(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/605 20060101AFI20230117BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230117BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230117BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230117BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230117BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C07K14/605
A61K38/26
A61K47/60
A61K47/62
A61K47/54
A61P3/04
A61P3/10
C07K7/08 ZNA
(21)【出願番号】P 2020508489
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 KR2018009425
(87)【国際公開番号】W WO2019035672
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103798
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0095717
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513131590
【氏名又は名称】ドン-ア エスティ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チェ-スン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キュン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ユ-ナ
(72)【発明者】
【氏名】ベク、ゲ-リム
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、イル-フン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、チェ-リム
(72)【発明者】
【氏名】イム、ウォン-ビン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/045400(WO,A1)
【文献】特表2012-511902(JP,A)
【文献】特表2012-511901(JP,A)
【文献】特表2012-511900(JP,A)
【文献】国際公開第2016/049190(WO,A1)
【文献】特表2015-502380(JP,A)
【文献】特表2016-521253(JP,A)
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2015年,Vol.103,p.175-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/605
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iのオキシントモジュリンペプチド類似体。
<式I>
His-X
1-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-X
8-X
9-Arg-Arg-Ala-X
10-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-X
11-X
12-X
13-X
14-X
15-X
16(配列番号49)
(式中、
X
1はAib(アミノイソ酪酸)であり;
X
2はAspであり;
X
3はTyr又はZであり;
X
4はSerであり;
X
5はLysであり;
X
6はTyrであり;
X
7はLeuであり;
X
8はAspであり;
X
9はSer、Aib(アミノイソ酪酸)又はZであり;
X
10はGln又はZであり;
X
11はMet又はLeuであり;
X
12はAsn又はArgであり;
X
13はThr又はAlaであり;
X
14はLysであり;
X
15は存在せず;
X
16は存在せず;
C末端のアミノ酸は、任意にアミド化でき;
ここで、X
3、X
9、X
10のうちの1つがZであり;
Zは、
Z
1
とZ
2
が接合された、官能化されたLysであ
り、Z
1
は下記構造式(1)で表され、Z
2
は下記構造式(3)で表され、構造式(1)の「*」はLys側鎖に直接接合され、構造式(1)の「**」と構造式(3)の「**」は、Z
1
とZ
2
間の結合である。)
【化1】
(1)
【化3】
(3)
【請求項2】
X
11位がLeuであり、X
12位がArgであり、X
13位がAlaであることを特徴とする、請求項1に記載のオキシントモジュリンペプチド類似体。
【請求項3】
前記ペプチド類似体は、化合物2(配列番号3)、化合物3(配列番号4)、化合物6(配列番号7)、化合物9(配列番号10)、化合物10(配列番号11)、化合物12(配列番号13)、化合物15(配列番号16)、化合物16(配列番号17)、化合物17(配列番号18)、又は化合物18(配列番号19)であることを特徴とする、請求項1に記載のオキシントモジュリンペプチド類似体。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のオキシントモジュリンペプチド類似体を有効成分として含み、医薬的に許容される賦形剤を含む、肥満又は過体重によって引き起こされるか特徴付けられる病態の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のオキシントモジュリンペプチド類似体を有効成分として含み、医薬的に許容される賦形剤を含む、肥満又は過体重を伴うインスリン非依存性糖尿病の治療又は予防用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシントモジュリンペプチド類似体、及びこれを含む肥満又は過体重、又はこれを伴うインスリン非依存性糖尿病の予防又は治療に使用することができる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代謝性疾患(Metabolic Disease、Metabolic Syndrome)は、ブドウ糖、脂肪、タンパク質などの代謝異常から生じる病気であって、主にブドウ糖と脂肪代謝の異常により誘発される癌、糖尿病、骨代謝疾患、脂肪肝、肥満、心血管系疾患などを通称する。2001年に報告された全米コレステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program;NCEP)のATPIII(adult treatment panel III)又は2012年に発表された国際糖尿病連合(International Diabetes Federation;IDF)による代謝性疾患の診断基準は、次のとおりである。(1)腰回りが男102又は94cm(それぞれNCEP又はIDF)、女子88又は80cm(それぞれNCEP又はIDF)以上である腹部肥満、(2)中性脂肪(triglycerides)150mg/dL以上の高中性脂肪血症、(3)HDLコレステロールが男40mg/dL、女性50mg/dL以下、(4)血圧130/85mmHg以上の高血圧、又は(5)空腹時血糖(fasting glucose)110mg/dL以上などの5つの危険因子のうち3つ以上を示す場合に代謝性疾患に分類することができる。
【0003】
世界保健機関(World Health Organization;WHO)によれば、全世界の肥満有病率は、1980年から2014年の間に2倍以上増加しており、2014年には18歳以上の成人のうち39%(男性38%、女性40%)が過体重、13%(男性11%、女性15%)が肥満であった。このような肥満及び過体重の根本的な原因はカロリー摂取と消費間のエネルギー不均衡であって、脂肪が多くエネルギー密度が高い食事や現代社会の仕事の性格、交通手段の変化、都市化の増加などによる身体活動の低下が肥満の危険要素として考えられている。肥満に伴う疾患の一つである糖尿病も、その有病率が急速に増加している傾向にあり、1980年に18歳以上の成人中の4.7%であった有病率が2015年には8.5%へと上昇した。糖尿病の有病率は、中産階級と低所得国でより急速に増えており、失明、腎不全、心臓麻痺、脳卒中などの主な原因となる。
【0004】
グルカゴンは、膵臓のアルファ細胞で生産されるホルモンであって、一般に、ブドウ糖の新生合成だけでなく、肝臓に貯蔵されるグリコーゲンを分解して血糖を高める役割を果たすが、貯蔵されたグリコーゲンが枯渇すると、グルカゴンは、肝臓と腎臓がブドウ糖を新たに合成するようにし、食欲を抑制し、貯蔵されている中性脂肪(Triglyceride)を脂肪酸に分解してエネルギー代謝量の増加による体重減少にも影響があることが知られている(Diabetes.co.uk. the global diabetes community, Anim Sci J. 2016;87(9):1090-1098)。
【0005】
GLP-1(Glucagon-like peptide-1)は、グルカゴン誘導体の一つであって、血糖を減少させる役割を果たすペプチドホルモンである。食後に小腸のL-細胞から分泌され、半減期が2分未満と非常に短いが、ブドウ糖によって分泌が増加すると、膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌を誘導することにより、究極的に血糖を調節し、ベータ細胞機能を改善させる役割を果たすことが報告されている。また、グルカゴン分泌阻害、胃空腹抑制、食物摂取減少の機能を持つ(Physiol Rev. 2007;87(4):1409-1439)。Novo Nordiskのリラグルチド(Liraglutide)は、2型糖尿病及び肥満適応症に対して開発された治療薬であって、1日1回注射されるヒトGLP-1誘導体である。リラグルチド(Liraglutide)は、持続性GLP-1受容体アゴニストであって、内因性GLP-1と同じ受容体に結合してブドウ糖依存的にインスリン分泌を促進させることにより血糖を調節し、食欲を減少させて体重増加を抑制し、中性脂肪を下げる作用によって、2型糖尿病に対してはVictoza、肥満に対してはSaxendaという名前で米国及び欧州で発売された(Expert Rev Cardiovasc Ther. 2015;13(7):753-767)。リラグルチド(Liraglutide)の他にも、エクセナタイド(Exenatide)、リキシセナチド(Lixisenatie)、アルビグルチド(albiglutide)及びデュラグルチド(dulaglutide)などが糖尿病治療薬として開発された。しかし、このようなGLP-1受容体アゴニストの副作用としては、吐き気、嘔吐、食欲不振、頭痛、便秘、腹部膨満感の発生などが報告されている(Korean J Med. 2014;87(1):9-13)。
【0006】
オキシントモジュリンは、グルカゴンの前駆体であるプログルカゴン(proglucagon)に由来するペプチドであって、グルカゴンの完全な29個のアミノ酸配列を含む37個のアミノ酸ペプチドから構成されており、GLP-1及びグルカゴン受容体の両方に結合する二重作用を有する。食物摂取を減少させるとともにエネルギー代謝を増加させることにより体重減少効果を示すが、このようなオキシントモジュリンの作用は、選択的なGLP-1受容体アゴニストよりも優れることが知られており、グルカゴン受容体の活性化によるブドウ糖の増加に起因する高血糖のリスクは、一緒に活性化されるGLP-1受容体によるインスリン分泌を介して血糖が調節されることにより解消できることが報告されている。オキシントモジュリンは、非臨床試験で飼料摂取量及び体重の減少、エネルギー消費の増加、及び糖代謝の向上に影響することが報告されており(Diabetes. 2009;58(10):2258-2266)、臨床試験においても、過体重及び肥満の患者に1日3回ずつ4週間皮下投与をした場合に平均2.3kgの体重減少を示すことが確認されており(Diabetes. 2005;54:2390-2395)、プラセボ群に比べて有意なインスリン分泌及び血糖減少効果も確認されており(Diabetes. 2013;62(Suppl. 1):A48)、別の臨床試験では、オキシントモジュリンの持続的な注入による嘔吐や食欲促進などの副作用なしにエネルギー摂取を減少させることが確認されており(J Clin Endocrinol Metab. 2003;88:4696-4701)、血糖調節、食物摂取の減少、満腹感の増進などの機能を示すことができるので、肥満治療及び血糖調節を目的とする新たな治療法として脚光を浴びている(Molecular metabolism. 2014;3:241-251)。しかし、オキシントモジュリンは、GLP-1のようにジペプチジルペプチダーゼ-IV(Dipeptidyl peptidase-IV;DPP-IV)によって切断され、生体内で不安定に非常に短い半減期を有する(J Biol Chem. 2003;278: 22418-22423)。
【0007】
したがって、GLP-1及びグルカゴン受容体にバランスよく選択的に結合して薬理学及び治療学的な面でオキシントモジュリンの作用を長期間持続させ、各ホルモンペプチドの副作用を克服することができるDPP-IV耐性オキシントモジュリン誘導体についての研究が報告されており(Diabetes. 2009;58(10):2258-2266)、メルク(Merck)、Zealand、Medimmune、韓米薬品などのさまざまな会社で先導物質についての開発が進行中である。
【0008】
このような背景の下で、本発明は、(1)DPP-IVに対する抵抗性を付与し、(2)アシル化による代謝安定性を最適化させ、(3)GLP-1及びグルカゴン受容体に対して元のオキシントモジュリンよりも優れた活性を示す合成オキシントモジュリンペプチド類似体の開発による肥満又は肥満を伴う糖尿病の治療に使用するための治療用医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来のオキシントモジュリンよりもGLP-1及びグルカゴン受容体に対する活性が高く、アシル化によって化学的に安定化されて(Molecular metabolism 2013;2:468-479)生体内半減期が増加したオキシントモジュリンペプチド類似体を提供し、肥満又は過体重、又はこれらを伴うインスリン非依存性糖尿病によって引き起こされるか特徴付けられる病態の予防又は治療に使用することができるオキシントモジュリンペプチド類似体及びこれを含む医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、オキシントモジュリンペプチド類似体である下記式Iのアミノ酸配列を含む新規なペプチドを提供する。
<式I>
His-X1-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-Arg-Arg-Ala-X10-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-X11-X12-X13-X14-X15-X16(配列番号49)
式中、
X1はSer又はAib(アミノイソ酪酸)であり;
X2はAsp又はZであり;
X3はTyr又はZであり;
X4はSer又はZであり;
X5はLys又はZであり;
X6はTyr又はZであり;
X7はLeu又はZであり;
X8はAsp又はZであり;
X9はSer、Aib(アミノイソ酪酸)又はZであり;
X10はGln又はZであり;
X11はMet又はLeuであり;
X12はAsn又はArgであり;
X13はThr又はAlaであり;
X14はLys又はZであり;
X15はRNRNNIA(配列番号51)であるか存在せず;
X16は、X15が存在する場合、Zであるか存在せず;
C末端のアミノ酸は、任意にアミド化でき;
ここで、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X14又はX16のうちの少なくとも1つがZであり;
Zは、官能化されたLysであって、その側鎖にポリマー性部分とスペーサーの接合体であるZ1と親油性脂質部分であるZ2が接合された形態であり、ここで、Z1はアシル官能基を介してLys側鎖に直接接合され、Z2はZ1を介してLys側鎖に接合され、Z1は下記構造式(1)又は(2)であり、
【0011】
【0012】
【0013】
Z2は下記構造式(3)又は(4)である。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明において、アミノ酸は、下記略語を併用記載した。
【0017】
Ala(A)、Lys(K)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、His(H)、Ile(I)、Met(M)、Ser(S)、Val(V)、Gly(G)、Leu(L)、Pro(P)、Thr(T)、Phe(F)、Arg(R)、Tyr(Y)、Trp(W)、Glu(E)、Gln(Q)、Aib(アミノイソ酪酸)。
【0018】
本発明において、用語「オキシントモジュリン(oxyntomodulin)」とは、グルカゴンの前駆体であるプレグルカゴンから作られるペプチドを意味し、天然型のオキシントモジュリンは、HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKRNRNNIA(配列番号1)のアミノ酸配列を有する。
【0019】
本発明において、Zの構成要素の一つであるZ1は、ポリマー性部分としてポリエチレングリコールを有し、モノマーとしてエチレングリコール、エタノールアミン及び乳酸を有する共重合体、又はモノマーとしてグリシン及びセリンを有するポリアミノ酸共重合体の形を持つことができ、ポリアミノ酸は、GGSGSGのアミノ酸配列(配列番号配列番号52)であり、本発明の化合物は、前記ポリマー性部分の繰り返し単位を2個以上持つことができる。
【0020】
また、Z1は、一末端に上述のオキシントモジュリンペプチド類似体の任意の残基又はその側鎖に付着するための官能基を持つことができる。好ましくはアシル基であり、この場合、側鎖のアミノ基にアミド結合の形で付着することができ、幾つかの実施態様において、Z1は、一末端にスペーサーと結合されるための官能基を持つことができる。好ましくはアミノ基であり、この場合、スペーサーのカルボキシ基にアミド結合の形で付着することができ、Z1は、好ましくは水溶性を有し、よって、両親媒性又は親水性であり得る。
【0021】
本発明において、スペーサーは、L-グルタミン酸残基であって、そのγ-カルボン酸には、ポリマー性部分であるZ1が共有結合され、α-アミノ基には、親油性脂質部分であるZ2が共有結合され、2つ以上の繰り返し単位を持つことができる。
【0022】
Zの別の構成要素であるZ2の脂質部分はスペーサーと直接接合され、スペーサーはポリマー性部分に直接接合され、ポリマー性部分は、本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体のX2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X14又はX16位に存在するアミノ酸残基の側鎖と直接接合でき、好ましくは、この接合を可能にするアミノ酸残基としてLysが導入できる。
【0023】
また、Z2は、C14~C20の飽和炭化水素鎖を含み、この炭化水素鎖の末端炭素がカルボン酸型、一次アミド型、又は任意の単一のアミノ酸と共有結合で連結されたカルボン酸型であるペプチド誘導体である。この時、炭化水素鎖は分枝状又は直鎖状であり得る。炭化水素鎖がスペーサーに付着するために必要な官能基は、上述した脂質部分の一部を形成し、アシル基、スルホニル基、N原子、O原子、S原子などを含むことができる。
【0024】
したがって、スペーサーの付着は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドを介して行われ得る。好ましくは、炭化水素鎖は、アシル基を介してアミド結合の形でスペーサーのアミノ基に接合される。よって、炭化水素鎖は、特にアルカノイル基形態の一部であり得る。
【0025】
特定の理論にその解釈の制限を受けようとするものではないが、親油性脂質部分は血流内でアルブミンと結合することにより、本発明の化合物が血流内のさまざまな分解酵素の基質として反応することを防止して、その生体内半減期を向上させるものとされる。
【0026】
本発明において、オキシントモジュリンペプチド類似体内の一つ以上のアミノ酸側鎖は、ポリマー性部分とスペーサーを介して親油性脂質部分に接合され、このような化学的変形は、本発明のオキシントモジュリンペプチド誘導体の生体内可用性又は/及び半減期を増加させたり、生体利用率を増加させたりするなどの薬学的に有利な効果を誘導することができる。
【0027】
前記式Iのアミノ酸配列を含む新規なペプチドは、天然型のオキシントモジュリンの2番位に存在するSer残基をAibに置換して製造することができる。本発明の前記実施態様で提示された化合物は、オキシントモジュリンペプチド類似体X1位にAibが導入された場合であって、天然型のオキシントモジュリンと比較してジペプチジルペプチダーゼIVに対してさらに大きい抵抗性を有するものとされる。結果的に、本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンに比べて改善された生体内安定性を有する。
【0028】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの27番位に存在するMet残基をLeuに置換し、28番位に存在するAsn残基をArgに置換し、29番位に存在するThr残基をAlaに置換して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物12(SEQ ID NO。13)の場合、X11位をLeu、X12位をArg、X13位をAlaにそれおぞれ置換して製造したものである。
【0029】
本発明において、好ましいオキシントモジュリンペプチド誘導体は、下記式I-1のアミノ酸配列を含む新規なペプチドである。
【0030】
<式I-1>
HX1QGTFTSDX3SKYLDX9RRAX10DFVQWLX11X12X13X14X15X16(配列番号配列番号50)
前記アミノ酸配列において、
X1はSer又はAib(アミノイソ酪酸)であり;
X3はTyr又はZであり;
X9はSer、Aib又はZであり;
X10はGln又はZであり;
X11はMet又はLeuであり;
X12はAsn又はArgであり;
X13はThr又はAlaであり;
X14はLys又はZであり;
X15は、RNRNNIA(配列番号配列番号51)であるか存在せず;
X16は、X15が存在する場合、Zであるか存在せず、C末端はアミド化でき、
Zは前記式Iで定義したとおりである。
【0031】
前記式Iのペプチド類似体を含む実施態様には、化合物1(配列番号配列番号2)、化合物2(配列番号配列番号3)、化合物3(配列番号配列番号4)、化合物4(配列番号配列番号5)、化合物5(配列番号配列番号6)、化合物6(配列番号配列番号7)、化合物7(配列番号配列番号8)、化合物8(配列番号配列番号9)、化合物9(配列番号配列番号10)、化合物10(配列番号配列番号11)、化合物11(配列番号配列番号12)、化合物12(配列番号配列番号13)、化合物13(配列番号配列番号14)、化合物15(配列番号配列番号16)、化合物16(配列番号配列番号17)、化合物17(配列番号配列番号18)、化合物18(配列番号配列番号19)を含むことができる。
【0032】
また、前記本発明に係る式Iのオキシントモジュリンペプチド類似体は、アミノ酸配列内に一つ以上の分子内架橋、すなわち、X9とX10は分子内結合(ラクタム化、ジスルフィド(di-sulfide)結合)又は架橋剤(cross linker)を介して環状ペプチドを形成することができる。
【0033】
したがって、本発明の他の目的は、下記式IIのアミノ酸配列を含む新規なオキシントモジュリンペプチド類似体を提供することである。
<式II>
His-X17-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-X18-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-X19-Arg-Arg-Ala-X20-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Lys(配列番号配列番号53)
式中、
X17はSer又はAib(アミノイソ酪酸)であり;
X18はZであり;
X19はAsp、Glu、Cys、Hcy(ホモシステイン)、Lys又はOrn(オルニチン)であり;
X20はAsp、Glu、Cys、Hcy(ホモシステイン)、Lys又はOrn(オルニチン)であり;
X19とX20は、分子内結合又は架橋剤を介して環状ペプチドを形成することができ、このとき、環状ペプチドは、2つの残基の間にアミド結合で形成されたラクタム環、又は2つの残基の間にジスルフィド結合で形成されたジスルフィド環、又は2つの残基の間に架橋剤結合で形成された架橋環を有するペプチドであり;
C末端のアミノ酸は任意にアミド化でき;
Zは、官能化されたLysであって、その側鎖にポリマー性部分とスペーサーの接合体であるZ1と親油性脂質部分であるZ2が接合された形態であり、ここで、Z1はアシル官能基を介してLys側鎖に直接接合され、Z2はZ1を介してLys側鎖に接合され、Z1は下記構造式(1)又は(2)であり、
【0034】
【0035】
【0036】
Z2は下記構造式(3)又は(4)である。
【0037】
【0038】
【0039】
X19とX20の分子内結合は、X19とX20がそれぞれAsp(又はGlu)とLys(又はOrn)であるとき、又はそれぞれLys(又はOrn)とAsp(又はGlu)であるときには、分子内ラクタム環形成結合であるか;或いは、X19とX20がそれぞれCys(又はHcy)とCys(又はHcy)であるときには、分子内ジスルフィド環形成結合であり;
X19とX20がそれぞれCys(又はHcy)とCys(又はHcy)であるとき、架橋剤は、両方のCys(又はHcy)側鎖のチオール官能基に結合されて環を形成し、このとき、架橋剤は、C1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル、C3-C8飽和又は不飽和シクロアルキル、C6-C10アリール、又はC5-C12ヘテロアリール又は融合されたヘテロサイクリックアリールであり、好ましくは、
【0040】
【0041】
であり;
Rは水素又はC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキルであり;
X19とX20がそれぞれAsp(又はGlu)とAsp(又はGlu)であるとき、架橋剤は、両方のAsp(又はGlu)側鎖のカルボキシル基にアミド結合で環を形成し、このとき、架橋剤は、ジアミノC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル、ジアミノC3-C8飽和又は不飽和シクロアルキル、アミノピペリジン、ピペラジン、ジアミノC6-C10アリール、又はジアミノC5-C12ヘテロアリール又は融合されたヘテロサイクリックアリールであり、
好ましくは、
【0042】
【0043】
であり;
Rは水素又はC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキルであり;
X19とX20がそれぞれLys(又はOrn)とLys(又はOrn)であるとき、架橋剤は、両方のLys(又はOrn)側鎖のアミン基にアミド結合で環を形成し、このとき、架橋剤は、ジカルボニルC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル、ジカルボニルC3-C8飽和又は不飽和シクロアルキル、ジカルボニルC6-C10アリール又はジカルボニルC5-C12ヘテロアリール又は融合されたヘテロサイクリックアリールであり、好ましくは、
【0044】
【0045】
であり;
Rは水素又はC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキルであり;
X19とX20がそれぞれAsp(又はGlu)とLys(又はOrn)であるとき、又は、それぞれLys(又はOrn)とAsp(又はGlu)であるとき、架橋剤は、Asp(又はGlu)側鎖のカルボキシル基と架橋剤のアミン官能基とアミド結合で連結され、Lys(又はOrn)側鎖のアミン基には、架橋剤のカルボキシル官能基とアミド結合で連結されて環を形成し、このとき、架橋剤は、αアミノ酸(Gly、Val、Leu、Ileなど)、βアミノ酸、カルボニルC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキルアミン、カルボニルC3-C8飽和又は不飽和アルキルアミン、カルボニルピペリジン、アミノベンゾイル、カルボニルC6-C10アリールアミン又はカルボニルC5-C12ヘテロアリールアミン又は融合されたヘテロサイクリックアリールアミンであり、好ましくは、
【0046】
【0047】
であり;
Rは水素又はC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキルである。
【0048】
前記式Iのアミノ酸配列内に一つ以上の分子内架橋を持つことができる式IIのペプチド類似体を含む実施態様には、化合物14(配列番号15)、化合物19(配列番号20)、化合物20(配列番号21)、化合物21(配列番号22)、化合物22(配列番号23)、化合物23(配列番号24)、化合物24(配列番号25)、化合物25(配列番号26)、化合物27(配列番号28)、化合物28(配列番号29)、化合物29(配列番号30)、化合物30(配列番号31)、化合物31(配列番号32)、化合物32(配列番号33)、化合物33(配列番号34)、化合物34(配列番号35)、化合物35(配列番号36)、化合物36(配列番号37)、化合物37(配列番号38)、化合物38(配列番号39)を含むことができる。
【0049】
前記式IIのペプチドの架橋は、式Iの配列内で3個のアミノ酸の間隔を置いて分離された2つの任意のアミノ酸がそれぞれ含んでいる残基内又は側鎖内の任意の官能基間の化学的共有結合、又はイオン間の相互作用によって行われ得る。好ましくは、X19残基とX20残基のアミノ酸側鎖同士にラクトン環、ラクタム環又はジスルフィド環を形成しながら架橋が行われることもあり、X19残基とX20残基のアミノ酸側鎖と架橋剤の連結を介して環を形成しながら架橋が行われることもある。
【0050】
前記式IIのアミノ酸配列を含む新規なペプチドは、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をCys又はHcyに置換し、20番位に存在するGln残基をCys又はHcyに置換した後、分子内ジスルフィド環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物28(配列番号29)の場合には、X19位をCys、X20位をCysにそれぞれ置換した後、分子内ジスルフィド環を形成して製造することができる。
【0051】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をCys又はHcyに置換し、20番位に存在するGln残基をCys又はHcyに置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物22(配列番号23)の場合には、X19位をCys、X20位をCysにそれぞれ置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができる。
【0052】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をAsp又はGluに置換し、20番位に存在するGln残基をLys又はOrnに置換した後、分子内ラクタム環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物26(配列番号27)の場合には、X19位をAsp、X20位をLysにそれぞれ置換した後、分子内ラクタム環を形成して製造することができ、化合物14(配列番号15)、化合物19(配列番号20)、化合物20(配列番号21)、化合物24(配列番号25)、化合物25(配列番号26)の場合には、X19位をGlu、X20位をLysにそれぞれ置換した後、分子内ラクタム環を形成して製造することができる。
【0053】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をAsp又はGluに置換し、20番位に存在するGln残基をLys又はOrnに置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物37(配列番号38)、化合物38(配列番号39)の場合には、X19位をAsp、X20位をLysにそれぞれ置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができ、化合物33(配列番号34)、化合物34(配列番号35)、化合物35(配列番号36)、化合物36(配列番号37)の場合、X19位をGlu、X20位をLysにそれぞれ置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができる。
【0054】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をLys又はOrnに置換し、20番位に存在するGln残基をAsp又はGluに置換した後、分子内ラクタム環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物21(配列番号22)の場合、X19位をLys、X20位をGluに置換した後、分子内ラクタム環を形成して製造することができ、化合物27(配列番号28)の場合、X19位をLys、X20位をAspにそれぞれ置換した後、分子内ラクタム環を形成して製造することができる。
【0055】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をLys又はOrnに置換し、20番位に存在するGln残基をAsp又はGluに置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物32(配列番号33)の場合には、X19位をLys、X20位をGluにそれぞれ置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができる。
【0056】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をAsp又はGluに置換し、20番位に存在するGln残基をAsp又はGluに置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物23(配列番号24)、化合物29(配列番号30)、化合物30(配列番号31)の場合、Xには19位をGlu、X20位をGluにそれぞれ置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができる。
【0057】
また、前記本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンの16番位に存在するSer残基をLys又はOrnに置換し、20番位に存在するGln残基をLys又はOrnに置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができ、例えば、下記実施態様中の化合物31(配列番号32)の場合には、X19位をLys、X20位をLysにそれぞれ置換した後、架橋剤で2残基を連結して環を形成して製造することができる。
このような分子内架橋は、ペプチドのアルファ螺旋構造を安定化させてGLP-1受容体及び/又はグルカゴン受容体においてその選択性や薬理上効能を増加させるものとされる(ACS Chem Biol. 2016;11:324-328)。
【0058】
本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体は、化学的に変形することができる。特に、ペプチドをなすそれぞれのアミノ酸残基は、様々なスペーサー又はリンカーと直接連結でき、また、それぞれの残基は、アルキル化、ジスルフィド結合形成、金属錯化、アミド化、エステル化、酸化、還元などの化学的反応を起こして、該当する化学的産物に変形することができる。特に、本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体の構造に存在する任意のカルボキシ末端又はアミノ末端は、エステル化、アミド化、アシル化などによって類似体化できる。さらに、本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体は、その構造に存在する任意のアミン基の酸付加塩、又は任意のカルボキシ基のカルボン酸塩又はそのアルカリ付加塩として提供できる。
【0059】
また、本発明は、前記ペプチド類似体を有効成分とし、医薬的に許容される賦形剤を含む、肥満又は過体重及びこれを伴う糖尿病の予防及び治療用医薬組成物に関するものである。
本発明の用語「予防」とは、目的とする疾患の発症を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。また、本発明の用語「治療」とは、発生した病気の症状を軽減、改善又は緩和させる全ての行為を意味する。
【0060】
特に、本発明のペプチド類似体は、グルカゴン受容体とGLP-1受容体に対する二重アゴニストであって、食物摂取におけるGLP-1の効果と脂肪代謝とエネルギー消費におけるグルカゴンの効果を全て示すので、本発明のペプチド類似体を含む肥満又は過体重及びこれを伴う糖尿病の予防及び治療用医薬組成物は、過度に蓄積された脂肪の除去と食物摂取抑制の組み合わせ効果によって体重調節において医学的に有利な効果を誘導することができる。
【0061】
また、本発明のペプチド類似体とこれを含む医薬組成物は、血糖を減少させるので、肥満を伴う糖尿病の予防又は治療に使用できる。特に肥満を伴うインスリン非依存性糖尿病である2型糖尿病を治療するために使用できる。特定の理論にその解釈の制限を受けようとするものではないが、本発明のペプチド類似体を含む医薬組成物は、グルカゴン誘導体の一つであって血糖を減少させる役割をするGLP-1受容体への活性が高いため、究極的には血糖調節に有用である。
【0062】
したがって、本発明のペプチド類似体を含む医薬組成物は、肥満、病的肥満、手術前病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘導された睡眠無呼吸、肥満を伴う糖尿病の治療及び予防などの、過体重によって引き起こされるか特徴付けられる任意の病態の直接又は間接治療法の一環として、単独で投与されるか、或いは他の関連薬剤と併用投与され得る。また、本発明のペプチド類似体を含む医薬組成物は、体重による効果の結果であるか、これに関連している可能性のある病態、例えば、代謝症候群、高血圧、動脈硬化誘発脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈心臓病、又は脳卒中の予防のために単独で投与されるか或いは他の関連薬剤と併用投与され得る。
【0063】
本発明において、「投与」は、適切な方法で患者に治療用途の物質を導入することを意味し、本発明のペプチド類似体を含む医薬組成物は、薬物が目的の組織に到達して目的の効能を示すことができる限り、さまざまな製剤の形で様々な経路を介して投与できる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などが可能であるが、その剤形と投与方法は制限されない。
【0064】
本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、医薬的に許容される担体を含むことができる。医薬的に許容される担体は、経口投与の場合には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを多様に使用することができる。
【0065】
本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体の製剤化に使用できる担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム又は鉱物油などがある。
【0066】
本発明のオキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、上述し担体と混合して多様に製造できる。例えば、経口投与の場合には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェーハなどの形で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプル又は多数回投薬の形で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤などにも剤形化することができる。
【0067】
本発明に係る投与量又は服用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、排泄率及び疾患の重症度に応じてその範囲が多様であり、成人を基準とした投与量は、1日当たり0.001mg/kg~500mg/kgであり得る。
【発明の効果】
【0068】
本発明は、新規のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を提供し、本発明によるペプチド類似体は、天然型のオキシントモジュリンに比べてGLP-1受容体とグルカゴン受容体の両方に対してさらに優れた活性を持っている。特に、本発明は、GLP-1受容体に比べてグルカゴン受容体アゴニストとしてより高い生物学的活性を示す。
【0069】
したがって、本発明に係る新規のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、一次的に肥満又は過体重によって引き起こされるか特徴付けられる病態の予防又は治療に有用に適用でき、さらには肥満又は過体重を伴うインスリン非依存性糖尿病の予防又は治療の目的のためにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明によるアシル化オキシントモジュリン類似体のマウスから単回体重減少薬効評価結果を示すグラフである。
【
図2】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで1週間繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図2aは体重減少結果、
図2bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図3】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のラットから5日繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図3aは体重減少結果、
図3bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図4】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで10日繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図4aは体重減少結果、
図4bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図5】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで10日繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図5aは体重減少結果、
図5bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図6】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで1週間繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図6aは体重減少結果、
図6bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図7】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで2週間繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図7a及び
図7cは体重減少結果、
図7bは
図7aに表記されたアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の累積飼料摂取量結果を示すグラフ、
図7dは
図7cに表記されたアシルオキシントモジュリンペプチド類似体の累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図8】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで2週間繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図8aは体重減少結果、
図8bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図9】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで5日繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであり、
図9aは体重減少結果、
図9bは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図10】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで4週間繰り返し体重減少薬効評価結果を示すグラフであって、
図10aは体重減少結果、
図10bは体脂肪減少結果、
図10cは累積飼料摂取量結果を示すグラフである。
【
図11】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで耐糖能改善効果検定結果を示すグラフである。
【
図12】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで6週間繰り返し血糖調節薬効評価結果を示すグラフであって、
図12aは最終非絶食血糖結果、
図12bは糖化ヘモグロビン上昇抑制結果を示すグラフである。
【
図13】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスで4週間繰り返し血糖調節薬効評価結果を示すグラフであって、
図13aは経時的な非絶食血糖結果、
図13bは糖化ヘモグロビン上昇抑制及び改善に対する結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明についてのより具体的な内容を下記の実施例及び実験例によって説明する。これらの実施例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
<実施例1>アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の合成
本発明の一部のアミノ酸が含まれているペプチドと定型的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成会社、例えば、米国のAmerican peptide companyやBachem、又は韓国のAnygenから合成及び購入が可能である。
【0072】
本発明において、アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を合成するために、自動合成器であるprotein technologies、Inc.社製のSymphony X(合成scale:0.1mmol)モデルを用いた。本発明によって合成されたアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体化合物1(配列番号2)乃至化合物38(配列番号39)の構造は、表1及び表2に示した。具体的な合成過程は、次のとおりである。
【0073】
Fmoc-AA-OH(1mmol)、HBTU(1mmol)、NMM(n-methylmorpholine)(2mmol)及びDMF(7ml)の混合液を、Fmocが除去されたレジン(resin)に入れ、室温で1時間撹拌する。反応液を排出させ、DMF(N,N-Dimethylmethanamide)7mlで2回洗浄する。20%ピペリジンDMF溶液(5ml)でFmoc除去(cleavage)反応を室温で5分間、2回行った後、DMF(7ml)で6回洗浄する。この過程を自動合成器を用いて繰り返しながらアミノ酸をカップリング(coupling)させる。
【0074】
K(Lys)sideはFmoc-K(dde)-OHを用いてカップリングし、最後のH(His)はBoc-His(trt)-OHを用いてカップリングする。2%ヒドララジン(hydralazine)を用いて保護化されたddeの除去後、PEG2、rE、C18、C18 diacidなどをカップリングさせる。ラクタム環は、Glu(Oall)及びLys(Alloc)に組み込まれたアミノ酸を用いてカップリングし、保護基の除去後に過量のHBTU及びDIPEAを用いてラクタム結合を行う。ジスルフィド環は、保護基に組み込まれたSerアミノ酸を用いてカップリングし、保護基の除去後にジスルフィド結合を行う。架橋剤を導入しようとする位置に適切な保護基に組み込まれたアミノ酸を用いてカップリングし、保護基の除去後にアミドカップリング試薬などを用いて架橋剤と2つのアミノ酸間の結合を行う。
【0075】
上記で得たペプチド-レジン(peptide-resin)0.1mmolにReagent K(トリフルオロ酢酸、水、チオアニソール、1,2-エタンジチオール(87.5、5.0、5.0、2.5))溶液8mlを5~10℃に冷却した後、室温で2~3時間撹拌する。drainの後、少量のTFAでレジンを洗浄し、ろ液を合わせてジエチルエーテル100mlに入れて結晶化させた後、生成された固体を濾過し、粗(crude)ペプチドを得る。得られた粗ペプチドをpreparative HPLCで精製して目的化合物を得る。
【0076】
分子量分析はshimadzuAxima Assurance MALDI-TOFを用い、MatrixはCHCA(α-Cyano-4-hydroxycinnamic acid)を用いた。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
<比較例1>オキシントモジュリンペプチド類似体の合成
本発明と比較するために、構造的に類似性を持つオキシントモジュリンペプチド類似体を、実施例1の方法で合成した。下記化合物39は、非アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体であり、化合物40及び41は、アシル化位置が異なるオキシントモジュリンペプチド類似体であり、化合物42乃至46は、アシル化末端が異なるオキシントモジュリンペプチド類似体であり、化合物47は、大韓民国公開特許公報第2012-139579号に公知になっているものであり、リング構造を持つ非アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である。前記化合物39乃至47の合成されたオキシントモジュリンペプチド類似体の構造は、表3及び表4に示した。
【0085】
【0086】
【0087】
<実験例1>GLP-1及びグルカゴン受容体の活性化能検定
細胞にヒトGLP-1又はグルカゴン受容体を一時的に過発現させ、本発明の類似体が受容体を活性化させることにより増加するサイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)が順次サイクリックアデノシン一リン酸反応性プロモーター(CRE)を活性化させると、以後増加するルシフェラーゼ活性度を、各受容体の活性化に対する効能の意味で評価した。
【0088】
陽性対照薬物としては、GLP-1とグルカゴンをそれぞれの評価に使用した。GLP-1アゴニストである糖尿病治療薬としての承認を受けたリラグルチド(Liraglutide)及びセマグルチド(Semaglutide)、オキシントモジュリンペプチド類似体である臨床第2相試験中のMEDI0382(Diabetes, Obesity and Metabolism 2016; 18: 1176-1190, Lancet 2018; 391: 2607-2618)及び前記化合物39乃至47のペプチドを合成し、これを比較例として使用した。
【0089】
細胞は、中国ハムスター卵巣細胞(CHO-K1)にヒトGLP-1又はグルカゴン発現ベクター(Origene社製)をホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)又はウミシイタケルシフェラーゼ(renilla luciferase)の発現を誘導することができるそれぞれのプラスミドDNAと一緒にリポフェクタミンプラス試薬(Lipofectiamine Plus reagent、Invitrogen)を用いて前記細胞に一時的にトランスファクションさせた。3時間トランスフェクションの後、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含む栄養培地(α-MEM)に交換した。翌日、本発明の類似体及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むα-MEM培地に交換し、6時間後に、細胞が浸漬された培地と同量のデュアルルシフェラーゼ検索試薬(Dual luciferase assay reagent、Promega)を加えて、連続的にホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼの活性を測定した。ホタルルシフェラーゼ活性は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に補正してトランスフェクションに対する効率を算出した。
【0090】
受容体の活性効能は、本発明の類似体に対する多重濃度評価を実施し、本発明の類似体のGLP-1又はグルカゴン最大効果に対する相対的活性化度(%)を求め、50%の活性化を示す濃度(EC50)を非線形回帰分析を用いて算出した値を表5に示した。
【0091】
【0092】
【0093】
実験の結果、本発明によるアシル化オキシントモジュリン類似体の化合物は、内因性ホルモンオキシントモジュリンよりもGLP-1及びグルカゴン受容体に対するEC50値が著しく低いため、GLP-1及びグルカゴン受容体に対する活性が優れることが分かる。また、現在市販されている糖尿病治療薬であるリラグルチド(Liraglutide)とセマグルチド(Semaglutide)とを比較した場合には、GLP-1受容体に対する活性が優れており、現在臨床中のオキシントモジュリンペプチド類似体であるMDI0382と比較した場合には、グルカゴン受容体に対する活性は優れており、GLP-1受容体に対する活性は類似している。
【0094】
本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物3は、非アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である比較例の化合物39と比較した場合にはGLP-1及びグルカゴン受容体に対する活性を非常に増加させたことが分かるので、オキシントモジュリンペプチド類似体のアシル化は活性の増加に大きな影響を及ぼすものと評価される。
【0095】
また、X2位にアシル化された比較例の化合物40とX14位にアシル化された比較例の化合物41は、それぞれX3、X9、X10位にアシル化された本発明による化合物3、化合物15、化合物16と比較した場合には、GLP-1及びグルカゴン受容体に対する活性が非常に減少したことが分かるので、オキシントモジュリンペプチド類似体に対するアシル化位置が活性に大きな影響を与えるものと評価される。
【0096】
また、Z1のポリマー性部分であって2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)acetoyl基がそれぞれ1~4個からなる本発明によるアシル化された化合物3、化合物10、化合物17、化合物18は、2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)acetoyl基の個数によるin vitro活性の差はなく、いずれもGLP-1及びグルカゴン受容体に対する活性が優れている。
【0097】
また、Z2であって親油性脂質部分の末端にカルボン酸を有するアシル化された比較例の化合物42、化合物43、化合物44は、脂質炭素の長さに関係なく、親油性脂質部分の末端が炭化水素である本発明による化合物3のようなアシル化化合物に比べて、GLP-1及びグルカゴン受容体に対する低い活性を示した。また、Z2であって親油性脂質部分の末端にカルボン酸とGly、Valで結合された構造を持つ比較例の化合物45、化合物46は、親油性脂質部分の末端が炭化水素である本発明による化合物3のような化合物に比べて、GLP-1及びグルカゴン受容体に対する低い活性を示すため、Z2であって親油性脂質部分の末端に極性置換基を有するアシル化化合物は、低いin vitro活性を示すことが分かる。
【0098】
また、非アシル化オキシントモジュリン環状ペプチド類似体である比較例の化合物47は、分子内の同じ形式のラクタム環構造を持つアシル化された本発明による化合物14に比べて、グルカゴン受容体に対する低い活性を示すため、オキシントモジュリンペプチド類似体のアシル化は活性の増加を誘導することが分かる。
【0099】
また、本発明によるアシル化オキシントモジュリン環状ペプチド類似体のうち、ジスルフィドで分子内結合を持つ化合物28は、他のアシル化オキシントモジュリン環状ペプチド類似体化合物22に比べて、GLP-1及びグルカゴン受容体に対する低い活性を示すため、アシル化オキシントモジュリン環状ペプチド類似体の分子内環の大きさが活性に影響を与えることが分かる。
<実験例2>本発明によるペプチドの単回体重減少薬効評価
本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少薬効を評価するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解し、100nmol/kgの用量となるように調製した後、マウスに単回皮下注射した。その後、毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定し、その結果を
図1に示した。
【0100】
実験の結果、溶媒のみを注射した対照群に比べて、累積飼料摂取量の有意な差がないにも拘らず、対照群の体重減少率に比べて化合物3の注射後に体重減少が観察された。その効果が4日間持続されることが分かる。よって、生体内で不安定であって非常に短い半減期を示すので、体重減少薬効評価のためには1日1回以上の投与が必要なオキシントモジュリンに比べて、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、化学的安定性の改善により、単回投与のみでも体重減少に対する薬効が一定期間維持できることが分かる。
<実験例3>本発明によるペプチドの1週間繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少薬効を市販中の糖尿病/肥満治療薬と比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明の実施例のうち、化合物3を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して100nmol/kg又は300nmol/kgの用量となるように調製し、対照物質として、糖尿病/肥満治療薬として市販されているリラグルチド(Liraglutide)を同じ溶媒に溶解して100nmol/kgの用量となるように調製した後、表6に記載されているように、1日1回合計6日間皮下注射した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定して、リラグルチド(Liraglutide)とアシル化オキシントモジュリン類似体の体重減少薬効を比較し、7日目から投与を中止し、体重の回復を確認することにより、その結果を
図2a及び
図2bに示した。
【0101】
【0102】
実験の結果、本発明による化合物3とリラグルチド(Liraglutide)を同じ用量(100nmol/kg)で注射した群の累積飼料摂取量に有意な差がないにも拘らず、リラグルチドの場合は約12.2%の体重が減少し、化合物3の場合は約24.6%の体重が減少した。また、化合物3の用量を300nmol/kgで注射した場合には、体重が約37.8%減少したことが分かるので、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、リラグルチドよりも2倍以上優れた用量依存的な体重減少効果があり、投与中止後にもビヒクル(vehicle)対照群に比べて低い体重を維持した。
<実験例4>本発明によるペプチドの5日繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の最大体重減少効果を確認するために、オス実験用ラット(Wistar rat)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたラットを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明の実施例のうち、化合物3を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して100nmol/kg又は300nmol/kgの用量となるように調製した後、表7に記載されているように、1日1回合計4日間皮下注射した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定して初期体重に比べて経時的な体重減少薬効を確認し、5日目から投与を中止し、体重の回復を確認することにより、その結果を
図3a及び
図3bに示した。
【0103】
【0104】
実験の結果、ビヒクル(vehicle)対照群に比べて、化合物3を注入した群の累積飼料摂取量に有意な差を示し、両方の用量とも約12.5%レベルの体重減少薬効が観察された。投与中止後も、ビヒクル(vehicle)対照群に比べて低い体重を維持した。
<実験例5>本発明によるペプチドの10日繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少薬効を市販中の糖尿病治療薬と比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明の実施例のうち、化合物3を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して100nmol/kg又は300nmol/kgの用量となるように調製し、糖尿病治療薬として市販されているセマグルチドを同じ溶媒に溶解して100nmol/kgの用量となるように調製した後、表8に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計10日間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定してセマグルチドとアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少薬効を比較し、その結果を
図4a及び
図4bに示した。
【0105】
【0106】
実験の結果、同じ用量(100nmol/kg)で、化合物3はセマグルチドよりもさらに多くの累積飼料摂取量が測定されたにも拘らず、体重減少薬効はセマグルチドに比べて優れている(化合物3:13.9%、セマグルチド:9.7%)。また、化合物3の用量を300nmol/kgで注射した場合には、体重が約16.9%減少したことが分かるので、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、セマグルチドに比べて優れた用量依存的な体重減少薬効が観察された。
<実験例6>本発明によるペプチドの10日繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の構造によって、ペプチド内のポリマー数の差又は環状ペプチドの形成による体重減少薬効を比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3、10及び14を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解し、100nmol/kgの用量となるように調製した後、表9に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計10日間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定して化合物3と化合物10及び化合物14の体重減少薬効を比較し、その結果を
図5a及び
図5bに示した。
【0107】
【0108】
実験の結果、同じ用量で、ビヒクル(vehicle)対照群に比べて、化合物10と化合物14による累積飼料摂取量はそれぞれ20%と27%の有意な減少、化合物3による累積飼料摂取量はビヒクル対照群に比べて約17%減少が観察された。体重減少の面では、3つの化合物はいずれも初期体重に比べて約19~22%の優れた薬効、環状ペプチド化合物14は化合物3及び化合物10に比べて多少優れた傾向を示した。
<実験例7>本発明によるペプチドの1週間繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の構造によって、ペプチド内の親油性脂質部分又はポリマー数の差による体重減少薬効を比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3、化合物13及び化合物18を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解し、100nmol/kgの用量となるように調製した後、表10に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計7日間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定して化合物3と化合物13及び化合物18の体重減少薬効を比較し、その結果を
図6a及び
図6bに示した。
【0109】
【0110】
実験の結果、同じ用量で、化合物18は化合物3と類似の優れた体重減少薬効が確認されたのに対し、化合物13は体重に対する有意な薬効はなかった。化合物13は、化合物3に比べて約10倍以上鈍感なin vitro薬効を示した。これは動物実験につながり、親油性脂質部分の末端構造による体重減少薬効消失を確認することにより、構造的な重要性を確認することができた。
<実験例8>本発明によるペプチドの2週間繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のうち、環状ペプチド構造による体重減少薬効を比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3、化合物21~25を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解し、100nmol/kgの用量となるように調製した後、表11に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計2週間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定し、化合物3と化合物21~25の体重減少薬効を比較して、その結果を
図7a~
図7dに示した。
【0111】
【0112】
実験の結果、同じ用量で、化合物3に比べて化合物23と化合物25はさらに多くの累積飼料摂取量が算出され、化合物21と化合物22は化合物3と類似レベルの累積飼料摂取量が算出された。体重の面では、化合物3は化合物21、化合物23及び化合物25に比べて同等レベル以上の体重減少、化合物25は化合物3に比べて優れた体重減少薬効が確認された。一方、in vitro assayで一緒に評価された他の化合物に比べてグルカゴン受容体活性能が多少弱かった化合物24は、初期体重に比べて13.4%レベルの有意な体重減少薬効を示したので、化合物3に比べて劣った体重減少薬効を示した。化合物25は、化合物3に比べて類似の体重減少薬効を示したが、累積飼料摂取量がさらに少なかった。これに対し、化合物22は、化合物3に比べて類似の体重減少薬効を示したが、累積飼料摂取量は類似している。アシル化オキシントモジュリン環状ペプチド類似体は、構造によって体重減少薬効パターンの違いを示した。
<実験例9>本発明によるペプチドの2週間繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、<実験例8>に続いて、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の低用量での体重減少薬効を比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3及び化合物22を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して30nmol/kg又は1
0nmol/kgの用量となるように調製した後、表12に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計2週間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定し、化合物3と化合物22の体重減少薬効を比較して、その結果を
図8a及び
図8bに示した。
【0113】
【0114】
実験の結果、同じ用量で、化合物22は化合物3に比べてさらに多くの累積飼料摂取量が測定され、化合物22の10nmol/kgの用量群ではビヒクル対照群レベルの飼料摂取量を示したにも拘らず、7.5%レベルの体重減少薬効が観察された。また、化合物22の30nmol/kgの用量群では、化合物3と同じ用量群と比較してより多くの飼料を摂取したにも拘らず、体重減少薬効は類似のレベルであった。これは、化合物22が化合物3に比べてグルカゴン受容体活性化能に起因した薬効にさらに影響されることを示唆する。
<実験例10>本発明によるペプチドの5日繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少薬効を、市販中の糖尿病/肥満治療薬及びオキシントモジュリンペプチド類似体として開発されている先導物質と比較するために、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、高脂肪の食餌によって肥満が誘導されたマウスを用いて実験前の体重によって群分離した後、評価した。本発明の実施例のうち、化合物3を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して30nmol/kgの用量となるように調製し、比較例として、糖尿病/肥満治療薬として市販されているリラグルチド及び臨床試験中のMEDI0382を同じ溶媒に溶解して30nmol/kgの用量となるように調製した後、表13に記載されているように、1日1回、合計4日間皮下注射した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定してリラグルチド及びMEDI0382と類似体の体重減少薬効を比較し、その結果を
図9a及び
図9bに示した。
【0115】
【0116】
実験の結果、同じ用量で評価された3つの物質のうち、化合物3投与群で初期体重に比べて最も優れた体重減少薬効が観察された(化合物3:18.6%、リラグルチド:12.7%、MEDI0382:8.0%)。
<実験例11>本発明によるペプチドの4週間繰り返し体重減少薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少薬効を市販中の糖尿病治療薬と比較するために、オス肥満及び糖尿病実験マウス(FATZO mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、実験前の体重、体脂肪、非絶食血糖及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3と化合物22を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して30nmol/kg又は100nmol/kgの用量となるように調製し、糖尿病治療薬として市販されているセマグルチドを同じ溶媒に溶解して100nmol/kgの用量となるように調製した後、表14に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計4週間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定し、剖検前4週目に体脂肪を測定してセマグルチドに比べて本発明によるオキシントモジュリンペプチド類似体の体重及び体脂肪減少薬効を比較し、その結果を
図10a乃至
図10cに示した。
【0117】
【0118】
実験の結果、同じ用量(100nmol/kg)だけでなく、低い30nmol/kgの用量で、本発明による化合物3及び化合物22は、セマグルチドよりさらに多くの累積飼料摂取量が測定されたにも拘らず、体重減少薬効は非常に優れていることが分かるが、これは、本発明によるオキシントモジュリンペプチド類似体が、GLP-1受容体アゴニストであるセマグルチドとは異なり、GLP-1とグルカゴン受容体の両方に作用するメカニズムを持っていることを示唆する。
<実験例12>本発明によるペプチドのマウスにおける耐糖能改善効果検定
本実験は、オス実験用マウス(C57BL/6mouse)に、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の耐糖能改善効果を食後血糖調節能改善効果の意味として評価した。実験用マウスを実験前日絶食させた後、本発明による化合物3又は化合物22又は化合物25を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して調製し、ブドウ糖投与の30分前に皮下注射した。オキシントモジュリンペプチド類似体注射の30分後にブドウ糖溶液を経口投与し、薬物注射及びブドウ糖溶液投与の直前、ブドウ糖溶液投与後2時間の間、指定された時間に尾静脈を介して全血の血糖を測定した。その結果は、経時的な血糖値曲線の曲線下面積(Area under the curve;AUC)を算出し、対照群の血糖AUCと比較して類似体及び比較物質の血糖AUCを百分率で算出して、耐糖能改善薬効を評価した。化合物別にそれぞれ別々の実験を行い、化合物22又は化合物25を評価する際には、化合物3の30nmol/kgの用量を比較例として追加して合計した結果を
図11に示した。
【0119】
実験の結果、ペプチド類似体は、30nmol/kgの用量以上で有意且つ用量依存的な血糖AUCの減少を示し、特に化合物25は、評価されたすべての用量群で有意な耐糖能改善薬効及び化合物3と化合物22に比べて3倍以上優れた耐糖能薬効が観察された。
<実験例13>本発明によるペプチドの6週間繰り返し血糖調節薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の血糖調節薬効を市販中の糖尿病治療薬と比較するために、オス糖尿病実験用マウス(db/db mouse)を実験前の非絶食血糖、糖化ヘモグロビン及び体重によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して100nmol/kgの用量となるように調製し、糖尿病治療薬として市販されているセマグルチドを同じ溶媒に溶解して100nmol/kgの用量となるように調製した後、表15に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計6週間評価した。週1回の薬物投与24時間後、非絶食血糖、体重及び飼料摂取量を測定し、3週、5週及び6週には糖化ヘモグロビンを測定して、セマグルチドと本発明によるオキシントモジュリンペプチド類似体の血糖調節薬効を比較し、その結果を
図12a及び
図12bに示した。
【0120】
【0121】
実験の結果、同じ用量(100nmol/kg)で、本発明による化合物3は評価初期にセマグルチドに比べて同等以下の薬効を示したが、長期間投与によってセマグルチドに比べて優れた血糖調節薬効を示した。ビヒクル対照群の最終非絶食血糖は、581mg/dLと非常に重度の糖尿特性を示したが、これに対し、対照物質セマグルチドの最終非絶食血糖は342mg/dLであり、化合物3の最終非絶食血糖は274mg/dLと有意な血糖上昇抑制が観察された。糖化ヘモグロビンも、ビヒクル対照群の場合、初期数値に比べて最終数値が5.15%Point増加したが、セマグルチド投与群では2.65%Point、化合物3投与群では1.73%Pointだけ増加して、薬物による糖化ヘモグロビン上昇抑制薬効が確認された。よって、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、セマグルチド(Semaglutide)に比べて糖尿発症の遅延に対する優れた薬効が観察された。
<実験例14>本発明によるペプチドの4週間繰り返し血糖調節薬効評価
本実験は、<実験例11>と同様の実験であって、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の血糖調節薬効を市販中の糖尿病治療薬と比較するために、オス肥満及び糖尿病実験マウス(FATZO mouse)に高脂肪含有食餌を供給し、実験前の体重、体脂肪、非絶食血糖及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)によって群分離した後、評価した。本発明による化合物3と化合物22を0.01%Tween80が含有されている蒸留水に溶解して30nmol/kg又は100nmol/kgの用量となるように調製し、糖尿病治療薬として市販されているセマグルチドを同じ溶媒に溶解して100nmol/kgの用量となるように調製した後、表16に記載されているように、3日に1回の間隔で皮下注射し、合計4週間評価した。毎日1回、一定の時間に体重及び飼料摂取量を測定し、約10日の間隔で投与24時間後の非絶食血糖を測定した。また、剖検前4週目に糖化ヘモグロビンを測定し、セマグルチドと本発明によるオキシントモジュリンペプチド類似体の血糖調節薬効を比較し、その結果を
図13a及び
図13bに示した。
【0122】
【0123】
実験の結果、同じ用量(100nmol/kg)で、本発明による化合物3及び化合物22投与群でセマグルチドと同様レベルの優れた血糖調節薬効及び糖化ヘモグロビン上昇抑制薬効が観察された。これは、本発明によるオキシントモジュリンペプチド類似体が、<実験例11>で示した体重減少とともに血糖調節が同時に可能な薬効を持っていることを示唆する。
【配列表】