(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】TOFセンサ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20230117BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20230117BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20230117BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S17/894
H04N5/369
H01L27/146 A
(21)【出願番号】P 2022535282
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024979
(87)【国際公開番号】W WO2022009775
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2020119201
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516327516
【氏名又は名称】Gpixel Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521346771
【氏名又は名称】ジーピクセル・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Gpixel NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボガーツ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】原田 真吾
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0230304(US,A1)
【文献】国際公開第2016/208215(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/123738(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0375851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
H04N 5/30 - H04N 5/378
H01L 27/14 - H01L 27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向およびY方向に配列される画素を備えた画素領域と前記画素領域のY方向の一端側に配置されるクロックバッファ領域とを備えるTOFセンサであって、
前記画素領域には、単独の前記画素、または、X方向および/またはY方向に隣接する複数の前記画素、から構成された単位画素群が2次元配列され、前記単位画素群の前記画素は、それぞれフォトダイオードと複数の転送ゲートと電荷蓄積および出力回路とを備え、
前記複数の転送ゲートのそれぞれを駆動する複数のクロック信号はそれぞれ、前記クロックバッファ領域において、X方向においてバイナリー分岐されて、前記単位画素群がY方向に配列された単位画素群列を駆動する
出力クロックバッファに入力され、
前記単位画素群列を駆動する前記
出力クロックバッファの出力配線のそれぞれは、
前記画素領域のY方向の中点に位置する第1分岐点まで配線された後、2つに分岐されて、前記単位画素群列のうちの、前記第1分岐点より一端側の前記単位画素群の転送ゲートと前記第1分岐点より他端側の前記単位画素群の前記転送ゲートとに、クロックバッファを介することなく接続されるTOFセンサ。
【請求項2】
前記複数のクロック信号のX方向にバイナリー分岐される各バイナリー分岐点に
はクロックバッファが配置され、前記クロックバッファの出力が2方向に分岐される、請求項1に記載のTOFセンサ。
【請求項3】
前記第1分岐点で2つに分岐された配線の一方は、前記画素領域のY方向の一端側から1/4の距離に位置する第2分岐点まで配線された後、2つに分岐されて、前記Y方向の前記単位画素群の配列のうちの、前記第2分岐点より一端側の前記単位画素群の前記転送ゲートと前記第2分岐点と前記第1分岐点との間の前記単位画素群の前記転送ゲートとに接続され、
前記第1分岐点で2つに分岐された配線の他方は、前記画素領域のY方向の一端側から3/4の距離に位置する第3分岐点まで配線された後、2つに分岐されて、前記Y方向の前記単位画素群の配列のうちの、前記第1分岐点と前記第3分岐点との間の前記単位画素群の前記転送ゲートと前記第3分岐点より他端側の前記単位画素群の前記転送ゲートとに接続される、請求項
1または2に記載のTOFセンサ。
【請求項4】
さらに、前記第1分岐点に対してY方向において隣接する2つの前記単位画素群の前記転送ゲートがたがいに接続される、請求項
3に記載のTOFセンサ。
【請求項5】
前記
出力クロックバッファの出力から前記第1分岐点までの配線の、前記第1分岐点に対して対称となる位置に、配線が形成される、請求項
1から4のいずれか1項に記載のTOFセンサ。
【請求項6】
前記
出力クロックバッファの出力から前記第1分岐点までの配線には、
シート抵抗が小さくかつ寄生容量が下層より小さい、上層の配線層が使用され、前記第1分岐点から各単位画素群の前記転送ゲートまでの配線には下層の配線層が使用される、請求項1から
5のいずれか1項に記載のTOFセンサ。
【請求項7】
さらに、X方向において隣接する前記単位画素群の前記転送ゲートがたがいに接続される、請求項1から
6のいずれか1項に記載のTOFセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TOF(Time of Flight)センサに関し、特に転送ゲート用の高速クロック信号を伝搬するクロック配線を有するインダイレクト(Indirect)TOFセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2000-340778号公報)には、配線遅延のバラツキ幅が小さいイメージセンサ装置が開示されている。特許文献1のイメージセンサ装置は、主走査方向に長い形状を有するプリント基板及びイメージセンサチップで構成される。イメージセンサチップは、n段のフリップフロップから成るシフトレジスタ、n個の光電変換素子から成る光電変換素子アレイ、n個のトランジスタから成る画素スイッチアレイ、主走査方向に延びクロック入力端子に接続されるクロック配線、及び、主走査方向に延びイメージ信号出力端子に接続される読出し配線で構成される。各期間で発生する配線遅延は、クロック入力端子又はイメージ信号出力端子が、主走査方向の両端の一方又は他方のどちらかに配置されることで、実質的に等しくなる。
【0003】
また、特許文献2(特開平08-129571号公報)には、末端での立上り立下り時間が揃いしかもスキューの小さなクロック配線レイアウトが開示されている。特許文献2には、従来の技術として、クロック配線4をH字型に繰り返し分岐させ、全体としてツリー状をなすようにクロック配線を設計するHツリー法が提案されている。このHツリー法は、クロック信号を2倍、4倍、8倍……と規則的に分配させるため、対称性が高くかつ各分岐点のバッファアンプの負荷容量(配線容量および次段ゲートの入力容量等)がほぼ等しくなるので、スキューを低減することができるという利点がある。
【0004】
また、特許文献3(特開平10-199985号公報)にも、無駄な電力消費を低減し、かつ、クロックスキューの抑制された半導体集積回路が開示されている。特許文献3にも、従来の技術として、
図5(c)に、Hツリー構造の配線4をクロック配線として使用したチップレイアウトが記載されている。
図5(c)に示した技術は、所定の形状の配線パターンをチップ上に形成し、この配線パターンに沿ってクロックの供給を受ける多数のフリップフロップ(図示略)を配置するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-340778号公報
【文献】特開平08-129571号公報
【文献】特開平10-199985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TOFセンサは、光源から放射された光が対象物で反射し、センサに帰ってくるまでの時間を計測し、既知である光の速度をもとに距離を算出する手法である。TOF法による距離計測は、当初はフォトダイオード、短パルスレーザおよび時間計測回路がディスクリートで構成された点計測であった。しかし、近年、CMOSイメージセンサの発展に伴い、時間計測が可能なイメージセンサ(時間分解イメージセンサ)が開発された。
TOFセンサにはレーザ放出装置と受信装置とがあり、レーザ放出装置でレーザを放出してから、対象物の表面で反射したレーザを受信装置で受信するまでの時間差を測定することにより、センサと対象物との間の距離を測定する。なお、以降の説明では上記受信装置をTOFセンサと称する。
TOFセンサでは時間差を測定するために、センサ内部で転送ゲート用の複数の位相の高速クロック信号を発生させ、それぞれの転送ゲートのオンの期間に画素内のフォトダイオードに発生した電荷を複数回転送して蓄積し、出力回路で蓄積された電荷量を出力し、各位相における蓄積された電荷量の比率を計算することによって、受信装置でのレーザの受信時間を計算する。
【0007】
TOFセンサでは、フォトダイオードに発生した電荷を複数回転送し蓄積してから読み出すため、出力回路の動作はそれほど高速でなくてもよいが、TOFセンサの時間分解能を上げるためには、上記転送ゲート用の複数の位相の高速クロック信号のパルス幅および周期を短くする必要がある。
しかし、TOFセンサ内の各画素の転送ゲート用クロック信号の伝搬遅延時間がTOFセンサ内でばらついた場合には、転送ゲートがオンするタイミングがばらつき、TOFセンサの各画素間の測定時間のばらつきとなる。したがって、TOFセンサの各画素間の測定時間のばらつきを小さくするためには、各画素の転送ゲート用クロック信号の伝搬遅延時間をなるべく同一にする必要がある。
また、TOFセンサの空間分解能を向上させるためには2次元アレイとして配置される画素の数を増やす必要がある。
【0008】
したがって、本発明の解決しようとする課題は、画素数の大きな2次元アレイのTOFセンサの、パルス幅および周期の短い転送ゲート用の高速クロック信号の、各画素間での伝搬遅延時間のばらつきを小さくすることである。
【0009】
この、各画素間での伝搬遅延時間のばらつきを小さくするための取り組みは、システムの観点でも行われている。具体的には、伝搬遅延時間のばらつきによる測定時間のばらつきが出荷前に測定され、記録され、TOFセンサの実使用時には記録された測定時間のばらつきが読み出され、距離測定時に距離情報の補正に用いることができる。しかし、上記伝搬遅延時間のばらつきはTOFセンサの置かれる環境の変化、例えば温度の変化によって変動する。したがって、補正用の測定時間のばらつきが大きい場合には、補正用の測定時間のばらつきの環境の変化による変動も大きく、結果として補正後の距離測定値の画素間のばらつきが大きくなる。
また、システムの観点での取り組みを容易にするためには、各画素間での伝搬遅延時間のばらつきがランダムではなく、単純化された傾向を備えている方が望ましい。具体的には、例えば2次元に配置された画素において、X方向の伝搬遅延時間のばらつきが少なく、Y方向についても系統的なばらつきを示すものであれば、少ないパラメータでの記録、および補正が可能になる。
【0010】
特許文献1に記載の発明のイメージセンサ装置では、クロックがオンとなり光電変換素子で発生した電荷がそのままイメージ信号出力端子から出力される。そして、クロック入力端子に近い光電変換素子はクロック配線での配線遅延が小さくクロックがオンとなるタイミングは早いが、光電変換素子で発生した電荷のイメージ信号出力端子までの配線遅延が大きく、逆にクロック入力端子の反対側の光電変換素子はクロック配線での配線遅延が大きくクロックがオンとなるタイミングは遅いが、光電変換素子で発生した電荷のイメージ信号出力端子までの配線遅延が小さい。したがって、光電変換素子の配置される位置による遅延の差は小さくなるというものである。
この方法は、通常のイメージセンサのように電荷を発生させるクロックと電荷を転送するクロックが同一の場合は有効であるが、TOFセンサのように複数回のクロックで発生させた電荷を蓄積してから転送する場合には適用できない。したがって、TOFセンサの場合は高速クロック信号の伝搬遅延時間のばらつきそのものを小さくする必要がある。
【0011】
特許文献2および3に記載のHツリー構造の配線の例を
図15に示した。
図15は、Hツリー法によるクロック配線のレイアウトの一例を示す平面説明図である。図において、10は半導体チップ、11はクロック入力端子、12は末端回路(ラッチ回路)、13はルートバッファ、14はクロック配線である。
図15のHツリー構造の配線は、クロック信号を2倍、4倍、8倍……と規則的に分配させるため、対称性が高くかつ各分岐点のバッファアンプの負荷容量(配線容量および次段ゲートの入力容量等)がほぼ等しくなるので、スキューを低減することができるという利点がある。
しかし、Hツリー構造を2次元アレイのTOF画素に適用した場合、アレイ中央付近は配線が密になるのに対し、周辺部に行くに従い配線が疎になっていくため、2次元アレイのTOF画素にとって重要な、画素ごとの均一性を保つことが困難であるという課題がある。
また、2次元アレイのTOF画素ではアレイ内にクロックバッファを配置することはできないため、Hツリー構造の配線全体を1つのクロックバッファで駆動する必要があり、クロックバッファの設計が難しいとの課題もある。
【0012】
さらに、一般的なディジタル回路では基本的に「1クロック周期」が基準となる時間軸で回路が動作するため、伝搬遅延時間も、例えば1クロック周期の半分以下の範囲内であればばらつきがあっても問題ない。しかし、TOFセンサの場合は、距離分解能1cmを目指すには67ps程度の時間分解能が必要になる。このため、TOFセンサでは、伝搬遅延時間のばらつきによる測定時間のばらつきを出荷前に測定して記録し、実使用時には記録された測定時間のばらつきを読み出し、距離測定時に距離情報の補正に用いるとのシステムレベルの取り組みがなされている。
しかし、転送ゲートのクロック配線にこのHツリー構造を適用した場合には、伝搬遅延時間のばらつきが2次元分布となるため、例えばY方向のばらつきを独立して補正するなどの補正処理の簡素化を図ることができないとの課題もある。
【0013】
本発明の主な目的は、X方向とY方向とに2次元配置された画素を備えるTOFセンサにおいて、各画素の転送ゲートに接続される高速クロック信号の伝搬遅延時間の画素ごとのばらつきを小さくすることのできるTOFセンサを提供することにある。
本発明の第2の目的は、X方向の画素ごとの伝搬遅延時間のばらつきが少なく、システムレベルでの補正を行う場合に、Y方向のみの補正で測定精度を大幅に向上させることができるTOFセンサを提供することにある。
【0014】
(1)
一局面に従うTOFセンサは、X方向およびY方向に配列される画素を備えた画素領域と画素領域のY方向の一端側に配置されるクロックバッファ領域とを備えるTOFセンサであって、画素領域には、単独の画素、または、X方向および/またはY方向に隣接する複数の画素、から構成された単位画素群が2次元配列され、単位画素群の画素はそれぞれフォトダイオードと複数の転送ゲートと電荷蓄積および出力回路とを備え、複数の転送ゲートのそれぞれを駆動する複数のクロック信号はそれぞれ、クロックバッファ領域において、X方向にバイナリー分岐されて、単位画素群がY方向に配列された単位画素群列を駆動するクロックバッファに入力され、単位画素群列を駆動するクロックバッファの出力配線のそれぞれは、Y方向においてバイナリー分岐されて、単位画素群列の複数の転送ゲートに接続される。
なお、バイナリー分岐とは、クロック配線がまず2つに分岐され、2つに分岐されたクロック配線のそれぞれがさらに2つに分岐されるというように分岐を繰り返して、N回分岐することによって2Nの配線に分岐されることを意味する。
また、クロックバッファとは、より大きな負荷を駆動するためにクロック信号を増幅する回路のことであり、例えばインバータ2段で構成される。
また、一局面に従うTOFセンサでは、Y方向の一端側にクロックバッファ領域が配置され、クロックバッファの出力配線のそれぞれがY方向に配列された単位画素群列を駆動すると規定されているが、TOFセンサの内部配置を90度回転させて、X方向の一端側にクロックバッファ領域を配置してもよい。
【0015】
この場合、以下の効果を奏する。
(a)Y方向の単位画素群列の転送ゲートを、Y方向においてバイナリー分岐されたクロック配線で駆動することにより、Y方向の単位画素群列全体を端部から1本のクロック配線で駆動する場合に比べて、Y方向の単位画素群列内での伝搬遅延時間のばらつきを減少させることができる。
(b)クロックバッファ領域において、クロック信号をX方向にバイナリー分岐することにより、Y方向の単位画素群列を駆動する各クロックバッファの間での伝搬遅延時間のばらつきを減少させることができる。
(c)上記(b)の効果により、2次元配列された画素間の測定距離の誤差のうち、X方向の画素間でのばらつきを大幅に減少させることができ、システムレベルでの誤差補正をする場合に、Y方向の画素間の誤差補正のみで2次元配列された画素間の測定精度を大幅に向上させることができる。
【0016】
(2)
第2の発明にかかるTOFセンサは、一局面に従うTOFセンサにおいて、複数のクロック信号のX方向にバイナリー分岐される各バイナリー分岐点にはクロックバッファが配置され、クロックバッファの出力が2方向に分岐されてもよい。
【0017】
この場合、各分岐点に配置されるクロックバッファのサイズを適切に設定することによって、クロック波形の遅延の絶対値とばらつき、および立ち上がり、立下り時間を減少させることができる。
【0018】
(3)
第3の発明にかかるTOFセンサは、一局面から第2の発明にかかるTOFセンサにおいて、最終段のクロックバッファの出力のそれぞれは、画素領域のY方向の中点に位置する第1分岐点まで配線された後、2つに分岐されて、単位画素群列のうちの、第1分岐点より一端側の単位画素群の転送ゲートと第1分岐点より他端側の単位画素群の転送ゲートとに接続されてもよい。
【0019】
この場合、画素領域のY方向の中点から駆動することにより、Y方向の画素の配列全体を端部から1本のクロック配線で駆動する場合に比べて、Y方向の単位画素群の間での伝搬遅延時間のばらつきを減少させることができる。
【0020】
(4)
第4の発明にかかるTOFセンサは、第3の発明にかかるTOFセンサにおいて、第1分岐点で2つに分岐された配線の一方は、画素領域のY方向の一端側から1/4の距離に位置する第2分岐点まで配線された後、2つに分岐されて、Y方向の単位画素群の配列のうちの、第2分岐点より一端側の単位画素群の転送ゲートと第2分岐点と第1分岐点の間の単位画素群の転送ゲートとに接続され、
第1分岐点で2つに分岐された配線の他方は、画素領域のY方向の一端側から3/4の距離に位置する第3分岐点まで配線された後、2つに分岐されて、Y方向の単位画素群の配列のうちの、第1分岐点と第3分岐点の間の単位画素群の転送ゲートと第3分岐点より他端側の単位画素群の転送ゲートとに接続されてもよい。
【0021】
この場合、Y方向の単位画素群の配列の一端側から1/4の第2分岐点と、Y方向の単位画素群の配列の一端側から3/4の第3分岐点とから各画素の転送ゲートを駆動することにより、Y方向の画素の配列全体を端部から1本のクロック配線で駆動する場合に比べて、Y方向の画素間での伝搬遅延時間のばらつきをさらに減少させることができる。
【0022】
(5)
第5の発明にかかるTOFセンサは、第4の発明にかかるTOFセンサにおいて、さらに、第1分岐点に対してY方向において隣接する2つの単位画素群の転送ゲートがたがいに接続されてもよい。
【0023】
この場合、TOFセンサ内の配線抵抗あるいは配線容量等の相対ばらつきによる、Y方向の画素配列の中央の隣接する2つの画素間における転送ゲートの伝搬遅延時間のばらつきを減少させることができる。
【0024】
(6)
第6の発明にかかるTOFセンサは、第3の発明から第5の発明にかかるTOFセンサにおいて、クロックバッファの出力から第1分岐点までの配線の、第1分岐点に対して対称となる位置に、配線が形成されてもよい。
【0025】
イメージセンサでは各画素の周辺の配線等について極力均一性を保つことが重要である。これは、もし均一性が保たれない場合、各画素間における寄生容量等の状態にばらつきが生じ、それにより電荷蓄積能力および転送能力のばらつきを生むためである。これらは距離測定精度ばらつきに直結するため、極力各画素間における寄生容量等の物理的状態の均一性を保つ必要がある。
第3の発明から第5の発明にかかるTOFセンサでは、Y方向の一端側に配置されるクロックバッファ領域と第1分岐点とを接続する配線が存在する。この場合、クロックバッから第1分岐点までの配線の、第1分岐点に対して対称となる位置に、配線を形成することによって、各画素の周辺の配線の均一性を保つことができる。
なお、形成される配線としては、Y方向の一端側から第1分岐点までのクロック配線とは独立したダミー配線を第1分岐点付近からY方向の他端側まで延在させる場合と、Y方向の一端側から第1分岐点までのクロック配線をY方向の他端側まで延在させる場合とがある。
クロック配線をY方向の他端側まで延在させる場合は、Y方向の一端側から第1分岐点までと第1分岐点からY方向の他端側までとの間で、形成される配線と分岐後のクロック配線との間の寄生容量成分およびそのダイナミックな動作状況を極力揃えることができる点で有利であるが、クロック配線の寄生容量成分が増加するという点では不利である。
【0026】
(7)
第7の発明にかかるTOFセンサは、第3の発明から第6の発明にかかるTOFセンサにおいて、クロックバッファの出力から第1分岐点までの配線には、上層の配線層が使用され、第1分岐点から各画素の転送ゲートまでの配線には下層の配線層が使用されてもよい。
【0027】
クロックバッファの出力から第1分岐点までの配線の寄生抵抗および寄生容量は、クロック波形の遅延の絶対値および立ち上がり、立下り時間の増加を招く。第4の発明にかかるTOFセンサでは、この、クロックバッファの出力から第1分岐点までの配線に、シート抵抗が小さく、かつ寄生容量が小さい、上層の配線層を用いることによって、クロック波形の遅延の絶対値および立ち上がり、立下り時間の増加を抑制することができる。
【0028】
(8)
第8の発明にかかるTOFセンサは、一局面から第7の発明にかかるTOFセンサにおいて、さらに、X方向において隣接する単位画素群の転送ゲートがたがいに接続されてもよい。
【0029】
この場合、最終段のクロックバッファの駆動能力のばらつき、およびTOFセンサ内の配線の寄生抵抗および寄生容量等の相対ばらつきによる、X方向において隣接する、単位画素群列の間における転送ゲートの伝搬遅延時間のばらつきを減少させることができる。
【0030】
なお、本発明のTOFセンサのクロック配線構造は、配線による露光への影響が無視できる裏面照射型センサに特に適するが、画素の大きさ、配線層の数などによっては表面照射型センサにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】TOFセンサのクロックバッファ領域の模式的回路図である。
【
図3】TOFセンサの画素の一例の模式的回路図である。
【
図4】TOFセンサの画素の動作の一例を示す模式的タイミングチャートである。
【
図5】TOFセンサのクロック配線レイアウトの一例を示す模式図であって、
図5(a)はクロック配線をY方向の他端側まで延在させる場合、
図5(b)は独立したダミー配線をY方向の他端側まで延在させる場合に相当する。
【
図6】TOFセンサのクロック配線レイアウトの他の例を示す模式図であって、
図6(a)はクロック配線をY方向の他端側まで延在させる場合、
図6(b)は独立したダミー配線をY方向の他端側まで延在させる場合に相当する。
【
図7】TOFセンサのクロック配線レイアウトのさらに他の例を示す模式図であって、独立したダミー配線をY方向の他端側まで延在させる場合に相当する。
【
図8】TOFセンサのクロック配線の一例を示す模式的回路図である。
【
図9】TOFセンサのクロック配線の他の例を示す模式的回路図である。
【
図10】TOFセンサのクロック配線を端部駆動した場合のシミュレーション回路図である。
【
図11】TOFセンサのクロック配線を中央駆動した場合のシミュレーション回路図である。
【
図12】TOFセンサのクロック配線を4分割駆動した場合のシミュレーション回路図である。
【
図13】各C端子の遅延時間の絶対値の比較グラフである。
【
図14】各C端子の遅延時間の相対値の比較グラフである。
【
図15】従来技術におけるHツリー構造の配線レイアウトを示す図である。
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0033】
[実施形態]
図1は、TOFセンサ100の模式的平面図であり、
図2はTOFセンサ100のクロックバッファ領域20の模式的回路図である。
図3はTOFセンサ100の画素40の一例の模式的回路図であり、
図4はTOFセンサ100の動作の一例を示す模式的タイミングチャートである。また、
図5と
図6と
図7とはそれぞれ、TOFセンサ100のクロック配線50のレイアウトの一例、他の例、およびさらに他の例を示す模式図である。さらに
図8と
図9とはそれぞれ、TOFセンサ100のクロック配線50の一例、および他の例を示す模式的回路図である。
【0034】
(TOFセンサ100全体の配置)
図1に示すように、TOFセンサ100は、単独の画素40、または、X方向および/またはY方向に隣接する複数の画素40、から構成された単位画素群36がY方向に配列されて、Y方向の単位画素群列35となり、さらにY方向の単位画素群列35がX方向に配列されて、2次元配列された画素領域30が形成されている。画素領域30のY方向の一端側にはクロックバッファ領域20が形成され、クロックバッファ領域20からY方向の単位画素群列35のおのおのに各画素40の転送ゲート42(図示せず)を駆動する高速クロック信号のクロック配線50(図示せず)が延在している。なお、
図1には、Y方向の単位画素群列35のおのおのに対して1つのクロックバッファ22が描かれているが、TOFの画素40はそれぞれ複数の転送ゲート42を含み、
図1には図示していないが、TOFの画素40の転送ゲート42の数に対応してY方向の単位画素群列35のおのおのに複数のクロックバッファ22が配置される。また、
図1には図示していないが、TOFセンサ100にはY方向の単位画素群列35から画素40を選択して出力するための選択信号、Y方向の単位画素群列35から出力された電荷を読み出すための読み出し回路等も含まれる。
【0035】
(クロックバッファ領域20の構成と動作)
図2に示すように、クロック入力端子21から入力されたクロック信号はクロックバッファ22で増幅されたのち2つに分岐され、分岐されたクロック信号はまたクロックバッファ22で増幅されたのちさらに2つに分岐される。このバイナリー分岐を繰り返すことによってクロック信号はY方向の単位画素群列35の数と同じ数まで分岐される。
図2では5段階の分岐によって32のクロック出力が形成されている。一般には、N段階の分岐によって2
Nの出力を得ることができる。なお、Y方向の単位画素群列35がX方向に何列配列されるかについては、TOFセンサ100の構造、あるいは必要なX方向の分解能によって異なる。
また、
図2では1つのクロック信号のみが描かれているが、実際には各画素40の転送ゲート42の数だけのバイナリー分岐回路がクロックバッファ領域20に含まれている。
また、
図2では各段の分岐のすべてにクロックバッファ22が設けられているが、一部の段の分岐に対して、クロックバッファ22を設けず、配線の分岐のみとすることもできる。
【0036】
図2のバイナリー分岐で構成されたクロックバッファでは、クロックバッファ領域20の出力に相当する最終段のクロックバッファ22の出力に、同一の抵抗と容量を備えた、Y方向の単位画素群列35のクロック配線50を接続した場合、単位画素群列35のおのおののクロック配線50におけるクロック信号の伝搬遅延時間、立ち上がり立下り時間等をほぼ同一とすることができる。
【0037】
(画素40の構成と動作の一例)
本発明の目的は、転送ゲート42に接続される高速クロック信号の伝搬遅延時間の画素40ごとのばらつきを小さくすることのできる配線構造を備えたTOFセンサ100を提供することにある。したがって、本発明は、複数の転送ゲート42を備える画素40のすべてに適用することができるが、ここでは一例として、2個の転送ゲート42を備えた画素40についてその構成と動作を説明する。
図3に示すように、TOF用の画素40では、フォトダイオード41(PD)の電荷を複数の時間窓(クロック)でサンプリングするために、複数の転送ゲート42(TG1,TG2)が配置されている。転送ゲート42(TG1、TG2)でサンプリングされた電荷はそれぞれフローティングディフュージョン(FD1、FD2)に蓄積され、ソースフォロワー(SF1、SF2)および選択トランジスタ(SEL1、SEL2)を介して出力(OUT1、OUT2)から読み出される。
【0038】
図4はTOFセンサ100を用いた時間測定の原理を示すタイミングチャートである。レーザ放出装置からパルス幅TPWのレーザ光が放射され、対象物で反射して受信光となって画素40のフォトダイオード41に入力される。一方、画素40の2つの変調ゲートのうち、TG1がまずオンし、TG2はTG1よりレーザ光のパルス幅TPWだけ遅れてオンする。受信光は、レーザ放出装置と対象物との距離と対象物とTOFセンサ100との距離との和を光速で割り算した時間に相当する飛行時間(TOF)だけ遅れてTOFセンサ100に入射する。そして、受信光のパルスとTG1との重なった時間に発生する電荷はFD1に蓄積され、受信光のパルスとTG2との重なった時間に発生する電荷はFD2に蓄積されることから、FD1に蓄積された電荷の量とFD2に蓄積された電荷の量とを出力し、その比率を計算することによりTOFを求めることができる。
なお、放射レーザ光のオンするタイミングとTG1のオンするタイミングとがずれた場合測定誤差が発生するが、TG1のオンするタイミングが放射レーザ光のオンするタイミングからどれだけ遅れているかがわかっていれば、測定誤差はシステムレベルでの補正で訂正することが可能である。
また、転送ゲート42は受信光のパルスをTG1とTG2とで変調することから、変調用ゲートとも呼ばれる。
【0039】
しかし、レーザ光の放射されるタイミングとTG1およびTG2のタイミングが想定よりずれた場合、その分、TOFセンサ100により求められた距離に測定誤差が発生し、対象物との間の距離の誤差となる。特に、TOFセンサ100の各画素40の間でTG1およびTG2のオンオフのタイミングにばらつきが発生すると、対象物との距離の測定結果の2次元分布に誤差が発生する。したがって、転送ゲート42のクロック信号TG1、TG2のX方向およびY方向の伝搬遅延時間のばらつきを少なくすることは、X方向とY方向に2次元配置された画素40を備えるTOFセンサ100にとって非常に重要である。
このうち、X方向については、
図2のバイナリー分岐で構成されたクロックバッファ22を用いることで、クロックバッファ領域20の各クロックバッファ22の出力におけるクロック信号の伝搬遅延時間、および立ち上がり立下り時間等をほぼ同一とすることができる。したがって、TOFセンサ100のXおよびY方向に配列された各画素40の間の伝搬遅延時間のばらつきを減少させるためには、Y方向の単位画素群列35の中の各画素40の伝搬遅延時間のばらつきを減少させることが重要である。
【0040】
図5はTOFセンサ100のクロック配線レイアウトの一例を示す模式図である。クロックバッファ領域20の最終段のクロックバッファ22(TG1,TG2)の出力は画素に接続されることなく画素領域30のY方向の中点に位置する第1分岐点51まで延在し、そこで2つに分岐されて、一方のクロック配線50はY方向の中央からクロックバッファ領域20に隣接する一端側に延在する画素40の転送ゲート42(図示せず)に接続される。また、2つに分岐された配線のうち、他方のクロック配線50はY方向の中央から他端側に延在する画素40の転送ゲート42に接続される。
図5は、転送ゲート42が2個の場合の例であり、したがって、クロック配線50も各単位画素群列35に2本の配線がレイアウトされている。
また、
図5にはクロックバッファ22から第1分岐点51までのクロック配線50の、第1分岐点51に対して対称となる位置に、配線が形成されている。これは、各画素の周辺の配線パターンの均一性を保つためである。
図5(a)はクロック配線50をY方向の他端側まで延在させる場合、
図5(b)は独立したダミー配線56をY方向の他端側まで延在させる場合に相当する。
クロック配線50をY方向の他端側まで延在させる場合は、Y方向の一端側から第1分岐点51までと第1分岐点51からY方向の他端側までとの間で、形成される配線と分岐後のクロック配線50との間の寄生容量成分およびそのダイナミックな動作状況を極力揃えることができる点で有利であるが、クロック配線50の寄生容量成分が増加するという点では不利である。
【0041】
図6は、TOFセンサ100のクロック配線レイアウトの他の例を示す模式図である。クロック配線50は上層の配線層53と下層の配線層54とが絶縁層をはさんで積層されており、
図6にはその両方のクロック配線50が表示されている。クロックバッファ領域20の最終段のクロックバッファ22(TG1,TG2)の出力は上層の配線層53によりY方向の単位画素群列35の中央に位置する第1分岐点51まで延在し、そこで上層の配線層53と下層の配線層54とを接続するビア55を介して下層の配線層54に接続される。そして、下層の配線層54は、Y方向の中央からクロックバッファ領域20に隣接する一端側に延在する画素40の転送ゲート42、およびY方向の中央から他端側に延在する画素40の転送ゲート42に接続される。
図6も、転送ゲート42が2個の場合の例であり、したがって、クロック配線50も各単位画素群列35に2本の配線がレイアウトされている。
また、
図6にも、クロックバッファ22から第1分岐点51までのクロック配線50の、第1分岐点51に対して対称となる位置に、配線が形成されている。
図6(a)はクロック配線50をY方向の他端側まで延在させる場合、
図6(b)は独立したダミー配線56をY方向の他端側まで延在させる場合に相当する。
【0042】
図7はTOFセンサ100のクロック配線レイアウトのさらに他の例を示す模式図である。
図7においては、X方向に隣接する3つの画素40が単位画素群36を構成している。
図7の例では、転送ゲート42を駆動するクロックは3相であり、3つのクロックバッファ22(TG1,TG2,TG3)の出力は、画素40に接続されることなく画素領域30のY方向の中点に位置する第1分岐点51まで延在し、そこで2つに分岐されて、それぞれ単位画素群36に接続される。クロックバッファ22の出力は上層の配線層53を用いて配線され、各単位画素群36において上層の配線層53と下層の配線層54とを接続するビア55を介して下層の配線層54に接続され、下層の配線層54によって各画素40の転送ゲート42に接続される。
また、
図7の例では、X方向に隣接する単位画素群36の下層の配線層54がたがいに接続されている。本発明のクロック信号はクロックバッファ領域20でX方向にバイナリー分岐されており、各Y方向の単位画素群列35のクロック配線50および転送ゲート42の形状もX方向において同一であることから、理論的には、X方向に隣接する単位画素群36の下層の配線層54の波形は同一であるが、X方向に隣接する単位画素群36の下層の配線層54をたがいに接続することにより、最終段のクロックバッファ22の駆動能力のばらつき、およびクロック配線50の寄生抵抗および寄生容量の相対ばらつきによる、X方向において隣接する、単位画素群36の間における転送ゲート42の伝搬遅延時間のばらつきを減少させることができる。
なお、
図7の例では、X方向に隣接する3つの画素40が単位画素群36を構成しているが、例えば、さらに、X方向に隣接する3つの画素40同士をY方向で合体させて合計6つの画素40で単位画素群36を構成してもよい。また、Y方向に隣接する画素40のみで単位画素群36を構成してもよい。
また、
図7にも、クロックバッファ22から第1分岐点51までのクロック配線50の、第1分岐点51に対して対称となる位置に、配線が形成されている。
図7は独立したダミー配線56をY方向の他端側まで延在させる場合に相当する。
【0043】
図8は、
図5乃至
図7のレイアウトに対応するクロック配線50の等価回路図である。クロック配線50はクロックバッファ22の出力から第1分岐点51まで延在し、その後、2つに分岐されてY方向の単位画素群列35の一端側および他端側に向かって延在している。
図8では、クロック配線50でのクロック信号の遅延に対応させるために、クロック配線50をC-R-Cの縦続接続として記載している。
図8の構成ではクロックバッファ22の出力が第1分岐点51から一端側および他端側に伝搬するために、クロックバッファ22の出力を一端側から他端側に向けて伝搬させた場合に比べて、Y方向の単位画素群列35に相当する
図8の下段のクロック配線50における伝搬遅延時間のばらつきが小さくなる。
【0044】
図9はTOFセンサ100のクロック配線50の他の例を示す模式的回路図である。
図9では、クロックバッファ22の出力から第1分岐点51まで延在し、そこで分岐した後、一方のクロック配線50はさらに画素領域30のY方向の一端側から1/4の距離に位置する第2分岐点57まで延在し、そこでまた2つに分岐して、それぞれY方向の単位画素群列35の一端側と第1分岐点51側とに向かって延在する。また、第1分岐点51で分岐した他方のクロック配線50は、さらに画素領域30のY方向の一端側から3/4の距離に位置する第3分岐点58まで延在し、そこでまた2つに分岐して、それぞれY方向の単位画素群列35の他端側と第1分岐点51側とに向かって延在する。
図9の構成では、クロックバッファ22の出力からの、第2分岐点57と第3分岐点58の伝搬遅延時間は同じであることから、伝搬遅延時間のばらつきとしては、Y方向の単位画素群列35に相当する
図9の下段のクロック配線50全体の1/4の区間でのばらつきに限定される。したがって、クロックバッファ22の出力が第1分岐点51から一端側および他端側に伝搬する
図8の場合と比較してもさらに伝搬遅延時間のばらつきを小さくすることができる。
【0045】
なお、
図9ではY方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50の1/4、および3/4の点からY方向の単位画素群列35の各画素の変調ゲートを駆動しているが、さらに1/4、および3/4の点でもう一度配線を分岐し、1/8、3/8、5/8、7/8の点からY方向の単位画素群列35の各画素の転送ゲート42を駆動するように構成してもよい。
より一般的には、Y方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50をY方向においてバイナリー分岐してから単位画素群36に配線することにより、伝搬遅延時間のばらつきを小さくすることができる。N回バイナリー分岐すると、バイナリー分岐された配線は2
N本に分岐されるので、Y方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50の1/2
N、3/2
N、・・・、(2
N-1)/2
Nの点から単位画素群36の転送ゲート42を駆動するとよい。
【0046】
また、
図9では、第2分岐点57から第1分岐点51側に向かって延在したクロック配線50と第3分岐点58から第1分岐点51側に向かって延在したクロック配線50とが第1分岐点51で接続されているが、この2つのクロック配線50の端部同士は理論的には同じ伝搬遅延時間となるため、2つのクロック配線50をたがいに接続してもよいし、接続しなくてもよい。ただし、2つの配線の抵抗値あるいは寄生容量値の相対ばらつきによる伝搬遅延時間のばらつきに対しては、2つのクロック配線50をたがいに接続したほうが有利である。
【0047】
(模式的回路を用いたシミュレーションによる伝搬遅延時間ばらつき減少の確認)
Y方向の単位画素群列35と接続するクロック配線50を、端部から駆動した場合、
図8のように中央部から駆動した場合、および
図9のように1/4の点と3/4の点とから駆動した場合について、クロック配線50をC-R-Cの縦続接続として回路シミュレーションを行い、伝搬遅延時間のばらつきの差異を調べた。
Y方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50を、端部から駆動した場合のシミュレーションに用いた回路図を
図10に、
図8のように中央部(第1分岐点51)から駆動した場合のシミュレーションに用いた回路図を
図11に、および
図9のように1/4の点(第2分岐点57)と3/4の点(第3分岐点58)とから駆動した場合のシミュレーションに用いた回路図を
図12に示す。
図10から
図12ではY方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50を12分割し、12分割したクロック配線50のそれぞれの抵抗を10Ω、寄生容量を0.5pF+0.5pF、クロックバッファ22の出力抵抗を5Ω、クロックの周波数を100MHzとした。また、クロックバッファ22の立ち上がりから図のC0乃至C12の点での電圧がクロックの振幅の半分に到達するまでの時間を伝搬遅延時間とした。
【0048】
図13には、
図10から
図12の各回路における、各C端子の点での伝搬遅延時間の絶対値を、
図14には伝搬遅延時間の最も小さい点を0とした場合の、各C端子の点での伝搬遅延時間を示した。
図14の伝搬遅延時間は、Y方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50での伝搬遅延時間のばらつきに相当する。
図13によれば、各C端子の伝搬遅延時間の絶対値は
図10の端部駆動の場合が最も小さく、
図11の中央駆動の場合が中間で、
図12の4分割駆動の場合が最も大きい。これは、
図11の回路では、クロックバッファ22から第1分岐点51までの配線の遅延が加算されており、
図12の回路ではクロックバッファ22から第2分岐点57および第3分岐点58までの配線の遅延が追加されているためである。
一方、
図14によれば、Y方向の単位画素群列35を接続するクロック配線50内部での伝搬遅延時間のばらつきは、
図11の中央駆動の場合は、
図10の端部駆動の場合のばらつきの約1/3、さらに
図12の4分割駆動の場合は、中央駆動の場合の約1/3、端部駆動の場合の約1/10となっている。
【0049】
したがって、X方向とY方向とに2次元配置された画素40を備えるTOFセンサ100において、クロックバッファ22の出力であるクロック配線50をY方向の単位画素群列35の中央に相当する第1分岐点51まで配線した後2つに分岐し、一方のクロック配線50を第1分岐点51から一端側に延在する画素40の転送ゲート42に接続し、他方のクロック配線50を第1分岐点51から他端側に延在する画素40の転送ゲート42に接続することによって、各画素40の転送ゲート42に接続される高速クロック信号の伝搬遅延時間の画素40ごとのばらつきを端部駆動の場合に比べて1/3程度に小さくすることができる。
また、第1分岐点51からさらに、Y方向の単位画素群列35の1/4の点(第2分岐点57)、および3/4の点(第3分岐点58)まで配線した後、それぞれの分岐点からY方向の単位画素群列35の転送ゲート42に接続した場合は、各画素40の転送ゲート42に接続される高速クロック信号の伝搬遅延時間の画素40ごとのばらつきを端部駆動の場合の1/10程度に小さくすることができる。
なお、本発明のTOFセンサ100のクロック配線構造は、配線による露光への影響が無視できる裏面照射型センサに特に適するが、画素40の大きさ、配線層の数などによっては表面照射型センサにも適用可能である。
【0050】
本発明において、画素領域30が『画素領域』に相当し、クロックバッファ領域20が『クロックバッファ領域』に相当し、TOFセンサ100が『TOFセンサ』に相当し、画素40が『画素』に相当し、フォトダイオード41が『フォトダイオード』に相当し、転送ゲート42が『転送ゲート』に相当し、電荷蓄積および出力回路43が『電荷蓄積および出力回路』に相当し、単位画素群36が『単位画素群』に相当し、単位画素群列35が『単位画素群列』に相当し、クロックバッファ22が『クロックバッファ』に相当し、第1分岐点51が『第1分岐点』に相当し、第2分岐点57が『第2分岐点』に相当し、第3分岐点58が『第3分岐点』に相当し、上層の配線層53が『上層の配線層』に相当し、下層の配線層54が『下層の配線層』に相当する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符合の説明】
【0052】
10 半導体チップ
11 クロック入力端子
12 末端回路(ラッチ回路)
13 ルートバッファ
14 クロック配線
20 クロックバッファ領域
21 クロック入力端子
22 クロックバッファ
30 画素領域
35 単位画素群列
36 単位画素群
40 画素
41 フォトダイオード
42 転送ゲート
43 電荷蓄積および出力回路
50 クロック配線
51 第1分岐点
53 上層の配線層
54 下層の配線層
55 上層の配線層と下層の配線層とを接続するビア
56 ダミー配線
57 第2分岐点
58 第3分岐点
100 TOFセンサ