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特許7211704GLP-1アゴニスト及び腸溶コーティングを含む錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】GLP-1アゴニスト及び腸溶コーティングを含む錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20230117BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
A61K38/22
A61K9/32
A61K47/12
A61K47/32
A61P3/04
A61P3/10
A61P43/00 111
C07K14/575 ZNA
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017540118
(86)(22)【出願日】2016-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2016051795
(87)【国際公開番号】W WO2016120378
(87)【国際公開日】2016-08-04
【審査請求日】2019-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】15153000.3
(32)【優先日】2015-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15162589.4
(32)【優先日】2015-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/057442
(32)【優先日】2015-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15188737.9
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビアギテ・ニスン
(72)【発明者】
【氏名】フレミング・サイア・ニルスン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ウィリアム・ガリバイ
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514976(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2283830(EP,A1)
【文献】国際公開第2014/191545(WO,A1)
【文献】特表2008-533105(JP,A)
【文献】特表2013-514324(JP,A)
【文献】特表2014-511870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-58
A61K 9/00-72
A61K47/00-69
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)pH6.0以上で、例えばpH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する、陰イオン性共重合体コーティングからなる第1のコーティングを含む固体医薬組成物であって、
前記陰イオン性共重合体コーティングがメタクリレート共重合体を含み、
前記メタクリレート共重合体が、a)10~30%w/wのメタクリル酸メチル、b)50~70%w/wのアクリル酸メチル、及びc)5~15%w/wのメタクリル酸を含み、
前記中鎖脂肪酸の塩が、カプリン酸の塩(例えばカプリン酸ナトリウム)であり、
前記GLP-1アゴニストが、
- N ε26 {2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル},N ε37 -{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル}-[Aib8,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)-ペプチド(化合物A)、
- N ε27 -[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N ε36 -[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Lys27,Glu30,Arg34,Lys36]-GLP-1-(7-37)-ペプチジル-Glu-Gly(化合物B)、
- N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチド(化合物C)、
- N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチド(化合物D)、及び
セマグルチド
からなる群から選択される、固体医薬組成物。
【請求項2】
前記第1のコーティングが腸溶コーティングである、請求項1に記載の固体医薬組成物。
【請求項3】
プロテアーゼ阻害剤を含まない、請求項1又は2に記載の固体医薬組成物。
【請求項4】
前記第1のコーティングが、pH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する、請求項1から3のいずれか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項5】
錠剤の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項6】
前記GLP-1アゴニストがセマグルチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項7】
i)前記核と前記第1のコーティングとの間に位置する第2のコーティング、及び/又は
ii)前記核及び前記第1のコーティングを囲み、且つ含有する、さらなる第3のコーティング
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項8】
前記第1のコーティングが、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの請求項1から7のいずれか一項に規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られる、請求項1から7のいずれか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項9】
錠剤核を調製する工程、及び前記錠剤核を完全に囲むコーティングを適用する工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の固体医薬組成物を製造するための方法であって、前記コーティングが、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの請求項1から8のいずれか一項に規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られる陰イオン性共重合体コーティングである方法。
【請求項10】
医薬として使用するための、例えば2型糖尿病又は肥満の治療又は予防に使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の固体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GLP-1アゴニスト及び腸溶コーティングを含む経口投与のための固体医薬組成物、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ある特定の高分子(例えば、タンパク質及びペプチド)の生産の欠如又は完全な停止によって生じる多くの病理学的状態は、侵襲性で不都合な、治療用高分子の非経口投与で治療される。その一例は、2型糖尿病の治療におけるGLP-1の投与である。
【0003】
経口経路は、非侵襲性の性質であるため投与に望ましく、また、原薬の投与に関連する患者の不快感を減少させ、原薬の投与に応諾する患者を増やす可能性が大きい。しかし、不十分でばらつきのある吸収をもたらす、消化管内での酵素分解及び胃腸膜に対する限られた浸透性などの、いくつかの問題が存在する。現在、GLP-1アゴニストの経口送達のための製品は販売されていない。
【0004】
GLP-1の経口投与を容易にする固体の経口投薬形態の提供が望まれている。固体の経口投薬形態の、他の投薬形態に勝る利点には、製造、保存、及び投与の容易性が含まれる。患者の応諾を増やす、投与の利便性に関する利点もまた存在し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2006/097537
【文献】WO2011/080103
【文献】WO2012/140117
【文献】PCT/EP2015/057442
【文献】WO 2009/030738
【非特許文献】
【0006】
【文献】http://eudragit.evonik.com/product/eudragit/en/products-services/eudragit-products/enteric-formulations/fs-30-d/pages/default.aspx
【文献】「Principles of Biochemistry」、AL Lehninger、DL Nelson、MM Cox、第2版Worth Publishers、1993、763頁
【文献】Needleman, S.B.及びWunsch, C.D.、(1970)、Journal of Molecular Biology、48:443~453
【文献】Myers及びW. Miller、「Optimal Alignments in Linear Space」CABIOS (computer applications in the biosciences) (1988) 4:11~17
【文献】Chemoinformatics: A textbook、Johann Gasteiger及びThomas Engel (編)、Wiley-VCH Verlag、2003
【文献】J. Chem. Inf. Model. 2008、48、542~549
【文献】J. Chem. Inf. Comput. Sci. 2004、44、170~178
【文献】J. Med. Chem. 2004、47、2743~2749
【文献】J. Chem. Inf. Model. 2010、50、742~754
【文献】SciTegic Pipeline Pilot Chemistry Collection: Basic Chemistry User Guide、2008年3月、SciTegic Pipeline Pilot Data Modeling Collection、2008
【文献】http://www.tripos.com/tripos_resources/fileroot/pdfs/Unity_111408.pdf
【文献】http://www.tripos.com/data/SYBYL/SYBYL_072505.pdf
【文献】WHO Drug Information Vol. 24、No. 1、2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、GLP-1アゴニストの経口投与は、GLP-1アゴニストの生物学的利用能が低いことから課題がある。したがって、GLP-1アゴニストの経口的生物学的利用能を改善する新規な組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の実施形態では、本発明は、GLP-1アゴニスト、カプリン酸の塩である吸収エンハンサー、及び腸溶コーティングを含む経口投与用錠剤、並びにその使用に関する。
【0009】
一部の実施形態では、本発明は、i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)pH6.0以上で、例えばpH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する第1のコーティングを含む固体医薬組成物に関する。
【0010】
一部の実施形態では、本発明は、i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)陰イオン性共重合体コーティングからなる第1のコーティングを含む固体医薬組成物であって、前記陰イオン性共重合体コーティングがメタクリレート共重合体を含み、前記メタクリレート共重合体が、a)10~30%w/wのメタクリル酸メチル、b)50~70%w/wのアクリル酸メチル、及びc)5~15%w/wのメタクリル酸を含む、固体医薬組成物に関する。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、錠剤核を調製する工程、及び前記錠剤核を完全に囲むコーティングを適用する工程を含む、先の実施形態のいずれか1つに規定の固体医薬組成物を製造するための方法であって、前記コーティングが、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの先の実施形態のいずれか1つに規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られる陰イオン性共重合体コーティングである方法に関する。
【0012】
一部の実施形態では、本発明は、医薬として使用するための、例えば2型糖尿病又は肥満の治療又は予防に使用するための、先の実施形態のいずれか1つに規定の固体医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一部の実施形態では、本発明は、GLP-1、カプリン酸ナトリウム、及び腸溶コーティングを含む、経口投与のための固体医薬組成物、例えば錠剤、並びにその使用に関する。腸溶コーティングされた固体投薬形態は胃を通過し、腸内が標的pH/部位に達すると原薬を放出する。
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書において記載されるGLP-1及びFS30Dを含む腸溶コーティング等の陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤が、GLP-1の経口的生物学的利用能を改善することを見出した。FS30Dは、製造者の情報によるとpH7以上で溶解するため、胃での錠剤核の放出が避けられる(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された、EUDRAGIT(登録商標)FS 30 D、http://eudragit.evonik.com/product/eudragit/en/products-services/eudragit-products/enteric-formulations/fs-30-d/pages/default.aspxを参照されたい)。
【0015】
驚くべきことに、FS30Dを含むコーティングを有する錠剤形態の本発明の医薬組成物は、犬において試験したところ(本明細書における実施例1を参照されたい)、GLP-1アゴニストの経口的生物学的利用能を2.7%改善した。対照的に、同一のGLP-1アゴニストを含み腸溶コーティングAcryl-EZE 93Aでコーティングされた錠剤を犬において試験したところ、GLP-1アゴニストの経口的生物学的利用能が0.4%低かった(本明細書における実施例4を参照されたい)。この製剤はまた、ヒトにおいても生物学的利用能が低いことが分かった。
【0016】
一部の実施形態では、本発明は、i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)pH6.0以上で、例えばpH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する第1のコーティングを含む固体医薬組成物に関する。
【0017】
一部の実施形態では、本発明は、i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)陰イオン性共重合体コーティングからなる第1のコーティングを含む固体医薬組成物であって、前記陰イオン性共重合体コーティングがメタクリレート共重合体を含み、前記メタクリレート共重合体が、a)10~30%w/wのメタクリル酸メチル、b)50~70%w/wのアクリル酸メチル、及びc)5~15%w/wのメタクリル酸を含む、固体医薬組成物に関する。
【0018】
吸収エンハンサー
固体医薬組成物は、吸収エンハンサーを含む。吸収エンハンサーは、中鎖脂肪酸の塩を含み得る。本明細書において使用する場合、中鎖脂肪酸という用語は、6~14個の炭素原子、例えば8~12個の炭素原子からなる飽和脂肪酸を指す。吸収エンハンサーは、カプリン酸の塩であり得る。カプリン酸はまた、デカン酸(CH3(CH2)8COOH)とも呼ばれ得る。カプリン酸の塩は、カプリン酸ナトリウム(すなわち、CH3(CH2)8COONa)であり得る。固体医薬組成物は、カプリン酸の塩を含み得る。
【0019】
一部の実施形態では、固体医薬組成物は、少なくとも40%w/w、例えば少なくとも50%w/w又は少なくとも60%w/wの吸収エンハンサーを含む。一部の実施形態では、固体医薬組成物は、少なくとも50~90%w/w、例えば55~85%w/w又は60~80%w/wの吸収エンハンサーを含む。
【0020】
コーティング
本発明の固体医薬組成物は、核(例えば、錠剤核又はカプセル)及び少なくとも1つのコーティング(本明細書において第1のコーティングとも呼ばれる)を含む。特定の実施形態では、固体医薬組成物は、2つ以上の核(例えば、錠剤又はカプセル等のより大きな単位に任意選択で含まれているミニ錠剤)及び少なくとも1つのコーティング(例えば、それぞれの核の表面上及び/又はより大きな単位の表面上に位置する)を含む。固体医薬組成物は、さらなる副コーティング(本明細書において第2のコーティングとも呼ばれる)及び/又は仕上げコーティング(本明細書において第3のコーティングとも呼ばれる)を含み得る。本明細書において使用する用語「コーティング」は、固体医薬組成物の核を囲むほぼ連続的な層を指す。コーティングは、固体医薬組成物の核を囲む連続的な層であり得る。一部の実施形態では、本発明のコーティングされた固体組成物は、10%w/w未満の水を含む。腸溶コーティング又は即時放出コーティング等のコーティングは、当技術分野において周知の方法に従って調製することができる。一部の実施形態では、適用されるコーティングの量は、コーティングが適用される既存の単位、例えば核の重量に基づいて計算される。例えば、500mgの核に5%のコーティングが適用される場合、適用されるコーティングの量は、5%×500mgで25mgのコーティング乾燥重量と計算される。
【0021】
一部の実施形態では、用語「含む(comprise)」は、コーティングの成分に関して使用される場合、少なくとも30%w/w、例えば少なくとも30%w/w、少なくとも40%w/w、若しくは少なくとも50%w/w、又は例えば少なくとも55%w/w、少なくとも60%w/w、若しくは少なくとも65%w/wの前記成分を含むコーティングを指す。
【0022】
第1のコーティング
本発明の固体医薬組成物は、第1のコーティングを含む。第1のコーティングは、固体医薬組成物の核を囲む連続的な層である。
【0023】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、pH6.0以上で、例えばpH6.5以上、pH7.0以上、又はpH7.2以上で溶解する。したがって、第1のコーティングは、pH5.5未満で、例えばpH6.0未満、pH6.5未満、又はpH7.0未満での溶解に耐性であり得る。
【0024】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、腸溶コーティングである。腸溶コーティングは、腸溶コーティングによって囲まれた固体医薬組成物の部分(例えば錠剤核)の、周辺環境への放出を制御する。具体的には、腸溶コーティングは、ある特定のpHが周辺環境に達するまで、前記部分と周辺環境との間の接触を確実になくす。腸溶コーティングによって囲まれた固体医薬組成物の部分の放出の部位は、腸溶コーティングの特異的pH範囲での溶解に耐える能力に応じてカスタマイズすることができる。一部の実施形態では、本明細書において使用する用語「腸溶コーティング」は、i)ヒトの胃液に溶解しない、又はii)pH6.0以上で、例えばpH6.5以上若しくはpH7.0以上で溶解する溶解するコーティングを指す。一部の実施形態では、第1のコーティングは、pH6.0以上で、例えばpH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する。
【0025】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、陰イオン性共重合体コーティングを含む。陰イオン性共重合体コーティングは、少なくとも60%w/w、例えばi)少なくとも70%w/w、少なくとも80%w/w、若しくは少なくとも90%w/wの、又はii)約99%w/wの陰イオン性共重合体を含み得る。第1のコーティングは、少なくとも40%w/w、例えば少なくとも50%w/w、少なくとも60%w/w、又は少なくとも70%w/wの陰イオン性共重合体コーティングを含み得る。一部の実施形態では、第1のコーティングは、陰イオン性共重合体コーティングである。
【0026】
固体医薬組成物は、少なくとも2%w/w、例えば3~10%w/wの前記第1のコーティングを含み得る。
【0027】
コーティングにおける成分の濃度(例えば%w/wで示される)は、別段の特定がない限り、最終固体形態のコーティングにおける成分の濃度を指す。一部の実施形態では、本明細書において言及されるポリマーにおける異なるモノマー間の比は、モル比で示される。第1のコーティングは、少なくとも100,000g/mol、例えば少なくとも150,000g/mol又は少なくとも250,000g/molの重量平均モル質量を有し得る。
【0028】
第1のコーティングは、メタクリレート共重合体を含み得る。第1のコーティングは、モノマーa)メタクリル酸メチル、b)アクリル酸メチル、及びc)メタクリル酸に由来する共重合体を含み得る。第1のコーティングは、モノマーa)10~40%のメタクリル酸メチル、b)50~80%のアクリル酸メチル、及びc)5~15%のメタクリル酸に由来する共重合体を含み得る。メタクリレート共重合体は、モノマーa)10~40%のメタクリル酸メチル、b)50~80%のアクリル酸メチル、及びc)5~15%のメタクリル酸に由来し得る。第1のコーティングは、モノマーa)20~35%のメタクリル酸メチル、b)60~75%のアクリル酸メチル、及びc)5~15%のメタクリル酸に由来する共重合体を含み得る。第1のコーティングは、モノマーa)30%のメタクリル酸メチル、b)70%のアクリル酸メチル、及びc)10%のメタクリル酸に由来する共重合体を含み得る。第1のコーティングは、全部で少なくとも70%w/w、例えば少なくとも75%w/w又は少なくとも80%w/wの、モノマーa)メタクリル酸メチル、b)アクリル酸メチル、及びc)メタクリル酸に由来する共重合体を含み得る。
【0029】
第1のコーティングは、モノマーであるアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸に由来する、例えば少なくとも50%のアクリル酸メチル、少なくとも20%のメタクリル酸メチル、及び少なくとも5%のメタクリル酸に由来する共重合体を含み得る。一部の実施形態では、第1のコーティングは、以下の共重合体:
【0030】
【化1】
【0031】
を含み、式中、x=7、y=3、z=1、及びnは平均約1000、例えば1080である。一部の実施形態では、第1のコーティングは、ポリ(アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体)7:3:1を含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、少なくとも40%w/wのポリ(アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体)7:3:1を含む。
【0032】
ポリ(アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体)7:3:1を含むコーティングは、Eudragit(登録商標)FS 30 D(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)を使用して調製することができる。一部の実施形態では、第1のコーティングは、FS30Dを含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、FSD30を含む。本明細書において使用する場合、用語「FS30D」は、少なくとも75%w/w、例えば少なくとも80%w/w又は例えば87%w/wのEudragit(登録商標)FS 30 D(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)及び少なくとも10%w/w、例えば13%w/wのPlasAcryl(商標)T20(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)を混合することによって調製された固体コーティング組成物を指す。一部の実施形態では、用語「FS30D」は、本明細書における方法3aによって得られる固体コーティングを指す。第1のコーティングは、少なくとも50%w/w又は少なくとも60%w/wのFS30Dを含み得る。第1のコーティングは、少なくとも70%w/w又は少なくとも80%w/wのFS30Dを含み得る。
【0033】
第1のコーティングは、FS30Dに加えて、モノマーであるメタクリル酸及びアクリル酸エチルに由来する、例えば少なくとも40%のメタクリル酸及び少なくとも40%のアクリル酸エチルに由来する共重合体(本明細書において、ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)と呼ばれる)を含む。ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)は、40~60%のメタクリル酸モノマー及び40~60%のアクリル酸エチルモノマーに由来し得る。一部の実施形態では、第1のコーティングは、FS30Dに加えて、ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含む。
【0034】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、FS30Dに加えて、以下の共重合体:
【0035】
【化2】
【0036】
を含み、式中、nは、平均約2000、例えば1900又は1860である。一部の実施形態では、第1のコーティングは、FS30Dに加えて、L30D-55を含む。L30D-55を含むコーティングは、Eudragit(登録商標)L 30 D-55(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)を使用して調製することができる。
【0037】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、i)ポリ(アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体)7:3:1及びii)ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を、約80:20(w/w)のi)とii)との間の比で含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、FS30D:L30D-55 80:20を含む。本明細書において使用される場合、用語「FS30D:L30D-55 80:20」は、i)少なくとも50%w/w、例えば少なくとも60%w/w又は例えば69%w/wのEudragit(登録商標)FS 30 D(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)、ii)少なくとも10%w/w、例えば少なくとも12%w/w又は例えば17%w/wのEudragit(登録商標)L 30 D-55(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)、iii)少なくとも3%w/w、例えば少なくとも8%w/w又は例えば13%w/wのPlasAcryl(商標)T20(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)、及びiv)0.1~8%w/w、例えば0.5~3%w/w又は1.3%w/wのクエン酸トリエチルを混合することによって調製された固体コーティング組成物であって、Eudragit(登録商標)FS 30 DとEudragit(登録商標)L 30 D-55との間の比が80:20(w/w)である固体コーティング組成物を指す。一部の実施形態では、用語「FS30D:L30D-55 80:20」は、Eudragit(登録商標)FS 30 DとEudragit(登録商標)L 30 D-55との間の比が80:20(w/w)である、本明細書における方法3bによって得られるコーティングを指す。
【0038】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、i)ポリ(アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体)7:3:1及びii)ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を、約50:50(w/w)のi)とii)との間の比で含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、FS30D:L30D-55 50:50を含む。本明細書において使用される場合、用語「FS30D:L30D-55 50:50」は、i)少なくとも35%w/w、例えば少なくとも40%w/w又は例えば43%w/wのEudragit(登録商標)FS 30 D(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)、ii)少なくとも35%w/w、例えば少なくとも40%w/w又は例えば43%w/wのEudragit(登録商標)L 30 D-55(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)、iii)少なくとも5%w/w、例えば少なくとも10%w/w又は例えば13%w/wのPlasAcryl(商標)T20(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)、及びiv)0.1~8%w/w、例えば0.5~3%w/w又は1.3%w/wのクエン酸トリエチルを混合することによって調製された固体コーティング組成物であって、Eudragit(登録商標)FS 30 DとEudragit(登録商標)L 30 D-55との間の比が50:50(w/w)である固体コーティング組成物を指す。一部の実施形態では、用語「FS30D:L30D-55 50:50」は、Eudragit(登録商標)FS 30 DとEudragit(登録商標)L 30 D-55との間の比が50:50(w/w)である、本明細書における方法3bによって得られるコーティングを指す。
【0039】
第1のコーティングは、50%w/w以下、例えば25%w/w以下又は20%w/w以下のL30D-55を含み得る。第1のコーティングは、少なくとも50%w/wのFS30D及び50%w/w以下のL30D-55を含み得る。第1のコーティングは、FS30D及びL30D-55を約50:50又は約80:20の比で含み得る。
【0040】
第1のコーティングは、S100を含み得る。本明細書において使用される場合、用語「S100」は、ポリ(メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体)1:2を含む組成物を指す。S100を含むコーティングを調製するために適した製品は、Evonik Industries社、Essen、Germanyから、2014年にEudragit(登録商標)S 100として販売された製品の形態で入手することができる。一部の実施形態では、用語「S100」は、本明細書における方法3cによって得られる固体コーティングを指す。
【0041】
第1のコーティングは、L100を含み得る。本明細書において使用される場合、用語「L100」は、ポリ(メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体)1:1を含む組成物を指す。L100を含むコーティングを調製するために適した製品は、Evonik Industries社、Essen、Germanyから、2014年にEudragit(登録商標)L 100として販売された製品の形態で入手することができる。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「Acryl-EZE 93A」は、少なくとも50%w/wのポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含む組成物を指す。Acryl-EZE 93Aを含むコーティングを調製するために適した製品は、Colorcon社、PA、USAから、2014年に製品コード93A18597として販売された製品の形態で入手することができる。本明細書において使用される場合、用語「Acryl-EZE 93O」は、ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1、例えば少なくとも50%w/wのポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含む固体コーティングを指す。Acryl-EZE 93Oコーティングを調製するために適した製品は、Colorcon社、PA、USAから、2014年に製品コード93O18509として販売された製品の形態で入手することができる。一部の実施形態では、用語「Acryl-EZE」、「Acryl-EZE 93A」、又は「Acryl-EZE 93O」は、本明細書における方法3dによって得られる固体コーティングを指す。
【0043】
本明細書において記載されるコーティング、例えば第1のコーティングの組成物には、コーティングとして固体医薬組成物の核上に適用する前に、さらなる水を添加してもよい。
【0044】
任意選択の第2のコーティング:副コーティング
固体医薬組成物は、核と第1のコーティングとの間に位置する第2のコーティングを含み得る。第2のコーティングは、固体医薬組成物の核を囲むほぼ連続的な層であり得る。第2のコーティングは、即時放出コーティングであり得る。本明細書において使用される場合、用語「即時放出コーティング」は、周りのpHと無関係に溶解する薄いコーティングを指す。
【0045】
具体的には、第2のコーティングは、Opadry Clearを含み得る。本明細書において使用される場合、用語「Opadry Clear」は、Opadry(登録商標)Clear 03K19229(2014年に、Colorcon社、PA、USAによって販売された)を使用して調製される組成物を指す。一部の実施形態では、用語「Opadry Clear」は、本明細書における方法2aによって得られる固体コーティングを指す。
【0046】
或いは、第2のコーティングは、Opadry II Yellowを含み得る。本明細書において使用される場合、用語「Opadry II Yellow」は、ポリビニルアルコールを含む組成物を指す。Opadry II Yellowを含むコーティングを調製するために適した製品は、Colorcon社、PA、USAから、2014年に製品コード85F32410として販売された製品の形態で入手することができる。一部の実施形態では、用語「Opadry II Yellow」は、第2のコーティングに関して使用される場合、本明細書における方法2bによって得られる固体コーティングを指す。
【0047】
或いは、第2のコーティングは、Pharmacoatを含み得る。Pharmacoatを含むコーティングを調製するために適した製品は、信越化学工業株式会社、東京、日本から、2014年にPharmacoat(登録商標)603として販売された製品の形態で入手することができる。一部の実施形態では、用語「Pharmacoat」は、本明細書における方法2cによって得られる固体コーティングを指す。
【0048】
或いは、第2のコーティングは、Kollicoatを含み得る。Kollicoatを含むコーティングを調製するために適した製品は、BASF、Ludwigshafen、Germanyから、2014年にKollicoat(登録商標)IRとして販売された製品の形態で入手することができる。一部の実施形態では、用語「Kollicoat」は、本明細書における方法2dによって得られる固体コーティングを指す。
【0049】
第2のコーティングは、Opadry Clear、Opadry II Yellow、Pharmacoat、又はKollicoatを含み得る。第2のコーティングは、Opadry Clear、Opadry II Yellow、Pharmacoat、又はKollicoatからなり得る。
【0050】
少なくとも0.5%w/w、例えば0.1~5%w/wの前記第2のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0051】
任意選択の第3のコーティング:仕上げコーティング
固体医薬組成物は第3のコーティングを含み得、これは、存在する場合、固体医薬組成物の外側コーティングである。一部の実施形態では、第3のコーティングは、少なくとも前記核及び前記第1のコーティングを囲む。第3のコーティングは、固体医薬組成物の少なくとも核及び第1のコーティングを囲むほぼ連続的な層であり得る。第3のコーティングは、フィルムコーティングであり得る。
【0052】
第3のコーティングは、即時放出コーティングであり得る。
【0053】
具体的には、第3のコーティングは、Opadry Whiteであり得る。本明細書において使用される場合、用語「Opadry White」は、Colorcon社、PA、USAから、2014年に製品コード03F180011として販売された製品の形態で入手されるOpadry(登録商標)Whiteを使用して調製される組成物を指す。一部の実施形態では、用語「Opadry White」は、本明細書における方法4aによって得られる固体コーティングを指す。
【0054】
或いは、第3のコーティングは、Opadry II Yellowを含み得る。本明細書において使用される場合、用語「Opadry II Yellow」は、ポリビニルアルコールを含む組成物を指す。Opadry(登録商標)II Yellowを含むコーティングを調製するために適した製品は、Colorcon社、PA、USAから、2014年に製品コード85F32410として販売された製品の形態で入手することができる。一部の実施形態では、用語「Opadry II Yellow」は、第3のコーティングに関して使用される場合、本明細書における方法4bによって得られる固体コーティングを指す。
【0055】
或いは、第3のコーティングは、メタクリル酸及びアクリル酸エチルに基づく共重合体、例えば、少なくとも40%のメタクリル酸及び少なくとも40%のアクリル酸エチルに基づく共重合体を含み得る。一部の実施形態では、第3のコーティングは、ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含む。一部の実施形態では、第3のコーティングは、化合物化7(式中、nは、平均約2000、例えば1900又は1860である)を含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含み得る。一部の実施形態では、第1のコーティングは、以下の化合物:
【0056】
【化3】
【0057】
を含み、式中、nは、平均約2000、例えば1900又は1860である。本明細書において使用される場合、用語「L30D-55」は、少なくとも60%w/w、例えば少なくとも80%w/wのポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含む組成物を指す。L30D-55を含むコーティングは、Eudragit(登録商標)L 30 D-55(2014年にEvonik社、Essen、Germanyによって販売された)を使用して調製することができる。一部の実施形態では、L30D-55を含むコーティングは、少なくとも75%w/w、例えば80%w/wのEudragit(登録商標)L 30 D-55(2014年にEvonik社、Essen、Germanyによって販売された)及び少なくとも15%w/w、例えば20%w/wのPlasAcryl(商標)HTP20(2014年に、Evonik Industries社、Essen、Germanyによって販売された)を混合することによって調製される。一部の実施形態では、用語「L30D-55」は、第3のコーティングに関して使用される場合、本明細書における方法4cによって得られる固体コーティングを指す。
【0058】
第3のコーティングは、Opadry White、Opadry II Yellow、又はL30D-55を含み得る。第3のコーティングは、Opadry White、Opadry II Yellow、又はL30D-55からなり得る。
【0059】
固体医薬組成物は、少なくとも0.1%w/w、例えば0.5~8%w/w又は1~5%w/wの前記第3のコーティングを含み得る。
【0060】
一部の実施形態では、固体医薬組成物は、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの本明細書に規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られた第1のコーティングを含む。
【0061】
固体医薬組成物は、前記第1のコーティング、前記第2のコーティング、及び前記第3のコーティングを含み得る。固体医薬組成物は、前記第1のコーティング及び前記第2のコーティングを含み得、前記第3のコーティングを含まなくてもよい。固体医薬組成物は、前記第1のコーティング及び前記第3のコーティングを含み得、前記第2のコーティングを含まなくてもよい。固体医薬組成物は、前記第1のコーティングを含み得、前記第2のコーティング及び前記第3のコーティングを含まなくてもよい。
【0062】
錠剤組成物
本発明は、経口投与のためのものであり得る固体医薬組成物に関する。一部の実施形態では、固体医薬組成物は、錠剤、カプセル、ミニ錠剤の形態である。固体医薬組成物は、錠剤の形態であり得る。
【0063】
固体医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤、例えば充填剤及び/又は潤滑剤を含み得る。充填剤はソルビトールであり得る。一部の実施形態では、固体医薬組成物は、35%w/w未満のソルビトール、例えば10~30%w/wのソルビトールを含む。潤滑剤はステアリン酸であり得る。一部の実施形態では、固体医薬組成物は、10%w/w未満、例えば0.1~5%w/wの潤滑剤を含む。
【0064】
固体医薬組成物、例えば錠剤の総重量は、100mgから1500mgの範囲であり得る。固体医薬組成物の総重量は、100~1200mg、例えば200~1000mg、400~800mg、又は600~900mgの範囲であり得る。錠剤は、少なくとも100mg、例えば100~1200mg、400~800mg、又は600~900mgの総重量を有し得る。ミニ錠剤は、2~50mg、例えば3~20mgの総重量を有し得る。一部の実施形態では、本明細書において使用する用語「総重量」は、場合、核及びコーティングを含む錠剤の重量を指す。
【0065】
固体医薬組成物は、造粒によって製造された、例えばカプリン酸ナトリウムの顆粒を含み得る。用語「造粒する」は、1つ又は複数の顆粒に言及し得る。用語「顆粒」は、より大きな粒子に集められる粒子を指し得る。
【0066】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、プロテアーゼ阻害剤を含まない。一部の実施形態では、本発明の組成物は、Bowman-Birk阻害剤を含まない。
【0067】
錠剤の製造
本発明の固体医薬組成物、例えば錠剤は、当技術分野において知られている方法に従って調製することができる。固体医薬組成物は、本明細書における実施例において記載されているように調製することができる。一部の実施形態では、固体医薬組成物の核、例えば錠剤核のための成分の少なくとも一部は、錠剤に圧縮する前に造立することができる。
【0068】
打錠材料の乾燥混合物を調製するために、様々な成分を秤量し、任意選択で解砕し、次いで組み合わせる。成分の混合は、均質な混合物が得られるまで行ってよい。
【0069】
打錠材料を固体の経口投薬形態、例えば錠剤に圧縮するために、打錠機を使用することができる。打錠機において、打錠材料はダイキャビティに充填(例えば、力による充填又は重力による充填)される。打錠材料は次いで、圧力でのパンチによって圧縮される。その後、得られた圧縮物、すなわち錠剤を打錠機から取り出す。上記の圧縮プロセスは、以下、本明細書において「圧縮プロセス」と呼ばれる。適切な打錠機には、限定はしないが、回転打錠機及びエキセントリック型打錠機が含まれる。打錠機の例には、限定はしないが、Fette 102i(Fette GmbH社)が含まれる。一部の実施形態では、錠剤は、5~25kNの範囲で圧縮力をかけることによって調製される。
【0070】
一部の実施形態では、本発明は、錠剤核を調製する工程及び前記錠剤核を完全に囲むコーティングを適用する工程を含む、本明細書に規定の固体医薬組成物を製造するための方法であって、前記コーティングが、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの本明細書に規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られる陰イオン性共重合体コーティングである方法に関する。
【0071】
機能的特徴
経口的生物学的利用能
一部の実施形態では、本発明の固体医薬組成物は、GLP-1アゴニストの経口的生物学的利用能を改善する。全体として、生物学的利用能という用語は、不変の状態で全身的循環に達する、原薬、例えばGLP-1アゴニストの投与された用量の画分を指す。定義によると、原薬が静脈内投与される場合、その生物学的利用能は100%である。しかし、原薬が他の経路を介して(例えば経口的に)投与される場合、その生物学的利用能は低下する(分解及び/又は不完全な吸収及び初回通過代謝に起因して)。生物学的利用能についての知識は、原薬の非静脈内経路投与のための投薬量を計算する場合に重要である。経口投与及び静脈内投与の両方の後に、時間に対する血漿濃度のプロットを作成する。絶対的な生物学的利用能は、(AUC-経口/用量)/(AUC-静脈内/用量)である。
【0072】
保存後のGLP-1の経口的生物学的利用能の安定性
本発明に従ってコーティングされた錠剤を錠剤バッチにおいて製造し、5℃で保存した。犬におけるGLP-1アゴニストの経口的生物学的利用能を、錠剤バッチの製造が終了した2週間後に錠剤の画分から判定した。経口的生物学的利用能の判定は、例えばi)5℃での連続的な保存の数週間後、及びii)5℃での連続的な保存の更に数週間後に、同一の錠剤バッチで繰り返す。経口的生物学的利用能は、本明細書において記載される方法8に従って判定することができる。
【0073】
GLP-1アゴニスト
本発明の固体医薬組成物は、GLP-1アゴニストを含む。GLP-1アゴニストは、GLP-1ペプチド又はその類似体若しくは誘導体であり得る。GLP-1アゴニストは、GLP-1類似体の誘導体であり得る。GLP-1アゴニストは、ヒトGLP-1、エキセンディン-4、又はその類似体若しくは誘導体であり得る。GLP-1アゴニストは、アシル化されていてよい。GLP-1アゴニストは、ヒトGLP-1又はエキセンディン-4に関するアミノ酸の10個以下の置換、欠失、及び/又は付加を含むペプチドを含み得る。特に、GLP-1アゴニストは、ヒトGLP-1又はエキセンディン-4に関するアミノ酸の8個以下、例えば6個以下、5個以下、又は4個以下の置換、欠失、及び/又は付加を含むペプチドを含み得る。GLP-1アゴニストは、ヒトGLP-1に関するアミノ酸の8個以下の置換、欠失、及び/又は付加を含むペプチドを含み得る。
【0074】
受容体アゴニストは、受容体に結合し天然リガンドに典型的な応答を引き起こす類似体と規定され得る。完全アゴニストは、天然リガンドと同程度の応答を引き起こすものと規定され得る(例えば、「Principles of Biochemistry」、AL Lehninger、DL Nelson、MM Cox、第2版Worth Publishers、1993、763頁を参照されたい)。
【0075】
したがって、例えば、「GLP-1受容体アゴニスト」(本明細書において「GLP-1アゴニスト」とも呼ばれる)は、GLP-1受容体に結合し得それを活性化し得る化合物と規定され得る。「完全」GLP-1受容体アゴニストは、ヒトGLP-1に類似の程度のGLP-1受容体応答を引き起こし得るGLP-1受容体アゴニストとして規定され得る。
【0076】
GLP-1ペプチド及び類似体
本明細書において使用する用語「GLP-1ペプチド」は、その配列が配列番号1として配列表に含まれるヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1(7-37))、又はその類似体を指す。配列番号1の配列を有するペプチドはまた、「ヒトGLP-1」としても示され得る。
【0077】
本明細書において使用する用語「GLP-1類似体」又は「GLP-1の類似体」は、GLP-1(7-37)(配列番号1)の変異体であるペプチド又は化合物を指す。
【0078】
配列表において、配列番号1の最初のアミノ酸残基(ヒスチジン)は1番を割り当てられる。しかし、当技術分野における確立された実施に従うと、このヒスチジン残基の次の残基は7番と呼ばれ、その後のアミノ酸残基は順に番号付けされ、37番のグリシンで終わる。したがって、全体として、GLP-1(7-37)配列のアミノ酸残基番号又は位置番号に対する本明細書におけるあらゆる参照は、7位のHisで始まり37位のGlyで終わる配列に対するものである。
【0079】
本発明の誘導体のGLP-1類似体は、i)変化したアミノ酸残基に対応する、ヒトGLP-1(7-37)におけるアミノ酸残基の数(すなわち、ヒトGLP-1における対応する位置)、及びii)実際の変化、を参照することによって記載され得る。
【0080】
言い換えると、GLP-1類似体は、多くのアミノ酸残基がヒトGLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して変化しているGLP-1(7-37)ペプチドである。これらの変化は、独立して、1つ又は複数のアミノ酸の置換、付加、及び/又は欠失を表し得る。
【0081】
以下は、適切な類似体の命名の非限定的な例である。
【0082】
ある特定の具体的な変化を「含む」類似体は、配列番号1と比較してさらなる変化を含み得る。一部の実施形態では、類似体は、具体的な変化を「有する」。
【0083】
上記の例から明らかなように、アミノ酸残基は、それらのフルネーム、それらの1文字コード、及び/又はそれらの3文字コードによって同定され得る。これらの3つの方法は、完全に同等である。
【0084】
「に対応する位置」又は「対応する位置」という表現は、ヒトGLP-1(7-37)(配列番号1)を参照することによって変異体GLP-1(7-37)配列における変化の部位を特徴付けるために使用することができる。変化の、同等な又は対応する位置、及び数は、例えば単純な手書き及び視認によって簡単に推定され、且つ/又は標準的なタンパク質若しくはペプチドアラインメントプログラム、例えばNeedleman-Wunschアルゴリズムに基づく「align」を使用することができる。Needleman-Wunschアルゴリズムは、Needleman, S.B.及びWunsch, C.D.、(1970)、Journal of Molecular Biology、48:443~453において記載されており、alignプログラムは、Myers及びW. Miller、「Optimal Alignments in Linear Space」CABIOS (computer applications in the biosciences) (1988) 4:11~17において記載されている。アラインメントのために、デフォルトのスコアリングマトリクスBLOSUM62及びデフォルトの同一性マトリクスを使用することができ、ギャップにおける最初の残基に対するペナルティーは-12、又は好ましくは-10と設定され得、ギャップにおけるさらなる残基に対するペナルティーは-2、又は好ましくは-0.5と設定され得る。
【0085】
選択されたGLP-1アゴニストは、以下の通りである。
【0086】
【表1】
【0087】
Imp及び/又はAib等の非天然アミノ酸が配列内に含まれるケースでは、これらは、アラインメントの目的で、例えばXで置き換えることができる。必要であれば、Xはその後、手動で修正することができる。
【0088】
本発明の誘導体のGLP-1類似体の文脈で例えば使用される用語「ペプチド」は、アミド(又はペプチド)結合によって相互連結された一連のアミノ酸を含む化合物を指す。
【0089】
本発明のペプチドは、ペプチド結合によって連結された少なくとも5つの構成アミノ酸を含む。特定の実施形態では、ペプチドは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20、更に好ましくは少なくとも25、又は最も好ましくは少なくとも28のアミノ酸を含む。
【0090】
特定の実施形態では、ペプチドは、少なくとも5つの構成アミノ酸から構成され、好ましくは少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25のアミノ酸から構成され、又は最も好ましくは少なくとも28のアミノ酸から構成される。
【0091】
さらなる特定の実施形態では、ペプチドは、29~33個のアミノ酸a)から構成される、又はb)からなる。一部の実施形態では、ペプチドは、29、30、又は31個のアミノ酸からなる。一部の実施形態では、ペプチドは、32、33、又は34個のアミノ酸からなる。
【0092】
さらなる特定の実施形態では、ペプチドは、ペプチド結合によって相互連結されたアミノ酸からなる。
【0093】
アミノ酸は、アミン基及びカルボキシル基を含有し、側鎖と呼ばれることが多い1つ又は複数のさらなる基を任意選択で含有する分子である。
【0094】
用語「アミノ酸」には、タンパク質構成(又は天然)アミノ酸(なかでも、20の標準的なアミノ酸)及び非タンパク質構成(又は非天然)アミノ酸が含まれる。タンパク質構成アミノ酸は、タンパク質に天然に組み込まれるアミノ酸である。標準的なアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるものである。非タンパク質構成アミノ酸は、タンパク質において見られず、また標準的な細胞機構によって生産されない(例えば、これらは、翻訳後修飾をされていてもよい)。非タンパク質構成アミノ酸の非限定的な例は、Aib(α-アミノイソ酪酸)、デスアミノヒスチジン(別名イミダゾプロピオン酸、略称Imp)、及びタンパク質構成アミノ酸のD-異性体である。以下では、光学異性体について言及されていないGLP-1アゴニスト(例えばGLP-1ペプチド)の全てのアミノ酸は、L-異性体を意味すると理解される(別段の特定がない限り)。
【0095】
本発明のGLP-1の誘導体及び類似体は、GLP-1活性を有する。この用語は、当技術分野において知られているように、GLP-1受容体に結合し、シグナル伝達経路を開始させてインスリン分泌作用又は他の生理学的効果をもたらす能力を指す。
【0096】
一部の実施形態では、GLP-1類似体は、式I:
式I:Xaa7-Xaa8-Glu-Gly-Thr-Xaa12-Thr-Ser-Asp-Xaa16-Ser-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Glu-Xaa22-Xaa23-Xaa24-Xaa25-Xaa26-Lys-Phe-Ile-Xaa30-Xaa31-Leu-Val-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39
を含み、式中、
Xaa7は、L-ヒスチジン、イミダゾプロピオニル、α-ヒドロキシ-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、Nα-ホルミル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン、又は4-ピリジルアラニンであり、
Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Thr、Ser、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり、
Xaa12は、Lys又はPheであり、
Xaa16は、Val又はLeuであり、
Xaa18は、Ser、Arg、Asn、Gln、又はGluであり、
Xaa19は、Tyr又はGlnであり、
Xaa20は、Leu、Lys、又はMetであり、
Xaa22は、Gly、Glu、Lys、又はAibであり、
Xaa23は、Gln、Glu、又はArgであり、
Xaa24は、Ala又はLysであり、
Xaa25は、Ala又はValであり、
Xaa26は、Val、His、Lys、又はArgであり、
Xaa30は、Ala、Glu、又はArgであり、
Xaa31は、Trp又はHisであり、
Xaa34は、Glu、Asn、Gly、Gln、又はArgであり、
Xaa35は、Gly、Aib、又は不存在であり、
Xaa36は、Arg、Gly、Lys、又は不存在であり、
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、Arg、又は不存在であり、
Xaa38は、Ser、Gly、Ala、Glu、Gln、Pro、Arg、又は不存在であり、
Xaa39は、Gly又は不存在である。
【0097】
一部の実施形態では、GLP-1類似体は、式IのGLP-1類似体である。一部の実施形態では、式IのGLP-1類似体は、GLP-1(7-37)(配列番号1)の類似体である。式IのXaa38が不存在である場合、式IのXaa39も不存在であり得る。式IのXaa37が不存在である場合、式IのXaa38及びXaa39も不存在であり得る。式IのXaa36が不存在である場合、式IのXaa37、Xaa38、及びXaa39も不存在であり得る。式IのXaa35が不存在である場合、式IのXaa36、Xaa37、Xaa38、及びXaa39も不存在であり得る。
【0098】
一部の実施形態では、GLP-1類似体は式IのGLP-1類似体であり、式中、Xaa7はHisであり、Xaa8はAla又はAibであり、Xaa12はLys又はPheであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeu又はLysであり、Xaa22はGlu、Gly、又はLysであり、Xaa23はGlu又はGlnであり、Xaa24はAla又はLysであり、Xaa25はAla又はValであり、Xaa26はLys又はArgであり、Xaa30はAla又はGluであり、Xaa31はTrp又はHisであり、Xaa34はGly、Gln、又はArgであり、Xaa35はGly又は不存在であり、Xaa36はArg、Lys、又は不存在であり、Xaa37はGly、Lys、又は不存在であり、Xaa38はGlu、Gln、又は不存在であり、Xaa39はGly又は不存在である。
【0099】
一部の実施形態では、GLP-1類似体は式IのGLP-1類似体であり、式中、Xaa7はHisであり、Xaa8はAibであり、Xaa12はPheであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuであり、Xaa22はGlu又はGlyであり、Xaa23はGlnであり、Xaa24はAlaであり、Xaa25はAlaであり、Xaa26はLys又はArgであり、Xaa30はAla又はGluであり、Xaa31はTrpであり、Xaa34はArgであり、Xaa35はGlyであり、Xaa36はArg又はLysであり、Xaa37はGly又はLysであり、Xaa38はGlu又は不存在であり、Xaa39はGly又は不存在である。
【0100】
GLP-1誘導体
GLP-1アゴニスト(例えばGLP-1ペプチド)の文脈における、本明細書において使用する用語「誘導体」は、1つ又は複数の置換基が構成ペプチドに共有結合によって付着している、化学的に修飾されたGLP-1アゴニストを意味する(本明細書において「GLP-1誘導体」とも呼ばれる)。置換基はまた、側鎖とも呼ぶことができる。したがって、GLP-1類似体の文脈における、本明細書において使用する用語「誘導体」は、1つ又は複数の置換基がペプチドに共有結合によって付着している、化学的に修飾されたGLP-1類似体を意味する。GLP-1誘導体は、アシル化によって置換基に共有結合によって付着したGLP-1アゴニスト(例えばGLP-1ペプチド)を含み得、ここで、前記置換基は、脂溶性部分及び任意選択で遠位の芳香族基(例えば、4-カルボキシフェノキシ)を含む。
【0101】
一部の実施形態では、側鎖は、アルブミンと非共有結合性の凝集体を形成し得、それによって、血流での誘導体の循環を促進し、また、GLP-1-誘導体とアルブミンとの凝集体は原薬を放出するために緩やかにしか崩壊しないという事実に起因して、誘導体の作用時間を延長する影響を有する。したがって、置換基又は側鎖は、全体として、好ましくはアルブミン結合部分と呼ばれる。
【0102】
特定の実施形態では、側鎖は、少なくとも10の炭素原子、又は少なくとも15、20、25、30、35、又は少なくとも40の炭素原子を有する。さらなる特定の実施形態では、側鎖は、少なくとも5のヘテロ原子、特にO及びN、例えば少なくとも7、9、10、12、15、17、又は少なくとも20のヘテロ原子、例えば少なくとも1、2、若しくは3のN原子、及び/又は少なくとも3、6、9、12、若しくは15のO原子を更に含み得る。
【0103】
別の特定の実施形態では、アルブミン結合部分は、アルブミンの結合、ひいては延長に特に関連する部分を含み、この部分は、したがって、延長部分と呼ばれ得る。延長部分は、ペプチドへのその付着点と比較して、アルブミン結合部分の末端(又は遠位末端、又は遊離末端)の近くに、好ましくは末端に存在し得る。
【0104】
さらなる特定の実施形態では、アルブミン結合部分は、延長部分とペプチドへの付着点との間の部分を含み、この部分は、リンカー、リンカー部分、スペーサー等と呼ばれ得る。リンカーは任意選択であり得、したがって、そのケースでは、アルブミン結合部分は延長部分に同一であり得る。
【0105】
特定の実施形態では、アルブミン結合部分及び/又は延長部分は、生理学的pH(7.4)で脂溶性であり、且つ/又は負に荷電している。
【0106】
アルブミン結合部分、延長部分、又はリンカーは、アシル化によって、すなわち、そのカルボキシル基(アルブミン結合部分、延長部分、又はリンカーの)とリシン残基のアミノ基との間に形成されたアミド結合を介して、構成ペプチド(例えばGLP-1ペプチド)のリシン残基に共有結合によって付着していてよい。さらなる又は別のコンジュゲーション化学には、アルキル化、エステル形成、又はアミド形成、又は例えばマレイミド若しくはハロアセトアミド(例えばブロモ-/フルオロ-/ヨード-)カップリングによるシステイン残基へのカップリングが含まれる。
【0107】
一部の実施形態では、好ましくは延長部分及びリンカーを含む、アルブミン結合部分の活性なエステルは、上記で説明したように、アミド結合の形成下で、リシン残基のアミノ基、好ましくはそのイプシロンアミノ基に共有結合している。
【0108】
別段の記載がない限り、リシン残基のアシル化に言及する場合、そのイプシロン-アミノ基に言及していると理解される。
【0109】
用語「脂肪酸」は、4から28の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸を指し、これは、好ましくは非分枝鎖状であり、飽和していても不飽和であってもよい。
【0110】
用語「脂肪二酸」は、上記で定義した脂肪酸であるがオメガ位置にさらなるカルボキシル基を有するものを指す。したがって、脂肪二酸はジカルボン酸である。脂肪二酸は、14~22個の炭素原子を含み得る。
【0111】
本発明の誘導体の2つのリンカーのそれぞれは、以下の第1のリンカーエレメント:
【0112】
【化4】
【0113】
を含み得、式中、kは1~5の範囲の整数であり、nは1~5の範囲の整数である。
【0114】
一部の実施形態では、k=1でn=1の場合、このリンカーエレメントは、OEG、若しくは8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸のジラジカルと呼ばれ得、且つ/又は、これは、以下の式:
*-NH-(CH2)2-O-(CH2)2-O-CH2-CO-*(化A2)
によって表され得る。
【0115】
一部の実施形態では、本発明の誘導体のリンカーのそれぞれは、独立して、第2のリンカーエレメント、好ましくはGluジラジカル、例えば化B1:
【0116】
【化5】
【0117】
を更に含み得、式中、Gluジラジカルはp回含まれ得、pは1~3の範囲の整数である。化B1はまた、これがここでは別のリンカーエレメントへの、又はリシンのイプシロン-アミノ基への連結に使用されるアミノ酸グルタミン酸のガンマカルボキシ基であるという事実に起因して、ガンマ-Glu、又は簡単にgGluと呼ばれ得る。上記で説明したように、他のリンカーエレメントは、例えば、別のGlu残基又はOEG分子であり得る。Gluのアミノ基は、次に、延長部分のカルボキシ基と、又は存在する場合には例えばOEG分子のカルボキシ基と、又は存在する場合には例えば別のGluのガンマ-カルボキシ基とアミド結合を形成する。
【0118】
上記で説明したように、GLP-1誘導体は二重にアシル化されていてよく、すなわち、2つのアルブミン結合部分が、構成ペプチド(例えばGLP-1ペプチド)に共有結合によって付着している。
【0119】
一部の実施形態では、2つのアルブミン結合部分(すなわち側鎖全体)は類似しており、好ましくはほぼ同一であり、又は最も好ましくは同一である。
【0120】
一部の実施形態では、2つの延長部分は類似しており、好ましくはほぼ同一であり、又は最も好ましくは同一である。
【0121】
一部の実施形態では、2つのリンカーは類似しており、好ましくはほぼ同一であり、又は最も好ましくは同一である。
【0122】
用語「ほぼ同一」は、1つ若しくは複数の塩、エステル、及び/若しくはアミドの形成、好ましくは1つ若しくは複数の塩、メチルエステル、及び単純なアミドの形成、より好ましくは2個以下の塩、メチルエステル、及び/若しくは単純なアミドの形成、更に好ましくは1個以下の塩、メチルエステル、及び/若しくは単純なアミドの形成、又は最も好ましくは1個以下の塩の形成に起因する、同一性からの差異を含む。
【0123】
アルブミン結合部分、延長部分、及びリンカー等の化合物の文脈において、類似性及び/又は同一性は、当技術分野において知られているあらゆる適切なコンピュータプログラム及び/又はアルゴリズムを使用して判定することができる。
【0124】
例えば、2つの延長部分、2つのリンカー、及び/又は2つの側鎖全体の類似性は、分子フィンガープリントを使用して適切に判定することができる。フィンガープリントは、化学構造を表す数学的方法である(例えば、Chemoinformatics: A textbook、Johann Gasteiger及びThomas Engel (編)、Wiley-VCH Verlag、2003を参照されたい)。
【0125】
適切なフィンガープリントの例には、限定はしないが、UNITYフィンガープリント、MDLフィンガープリント、及び/又はECFPフィンガープリント、例えばECFP_6フィンガープリント(ECFPは、extended-connectivity fingerprintを意味する)が含まれる。
【0126】
特定の実施形態では、2つの延長部分、2つのリンカー、及び/又は2つの側鎖全体は、a)ECFP_6フィンガープリント、b)UNITYフィンガープリント、及び/又はc)MDLフィンガープリントとして表される。
【0127】
Tanimoto係数は、a)、b)、又はc)のいずれが使用されても、2つのフィンガープリントの類似性を計算するために好ましくは使用される。
【0128】
a)、b)、又はc)のいずれかが使用される特定の実施形態では、2つの延長部分、2つのリンカー、及び/又は2つの側鎖全体は、それぞれ、少なくとも0.5(50%)、好ましくは少なくとも0.6(60%)、より好ましくは少なくとも0.7(70%)、又は少なくとも0.8(80%)、更に好ましくは少なくとも0.9(90%)、又は最も好ましくは少なくとも0.99(99%)の類似性、例えば1.0(100%)の類似性を有する。
【0129】
UNITYフィンガープリントは、プログラムSYBYL(Tripos社、1699 South Hanley Road、St. Louis、MO 63144-2319 USAから入手可能である)を使用して計算することができる。ECFP_6及びMDLフィンガープリントは、プログラムPipeline Pilot(Accelrys Inc.社、10188 Telesis Court、Suite 100、San Diego、CA 92121、USAから入手可能である)を使用して計算することができる。
【0130】
さらなる詳細については、例えば、J. Chem. Inf. Model. 2008、48、542~549; J. Chem. Inf. Comput. Sci. 2004、44、170~178; J. Med. Chem. 2004、47、2743~2749; J. Chem. Inf. Model. 2010、50、742~754;並びに、共にAccelrys Software Inc.社、San Diego、usのSciTegic Pipeline Pilot Chemistry Collection: Basic Chemistry User Guide、2008年3月、SciTegic Pipeline Pilot Data Modeling Collection、2008;並びに、ガイドhttp://www.tripos.com/tripos_resources/fileroot/pdfs/Unity_111408.pdf、及びhttp://www.tripos.com/data/SYBYL/SYBYL_072505.pdfを参照されたい。
【0131】
類似性の計算の例が以下に挿入され、これにおいて、既知のGLP-1誘導体の既知の側鎖全体がそのメチルエステルと比較された。
【0132】
【化6】
【0133】
a)ECFP_6フィンガープリントを使用すると、類似性は0.798であり、b)UNITYフィンガープリントを使用すると、類似性は0.957であり、MDLフィンガープリントを使用すると、類似性は0.905である。
【0134】
2つの同一の側鎖(アルブミン結合部分)のケースでは、誘導体は対称であると示され得る。
【0135】
特定の実施形態では、類似性係数は、少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、更に好ましくは少なくとも0.95、又は最も好ましくは少なくとも0.99である。
【0136】
一部の実施形態では、GLP-1誘導体はGLP-1類似体を含み、ここで、GLP-1類似体は、i)GLP-1(7-37)(配列番号1)の26位に対応する位置にある第1のK残基、及びGLP-1(7-37)の37位に対応する位置にある第2のK残基、並びにii)GLP-1(7-37)(配列番号1)の27位に対応する位置にある第1のK残基、及びGLP-1(7-37)のT位に対応する位置にある第2のK残基からなる群から選択される、第1のK残基及び第2のK残基を含み、ここで、Tは、18及び27を除く7~37の範囲の整数であり、第1のK残基はKFと示され、第2のK残基はKTと示され、
GLP-1類似体は、GLP-1(7-37)と比較して最大10個のアミノ酸変化を含み、
GLP-1誘導体は、第1及び第2のリンカーをそれぞれ介してKF及びKTにそれぞれ付着している第1の及び第2の延長部分を含み、ここで、
第1及び第2の延長部分は、化C1及び化C2:
化C1:HOOC-(CH2)x-CO-*
化C2:HOOC-C6H4-O-(CH2)y-CO-*
から選択され、式中、xは6~16の範囲の整数であり、yは3~17の範囲の整数であり、第1及び第2のリンカーは化D5:
【0137】
【化7】
【0138】
又はその薬学的に許容される塩、アミド、又はエステルを含み、式中、kは1~5の範囲の整数であり、nは1~5の範囲の整数である。一部の実施形態では、GLP-1誘導体はGLP-1類似体を含み、ここで、GLP-1類似体は、i)GLP-1(7-37)(配列番号1)の26位に対応する位置にある第1のK残基、及びGLP-1(7-37)の37位に対応する位置にある第2のK残基、並びにii)GLP-1(7-37)(配列番号1)の27位に対応する位置にある第1のK残基、及びGLP-1(7-37)のT位に対応する位置にある第2のK残基からなる群から選択される、第1のK残基及び第2のK残基を含み、ここで、Tは、18及び27を除く7~37の範囲の整数であり、第1のK残基はKFと示され、第2のK残基はKTと示され、
GLP-1類似体は、GLP-1(7-37)と比較して最大10個のアミノ酸変化を含み、
GLP-1誘導体は、第1及び第2のリンカーをそれぞれ介してKF及びKTにそれぞれ付着している第1の及び第2の延長部分を含み、ここで、
第1及び第2の延長部分は、化C1及び化C2:
化C1:HOOC-(CH2)x-CO-*
化C2:HOOC-C6H4-O-(CH2)y-CO-*
から選択され、式中、xは6~16の範囲の整数であり、yは3~17の範囲の整数であり、第1及び第2のリンカーは化D5:
【0139】
【化8】
【0140】
又はその薬学的に許容される塩、アミド、又はエステルを含み、式中、kは1~5の範囲の整数であり、nは1~5の範囲の整数である。
【0141】
一部の実施形態では、(KF,KT)は、GLP-1(7-37)(配列番号1)の(26,37)位に対応する位置である。一部の実施形態では、(KF,KT)は、GLP-1(7-37)(配列番号1)の(27,36)位に対応する位置である。
【0142】
一部の実施形態では、GLP-1誘導体は、延長部分である化C2を含む。一部の実施形態では、化C2は、化C2a:
【0143】
【化9】
【0144】
によって表される。一部の実施形態では、化C2又は化C2aのyは奇数である。一部の実施形態では、化2又は化2aのyは、9~11の範囲の整数、例えば9、10、又は11である。一部の実施形態では、化C2は、化C2b又は化C2c:
【0145】
【化10】
【0146】
【化11】
【0147】
によって表される。一部の実施形態では、化D5は第1のリンカーエレメントである。一部の実施形態では、化5は第1のリンカーエレメントである。一部の実施形態では、化D5のkは1である。一部の実施形態では、化D5のnは1である。一部の実施形態では、化D5はm回含まれ、mは1~10の範囲の整数である。一部の実施形態では、mは2である。mが1ではない場合、化D5のエレメントは、アミド結合を介して相互連結され得る。
【0148】
一部の実施形態では、GLP-1誘導体は、第2のリンカーエレメントを更に含む。一部の実施形態では、第2のリンカーエレメントはGluジラジカルである。一部の実施形態では、第2のリンカーエレメントは、化E6及び/又は化E7から選択される。
【0149】
【化12】
【0150】
【化13】
【0151】
一部の実施形態では、第2のリンカーエレメントは化E6である。一部の実施形態では、Gluジラジカルはp回含まれ、pは1~2の範囲の整数、例えば1又は2である。一部の実施形態では、第2のリンカーエレメントは、L-GluのラジカルであるGluジラジカルを含む。一部の実施形態では、第2のリンカーエレメントは、1つ又は複数のGluジラジカルを含み、1つ又は複数の化D5エレメントは、アミド結合を介して相互連結している。一部の実施形態では、リンカーは、m回の化D5及びp回のGluジラジカルからなる。一部の実施形態では、(m,p)は(2,2)又は(2,1)である。一部の実施形態では、(m,p)は(2,1)である。一部の実施形態では、mの化D5エレメント及びpのGluジラジカルが、アミド結合を介して相互連結している。
【0152】
一部の実施形態では、リンカー及び延長部分は、アミド結合を介して相互連結している。一部の実施形態では、リンカー及びGLP-1類似体は、アミド結合を介して相互連結している。一部の実施形態では、リンカーは、第1又は第2のK残基のイプシロン-アミノ基に付着している。
【0153】
GLP-1アゴニストはセマグルチドであり得る。セマグルチドは、WO2006/097537の例えば実施例4において開示されているように調製することができる。セマグルチドは、N6.26-{18-[N-(17-カルボキシヘプタデカノイル)-L-γ-グルタミル]-10-オキソ-3,6,12,15-テトラオキサ-9,18-ジアザオクタデカノイル}-[8-(2-アミノ-2-プロピオン酸),34-L-アルギニン]ヒトグルカゴン様ペプチド1(7-37)(WHO Drug Information Vol. 24、No. 1、2010)と呼ばれ得る。
【0154】
GLP-1アゴニストは、Nε26{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル},Nε37-{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル}-[Aib8,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)-ペプチドであり以下の構造:
【0155】
【化14】
【0156】
を有する、化合物Aであり得る。化合物Aは、WO2011/080103の例えば実施例2において開示されているように調製することができる。
【0157】
GLP-1アゴニストは、Nε27-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],Nε36-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Lys27,Glu30,Arg34,Lys36]-GLP-1-(7-37)-ペプチジル-Glu-Glyであり以下の構造:
【0158】
【化15】
【0159】
を有する、化合物Bであり得る。化合物Bは、WO2012/140117の例えば実施例31において開示されているように調製することができる。化合物Bはまた、以下のようにも示すことができる。
【0160】
【化16】
【0161】
一部の実施形態では、GLP-1アゴニストは、36位及び37位のそれぞれにあるリシンのイプシロン-アミノ基上の側鎖がアシル化されたGLP-1誘導体(例えば、GLP-1類似体の誘導体)、又はその薬学的に許容される塩、アミド、若しくはエステルであり
ここで、各側鎖は、36位及び37位にあるリシンのイプシロン-アミノ基に付着している、式:
化1:HOOC-C6H4-O-(CH2)y-CO-*
の延長基を個別に含み、
式中、yは、8~11の範囲の整数であり、延長基は、
i)式:
化3:*-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-*
のgGlu、及び
ii)式:
化5:*-NH-(CH2)2-[O-(CH2)2]k-O-[CH2]n-CO-*
(式中、kは1~5の範囲の整数であり、nは1~5の範囲の整数である)の部分
を含むリンカーを介してイプシロン-アミノ基に付着している。
【0162】
一部の実施形態では、本発明のGLP-1誘導体において、リンカー、延長基、及びペプチドは、*でアミド結合を介して連結している。一部の実施形態では、リンカーのgGluは、*でアミド結合を介して延長基に連結している。一部の実施形態では、リンカーのgGluは、*でアミド結合を介して化5の部分に連結している。一部の実施形態では、リンカーの化5の部分は、*でアミド結合を介してペプチドに連結している。一部の実施形態では、化5によって規定される式の部分は「OEG」であり、すなわち、n=k=1である。一部の実施形態では、リンカーは、*で延長基に連結し、**でペプチドに連結している、「*-gGlu-OEG-OEG-**」である。一部の実施形態では、延長基はy=10を有し、パラ立体構造である。一部の実施形態では、延長基はy=9を有し、パラ立体構造である。一部の実施形態では、延長基はy=9又はy=10を有し、メタ立体構造である。
【0163】
一部の実施形態では、GLP-1誘導体は、式II(配列番号7):
式II:Xaa7-Xaa8-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa16-Ser-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Glu-Xaa22-Xaa23-Ala-Xaa25-Xaa26-Xaa27-Phe-Ile-Xaa30-Xaa31-Leu-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Lys36-Lys37
を含み、式中、
Xaa7は、L-ヒスチジン、(S)-2-ヒドロキシ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)-プロピオン酸、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン(desH)、Nα-アセチル-ヒスチジン、又はNα-ホルミル-ヒスチジンであり、
Xaa8は、Ala、Ser、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロブチル)カルボン酸であり、
Xaa16は、Val又はLeuであり、
Xaa18は、Ser又はArgであり、
Xaa19は、Tyr又はGlnであり、
Xaa20は、Leu又はMetであり、
Xaa22は、Gly又はGluであり、
Xaa23は、Gln、Glu、又はArgであり、
Xaa25は、Ala又はValであり、
Xaa26は、Arg又はLysであり、
Xaa27は、Glu又はLeuであり、
Xaa30は、Ala又はGluであり、
Xaa31は、Trp又はHisであり、
Xaa33は、Val又はArgであり、
Xaa34は、Arg、Lys、His、Asn、又はGlnであり、
Xaa35は、Gly又はAibである。
【0164】
一部の実施形態では、GLP-1誘導体は、式II(配列番号7)のGLP-1誘導体であり、式中、Xaa7はHisであり、Xaa8はAibであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuであり、Xaa22はGly又はGluであり、Xaa23はGlnであり、Xaa25はAlaであり、Xaa26はArgであり、Xaa27はGluであり、Xaa30はAla又はGluであり、Xaa31はTrpであり、Xaa33はValであり、Xaa34はArg又はGlnであり、Xaa35はGlyである。
【0165】
一部の実施形態では、GLP-1誘導体は、式II(配列番号7)のGLP-1誘導体であり、式中、Xaa7はHisであり、Xaa8はAibであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuであり、Xaa22はGluであり、Xaa23はGlnであり、Xaa25はAlaであり、Xaa26はArgであり、Xaa27はGluであり、Xaa30はAlaであり、Xaa31はTrpであり、Xaa33はValであり、Xaa34はArgであり、Xaa35はGlyである。
【0166】
GLP-1アゴニストは、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチドであり以下の構造:
【0167】
【化17】
【0168】
を有する、化合物Cであり得る。化合物Cは、PCT/EP2015/057442の実施例1において開示されているように調製することができる。
【0169】
GLP-1アゴニストは、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチドであり以下の構造:
【0170】
【化18】
【0171】
を有する、化合物Dであり得る。化合物Dは、PCT/EP2015/057442の実施例2において開示されているように調製することができる。一部の実施形態では、化合物C及び化合物Dは、当業者に知られている他の方法に従って調製することができる。
【0172】
GLP-1アゴニストは、
N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(3-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(3-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチドである化合物Eであり得る。
【0173】
【化19】
【0174】
化合物Eは、例えば、WO2012/140117又はPCT/EP2015/057442の実施例35において開示されているように調製することができる。
【0175】
一実施形態では、GLP-1アゴニストは、セマグルチド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、及び化合物Eからなる群から選択される。一実施形態では、GLP-1アゴニストは、セマグルチド、化合物A、化合物B、及び化合物Eからなる群から選択される。
【0176】
GLP-1誘導体は、同一の分子式及び結合した原子の配列を有するが空間内でのそれらの原子の三次元方向のみが異なる、異なる立体異性形態で存在し得る。本発明の例示される誘導体の立体異性は、標準的な命名を使用して、名称及び構造で、実験の節において示される。別段の記載がない限り、本発明は、特許請求の範囲に記載の誘導体の全ての立体異性形態に関する。
【0177】
GLP-1誘導体の血漿濃度は、あらゆる適切な方法を使用して判定することができる。例えば、LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分光法)又は免疫アッセイ、例えば、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、及びLOCI(発光酸素チャネリングイムノアッセイ)を使用することができる。適切なRIA及びELISAアッセイのための一般的なプロトコールは、例えばWO 2009/030738、116~118頁で見ることができる。
【0178】
GLP-1アゴニストは、塩、エステル、又はアミドの形態であり得る。
【0179】
本発明において使用するためのGLP-1アゴニストの例の非限定的な列挙は、WO 2006/097537、WO 2011/080103、WO 2012/140117、及び/又はPCT/EP2015/057442において見ることができる。本発明のGLP-1ペプチドの調製方法は、例えば、WO2006/097537、WO2011/080103、WO2012/140117、又はPCT/EP2015/057442において見ることができる。このようなGLP-1ペプチドの調製方法、及びこのようなGLP-1ペプチドを特徴付けするためのアッセイ、例えば物理的及び化学的安定性並びに有効性及びT1/2は、WO2006/097537、WO2011/080103、WO2012/140117、及びPCT/EP2015/057442において提供されている。化合物Eは、例えば、WO2012/140117又はPCT/EP2015/057442の実施例2において開示されているように調製することができる。
【0180】
適応症
本発明はまた、医薬として使用するための本発明の固体医薬組成物に関する。
【0181】
特定の実施形態では、本発明の固体医薬組成物は、以下の医療に使用することができる。
(i)全ての形態の糖尿病、例えば高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、インスリン非依存型糖尿病、MODY(若年発症成人型糖尿病)、妊娠糖尿病、及び/又はHbA1Cの低減の予防及び/又は治療、
(ii)糖尿病性疾患の進行、例えば2型糖尿病の進行の遅延若しくは予防、耐糖能異常(IGT)からインスリン依存性2型糖尿病への進行の遅延、インスリン抵抗性の遅延若しくは予防、及び/又はインスリン非依存性2型糖尿病からインスリン依存性2型糖尿病への進行の遅延、
(iii)β細胞機能の改善、例えば、β細胞アポトーシスの減少、β細胞機能及び/若しくはβ細胞質量の増大、並びに/又はβ細胞に対するグルコース感受性の回復、
(iv)認知障害及び/又は神経変性障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び/又は多発性硬化症の予防及び/又は治療、
(v)例えば食物摂取量の減少、体重の低減、食欲の抑制、満腹感の誘発による、肥満等の摂食障害の予防及び/若しくは治療;抗精神病薬若しくはステロイドの投与によって誘発される過食性障害、神経性過食症、及び/若しくは肥満の治療若しくは予防;胃運動機能の低減;胃内容排出の遅延;身体運動機能の増大、並びに/又は肥満の併存症、例えば変形性関節症及び/若しくは尿失禁の予防及び/若しくは治療、
(vi)血管障害等の糖尿病合併症、末梢神経障害を含む神経障害、腎症、及び/又は網膜症の予防及び/又は治療、
(vii)脂質パラメータの向上、例えば脂質異常症の予防及び/又は治療、総血清脂質の低下、HDLの増大、スモールデンスLDLの低下、VLDLの低下、トリグリセリドの低下、コレステロールの低下、ヒトにおけるリポタンパク質a(Lp(a))の血漿レベルの低下、in vitro及び/又はin vivoでのアポリポタンパク質a(apo(a))の生成の阻害、
(viii)心血管疾患、例えばX症候群、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、冠動脈性心疾患、再かん流障害、脳卒中、脳虚血、早期の心疾患又は早期の心血管疾患、左心室肥大、冠動脈疾患、高血圧、本態性高血圧、急性高血圧緊急症、心筋症、心不全、運動不耐性、急性及び/若しくは慢性心不全、不整脈、心律動異常、卒倒、狭心症、心臓バイパス及び/若しくはステントの再閉塞、間欠性跛行症(閉塞性動脈硬化症)、拡張機能障害、並びに/又は収縮機能障害の予防及び/又は治療、並びに/或いは血圧の低減、例えば収縮期血圧の低減、
(ix)胃腸疾患、例えば炎症性腸疾患、短腸症候群、又はクローン病若しくは大腸炎;消化不良及び/又は胃潰瘍;並びに/或いは炎症、例えば乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、及び/又は全身性エリテマトーデスの予防及び/又は治療、
(x)重症の予防及び/又は治療、例えば、重症患者、重症疾患多発ニューロパチー(CIPNP)患者、及び/又は潜在的CIPNP患者の治療;重症又はCIPNPの発症の予防;患者における全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防、治療、及び/又は治癒;入院中に患者が菌血症、敗血症、及び/又は敗血症性ショックに罹患する可能性の予防又は低減;並びに/或いは、血中グルコース、インスリンバランス、及び任意選択で急性疾患で集中治療室にいる患者における代謝の安定化、
(xi)多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の予防及び/又は治療、
(xii)脳疾患、例えば脳虚血、脳出血、及び/又は外傷性脳損傷の予防及び/又は治療、
(xiii)睡眠時無呼吸の予防及び/又は治療、並びに/或いは
(xiv)乱用、例えばアルコールの乱用及び/又は薬物の乱用の予防及び/又は治療。
【0182】
一部の実施形態では、適応症は、(i)~(xiv)、例えば適応症(i)~(viii)、(x)~(xiii)、及び/又は(xiv)からなる群から選択され、何らかの形で糖尿病に関連する。
【0183】
一部の実施形態では、適応症は、(i)~(iii)及び(v)~(viii)、例えば適応症(i)、(ii)、及び/若しくは(iii)、又は適応症(v)、適応症(vi)、適応症(vii)、並びに/又は適応症(viii)からなる群から選択される。
【0184】
一部の実施形態では、適応症は(i)である。一部の実施形態では、適応症は(v)である。一部の実施形態では、適応症は(viii)である。
【0185】
以下の適応症が特に好ましい:2型糖尿病及び/又は肥満。一部の実施形態では、本発明の固体医薬組成物は、2型糖尿病又は肥満の治療又は予防に使用するためのものである。
【0186】
一部の実施形態では、本発明は、先の実施形態のいずれか1つに規定の固体医薬組成物を投与することを含む、2型糖尿病又は肥満を治療又は予防するための方法についてのものである。
【0187】
本発明の実施形態
以下は、本発明の非限定的な実施形態である。
【0188】
組成物
1.i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)pH6.0以上で、例えばpH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する第1のコーティングを含む固体医薬組成物。
【0189】
2.i)中鎖脂肪酸の塩及びGLP-1アゴニストを含む核、並びにii)陰イオン性共重合体コーティングからなる第1のコーティングを含む固体医薬組成物であって、前記陰イオン性共重合体コーティングがメタクリレート共重合体を含み、前記メタクリレート共重合体が、a)10~30%w/wのメタクリル酸メチル、b)50~70%w/wのアクリル酸メチル、及びc)5~15%w/wのメタクリル酸を含む、固体医薬組成物。
【0190】
第1のコーティング
3.前記第1のコーティングが腸溶コーティングである、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0191】
4.前記第1のコーティングが少なくとも40%w/w、例えば少なくとも50%w/w、少なくとも60%w/w、又は少なくとも70%w/wの陰イオン性共重合体コーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物.
【0192】
5.前記第1のコーティングが陰イオン性共重合体コーティングである、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0193】
6.前記第1のコーティングがメタクリレート共重合体を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0194】
7.前記第1のコーティングが、pH6.0以上で、例えばpH6.5以上又はpH7.0以上で溶解する、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0195】
8.前記固体医薬組成物が少なくとも2%w/w、例えば3~10%w/wの前記第1のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0196】
FS30D
9.前記第1のコーティングが、モノマーa)メタクリル酸メチル、b)アクリル酸メチル、及びc)メタクリル酸に由来する共重合体を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0197】
10.前記第1のコーティングが、モノマーa)10~40%のメタクリル酸メチル、b)50~80%のアクリル酸メチル、及びc)5~15%のメタクリル酸に由来する共重合体を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0198】
11.前記メタクリレート共重合体が、モノマーa)10~40%のメタクリル酸メチル、b)50~80%のアクリル酸メチル、及びc)5~15%のメタクリル酸に由来する、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0199】
12.前記第1のコーティングが、モノマーa)20~35%のメタクリル酸メチル、b)60~75%のアクリル酸メチル、及びc)5~15%のメタクリル酸に由来する共重合体を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0200】
13.前記第1のコーティングが、モノマーa)30%のメタクリル酸メチル、b)70%のアクリル酸メチル、及びc)10%のメタクリル酸に由来する共重合体を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0201】
14.前記第1のコーティングが、全部で少なくとも70%w/w、例えば少なくとも75%w/w又は少なくとも80%w/wの、モノマーa)メタクリル酸メチル、b)アクリル酸メチル、及びc)メタクリル酸に由来する共重合体を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0202】
15.前記第1のコーティングが、FS30D、例えば少なくとも50%w/w、少なくとも60%w/w、少なくとも70%w/w、又は少なくとも80%w/wのFS30Dを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0203】
L30D-55
16.前記第1のコーティングがポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)1:1を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0204】
17.前記ポリ(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)が、40~60%のメタクリル酸モノマー及び40~60%のアクリル酸エチルモノマーに由来する、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0205】
18.前記第1のコーティングが、L30D-55、例えば50%w/w以下、25%w/w以下、又は20%w/w以下のL30D-55を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0206】
19.前記第1のコーティングが少なくとも50%w/wのFS30D及び50%w/w以下のL30D-55を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0207】
20.前記第1のコーティングが、FS30D及びL30D-55を約50:50又は約80:20の比で含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0208】
副コーティング
21.前記核と前記第1のコーティングとの間に位置する第2のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0209】
22.前記第2のコーティングが即時放出コーティングである、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0210】
23.前記第2のコーティングがOpadry Clear、Opadry II Yellow、Pharmacoat、又はKollicoatを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0211】
24.少なくとも0.5%w/w、例えば0.1~5%w/wの前記第2のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0212】
仕上げコーティング
25.前記核及び前記第1のコーティングを囲み、且つ含有する、さらなる第3のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0213】
26.前記第3のコーティングが即時放出コーティングである、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0214】
27.前記第3のコーティングがOpadry White、Opadry II Yellow、又はL30D-55を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0215】
28.少なくとも0.1%w/w、例えば0.5~8%w/w又は1~5%w/wの前記第3のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0216】
29.前記第1のコーティング、前記第2のコーティング、及び前記第3のコーティングを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0217】
30.前記第1のコーティング及び前記第2のコーティングを含み、前記第3のコーティングを含まない、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0218】
31.前記第1のコーティング及び前記第3のコーティングを含み、前記第2のコーティングを含まない、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0219】
32.前記第1のコーティングを含み、前記第2のコーティング及び前記第3のコーティングを含まない、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0220】
組成物の形態
33.錠剤の形態である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0221】
34.カプセル又はミニ錠剤の形態である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0222】
35. 100~1200mg、例えば200~1000mg、400~800mg、又は600~900mgの範囲の総重量を有する、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0223】
中鎖脂肪酸の塩
36.前記中鎖脂肪酸の塩が、6~14個の炭素原子からなる飽和脂肪酸の塩である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0224】
37.前記中鎖脂肪酸の塩がカプリン酸の塩である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0225】
38.前記カプリン酸の塩がカプリン酸ナトリウムである、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0226】
GLP-1アゴニスト
39.前記GLP-1アゴニストが、ヒトGLP-1、エキセンディン-4、又はその類似体若しくは誘導体である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0227】
40.前記GLP-1アゴニストが、ヒトGLP-1又はエキセンディン-4に関するアミノ酸の10個以下の置換、欠失、及び/又は付加を含むペプチドを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0228】
41.前記GLP-1アゴニストが、ヒトGLP-1又はエキセンディン-4に関するアミノ酸の8個以下、例えば6個以下、5個以下、又は4個以下の置換、欠失、及び/又は付加を含むペプチドを含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0229】
42.前記GLP-1アゴニストがアシル化されている、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0230】
43.前記GLP-1アゴニストが、本明細書に規定の式IのGLP-1類似体である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0231】
44.前記GLP-1アゴニストがセマグルチドである、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0232】
45.前記GLP-1アゴニストが、Nε26{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル},Nε37-{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル}-[Aib8,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)-ペプチド(化合物A):
【0233】
【化20】
【0234】
である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0235】
46.前記GLP-1アゴニストが、Nε27-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],Nε36-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Lys27,Glu30,Arg34,Lys36]-GLP-1-(7-37)-ペプチジル-Glu-Gly(化合物B):
【0236】
【化21】
【0237】
である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0238】
47.前記GLP-1アゴニストが、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチド(化合物C):
【0239】
【化22】
【0240】
である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0241】
48.前記GLP-1アゴニストが、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチド(化合物D):
【0242】
【化23】
【0243】
である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0244】
49.前記GLP-1アゴニストが、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(3-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル],N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(3-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7-37)-ペプチド(化合物E):
【0245】
【化24】
【0246】
である、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0247】
50.前記GLP-1受容体アゴニストが、セマグルチド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、及び化合物Eからなる群から選択される、先の実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0248】
51.前記GLP-1受容体アゴニストが、セマグルチド、化合物A、化合物B、及び化合物Eからなる群から選択される、先の実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0249】
賦形剤
52. 1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0250】
53.ソルビトール等の充填剤を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0251】
54.ステアリン酸等の潤滑剤を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0252】
プロダクトバイプロセス:腸溶コーティング
55.前記第1のコーティングが、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの先の実施形態のいずれか1つに規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られる、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0253】
方法
56.錠剤核を調製する工程、及び前記錠剤核を完全に囲むコーティングを適用する工程を含む、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物を製造するための方法であって、前記コーティングが、25~35%w/wの間、例えば30%w/wの先の実施形態のいずれか1つに規定のメタクリレート共重合体を含む分散体から得られる陰イオン性共重合体コーティングである方法。
【0254】
治療方法
57.医薬として使用するための、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0255】
58.2型糖尿病又は肥満の治療又は予防に使用するための、先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物。
【0256】
59.先の実施形態のいずれか1つに記載の固体医薬組成物を投与することを含む、2型糖尿病又は肥満を治療又は予防するための方法。
【実施例
【0257】
材料
Eudragit(登録商標)FS 30 D、Eudragit(登録商標)L 30 D-55、Eudragit(登録商標)S 100、Plasacryl(商標)T20、及びPlasacryl(商標)HTP20を、Evonik Industries社、Essen、ドイツより2014年に販売されたまま使用した。Opadry(登録商標)Clear 03K19229、Opadry(登録商標)II Yellow 85F32410、Acryl-EZE(登録商標)93O18509、Acryl-EZE(登録商標)93A18597、及びOpadry(登録商標)White 03F180011を、Colorcon社、PA、米国より2014年に販売されたまま使用した。Pharmacoat(登録商標)603を、Shin-Etsu Ltd.社、東京、日本より2014年に販売されたまま使用した。Kollicoat(登録商標)IRを、BASF、Ludwigshafen、ドイツより2014年に販売されたまま使用した。GLP-1アゴニストは、当技術分野において公知の方法に基づき調製可能である。例えば、セマグルチドは、国際公開第2006/097537号の実施例4の記載に従い調製可能である。化合物Aは、国際公開第2011/080103の実施例2の記載に従い調製可能である。化合物Bは、国際公開第2012/140117号の実施例31の記載に従い調製可能である。
【0258】
方法1:錠剤核
本発明による錠剤核材料の製剤化を本明細書に概説するように実施したが、この実施例は、
a)GLP-1アゴニスト 1.41%w/w、
b)カプリン酸ナトリウム 77.46%w/w、
c)ソルビトール 20.63%w/w、及び
d)ステアリン酸 0.50%w/w
を含む本発明の製剤に関する。
【0259】
GLP-1、カプリン酸ナトリウム、ソルビトール、及びステアリン酸を含む錠剤核材料、100gを、上記成分表に基づき、及び対応する比で製造したが、その際、下記のステップを使用した:
正確な量のGLP-1を秤量した。ソルビトール粉末を、0.5mmのメッシュサイズを使用して篩分けし、その後に正確な量のソルビトールを秤量するステップが続いた。
【0260】
GLP-1及びソルビトールを小型の容器内で混合した。GLP-1の量に等しい量のソルビトールを容器に添加し、手作業により混合した。次に、前回の添加と比較して二倍量のソルビトールを添加し、GLP-1とすべてのソルビトールとが十分に混合するまで、手作業により混合した。混合ステップを完了してGLP-1とソルビトールからなる均質なブレンドを取得するために、このステップには、ターブラミキサー中での機械式混合ステップが続いた。
【0261】
次に、カプリン酸ナトリウム(顆粒状)を、GLP-1とソルビトールからなるブレンドに、等しい容積で添加した。カプリン酸ナトリウムの顆粒は、顆粒化により調製可能である。これを2ステップで実施し、ターブラミキサー内での機械式混合ステップにより完了させて、GLP-1、ソルビトール、及びカプリン酸ナトリウムからなるブレンドを得た。
【0262】
最終的に、ステアリン酸を0.3mmのメッシュサイズを使用して篩分け、その後正確な量のステアリン酸を秤量し、これをGLP-1、ソルビトール、及びカプリン酸ナトリウムからなるブレンドに添加し、機械混合して最終的な顆粒を得た。
【0263】
次に、最終的な顆粒を、標準的な錠剤化プロセスにより、本明細書に別途記載がなければ錠剤プレス機内で圧縮して、例えばFette 102I錠剤プレス機を使用して、質量710mgの錠剤を形成した。錠剤を技術レベルで製造し、例えばコーティング等の更なる処理を可能にした。
【0264】
方法2a:サブコート(Opadry(登録商標)Clear 03K19229)
方法1により調製した錠剤核を、Opadry(登録商標)Clear 03K19229を含むサブコートでコーティングした。コーティング用懸濁液を、a)Opadry(登録商標)Clear 03K19229コーティング材料(ポリマー粉末)、6gを、標準的なマグネチックスターラーを使用して激しく混合しながら、脱塩水、94gに添加するステップ、その後b)低強度で45分間撹拌するステップ、及び最終的にc)懸濁液を篩分けして凝集物を取り除くステップにより調製した。錠剤核のコーティングを、開口部が1.0mmの従来型のパターン化された空気Schlickスプレーノズルを備えた、パンサイズが8.5インチのパンコーター内で、噴霧及びパターン空気圧、0.55バール、入口空気温度、40℃、気流、100kg/時間で実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で1.5%w/wのポリマー粉末)を添加して錠剤核上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0265】
方法2b:サブ-コート(Opadry II Yellow 85F32410)
方法1により調製した錠剤核をOpadry II Yellow 85F32410を含むサブコートでコーティングした。コーティング用懸濁液を、a) Opadry II Yellow (ポリマー粉末)、30gを、標準的なマグネチックスターラーを使用して激しく混合しながら、脱塩水、120gに添加するステップ、その後b)低強度で45分間撹拌するステップ、及び最終的にc)篩分けして凝集物を取り除くステップにより調製した。錠剤核のコーティングを、方法2aに記載の方法により、但し37℃の入口空気温度を使用して実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で5.5%w/wのOpadry II Yellowコーティング材料)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0266】
方法2c:サブコート(Pharmacoat(登録商標)603)
方法1により調製した錠剤核を、Pharmacoat(登録商標)603を含むサブコートでコーティングした。コーティング用懸濁液を、a) Pharmacoat(登録商標)603、10gを、スプーンで撹拌しながら煮沸水、90gで湿らせるステップ、b)脱塩水、112g中でトリアセチン、2gを溶解するステップ、及びそれをヒプロメロース懸濁液に添加するステップ、その後c)低強度で最長45分間撹拌するステップ、次にd)タルク、0.9gを懸濁液に添加するステップ、及び最終的にe)懸濁液を少なくとも15分間ホモジナイズするステップにより調製した。錠剤核のコーティングを方法2aに基づき実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で1.5%w/wのヒプロメロースコーティング材料)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0267】
方法2d:サブコート(Kollicoat(登録商標)IR)
方法1により調製した錠剤核を、Kollicoat(登録商標)IRを含むサブコートでコーティングした。コーティング用懸濁液を、a) Kollicoat(登録商標)IR (ポリマー粉末)、15gを、標準的なマグネチックスターラーを使用して激しく混合しながら、脱塩水、85gに添加するステップ、その後b)低強度で45分間撹拌するステップ、及び最終的にc)懸濁液を篩分けして凝集物を取り除くステップにより調製した。錠剤核のコーティングを、方法2aに記載の方法により、但し38℃の入口空気温度を使用して実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量1.5%w/wのKollicoat(登録商標)IRコーティング材料)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0268】
方法3a:陰イオン性共重合体でコーティングされた錠剤(Eudragit(登録商標)FS 30 D)
陰イオン性共重合体コーティングを、i)本明細書の方法1に基づき調製した錠剤核、又はii)本明細書の方法1、及び方法2a~dのうちの1つに基づき調製したサブコートを用いてコーティングした錠剤核上に、下記の方法に基づき塗布した:
Eudragit(登録商標)FS 30 Dコーティング材料の水性分散体、121.2gを、適する撹拌装置上のビーカー内に配置した。PlasAcryl(商標)T20、18.2g、及び脱塩水、60.6gを5分間混合し、次に撹拌しながら、FS30Dコーティング材料の水性分散体に添加した。混合物を10分間混合した後、0.24mmのメッシュフィルターを通じて濾過して凝集物を取り除き、コーティング用懸濁液を得た。コーティング用懸濁液によるコーティングを、開口部が1.0mmの従来型のパターン化された空気Schlickスプレーノズルを備えた、パンサイズが8.5インチのパンコーター内で、噴霧及びパターン空気圧、0.5~0.7バール、入口空気温度、36℃、気流、100kg/時間で実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で6.4%w/wのEudragit(登録商標)FS 30 Dコーティング材料)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0269】
方法3b:陰イオン性共重合体でコーティングされた錠剤(Eudragit(登録商標)FS 30 D及びEudragit(登録商標)L 30 D-55の組合せ)
陰イオン性共重合体コーティングを、i)本明細書での方法1に基づき調製した錠剤核、又はii)本明細書の方法1及び方法2a~dのうちの1つに基づき調製したサブコートを用いてコーティングした錠剤核上に、下記の方法に基づき塗布した:
PlasAcryl(商標)T20、17.4gを、脱塩水、20.0gと撹拌しながら5分間混合した。トリエチルシトレート、1.7gを、脱塩水、44.9gと5分間混合し、次にPlasAcryl(商標)T20に添加した。Eudragit(登録商標)FS 30 Dコーティング材料の水性分散体、92.8gを、適する撹拌装置上のビーカー内に配置した。PlasAcryl(商標)T20懸濁液、及びL30D-55コーティング材料、23.2gを、FS30D懸濁液に少なくとも10分間撹拌しながら添加した後、0.24mmのメッシュフィルターを通じて濾過して凝集物を取り除き、コーティング用懸濁液を得た。本明細書に記載するEudragit(登録商標)FS 30 D、及びEudragit(登録商標)L 30 D-55の量は、Eudragit(登録商標)FS 30 DとEudragit(登録商標)L 30 D-55の間の比として80:20に相当するが、また調整してその他の比、例えばEudragit(登録商標)FS 30 Dコーティング材料及びEudragit(登録商標)L 30 D-55コーティング材料を、それぞれ58g秤量した場合には、50:50等にすることも可能である。コーティングを、方法3aに基づき、但し入口空気温度、37℃で実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で6.4%w/wのEudragit(登録商標)FS 30 Dコーティング材料及びEudragit(登録商標)L 30 D-55コーティング材料の組合せ)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0270】
方法3c:陰イオン性共重合体でコーティングされた錠剤(Eudragit(登録商標)S 100)
陰イオン性共重合体コーティングを、i)本明細書の方法1に基づき調製した錠剤核、又はii)本明細書の方法1及び方法2a~dのうちの1つに基づき調製したサブコートを用いてコーティングした錠剤核に、下記の方法に基づき塗布した:
イソプロパノール、324gを、脱塩水、36gと混合した。Eudragit(登録商標)S 100(ポリマー粉末)、25gを、標準的なマグネチックスターラーを使用して激しく混合しながら、半量のイソプロパノール:水希釈液に分散した。ポリマー粉末の添加後に、混合物を低強度で最長60分間撹拌して、コーティング溶液を形成した。タルク、12.5g、トリエチルシトレート、2.5g、及び残りのイソプロパノール(原文isoproanol):水希釈液を、少なくとも10分間ホモジナイズした。この懸濁液を、コーティング溶液に撹拌しながらゆっくりと添加し、次に篩分けを行って凝集物を取り除いた。
【0271】
コーティングを、方法3aに基づき、但し入口空気温度、32℃で実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で4.5%w/wのEudragit(登録商標)S 100コーティング材料)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0272】
方法3d:陰イオン性共重合体でコーティングされた錠剤(Acryl-EZE(登録商標)93O18509/93A18597)
陰イオン性共重合体コーティングを、i)本明細書の方法1に基づき調製した錠剤核、又はii)本明細書の方法1及び方法2a~dのうちの1つに基づき調製したサブコートを用いてコーティングした錠剤核上に、下記の方法に基づき塗布した:
トリエチルシトレート、4gを、脱塩水、156gに、撹拌しながら5分間分散した。製品番号93O18509又は93A18597(ポリマー粉末)のAcryl-EZE(登録商標)、40gを、標準的なマグネチックスターラーを使用して激しく混合しながら添加した。ポリマー粉末の添加後、コーティング用懸濁液を低強度で45分間撹拌した。コーティング用懸濁液を篩分けして凝集物を取り除いた。コーティングを、方法3aに基づき、入口空気温度、36℃で実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液、例えば乾燥質量で9.2%w/wのAcryl-EZE(登録商標)コーティングを添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0273】
方法4a:トップコート(Opadry(登録商標)White 03F180011)
Opadry Whiteからなるトップコートを含むコーティングを、i)方法1、方法2a~dのうちの1つ、及び方法3a~dのうちの1つ(すなわち、サブコート及び更なるコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤核)、又はii)方法1及び方法3a~dのうちの1つ(すなわち、サブコートを含まず、単一のコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤核)に基づき得られたコーティング済みの錠剤に塗布した。コーティング用懸濁液を、a) Opadry(登録商標)White 03F180011コーティング材料、15gを、脱塩水、135gに、標準的なマグネチックスターラーを使用して激しく混合しながら添加するステップ、その後b)低強度で45分間撹拌するステップ、及び最終的にc)懸濁液を篩分けして凝集物を取り除くステップにより調製した。錠剤核のコーティングをパンコーター内で実施した。コーティング用懸濁液によるコーティングを、1.0mmの開口部を有する従来型のパターン化された空気Schlickスプレーノズルを備えた、パンサイズが8.5インチのパンコーター内で、噴霧及びパターン空気圧、0.5~0.7バール、入口空気温度、36~37℃、気流、100kg/時間で実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で2.4%w/wのOpadry(登録商標)White 03F180011コーティング材料)を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0274】
方法4b:トップコート(Opadry(登録商標)II Yellow 83F32410)
Opadry II Yellowからなるトップコートを用いたコーティングを、i)方法1、方法2a~dのうちの1つ、及び方法3a~dのうちの1つ(すなわち、サブコート及び更なるコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤核)、又はii)方法1及び方法3a~dのうちの1つ(すなわち、サブコートを含まず、単一のコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤核)に基づき得られたコーティング済みの錠剤を使用して実施した。コーティング用懸濁液の調製及び錠剤のコーティングを方法2bに基づき実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液、例えば乾燥質量で2.5%w/wのOpadry(登録商標)II Yellow 83F32410を添加して錠剤上に均等に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0275】
方法4c:トップコート(Eudragit(登録商標)L 30 D-55)
i)方法1、方法2a~dのうちの1つ、及び方法3a~dのうちの1つ(すなわち、サブコート及び更なるコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤核)、又はii)方法1及び方法3a~dのうちの1つ(すなわち、サブコートを含まず、単一のコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを含む錠剤核)に基づき得られたコーティング済みの錠剤を使用して、L30D-55からなるトップコートを用いたコーティングを実施した。
【0276】
コーティング用懸濁液を、a)PlasAcryl(商標)HTP20、29.1gを脱塩水、57gと撹拌しながら5分間混合するステップ、b)Eudragit(登録商標)L 30 D-55の水性分散体、114gを混合物に撹拌しながら、少なくとも10分間添加するステップ、及び最終的にc)懸濁液を篩分けして凝集物を取り除くステップにより調製した。
【0277】
コーティングの塗布を方法4aに基づき実施した。必要とされる量のコーティング用懸濁液(例えば、乾燥質量で0.9%w/wのEudragit(登録商標)L 30 D-55コーティング材料)を添加して錠剤上に分布させた後、スプレーイングを中止し、錠剤を最長30分間、パン内で乾燥した。
【0278】
方法5:コーティングの溶解度pH
i)サブコート及び更なるコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティング、又はii)単一のコーティング、例えば陰イオン性共重合体コーティングを用いてコーティングした錠剤核を含む、本発明によるコーティング済みの錠剤の溶解度について、様々なpH値で試験した。錠剤を、本明細書に規定のpH条件下に置かれたビーカー内に配置した。処理後、各錠剤を秤量した。初期質量と比較して、錠剤の質量が増加した場合、プラスとして、又は錠剤の質量が失われた場合には、マイナスとして、質量を記録した。最初に、pH 1.2に調整済みの0.1N HClに、錠剤を各1時間、2回暴露した。pHを、1M NaH2PO4と0.5M NaH2PO4との混合物を用いてpH 4.5まで増加させ、錠剤をこの設定pHにおいて30分間保持した。これをpH 5.5、6.0、6.5、7、及び7.4において反復し、質量減少/質量増加をすべてのpH値について記録した。
【0279】
方法6:IN VITROでの溶解速度
ふさわしい溶解装置、例えばUSP溶解装置2内で、薬局方(Ph Eur 2.9.3)に基づく標準溶解試験が、in-vitroでの溶解を測定するために実施可能である。本発明では、37℃±0.5℃で試験を実施した。最初に、0.1N HCl、pH 1.2、500ml中にて、120分間、溶解を実施した。次に、0.225% BRIJ 35を含有する0.12Mリン酸溶液、400mlを、酸を中和してpHを7.4とするために添加した。その後、120分間の溶解が更に継続した。試料を、所定の時点において収集し、HPLCクロマトグラフィーにより、GLP-1並びにカプリン酸ナトリウムについて定量化を行った。
【0280】
方法7:ビーグル犬でのIN VIVO試験
実験前日に、ビーグル犬を秤量し、通常の飼料を午後12時に与え、適宜水を補給しながら終夜絶食させた。実験当日、イヌを試験プラットフォーム上に配置し、血液を採取できるように、20G Venflonを橈側皮静脈に取り付けた。最初の2.5~4時間において、血液試料をVenflonから収集し、その後Venflonを抜去し、イヌを犬小屋に戻した。後続する血液採取では、イヌを試験ルームに誘導し、標準的な21G針及びシリンジを使用して、血液試料を頸静脈から採取した。この手技は、橈側皮静脈にvenflonを留置できない際にも採用可能であった。試験のサブセットでは、最初の4時間、やはりイヌを犬小屋内に留め、試験ルームに誘導し、そこで標準的な21G針及びシリンジを使用して、すべての血液試料を頸静脈から採取した。投与後4時間経過して、イヌに飼料を与えた。
a)皮下ペンタガストリン注射後の錠剤経口投与: 試験プラットフォーム上にイヌを配置し、venflonの配置後、次に以下の通り、錠剤を投与した:錠剤の経口投与に20分先行して、4μg/kg体重(120μg/mL)の投与量でペンタガストリンを頸部皮下投与することにより、経口錠剤投与前の酸分泌を誘発した。錠剤を、イヌの口腔奥部内に配置して咀嚼を防止した。口を閉鎖し、シリンジにより水道水、10mLを投与して錠剤の嚥下を促進した。いくつかの試験では、イヌをプラットフォーム上に置かないで、犬小屋内になおも居るときに投与した。
b)静脈内投与:試験プラットフォーム上にイヌを配置し、橈側皮静脈内にvenflonの配置後、GLP-1アゴニストを、23G翼状針を使用して、他方の前脚の橈側皮静脈に静脈内投与した。GLP-1アゴニストを投与した後、翼部(bufferfly)を10IU/mLのヘパリン含有生理食塩水を使用してフラッシュした。いくつかの試験では、イヌをプラットフォーム上に置かないでvenflonを取り付け、犬小屋に留めたまま、橈側皮静脈に直接投与した。
【0281】
血液採取:下記は、本発明に記載するすべての種類の試験に適用される。各採取血液を採取する前に、最初の数滴をvenflonから流出させて、venflonから試料中に生理食塩水が流入するのを回避した。各時点において、全血、約800μLを、1.5mLのEDTAコーティングチューブ内に収集し、チューブを軽く反転させて、試料と抗凝固剤との混合を可能にした。4000G (4℃)で4分間遠心分離するまで、試料を氷水に配置し、その後GLP-1アゴニストの後続分析用としてドライアイス上でマイクロチューブ内にピペット採取した。すべての試料を、血漿分析まで-80℃に保持した。血液試料を、GLP-1アゴニストの全体的な血漿濃度-時間プロファイルを網羅するのに適するように収集した。例えば、血液試料は、t=投与前、投与後0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、4、6、8、10、24、48、72、120、144、168、192、216、240、288時間において収集され得る。各血液の採取後、ヘパリン(10IU/mL)含有生理食塩水、0.5mLを使用して、Venflonをフラッシュした。すべての血漿試料を、サンドイッチ免疫測定法(LOCI)又は液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを使用して分析した。
【0282】
方法8:イヌにおける経口バイオアベイラビリティ
原薬の経口バイオアベイラビリティの増加は、経口投与された原薬のより多くの分画が体循環に到達し、そこから原薬が拡散して薬学的効果を示すことができることを意味する。一般的に、用語バイオアベイラビリティは、原薬の投与量のうち、体循環に不変のまま到達する分画を意味する。すなわち、原薬が静脈内に投与されるとき、そのバイオアベイラビリティは100%である。但し、原薬は、その経口投与後の吸収が不完全であり得る、又は腸の管腔、若しくは肝臓代謝の初回通過において分解され得る。
【0283】
血漿濃度-時間プロットを作成し、NCAを使用して、用量補正後のAUCを、本明細書の方法7の記載に従い実施したビーグル犬への経口投与及び静脈内投与の両方の後に計算したが、特に絶対的バイオアベイラビリティ(F)は、AUC/Divで割り算したAUC/Dpoとして計算した。
【0284】
方法9:食物相互作用
飼料を与えた後に、錠剤を経口投与した際に、食物相互作用を評価した。胃内部に食物が存在すると、経口投与された錠剤の性能を阻害する可能性があり、おそらくは原薬の経口バイオアベイラビリティの低下を引き起こす。この実験を、本明細書の方法7aの記載に従い、但し下記の修正を加えて実施した:イヌを終夜絶食させ、試験当日の午前7~8時の間、水を与えなかった。午前8時に、イヌの胃を超音波スキャンして、胃が空であることを徹底した。次に、イヌに、吸収しやすい缶詰飼料であるHills I/Dの軽食を与えた。飼料摂取後30分経過して錠剤を投与し、飼料及び錠剤の位置を超音波で確認した。錠剤投与後、標準的な血液採取レジメンを、本明細書の方法7に記載するプロトコールに基づき実施した。
【0285】
(実施例1)
第1の試験では、錠剤核を、方法1に基づき、Table 1 (表1)に記載する成分を混合することにより調製し、また方法2a、3a、及び4aに基づきコーティングし、錠剤核、Opadry Clearサブコート、FS30D腸溶コーティング、及びOpadry Whiteトップコートを含む錠剤を得た。GLP-1アゴニストの量は10mgであった。
【0286】
Table 1 (表2)は、実施例1の錠剤の組成を示す。錠剤は、錠剤核内にGLP-1アゴニストを含み、錠剤核にはカプリン酸ナトリウムも含まれたが、その錠剤核を、Opadry Clear、FS30D、及びOpadry Whiteでコーティングした。特に、錠剤核は、GLP-1アゴニスト、カプリン酸ナトリウム、ソルビトール、及びステアリン酸からなる。錠剤核の質量は710mgであり、サブコートを有する腸溶コーティング錠剤及びトップコートの質量は、790.4mgであった。
【0287】
【表2】
【0288】
(実施例2)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、方法1に基づき調製される錠剤核は1/3にスケールダウンした;錠剤は、実施例1の錠剤のコーティング厚さと同一の厚さが得られるように表面積計算を行い、その計算に基づき、方法2a、3a、及び4aに従いコーティングした;錠剤は下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 2.2%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 10.2%w/w FS30D
トップコート: 3.7%w/w Opadry White
【0289】
(実施例3)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、FS30D及びL30D-55を80:20の比で組み合わせてコーティングした;錠剤は方法2a、3b、及び4aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
トップコート: 2.5%w/w Opadry White
【0290】
(実施例4)
(参考)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、PVAサブコート及びメタクリル酸共重合体タイプCでコーティングしたが、但しトップコートを有さない;錠剤は方法2b及び3dに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 4.5%w/w Opadry II Yellow
腸溶コーティング: 11.6%w/w Acryl-EZE 93A
【0291】
(実施例5)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、サブコートを有さず、トップコートも有さず、またFS30D及びL30D-55を50:50の比で組み合わせてコーティングした;錠剤は方法3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
腸溶コーティング: 7%w/w 50:50 FS30D:L30D-55
【0292】
(実施例6)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤はサブコートを有さず、FS30D及びL30D-55を80:20の比で組み合わせてコーティングした;錠剤は方法3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0293】
(実施例7)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、サブコートPharmacoat及び腸溶コーティングS100でコーティングした;錠剤は方法2c及び3cに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 4.5%w/w S100
【0294】
(実施例8)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤はサブコートを有さずにコーティングした;錠剤は方法3a及び4aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
トップコート: 2.5%w/w Opadry White
【0295】
(実施例9)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は3%w/wサブコート及びFS30D:L30D-55の組合せでコーティングした;錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 3%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0296】
(実施例10)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は3%w/wサブコート及びFS30Dでコーティングした;錠剤は方法2c及び3aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 3%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
【0297】
(実施例11)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤はPVA-PEGサブコートでコーティングした;錠剤は方法2d及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Kollicoat
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0298】
(実施例12)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、FS30D:L30D-55が80:20となるようにコーティングを組み合わせて6%w/wでコーティングした;錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 6%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0299】
(実施例13)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、FS30D:L30D-55が80:20となるようにコーティングを組み合わせて8%w/wでコーティングした;錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 8%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0300】
(実施例14)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は、FS30D:L30D-55が80:20となるようにコーティングを組み合わせて10%w/wでコーティングした;錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 10%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0301】
(実施例15)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤はPVAトップコートでコーティングした;錠剤は方法2a、3a、及び4bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
トップコート: 2.5%w/w Opadry II Yellow
【0302】
(実施例16)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤はL30D-55トップコートでコーティングした;錠剤は方法2a、3a、及び4cに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 6%w/w FS30D
トップコート: 1%w/w L30D-55
【0303】
(実施例17)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、セマグルチドをGLP-1アゴニストとして使用し、またサブコート又はトップコートは塗布しなかった;錠剤は方法3aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1:セマグルチド
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
【0304】
(実施例18)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、化合物BをGLP-1アゴニストとして用いた;錠剤は方法2a、3a、及び4aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物B
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
トップコート: 2.5%w/w Opadry White
【0305】
(実施例19)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、サブコート又はトップコートは塗布しなかった;錠剤は方法3aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物B、5mg
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
【0306】
(実施例20)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、FS30D:L30D-55が80:20となるようにコーティングを組み合わせて塗布したが、トップコートを有さない;錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物B、5mg
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0307】
(実施例21)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2a、3a及び4aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:セマグルチド
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
トップコート: 2.5%w/w Opadry White
【0308】
(実施例22)
(参考)
一試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2b及び3dに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 5.6%w/w Opadry II Yellow
腸溶コーティング: 9.2%w/w Acryl-EZE 93O
【0309】
(実施例23)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2c及び3aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
【0310】
(実施例24)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物A
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0311】
(実施例25)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、セマグルチド錠剤は、FS30Dでコーティングし、製造完了後2、8、及び15週間、5℃で保存した後、in-vivoで試験した;錠剤は方法2c及び3aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:セマグルチド
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w FS30D
【0312】
(実施例26)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:セマグルチド
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0313】
(実施例27)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2a、3b、及び4aに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:セマグルチド
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
トップコート: 2.5%w/w Opadry White
【0314】
(実施例28)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2c及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物C
サブコート: 1.5%w/w Pharmacoat
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0315】
(実施例29)
別の試験では、錠剤を実施例1の記載に従い調製した;その場合、錠剤は方法2a及び3bに基づきコーティングした;下記の仕様を有した:
GLP-1アゴニスト:化合物D
サブコート: 1.5%w/w Opadry Clear
腸溶コーティング: 7%w/w 80:20 FS30D:L30D-55
【0316】
実施例2~29で塗布した最終コーティングの重量は、コーティングが塗布されるユニットの質量に対して決定され得る(例えば、実施例2では、塗布されるサブコートの量は、錠剤核からなる錠剤ユニットの2.2%w/wであり得る;同様に、塗布されるトップコートの量は、錠剤核、サブコート、及び腸溶コーティングからなる錠剤ユニットの3.7%w/wであり得る)。
【0317】
(実施例30)
コーティングのpH依存性
実施例4、6、8、22、23、及び24に由来するコーティング済みの錠剤について、方法5に基づき試験した。結果をTable 2 (表3)に示し、異なるpH条件に曝露された腸溶性コーティング錠剤の質量増加の割合(%)として表わす。質量増加は、pHを関数とする所定の腸溶コーティングの水和を示唆する。結果は、pHが上昇すると質量も増加することが、すべてのケースで認められたことを示す。コーティングが、腸内保護に関してその最高限界pHに到達すると、錠剤は溶解を開始する。
【0318】
【表3】
【0319】
Table 2 (表3)のデータは、FS30D:L30Dが80:20となるように組み合わせたコーティングは、pH5.5におけるL30D-55の溶解度に起因して、pH6.0、6.5、及び7.0において、FS30Dよりもはるかに多くの水を取り込み得たこと;但し、両コーティングはpH7.4において溶解したことを示している。対照的に、Acryl-EZE 93Aコーティングは、pH5.5ですでに溶解し、またAcryl-EZE 93OコーティングはpH4.5で溶解した。FS30D:L30D-55の80:20の組合せ及び純粋なFS30Dコーティングは、胃のpHが中性まで上昇した場合には、Acryl-EZEコーティングと比較してより良好な核の保護をもたらす。
【0320】
(実施例31)
溶解速度
溶解を方法6に基づき実施した。Table 3 (表4)は、本発明により調製された錠剤に関する結果を示し、その場合、溶解は「溶液中のGLP-1の割合(%)」として表わし、15分、30分、及び60分経過した後の、実験開始時における錠剤内GLP-1の総量に対する溶液中GLP-1の量を意味する。
【0321】
【表4】
【0322】
Table 3 (表4)の結果より、実施例のすべての錠剤が持効性放出プロファイルを示したことが明らかである。放出は、サブコートを塗布しないときはより速く、またより多くのサブコートを塗布したときにはより遅かった。最速の放出は、Acryl-EZEコーティング錠剤に認められた。腸溶コートの量は、放出に影響を及ぼした。腸溶コーティングが少ないほど、放出はより迅速となり、また腸溶コーティングが多いほど、放出はより低速となった。トップコートの種類が異なっても、同一の放出プロファイルが得られ、放出されたすべてのGLP-1アゴニストも同様であった。
【0323】
別の試験では、溶解を方法6に基づき実施したが、但しリン酸バッファーのpHを、6.5及び5.5に変更した。これらの試験は、最長3時間実施し、結果をTable 4 (表5)に示すが、その場合、溶解は、「溶液中GLP-1の割合(%)」として表わし、30分、60分、120分、及び180分経過した後の、実験開始時における錠剤内GLP-1の総量に対する溶液中GLP-1の量を意味する。
【0324】
【表5】
【0325】
Table 4 (表5)の結果は、FS30Dコーティングが可溶性となるpHよりもpHが低下すると、放出はかなり低下したことを示す。コーティングを組み合わせると、pH5.5より高いL30D-55の溶解度に起因して、純粋なFS30Dコーティングと比較して、pH6.5においてそれよりも多く放出した。両製剤の放出量は、pH5.5では非常に少なかった。
【0326】
(実施例32)
GLP-1アゴニストの経口バイオアベイラビリティ
本発明により調製した錠剤からのGLP-1アゴニストの経口バイオアベイラビリティを、本明細書の方法8に基づき評価した。結果を、Table 5(表6)に示す。
【0327】
【表6】
【0328】
Table 5(表6)の結果が下記事項を示す:
胃内pHが酸性となるのを確実にするために、ペンタガストリンで事前処置したイヌを対象に、Acryl-EZEコーティング錠剤を試験したとき、FS30Dコーティング錠剤(2.7%、実施例1)と比較して、経口バイオアベイラビリティはきわめて低かった(0.4%、実施例4)。実施例30に示す通り、Acryl-EZEはpH5.5で溶解する。FS30D:L30D-55が50:50の腸溶コーティングを試験したとき、GLP-1アゴニストの経口バイオアベイラビリティは、FS30D:L30D-55が80:20の腸溶コーティングの経口バイオアベイラビリティほど高くはなく、コーティングの溶解度についてpH限界値がより高いほど有益であることを示す。
【0329】
GLP-1アゴニストが異なれば、経口バイオアベイラビリティも異なることが判明した。
FS30Dコーティング錠剤の経口バイオアベイラビリティは、FS30D:L30D-55が80:20のコーティング錠剤と類似し、またオーガニックS100コーティング錠剤と類似した。塗布したトップコートが異なっても、経口バイオアベイラビリティに差異は認められなかった。腸溶コートの量が10%まで増加したとき、経口バイオアベイラビリティは減少した。サブコートの有無によらず、錠剤は類似した経口バイオアベイラビリティを示した。
【0330】
(実施例33)
食物相互作用
GLP-1アゴニストの取り込みとの食物相互作用を、本明細書の方法9に基づき試験した。結果をTable 6 (表7)に示し、GLP-1アゴニストの経口バイオアベイラビリティとして表わす。
【0331】
【表7】
【0332】
結果は、化合物Aの場合、経口バイオアベイラビリティは、食物が存在しないときの2.8% (Table 5 (表6)、実施例3を参照)から、投与前30分の時点で食物を与えたときの平均0.7%まで減少したが、一方、錠剤と同時に食物を与えたときには、経口バイオアベイラビリティは0.5%まで低下した(実施例1)ことを示す。
【0333】
本発明の特定の特徴について、本明細書で説明及び記載してきたが、当業者には、多くの修正形態、置換形態、変更形態、及び同等形態が想起される。従って、添付の特許請求の範囲には、本発明の真正な精神の範疇に該当するそのようなすべての修正形態及び変更形態が含まれるように意図されるものと理解される。
【配列表】
0007211704000001.app