブによって処置され得る状態の例としては、慢性骨髄性白血病及び消化管間質腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
ニロチニブは、生物医薬分類システム(BCS)クラスIV化合物として特徴付けられ、これは、ニロチニブが低/中程度の水溶性及び低い透過性を有することを意味する。ニロチニブの25℃における水溶液への溶解性は、pHの上昇と共に強く低下し、pH4.5以上では実質的に不溶性である。pHが1.0を超える環境下でのニロチニブの溶解性のこの低下は、ニロチニブの吸収の低下をもたらす。ニロチニブ塩酸塩は難水溶性であるため、良好なバイオアベイラビリティを示す経口剤形を製剤化し、送達することは困難であると思われる。
【0006】
ニロチニブは、現在、TASIGNA(登録商標)の商品名で市販されている。TASIGNA(登録商標)は、ニロチニブ 50mg、150mg及び200mgに相当するニロチニブ塩酸塩一水和物を含有する硬ゼラチンカプセルの形態で入手可能である。TASIGNA(登録商標)の添付文書は、患者がおよそ12時間間隔で1日2回カプセルを服用するように指示されていることを明らかにしている。TASIGNA(登録商標)は、新たに診断されたフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病の処置には300mgを1日2回(1日総量600mg)、治療抵抗性又は不耐性のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病には400mgを1日2回(1日総量800mg)として規定されている。
【0007】
TASIGNA(登録商標)のバイオアベイラビリティは、食事と共に与えた場合に増加する。絶食状態と比較して、高脂肪食の30分後に用量を与えた場合、全身曝露(AUC)は82%増加すると報告されている。食物効果を最小限に抑えるために、ラベルには、空の胃にカプセルを投与する必要があることが示されている。したがって、用量の服用前に少なくとも2時間、用量の服用後に少なくとも1時間、食物を摂取すべきではない。
【0008】
ニロチニブの市販の調製物は、吸収の速度及び程度(血漿プロファイル曲線下面積及びCmax)がそれぞれ82%及び112%増加するので、特に患者が食事、特に高脂肪食と共に又は食事後にニロチニブの錠剤を摂取する場合、有害作用のリスクをもたらす。(Castagnetti et al;Hematology Meeting Reports,2008;2(5);22-26)。
【0009】
バイオアベイラビリティの変動が低いニロチニブを患者集団に提供し、したがって、製剤が投与される患者集団にわたって一貫した(例えば、Cmax及びAUC値の観察範囲がより狭い)PKパラメータを提供する経口投与のための組成物を有することが望ましい。
【0010】
さらに、市販の製剤、すなわちTASIGNA(登録商標)と比較して増強されたニロチニブバイオアベイラビリティを提供し、したがって絶食状態でより高い血漿レベルをもたらす経口投与用組成物を有することも望ましい。
【0011】
加えて、摂食状態で患者に投与されたときにニロチニブの許容可能な血漿レベルを提供する経口投与用組成物を有することも望ましい。
【0012】
したがって、患者への経口投与に適しており、絶食状態及び摂食状態において均一な血漿レベル及び十分なニロチニブ曝露(AUC)を提供するニロチニブ組成物が必要とされる。市販のニロチニブ製剤(TASIGNA(登録商標))よりも薬物動態パラメータ(例えば、Cmax、AUC0-t及びAUC0-∞)の変動が少ないニロチニブ経口組成物も必要とされている。
【0013】
絶食状態で改善されたバイオアベイラビリティを示し、また絶食状態及び摂食状態で薬物動態パラメータ(例えば、Cmax、AUC0-t及びAUC0-∞)の変動が、参照製品、すなわち市販のニロチニブ製剤(TASIGNA(登録商標))よりも少ないニロチニブ経口組成物が必要とされている。また、1日用量が低下したニロチニブを投与する必要性が存在し、この場合、組成物は、絶食状態において増強されたバイオアベイラビリティを示し、食物に関係なく投与することができる。
【0014】
さらに、ポリマー中の難溶性薬物の固体分散体は、一般に経時的に不安定である。非晶質固体分散体は、特に経時的に結晶形態に変換する傾向があり、これは非晶質薬物材料と比較して結晶性薬物材料のバイオアベイラビリティ及び溶解性が違うことに起因して不適切な投与をもたらし得る。当業者は、担体があるとしても、どの担体が特定の製剤用の安定な非晶質分散体を調製するために有用であるかを予測することができない。
【0015】
したがって、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の安定な非晶質固体分散体を含む経口投与に適した組成物であって、絶食状態において増強されたバイオアベイラビリティを示し、食物に関係なく投与することができる組成物を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、経口投与のためのニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩(例えば、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラート)の非晶質固体分散体を含む医薬組成物であって、絶食状態において増強されたバイオアベイラビリティを示し、食物に関係なく投与することができる組成物に関する。
【0017】
本出願は、参照製剤の用量と比較して強度/用量が低下したニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩(ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラート)の医薬組成物であって、食物効果を排除又は低減する組成物を提供する。
【0018】
一実施形態では、ヒト対象に投与されるニロチニブの用量は、現在市販されているニロチニブの製剤(すなわち、TASIGNA(登録商標))である参照製剤と比較して、少なくとも10%低下する。さらに別の実施形態では、ヒト対象に投与されるニロチニブの用量は、現在市販されているニロチニブの製剤(すなわち、TASIGNA(登録商標))である参照製剤と比較して、少なくとも50%低下する。
【0019】
本出願はさらに、絶食条件下のTASIGNA(登録商標)の平均Cmax及びAUCよりも少なくとも約2倍~2.5倍高い、絶食条件下の平均Cmax及びAUCを示すニロチニブの医薬組成物を提供する。
【0020】
本出願はさらに、絶食状態においてニロチニブの現在市販されている製剤(すなわち、TASIGNA(登録商標))と比較して増強されたバイオアベイラビリティを有し、摂食条件下及び絶食条件下で依然としてTASIGNA(登録商標)と生物学的に同等である、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの医薬組成物を提供する。
【0021】
固体分散体、固体分散体を作製する方法、医薬組成物を作製する方法、及び記載の医薬組成物を使用する処置方法も提供される。
【0022】
本出願は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートを含む非晶質固体分散体を提供する。有効量のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含む医薬組成物であって、該固体分散体が、薬学的に許容し得る担体及び場合により少なくとも1種の有機酸を含む、絶食状態において参照製剤と比較した場合に、増強されたバイオアベイラビリティを提供する医薬組成物もまた提供される。
【0023】
本医薬組成物は、好ましくは、有効量のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含み、該固体分散体は、薬学的に許容し得る担体及び場合により少なくとも1種の有機酸をさらに含み、絶食状態での投与後のヒト対象におけるニロチニブの少なくとも1つの薬物動態パラメータは、摂食状態での投与後のヒト対象におけるニロチニブの薬物動態パラメータの約80%~約125%であり、少なくとも1つの薬物動態パラメータは、AUC0-∞、Cmax、AUC0-t、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
本出願に記載された実施形態の各々は、任意の組み合わせで以下の追加要素のうちの1つ以上をさらに有することができる。
【0025】
要素1:非晶質固体分散体は、薬学的に許容し得る担体、及び場合により少なくとも1種の有機酸をさらに含み得る。
【0026】
要素2:非晶質固体分散体は、ホットメルト押出、噴霧乾燥又は共沈殿によって調製することができる。
【0027】
要素3:非晶質固体分散体は、それぞれ、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラート対薬学的に許容し得る担体の重量比が、約1:1~約1:6、好ましくは約1:3~約1:4であってもよい。
【0028】
要素4:非晶質固体分散体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMC-AS)、ポリビニルピロリジン及び酢酸ビニル(PVP/VA)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリジン(PVP)、及びそれらの混合物からなる群より選択される薬学的に許容し得る担体を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、又はそれからなり得る。
【0029】
要素5:非晶質固体分散体は、場合により有機酸を含有してもよく、該有機酸は、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、桂皮酸、アスコルビン酸、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0030】
要素6:非晶質固体分散体には、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートが有機酸に対する重量比で約1:0.5~約1:5で存在し、好ましくは約1:2の比で存在し、より好ましくは約1:1の比で存在し得る。
【0031】
要素7:非晶質固体分散体は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含み得る。
【0032】
要素8:医薬組成物は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラート 約25mg~約200mgを含み得る。
【0033】
要素9:医薬組成物は、好ましくは、錠剤、カプセル、カプレット、ビーズ、顆粒又は経口懸濁液の形態であり得る。
【0034】
要素10:医薬組成物は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、可塑剤、可溶化剤、安定剤、酸化防止剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含み得る。
【0035】
要素11:医薬組成物は、好ましくは、直接圧縮、湿式造粒又は乾式造粒によって得ることができる。
【0036】
要素12:医薬組成物は、好ましくは、(a)例えば顆粒の形態の、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体、(b)少なくとも1種の顆粒内賦形剤、(c)少なくとも1種の顆粒外賦形剤、及び(d)場合によりコーティング、を含む錠剤の形態であり得る。
【0037】
要素13:固体分散体又は医薬組成物は、好ましくは加速条件下で安定なままであり得、例えば、該組成物は、40℃/75% RH(「相対湿度」)又は25℃/60% RH(「相対湿度」)で少なくとも6ヶ月間安定なままである。
【0038】
要素14:固体分散体又は医薬組成物は、好ましくは、HPLCにより測定して約0.2%(w/w)未満、好ましくは約0.15%(w/w)未満、より好ましくは約0.1%(w/w)未満の任意の未知の不純物のレベルを有する。
【0039】
要素15:固体分散体及び医薬組成物は、好ましくは、(a)ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMC-AS)、ポリビニルピロリジン及び酢酸ビニル(PVP/VA)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリジン(PVP)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体とをドライブレンドして、混合物を形成すること、(b)溶融分散体を形成するのに十分な温度まで該混合物を加熱し、溶融が温度80℃~200℃及びスクリュー速度30~1000rpmの下で行われること、(c)該溶融分散体を押出して、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体中のニロチニブの固体分散体を含む組成物を提供すること、によって作製することができる。本方法は、(d)ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートを含む顆粒を得るために、(c)からの組成物を製粉する工程、(e)(d)からの顆粒と、クロスポビドン、コロイド状シリカ、ステアリン酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群より選択される1種以上の賦形剤を含む顆粒外混合物とを混合して、ブレンドを提供する工程、(f)該ブレンドを錠剤に圧縮する工程、又は該ブレンドをカプセルシェルに充填する工程、並びに(g)場合により、該錠剤又はカプセルシェルをコーティングする工程、をさらに含み得る。
【0040】
要素16:固体分散体及び医薬組成物は、好ましくは、(a)本発明による医薬組成物、及び(b)該組成物が食物に関係なくヒト対象に投与され得ることを示す、前記組成物の経口投与のための説明書、を含むキットに含まれ得る。
【0041】
要素17:固体分散体及び医薬組成物は、好ましくは、ヒト対象における増殖性障害を処置する方法であって、(a)医薬組成物を提供すること、及び(b)該組成物が食物に関係なくヒト対象に投与され得ることを示す、前記組成物の経口投与のための説明書を提供すること、を含む方法に使用することができる。
【0042】
非限定的な例として、本出願に記載の実施形態に適用可能な例示的な組み合わせは、上記の要素の1つ以上との任意の組み合わせを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施例1の組成物2及び5の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図2】実施例3の組成物13によるニロチニブフマラートの非晶質固体分散体の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図3】実施例4の組成物16の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図4】0.01M HCl酸媒体、続くFeSSIF媒体 pH5.0±0.05における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル並びに組成物34及び35の比較溶解プロファイルを示す図である。
【
図5】0.01M HCl酸媒体、続くFeSSIF又はFaSSIFの緩衝媒体における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル及び組成物36の比較溶解プロファイルを示す図である。
【
図6】0.01M HCl酸媒体、続くFeSSIF媒体 pH5.0±0.05における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル並びに組成物50及び51の比較溶解プロファイルを示す図である。
【
図7】0.01M HCl酸媒体及び続く二倍強度FaSSIF媒体における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル及び組成物52の比較溶解プロファイルを示す図である。
【
図8】0.01M HCl酸媒体、及び続くFaSSIF緩衝媒体 pH6.5±0.05、又は続くFeSSIF緩衝媒体 pH5.0±0.05における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル及び組成物53の比較溶解プロファイルを示す図である。
【
図9】0.01N HCl酸媒体、及び続くFaSSIF緩衝媒体 pH6.5±0.05における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル、組成物54及び55の比較溶解プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者に一般的に知られているのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、本明細書で提供される定義が優先する。特に明記しない限り、本発明における百分率、部及び比は全て重量基準である。
【0045】
「約」及び「およそ」という用語は、数値変数と共に使用される場合、一般に、変数の値、及び測定値若しくは実験誤差(例えば、平均の95%信頼区間)内、又はより広い範囲内の指定値(例えば、±10%)内の変数の全ての値を意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「ニロチニブ」とは、ニロチニブ遊離塩基又はその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物を指す。原則として、本発明の医薬組成物を製造するために、任意の結晶形態のニロチニブ又は非晶質形態のニロチニブを使用することができる。
【0047】
「薬学的に許容し得る」物質という用語は、一般的な医学的判断に従って、いかなる不適切な毒性、刺激、アレルギー反応などもなしに患者の組織と接触するのに適しており、利点と欠点との間の合理的なバランスを有し、その標的使用に効果的に適用することができる物質を意味する。
【0048】
「薬学的に許容し得る塩」という用語は、無機酸又は有機酸とで形成されるニロチニブ塩を指す。適切な塩には、クエン酸、酒石酸、又はフマル酸などの有機酸で形成される塩が含まれる。
【0049】
「医薬組成物」、「医薬製品」、「医薬剤形」、「剤形」、「医薬製剤」などの用語は、典型的には粉末、顆粒、丸薬、ビーズ、カプセル、カプレット、錠剤、経口懸濁液などの形態の、処置を必要とする患者に投与される医薬組成物を指す。
【0050】
「担体」及び「薬学的に許容し得る担体」という用語は同義である。担体は、活性成分を埋め込む(取り囲む)マトリックスを形成することができる。マトリックスは、1種の担体、又は2種以上の担体の混合物を含み得る。本発明の固体分散体に用いられる担体は、腸溶性ポリマーであっても、又は非腸溶性ポリマーであってもよい。
【0051】
本発明の実施形態によれば、薬学的に許容し得る担体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMC-AS)、ポリビニルピロリジン及び酢酸ビニル(PVP/VA)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びポリビニルピロリジン(PVP)の1種以上から選択される。
【0052】
本発明の実施形態によれば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMC-AS)は、LF、LG、MF、MG、HF及びHGなどの様々なタイプを含み、タイプの名前の最初の文字L、M及びHは、HPMC-ASの溶解開始時のpHレベルを意味する。例えば、Lは低レベル(例えば、HPMC-ASは、pH値が5.5を超えると溶解し始める)を指し、Mは中レベル(例えば、HPMC-ASは、pH値が6.0を超えると溶解し始める)を指し、Hは高レベル(例えば、HPMC-ASは、pH値が6.5を超えると溶解し始める)を指す。2番目の文字F及びGはHPMC-ASの粒径を指し、Fは微粉を指し、Gは顆粒状を指す。いくつかの実施形態では、HPMC-ASのタイプはLFであり、いくつかの実施形態では、HPMC-ASのタイプはMFであり、いくつかの実施形態では、HPMC-ASのタイプはHGである。
【0053】
「固体分散体」とは、化合物の分子分散体、特に担体内の原薬を意味する。固体分散体という用語は、一般に、少なくとも2つの成分を含み、1つの成分が他の成分全体にわたって実質的に均一に分散している固体状態の系を意味する。例えば、固体分散体は、溶融、溶媒又は溶融-溶媒法によって調製された、固体状態の不活性担体又はマトリックス中の1種以上の活性成分の分散体であり得る。理論に拘束されることを望むものではないが、固体分散体において、薬物は、分子状態、コロイド状態、準安定状態、又は非晶質状態で存在し得る。分子分散体の形成は、粒径をほぼ分子レベルまで縮小させる(すなわち、粒子が存在しない)手段を提供し得る。
【0054】
「溶解性」という用語は、水、緩衝液、胃腸模擬液、胃腸液などの水性媒体へのニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の溶解性を意味する。
【0055】
「インビボ」という用語は、一般に、植物又は動物の生体内を意味するが、「インビトロ」という用語は、一般に、体外及び人工環境内を意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「参照製剤」という用語は、比較のために使用される製剤である。好ましくは、参照製剤は、のニロチニブ塩酸塩 50mg、150mg又は200mgを含有する経口剤形を指し得る。好ましくは、参照製剤は、現在、TASIGNA(登録商標)の商品名で市販されている、ニロチニブの経口剤形に対応する。
【0057】
「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト(例えば、ビーグル犬)を含む動物を指す。患者及び対象という用語は、本明細書では同義で使用され得る。
【0058】
増強されたバイオアベイラビリティ及び食物効果の低減/排除
「バイオアベイラビリティ」という用語は、投与後に標的組織によって薬物又は別の物質が利用される程度を示す。例えば、「バイオアベイラビリティ」は、摂食状態又は絶食状態下で、対象又は患者への投与後に吸収される薬物の割合を指し得る。ある特定の態様では、絶食状態下では、本明細書に記載されるように製剤化された場合、ニロチニブのバイオアベイラビリティは、投与される用量の少なくとも約15%であり、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超又は50%超であり得る。
【0059】
「血漿中薬物濃度のピーク時間(Tmax)」とは、薬物投与後にピーク血漿中薬物濃度(Cmax)に到達する時間を意味する。
【0060】
「ピーク血漿中薬物濃度(Cmax)」という用語は、薬物投与後に到達する最大血漿中薬物濃度を意味する。
【0061】
「AUC0-∞
」という用語は、薬物投与後の0から無限大の時点までの血漿中薬物濃度-時間曲線下面積を意味し、「AUC0-t」という用語は、薬物投与後の0からtの時点までの血漿中薬物濃度-時間曲線下面積を意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「増強されたバイオアベイラビリティ」という用語は、同一の条件下で参照製剤から得られた体液中の活性成分の濃度と比較した場合の、本発明の組成物によって提供される体液中の活性成分の濃度の増加を指す。ある特定の態様では、絶食状態下では、本明細書中に記載されるように製剤化された場合、ニロチニブのバイオアベイラビリティは、同一条件のもとでの参照製剤と比較したとき、投与される用量の少なくとも約15%増強され、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超又は50%超増強され得る。
【0063】
本明細書全体を通して、摂食条件下又は絶食条件下における医薬組成物の投与について言及する。いくつかの組成物の薬物動態学的性能が、胃腸系における食物の有無によって影響されることは、当技術分野において十分に理解されている。したがって、これらの言及は、当技術分野で「摂食」又は「絶食」と呼ばれる、通常認められて投与状況に関する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「絶食状態」という用語は、ヒト又は他の哺乳動物が、ニロチニブ固体経口剤形を服用する前の少なくとも2時間にわたって、及びニロチニブ固体経口剤形を服用した後の少なくとも2時間にわたって、500カロリー又は500カロリー超を摂取していないことを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「摂食状態」という用語は、米国食品医薬品局(FDA)標準高脂肪朝食(又は同程度の量の脂肪及びカロリーを含有する他の食事)を前記期間内に食べたヒトを指す。この食事は、脂肪(食事の総カロリー含有量のおよそ50%)及びカロリー(およそ800~1000カロリー)の両方ともが高い。
【0066】
本明細書で使用される「食物効果」という用語は、薬物吸収の程度を減少又は増加させる食品-薬物相互作用を意味する。換言すれば、薬物のバイオアベイラビリティは、絶食状態下で投与した場合、該薬物を摂食状態で投与した場合と比較して変化する。食物効果とは、薬物又はその製剤を食物と同時に又は摂食状態でヒトに経口投与した場合の、同じ製剤を絶食状態又は食物なしで投与した場合の同じ値と比較した前記薬物のAUC∞、AUC0-t及び/又はCmaxの1つ以上の相対差を指すと言うことができる。
【0067】
特定の態様では、食物効果は、試験薬物のCmax及び/又はAUC値の、摂食状態と絶食状態との比として定義され得る。摂食状態及び絶食状態で試験薬物のCmax及び/又はAUC値を測定することは、当技術分野における標準的技法である。食物効果の低減は、本発明の組成物又は医薬組成物からの比の値と、本発明に開示される可溶化形態を含まない組成物の値とを比較することによって決定することができる。
【0068】
特定の態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、食物効果を低減又は排除する。本明細書で使用される場合、「食物効果を低減させる」とは、摂食状態で投与された薬物と比較した、絶食状態で投与された薬物のバイオアベイラビリティ、例えばAUC∞、AUC0-t及び/又はCmaxの差を狭めることを指す。特定の態様では、食物効果は排除される。したがって、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物に経口投与する場合、有意な食物効果はない。換言すれば、食物あり及び食物なしでそれぞれ哺乳動物に経口投与した後に測定された薬物動態パラメータ間の差は、40%未満、例えば35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10未満又は5%未満である。好ましくは、本発明の組成物又は医薬組成物は、少なくとも15%低減した食物効果、好ましくは20%、好ましくは25%、好ましくは30%、好ましくは40%低減した食物効果を有する。
【0069】
組成物の薬物動態パラメータは、反復又は非反復デザインを使用して、単回又は複数回用量試験で測定することができる。例えば、薬物動態パラメータは、2期2群(two-period,two-sequence)クロスオーバーデザインを使用して単回用量薬物動態試験で測定することができる。あるいは、4期反復デザインクロスオーバー試験も使用することができる。ニロチニブ吸収の速度及び程度を特徴付ける薬物動態パラメータを統計学的に評価する。時間0から、最後の定量可能濃度の測定時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)、及び無限大(AUC0-∞)までの血漿中濃度-時間曲線下面積、Cmax及びTmaxは、標準的な技術に従って決定することができる。薬物動態データの統計分析を、分散分析(ANOVA)を使用して対数変換データ(例えば、AUC0-t、AUC0-∞、又はCmaxデータ)に対して行う。
【0070】
本発明の組成物のAUCの差は、摂食状態と絶食状態とで投与した場合、好ましくは約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約3%未満である。
【0071】
本発明の組成物のCmaxの差は、摂食状態と絶食状態とで投与した場合、好ましくは約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約3%未満である。
【0072】
いくつかの態様では、対象(例えば、摂食対象又は絶食対象)への医薬組成物の投与後、平均バイオアベイラビリティは、約20%超(例えば、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、さらには99%超)、又は約20%~約90%(例えば20%~30%、約20%~40%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、30%~40%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、60%~70%、60%~80%、60%~90%、70%~80%、70%~90%、及び80%~90%)である。
【0073】
いくつかの態様では、摂食対象の平均バイオアベイラビリティと絶食対象の平均バイオアベイラビリティとの比は、約1.0~約2.0(例えば、1.0~1.1、1.0~1.2、1.0~1.3、1.0~1.4、1.0~1.5、1.0~1.6、1.0~1.7、1.0~1.8、1.0~1.9、1.3~1.4、1.3~1.5、1.3~1.6、1.3~1.7、1.3~1.8、1.3~1.9、1.3~2.0、1.5~1.6、1.5~1.7、1.5~1.8、1.5~1.9、1.5~2.0、1.7~1.8、1.7~1.9、1.7~2.0、1.8~1.9、及び1.8~2.0)である。
【0074】
いくつかの態様では、摂食対象及び絶食対象への医薬組成物の投与は、約60%未満(例えば、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満及び15%未満)のAUC0-t、Tmax、Cmax及び/又はAUC∞の変動係数を生じる。特定の実施形態では、Cmax及び/又はAUC∞の変動係数は、約20%~約60%(例えば、20%~30%、20%~35%、20%~40、20%~45%、20%~50%、20%~55%、30%~35%、30%~40%、30%~45%、30%~50%、30%~55%、30%~60%、35%~40%、35%~45%、35%~50%、35%~55%、35%~60%、40%~45%、40%~50%、40%~55%、40%~60%、45%~50%、45%~55%、45%~60%、50%~55%、50%~60%及び55%~60%)である。
【0075】
いくつかの態様では、絶食対象への医薬組成物の投与は、ニロチニブ 50mg等価用量に対して約100ng/mL超(例えば、約150ng/mL超、200ng/mL超、250ng/mL超、300ng/mL超、350ng/mL超、400ng/mL超、450ng/mL超、500ng/mL超、550ng/mL超、600ng/mL超、650ng/mL超、700ng/mL超、750ng/mL超、800ng/mL超、850ng/mL超、900ng/mL超、950ng/mL超、及び/又は最大約1000ng/mL)の平均Cmaxをもたらす。
【0076】
いくつかの態様では、絶食対象への医薬組成物の投与は、ニロチニブ 50mg等価用量に対して約1500hr*ng/mL超(例えば、1500hr*ng/mL超、1600hr*ng/mL超、1700hr*ng/mL超、1800hr*ng/mL超、1900hr*ng/mL超、2000hr*ng/mL超、2100hr*ng/mL超、2200hr*ng/mL超、2300hr*ng/mL超、2400hr*ng/mL超、2500hr*ng/mL超、2600hr*ng/mL超、2700hr*ng/mL超、2800hr*ng/mL超、2900hr*ng/mL超及び/又は約3000 hr*ng/mL超)の平均AUC0-∞をもたらす。
【0077】
ニロチニブの薬学的に許容し得る塩
ニロチニブの薬学的に許容し得る塩は、例えば有機酸又は無機酸との酸付加塩として形成され得る。
【0078】
適切な無機酸としては、ハロゲン酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸又はスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸又はアスパラギン酸などのアミノ酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、桂皮酸、又はアスコルビン酸などの他の有機プロトン酸である。本発明の組成物を本明細書において調製するためのニロチニブの有用な塩は、ニロチニブタルトラート及びニロチニブフマラートである。
【0080】
ニロチニブの固体分散体
「固体分散体」という用語は、少なくとも2つの成分を含み、1つの成分が他の1つ以上の成分全体に分散している固体状態の系を指す。
【0081】
ニロチニブの固体分散体は、任意の従来の技術、例えば、噴霧乾燥、共粉砕、ホットメルト押出、フリーズドライ、回転蒸発、溶媒蒸発、共沈殿、凍結乾燥、又は任意の適切な溶媒除去方法によって形成することができる。一実施形態では、本出願のニロチニブの固体分散体は、ニロチニブ遊離塩基又はその薬学的に許容し得る塩の結晶形態及び/又は非晶質形態と、薬学的に許容し得る担体とを含む。
【0082】
固体分散体を調製するための方法において使用されるニロチニブ出発材料は、結晶形態又は非晶質形態であり得る。あるいは、先行する処理工程からその場で得ることもできる。
【0083】
得られた固体分散体中のニロチニブは、結晶形態又は非晶質形態のいずれかで存在し得る。
【0084】
「非晶質」固体状態の形態である固体とは、非結晶状態であることを意味する。非晶質固体は一般に結晶様の短距離分子配列を有するが、結晶性固体に見られるような長距離秩序の分子充填はない。非晶質分散体中の原薬などの固体の固体形態は、偏光顕微鏡法、粉末X線回折(XPRD)、示差走査熱量測定(DSC)、又は当業者に公知の他の標準的な技術によって決定することができる。好ましくは、非晶質固体は実質的に非晶質の固体形態の原薬を含有し、例えば、分散体中の原薬の少なくとも約80%が非晶質形態であり、より好ましくは分散体中の原薬の少なくとも約90%が非晶質形態であり、最も好ましくは分散体中の原薬の少なくとも約95%が非晶質形態である。
【0085】
いくつかの実施形態では、ニロチニブの少なくとも約90%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はさらには99.9%、例えば90%~99.9%、90%~99.5%、90%~99%、90%~98%、90%~97%、90%~96%、90%~95%、95%~99.9%、95%~99.5%、95%~99%、95%~98%、95%~97%、及び95%~96%)は非晶質形態である。
【0086】
固体分散体は、置換型若しくは格子間型の結晶溶液又は非晶質溶液などの単相であり得る。又は、共晶、結晶性薬物と非晶質担体、又は非晶質薬物と非晶質担体との分散体などの二相系であり得る。固溶体は、分子レベルで2つの化合物を互いに分散させると得られる単相である。
【0087】
本出願の発明者らは、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体及び少なくとも1種の有機酸を一定の比で含むニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の非晶質固体分散体を含む組成物が、胃腸管におけるニロチニブの溶解性を増加させることができ、沈殿又は結晶化の問題を改善することができ、それにより、ニロチニブのインビボでの吸収及びそのバイオアベイラビリティを増加させることを見出した。
【0088】
別の態様では、組成物は、インビボでニロチニブの吸収挙動を変化させ、絶食状態でTmaxを延長することなくCmax及びAUCを増加させることができる。
【0089】
特定の態様では、固体分散体に使用される薬学的に許容し得る担体は、腸溶性ポリマーであっても、又は非腸溶性ポリマーであってもよい。
【0090】
腸溶性ポリマーは、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートトリメリタート、セルロースアセタートスクシナート、メチルセルロースフタラート、エチルヒドロキシメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMC-AS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートマレアート、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリタート、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルブチラートフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー及びメタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマーからなる群より選択され、好ましくはHPMCP、HPMC-AS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートマレアート及びヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリタートからなる群より選択され、より好ましくはHPMC-ASである。
【0091】
非腸溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)(コポビドン)、ポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリエチレングリコール/ポリビニルアルコールグラフトコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート、ポリエチレングリコール及びマルトデキストリンからなる群より選択される。
【0092】
いくつかの態様では、医薬組成物は、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩と薬学的に許容し得る担体との非晶質固体分散体を含み、ここで、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩と薬学的に許容し得る担体との重量比は、約1:6~約1:1(例えば、1:6~1:2、1:6~1:2.5、1:6~1:3、1:6~1:3.5、1:6~1:4、1:6~1:4.5、1:6~1:5、1:5~1:2、1:5~1:2.5、1:5~1:3、1:5~1:3.5、1:5~1:4、1:5~1:4.5、1:5~1:1.5、1:4~1:1.5、1:4~1:2、1:4~1:2.5、1:4~1:3、1:4~1:3.5、1:3~1:1.5、1:3~1:2、1:3~1:2.5、及び1:2~1:1.5)である。
【0093】
ある特定の実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩と薬学的に許容し得る担体とは、約1:1~約1:6(w/w)、約1:1~約1:4(w/w)の比で、好ましくは、約1:3(w/w)の比で存在する。
【0094】
本発明の固体分散体は、場合により1種以上の有機酸を含むことができる。有機酸は、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、桂皮酸及びアスコルビン酸より選択することができる。本発明の組成物中の有機酸の濃度は、約10mg~約300mgの範囲であり得る。
【0095】
複数の実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩と有機酸とは、1:0.5~1:5の比で存在し、好ましくは1:2の比で存在し、より好ましくは1:1の比で存在する。
【0096】
本発明の固体分散体は、場合により、1種以上の可溶化剤、すなわち、固体分散体中の医薬活性成分の溶解性を増加させる添加剤、又は固体分散体中の造孔剤として作用する添加剤を含むことができる。本発明の組成物に使用するのに適した可溶化剤としては、マンニトール、トランスクトール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、グリコフロール及びトランスクトールが挙げられる。可溶化剤の濃度は、担体濃度の約1w/w%~約30w/w%の範囲である。
【0097】
本発明の非晶質固体分散体は、場合により1種以上の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、薬物の湿潤を改善し、及び/又は溶解を増強することができる化合物である。界面活性剤は、親水性界面活性剤若しくは親油性界面活性剤又はそれらの混合物より選択することができる。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び双性イオン性界面活性剤であり得る。本発明による界面活性剤には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;PEGモノラウラート、PEGジラウラート、PEGジステアラート、PEGジオレアートなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンセスキオレアート、ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸モノエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、ポリオキシエチレンリシン油、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、クレモフォールRH40、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤の濃度は、担体濃度の約1w/w%~約10w/w%の範囲である。
【0098】
本明細書のいくつかの態様では、固体分散体中のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの負荷率は、約1%~約90%(w/w)(例えば、1%~19%、10%~19%、10%~20%、10%~30%、10%~40%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、20%~30%、20%~40%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、21%~30%、21%~34%、21%~40%、21%~50%、21%~60%、21%~70%、21%~80%、21%~90%、30%~40%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、36%~40%、36%~49%、36%~60%、36%~70%、36%~80%、36%~90%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、51%~60%、51%~70%、51%~80%、51%~90%、60%~70%、60%~80%、60%~90%、70%~80%、及び70%~90%)である。いくつかの好ましい実施形態では、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの負荷率は、約10%~約60%(w/w)(例えば、10%~20%、10%~30%、10%~40%、10%~50%、10%~60%、20%~30%、20%~40%、20%~50%、20%~60%、30%~40%、30%~50%、30%~60%、40%~50%及び40%~60%)である。
【0099】
本出願の固体分散体は、噴霧乾燥、溶媒蒸発、共沈殿、ホットメルト押出、共粉砕及び凍結乾燥より選択される1つ以上の方法によって得られる。本出願によって得られる固体分散体は、結晶形態又は非晶質形態のいずれかで存在し得る。
【0100】
一実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の非晶質固体分散体は、ホットメルト押出によって得られる。ホットメルト押出又はホットメルトにより押出されたという用語は、本明細書では、組成物が加熱及び/又は圧縮されて溶融(又は軟化)状態になり、続いてダイのオリフィスを通されて押し出された生成物が最終形状に形成され、冷却により固化する方法を説明するために使用される。ブレンドは、典型的にはスクリュー機構によって1つ以上の加熱ゾーンを通って搬送される。1つ以上のスクリューは、スクリューの外径とバレルの内径との間にわずかな隙間しか存在しない円筒形バレル内で可変速モータによって回転される。この形態では、バレル壁及びスクリュー同士の間に高い剪断が生じ、それによって粉末ブレンドの様々な成分が十分に混合及び脱凝集される。ダイは、デュアルマニホルド型、マルチマニホルド型又はフィードブロック型のダイであってもよい。
【0101】
本発明の医薬組成物の調製のために使用されるホットメルト押出は、温度200℃未満で行われなければならない。好ましくは、ホットメルト押出は、30~170℃の温度で、より好ましくは120~160℃の温度で行われる。ホットメルト押出は、腸溶性ポリマー及び場合により少なくとも1種の有機酸の混合物内で出発材料として使用されるニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の溶解を可能にする温度で行われなければならない。
【0102】
一実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の非晶質固体分散体は、噴霧乾燥方法によって得られる。噴霧乾燥された分散体は、薬物及び担体を有機溶媒に溶解し、次いで溶液を噴霧乾燥することによって得られる。製剤化及び工程条件は、溶媒が液滴から急速に蒸発し、相分離又は結晶化には時間が不十分になるように選択される。
【0103】
一実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩、少なくとも1種の腸溶性ポリマー及び場合により少なくとも1種の有機酸が、1種以上の有機溶媒と混合される。混合に適した溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、酢酸エチル、ジクロロメタン(DCM)、塩化エチレン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン及びそれらの混合物より選択される。
【0104】
一実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の噴霧乾燥非晶質固体分散体は、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩、少なくとも1種の腸溶性ポリマー、及び場合により、少なくとも1種の有機酸を、DCMとメタノールとの混合物(1:1)において混合すること、並びに噴霧乾燥機を使用して溶液を噴霧乾燥すること、を含む方法によって得られる。別の実施形態では、ニロチニブの噴霧乾燥非晶質固体分散体は、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩、少なくとも1種の腸溶性ポリマー、及び場合により少なくとも1種の有機酸をメタノール中で混合すること、並びに噴霧乾燥機を使用して溶液を噴霧乾燥すること、を含む方法によって得られる。噴霧乾燥装置、溶媒量及び工程条件は、要件に基づいて当業者によって選択される。
【0105】
得られたニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を、本明細書中に記載されるような1種以上の賦形剤とブレンドし、次いで、造粒及び/又は圧密して、カプセル化又は錠剤化のための最終ブレンドを生成することができる。特定の実施形態では、ニロチニブの非晶質固体分散体は、1種以上の賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、流動促進剤及び滑沢剤などと組み合わせて、顆粒を形成するためにこれらを含めることができる。
【0106】
ニロチニブの固体分散体を含む医薬組成物
固体分散体は、本明細書に記載の単位剤形(例えば、カプセル)のいずれか1つを充填するため、又は打錠するために使用され得る。固体分散体は、充填又は打錠の前に場合によりさらに加工することができる。例示的なさらなる加工は、固体分散体の球状化、ペレット化、製粉、射出成形、ふるい分け、及び/又はカレンダ加工を含む。
【0107】
本出願のニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の非晶質固体分散体は、必要に応じて所望の粒径及び分布をもたらすために、生成物の乾燥の完了の前又は後に粒径縮小手順に供することができる。所望の粒径又は分布を達成するために、製粉又は微粒子化を行うことができる。粒径縮小のために使用することができる装置には、ボールミル、ローラーミル、ハンマーミル、及びジェットミルが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
別の一般的な態様では、D90が約500ミクロン未満、又は約200ミクロン未満、又は約100ミクロン未満、又は約50ミクロン未満、又は約40ミクロン未満、又は約30ミクロン未満、又は約20ミクロン未満、又は約10ミクロン未満であるか、あるいは任意の他の好適な粒径である粒径分布を有するニロチニブの非晶質形態を含むニロチニブの固体分散体が提供される。
【0109】
ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体は、薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて、他の医薬組成物又は最終剤形を作製することができる。1種以上の追加の薬学的に許容し得る賦形剤は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、香味料、保存剤、及びそれらの組み合わせより選択される。
【0110】
一実施形態では、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、湿式造粒、乾式造粒、及び直接圧縮を使用することによって調製されるが、これらに限定されない。
【0111】
一実施形態では、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、ニロチニブの非晶質固体分散体と薬学的に許容し得る賦形剤とを混合して、得られた混合物を、錠剤に圧縮するか、又は硬ゼラチンカプセルに充填することを含む直接圧縮を使用することによって調製される。
【0112】
一実施形態では、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、直接圧密又はローラー圧密のいずれか又は両方によって行われる乾式造粒を使用することによって調製される。
【0113】
一実施形態では、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、顆粒内材料との混合物をスラグに圧縮して、圧縮されたスラグを、製粉し、メススクリーンを手動又は自動的に通過させて顆粒を得る、直接圧密乾式造粒を使用することによって調製される。得られた顆粒を顆粒外材料と混合した。この最終混合物を圧縮して錠剤にするか、又は硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0114】
一実施形態では、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、顆粒内材料との混合物を2つの高圧ローラーの間に通して、強化され、緻密化された材料を形成し、次いで、得られた緻密化された材料を製粉によって均一な顆粒サイズに縮小し、次いで、顆粒外材料と混合することを含む、ローラー圧密乾式造粒を使用することによって調製される。この最終混合物を圧縮して錠剤にするか、又は硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0115】
一実施形態では、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、(a)ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを混合すること、(b)水、イソプロパノール、エタノールより選択される十分な溶媒を、剪断下で工程(a)から得られた混合物に添加して顆粒を生成すること、(c)該顆粒を製粉又は粉砕した後、前記顆粒をふるい分けすること、場合により、他の賦形剤と混合すること、を含む湿式造粒によって調製される。この最終混合物を圧縮して錠剤にするか、又は硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0116】
本発明はまた、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含み、該固体分散体が少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体及び場合により少なくとも1つの有機酸をさらに含み、(a)即時放出部分及び(b)放出調節部分を含む経口投与用の組成物に関し、有機酸は、即時放出部分又は放出調節部分のいずれかに存在してもよく、又は両方の部分に存在してもよい。
【0117】
本明細書で使用される場合、「即時放出」という用語は、治療化合物の大部分の急速な放出を指す。即時放出のための特に有用な条件は、治療化合物の少なくとも約80%以上が経口摂取後30分以内に放出されることである。特定の治療化合物の特定の即時放出条件は、当業者によって認識又は公知であると思われる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「放出調節」という用語は、即時放出剤形と比較して、治療化合物の大部分のより遅い放出を指す。特定の治療化合物の特定の放出調節条件は、当業者によって認識又は公知であると思われる。
【0119】
組成物は、直接圧縮、湿式造粒又は乾式造粒などの方法によって製造される。医薬組成物は、カプセル、錠剤及び多粒子を含む経口剤形、好ましくは固体経口剤形の形態である。
【0120】
物理的には、活性成分とビヒクルとの組み合わせは、固体分散体を形成してもよく、すなわち、活性成分が粒子形態でビヒクル中に分散していてもよく、又は固溶体を形成していてもよく、すなわち、活性成分が分子レベルでビヒクル中に溶解してもよい。活性成分及びビヒクルはまた、活性成分の一部が分子レベルで溶解した固体分散体を形成し得る。分散体及び/又は溶液の物理的状態は、ホットステージ顕微鏡法(HSM)、示差走査熱量測定法(DSC)、場合によりエネルギー分散型X線(EDX)と組み合わせた走査型電子顕微鏡法(SEM)、及び粉末X線回折などの様々な技術を使用して決定することができる
【0121】
一実施形態では、本出願のニロチニブタルトラートの本発明の非晶質固体分散体は、ニロチニブタルトラート、少なくとも1種の腸溶性ポリマー及び少なくとも1種の有機酸を含み、腸溶性ポリマーはHPMC-ASであり、有機酸は酒石酸である。具体的には、ニロチニブタルトラートとHPMC-ASとは1:3(w/w)の比で存在し、ニロチニブタルトラートと酒石酸とは1:1(w/w)の比で存在する。
【0122】
一実施形態では、本出願のニロチニブフマラートの本発明の非晶質固体分散体は、ニロチニブフマラート、少なくとも1種の腸溶性ポリマー及び少なくとも1種の有機酸を含み、腸溶性ポリマーはHPMC-ASであり、有機酸はフマル酸である。具体的には、ニロチニブフマラートとHPMC-ASとは1:3(w/w)の比で存在し、ニロチニブフマラートとフマル酸とは1:1(w/w)の比で存在する。
【0123】
一実施形態は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含む経口投与用医薬組成物であって、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの少なくとも30%が、USP溶解装置II(パドル)によって75回転/分(rpm)で決定して、溶解媒体としての0.01M HCl 500mL中に60分以内に放出される医薬組成物に関する。
【0124】
別の実施形態は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含む経口投与用医薬組成物であって、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの少なくとも30%が、USP溶解装置II(パドル)を使用して75rpmで0.01M HCl媒体 500mLにおいて37±0.5℃で60分間、続いてpH5.0±0.05 FeSSIF緩衝媒体及びFaSSIF緩衝媒体 900mLで90分間決定して、0.01M HCl媒体中に60分以内に放出される医薬組成物に関する。
【0125】
一実施形態では、得られたニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、可塑剤、着色剤及び界面活性剤などの他の薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて最終剤形にする。ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの本発明の非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、湿式造粒、乾式造粒、直接圧縮などの方法、好ましくは乾式造粒を使用することによって調製される。乾式造粒法は、直接圧密又はローラー圧密のいずれか又は両方によって実行することができる。
【0126】
ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、ニロチニブの非晶質固体分散体と、顆粒内賦形剤との混合物をスラグに圧縮して、圧縮されたスラグを製粉し、メススクリーンを手動又は自動的に通過させることを含む、直接圧密乾式造粒を使用することによって調製することができる。得られた顆粒を顆粒外賦形剤と混合する。この最終混合物を圧縮して錠剤にするか、又はカプセルに充填する。
【0127】
ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、固体分散体と、顆粒内材料との混合物を2つの高圧ローラーの間に通して、強化され、緻密化された材料を形成し、次いで、得られた緻密化された材料を製粉によって均一な顆粒サイズに縮小し、次いで、顆粒外材料と混合することを含む、ローラー圧密乾式造粒によって調製することができる。この最終混合物を圧縮して錠剤にするか、又はカプセルに充填する。
【0128】
ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と薬学的に許容し得る賦形剤とを混合して、得られた混合物を、錠剤に圧縮するか、又はカプセルに充填することを含む直接圧縮を使用することによって調製することができる。
【0129】
ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物は、(a)ニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る賦形剤とを混合すること、(b)水、イソプロパノール、エタノールより選択される十分な溶媒を、剪断下で工程(a)から得られた混合物に添加して顆粒を生成すること、(c)該顆粒を製粉又は粉砕した後、前記顆粒をふるい分けすること、場合により、他の賦形剤と混合すること、を含む湿式造粒によって調製することができる。この最終混合物を圧縮して錠剤にするか、又はカプセルに充填する。
【0130】
本発明の医薬組成物は、好ましくは顆粒/粒子材料である。顆粒/粒子は、カプセルに充填されてもよく、又は錠剤に圧縮されてもよい。錠剤は、場合により、さらなる腸溶性ポリマー又は即時放出性コーティングでコーティングされていてもよい。
【0131】
さらに、本発明の押出成形物/顆粒は、経口懸濁液、ゲル、錠剤、カプセル、即時放出製剤、遅延放出製剤、制御放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、及び即時放出及び制御放出混合製剤を含むが、これらに限定されない任意の適切な剤形に製剤化することができる。
【0132】
他の薬学的に許容し得る賦形剤としては、顆粒外剤として、希釈剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、流動促進剤、キレート剤、コーティング剤など、又はそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0133】
適切な希釈剤としては、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース粉末、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクチトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、圧縮糖、糖菓子などが挙げられる。
【0134】
一実施形態では、希釈剤は、顆粒内部分若しくは顆粒外部分のいずれか、又は両方に含まれる。希釈剤濃度は、全組成物の約10w/w%~約60w/w%の範囲である。顆粒内部分の希釈剤濃度は、全組成物の約10w/w%~約60w/w%、好ましくは約25w/w%~約35w/w%の範囲である。
【0135】
適切な結合剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、アルファ化デンプン、寒天、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、プロピレングリコールなどが挙げられる。結合剤の濃度は、全組成物の約1w/w%~約20w/w%、好ましくは約10w/w%~約15w/w%の範囲である。
【0136】
適切な崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、アルファ化デンプンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。崩壊剤の濃度は、全組成物の約1w/w%~約10w/w%の範囲である。
【0137】
適切な滑沢剤/流動促進剤としては、コロイド状二酸化ケイ素(AEROSIL(登録商標))、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、硬化ヒマシ油、脂肪酸のスクロースエステル、マイクロクリスタリンワックス、黄蜜蝋、白蜜蝋など、及びそれらの混合物が挙げられる。滑沢剤/流動促進剤の濃度は、全組成物の約0.5w/w%~約5w/w%の範囲である。
【0138】
適切な界面活性剤には、医薬剤形での使用に適した非イオン性及びイオン性(カチオン性、アニオン性及び双性イオン性)界面活性剤の両方が含まれる。これらには、ポリエトキシル化脂肪酸及びその誘導体、例えば、ポリエチレングリコール400ジステアラート、ポリエチレングリコール-20ジオレアート、ポリエチレングリコール4-150モノジラウラート、及びポリエチレングリコール-20グリセリルステアラート;アルコール-油のエステル交換生成物、例えば、ポリエチレングリコール-6コーン油;ポリグリセリル化脂肪酸、例えば、ポリグリセリル-6ペンタオレアート;プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えば、プロピレングリコールモノカプリラート;モノグリセリド及びジグリセリド、例えば、リシノレイン酸グリセリル;ステロール及びステロール誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル及びその誘導体、例えば、ポリエチレングリコール-20ソルビタンモノオレアート及びソルビタンモノラウラート;ポリエチレングリコールアルキルエーテル又はフェノール、例えば、ポリエチレングリコール-20セチルエーテル及びポリエチレングリコール-10-100ノニルフェノール;糖エステル、例えば、スクロースモノパルミタート;「ポロキサマー」として公知のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;イオン性界面活性剤、例えば、カプロン酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、大豆レシチン、フマル酸ステアリルナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、スルホコハク酸オクチル二ナトリウム、及びパルミトイルカルニチンなど、及びそれらの混合物が含まれる。界面活性剤の濃度は、全組成物の約0.5w/w%~約10w/w%の範囲である。
【0139】
適切な可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、1,2-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、スチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸ソルビトール、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール酸エチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル及びグリコール酸アリルが挙げられる。可塑剤の濃度は、全組成物の約0.5w/w%~約10w/w%の範囲である。
【0140】
適切な着色剤としては、赤色又は黄色の酸化鉄、二酸化チタン、タルクなどの染料及び顔料が挙げられる。着色剤の濃度は、全組成物の約0.1w/w%~約1w/w%の範囲である。
【0141】
適切なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二ナトリウム及びその誘導体、クエン酸及びその誘導体、ナイアシンアミド及びその誘導体、並びにデソキシコール酸ナトリウムなど、又はそれらの混合物の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。キレート剤の濃度は、全組成物の約0.1w/w%~約1w/w%の範囲である。
【0142】
医薬組成物は、場合によりコーティングされていてもよく、すなわち、シールコーティング及び/又は腸溶コーティング及び/又はフィルムコーティングされていてもよい。好ましくは、医薬組成物は、シールコーティングされ、最後にフィルムコーティングされてもよく、又はシールコーティングされ、さらに腸溶コーティングされてもよい。場合により、本発明の医薬組成物はフィルムコーティングされてもよい。好ましくは、フィルムコーティングポリマーは、約2~10w/w%の量で存在してよい。
【0143】
一実施形態では、本発明は、経口投与用のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含み、この固体分散体が、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体と、場合により少なくとも1種の有機酸とを含み、AUC及び/又はCmaxについて0.8~1.5の摂食/絶食比を有する、医薬組成物に関する。
【0144】
別の実施形態は、経口投与用のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体を含み、この固体分散体が、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体と、場合により少なくとも1種の有機酸とを含み、市販製品の130%を超える絶食状態のバイオアベイラビリティを有する、医薬組成物に関する。
【0145】
さらに別の実施形態では、本発明は、(a)有効量のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る担体とを含む固体剤形;及び(b)i)食物との投与を規定していないか、又はii)剤形(a)が食物と無関係に投与され得ることを示す、剤形(a)の経口投与のための説明書、を含むキットに関する。
【0146】
特定の実施形態は、安定である、例えば製剤の貯蔵寿命にわたって安定である、本明細書に記載の医薬組成物に関する。本明細書で使用される場合、「安定な」という用語は、典型的な市販の保存条件下でのニロチニブの約5%以下の喪失として定義される。ある特定の実施形態では、本発明の製剤は、典型的な市販の貯蔵条件下で、ニロチニブの約3%以下の喪失、より好ましくは、ニロチニブの約2%以下の喪失を有するものである。組成物を40℃及び相対湿度75%で少なくとも3ヶ月間保存した後、組成物はニロチニブの効力の少なくとも約95%を保持する。特定の態様では、「安定な」という用語は、40℃及び相対湿度75%、又は25℃及び相対湿度60%で、少なくとも3ヶ月の期間、又は組成物の使用に必要な程度まで安定性の加速条件で貯蔵すると、形成される全関連物質が1.5w/w%以下である化学的安定性を指す。
【0147】
投与量及び投与
治療化合物の用量は、レシピエントの体重1キログラム当たり約0.1~約1000mg/日の範囲である。治療化合物の例示的な単位用量は、20mg~1000mgの範囲であり、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg及び800mgの単位用量を含む。あるいは、より低い用量、例えば、体重1キログラム当たり0.5mg~100mg/日、0.5~50mg、又は0.5~20mg/日を投与してもよい。薬学的に許容し得る塩の有効投与量範囲は、送達される活性部分の重量に基づいて計算することができる。塩自体が活性を示す場合、有効投与量は、塩の重量を使用して、又は当業者に公知の他の手段によって上記のように推定することができる。
【0148】
処置方法
本発明は、本発明の組成物;本発明の組成物を含む製剤;又は本発明の組成物を含む剤形を、その投与された量が単回用量又は分割用量のいずれかで、約25mg~約500mg/日のニロチニブを提供する量で投与することによって増殖性障害を治療的に処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物又は本発明の組成物を含む剤形を、単回用量又は分割用量のいずれかで、ニロチニブ 約50mg~約400mg、好ましくは、ニロチニブ 少なくとも約50mg、150mg及び200mgを提供する量で毎日投与することが好ましい。いくつかの実施形態では、ニロチニブ 約300mg/日~ニロチニブ 約400mg/日を投与することによって処置を提供することが好ましい。
【0149】
本発明による医薬組成物は、市販のニロチニブ製剤(TASIGNA(登録商標))と比較して、人体におけるニロチニブの吸収挙動を改善し、薬物の吸収及びバイオアベイラビリティを増加させる。
【0150】
特定の実施形態では、ニロチニブの用量は、市販の製品の形態で投与されるニロチニブの用量の最大で約98w/w%、又は最大で約95w/w%、又は最大で約90w/w%、又は最大で約85w/w%、又は最大で約80w/w%、又は最大で約75w/w%、又は最大で約70w/w%、又は最大で約65w/w%、又は最大で約60w/w%、又は最大で約55w/w%、又は最大で約50w/w%である。
【0151】
一実施形態では、本発明は、ヒトにおいて増殖性障害を処置するための方法であって、(a)有効量のニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体と、薬学的に許容し得る担体とを含む固体剤形;及び(b)i)食物との投与を規定していないか、又はii)剤形(a)が食物と無関係に投与され得ることを示す、剤形(a)の経口投与のための説明書、を投与することを含む方法に関する。
【0152】
本明細書で使用される場合、状態を「処置すること」又は状態の「処置」は、臨床結果などの有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。有益な又は所望の結果には、1つ以上の症状又は状態の緩和又は改善;疾患、障害又は状態の程度の減少;疾患、障害、又は状態の安定化された(すなわち、悪化しない)状態;疾患、障害、又は状態の拡大の防止;疾患、障害、又は状態の進行の遅延又は緩慢;疾患、障害又は状態の改善又は軽減;及び検出可能であろうと検出不能であろうと、(部分的であろうと全体的であろうと)寛解が含まれ得るが、これらに限定されない。疾患、障害、又は状態を「軽減すること」とは、治療なしの場合の程度又は時間経過と比較して、疾患、障害、又は状態の程度及び/又は望ましくない臨床症状が軽減され、及び/又は進行の時間経過が緩慢になるか又は長くなることを意味する。
【0153】
動物又はヒト対象への投与のために、医薬組成物は、有効投与量のニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩を含む。製剤は、例えば、治療される対象、投与様式、及び所望の処置の種類(例えば、予防、予防、又は治療)に応じて、従来の方法を使用して調製され得る。
【0154】
ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩は、組成物の総重量の合計1~95重量%の量で存在し得る。
【0155】
好ましくは、医薬組成物は、経口投与に適した剤形で提供され、硬カプセル(例えば、硬ゼラチンカプセル又は硬ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル)、軟ゼラチンカプセル、錠剤、カプレット、腸溶コーティング錠、チュアブル錠、腸溶コーティング硬ゼラチンカプセル、腸溶コーティング軟ゼラチンカプセル、ロゼンジ、フィルム、ストリップ、懸濁剤、シロップ、又は粉剤が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、従来の製薬慣行に従って製剤化され得る。
【0156】
投与量レベルは、状態の性質、薬物有効性、患者の状態、開業医の判断、並びに投与の頻度及び様式に依存し得る。単位剤形は、本明細書に記載の任意の1日量を、例えば1日1~5回(例えば、1日に1、2、3、4、又は5回)投与することによって達成するように投与することができる。
【0157】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物を1日総投与量が400mg、600mg又は800mgで投与することを含む、特定の処置方法に関する。
【0158】
好ましい単位投薬量としては、ニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩 15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg若しくは200mgが挙げられる。
【0159】
「単位剤形」という用語は、錠剤、カプレット、硬カプセル又は軟カプセルなどの、所定量の薬物を含有する単位剤形として適した物理的に別個の単位を指す。
【0160】
「有効」量とは、対象又は患者の状態を治療、予防、又は改善するのに十分な薬物の量を意味する。状態の治療的管理のために本発明の実施に使用されるニロチニブ又はその薬学的に許容し得る塩の有効量は、例えば、投与様式、患者の年齢、体重、性別及び/又は全般的な健康状態のうちの1つ以上に応じて、適切な量及び投与レジメンを提供するために当業者によって決定及び調整され得る。
【0161】
溶解試験
一実施形態では、本出願で製造されたニロチニブフマラート又はニロチニブタルトラートの非晶質固体分散体及び医薬組成物を、USP装置-II(パドル)を使用して、0.01M HCl中、続いて緩衝媒体(FaSSIF及び/又はFeSSIF)中で比較溶解のために試験した。試験に必要な溶解媒体の調製は下記のように調製した。
【0162】
0.01M HCl(3.5L)の調製:
37% HCl 2.9mLを精製水 3.5Lに加えた。
【0163】
2倍強度FaSSIF(3L)の調製:
精製水 3リットルに、水酸化ナトリウム 2.53g、リン酸二水素ナトリウム一水和物 23.7g、及び塩化ナトリウム 37.1gを添加し、次いで完全に混合した。混合したら、水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを6.50±0.05に調整した。pHを調整したら、FaSSIF粉末 13.6gを添加し、完全に混合した。
【0164】
2倍強度FeSSIF(2.5L)の調製
精製水 2.5リットルに、水酸化ナトリウム 20.2g、氷酢酸 43.3g、及び塩化ナトリウム 59.4gを添加し、次いで完全に混合した。混合したら、水酸化ナトリウム又は酢酸を用いてpHを5.0±0.05に調整した。pHを調整したら、のFaSSIF粉末 56.0gを添加し、完全に混合した。
【0165】
溶解試験から取り出したサンプルを、以下のHPLC手順を用いて薬物含有量について分析した。材料及び一般条件を以下に列挙する。
【表1】
【0166】
実施例
以下の実施例は例示的なものであり、限定することを意図するものではない。上記の開示は、本発明の特徴を実施するための多くの異なる実施形態を提供し、以下の実施例は、特定の実施形態を説明する。当業者に公知の他の改変及び方法も、本発明の範囲から逸脱することなく、以下の実験手順に適用することができることが理解されよう。
【0167】
実施例1
表2に示される組成を有するニロチニブ塩基の固体分散体を、噴霧乾燥によって調製した。
【表2】
【0168】
製造手順:
表2によるニロチニブ塩基及び選択された担体(すなわち、HPMC-AS及びHPMCP55)の必要量を、ジクロロメタン(DCM)とメタノールとの3:1比の混合物に溶解して、フィーダー溶液を得た。得られたフィーダー溶液をノズルを通過させ、溶媒を素早く蒸発させるチャンバーに微細な噴霧として入れ、ニロチニブ及び担体を含有する粒子を生成させた。得られた噴霧乾燥粉末をさらに乾燥させて、静的乾燥機において残留溶媒を除去した。組成物2及び5のニロチニブ塩基固体分散体の粉末X線回折パターンを
図1に提供した。各組成物の総重量は100グラムであった。
【0169】
実施例2
表3に示される組成を有するニロチニブフマラートの固体分散体を、噴霧乾燥によって調製した。
【表3】
【0170】
製造手順:
表3によるニロチニブフマラート及び担体(すなわち、HPMC-AS、PVP K30又はHPMC E3)の必要量をメタノール及び/又はジクロロメタンに溶解して、フィーダー溶液を得た。得られたフィーダー溶液をノズルを通過させ、溶媒(すなわち、メタノール及びジクロロメタン)を素早く蒸発させるチャンバーに微細な噴霧として入れ、粉末を生成させた。得られた噴霧乾燥粉末をさらに乾燥させて、静的乾燥機において残留溶媒を除去した。調製された各組成物の総重量は100グラムであった。
【0171】
実施例3
表4に示される組成を有するニロチニブフマラートの固体分散体を、噴霧乾燥によって調製した。
【表4】
【0172】
製造手順:
表4に記載のニロチニブフマラート、HPMC-AS、PVP K30、HPMC E3及びフマル酸の必要量をメタノールに溶解して、フィーダー溶液を得た。得られたフィーダー溶液をノズルを通過させ、溶媒(すなわち、メタノール及びジクロロメタン)を素早く蒸発させるチャンバーに微細な噴霧として入れ、粉末を生成させた。得られた噴霧乾燥粉末をさらに乾燥させて、静的乾燥機において残留溶媒を除去した。各組成物の総重量は20グラムである。
【0173】
組成物13のニロチニブフマラートの非晶質固体分散体の粉末X線回折パターン(PXRD)を
図2に示す。
【0174】
実施例4
表5に示される組成を有するニロチニブタルトラートの固体分散体を、噴霧乾燥によって調製した。
【表5】
【0175】
製造手順:
表5に記載のニロチニブタルトラート、HPMC-AS及び酒石酸の必要量をメタノールに溶解して、フィーダー溶液を調製した。得られたフィーダー溶液をノズルを通過させ、メタノールを素早く蒸発させるチャンバーに微細な噴霧として入れ、粉末を生成させた。得られた噴霧乾燥粉末をさらに乾燥させて、静的乾燥機において残留溶媒を除去した。調製された各組成物の総重量は100グラムであった。
【0176】
組成物16の粉末X線回折パターンを
図3に示す。
上記の実施例1~4の噴霧乾燥に使用した機器は、Buchi B-290ミニ噴霧乾燥機であり、噴霧乾燥のパラメータを以下に示した:
総溶解固形分:10w/v%
入口温度(℃):120
吸引速度:100%
ノズルタイプ:ツイン流体ノズル
ノズル圧力:50psi
供給速度:10mL/分
【0177】
実施例5
表6に示される組成を有するニロチニブタルトラートの固体分散体を、ホットメルト押出(HME)によって調製した。
【表6】
【0178】
製造手順:
ニロチニブタルトラート、HPMC-AS、HPMC E3及びPVP K30の必要量を表6に記載のように秤量し、ポリバッグ中で物理的に混合した。次いで、得られた混合物を別々に押出機ホッパーに入れた。混合物を、押出機加熱ゾーンの温度設定の決定によって温度範囲約30℃~約170℃に加熱された押出機に通し、担体を溶融又は軟化させた。得られた押出成形物を室温に冷却し、製粉し、次いで、製粉された材料を30メッシュスクリーンに通してふるい分けした。調製された各組成物の総重量は100グラムであった。
【0179】
実施例6
表7に示される組成を有するニロチニブタルトラートの固体分散体を、ホットメルト押出(HME)によって調製した。
【表7】
【0180】
製造手順:
ニロチニブタルトラート、HPMC-AS、クエン酸トリエチル(TEC)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)及び酒石酸の必要量を表7に記載のように秤量し、ポリバッグ中で物理的に混合した。次いで、得られた混合物を別々に押出機ホッパーに入れ、押出機加熱ゾーンの温度設定の決定によって温度範囲約30℃~約170℃に加熱された押出機に通し、担体を溶融又は軟化させた。得られた押出成形物を室温に冷却し、製粉し、次いで、製粉された材料を30メッシュスクリーンに通してふるい分けした。調製された各組成物の総重量は100グラムであった。
【0181】
実施例5及び6で使用されるThermofischer11押出機は、ホッパーから複数の加熱ゾーンを通って押出ダイまで延在する単軸固体搬送機構を有する。ホットメルト押出中に使用される温度制御、押出機スクリュー速度、供給速度及び工程パラメータを以下に提供する。
【表8】
【0182】
実施例7
表9に示される組成を有するニロチニブカプセルを調製した。
【表9】
【0183】
製造手順:
1.必要量のニロチニブ塩基固体分散体(組成物2又は5由来)を、表9に記載の顆粒内成分(すなわち、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、AEROSIL(登録商標)及びステアリン酸マグネシウム)と混合した。
2.得られた混合物をローラーコンパクタで別々に圧密した。これらの圧密体を製粉し、30メッシュスクリーンに通して顆粒を得、これをAEROSIL(登録商標)とブレンドして予備滑沢化ブレンドを得た。
3.予備滑沢化ブレンドをステアリン酸マグネシウムで滑沢化させた。
4.最終ブレンドを、強度がそれぞれ25mg~100mgとなる各充填重量をカプセル内に充填した。
【0184】
0.01M HCl酸媒体及び続くFeSSIF媒体 pH5.0±0.05における、組成物34及び35の溶解プロファイル。
USP装置II(パドル)を使用して試験した場合;0.01M HCl媒体 500mLで37±0.5℃で60分間、続いてpH5.0±0.05 FeSSIF媒体 900mLで90分間、75rpmで撹拌し、組成物34及び35の溶解プロファイルを、以下の表10においてTASIGNA(登録商標)50mgカプセルと比較した。サンプル 5mLを、0.01M HCl酸媒体中で15分、30分及び60分で、FeSSIF媒体中で65分、70分、75分、90分、105分、120分、150分及び180分の時点で取り出した。取り出したサンプルを0.45μmナイロンメンブレンフィルターで濾過し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1:1の比で希釈し、UV分光光度計を備えたHPLCシステムを用いて波長230nmにおいて分析した。測定の結果を表10に示し、
図4にグラフで示す。
【表10】
【0185】
実施例8
表11に示される組成を有するニロチニブフマラートカプセルを調製した。
【表11】
【0186】
製造手順:
1.組成物13、14及び15のニロチニブフマラート固体分散体の必要量を秤量し、表11に記載の顆粒内成分(すなわち、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、AEROSIL(登録商標)及びステアリン酸マグネシウム)と混合した。
2.得られた混合物をローラーコンパクタで別々に圧密し、これらの圧密体を製粉し、別々に30メッシュスクリーンに通して顆粒を得、AEROSIL(登録商標)とブレンドして予備滑沢化ブレンドを得た。
3.予備滑沢化ブレンドをステアリン酸マグネシウムで滑沢化させた。
4.最終ブレンドを、強度がそれぞれ25mg~100mgとなる各充填重量をカプセル内に充填した。
【0187】
0.01M HCl媒体、続くFaSSIF又はFeSSIF媒体における、組成物36及びTASIGNA(登録商標)50mgカプセルの溶解プロファイル。
USP装置II(パドル)を使用することによって、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル及び組成物36を試験した場合;0.01M HCl媒体 500mLで37±0.5℃で60分間、続いてFeSSIF及びFaSSIF媒体 900mLで90分間、75rpmで撹拌し、組成物36の溶解プロファイルを、以下の表12においてFeSSIF及びFaSSIF媒体でTASIGNA(登録商標)50mgカプセルと比較した。サンプル 5mLを、0.01M HCl酸媒体中で15分、30分及び60分で、FeSSIF及びFaSSIF媒体中で65分、70分、75分、90分、105分、120分、150分及び180分の時点で取り出した。取り出したサンプルを0.45μmナイロンメンブレンフィルターで濾過し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1:1の比で希釈し、UV分光光度計を備えたHPLCシステムを用いて波長230nmにおいて分析した。測定の結果を表12に示し、
図5にグラフで示す。
【表12】
【0188】
実施例9
表13に示される組成を有するニロチニブフマラートの固体分散体を調製した。
【表13】
【0189】
製造手順は以下の通りであった。
1.組成物7、10及び12のニロチニブフマラート固体分散体の必要量を秤量し、表13に記載の顆粒内成分(すなわち、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、AEROSIL(登録商標)及びステアリン酸マグネシウム)と混合した。
2.得られた混合物をローラーコンパクタで別々に圧密し、これらの圧密体を製粉し、別々に30メッシュスクリーンに通した。得られた顆粒をAEROSIL(登録商標)とブレンドして、予備滑沢化ブレンドを得た。
3.予備滑沢化ブレンドをステアリン酸マグネシウムで滑沢化させた。
4.最終ブレンドを、強度がそれぞれ25mg~100mgとなる各充填重量をカプセル内に充填した。
【0190】
実施例10
表14に示される組成を有するニロチニブタルトラートカプセルを調製した。
【表14】
【0191】
製造手順:
組成物16及び17のニロチニブタルトラート固体分散体の必要量を表14に従って秤量し、表14による顆粒内成分(すなわち、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、AEROSIL(登録商標)及びステアリン酸マグネシウム)と混合した。得られた混合物をそれぞれ別々にローラーコンパクタで圧密した。得られた圧密体をそれぞれ別々に製粉し、30メッシュのスクリーンに通した。得られた顆粒をAEROSIL(登録商標)とブレンドして、予備滑沢化ブレンドを得た。予備滑沢化ブレンドをステアリン酸マグネシウムで滑沢化させた。最終ブレンドを、強度がそれぞれ25mg~100mgとなる各充填重量をカプセル内に充填した。
【0192】
0.01M HCl酸媒体及び続くFeSSIF媒体 pH5.0±0.05における、組成物50及び51の溶解プロファイル。
USP装置II(パドル)を使用して試験した場合;0.01M HCl媒体 500mLで37±0.5℃で60分間、続いてpH5.0±0.05 FeSSIF媒体 900mLで90分間、75rpmで撹拌し、組成物50及び51の溶解プロファイルを、以下の表15においてTASIGNA(登録商標)50mgカプセルと比較した。サンプル 5mLを、0.01M HCl酸媒体中で15分、30分及び60分で、FeSSIF媒体中で65分、70分、75分、90分、105分、120分、150分及び180分の時点で取り出した。取り出したサンプルを0.45μmナイロンメンブレンフィルターで濾過し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1:1の比で希釈し、UV分光光度計を備えたHPLCシステムを用いて波長230nmにおいて分析した。測定の結果を表15に示し、
図6にグラフで示す。
【表15】
【0193】
実施例11
表16に示される組成を有するニロチニブタルトラートの固体分散体を調製した。
【表16】
【0194】
製造手順:
表16に従って、必要量のニロチニブタルトラート、HPMC-AS MF及び酒石酸を秤量し、5分間ブレンドしてプレミックスを得た。得られたプレミックスをホットメルト押出機(Pharma 11 Twin-screw Extruder)にて、スクリュー速度100rpmで供給速度1g/分を使用してホットメルト押出を行った。押出成形物を温度160℃で収集し、製粉し、40メッシュスクリーンに通して顆粒を得た。指定量のAEROSIL(登録商標)を、40メッシュスクリーンを通して顆粒と一緒に共ふるいにかけ、5分間ブレンドして、予備滑沢化ブレンドを得た。ステアリン酸マグネシウムを60メッシュスクリーンに通し、予備滑沢化ブレンドに添加し、5分間滑沢化した。
【0195】
0.01M HCl酸媒体及び続く二倍強度FaSSIF媒体における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル及び組成物52の溶解プロファイル
USP装置II(パドル)を使用して試験した場合;0.01M HCl媒体 500mLで37±0.5℃で60分間、続いて二倍強度FaSSIF媒体 900mLで120分間、75rpmで撹拌し、組成物52の溶解プロファイルを、以下の表17においてTASIGNA(登録商標)50mgカプセルと比較した。サンプル 5mLを、0.01M HCl酸媒体中で15分、30分及び60分で、FaSSIF媒体中で65分、70分、75分、90分、105分、120分、150分及び180分の時点で取り出した。取り出したサンプルを0.45μmナイロンメンブレンフィルターで濾過し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1:1の比で希釈し、UV分光光度計を備えたHPLCシステムを用いて波長230nmにおいて分析した。測定の結果を表17に示し、
図7にグラフで示す。
【表17】
【0196】
実施例12
絶食状態の健康な成体ビーグル犬対象における組成物52の薬物動態及びバイオアベイラビリティを試験するための試験を行った。
【0197】
この試験は、組成物52及びTASIGNA(登録商標)50mgカプセルの非盲験、バランスのとれた非ランダム化2処置、2群2期、単回投与、双方向クロスオーバー経口生物学的同等性試験であり、8匹の健康な成体ビーグル犬において絶食条件下で実施した(n=8)。
【表18】
【0198】
実施例13
表19に示される組成を有するニロチニブフマラートカプセルを調製した。
【表19】
【0199】
製造手順:
ニロチニブフマラート、フマル酸及びHPMC-ASの必要量をメタノール溶媒に溶解して、固形分3%を含有する溶液を調製した。調製した溶液を噴霧乾燥機(Buchi B-290)に入口温度115℃、流速10mL/分で噴霧した。得られた噴霧乾燥固体分散体をカプセルに充填した。
【0200】
0.01M HCl酸媒体、及び続くpH6.5 FaSSIF緩衝媒体、又は続くpH5.0 FeSSIF緩衝媒体における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル及び組成物53の溶解プロファイル
USP装置II(パドル)を使用して試験した場合;0.01M HCl媒体 500mLで37±0.5℃で60分間、続いてpH6.5 FaSSIF緩衝媒体又は続いてpH5.0 FeSSIF緩衝媒体 900mLでそれぞれ120分間、75rpmで撹拌し、組成物53の溶解プロファイルを、以下の表20においてTASIGNA(登録商標)50mgカプセルと比較した。サンプル 5mLを、0.01M HCl酸媒体中で15分、30分及び60分で、FaSSIF緩衝媒体及びFeSSIF緩衝媒体中で65分、70分、75分、90分、105分、120分、150分及び180分の時点で取り出した。取り出したサンプルを0.45μmナイロンメンブレンフィルターで濾過し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1:1の比で希釈し、UV分光光度計を備えたHPLCシステムを用いて波長230nmにおいて分析した。測定の結果を表20に示し、
図8にグラフで示す。
【表20】
【0201】
実施例14
絶食状態の6匹の健康な成体ビーグル犬対象における組成物53の薬物動態及びバイオアベイラビリティを試験するための試験を行った。
【表21】
【0202】
実施例15
表22に示される組成を有するニロチニブフマラート錠剤を調製した。
【表22】
【0203】
製造手順
乾式造粒/スラグ化工程は、以下を含んでいた:
1.表22に記載の組成物53、微結晶セルロース、クロスポビドン、AEROSIL(登録商標)及びステアリン酸マグネシウムのニロチニブフマラート固体分散体の必要量を秤量し、5分間ブレンドした。
2.得られたブレンドを21.00mmの円形パンチで圧縮してスラグを作製した。
3.得られたスラグを製粉し、40メッシュスクリーンに通して顆粒を得た。
4.クロスポビドン及びAEROSIL(登録商標)の必要量を秤量し、40メッシュスクリーンを通して顆粒と一緒に共ふるい分けし、5分間ブレンドして予備滑沢化ブレンドを得た。
5.ステアリン酸マグネシウムを60メッシュのふるいに通し、予備滑沢化ブレンドに添加し、5分間滑沢した。
【0204】
湿式造粒工程は以下を含んでいた:
1.組成物53のニロチニブフマラート固体分散体を、高速ミキサー造粒機においてMETHOCEL(登録商標)E5の水溶液を用いて造粒した。得られた顆粒を60℃で20分間乾燥させた。乾燥させた顆粒を40メッシュスクリーンに通してふるい分けした。
2.クロスポビドン及びAEROSIL(登録商標)の必要量を秤量し、40メッシュスクリーンを通して顆粒と一緒に共ふるい分けし、5分間ブレンドして予備滑沢化ブレンドを得た。
3.ステアリン酸マグネシウムを60メッシュスクリーンに通し、予備滑沢化ブレンドに添加し、5分間滑沢した。
【表23】
【0205】
0.01N HCl酸媒体、及び続くpH6.5 FaSSIF緩衝媒体における、TASIGNA(登録商標)50mgカプセル、組成物54及び55の溶解プロファイル。
USP装置II(パドル)を使用して試験した場合;0.01N HCl媒体 500mLで37±0.5℃で60分間、続いてpH6.5 FaSSIF緩衝媒体 900mLで120分間、75rpmで撹拌し、組成物54及び55の溶解プロファイルを、以下の表24においてTASIGNA(登録商標)50mgカプセルと比較した。サンプル 5mLを、0.01N HCl酸媒体中で15分、30分及び60分で、FaSSIF緩衝媒体中で65分、70分、75分、90分、105分、120分、150分及び180分の時点で取り出した。取り出したサンプルを0.45μmナイロンメンブレンフィルターで濾過し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1:1の比で希釈し、UV分光光度計を備えたHPLCシステムを用いて波長230nmにおいて分析した。測定の結果を表24に示し、
図9にグラフで示す。
【表24】
【0206】
実施例16
ホットメルト押出方法の最適化
本発明の医薬組成物を調製するための方法は、押出工程とそれに続く製剤化工程を含む。不純物の形成が観察され、採用されたホットメルト押出の工程温度に直接関連すると判断した。不純物の形成を低減するために、ホットメルト押出中の工程温度、供給速度及びスクリュー速度の最適化が重要であった。供給速度及びスクリュー速度などの重要な工程パラメータもまた、固体分散体におけるニロチニブの非晶質性などの固体分散体の重要な生成物属性に有意な影響を及ぼすことが見出された。
【0207】
ニロチニブ固体分散体における不純物形成に対する様々な工程温度の影響を以下の表25に示す。
【表25】
【0208】
ニロチニブ固体分散体における不純物形成に対する様々な供給速度及びスクリュー速度の影響を以下の表26に示す。
【表26】
【0209】
ここで本発明を十分に説明したが、本発明又はその任意の実施形態の範囲に影響を及ぼすことなく、広範囲の同等のパラメータ範囲内で実行可能であることが当業者には理解されよう。本明細書に開示される全ての刊行物、特許出願及び特許は、その全体が参照により組み入れられる。
【0210】
特に明記しない限り、本発明における百分率、部及び比は全て重量基準である。
【0211】
別段の指示がない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内に入る任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示される全ての値の各範囲(「約a~約b」、又は同等に「およそaからb」、又は同等に「およそa~b」の形態)は、より広い値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を示すと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権者によって明白かつ明確に定義されていない限り、それらの平易な通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、それが前に置かれる要素の1つ以上を意味するように本明細書で定義される。
【0212】
組成物及び方法は、様々な成分又は工程を「含む(comprising)」という観点で本明細書に記載されているが、該組成物及び方法はまた、様々な成分及び工程「から本質的になる(consist essentially of)」又は「からなる(consist of)」可能性もある。