(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】鉄道車両の取付機器防振支持構造
(51)【国際特許分類】
B61C 17/12 20060101AFI20230117BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20230117BHJP
F16F 1/387 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B61C17/12 A
F16F15/08 E
F16F15/08 K
F16F1/387 A
(21)【出願番号】P 2018128406
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 十一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 年克
(72)【発明者】
【氏名】中尾 稔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-326388(JP,A)
【文献】特開2012-138474(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012261(WO,A1)
【文献】特開2009-096460(JP,A)
【文献】米国特許第5116030(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103693058(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 17/12
F16F 1/387
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床構体に吊り下げ保持される床下機器と、該床下機器の保持にあたり防振ゴムを用い、吊下ボルトを介して前記床構体に固定している鉄道車両の取付機器防振支持構造において、
前記床下機器は、複数の吊下ボルトによって支えられ、該吊下ボルトが吊り下げられる吊点位置は、前記吊下ボルトにかかる吊点荷重が均一になるように配置さ
れ、
前記吊点位置は、前記鉄道車両の進行方向に対して直交するライン上に設けられ、該ライン上に設けられた前記吊点位置の前記吊点荷重は等しく設定され、
前記ライン上に並ぶ前記防振ゴムは同じ種類であること、
を特徴とする鉄道車両の取付機器防振支持構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の鉄道車両の取付機器防振支持構造において、
異なる前記ライン上に設けられた前記吊点位置の前記吊点荷重は、その差が前記防振ゴムの製品誤差の範囲内で収まるように設定されること、
を特徴とする鉄道車両の取付機器防振支持構造。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の鉄道車両の取付機器防振支持構造において、
前記床下機器の前記鉄道車両の進行方向に備える端子箱を2つに分割して設けること、
を特徴とする鉄道車両の取付機器防振支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の防振構造に関し、具体的には床下機器などを鉄道車両の床下に艤装するにあたって、主変圧器などからの振動を車体に伝達することを抑制するために防振ゴムを取り付ける為の技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、特に高速車両などの静粛性を高めた車両において、乗客によって低周波振動を中心とした振動が気になるといった乗り心地に言及する声が出始めている。これは、他の振動要因からの振動が低減するにつれて、対策されていない震動源からの振動が問題となり始めたものと考えられる。例えば、鉄道車両用の電力変換装置や変圧器などの取付機器は、そうした振動源となり得るとされており、その取り付け方法が検討されている。
【0003】
特許文献1には、鉄道車両用電力変換装置の支持構造に関する技術が開示されている。鉄道車両用電力変換装置の箱体が箱体に取り付けられた取付金が一対の防振ゴムに挟持された状態で、吊り下げ用レールから垂下された吊り下げボルトの軸部に挿通されている。この軸部の延出端にワッシャを介して螺着されたナットを締着して弾性的に支持されている。そして、軸部は取付金と非接触状態に取付金を挿通している。このような取り付け方法を採用することで、鉄道車両用電力変換装置からの振動を遮断することができる。
【0004】
特許文献2には、鉄道車両の防振ゴム支持構造及びその防振ゴムのバネ定数の設定方法に関する技術が開示されている。主変圧器と取付金との間に上側の防振ゴム部材が、取付金とワッシャとの間に下側の防振ゴム部材が設けられ、主変圧器の取付金が上側の防振ゴム部材と下側の防振ゴム部材との間に挟まれた状態にある。取付金および防振ゴム部材には、貫通孔が形成され、その貫通孔内に吊下ボルトとそれらの周囲に配置される円筒状のスリーブ部材とが設けられる。このような構成によって、車内に伝わる振動や騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-308042号公報
【文献】特開2010-111197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の技術では、防振ゴム部材を使って鉄道車両に設けられる取付機器が生じる振動や騒音が客室に伝わることを防ぐとしているが、メンテナンス的な観点からの示唆はなされていない。実際に鉄道車両に防振ゴムを用いる事を考えると、防振ゴム部材は経年劣化が想定されるため、定期的な交換等の作業が必要となる。よって、このような防振ゴムの取付構造に関してもメンテナンスに配慮された設計になることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、メンテナンス性に配慮した鉄道車両の取付機器防振支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両の取付機器防振支持構造は、以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)鉄道車両の床構体に吊り下げ保持される床下機器と、該床下機器の保持にあたり防振ゴムを用い、吊下ボルトを介して前記床構体に固定している鉄道車両の取付機器防振支持構造において、前記床下機器は、複数の吊下ボルトによって支えられ、該吊下ボルトが吊り下げられる吊点位置は、前記吊下ボルトにかかる吊点荷重が均一になるように配置されること、を特徴とする。
【0010】
上記(1)に記載の態様によって、防振支持構造のメンテナンス性が向上する。これは、複数の吊下ボルトに防振ゴムを用いて床下機器を保持する場合、複数の吊点で支持する必要があるが、この際に、吊点位置によって吊点荷重が異なる構成である場合には、防振ゴムの硬度を変更する必要性がある。異なる硬度の防振ゴムを用いるケースでは、吊点によって適切な振動減衰を実現出来る一方で、振動モードが吊点位置によって異なる為に、緩みが発生するなどの問題が生じやすくなると考えられる。その為、吊下ボルトにかかる吊点荷重を均一化することとした。こうすることで、同じ防振ゴムを用いる事ができて取り付けミスなどを防げるなど、メンテナンス性を向上することが可能となる他、防振ゴムの長寿命化に貢献し、交換サイクルの延長が期待できる。
【0011】
(2)(1)に記載の鉄道車両の取付機器防振支持構造において、前記吊点位置は、前記鉄道車両の進行方向に対して直交するライン上に設けられ、該ライン上に設けられた前記吊点位置の前記吊点荷重は等しく設定されること、が好ましい。
【0012】
(3)(2)に記載の鉄道車両の取付機器防振支持構造において、異なる前記ライン上に設けられた前記吊点位置の前記吊点荷重は、その差が前記防振ゴムの製品誤差の範囲内で収まるように設定されること、が好ましい。
【0013】
上記(2)または(3)に記載の態様によって、吊下ボルトにかかる吊点荷重が均一化され、進行方向に対して直交するライン上に設けられていることで、鉄道車両の側面からのアクセスによって作業がし易くなる。また、ライン上に設けられた吊点位置の吊点荷重が等しく設定されることで、同じ防振ゴムを使っての交換作業が実現できる。そして、別のラインとの吊点荷重の差が設計上避けられない場合にも、防振ゴムの製品誤差範囲内に吊点荷重を抑えることで、同じ防振ゴムを使っての交換作業が実現できる。なお、ライン毎に異なる防振ゴムを使う事も想定されるが、その場合でもメンテナンス性の向上に寄与すると考える。
【0014】
(4)(2)または(3)に記載の鉄道車両の取付機器防振支持構造において、前記床下機器の前記鉄道車両の進行方向に備える端子箱を2つに分割して設けること、が好ましい。
【0015】
上記(4)に記載の態様によって、任意の場所に吊点位置を設定し易くなり、メンテナンス性にも寄与する。これは、ライン上に設けられた吊点位置に備えられる吊下ボルトを緩めるにあたり、工具を使う必要があるが、装置構成上、鉄道車両の進行方向に端子箱を設ける必要がある。この場合、真ん中辺りに設ける吊点位置の吊下ボルトへのアクセスが困難となる。そこで、端子箱を2つに分けることで、吊下ボルトへのアクセスを容易にすることができる。この結果、メンテナンス性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の、鉄道車両の模式側面図である。
【
図2】本実施形態の、艤装ユニットの吊り下げを示す模式図である。
【
図3】本実施形態の、吊下ボルト部分の拡大図である。
【
図5】本実施形態の、艤装ユニットの平面図である。
【
図6】本実施形態の、艤装ユニットと工具の関係を示す平面図である。
【
図7】本実施形態の、艤装ユニットと工具の関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、本実施形態の、鉄道車両の模式側面図を示す。鉄道車両100は、台車150の上に車体110が支持されている。そして、車体110の下側には、艤装ユニット160が吊り下げられている。
【0018】
図2に、艤装ユニットの吊り下げの様子を模式図に示す。艤装ユニット160には様々な機器が設けられるが、ここでは主変圧器200とユニットクーラ250が備えられているとして説明する。主変圧器200は、新幹線(登録商標)などの高速鉄道車両に用いる主回路に交流誘導電動機駆動方式を用いるようになっており、高電圧・大電流を扱うため、大容量のものが搭載される傾向にある。鉄道車両100の上方に設けられた架線300から、パンタグラフ130を介して主変圧器200に伝え、ここから鉄道車両100の動力などに使う電力が供給される。
【0019】
この主変圧器200とユニットクーラ250が艤装ユニット160として備えられており、艤装ユニット160は車体110の床構体120に含まれる台枠121に吊下ボルト165によって吊り下げられている。
図3に、吊下ボルト部分の拡大図を示す。
図4に、防振ゴムの部品図を示す。台枠121にはマウント部235を備える図示しない梁が複数設けられており、吊下ボルト165はこのマウント部235に固定される。
図3に示されるブラケット230は、艤装ユニット160から延設されるものであり、ブラケット230が防振ゴム240に挟まれるように保持される。
【0020】
防振ゴム240の構造は、
図4に示すようにゴム部241とフランジ部242と芯金部243が一体的に設けられてなる。円筒形に形成された芯金部243の周囲にハット状のゴム部241が設けられている。また、ゴム部241の片面にはバネ性を有したフランジ部242が設けられている。芯金部243の高さに比べてゴム部241は上方向に突出して潰しシロAが設けられ、下方向に若干控えられた変形シロBが設けられている。
【0021】
この防振ゴム240が用いられる際には、
図3に示すように、芯金部243を吊下ボルト165が貫通し、ワッシャ233とマウント部235で潰しシロAが潰れるように、フランジ部242同士でブラケット230を挟み込むようにして、艤装ユニット160を保持する。後述の防振ゴム245も同じ構造であり、防振ゴム245でサブブラケット251を挟む構成となっているが、ここでは説明を割愛する。
【0022】
図5に、艤装ユニットの平面図を示す。艤装ユニット160には、主変圧器200側にブラケット230が2箇所に設けられる他、ユニットクーラ250側にも2箇所にサブブラケット251が設けられる。なお便宜上、一方のブラケット230を第1ブラケット230Aとし、他方を第2ブラケット230Bとする。なお、特に断りが無くブラケット230と表記する場合は、第1ブラケット230Aまたは第2ブラケット230Bの何れかまたは両方を示すものとする。また、一方のサブブラケット251を第1サブブラケット251Aとし、他方を第2サブブラケット251Bとする。なお、特に断りが無くサブブラケット251と表記する場合は、第1サブブラケット251Aまたは第2サブブラケット251Bの何れかまたは両方を示すものとする。
【0023】
第1ブラケット230Aには、第1取付孔231A乃至第4取付孔231Dの4つが設けられている。また、第2ブラケット230Bには、第1取付孔232A乃至第4取付孔232Dの4つが設けられている。なお、特に断りなく第1取付孔231と記載する場合は、第1取付孔231A乃至第4取付孔231Dの何れかを示すものとする。また、特に断りなく第2取付孔232と記載する場合は、第1取付孔232A乃至第4取付孔232Dの何れかを示すものとする。第1サブブラケット251Aには、取付孔252Aが、第2サブブラケット251Bには、取付孔252Bが設けられている。特に断り無く取付孔252と記載する場合は、取付孔252Aまたは取付孔252Bの何れかまたは両方を示しているものとする。よって、艤装ユニット160は全体で10箇所にて吊下ボルト165により支持される。ここでブラケット230とサブブラケット251は同様に艤装ユニット160を車体110から吊り下げる働きをするものであるが、便宜上名称を変えて示している。
【0024】
また、第1ブラケット230Aに設けられる第1取付孔231A乃至第4取付孔231Dの中心を貫くラインを第1ラインL1とし、第2ブラケット230Bに設けられる第1取付孔232A乃至第4取付孔232Dの中心を貫くラインを第2ラインL2とする。また、サブブラケット251に設けられる取付孔252の中心を貫くラインは第3ラインL3としている。第1ラインL1、第2ラインL2、第3ラインL3はそれぞれ平行になるように、各第1取付孔231、第2取付孔232、取付孔252が設けられている。
【0025】
なお、第1取付孔231Aと第4取付孔231Dは第1ブラケット230A長手方向の両端に、第2取付孔231Bと第3取付孔231Cは第1ブラケット230A長手方向の中央辺りに並んで設けられている。同様に、第1取付孔232Aと第4取付孔232Dは第2ブラケット230B長手方向の両端に、第2取付孔232Bと第3取付孔232Cは第2ブラケット230B長手方向の中央辺りに並んで設けられている。主変圧器200の側面には第1端子箱210Aと第2端子箱210Bが設けられている。第2取付孔231Bと第3取付孔231Cは、第1端子箱210Aと第2端子箱210Bの間に配置される構成となっている。また、ブラケット230を吊り下げる際に用いられる防振ゴム240は、サブブラケット251を吊り下げる際に用いられる防振ゴム245とは、用いられるゴムの硬度が異なっている。
【0026】
本実施形態の鉄道車両の取付機器防振支持構造は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0027】
まず、鉄道車両100の艤装ユニット160に用いた防振ゴム240の交換時における作業性が向上し、メンテナンス性が向上する。これは、鉄道車両100の床構体120に吊り下げ保持される床下機器である艤装ユニット160と、艤装ユニット160の保持にあたり防振ゴム240を用い、吊下ボルト165を介して床構体120(台枠121)に固定している鉄道車両100の取付機器防振支持構造において、艤装ユニット160は、複数の吊下ボルト165によって支えられ、吊下ボルト165が吊り下げられる吊点位置は、吊下ボルト165にかかる吊点荷重が均一になるように配置されること、を特徴とするからである。
【0028】
図6に、艤装ユニットと工具の関係を平面図に示す。
図7に、艤装ユニットと工具の関係を側面図に示す。艤装ユニット160に備えられたブラケット230とサブブラケット251には、それぞれ第1取付孔231A乃至第4取付孔231Dと、第1取付孔232A乃至第4取付孔232Dと、取付孔252が設けられている。第1ブラケット230A側の第1取付孔231A乃至第4取付孔231D、及び第2ブラケット230B側の第1取付孔232A乃至第4取付孔232Dでは、それぞれの吊点位置(第1取付孔231A乃至第4取付孔231Dの配置される中心位置)における吊点荷重が等しく設定されており、ここではA
1kgfとしておく。一方、第2ブラケット230Bでも同様に、設けられる第1ブラケット230A側の第1取付孔231A乃至第4取付孔231Dのそれぞれの吊点位置で、A
2kgfとなるようにその位置が設定されている。
【0029】
ここで、A1とA2は防振ゴム240への荷重値が静荷重+動荷重(0.3G)よりも許容荷重が大きくなるように設定されており、例えばゴム硬度±3度のものが選択されている。A1とA2の数値が同値にできればそれに越したことはないが、設計上これが困難であったので、本実施形態では第1ブラケット230Aと第2ブラケット230Bのそれぞれで、吊点荷重を等しくし、A1とA2の数値は差が20%以内の数値に収まるように設定をしている。もちろん、設計上、A1とA2の数値が等しく設定されることが好ましい。
【0030】
また、取付孔252Aでの吊点荷重はA
3kgfに設定されており、ここだけ別の防振ゴム245が用いられている。つまり、
図5に示すように、第1ラインL1と、第2ラインL2と、第3ラインL3にそれぞれ設けられている取付孔231、取付孔232、及び取付孔252はいずれも各ライン上では同じ数値になるように設定されている。
【0031】
この結果、本実施形態では、艤装ユニット160の振動を車体110に伝わるのを防ぐのに使う防振ゴムは、防振ゴム240、245の2種に絞ることができ、同じブラケット上に並ぶ防振ゴムは同じ種類に統一することができるので、メンテナンス上、取り付け違いを起こしにくくする事ができる。
【0032】
これまでは、各吊点位置にかかる荷重を揃えるという発想が無く、例えば特許文献1や特許文献2などにもそうした示唆が無かったように、積極的に防振ゴム240、245を艤装ユニット160の取り付けに採用してこなかった経緯がある。しかし、現実的に艤装ユニット160の防振を考えると、防振ゴム240、245の性能を維持するためには、数年に1回は交換が必要となってくる。このため、
図6及び
図7に示すように、工具10を用いて防振ゴム240または防振ゴム245を交換することは必須となる。ここで、工具10はトルクレンチを想定している。
【0033】
この場合に、本実施形態のように第1ブラケット230Aでは、何れも同じ防振ゴム240を用いられており、第2ブラケット230Bでも同様に同じ防振ゴム240が設けられていることで、同じライン上に配置された防振ゴム240は同じ種類で交換すれば良くなり、メンテナンス性が向上する上に、取り付けミスが発生しにくくなるというメリットが得られる。
【0034】
また、吊点位置の吊点荷重を揃えることで、振動モードが単純化できるというメリットが挙げられる。吊点位置の吊点荷重がそれぞれ異なる場合、Z軸方向の振動の他にX軸、Y軸方向にも振動が発生し易くなる。実際に、第1ブラケット230A及び第2ブラケット230Bでは、それぞれ4箇所の吊点位置を設定しているが、艤装ユニット160の質量は主変圧器200とユニットクーラ250の中央付近に質量が集まることになるため、中央辺りで2箇所の吊点位置を設定しないと、均等荷重分散が困難である。これを考慮せずに吊点位置を設定すると、振動モードの解析が複雑化するので、防振ゴム240の選択が難しくなる。
【0035】
これを吊点位置にかかる吊点荷重を、第1ライン、第2ライン、第3ラインでそれぞれ揃えることで、振動モードをZ軸方向の振動のみを想定すれば良くなる。この結果、艤装ユニット160の防振構造の設計がし易くなる。この事は、単純な振動モードでの防振ゴム240の利用が可能となるので、防振ゴム240の長寿命化にも繋がる。
【0036】
また、床下機器に相当する主変圧器200とユニットクーラ250などに必要な端子箱210は、2つの第1端子箱210A及び第2端子箱210Bに分割して艤装ユニット160に取り付けられている。第1端子箱210A及び第2端子箱210Bは、鉄道車両100の進行方向に面する艤装ユニット160の側面に設けられている。そして、第1端子箱210Aと第2端子箱210Bの間には、第2取付孔231Bと第3取付孔231Cが設けられている。こうすることで、
図6及び
図7に示すように工具10を使って吊下ボルト165にアクセスできることとなり、メンテナンスが可能となる。
【0037】
以上、本発明に係る鉄道車両の取付機器防振支持構造に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、ブラケット230の位置や吊点位置に関しても、艤装ユニット160の質量や重心位置に対応させて変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0038】
10 工具
100 鉄道車両
120 床構体
121 台枠
150 台車
160 艤装ユニット
165 吊下ボルト
200 主変圧器
240 防振ゴム
250 ユニットクーラ