(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】排ガス浄化用三元触媒及びその製造方法、並びに一体構造型排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230117BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230117BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230117BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230117BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230117BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/10 301F
B01J37/02 101E
B01J37/08
F01N3/24 U
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2018032794
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 有希
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕基
(72)【発明者】
【氏名】中村 匠
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-211908(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002667(WO,A1)
【文献】特表2014-506221(JP,A)
【文献】特開2017-185464(JP,A)
【文献】特開2015-037784(JP,A)
【文献】特表2013-500149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
F01N 3/24
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有する母材粒子と、前記母材粒子上に担持された白金族元素の触媒活性粒子と、を含有する複合粒子を備え、
前記母材粒子が、セリア系酸素吸蔵放出材料からなり、
前記セリア系酸素吸蔵放出材料が、構成金属元素としてNd及びPrを酸化物換算で以下の質量割合で含む、Nd及びPr固溶セリア-ジルコニア系複合酸化物を含み、
CeO
2
10~50質量%
ZrO
2
40~80質量%
Nd
2
O
3
0.1~10質量%
Pr
5
O
11
0.1~10質量%
前記母材粒子が、0.5~30μmの平均粒子径D
50を有し、
前記触媒活性粒子の含有割合が、前記複合粒子の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%であることを特徴とする、
排ガス浄化用三元触媒。
【請求項2】
水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有する母材粒子と、前記母材粒子上に担持された白金族元素の触媒活性粒子と、を含有する複合粒子を備え、
前記母材粒子が、セリア系酸素吸蔵放出材料を含み、
前記セリア系酸素吸蔵放出材料が、構成金属元素としてNd及びPrを酸化物換算で以下の質量割合で含む、Nd及びPr固溶セリア-ジルコニア系複合酸化物を含み、
CeO
2 10~50質量%
ZrO
2 40~80質量%
Nd
2O
3 0.1~10質量%
Pr
5O
11 0.1~10質量%
前記触媒活性粒子の含有割合が、前記複合粒子の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%であることを特徴とする、
排ガス浄化用三元触媒。
【請求項3】
水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有する母材粒子と、前記母材粒子上に担持された白金族元素の触媒活性粒子と、を含有する複合粒子を備え、
前記母材粒子が、ジルコニア系高耐熱性材料を含み、
前記ジルコニア系高耐熱性材料が、構成金属元素としてPrを酸化物換算で以下の質量割合で含む、Pr固溶ジルコニア系複合酸化物を含み、
ZrO
2 50~
65質量%
Pr
5O
11 35~50質量%
前記触媒活性粒子の含有割合が、前記複合粒子の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%であることを特徴とする、
排ガス浄化用三元触媒。
【請求項4】
前記触媒活性粒子は、30~105nmの平均粒子径を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用三元触媒。
【請求項5】
前記母材粒子は、5~30(m
2/g)のBET比表面積を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用三元触媒。
【請求項6】
前記母材粒子が、0.5~30μmの平均粒子径D
50を有する
請求項2又は3に記載の排ガス浄化用三元触媒。
【請求項7】
触媒担体と、前記触媒担体の少なくとも一方の面側に設けられた触媒層とを備え、
前記触媒層が、請求項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用三元触媒を含むことを特徴とする、
一体構造型排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素の触媒活性粒子が特定の母材粒子上に担持された排ガス浄化用三元触媒及びその製造方法、並びに一体構造型排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)の浄化において、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ等の白金族元素(PGM:Platinum Group Metal)を触媒活性成分として用いた三元触媒(TWC:Three-Way Catalyst)が広く用いられている。従来、三元触媒としては、アルミナ、ジルコニア、セリア等の金属酸化物からなる担体(母材粒子)と、この担体上に担持されたPt等の触媒粒子とを有するものが広く知られている。
【0003】
この種の排ガス浄化用触媒においては、比較的に高価なPGMの使用量を削減するとともに高い触媒活性を確保するため、微細な粒子の状態で触媒活性成分を担体上に担持させている。しかしながら、担体上の触媒活性成分は、高温環境に曝されると、粒子同士がシンタリングすることで粒成長し、これにより触媒活性サイトが著しく減少してしまうという問題があった。
【0004】
かかる触媒粒子のシンタリングを抑制する技術として、例えば特許文献1には、Al2O3粒子と所定の金属酸化物の粒子のそれぞれの一次粒子がナノオーダーで混合された混合物を担体とし、この担体上に白金族元素を担持させた排ガス浄化用触媒が開示されている。この技術によれば、Al2O3の一次粒子と所定の金属酸化物の一次粒子とが、それぞれの粒子間に介在しているため、単独酸化物の一次粒子の粒成長の進行が抑制され、その結果、表面積及び細孔容積の低下が十分に抑制され、担持させる触媒成分の分散性を十分に保持することができるとされている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、AZT酸化物又はAZ酸化物からなる担体と、該担体に担持される一酸化炭素の酸化を触媒する貴金属と、を有する排ガス浄化用酸化触媒が開示されている。この技術によれば、AZT酸化物又はAZ酸化物からなる担体の表面にある塩基点、すなわち塩基性性質を示す原子若しくは原子団のサイトにおいて、酸素原子を介してパラジウムや白金等の貴金属の原子(イオン)が強固に固定(担持)されるため、シンタリング抑制効果が高く貴金属の粒成長を抑制することができるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の排ガス浄化用触媒は、母材粒子としてAl2O3を用いたディーゼルエンジン用の排ガス浄化用触媒であり、より高温の排ガスを発生するガソリンエンジン等の内燃機関用途においては、耐熱性が不十分で、触媒性能が速やかに低下するという問題がある。
【0007】
一方、耐熱性を向上させた三元触媒として、特許文献3には、パラジウム含有率が0.05~7重量%の範囲であり、Pr/(Zr+Pr)原子比が0.05~0.6の範囲であるZrαPrβPdγO2-δ(但し、α+β+γ=1.000であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)固溶体成分からなる排ガス浄化三元触媒が開示されている。
【0008】
他方、特許文献4及び5には、酸素ストレージ能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する助触媒(酸素貯蔵材料)として、イットリウム、ランタン、ネオジム、プラセオジム及びガドリニウム等の希土類元素をドープさせたセリア-ジルコニア系金属酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2012/121085号パンフレット
【文献】国際公開第2012/137930号パンフレット
【文献】特開2013-166130号公報
【文献】国際公開第2011/083157号パンフレット
【文献】国際公開第2010/097307号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に記載された排ガス浄化三元触媒は、特殊な結晶構造を有する固溶体を得るために空気中800~1100℃で数十時間もの熱処理を必要とするため生産性に劣り、また、高温暴露時に、母材粒子上の触媒活性成分がシンタリングして粒成長し、触媒性能が速やかに低下するという問題がある。一方、特許文献4及び5は、酸素貯蔵材料としてのセリア-ジルコニア系金属酸化物の開示に留まる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、高温暴露時の担体上の触媒活性成分のシンタリングによる粒成長を抑制し、これにより、浄化性能が高められた排ガス浄化用三元触媒及びその製造方法、並びに、これらを用いた一体構造型排ガス浄化用触媒等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、白金族元素の触媒活性粒子が比較的に大きな細孔径を有する母材粒子上に担持された複合粒子構造を採用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有する母材粒子と、前記母材粒子上に担持された白金族元素の触媒活性粒子と、を含有する複合粒子を備え、前記触媒活性粒子の含有割合が、前記複合粒子の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%であることを特徴とする、排ガス浄化用三元触媒。
【0014】
(2)前記母材粒子が、セリア系酸素吸蔵放出材料からなる(1)に記載の排ガス浄化用三元触媒。
(3)前記母材粒子は、水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有し、前記触媒活性粒子は、30~105nmの平均粒子径を有する(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用三元触媒。
(4)前記母材粒子は、5~30(m2/g)のBET比表面積を有する(1)~(3)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用三元触媒。
(5)前記母材粒子が、0.5~30μmの平均粒子径D50を有する(1)~(4)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用三元触媒。
【0015】
(6)母材粒子を準備する工程、前記母材粒子の表面に、白金族元素イオンを少なくとも含有する水溶液を付与する工程、並びに処理後の前記母材粒子を熱処理及び/又は化学処理して、水銀圧入法で105~650nmの細孔径を有する母材粒子と前記母材粒子上に担持された白金族元素の触媒活性粒子とを含有する複合粒子であって、前記触媒活性粒子の含有割合が、前記複合粒子の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%である複合粒子を調製する工程、を少なくとも有することを特徴とする、排ガス浄化用三元触媒の製造方法。
【0016】
(7)触媒担体と、前記触媒担体の少なくとも一方の面側に設けられた触媒層とを備え、前記触媒層が、(1)~(5)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用三元触媒を含むことを特徴とする、一体構造型排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浄化性能が高められた排ガス浄化用三元触媒及びその製造方法、並びに、これらを用いた一体構造型排ガス浄化用触媒等を実現することができる。本発明の排ガス浄化用触媒は、母材粒子上に数多くの微小な活性点(白金族元素の触媒活性粒子)が担持された複合構造の触媒粒子であり、その組成及び構造に基づいて、排ガス中のNOx、CO、HC等を削減する三元触媒(TWC:Three Way Catalyst)として、特に好適に用いることができる。そして、本発明の排ガス浄化用三元触媒等は、エンジン直下型触媒コンバータやタンデム配置の直下型触媒コンバータ等に搭載することができ、これにより、キャニングコストの削減などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態の排ガス浄化用三元触媒100の概略構成を示す模式図である。
【
図2】実施例1~3及び比較例1の排ガス浄化用三元触媒における、母材粒子の細孔径-触媒活性粒子の平均粒子径のグラフを示す。
【
図3】実施例2及び比較例1の一体構造型触媒における、浄化性能を示グラフである。
【
図4】実施例4~5及び比較例2~3の排ガス浄化用三元触媒における、母材粒子の細孔径-触媒活性粒子の平均粒子径のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態の排ガス浄化用三元触媒100の概略構成を示す模式図である。この排ガス浄化用三元触媒100は、水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有する母材粒子11と、前記母材粒子11の表面11aに担持された白金族元素の触媒活性粒子21と、を含有する複合粒子31を備え、前記触媒活性粒子21の含有割合が、前記複合粒子31の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%であることを特徴とする。以下、各構成要素について詳述する。
【0021】
母材粒子11は、その表面11a上に触媒活性粒子21を担持するための担体粒子である。本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100においては、母材粒子11として比較的に大きな細孔径を有するものを用いることで、母材粒子11上で触媒活性粒子21同士の接触機会を低減させ、これにより高温暴露時の触媒活性粒子21同士のシンタリングによる粒成長を抑制して、浄化性能の低下を抑制している。
【0022】
かかる観点から、母材粒子11の細孔径は、水銀圧入法で100~650nmであることが好ましい。ここで本明細書において、母材粒子11の細孔径は、水銀圧入法により算出される値を意味する。ここでは、後述する実施例に記載の条件下にて細孔容積を測定し、このとき得られる細孔径-微分細孔容量の細孔分布曲線におけるピークトップ位置の値を、母材粒子11の細孔径とする。
【0023】
母材粒子11の素材は、要求性能に応じて当業界で公知のものから適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。具体的には、酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)を有するセリア系酸素吸蔵放出材料(例えばセリア系(複合)酸化物)、アルミナよりも耐熱性に優れるジルコニア系高耐熱性材料(例えばジルコニア系(複合)酸化物)が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの素材は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
ここで、本明細書において、「セリア系(複合)酸化物」は、セリア系酸化物及びセリア系複合酸化物の双方を包含する用語として用いており、具体的には、セリア(CeO2)又はこれに他元素がドープされた複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。
【0025】
同様に、「ジルコニア系(複合)酸化物」は、ジルコニア系酸化物及びジルコニア系複合酸化物の双方を包含する用語として用いており、具体的には、ジルコニア(ZrO2)又はこれにセリウム以外の他元素がドープされた複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。なお、セリウム及びジルコニウムの双方を含有するセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、酸素吸放出能を有するため前者のセリア系複合酸化物に該当するものとし、後者のジルコニア系複合酸化物には該当しないものとして取り扱う。
【0026】
セリア系(複合)酸化物の具体例としては、酸化セリウム(IV)、セリウム-セリウムを除く希土類元素複合酸化物、セリウム-遷移元素複合酸化物、セリウム-セリウムを除く希土類元素-遷移元素複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、セリア系酸素吸蔵放出材料としては、酸素吸放出能及び耐熱性のバランスに優れるセリア-ジルコニア系複合酸化物が好ましく、セリウム及びジルコニウム以外の他の希土類元素が固溶したセリア-ジルコニア系複合酸化物がより好ましい。なお、セリア系(複合)酸化物としては、Ce及びZrの質量割合が、酸化物(CeO2及びZrO2)換算で、合計50質量%以上90質量%以下のものが好ましく用いられる。
【0027】
また、ジルコニア系(複合)酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素複合酸化物、ジルコニウム-遷移元素複合酸化物、ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素-遷移元素複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、ジルコニア系高耐熱性材料としては、耐熱性や靱性等のバランスの観点等から、セリウム及びジルコニウム以外の他の希土類元素が固溶したジルコニア系複合酸化物がより好ましい。なお、ジルコニア系(複合)酸化物としては、Zrの質量割合が、酸化物(ZrO2)換算で、50質量%以上80質量%以下のものが好ましく用いられる。
【0028】
ここで、セリア系(複合)酸化物やジルコニア系(複合)酸化物は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム等の、セリウム及びジルコニウム以外の希土類元素(以降において、「他の希土類元素」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。これらの中でも、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムが好ましい。他の希土類元素は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。他の希土類元素が含まれる場合、その含有割合は、特に限定されないが、母材粒子11の総量に対して、上述した他の希土類元素の酸化物換算の総量(例えばLa2O3、Nd2O3、Pr5O11等の総和)で、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
またに、セリア系(複合)酸化物やジルコニア系(複合)酸化物は、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、マンガン及び銅等の遷移元素を含んでいてもよい。としては、が挙げられる。遷移元素は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。遷移元素が含まれる場合、その含有割合は、特に限定されないが、母材粒子11の総量に対して、上述した遷移元素の酸化物換算の総量(例えばFe2O3、TiO2等の総和)で、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
なお、上記のセリア系(複合)酸化物及びジルコニア系(複合)酸化物において、セリウムやジルコニウムの一部が、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属元素や、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属元素等で置換されていてもよい。また、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び割合で用いることができる。また、上記のセリア系(複合)酸化物及びジルコニア系(複合)酸化物は、ジルコニア鉱石中に通常1~2質量%程度含まれているハフニウム(Hf)を不可避不純物として含有していても構わない。
【0031】
母材粒子11の平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、母材粒子11の平均粒子径D50は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましく、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、母材粒子11の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回 折式粒度分布測定装置SALD-3100等)で測定されるメディアン径を意味する。ここで本明細書において、母材粒子11の平均粒子径D50は、測定対象となる排ガス浄化用三元触媒100にエージング処理(耐久処理)を施したサンプルを用いて測定される値を意味する。なお、この耐久処理は、三元触媒のランニング性能の安定化を図る目的で行うものである。このエージング処理においては、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行うものとする。以降においても、耐久処理後と付されている場合には、上記熱処理後の値を意味する。
【0032】
母材粒子11のBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、高い触媒性能を得る等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が5m2/g以上が好ましく、より好ましくは7m2/g以上、さらに好ましくは9m2/g以上であり、30m2/g以下が好ましく、より好ましくは28m2/g以下、さらに好ましくは26m2/g以下である。ここで本明細書において、排ガス浄化用三元触媒100のBET比表面積は、耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒100をサンプルとして用いて測定される値を意味する。
【0033】
母材粒子11上には、白金族元素の触媒活性粒子21が高分散に担持されている。触媒活性粒子21は、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、及びOsよりなる群から選択される少なくとも1以上の白金族元素(PGM)を含むものである限り、その種類は特に限定されない。浄化性能等の観点から、Pt、Pd、Rhの少なくとも1以上であることが好ましい。
【0034】
触媒活性粒子21の含有割合は、母材粒子11の素材や細孔径等を考慮して所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、触媒活性等の観点から、複合粒子31の総量に対して、白金族元素の金属換算で合計0.001~30質量%が好ましく、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは0.3~6質量%である。
【0035】
母材粒子11上の触媒活性粒子21の平均粒子径は、母材粒子11の素材や細孔径等を考慮して所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。触媒活性をより高めるとともにシンタリング及び粒成長を抑制する等の観点から、触媒活性粒子21の平均粒子径は、30nm以上が好ましく、35nm以上が好ましく、40nm以上が好ましく、300μm以下が好ましく、270μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。このような微粒子サイズの触媒活性粒子21を母材粒子11の表面11aに存在させることで、表面積がより高く維持され易く、また、触媒活性サイトがより多く維持され易い傾向にある。なお、本明細書において、触媒活性粒子21の平均粒子径は、倍率1万倍のSEM画像において、無作為に抽出した20点の平均値とする。なお、排ガス浄化用三元触媒100の母材粒子11上の触媒活性粒子21の平均粒子径は、耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒100をサンプルとして用いて測定される値を意味する。
【0036】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100において特に好ましい態様の1つは、母材粒子11が他の希土類元素をドープしたセリア-ジルコニア系複合酸化物であり、この母材粒子11の表面11a上に白金族元素の触媒活性粒子21が担持された複合粒子31を用いたもの(以降において、「排ガス浄化用三元触媒100A」と称する場合がある。)が挙げられる。かかる希土類元素ドープセリア-ジルコニア系複合酸化物としては、構成金属元素としてNd及びPrを、酸化物換算で以下の質量割合で含むものが好適である。
CeO2 10~50質量%
ZrO2 40~80質量%
Nd2O3 0.1~10質量%
Pr5O11 0.1~10質量%
【0037】
排ガス浄化用三元触媒100Aにおいて、上記の希土類元素ドープセリアジルコニア系複合酸化物は、構成金属元素としてNd及びPrを、酸化物換算で以下の質量割合で含むものがより好適である。
CeO2 20~40質量%
ZrO2 50~70質量%
Nd2O3 4~9質量%
Pr5O11 4~9質量%
【0038】
排ガス浄化用三元触媒100Aにおいて、母材粒子11の細孔径は、水銀圧入法で100~650nmであることが好ましく、より好ましくは100~620nm、さらに好ましくは110~500nm、特に好ましくは120~350nmである。このとき、母材粒子11上の触媒活性粒子21の耐久処理後の平均粒子径は、母材粒子11の細孔径等によっても変動するが、通常30nm以上105nm以下が好ましく、触媒活性をより高めるとともにシンタリング及び粒成長を抑制する等の観点から、45nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましく、55nm以上が特に好ましく、103μm以下がより好ましく、101μm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましい。
【0039】
また、排ガス浄化用三元触媒100Aにおいて、母材粒子11の耐久処理後の平均粒子径D50は、大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、9μm以下がさらに好ましい。
【0040】
また、排ガス浄化用三元触媒100Aにおいて、母材粒子11の耐久処理後のBET比表面積は、高い触媒性能を得る等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が5m2/g以上が好ましく、より好ましくは7m2/g以上、さらに好ましくは9m2/g以上であり、30m2/g以下が好ましく、より好ましくは25m2/g以下、さらに好ましくは23m2/g以下である。
【0041】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100において特に好ましい別の態様の1つは、母材粒子11が他の希土類元素をドープしたジルコニア系複合酸化物であり、この母材粒子11の表面11a上に白金族元素の触媒活性粒子21が担持された複合粒子31を用いたもの(以降において、「排ガス浄化用三元触媒100B」と称する場合がある。)が挙げられる。かかる希土類元素ドープジルコニア系複合酸化物としては、構成金属元素としてNd及び/又はPrを、酸化物換算で以下の質量割合で含むものが好適である。
ZrO2 50~70質量%
Nd2O3 0~50質量%
Pr5O11 0~50質量%
Nd2O3とPr5O11の合計量が30~50質量%
【0042】
排ガス浄化用三元触媒100Bにおいて、上記の希土類元素ドープジルコニア系複合酸化物は、構成金属元素としてNd及び/又はPrを、酸化物換算で以下の質量割合で含むものがより好適である。
ZrO2 50~65質量%
Nd2O3 0~48質量%
Pr5O11 0~49質量%
Nd2O3とPr5O11の合計量が35~48質量%
【0043】
排ガス浄化用三元触媒100Bにおいて、母材粒子11の細孔径は、水銀圧入法で100~650nmであることが好ましく、より好ましくは100~300nm、さらに好ましくは110~300nm、特に好ましくは120~200nmである。このとき、母材粒子11上の触媒活性粒子21の耐久処理後の平均粒子径は、母材粒子11の細孔径等によっても変動するが、通常200nm以上230nm以下が好ましく、触媒活性をより高めるとともにシンタリング及び粒成長を抑制する等の観点から、205nm以上がより好ましく、210nm以上がさらに好ましく、225μm以下がより好ましく、220μm以下がさらに好ましい。
【0044】
また、排ガス浄化用三元触媒100Bにおいて、母材粒子11の耐久処理後の平均粒子径D50は、大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、9μm以下がさらに好ましい。
【0045】
また、排ガス浄化用三元触媒100Bにおいて、母材粒子11の耐久処理後のBET比表面積は、高い触媒性能を得る等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が10m2/g以上が好ましく、より好ましくは11m2/g以上、さらに好ましくは12m2/g以上であり、25m2/g以下が好ましく、より好ましくは20m2/g以下、さらに好ましくは16m2/g以下である。
【0046】
母材粒子11は、各種グレードの市販品を用いることができる。例えば、上述した組成を有するセリア系酸素吸蔵放出材料やジルコニア系高耐熱性材料は、当業界で公知の方法で製造することもできる。これらの製造方法は、特に限定されないが、共沈法やアルコキシド法が好ましい。
【0047】
共沈法としては、例えば、セリウム塩及び/又はジルコニウム塩と、必要に応じて配合する他の希土類金属元素や遷移元素等とを所定の化学量論比で混合した水溶液に、アルカリ物質を添加して加水分解させ或いは前駆体を共沈させ、その加水分解生成物或いは共沈物を焼成する製法が好ましい。ここで用いる各種塩の種類は、特に限定されない。一般的には、塩酸塩、オキシ塩酸塩、硝酸塩、オキシ硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等が好ましい。また、アルカリ性物質の種類も、特に限定されない。一般的には、アンモニア水溶液が好ましい。アルコキシド法としては、例えば、セリウムアルコキシド及び/又はジルコニウムアルコキシドと、必要に応じて配合する他の希土類金属元素や遷移元素等とを所定の化学量論比で混合した混合物を加水分解し、その後に焼成する製法が好ましい。ここで用いるアルコキシドの種類は、特に限定されない。一般的には、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシドや、これらのエチレンオキサイド付加物等が好ましい。また、希土類金属元素は、金属アルコキシドとして配合しても、上述した各種塩として配合してもよい。
【0048】
焼成条件は、常法にしたがえばよく、特に限定されない。焼成雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、大気雰囲気のいずれの雰囲気でもよい。焼成温度及び処理時間は、所望する組成及びその化学量論比によって変動するが、生産性等の観点からは、一般的には、150℃以上1300℃以下で1~12時間が好ましく、より好ましくは350℃以上800℃以下で2~4時間である。なお、高温焼成に先立って、真空乾燥機等を用いて減圧乾燥を行い、50℃以上200℃以下で約1~48時間程度の乾燥処理を行うことが好ましい。
【0049】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100においては、上述したとおり、母材粒子11の表面11aに、白金族元素の触媒活性粒子21が高分散に担持されているという複合粒子の構造を有する点に、1つの特徴を有する。このような複合粒子構造を採用することにより、排ガス浄化用三元触媒100は、高温曝露後の触媒性能の劣化が大幅に抑制されている。その理由は定かではないが、比較的に大きな細孔径を有する母材粒子11を用いることにより、触媒活性粒子21が母材粒子11上で互いに接触不可能な一定距離に離間配置され、これにより高温暴露時の母材粒子11上の触媒活性粒子21のシンタリングによる粒成長が抑制されているためと推察される。また、母材粒子11として、比較的に耐熱性に優れるセリア-ジルコニア系複合酸化物やジルコニア系複合酸化物を用いることで、触媒そのものの耐熱性も高められる。これらが相まった結果、三元浄化性能に優れる排ガス浄化用三元触媒100が実現されたものと推察される。但し、作用はこれらに限定されない。
【0050】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100において、母材粒子11上に担持される触媒活性粒子21は、典型的には、主たる触媒活性サイトとして機能する。なお、触媒活性粒子21は、外部環境に応じて金属単体、金属酸化物に変化し得るものである。そのため、触媒活性粒子21は、少なくとも還元性雰囲気において確認されればよく、酸化性雰囲気やストイキ雰囲気における触媒活性粒子21の性状は特に限定されない。ここで本明細書において、還元性雰囲気とは、水素ガス雰囲気下400℃で0.5時間以上、静置した状態を意味する。なお、触媒活性粒子21は、例えば倍率100万倍の走査透過型電子顕微鏡(STEM)、日立ハイテクノロジーズ社製HD-2000等を用いて確認することができる。
【0051】
なお、母材粒子11上の触媒活性粒子21の存在は、走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)による観察、粉末X線回折(XRD:X‐ray Diffraction、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)、X線光電分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy、又はESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)等の各種測定方法により把握することができる。
【0052】
母材粒子11上に担持される白金族元素の触媒活性粒子21の含有量は、所望性能に応じて適宜決定でき、特に限定されないが、リーン環境~ストイキ環境~リッチ環境の全域にわたる触媒性能を向上させ、また低温活性を向上させる等の観点から、排ガス浄化用三元触媒100の総量に対する白金族元素の金属量換算で、0.001~30質量%が好ましく、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは0.3~6質量%である。
【0053】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100は、上述した白金族元素の触媒活性粒子21以外の貴金属元素(金(Au)及び銀(Ag))を含有していてもよい。経済性や安定供給、高温条件での使用等を考慮すると、上述した白金族元素以外の貴金属元素(PM)を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、上述した白金族元素以外の貴金属元素の総量が、排ガス浄化用三元触媒の総量に対して、0質量%以上1.0質量%未満の範囲内にあることを意味し、より好ましくは0質量%以上0.5質量%未満、さらに好ましくは0質量%以上0.3質量%未満である。
【0054】
また、排ガス浄化用三元触媒100の使用態様は、特に限定されず、当業界で公知の態様で使用可能である。例えば、母材粒子11上に白金族元素の触媒活性粒子21が担持された触媒粒子の集合体である触媒粉末のまま用いることができる。また、この触媒粉末を任意の形状に成形して、例えば粒状やペレット状の成形触媒とすることができる。さらに、触媒粉末を触媒担体に保持(担持)させて、一体構造型排ガス浄化用触媒として使用することもできる。ここで用いる触媒担体としては、当業界で公知のものを適宜選択することができる。代表的には、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、その形状も、特に限定されず、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状を選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0055】
上述した排ガス浄化用三元触媒100は、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ジェットエンジン、ボイラー、ガスタービン等の排ガスを浄化するための触媒として用いることができ、内燃機関の排ガス浄化用触媒、とりわけ自動車の排ガス浄化用三元触媒として有用である。
【0056】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100の製造方法は、上述したとおり所定の細孔径を有する母材粒子11上に白金族元素の触媒活性粒子21が担持された複合粒子31が得られる限り、特に限定されない。上述した構成の排ガス浄化用三元触媒100を再現性よく簡易且つ低コストで製造する観点からは、蒸発乾固法(含浸法)等が好ましい。
【0057】
蒸発乾固法としては、上述した水銀圧入法で100~650nmの細孔径を有する母材粒子11に、白金族元素イオンを少なくとも含有する水溶液を含浸させ、その後に熱処理又は化学処理する製法が好ましい。この含浸処理により、白金族元素イオンが、母材粒子11の表面11aに高分散状態で吸着(付着)される。このとき、原料として使用する母材粒子11の平均粒子径D50は、特に限定されないが、0.5~10μmが好ましく、1~5μmがより好ましく、1~3μmがさらに好ましい。ここで、白金族元素イオンは、白金族元素の各種塩として水溶液に配合することができる。ここで用いる各種塩の種類は、特に限定されない。一般的には、硫酸塩、塩酸塩、オキシ塩酸塩、硝酸塩、オキシ硝酸塩、炭酸塩、オキシ炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、塩化物、酸化物、複合酸化物、錯塩等が好ましい。また、水溶液中の白金族元素イオンの含有割合は、得られる排ガス浄化用三元触媒100において白金族元素の触媒活性粒子21が所望の含有割合となるように適宜調整することができ、特に限定されない。また、言うまでもないが、ここで用いる水溶液は、上述した任意成分、例えば他の希土類元素や遷移元素、さらには不可避不純物を含んでいてもよい。
【0058】
含浸処理後、必要に応じて、固液分離処理、水洗処理、例えば大気中50℃以上200℃以下程度の温度で約1~48時間程度、水分を除去する乾燥処理等を常法にしたがって行うことができる。乾燥処理は、自然乾燥でもよいし、ドラム式乾燥機、減圧乾燥機、スプレードライ等の乾燥装置を使用してもよい。また、乾燥処理の際の雰囲気は、大気中、真空中、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中のいずれでもよい。なお、乾燥の前後に、さらに必要に応じて粉砕処理や分級処理等を行ってもよい。また、化学処理を行ってもよく、例えば、上記蒸発乾固法における含浸処理の後に、塩基性成分を用いて白金族元素イオンを母材粒子11の表面11aで加水分解させてもよい。ここで用いる塩基性成分は、アンモニア、エタノールアミン等のアミン類、苛性ソーダ、水酸化ストロンチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。これらの熱処理や化学処理により、ナノオーダーサイズに高分散した白金族元素の触媒活性粒子21が、母材粒子11の表面11aに生成される。
【0059】
焼成条件は、常法にしたがえばよく、特に限定されない。加熱手段は、特に限定されず、例えば電気炉やガス炉等の公知の機器を用いることができる。焼成雰囲気は、酸化性雰囲気、大気雰囲気、還元性雰囲気のいずれでもよく、酸化性雰囲気、大気雰囲気が好ましい。焼成温度及び処理時間は、所望性能によって変動するが、白金族元素の触媒活性粒子21の生成及び生産性等の観点からは、一般的には、500℃以上1100℃以下で0.1~12時間が好ましく、より好ましくは550℃以上800℃以下で0.5~6時間である。
【0060】
かくして得られる排ガス浄化用三元触媒100は、触媒粒子の集合体である粉末のまま使用することができ、また、当業界で公知の触媒や助触媒や触媒担体、当業界で公知の添加剤と混合して使用することができる。さらに、排ガス浄化用三元触媒100は、これを含む組成物を予め調製し、これを任意の所定形状に成形して、粒状やペレット状の成形体(成形触媒)として使用することもできる。なお、成形体の作製時には、各種公知の分散装置、混練装置、成形装置を用いることができる。ここで成形体として用いる場合、成形体中の排ガス浄化用三元触媒100の含有量は、特に限定されないが、総量に対して10質量%以上99質量%以下が好ましく、より好ましく20質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上99質量%以下である。
【0061】
併用可能な公知の触媒や助触媒や触媒担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム等の金属酸化物乃至は金属複合酸化物;ペロブスカイト型酸化物;シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア等のアルミナを含む複合酸化物;バリウム化合物、ゼオライト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、併用する触媒や助触媒や触媒担体の使用割合は、要求性能などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、総量に対して合計で0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、合計で0.05質量%以上10質量%以下がより好ましく、合計で0.1質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。
【0062】
また、併用可能な添加剤としては、各種バインダー、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。バインダーとしては、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されず、成形体の維持に必要な程度の量であれば構わない。なお、上述した添加剤の使用割合は、要求性能などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、総量に対して合計で0.01~20質量%が好ましく、合計で0.05~10質量%がより好ましく、合計で0.1~8質量%がさらに好ましい。
【0063】
上記のようにして得られる排ガス浄化用三元触媒100に、必要に応じて、貴金属元素や白金族元素をさらに担持させてもよい。貴金属元素や白金族元素の担持方法は、公知の手法を適用でき、特に限定されない。例えば、貴金属元素や白金族元素を含む塩の溶液を調製し、排ガス浄化用三元触媒100にこの含塩溶液を含浸させ、必要に応じて乾燥処理を行った後、焼成することにより、貴金属元素や白金族元素の担持を行うことができる。含塩溶液としては、特に限定されないが、硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸塩溶液、塩化物水溶液等が好ましい。また、焼成処理も、特に限定されないが、500℃以上1100℃以下で0.1~12時間が好ましく、より好ましくは550℃以上800℃以下で0.5~6時間である。350℃以上1000℃以下で約1~12時間が好ましい。
【0064】
本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100は、一体構造型排ガス浄化用触媒の触媒層に配合して用いることができる。この一体構造型排ガス浄化用触媒は、触媒担体とこの触媒担体の少なくとも一方の面側に設けられた触媒層とを少なくとも備える積層構造の触媒部材である。このような構成を採用することで、装置への組み込みが容易となる等、種々の用途への適用可能性が増大する。例えば排ガス浄化用途においては、触媒担体としてハニカム構造担体等を用い、ガス流が通過する流路内にこの一体構造型積層触媒部材を設置し、ハニカム構造担体のセル内にガス流を通過させることで、高効率に排ガス浄化を行うことができる。
【0065】
ここで、本明細書において、「触媒担体の少なくとも一方の面側に設けられた」とは、触媒担体の一方の面と触媒層との間に任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在した態様を包含する意味である。すなわち、本明細書において、「一方の面側に設ける」とは、触媒担体と触媒層とが直接載置された態様、触媒担体と触媒層とが任意の他の層を介して離間して配置された態様の双方を含む意味で用いている。また、触媒層は、触媒担体の一面のみに設けられていても、複数の面(例えば、一方の主面及び他方の主面等)に設けられていてもよい。
【0066】
このような一体構造型排ガス浄化用触媒は、例えば、上述したセラミックモノリス担体等の触媒担体に、本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100を含有する触媒層を設けることで実施可能である。また、一体構造型排ガス浄化用触媒の触媒エリアは、触媒層が1つのみの単層であっても、2以上の触媒層からなる積層体であっても、1以上の触媒層と当業界で公知の1以上の他の層とを組み合わせた積層体のいずれでもよい。例えば、一体構造型排ガス浄化用触媒が触媒担体上に酸素貯蔵層及び触媒層を少なくとも有する多層構成の場合には、少なくとも、その触媒層に本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100を含有させることで、浄化性能に優れる一体構造型排ガス浄化用触媒とすることができる。ここで、排気ガス規制の強化の趨勢を考慮すると、層構成は、2層以上が好ましい。
【0067】
上述した層構成を有する一体構造型排ガス浄化用触媒は、常法にしたがい製造することができる。例えば、上述した排ガス浄化用三元触媒100を触媒担体の表面に被覆(担持)させることで得ることができる。触媒担体へのスラリー状混合物の付与方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。そして、スラリー状混合物の付与後においては、常法にしたがい乾燥や焼成を行うことにより、本実施形態の排ガス浄化用三元触媒を含有する触媒層を備える一体構造型排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0068】
具体例としては、例えば、上述した排ガス浄化用三元触媒100と水系媒体と必要に応じて当業界で公知のバインダー、他の触媒、助触媒、OSC材、各種母材粒子、添加剤等とを所望の配合割合で混合してスラリー状混合物を調製し、得られたスラリー状混合物をハニカム構造担体等の触媒担体の表面に付与し、乾燥及び焼成することで、上述した層構成を有する一体構造型排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0069】
スラリー状混合物の調製時に用いる水系媒体は、スラリー中で排ガス浄化用触媒が均一に分散できる量を用いればよい。このとき、必要に応じてpH調整のための酸や塩基を配合したり、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤や分散用樹脂等を配合したりすることができる。上述した排ガス浄化用三元触媒を支持体に強固に付着させ或いは結合させる観点からは、上述したバインダー等を用いることが好ましい。また、スラリーの混合方法としては、ボールミル等による粉砕混合等、公知の粉砕方法又は混合方法を適用することができる。
【0070】
触媒担体上にスラリー状混合物を付与した後においては、常法にしたがい乾燥や焼成を行うことができる。なお、乾燥温度は、特に限定されないが、例えば70~200℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。また、焼成温度は、特に限定されないが、例えば300~650℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。このとき用いる加熱手段については、例えば電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行うことができる。
【0071】
なお、上述した一体型構造型触媒において、触媒層の層構成は、単層、複層のいずれでもよいが、自動車排ガス用途の場合には、排気ガス規制の強化の趨勢等を考慮し触媒性能を高める観点からは、二層以上の積層構造が好ましい。このとき、上述した排ガス浄化用三元触媒100の総被覆量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、20~350g/Lが好ましく、50~300g/Lがより好ましい。
【0072】
上述した一体構造型排ガス浄化用触媒は、各種エンジンの排気系に配置することができる。一体構造型排ガス浄化用触媒の設置個数及び設置箇所は、排ガスの規制に応じて適宜設計できる。例えば、排ガスの規制が厳しい場合には、設置箇所を2以上とし、設置箇所は排気系の直下触媒の後方の床下位置に配置することができる。そして、本実施形態の排ガス浄化用三元触媒100を含有する触媒組成物や一体構造型排ガス浄化用触媒によれば、低温での始動時のみならず、高温での高速走行時を含む種々の走行仕様において、CO、HC、NOxの浄化反応に優れた効果を発揮することができる。
【実施例】
【0073】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0074】
[母材粒子の細孔分布の測定]
水銀圧入法により、母材粒子の細孔分布を求めた。ここでは、母材粒子0.2gをサンプルとして用い、水銀ポロシメーター(Thermo Fisher Scientific社製、商品名:PASCAL140及びPASCAL440)を用いて、水銀の接触角130°及び表面張力484dyn/cmの条件下にて細孔容積を測定し、このとき得られる細孔径-微分細孔容量の細孔分布曲線におけるピークトップ位置の値(モード径)を、母材粒子の細孔径とした。
【0075】
[母材粒子の平均粒子径D50]
レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-7100等)を用いて、耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒の粒度分布を測定し、そのメディアン径を母材粒子の平均粒子径D50とした。
【0076】
[触媒活性粒子の平均粒子径]
耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒の倍率1万倍のSEM画像において、無作為に抽出した20点の平均値を算出し、触媒活性粒子の平均粒子径とした。
【0077】
[BET比表面積の測定]
BET比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置(商品名:BELSORP-mini II、マイクロトラック・ベル株式会社製)及び解析用ソフトウェア(商品名:BEL_Master、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、BET一点法により、耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒のBET比表面積を求めた。
【0078】
(実施例1)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が601nmのNd及びPr固溶セリア-ジルコニア系複合酸化物(Nd/Pr-CZと記載、Nd2O3:7質量%、Pr5O11:7質量%、CeO2:28質量%、ZrO2:58質量%、D50=3.40μm)を用いた。次に、硝酸パラジウム(II)溶液(PdO換算で20質量%含有)を調製し、上記Nd/Pr-CZ母材粒子にこの硝酸パラジウム(II)溶液を含浸させ、600℃で30分間焼成して、実施例1のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)を得た。その後、得られたパウダー触媒を炉内で静置し、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行うことにより、耐久処理後の実施例1の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=3.38μm)を得た。
【0079】
(実施例2)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が285nmのNd及びPr固溶セリア-ジルコニア系複合酸化物(Nd/Pr-CZと記載、Nd2O3:7質量%、Pr5O11:7質量%、CeO2:28質量%、ZrO2:58質量%、D50=1.27μm)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、実施例2のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)及び耐久処理後の実施例2の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=3.63μm)を得た。
【0080】
(実施例3)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が132nmのNd及びPr固溶セリア-ジルコニア系複合酸化物(Nd/Pr-CZと記載、Nd2O3:7質量%、Pr5O11:7質量%、CeO2:28質量%、ZrO2:58質量%、D50=2.78μm)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、実施例3のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)及び耐久処理後の実施例3の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=7.66μm)を得た。
【0081】
(比較例1)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が49nmのNd及びPr固溶セリア-ジルコニア系複合酸化物(Nd/Pr-CZと記載、Nd2O3:7質量%、Pr5O11:7質量%、CeO2:28質量%、ZrO2:58質量%、D50=10.42μm)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、比較例1のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)及び耐久処理後の比較例1の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=10.04μm)を得た。
【0082】
得られた耐久処理後の実施例1~3及び比較例1の排ガス浄化用三元触媒について、上記の各種物性の測定を行った。表1に結果を示す。
【表1】
【0083】
図2に、実施例1~3及び比較例1の耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒における、母材粒子の細孔径-触媒活性粒子の平均粒子径のグラフを示す。
図2から明らかなとおり、母材粒子の細孔径の増大にともなって、触媒活性粒子の平均粒子径が小さくなる傾向にあることが確認された。
【0084】
<ウォールフロー型の一体構造型触媒>
次に、実施例1~3及び比較例1のパウダー触媒をそれぞれ用いて、以下の手順で、ハニカム担体1上にOSC層及び触媒層をこの順に備える、実施例1~3及び比較例1のウォールフロー型の一体構造型触媒をそれぞれ作製した。
まず、硝酸ロジウム溶液をRh質量換算で0.2質量部量り取り、純水で希釈して、OSC材(セリア-ジルコニア粉末、BET比表面積70m2/g、細孔径15nm、平均粒子径D50=10μm)39.8質量部に含浸担持させる。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.5質量%Rh担持セリア-ジルコニア粉末(Rh担持OSC材)を調製する。
得られたRh担持OSC材50質量部と、γ-アルミナ粉末(BET比表面積150m2/g、細孔径15nm、平均粒子径D50=35μm)50質量部とを混合し、純水で希釈して、固形分濃度が20質量%のOSC用スラリーを調製する。得られたOSC用スラリーを、ウォッシュコート法によりハニカム担体1上に塗布し乾燥させることでOSC層を作製する。
次いで、硝酸パラジウム溶液をPd質量換算で0.8質量部量り取り、純水で希釈して、γ-アルミナ粉末(BET比表面積150m2/g、細孔径15nm、平均粒子径D50=10μm)39.8質量部に含浸担持させる。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、2.0質量%Pd担持アルミナ粉末を調製する。また、上記γ-アルミナ粉末に純水を加え、湿式ミリング装置で粉砕処理を行ない、平均粒子径D50が1.5μmのアルミナ分散スラリーを得る。そこに結晶子径450nmの硫酸バリウム152gを添加し、ミキサーで分散混合し、得られた混合スラリーをスプレードライヤーで平均粒子径15μmまで造粒させて、さらに450℃、1時間の焼成を行なうことで、15.2質量%硫酸バリウム-アルミナ粉末を調製する。
得られたPd担持アルミナ粉末49質量部と、実施例1~3又は比較例1のパウダー触媒49質量部と、得られた硫酸バリウム-アルミナ2質量部とを混合し、純水で希釈して、固形分濃度が20質量%の触媒層用スラリーを調製する。得られた触媒層用スラリーを、ウォッシュコート法によりハニカム担体1上のOSC層上に塗布し乾燥させることで触媒層を作製する。
その後、得られた積層体を耐久炉内に静置し、高温曝露処理(耐久処理)を行い、ハニカム担体1上にOSC層及び触媒層をこの順に備える、実施例1~3及び比較例1のウォールフロー型の一体構造型触媒をそれぞれ得る。なお、高温曝露処理としては、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行う。
〔ハニカム担体1〕
ハニカム担体1:コージェライト製のウォールフロー型ハニカム基材
φ1 inch x 50 mmL (25 cc), 340cpsi/10mil
触媒担持量 :ハニカム担体の容積あたりの触媒量150 g/L
【0085】
<フロースルー型の一体構造型触媒>
次いで、実施例1~3及び比較例1のパウダー触媒をそれぞれ用いて、以下の手順で、ハニカム担体1上にOSC層及び触媒層をこの順に備える、実施例1~3及び比較例1のフロースルー型の一体構造型触媒をそれぞれ作製した。
ここでは、ハニカム担体1に代えて下記のハニカム担体2を用いる以外は、ウォールフロー型の一体構造型触媒の作製方法と同様の手順で行い、実施例1~3及び比較例1のフロースルー型の一体構造型触媒をそれぞれ得る。なお、高温曝露処理としては、ウォールフロー型の一体構造型触媒の作製方法と同様に、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行う。
〔ハニカム担体2〕
ハニカム担体2:コージェライト製のフロースルー型ハニカム基材
φ1 inch x 50 mmL (25 cc), 600 cpsi/3.5mil
触媒担持量 :ハニカム担体の容積あたりの触媒量150 g/L
【0086】
[排ガス浄化率のラボ測定(CO、HC、NOx)]
次に、実施例2及び比較例1のパウダー触媒を用いて、排ガス浄化性能を評価した。ここでは、以下の手順で、ウォッシュコート法によりハニカム担体上に下地層及び触媒層をそれぞれ塗布し乾燥させた後、耐久炉内で高温曝露処理(耐久処理)を行い、実施例2及び比較例1の排ガス浄化用三元触媒サンプル(一体型構造型触媒)をそれぞれ作製した。なお、高温曝露処理としては、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行った。
まず、γ-アルミナ粉末(BET比表面積150m2/g、細孔径15nm、平均粒子径D50=35μm)50質量部を純水で希釈して、固形分濃度が20質量%の下地層用スラリーを調製した。得られた下地層用スラリーを、ウォッシュコート法によりハニカム担体1上に塗布し乾燥させることで下地層を作製した。
次いで、硝酸パラジウム溶液をPd質量換算で0.8質量部量り取り、純水で希釈して、γ-アルミナ粉末(BET比表面積150m2/g、細孔径15nm、平均粒子径D50=10μm)39.8質量部に含浸担持させた。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、2.0質量%Pd担持アルミナ粉末を調製した。また、上記γ-アルミナ粉末に純水を加え、湿式ミリング装置で粉砕処理を行ない、平均粒子径D50が1.5μmのアルミナ分散スラリーを得た。そこに結晶子径450nmの硫酸バリウム152gを添加し、ミキサーで分散混合し、得られた混合スラリーをスプレードライヤーで平均粒子径15μmまで造粒させて、さらに450℃、1時間の焼成を行なうことで、15.2質量%硫酸バリウム-アルミナ粉末を調製した。
得られたPd担持アルミナ粉末49質量部と、実施例2又は比較例1のパウダー触媒49質量部と、得られた硫酸バリウム-アルミナ2質量部とを混合し、純水で希釈して、固形分濃度が20質量%の触媒層用スラリーを調製した。得られた触媒層用スラリーを、ウォッシュコート法によりハニカム担体3上の下地層上に塗布し乾燥させることで触媒層を作製した。
その後、得られた積層体を耐久炉内に静置し、高温曝露処理(耐久処理)を行い、ハニカム担体3上に下地層及び触媒層をこの順に備える、実施例2及び比較例1の一体構造型触媒をそれぞれ得た。なお、高温曝露処理としては、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行った。
〔ハニカム担体3〕
ハニカム担体3:コージェライト製のフロースルー型ハニカム基材
φ1 inch x 50 mmL (25 cc), 600 cpsi/3.5mil
触媒担持量 :ハニカム担体の容積あたりの触媒量150 g/L
【0087】
次に、実施例2及び比較例1の一体構造型触媒について、CO、HC及びNOx浄化性能をそれぞれ評価した。ここでは、炉内で大気雰囲気下、1050℃、12時間の熱処理をした性能評価用サンプルを、モデルガス反応装置の反応容器内に装着した。下記に示す条件にてモデルガス評価を実施し、ライトオフ性能(浄化率が50%に達する温度)を測定した。ここで、NOxT50とは、NOxの50%が浄化された時の触媒床温度を意味し、COT50とは、COの50%が浄化された時の触媒床温度を意味し、HCT50とは、HCの50%が浄化された時の触媒床温度を意味する。評価結果を、
図3に示す。
【0088】
[モデルガス評価条件]
モデルガス装置:HORIBA社製SIGU
分析計 :HORIBA社製MEXA:Motor Exahust Gas Analyzer
【0089】
【0090】
(実施例4)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が136nmのPr固溶ジルコニア系複合酸化物(Pr-Zと記載、Pr5O11:40質量%、ZrO2:60質量%、D50=1.61μm)を用いた。次に、硝酸パラジウム(II)溶液(PdO換算で20質量%含有)を調製し、上記Pr-Z母材粒子にこの硝酸パラジウム(II)溶液を含浸させ、600℃で30分間焼成して、実施例4のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)を得た。その後、得られたパウダー触媒を炉内で静置し、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行うことにより、耐久処理後の実施例4の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=6.36μm)を得た。
【0091】
(比較例2)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が25nmのPr固溶ジルコニア系複合酸化物(Pr-Zと記載、Pr5O11:40質量%、ZrO2:60質量%、D50=6.97μm)を用いる以外は、実施例4と同様に行い、比較例2のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)及び耐久処理後の比較例2の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=7.23μm)を得た。
【0092】
(実施例5)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が172nmのNd固溶ジルコニア系複合酸化物(Nd-Zと記載、Nd2O3:42.5質量%、ZrO2:57.5質量%、D50=1.74μm)を用いた。次に、硝酸パラジウム(II)溶液(PdO換算で20質量%含有)を調製し、上記Nd-Z母材粒子にこの硝酸パラジウム(II)溶液を含浸させ、600℃で30分間焼成して、実施例5のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)を得た。その後、得られたパウダー触媒を炉内で静置し、外部雰囲気をA/F=12.8、及び酸素雰囲気に順次切り替えを繰り返しながら、1050℃で12時間の熱処理を行うことにより、耐久処理後の実施例5の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=3.45μm)を得た。
【0093】
(比較例3)
母材粒子として、水銀圧入法で細孔径が21nmのNd固溶ジルコニア系複合酸化物(Nd-Zと記載、Nd2O3:42.5質量%、ZrO2:57.5質量%、D50=7.37μm)を用いる以外は、実施例5と同様に行い、比較例3のパウダー触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%)及び耐久処理後の比較例3の排ガス浄化用三元触媒(Pd換算の担持量:2.0質量%、D50=9.67μm)を得た。
【0094】
得られた耐久処理後の実施例4~5及び比較例2~3の排ガス浄化用三元触媒について、上記の各種物性の測定を行った。表3に結果を示す。
【0095】
【0096】
また、
図4に、実施例4~5及び比較例2~3の耐久処理後の排ガス浄化用三元触媒における、母材粒子の細孔径-触媒活性粒子の平均粒子径のグラフを示す。
図4から明らかなとおり、母材粒子の細孔径の増大にともなって、触媒活性粒子の平均粒子径が小さくなる傾向にあることが確認された。
【0097】
<ウォールフロー型の一体構造型触媒>
実施例1のパウダー触媒に代えて、実施例4~5又は比較例2~3のパウダー触媒をそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様に、ハニカム担体1上にOSC層及び触媒層をこの順に備える、実施例4~5及び比較例2~3のウォールフロー型の一体構造型触媒をそれぞれ作製した。
【0098】
<フロースルー型の一体構造型触媒>
実施例1のパウダー触媒に代えて、実施例4~5又は比較例2~3のパウダー触媒をそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様に、ハニカム担体2上にOSC層及び触媒層をこの順に備える、実施例4~5及び比較例2~3のフロースルー型の一体構造型触媒をそれぞれ作製した。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の排ガス浄化用三元触媒及び一体構造型排ガス浄化用触媒は、排ガス中のNOx、CO、HC等を削減する三元触媒として、広く且つ有効に利用することができ、ディーゼルエンジン用途のみならず、ディーゼルエンジンよりも耐熱性が要求されるガソリンエンジン用途において殊に有効に利用可能である。また、本発明の排ガス浄化用三元触媒は、エンジン直下型触媒コンバータやタンデム配置の直下型触媒コンバータ等のTWCとして有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 ・・・排ガス浄化用三元触媒
11 ・・・母材粒子
11a・・・表面
21 ・・・触媒活性粒子
31 ・・・複合粒子