(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】配電線の三相接続順を判定する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/55 20200101AFI20230117BHJP
G01R 29/18 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G01R31/55
G01R29/18 C
(21)【出願番号】P 2018177047
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125935(JP,A)
【文献】特開2011-242195(JP,A)
【文献】特開昭57-168171(JP,A)
【文献】特開2003-185693(JP,A)
【文献】特開昭51-63482(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138785(WO,A1)
【文献】野村英生;小嶋利朗;横井博徳;増田康夫;今井孝;水谷忠;藤井章;佐藤一彦,「新型配電線自動化システムの開発」,愛知電機技報,愛知電機株式会社,2005年05月24日,No. 26,pp. 4-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 29/18
H02H 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相配電系統に
設置された配電自動化システムの親局装置
からの指令によって、配電系統上に配置されている自動電圧調整器によって配電線の電圧を
一相毎に変動させることで自動電圧調整器を信号源として機能させ、当該自動電圧調整器の設置点以降にある自動開閉器の監視・制御を行う配電自動化システムの子局装置で測定した各相の電圧変動データを親局装置に送信し、順次各相で同様の操作を行うことで親局装置にて配電線に設置された各子局装置間の三相接続順を判定する方法。
【請求項2】
前記自動電圧調整器を配電線の各相に異なる電圧の変動パターンを発生させる信号源として機能させ、当該自動電圧調整器の設置点以降にある自動開閉器と当該自動電圧調整器の監視・制御を行う配電自動化システムの子局装置で測定した各相の電圧変動データを親局装置に送信し、順次各相で同様の操作を行うことで親局装置にて自動電圧調整器で発生させた電圧の変動パターンと各子局装置間の各相における電圧変動データを照合することを特徴とする請求項1記載の三相接続順を判定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相高圧配電系統を管轄する電力会社の営業所等に設置された親局装置と高圧配電線の複数箇所に設置された子局装置により、各子局装置間の配電線路の三相接続順を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線の系統連系工事や電圧不平衡の改善をする際は、連系地点や電圧不平衡箇所の相を識別するために現場で各相の接続状態を目視にて確認していた。
【0003】
電柱に電線を架線した「架空配電線」においても目視により各相の接続状態を確認しているが、電線と樹木や建物との離隔距離、懸架の制約により電線を縦型配列したり、架空配電線の各相のインダクタンスや静電容量の不平衡を解消するために相を入れ替えて配列(以下、捻架)したりしている場所があるため、目視で相の順番を確認するのは容易でなく手間と時間が多大に必要となる。また、ケーブルを地中に埋設した「地中配電線」では電線を直接目視によって確認できない。
【0004】
他方、このような問題を解決できる手段として、下記特許文献1のように、配電系統の一端に設けた送信機から配電線路の相間に信号(相間毎に1周期の発生回数が異なる断続信号)を注入して送信し、配電線の他端に設けた受信機による受信信号から送信側及び受信側の各相の対応関係を検出して相判定を行う相判別装置が提案されている。この判別装置は送信機と受信機間の相別を判定するので、目視による確認が不要になり配電線の相接続順の判定が容易にできるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然るに、上記特許文献1記載の解決手段において、配電線の相接続順の判定を行うには、送信機と受信機からなる専用の相判別装置と、この装置を配電系統に設置するための作業が必要となる問題点がある。
【0007】
本発明は、前述の問題点を解決できるものであり、相接続順を判定するための専用措置を必要とすることなく、既存の配電用設備を使用することで簡単に相接続順の判定を行うことのできる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、三相配電系統に設置された配電自動化システムの親局装置からの指令によって、配電系統上に配置されている自動電圧調整器によって配電線の電圧を一相毎に変動させることで自動電圧調整器を信号源として機能させ、当該自動電圧調整器の設置点以降にある自動開閉器の監視・制御を行う配電自動化システムの子局装置で測定した各相の電圧変動データを親局装置に送信し、順次各相で同様の操作を行うことで親局装置にて各子局装置間の配電線の三相接続順を判定することに特徴を有する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1の配電線の電圧を一相毎に変動させる方法として、自動電圧調整器で配電線の各相に異なる電圧の変動パターンを発生させ、当該自動電圧調整器の設置点以降にある自動開閉器と当該自動電圧調整器の監視・制御を行う配電自動化システムの子局装置で測定した各相の電圧変動データを親局装置に送信し、順次各相で同様の操作を行うことで親局装置にて自動電圧調整器で発生させた電圧の変動パターンと各子局装置間の各相における電圧変動データを照合して、配電線の三相接続順を判定することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、自動電圧調整器を一相毎に電圧を変化させる信号源にすることで、親局装置が当該自動電圧調整器以降にある子局装置で測定した電圧変動データを受け取り、各子局間の接続順を判定できるので、既存の配電用設備のみで簡単に配電線の三相接続順を判定することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、自動電圧調整器を配電線の一相毎に異なる電圧の変動パターンを発生させる信号源とすることで、親局装置が当該自動電圧調整器以降にある子局装置で測定した電圧変動データを受け取り、各子局装置の各相における前記電圧変動データを前記自動電圧調整器で発生させた電圧の変動パターンと照合して三相接続順を判定できるので、既存の配電用設備のみで正確に配電線の三相接続順を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る三相の配電系統を示すシステム構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る三相の接続順を確認する処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例2に係る三相の接続順を確認する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例1について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る配電系統の要部構成を示すシステム図である。
図1において、Aは電力会社の営業所Bの管轄エリア内にある配電用変電所であり、配電用変電所A内には負荷時タップ切換変圧器1、高圧分岐遮断器(フィーダ遮断器)2、光通信装置3が設置されている。
【0014】
そして、営業所Bの管轄エリア内の配電線4に設置された自動開閉器5a~5e及び自動電圧調整器6には、それぞれの動作や接続された配電線4の各相の電圧・位相差・地絡などを監視する配電自動化システムの子局装置7a~7fが接続される。営業所B内に設置された配電自動化システムの親局装置8は、光通信装置3及び高速光ネットワーク9を通して子局装置7a~7fと通信を行うことで、子局装置7a~7fに接続された自動開閉器5a~5e及び自動電圧調整器6の監視制御を行う。
【0015】
前記配電系統において、系統連系工事や電圧不平衡の改善をする際は、連系地点や電圧不平衡箇所の各相を識別する必要があるため親局装置8の操作端末において、
図2に示す処理操作を行う。まずS1で三相接続順を調査する区間を指定する。なお、今回は
図1に示す自動開閉器5b以降の区間を調査区間として三相接続順を確認する場合について説明する。
【0016】
S2では調査区間の直前にある自動電圧調整器6を選択し、S3で営業所のオペレータが、親局装置8の操作端末で相判定の実行操作を行う。すると、S4で親局装置8から高速光ネットワーク9を通じて、子局装置7bに自動電圧調整器6で配電線4のU相の電圧を変える指令(例えば、自動電圧調整器6がSVRやTVRの場合には、許容電圧内に収まる範囲での1タップ分の昇圧又は降圧指令)が送信され、自動電圧調整器6においては指令に従い配電線4のU相の電圧を変化させる。2~3秒後には親局装置8からU相の電圧を戻す指令(例えば、自動電圧調整器6がSVRやTVRの場合には、変更前のタップに戻す指令)が送信され、自動電圧調整器6において指令に従って配電線4のU相の電圧が元に戻される。
【0017】
子局装置7a~7fは常時、自動開閉器5a~5e及び自動電圧調整器6に接続されている配電線4のU相、V相、W相の電圧、位相差、地絡などを測定し測定データを親局装置8に送信しているので、S5でS4の処理操作による自動開閉器5b~5eの配電線4各相の電圧変動データが、子局装置7c~7fから高速光ネットワーク9経由で送信され、親局装置8で受信される。
【0018】
S6では親局装置8から自動電圧調整器6にV相の電圧を変える指令が送信され、自動電圧調整器6においては指令に従い配電線4のV相の電圧を変化させる。2~3秒後には親局装置8からV相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において配電線4のV相の電圧が元に戻される。
【0019】
S7では、S6の処理操作による自動開閉器5b~5eの配電線4各相の電圧変動データが、子局装置7c~7fから高速光ネットワーク9経由で送信され、親局装置8で受信される。
【0020】
S8では親局装置8から自動電圧調整器6にW相の電圧を変える指令が送信され、自動電圧調整器6においては指令に従い配電線4のW相の電圧を変化させる。2~3秒後には親局装置8からW相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において配電線4のW相の電圧が元に戻される。
【0021】
S9では、S8の処理操作による自動開閉器5b~5eの配電線4各相の電圧変動データが、子局装置7c~7fから高速光ネットワーク9経由で送信され親局装置8で受信される。
【0022】
S10で親局装置8はS5、S7、S9において子局装置7c~7fから受信した配電線4各相の電圧変動データを基にして、各子局間の配電線路の三相接続順の解析を行う。
【0023】
S11で親局装置8は一連の「相判定」を終了し、S12で解析結果を親局装置8の操作端末の画面上に表示する。
【0024】
このように親局装置8からの指令により自動電圧調整器6において、順番に配電線4のU相、V相、W相の電圧を変える操作を行い、S10でU相、V相、W相の電圧を変更した時に子局装置7c~7fから送信された電圧変動データを親局装置8にて解析することで、各自動開閉器の三相の接続順の判定をすることができる。
【0025】
例えば、U相の電圧を変えた時に、自動開閉器5b~5cではU相の電圧が変化しているが、自動開閉器5dではV相の電圧が変化し、自動開閉器5eではW相の電圧が変化していた場合は、自動開閉器5cと自動開閉器5d間ではU相がV相に捻架され、自動開閉器5dと自動開閉器5e間ではV相がW相に捻架されていることが分かる。
【0026】
また、V相の電圧を変えた時に、自動開閉器5b~5cではV相の電圧が変化し、自動開閉器5dと自動開閉器5e間ではU相の電圧が変化していた場合は、自動開閉器5cと自動開閉器5d間で捻架によりU相とV相の接続順番が入れ違っていることが分かる。
【0027】
さらに、W相の電圧を変えた時に、自動開閉器5b~5dではW相の電圧が変化しているが、自動開閉器5eでV相の電圧が変化していた場合は、自動開閉器5dと自動開閉器5e間で捻架によりV相とW相の接続順番が入れ違っていることが分かる。
【0028】
続いて、本発明の実施例2について
図1及び
図3を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る配電系統の要部構成を示すシステム図であり、各符号の内容は、実施例1と同じである。
【0029】
前記配電系統において、系統連系工事や電圧不平衡の改善をする際は、連系地点や電圧不平衡箇所の各相を識別する必要があるため親局装置8の操作端末において、
図3に示す処理操作を行う。まずS21で三相接続順を調査する区間を指定する。なお、実施例2においても、
図1に示す自動開閉器5b以降の区間を調査区間として三相接続順を確認する場合について説明する。
【0030】
S22では調査区間の直前にある自動電圧調整器6を選択し、S23で営業所のオペレータが、親局装置8の操作端末で相判定の実行操作を行う。すると、S24で親局装置8から高速光ネットワーク9を通じて、子局装置7bに自動電圧調整器6で配電線4のU相の電圧を変える指令(例えば、自動電圧調整器6がSVRやTVRの場合には、許容電圧内に収まる範囲での1タップ分の昇圧又は降圧指令)が送信され、自動電圧調調整器6においては指令に従い配電線4のU相の電圧を変化させる。2秒後には親局装置8からU相の電圧を戻す指令(例えば、自動電圧調整器6がSVRやTVRの場合には、変更前のタップに戻す指令)が送信され、自動電圧調整器6において指令に従って配電線4のU相の電圧が元に戻される。さらに2秒後には再度配電線4のU相の電圧を変える指令が送信され、その2秒後には親局装置8からU相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において指令に従って配電線4のU相の電圧が元に戻される。
【0031】
子局装置7a~7fは常時、自動開閉器5a~5e及び自動電圧調整器6に接続されている配電線4のU相、V相、W相の電圧、位相差、地絡などを測定し測定データを親局装置8に送信しているので、S25でS24の処理操作による自動開閉器5b~5e及び自動電圧調整器6の配電線4各相の電圧変動データが、子局装置7b~7fから高速光ネットワーク9経由で送信され、親局装置8で受信される。
【0032】
S26では親局装置8から自動電圧調整器6にV相の電圧を変える指令が送信され、自動電圧調整器6においては指令に従い配電線4のV相の電圧を変化させる。3秒後には親局装置8からV相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において配電線4のV相の電圧が元に戻される。さらに3秒後には再度配電線4のV相の電圧を変える指令が送信され、その3秒後には親局装置8からV相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において指令に従って配電線4のU相の電圧が元に戻される。
【0033】
S27では、S26の処理操作による自動開閉器5b~5e及び自動電圧調整器6の配電線4各相の電圧変動データが、子局装置7b~7fから高速光ネットワーク9経由で送信され、親局装置8で受信される。
【0034】
S28では親局装置8から自動電圧調整器6にW相の電圧を変える指令が送信され、自動電圧調整器6においては指令に従い配電線4のW相の電圧を変化させる。4秒後には親局装置8からW相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において配電線4のW相の電圧が元に戻される。さらに4秒後には再度配電線4のW相の電圧を変える指令が送信され、その4秒後には親局装置8からW相の電圧を戻す指令が送信され、自動電圧調整器6において指令に従って配電線4のU相の電圧が元に戻される。
【0035】
S29では、S28の処理操作による自動開閉器5b~5e及び自動電圧調整器6の配電線4各相の電圧変動データが、子局装置7b~7fから高速光ネットワーク9経由で送信され親局装置8で受信される。
【0036】
S30で親局装置8はS25、S27、S29において子局装置7c~7fから受信した配電線4各相の電圧変動データをS24、S26、S28で自動電圧調整器6にて発生させた電圧の変動パターン(子局装置7bで測定した電圧変動データ)と照合して、各子局間の配電線路の三相接続順の解析を行う。
【0037】
S31で親局装置8は一連の「相判定」を終了し、S32で解析結果を親局装置8の操作端末の画面上に表示する。
【0038】
このように親局装置8からの指令により自動電圧調整器6において、順番に配電線4のU相、V相、W相に異なる電圧の変動パターン(電圧を昇圧又は降圧させる時間と電圧を戻す時間の間隔をU相、V相、W相で変動させる)を発生させる操作を行う。この操作により、S30で親局装置8が子局装置7c~7fから送信された各相の電圧変動データと自動電圧調整器6のU相、V相、W相で発生させた電圧の変動パターン(子局装置7bで測定したU相、V相、W相の電圧変動データ)を照合して、自動電圧調整器6のU相、V相、W相の電圧変動が各子局装置のどの相で測定されたかを正確に判別できるので、各子局装置間の三相接続順を正確に判定することができる。
【0039】
親局装置8でのS30における判定方法は、実施例1と同じで自動電圧調整器6のU相、V相、W相でそれぞれ異なる電圧の変動パターンを発生させ、自動開閉器5b~5cのどの相で自動電圧調整器6のU相、V相、W相のどの電圧の変動パターンが測定されたかを解析する(例えば、V相に3秒間隔で電圧が変動するように電圧変動の指令を実施した時に、自動開閉器5b~5cではV相で3秒間隔の電圧変動が測定され、自動開閉器5dと自動開閉器5e間ではU相で3秒間隔の電圧変動が測定された場合は、自動開閉器5cと自動開閉器5d間でV相からU相に捻架されている)ことで、確実に各子局装置間の配電線路の三相接続順の判定をする。
【0040】
以上説明したように、本発明の三相接続順の判定方法によれば、従来のように、接続順を確認するために送信機と受信機からなる専用の相判別装置を必要とすることなく、既設の配電用設備を使用して簡単な方法によって配電線路の三相の接続順を判定することができる。
【0041】
なお、上記実施例1及び実施例2において、子局装置は三相全ての電圧を計測して親局装置に通知しているが、電圧が変動した相のみの電圧を測定して親局装置に通知することで、三相の接続順を判定するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、高圧配電線の系統連系工事や電圧不平衡の改善をする際に、連系地点や電圧不平衡箇所の配電線の相の接続順を判定するのに利用される。
【符号の説明】
【0043】
1 負荷時タップ切換変圧器
2 高圧分岐遮断器(フィーダ遮断器)
3 光通信装置
4 配電線
5a、5b、5c、5d、5e 自動開閉器
6 自動電圧調整器
7a、7b、7c、7d、7e、7f 配電自動化システムの子局装置
8 配電自動化システムの親局装置
9 高速光ネットワーク
A 配電用変電所
B 電力会社の営業所