(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20230117BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230117BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
F01N3/20 B
F01N3/24 E
F01N3/025 101
(21)【出願番号】P 2018196535
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 義久
(72)【発明者】
【氏名】澤田 亨
(72)【発明者】
【氏名】矢島 渉自
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218605(JP,A)
【文献】特開2017-172551(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003067(WO,A1)
【文献】特開2018-003626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/24
F01N 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路の途中に、排気中に含まれる炭化水素及び一酸化炭素を酸化して浄化する酸化触媒が配置され、
前記排気通路における前記酸化触媒よりも下流側に、排気中に含まれる微粒子を捕集するパティキュレートフィルタが配置され、
前記排気通路において前記酸化触媒よりも上流側に前記排気通路内に燃料を添加する燃料添加弁が取り付けられている内燃機関に適用され、
前記燃料添加弁に燃料を添加させることにより前記パティキュレートフィルタに捕集されている微粒子を燃焼させるフィルタ再生処理を実行可能な制御装置であって、
前記酸化触媒の温度を、当該酸化触媒の活性化温度よりも高い温度であって前記酸化触媒に固着した堆積物を燃焼可能な温度として定められた規定温度以上にする触媒再生処理を実行可能であ
り、
前記フィルタ再生処理を実行中、前記排気通路における前記パティキュレートフィルタよりも下流側の排気空燃比が予め定められた値よりも燃料リッチである場合に、前記フィルタ再生処理を終了し、前記触媒再生処理を実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記触媒再生処理を実行後に前記フィルタ再生処理での燃料の点火量よりも少ない添加量で前記燃料添加弁に燃料を添加させ、その後、前記フィルタの温度が予め定められた所定温度よりも高くならない場合には、再び前記触媒再生処理を実行する
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の内燃機関において排気通路の途中には、排気中に含まれる炭化水素や一酸化炭素を酸化して浄化する酸化触媒が配置されている。排気通路において酸化触媒よりも下流側には、排気中に含まれる微粒子を捕集するパティキュレートフィルタが配置されている。排気通路において酸化触媒よりも上流側には、排気通路内に燃料を添加する燃料添加弁が取り付けられている。特許文献1の内燃機関においては、パティキュレートフィルタに捕集されている微粒子の量が一定量を超えていると推定される場合に、燃料添加弁から排気通路内に燃料が添加される。このように排気通路内に燃料が添加されることで、パティキュレートフィルタを流通する排気の温度が高くなる。そして、その高温の排気によって、パティキュレートフィルタに捕集されている微粒子が燃焼されて、パティキュレートフィルタが再生される。
【0003】
また、特許文献1の内燃機関においては、パティキュレートフィルタの再生時において排気中に白煙が生じない排気空燃比(A/F)の限界値を算出する。そして、排気空燃比が算出した限界値よりも排気空燃比がリーンとなるように、燃料添加弁からの燃料の添加量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の内燃機関においては、酸化触媒の触媒性能が低下すると排気空燃比の限界値がリーン側の値として算出され、燃料添加弁から添加できる燃料の添加量が少なくなる。そのため、パティキュレートフィルタの再生時において、パティキュレートフィルタに捕集された微粒子を燃焼するに足る温度にまでパティキュレートフィルタの温度を高めるのに、長い時間を要することがある。したがって、排気中に白煙が生じることを抑制しつつも、パティキュレートフィルタの再生に要する時間が長くなることを抑制できる技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、排気通路の途中に、排気中に含まれる炭化水素及び一酸化炭素を酸化して浄化する酸化触媒が配置され、前記排気通路における前記酸化触媒よりも下流側に、排気中に含まれる微粒子を捕集するパティキュレートフィルタが配置され、前記排気通路において前記酸化触媒よりも上流側に前記排気通路内に燃料を添加する燃料添加弁が取り付けられている内燃機関に適用され、前記燃料添加弁に燃料を添加させることにより前記パティキュレートフィルタに捕集されている微粒子を燃焼させるフィルタ再生処理を実行可能な制御装置であって、前記酸化触媒の温度を、当該酸化触媒の活性化温度よりも高い温度であって前記酸化触媒に固着した堆積物を燃焼可能な温度として定められた規定温度以上にする触媒再生処理を実行可能である。
【0007】
上記構成において、酸化触媒の触媒性能の低下原因の一つとして、酸化触媒に堆積物が固着して、酸化触媒における有効反応面積が減少することが挙げられる。上記構成によれば、触媒再生処理が実行されると、酸化触媒に固着した堆積物が燃焼されて除去される。したがって、酸化触媒の触媒性能の低下に起因して排気中に白煙が生じることは抑制できる。そして、触媒再生処理の実行後に行われるフィルタ再生処理においては、燃料添加弁からの燃料の添加量を減少させなくても、酸化触媒において燃料の大部分を酸化して排気を昇温できる。したがって、微粒子を燃焼するに足る温度にまでパティキュレートフィルタの温度を高めるのに過度に長い時間を要することはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、内燃機関10の一実施形態を説明する。先ず、内燃機関10における吸気系及び排気系の概略構成を
図1に従って説明する。
図1に示すように、内燃機関10は、燃料の燃焼が行われる機関本体11を備えている。図示は省略するが、機関本体11は、複数(この実施形態では4つ)の気筒が区画されたシリンダブロック、気筒内へと吸気を導く吸気ポートや気筒内からの排気が排出される排気ポートが区画されたシリンダヘッド等によって構成されている。
【0010】
機関本体11には、当該機関本体11内部の気筒に吸気を供給するための吸気管12が、図示しないインテークマニホールドを介して接続されている。インテークマニホールドの上流側は1つの管状になっており、インテークマニホールドの下流側は気筒の数に応じて4つに分岐している。吸気管12の途中には、吸気管12の内部を流通する吸気流量Gaを検出するエアフローメータ31が取り付けられている。
【0011】
機関本体11には、当該機関本体11内部の気筒からの排気が流通するエキゾーストマニホールド13が接続されている。エキゾーストマニホールド13の上流側は、気筒の数に応じて4つに分岐している。エキゾーストマニホールド13の下流側は、分岐した4つの管が集合して1つの管になっている。エキゾーストマニホールド13の下流端には、ターボチャージャ20が接続されている。
【0012】
ターボチャージャ20は、排気の流れを利用して駆動するタービン部21と、タービン部21の駆動に基づき吸気を圧送するコンプレッサ部22と、これらを連結するベアリング部23とで構成されている。コンプレッサ部22は、吸気管12におけるエアフローメータ31よりも下流側に配置されている。また、タービン部21の上流端は、上記したエキゾーストマニホールド13の下流端に接続されている。タービン部21の下流端には、排気管14が接続されている。なお、この実施形態では、エキゾーストマニホールド13、ターボチャージャ20におけるタービン部21の内部、排気管14によって、排気通路15が構成されている。
【0013】
排気管14の途中には、排気中に含まれる炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して浄化する酸化触媒16が配置されている。排気管14における酸化触媒16よりも下流側には、排気中に含まれる微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ17(以下、フィルタ17と略記する。)が配置されている。
【0014】
排気通路15におけるエキゾーストマニホールド13には、排気通路15内に燃料を添加する燃料添加弁32が取り付けられている。燃料添加弁32は、エキゾーストマニホールド13の下流部、すなわち分岐した管が合流して1つの管になっている部分に取り付けられている。なお、エキゾーストマニホールド13は、酸化触媒16よりも上流側に位置しているため、当該エキゾーストマニホールド13に取り付けられている燃料添加弁32も、酸化触媒16よりも上流側に位置している。
【0015】
排気管14におけるターボチャージャ20におけるタービン部21よりも下流側であって酸化触媒16よりも上流側には、第1温度センサ33が取り付けられている。第1温度センサ33は、酸化触媒16に供給される排気の温度を、触媒入口温度T1として検出する。排気管14における酸化触媒16よりも下流側であってフィルタ17よりも上流側には、第2温度センサ34が取り付けられている。第2温度センサ34は、フィルタ17に供給される排気の温度を、フィルタ入口温度T2として検出する。
【0016】
排気管14におけるフィルタ17よりも下流側には、第3温度センサ35が取り付けられている。第3温度センサ35は、フィルタ17から排出される排気の温度を、フィルタ出口温度T3として検出する。排気管14におけるフィルタ17よりも下流側には、空燃比センサ36が取り付けられている。空燃比センサ36は、フィルタ17から排出される排気の空燃比を、排気空燃比Rとして検出する。
【0017】
上記のように構成された内燃機関10は、電子制御装置40によって制御される。電子制御装置40は、各種のプログラム(アプリケーション)が格納された不揮発性のROM、各プログラムを実行する演算部、プログラムの実行等にあたってデータが一時的に記憶される揮発性のRAM等を備えたコンピュータである。
【0018】
電子制御装置40には、上述したエアフローメータ31から吸気流量Gaを示す信号が入力される。また、電子制御装置40には、第1温度センサ33、第2温度センサ34、及び第3温度センサ35から、触媒入口温度T1、フィルタ入口温度T2、フィルタ出口温度T3を示す信号が入力される。さらに、電子制御装置40には、空燃比センサ36から、排気空燃比Rを示す信号が入力される。
【0019】
電子制御装置40は、燃料添加弁32に燃料を添加させることによりフィルタ17に捕集されている微粒子を燃焼させるフィルタ自動再生処理を実行可能になっている。フィルタ自動再生処理は、フィルタ17に捕集されている微粒子の量が予め定められた規定値を超えたと推測されたときに実行される。そして、フィルタ自動再生処理が実行されると、電子制御装置40は、燃料添加弁32に制御信号Sを送信して、当該燃料添加弁32に燃料を添加させる。燃料添加弁32から排気通路15内に噴射された燃料は、酸化触媒16に達すると酸化され、これに伴って排気の温度が上昇する。そして、酸化触媒16にて昇温された排気がフィルタ17に流入することにより、当該フィルタ17が昇温される。これによりフィルタ17に堆積した微粒子が燃焼され、フィルタ17が再生する。
【0020】
電子制御装置40は、上記フィルタ自動再生処理中の燃料添加弁32からの燃料の添加量を制御する。具体的には、エアフローメータ31が検出する吸気流量Gaと機関本体11内で燃焼される燃料の量とに基づいて、排気に含まれる酸素の量を推定し、推定した酸素で燃焼できる範囲内で、燃料添加弁32からの燃料の添加量を設定する。したがって、内燃機関10が全て正常に機能している理想条件下では、フィルタ自動再生処理中に添加された燃料のほぼ全てが燃焼される。
【0021】
また、電子制御装置40は、フィルタ自動再生処理中において、燃料添加弁32から添加された燃料が燃焼しきれていないと推定される場合には、フィルタ自動再生処理を終了する。そして、電子制御装置40は、酸化触媒16に固着した堆積物を燃焼可能な温度として定められた規定温度以上に制御する触媒再生処理を実行する。
【0022】
次に、電子制御装置40による燃料添加制御(フィルタ自動再生処理及び触媒再生処理)の流れを、
図2に従って説明する。なお、下記の一連の制御は、車両のシステム起動スイッチ(スタートスイッチ、イグニッションスイッチ等と呼称されることもある。)が操作されたときに実行される。
【0023】
図2に示すように、燃料添加制御が実行されると、電子制御装置40は、ステップS11の処理を実行する。ステップS11では、電子制御装置40は、フィルタ17の自動再生前提条件が成立しているか否かを判定する。フィルタ17の自動再生前提条件としては、例えば、排気管14におけるフィルタ17の上流側の圧力とフィルタ17の下流側の圧力との差圧が開始規定圧よりも大きいこと、フィルタ17の自動再生処理が前回実行されてから現在までの各気筒内に噴射された燃料の積算量が規定量を超えていることなどが挙げられる。自動再生前提条件が成立していないと判定された場合(ステップS11においてNO)、電子制御装置40の処理はリターンされ、再びステップS11の処理が実行される。一方、自動再生前提条件が成立していると判定された場合(ステップS11においてYES)、電子制御装置40の処理は、ステップS12に移行する。
【0024】
ステップS12では、電子制御装置40は、フィルタ17の自動再生処理を実行する。すなわち、電子制御装置40は、燃料添加弁32に、排気通路15内へと燃料を添加させる。なお、この燃料添加弁32からの燃料添加は、フィルタ17の自動再生処理の実行中に周期的に行われる。その後、電子制御装置40の処理は、ステップS13へ移行する。
【0025】
ステップS13では、電子制御装置40は、一定期間待機する。この一定期間は、燃料添加弁32で添加された燃料の影響が、排気通路15におけるフィルタ17よりも下流側に現れるのに十分な時間として定められており、例えば数秒から数十秒である。その後、電子制御装置40は、空燃比センサ36が検出する排気空燃比Rが、予め定められた閾値X未満である否かを判定する。閾値Xは、排気空燃比Rが当該閾値X未満であるとき(燃料リッチであるとき)に、未燃の燃料に起因して排気中に白煙が生じ得る値として予め定められており、例えば試験やシミュレーションに基づき求められた値である。排気空燃比Rが閾値X以上であると判定された場合(ステップS13においてNO)、電子制御装置40の処理は、ステップS14に移行する。
【0026】
ステップS14では、電子制御装置40は、フィルタ17の自動再生終了条件が成立しているか否かを判定する。フィルタ17の自動再生終了条件としては、例えば、排気管14におけるフィルタ17の上流側の圧力とフィルタ17の下流側の圧力との差圧が終了規定圧よりも小さくなったこと、フィルタ17の自動再生処理が開始されてからの時間が予め定められた規定時間以上になったことなどが挙げられる。フィルタ17の自動再生終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS14においてNO)、電子制御装置40の処理は、ステップS13に戻る。フィルタ17の自動再生終了条件が成立していると判定された場合(ステップS14においてYES)、電子制御装置40の処理は、ステップS15に移行する。
【0027】
ステップS15では、電子制御装置40は、フィルタ17の自動再生処理を終了する。すなわち、電子制御装置40は燃料添加弁32から排気通路15内への燃料添加を停止させる。その後、電子制御装置40の一連の処理は終了し、ステップS11の処理にリターンする。
【0028】
一方、ステップS13において、排気空燃比Rが閾値X未満であると判定された場合(ステップS13においてYES)、電子制御装置40の処理は、ステップS16に移行する。ステップS16では、電子制御装置40は、上述したフィルタ17の自動再生終了条件が成立しているか否かに拘らず、フィルタ17の自動再生処理を終了する(燃料添加弁32から排気通路15内への燃料添加を停止させる)。その後、電子制御装置40の処理は、ステップS17に移行する。
【0029】
ステップS17では、電子制御装置40は、内燃機関10の機関運転状態がアイドル運転であるか否かを判定する。アイドル運転であると判定される条件は、例えば、内燃機関10の機関回転数が規定回転数(数百rpm)未満であること、車両のアクセルペダルが踏み込まれていないことなどである。アイドル運転でないと判定された場合(ステップS17においてNO)、電子制御装置40の処理は、再びステップS17に移行する。すなわち、電子制御装置40は、内燃機関10の機関運転状態がアイドル運転になるのを待つ。アイドル運転であると判定された場合(ステップS17においてYES)、電子制御装置40の処理は、ステップS18に移行する。
【0030】
ステップS18では、電子制御装置40は、酸化触媒16の再生を実行する。具体的には、この実施形態では、電子制御装置40は、ステップS12の実行前よりも吸気流量Gaが小さくなるように、図示しないスロットルバルブの開度を調整する。それと共に、電子制御装置40は、各気筒内への燃料噴射のタイミングを遅角させる。これにより、酸化触媒16に供給される排気の温度が、酸化触媒16に固着した堆積物を燃焼可能な温度として定められた規定温度以上に高められる。この酸化触媒16の再生は、予め定められた一定期間行われる。その後、電子制御装置40の処理は、ステップS19に移行する。
【0031】
ステップS19では、電子制御装置40は、燃料添加弁32から排気通路15内へと燃料を添加させる。このときの燃料の添加量は、排気中に含まれる酸素で燃料を燃焼しきれる量に定められている。また、ステップS19における燃料添加は、フィルタ17の再生(微粒子の燃焼)を目的としたものではないため、フィルタ17の自動再生処理中における燃料の添加量よりも量が少なくなっている。ステップS19の後、電子制御装置40の処理は、ステップS20に移行する。
【0032】
ステップS20では、電子制御装置40は、フィルタ17の温度が高いか否かを判定する。この実施形態では、電子制御装置40は、第2温度センサ34によって検出されるフィルタ入口温度T2が第1所定温度よりも高く、且つ第3温度センサ35によって検出されるフィルタ出口温度T3が第2所定温度よりも高い場合に、フィルタ17の温度が高いと判定する。第1所定温度は、ステップS19の処理で添加された燃料が酸化触媒16内において全て酸化されたと仮定した場合のフィルタ入口温度T2よりもやや低い温度として定められている。同様に、第2所定温度は、ステップS19の処理で添加された燃料が酸化触媒16内において全て酸化されたと仮定した場合のフィルタ出口温度T3よりもやや低い温度として定められている。フィルタ17の温度が高くないと判定された場合(ステップS20においてNO)、電子制御装置40の処理は、再びステップS18に移行する。フィルタ17の温度が高いと判定された場合(ステップS20においてYES)、電子制御装置40の一連の処理は終了し、ステップS11の処理にリターンする。
【0033】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記実施形態において、フィルタ17の再生処理の実行中は、燃料添加弁32から添加された燃料が酸化触媒16において酸化されて、排気の温度が上昇する。ここで、仮に、酸化触媒16の触媒表面に堆積物が固着していると、酸化触媒16において排気中の燃料と触れることのできる面積、すなわち有効反応面積が減少する。すると、酸化触媒16において燃料が期待どおりに酸化されず、排気が十分に昇温されなくなる。排気の昇温が十分でないと、フィルタ17も十分に昇温されないので、酸化触媒16で酸化しきれなかった燃料がフィルタ17においても酸化(燃焼)されず、排気と共に車両外に排出されることになる。このように未燃の添加燃料が車両外に排出されると排気中に白煙が生じるため、これを見た人が、微粒子を含んだ排気を排出しているのではないかと誤解するおそれがある。そこで、このような未燃添加燃料に起因する白煙の発生を防ぐために、フィルタ17の再生処理の実行中において燃料添加弁32からの燃料添加量を少なくすることが考えられる。しかしながら、この場合は、フィルタ17を十分な温度にまで昇温するのに時間を要してしまう。
【0034】
上記実施形態では、触媒再生処理を実行して、酸化触媒16に固着している堆積物を燃焼させている。したがって、その後、フィルタ17の再生処理を行うときには、酸化触媒16に固着されていた堆積物は、ある程度除去されており、酸化触媒16において添加燃料を適切に酸化できる。したがって、燃料添加弁32からの燃料添加量を少なくしなくても、未燃添加燃料に起因する白煙の発生は抑えられるし、フィルタ17の昇温に過度に長い時間を要することもない。
【0035】
また、上記実施形態では、フィルタ17の再生処理の実行中において排気空燃比Rが閾値Xを未満である場合、換言すれば、酸化触媒16に堆積物が固着している可能性が高い場合に、触媒再生処理を実行する。そのため、フィルタ17に堆積物が固着していない状況下で触媒再生処理が実行されるといった事態は発生しにくい。
【0036】
さらに、上記実施形態では、触媒再生処理を実行した後、燃料添加弁32から燃料を添加してフィルタ17の温度が高くならなかった場合には、再び、触媒再生処理を実行する。したがって、触媒再生処理を実行したにも拘らず、依然としてフィルタ17に相当量の堆積物が固着したままになっているといった事態は生じにくい。
【0037】
上記実施形態では、触媒再生処理は、内燃機関10の機関運転状態がアイドル運転であることを条件に実行される。アイドル運転である場合には、比較的に内燃機関10の運転状態は安定しており、吸気流量Gaの変化や燃料噴射タイミングの変化の影響を受けにくい。このようなアイドル運転時に触媒再生処理を行うことは、触媒再生処理に伴って内燃機関10にノッキングや失火が生じることを低減するという点で好適である。
【0038】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の内燃機関10の構成は例示であり、必要に応じて適宜変更できる。例えば、内燃機関10の気筒の数は4つでなくてもよく、3つ以下、5つ以上であってもよい。また、各気筒がクランクシャフトを挟んで両側に配置されたV型、水平対向型の内燃機関10であってもよい。また、ターボチャージャ20が搭載されていなくてもよい。
【0039】
・上記実施形態では、排気空燃比Rが閾値X未満であることを条件にフィルタ17の自動再生処理が終了された後、このフィルタ17の自動再生処理終了に引き続いて触媒再生処理を実行したが、これに限らない。例えば、前回の触媒再生処理から一定期間(例えば数ヶ月)以上経過したこと、フィルタ17の自動再生処理が実行中でないこと、内燃機関10の機関運転状態がアイドル運転であることを条件に触媒再生処理を実行してもよい。
【0040】
・上記実施形態におけるフィルタ17の自動再生前提条件は例示であり、上記実施形態の条件に代えて又は加えて他の条件があってもよい。同様に、フィルタ17の自動再生終了条件も適宜変更できる。
【0041】
・内燃機関10の機関運転状態がアイドル運転でない場合に触媒再生処理を実行することも可能である。ただし、内燃機関10においてノッキング等の発生を防ぐという意味では、内燃機関10の機関負荷率等が急変しないと予想される状況で触媒再生処理を実行するのが好ましい。
【0042】
・電子制御装置40によって触媒再生処理の実行条件を判定するのに代えて、又は加えて、車両の乗員等によって触媒再生処理を実行できるようにしてもよい。例えば、触媒再生処理を実行するためのスイッチや操作レバーを運転席近傍に設け、これらスイッチや操作レバーが操作されたときに、他の条件に拘わらず触媒再生処理を実行できるようにしてもよい。
【0043】
・触媒再生処理において、フィルタ入口温度T2及びフィルタ出口温度T3に依らずに当該触媒再生処理を終了させることもできる。例えば、触媒再生処理が開始されてから、一定の期間が経過したことを条件に、触媒再生処理を終了させてもよい。この場合の一定期間は、酸化触媒16に固着した堆積物が燃焼するのに十分な時間として定められていることが好ましい。この変更例の場合、触媒再生処理の後の燃料添加(上記実施形態におけるステップS19)は不要である。
【0044】
・触媒再生処理において、排気を昇温させる方法は、上記実施形態の例に限らない。例えば、排気管14の周囲や内部にヒータを配置して、このヒータで排気管やその内部の排気を加熱することにより、排気を堆積物の燃焼が可能な温度にまで昇温してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…内燃機関、11…機関本体、12…吸気管、13…エキゾーストマニホールド、14…排気管、15…排気通路、16…酸化触媒、17…ディーゼルパティキュレートフィルタ、20…ターボチャージャ、21…タービン部、22…コンプレッサ部、23…ベアリング部、31…エアフローメータ、32…燃料添加弁、33…第1温度センサ、34…第2温度センサ、35…第3温度センサ、36…空燃比センサ、40…電子制御装置、
Ga…吸気流量、T1…触媒入口温度、T2…フィルタ入口温度、T3…フィルタ出口温度、R…排気空燃比、S…制御信号。