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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20230117BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20230117BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20230117BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20230117BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/057 170
C22C33/02 K
B22F3/00 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021157000
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2022082429
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】202011313137.4
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台東星磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】陳秀雷
(72)【発明者】
【氏名】彭衆傑
(72)【発明者】
【氏名】朱暁男
(72)【発明者】
【氏名】董占吉
(72)【発明者】
【氏名】丁開鴻
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103123843(CN,A)
【文献】特開2013-219321(JP,A)
【文献】特開2011-100881(JP,A)
【文献】特開2015-113525(JP,A)
【文献】特開2003-264115(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106128672(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 1/057
C22C 33/02
B22F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)希土類元素を含む原料を調合し、調合後の原料を真空ストリップキャスト炉に投入してストリップキャスト合金片を製造し、少なくとも水素化処理、ミリング、成型、磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成し、
前記ストリップキャスト合金片における希土類元素の重量百分率は33.0%~37.0%であり、
(ステップ2)前記素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行って第1次焼結体を作成し、
前記第1次焼結処理における温度は830℃~880℃、焼結時間は2~10時間、真空度は5×10-1Pa以下であり、
前記第1次焼結体の密度は7.08~7.37g/cm であり、
(ステップ3)前記第1次焼結体に対し、真空環境下において加熱と同時に圧力を加える第2次焼結処理を行って第2次焼結体を作成し、
前記第2次焼結処理の温度は720℃~850℃、加熱時間は15~60分であり、前記圧力は1MPa~5MPaであり、磁場配向方向に沿った一軸加圧であり、
(ステップ4)前記第2次焼結体に時効処理を行うものであり、
前記第1次焼結処理の温度は前記第2次焼結処理の温度より10℃以上高い、
ことを特徴とするNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性体の製造方法、特に希土類元素を含有するNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Nd-Fe-B系磁性体は優れた磁気特性を有することから、メモリ設備、電子機器、風力発電、モータ等の分野に広く応用されている。応用分野の拡大に伴い、劣悪な条件下で使用されるNd-Fe-B系磁性体は、その磁気特性に対する要求を満たすため、更なる向上が求められている。
【0003】
従来のNd-Fe-B系磁性体の残留磁気は、既にNd-Fe-B系磁性体の理論飽和磁化強度の90/100前後まで達している。しかしながら、重希土類元素を添加しない条件で、保磁力は未だに理論値の1/3にも達しておらず、大きく向上する可能性を秘めている。重希土類元素を用いることでNd-Fe-B系磁性体の保磁力を顕著に向上させることができるが、重希土類元素は高価であり、資源量も少ない。原料コストを削減し、重希土類元素の使用を減らすためには技術の進歩に依存しなければならず、製造工程における各プロセスは、重要な手段となっている。
【0004】
従来、焼結及び時効温度の最適化と磁性体のミクロ組織構造の改良により、磁性体中の粒子の形態、サイズを均一化し、一定の厚さに形成し、均等な結晶粒界相を分布させ、主相粒子間の磁気カップリング作用を抑制しているが、従来技術で製造された磁性体は往々にして磁性体の密度が不均一になり、孔隙率が高まり、結晶粒界の分布が不均一であるといった不備が存在していた。
【0005】
ミクロ構造の改良のため、焼結工程における加圧方法は、広く応用されている。例えば、中国特許公開CN103981337A公報には、焼結が完了した磁性体に3回の熱処理を行い、2回目の熱処理中に20~60MPaの圧力を加える方法で磁性体の磁気特性を向上させる技術が開示されている。
【0006】
また中国特許第103310933B公報には、焼結しながら四つの方向から加圧する方法が開示されている。これは、高温化で発生するNdリッチ相が液相を焼結する効果を利用したものであり、磁性体は高密度に収縮し、内部の孔を減少させている。
【0007】
さらに、中国特許公開109791836A公報には、焼結温度が300℃以上に達した際に加圧・焼結し、その後高温及び低温で熱処理することで、焼結による不均一な収縮を抑制するとともに、加圧焼結による磁性体の不均一な組成や磁気特性の低下を抑制する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら従来の方法では、特別な工具と金型を必要とする焼結プロセス中に圧力が絶えず加えられるため、設備コストが増加し、高温高圧条件下で高希土類成分が過度に焼結されることで磁気特性が低下する問題については考慮されていない。特に、希土類元素の総含有量が多い磁性体の場合、焼結工程で温度が低すぎると緻密化が困難になり、温度が高すぎると過度に焼結してしまう。また、希土類リッチ相はコーナー部に集中し易く、二つの主相粒子間に有効な結晶粒界相を分布形成することが難しい。これらはいずれも磁気特性向上の妨げとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】中国特許公開103981337A公報
【文献】中国特許第103310933B公報
【文献】中国特許公開109791836A公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術に存在する不備を解消するNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法を提供するものであり、Nd-Fe-B系磁性体の焼結工程において、低温焼結での低密度による緻密性の悪さや、高温焼結における粒子の局所的な異常成長、及び主相粒子間の結晶粒界相が欠落し、希土類成分を有効に活用できず、磁気特性が低いといった課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記目的を達成するため、Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)希土類元素を含む原料を調合し、調合後の原料を真空ストリップキャスト炉に投入してストリップキャスト合金片を製造し、少なくとも水素化処理、ミリング、成型、磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成し、
(ステップ2)前記素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行って第1次焼結体を作成し、
前記第1次焼結処理における温度は830℃~880℃、焼結時間は2~10時間、真空度は5×10-1Pa以下であり、
(ステップ3)前記第1次焼結体に対し、真空環境下において加熱と同時に圧力を加える第2次焼結処理を行って第2次焼結体を作成し、
前記第2次焼結処理の温度は720℃~850℃、加熱時間は15~60分であり、前記圧力は1MPa~5MPaであり、磁場配向方向に沿った一軸加圧であり、
(ステップ4)前記第2次焼結体に時効処理を行うものであり、
前記第1次焼結処理の温度は前記第2次焼結処理の温度より10℃以上高い、
ことを特徴とする。
【0012】
また一実施形態において、前記ストリップキャスト合金片における希土類元素の重量百分率は、33.0%~37.0%である、ことを特徴とする。
【0013】
また一実施形態において、前記第1次焼結体の密度は、7.08~7.37g/cmである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、まず低温焼結温度条件において、素地に第1次焼結処理を行って一定の密度に達した後に、所定の温度及び圧力による第2次焼結処理を行うものであり、当該方法によれば、焼結工程において磁性体が過度に熱せられることによる結晶粒子の局所的な異常成長を抑制できるとともに、磁性体の緻密化も可能となり、かつ主相粒子間の結晶粒界の形成を助けることができる。
【0015】
より詳細に説明すると、本願発明は第1次焼結処理を無圧低温で行うことで結晶粒子の異常成長を抑制し、第2次焼結処理において、加熱と同時に圧力を加えることで十分な焼結推進力を得るものである。この第2次焼結処理において、磁性体に伝わる推進力は表面張力及び外部圧力の和であり、この外部応力によって焼結応力が強化され、焼結速度を促進し、焼結緻密化を達成する。
【0016】
また、第1次焼結処理の後に、第1次焼結体の密度を適切な範囲内に置くことで、第2次焼結処理時に磁性体コーナー部にあるNdリッチ成分の結晶粒界に沿わせた拡散にも有利となり、最終的に結晶粒界に希土類を高く含有する非鉄磁性物質を存在させて、良好な磁気交換カップリング作用を奏させ、磁性体の保磁力を向上させることができる。
【0017】
本願発明の方法によれば、高価で希少な重希土類元素を用いる必要がなく、第2次焼結処理において小さな圧力を短時間加えるだけで、高い保磁力増強効果を奏することができ、高いコスト性能を発揮する。更に、第2次焼結処理で加える圧力は、磁性体へのホットプレス法での圧力よりも遥かに小さく、両者のメカニズムは完全に異なることから、ホットプレス法における磁性体組織構造のバラつきといった問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図。
図2】実施例2で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図。
図3】実施例3で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図。
図4】比較例1で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図。
図5】比較例2で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図。
図6】比較例3で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の原理及び特徴について詳細に説明する。下記実施例は、本発明の解釈のみに用いるものであり、本願発明に係る構成を限定するものではない。
【0020】
重量百分率にて原材料を準備する。その種類及び含有量は以下の通りである(以下説明する実施例1~3、比較例1~3のいずれも下記含有量としている)。
PrNd:33.0~37.0%
B:0.95%
Co:1.0%
Al:0.55%
Cu:0.10%
Ga:0.40%
Ti:0.10%
残り:Fe及び不可避の不純物
【0021】
<実施例1>
(ステップ1)PrNd含有量を35.0%、その他は上記のとおりの材料で配合し、真空ストリップキャスト炉でストリップキャスト合金片を製造し、水素化処理、ミリング、成型及び磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成した。
【0022】
(ステップ2)素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行った。真空度は5×10-1Pa以下、焼結温度は830℃、10時間加熱した後に室温まで下げ、第1次焼結体を作成した。
【0023】
(ステップ3)真空環境下において、第1次焼結体に対し第2次焼結処理を行った。焼結温度は820℃、加熱と同時に第1次焼結体の磁場配向方向に沿って1MPaの圧力を加え、30分間加熱及び加圧した。加熱及び加圧が完了した後、圧力を抜いて室温まで下げ、第2次焼結体を作成した。
【0024】
(ステップ4)第2次焼結体に、500℃、2時間の時効処理を行った。
【0025】
<実施例2>
(ステップ1)PrNd含有量を33.0%、その他は上記のとおりの材料で配合し、真空ストリップキャスト炉でストリップキャスト合金片を製造し、水素化処理、ミリング、成型及び磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成した。
【0026】
(ステップ2)素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行った。真空度は5×10-1Pa以下、焼結温度は880℃、2時間加熱した後に室温まで下げ、第1次焼結体を作成した。
【0027】
(ステップ3)真空環境下において、第1次焼結体に第2次焼結処理を行った。焼結温度は720℃、加熱と同時に第1次焼結体の磁場配向方向に沿って5MPaの圧力を加え、60分間加熱及び加圧した。加熱及び加圧が完了した後、圧力を抜いて室温まで下げ、第2次焼結体を作成した。
【0028】
(ステップ4)第2次焼結体に、500℃、2時間の時効処理を行った。
【0029】
<実施例3>
(ステップ1)PrNd含有量を37.0%、その他は上記のとおりの材料で配合し、真空ストリップキャスト炉でストリップキャスト合金片を製造し、水素化処理、ミリング、成型及び磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成した。
【0030】
(ステップ2)素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行った。真空度は5×10-1Pa以下、焼結温度は865℃、6時間加熱した後に室温まで下げ、第1次焼結体を作成した。
【0031】
(ステップ3)真空環境下において、第1次焼結体に第2次焼結処理を行った。焼結温度は850℃、加熱と同時に第1次焼結体の磁場配向方向に沿って3MPaの圧力を加え、15分間加熱及び加圧した。加熱及び加圧が完了した後、圧力を抜いて室温まで下げ、第2次焼結体を作成した。
【0032】
(ステップ4)第2次焼結体に、500℃、2時間の時効処理を行った。
【0033】
<比較例1>
PrNd含有量を35.0%、その他は上記のとおりの材料で配合し、真空ストリップキャスト炉でストリップキャスト合金片を製造し、水素化処理、ミリング、成型及び磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成した。素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行った。真空度は5×10-1Pa以下、焼結温度は830℃、10時間加熱した後に室温まで下げた。焼結後の磁性体に500℃、2時間の時効処理を行った。
【0034】
<比較例2>
PrNd含有量を35.0%、その他は上記のとおりの材料で配合し、真空ストリップキャスト炉でストリップキャスト合金片を製造し、水素化処理、ミリング、成型及び磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成した。素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行った。真空度は5×10-1Pa以下、焼結温度は930℃、2時間加熱した後に室温まで下げた。焼結後の磁性体に500℃、2時間の時効処理を行った。
【0035】
<比較例3>
PrNd含有量Wお35.0%、その他は上記のとおりの材料で配合し、真空ストリップキャスト炉でストリップキャスト合金片を製造し、水素化処理、ミリング、成型及び磁場配向、等静圧プレス工程を経て素地を作成した。素地を真空焼結炉へ投入し、第1次焼結処理を行った。真空度は5×10-1Pa以下、焼結温度は830℃、10時間加熱した後に室温まで下げ、第1次焼結体を作成した。真空環境下において、第1次焼結体に対して第2次焼結処理を行った。焼結温度は700℃、加熱と同時に第1次焼結体の磁場配向方向に沿って0.5MPaの圧力を加え、30分間加熱及び加圧した。加熱及び加圧が完了した後、圧力を抜いて室温まで下げ、第2次焼結体を作成した。その後、第2次焼結体に500℃、2時間の時効処理を行った。
【0036】
実施例1~3の磁気特性を検証するため、比較例1~3と合わせて各焼結処理後の焼結体の密度、及び最終的な磁性体の磁気特性を測定した。表1、表は各実施例及び各比較例の測定結果である。
【0037】
表1

【0038】
表2
【0039】
測定結果から明らかなとおり、本発明の方法によって製造された実施例1~3は、比較例1~3と対比して、第1次焼結処理後の磁性体の密度は低いものの、低温加熱による第2次焼結処理後は、磁性体の密度が顕著に高まり(いずれも7.43g/cm以上)、いずれの実施例も各比較例に対して高い保磁力Hcjを有することが分かる。なお、第1次焼結処理の温度は第2次焼結処理の温度より10℃以上高いことが望ましい。
【0040】
図1~6は、走査型電子顕微鏡を用いて、磁性体の後方散乱電子画像をキャプチャした写真である。図1は、実施例1で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図、図2は実施例2で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図、図3は実施例3で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図、図4は比較例1で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図、図5は比較例2で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図、図6は比較例3で製造した磁性体サンプルの電子線後方散乱回折による画像を示す図である。
【0041】
各図から明らかなとおり、実施例1~3は比較例1~3よりも緻密であり、且つ主相粒子間に明瞭な結晶粒界相が存在し、磁性体が高い保磁力を有する構造であることが分かる。
【0042】
比較例1の焼結処理は1回のみであり、低温加熱による第2次焼結処理は行っていないことから、磁性体の密度は低い。図4に示すとおり磁性体の緻密性が悪く、その結果、残留磁束密度及び保磁力はいずれも低かった。
【0043】
比較例2は930℃で焼結処理しているが、成分中の希土類の総量が多いため、希土類の多いNd-Fe-B系磁性体では、焼結プロセス中に局所的な過燃焼を引き起こしやすく、図5に示すように局所的に異常に成長した結晶粒子が現れている。密度は7.41g/cmに達するものの、局所的な結晶粒子の異常成長により、残留磁束密度及び保磁力のいずれも同一成分の実施例1の磁性体よりも低かった。
【0044】
比較例3は本発明と同じ2段階焼結処理を行っているが、第2次焼結処理において加える圧力及び温度が各実施例よりも低いことから、第2次焼結処理後の磁性体の密度は各実施例における磁性体の密度よりも低かった。更に、図6に示すように、比較例3で製造した磁性体のミクロ構造は、主相粒子間の結晶粒界相の分布が各実施例における磁性体ほど明確ではないことが分かる。これは比較例3の保磁力が各実施例における磁性体の保磁力よりも低いことの主たる原因である。
【0045】
以上のとおり、本願発明の方法によれば、Nd-Fe-B系焼結磁性体の緻密化レベル及びミクロ構造が大きく改善され、重希土類を用いることなく、保磁力を大きく向上させることができる。
【0046】
なお各実施例は、本願発明の例示及び解釈のためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明の精神及び原則内においてなしたあらゆる補正、同等の置換、改良等は、すべて本発明の保護範囲に属する。


図1
図2
図3
図4
図5
図6