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特許7211790マンドレルの上のカウルを有する誘導加熱セル、及びそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】マンドレルの上のカウルを有する誘導加熱セル、及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
B29C70/44
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018233838
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2019130895
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】15/841,918
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マトスン, マーク アール.
(72)【発明者】
【氏名】ファース, リー シー.
(72)【発明者】
【氏名】フォルツ, グレゴリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ダイクストラ, ウィリアム シー.
(72)【発明者】
【氏名】ノエル, ジェニファー エス.
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02886311(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036310(US,A1)
【文献】特開2001-293790(JP,A)
【文献】特開2014-051065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型の上に複合材レイアップを位置付けするステップであって、前記複合材レイアップが、平面部、及び前記型から離れる方向に前記平面部から離れて延びる非平面部を備えている、位置付けするステップ、並びに
前記複合材レイアップの前記非平面部の上にカウルを位置付けするステップであって、前記カウルが、前記非平面部の表面に適合するように構成されている、位置付けするステップ、
前記カウルの上にマンドレルを位置付けするステップであって、前記カウルが、前記マンドレルと前記非平面部との間に配置され、前記カウルの熱膨張率(CTE)と前記複合材レイアップのCTEの差が、前記マンドレルのCTEと前記カウルの前記CTEの差より少ない、位置付けするステップ、
前記マンドレルの上に、且つ、前記複合材レイアップの前記平面部の上にブラダーを位置付けするステップ、
誘導加熱器を使用して、前記複合材レイアップを加熱するステップ、並びに
前記ブラダーを使用して、前記マンドレル及び前記複合材レイアップの前記平面部に圧力を加えるステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記誘導加熱器を使用して前記複合材レイアップを加熱する前記ステップが、前記誘導加熱器によって生成された磁界を使用して、前記カウル又は前記誘導加熱器のサセプタのうちの少なくとも1つを誘導加熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カウルが、前記複合材レイアップの前記非平面部に直接接触する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複合材レイアップが、前記サセプタと前記カウルとの間に配置される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記複合材レイアップが、前記誘導加熱器によって生成された磁界に対して少なくとも部分的に透過性である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マンドレルが、熱膨張スロットを備え、
前記熱膨張スロットが、前記複合材レイアップを加熱する前記ステップの間に幅を変更し、且つ
前記カウルが、前記熱膨張スロットのうちの少なくとも1つの上で延在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カウルが、前記マンドレルの長さの実質的全体にわたって、且つ、すべての前記熱膨張スロットの上で延在する連続シートである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マンドレルが、前記複合材レイアップに直接接触しない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マンドレルが、アルミニウムを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カウルが、鉄を含む合金から形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記合金が、ニッケルをさらに含み、前記合金内のニッケルの濃度が、30原子%と47原子%との間であり、前記合金が、コバルトをさらに含み、前記合金内のニッケルの濃度が、20原子%と40原子%との間であり、前記合金内のコバルトの濃度が、10原子%と20原子%との間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カウルが、0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記カウルが、非平面形状を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合材レイアップを加熱する前記ステップ、及び前記ブラダーを使用して、前記圧力を加える前記ステップが、前記複合材レイアップから複合材部品を形成し、前記複合材部品が、補強材を備えた翼部品、飛行操縦翼面、又は胴体ドアのうちの1つである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
平面部、及び前記平面部から離れて延びる非平面部を備えた複合材レイアップを処理するために、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実施するための誘導加熱セルであって、
前記複合材レイアップを受け容れるように構成された型、
前記複合材レイアップを誘導加熱するように構成された誘導加熱器、
前記複合材レイアップの前記非平面部の上に配置され、前記複合材レイアップの前記非平面部に適合するように構成されたカウル、
前記カウルの上に配置されるように構成されたマンドレルであって、前記カウルの熱膨張率(CTE)と前記複合材レイアップのCTEの差が、前記マンドレルのCTEと前記カウルの前記CTEの差より少ない、マンドレル、並びに
前記マンドレル、及び前記複合材レイアップの前記平面部の上に配置されるように構成されたブラダー
を備え、前記誘導加熱器が、熱を生成し且つ前記複合材レイアップを加熱するためのサセプタを備えている、誘導加熱セル。
【請求項16】
型の上に複合材レイアップを位置付けするステップであって、前記複合材レイアップが、前記型から離れる方向に延びる非平面部を備えている、位置付けするステップ、並びに
前記複合材レイアップの上にカウルを位置付けするステップ、
前記カウルの上にマンドレルを位置付けするステップであって、前記カウルの熱膨張率(CTE)と前記複合材レイアップのCTEの差が、前記マンドレルのCTEと前記カウルの前記CTEの差より少ない、位置付けするステップ、
前記複合材レイアップを加熱するステップ、並びに
前記マンドレル及び前記複合材レイアップに圧力を加えるステップ
を含む方法。
【請求項17】
非平面部を備えた複合材レイアップを処理するために、請求項16に記載の方法を実施するための誘導加熱セルであって、
前記複合材レイアップを受け容れるように構成された型、
前記複合材レイアップを誘導加熱するように構成された誘導加熱器、
前記複合材レイアップの上に配置され、前記複合材レイアップに適合するように構成されたカウル、並びに
前記カウルの上に配置されるように構成されたマンドレルであって、前記カウルの熱膨張率(CTE)と前記複合材レイアップのCTEの差が、前記マンドレルのCTEと前記カウルの前記CTEの差より少ない、マンドレル
を備える、誘導加熱セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複雑な形状を有する部品を処理することは困難な場合がある。例えば、非平坦な部分を有する部品を強化し成形するために均一な圧力を加えることは、種々の方向に力を加えることを必要とする場合がある。特別な形状のマンドレルは、このような表面上の狭い角部及びその他の手が届きづらい部分に対して使用され得る。しかしながら、マンドレルと処理された部品とは、熱膨張率(CTE)が大きく異なることが多い。CTEの不一致により、加熱及び冷却のサイクルの間の処理が複雑になる。さらに、複雑な形状を有する部品を均一に加熱することは困難であり得る。
【発明の概要】
【0002】
本明細書で開示されているのは、誘導加熱セル、及び処理のためにこれらのセルを使用する方法である。誘導加熱セルは、非平面部を有する複合材レイアップを処理(例えば、強化且つ/又は硬化)するために使用され得る。誘導加熱セルは、この非平面部の上に配置され且つ非平面部に適合するように構成されたカウルを備えている。さらに、セルは、カウルの上に配置され、且つカウルを特徴の表面に対して付勢するマンドレルを備えている。カウルのCTEは、マンドレルのCTEより複合材レイアップのCTEに近い。このようにして、カウルは、温度変動によって引き起こされるマンドレルの寸法変化から複合材レイアップを隔離する。それと同時に、カウルは、マンドレルの表面に適合し得る。マンドレルは、形状を画定して、圧力を非平面部に伝達するために使用され得る。
【0003】
複合材レイアップから、複雑な表面形状を有する複合材部品を形成するために使用され得る方法が提供される。当該方法は、型の上に複合材レイアップを位置付けするステップを含む。複合材レイアップは、平面部、及び型から離れる方向に平面部から離れて延びる非平面部を備えている。幾つかの実施例では、この方向は、平面部の表面に対して垂直である。
【0004】
当該方法は、複合材レイアップの非平面部の上にカウルを位置付けするステップをさらに含む。カウルは、この工程の後又は後続の工程の後に、非平面部の表面に適合するように構成されている。当該方法は、カウルがマンドレルと非平面部との間に配置されるように、カウルの上にマンドレルを位置付けするステップを含む。カウルの熱膨張率(CTE)と複合材レイアップのCTEとの間の差は、マンドレルのCTEとカウルのCTEとの間の差より少ない。言い換えると、カウルのCTEは、マンドレルのCTEより複合材レイアップのCTEに近い。カウルは、マンドレルを複合材部品から物理的に隔離し、複合材レイアップに干渉せずに、熱サイクルの間のマンドレルの膨張及び収縮を可能にする。複合材レイアップもさらに膨張且つ収縮するが、その程度はマンドレルより少ない。
【0005】
当該方法は、マンドレルの上に、且つ、さらに複合材レイアップの平面部の上にブラダーを位置付けするステップを含む。当該方法は、誘導加熱器を使用して、複合材レイアップを加熱するステップをさらに含む。さらに、当該方法は、ブラダーを使用して、マンドレル及び複合材レイアップの平面部に圧力を加えるステップを含む。
【0006】
幾つかの実施例では、誘導加熱器を使用して、複合材レイアップを加熱するステップは、カウルを誘導加熱するステップを含む。カウルは、誘導加熱器によって生成された磁界を使用して加熱される。カウルの加熱は、複合材レイアップの非平面部の局所的加熱をもたらす。複合材レイアップの非平面部は、カウルに熱的に連結されるが、サセプタなどの誘導加熱器の加熱構成要素からはさらに離れている場合がある。幾つかの実施例では、カウルは、複合材レイアップの非平面部に直接接触する。
【0007】
幾つかの実施例では、誘導加熱器を使用して、複合材レイアップを加熱するステップは、誘導加熱器のサセプタを誘導加熱するステップを含む。サセプタは、誘導加熱器によって生成された磁界を使用して加熱される。同じ磁界をカウルの加熱に使用してもよい。複合材レイアップは、例えば、サセプタとカウルとの間に配置される。これら両方は、加熱されて、次いで、種々の側面から複合材レイアップに熱を伝達する。複合材レイアップは、少なくとも部分的に誘導加熱器によって生成された磁界の影響を受けやすい場合がある。これにより、磁界が複合材レイアップの他方の側で生成された場合、磁界がカウルに達することを可能になる。幾つかの実施例では、複合材レイアップは、少なくとも部分的に磁界の影響を受ける場合があり、これにより、複合材レイアップの直接加熱が可能になる。この直接加熱は、カウル及び/又はサセプタからの熱伝達と共に行われ得る。
【0008】
幾つかの実施例では、複合材レイアップを加熱するステップ、及びブラダーを使用して、圧力を加えるステップは、時間的に重複する。例えば、追加的なガスがブラダー内に供給され得る。同じ実施例又は他の実施例では、例えば、2つの型の間の空間を変えることにより、ブラダーの容積が減少し得る。
【0009】
幾つかの実施例では、マンドレルは、1つ又は複数の熱膨張スロットを備えている。熱膨張スロットは、複合材レイアップを加熱するステップの間、その幅を変更する。カウルは、熱膨張スロットのうちの少なくとも1つの上で延在する。言い換えると、カウルは、熱膨張スロットのうちの少なくとも1つにかかり、複合材レイアップと干渉せずに、又はより具体的には、複合材レイアップの非平面部と干渉せずに、(スロットを形成する)マンドレルの端部が互いに対して動くことを可能にする。
【0010】
幾つかの実施例では、カウルは、マンドレルの長さの実質的全体にわたって、且つ、熱膨張スロットの上で、又はより具体的には、すべての熱膨張スロットの上で延在する連続シートである。言い換えると、同一の単一カウルが、すべての熱膨張スロットを覆うことができる。カウルの追加により、マンドレルと複合材レイアップとの間の任意の直接的な物理的接触が、最小限となり、幾つかの実施形態では、完全になくなる。このようにして、マンドレルは、複合材レイアップに直接接触することはない。マンドレルは、せん断力を生じさせず、複合材レイアップと干渉せずに、複合材レイアップより高速度で膨張且つ収縮し得る。さらに、カウルは、非平面部に対して追加の局所化された特徴を設け得る。
【0011】
幾つかの実施例では、マンドレルは、アルミニウムを含む。同一の又は他の実施例では、カウルは、鉄を含む合金から形成される。合金は、ニッケルをさらに含み得る。合金内のニッケルの濃度は、存在しているとき、約30原子%と47原子%との間である。幾つかの実施例では、合金は、コバルトをさらに含む。合金内のニッケルの濃度は、約20原子%と40原子%との間であり得るが、同一の合金内のコバルトの濃度は、約10原子%と20原子%との間である。これらの材料組成は、マンドレルより複合材レイアップに近いCTE値をもたらす。さらに、幾つかの実施例では、これらの材料は、誘導加熱器によって生成された磁界と相互作用することが可能であり、複合材レイアップの非平面部の局所化された加熱をもたらす。
【0012】
幾つかの態様では、カウルは、約0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有するこの厚さにより、カウルがマンドレルの形状に適合することが可能となる。同時に、カウルは、マンドレルの熱膨張スロットの中へと変形しないように、熱膨張スロットの領域において複合材レイアップからの圧力を支持することが可能である。さらに、誘導加熱器によって生成された磁界にカウルが曝されると、厚みによってカウルの誘導加熱がもたらされる。幾つかの実施例では、カウルは、非平面形状、例えば、マンドレルの表面に適合する形状を有する。
【0013】
幾つかの実施例では、複合材レイアップを加熱するステップ、及びブラダーを使用して、圧力を加えるステップは、複合材レイアップから複合材部品を形成する。複合材部品の幾つかの実施例には、補強材を備えた翼部品、飛行操縦翼面、及び胴体ドアが含まれる。
【0014】
さらに、複合材レイアップを処理(例えば、硬化及び/又は強化)するための誘導加熱セルが提供される。複合材レイアップは、平面部、及び平面部から離れて延びる非平面部を備えている。誘導加熱セルは、型、誘導加熱器、カウル、マンドレル、及びブラダーを備えている。型は、複合材レイアップを受け容れるように構成されている。誘導加熱器は、複合材レイアップを誘導加熱するように構成されている。カウルは、複合材レイアップの非平面部の上に配置され、複合材レイアップの非平面部に適合し、マンドレルから複合材レイアップへ圧力を伝達するように構成されている。マンドレルは、カウルの上に配置されるように構成されている。カウルのCTEと複合材レイアップのCTEとの間の差は、マンドレルのCTEとカウルのCTEとの間の差より少ない。カウルは、複合材レイアップとマンドレルとの間に位置付けされ、複合材レイアップ及びマンドレルを物理的に隔離する。カウルは、複合材レイアップの表面に大きなせん断力を加えず、表面に潜在的にしわを生じさせることなく、マンドレルが、複合材レイアップよりずっと大きな熱膨張及び収縮を有することを可能にする。ブラダーは、マンドレル及び複合材レイアップの平面部の上に配置されるように構成されている。
【0015】
幾つかの実施例では、カウルは、誘導加熱器によって生成された磁界の影響を受ける。カウルは、熱を生成し且つ複合材レイアップの非平面部を間接的に加熱するように構成されている。幾つかの実施例では、誘導加熱器は、熱を生成し且つ複合材レイアップを加熱するためのサセプタを備えている。
【0016】
幾つかの実施例では、マンドレルは、熱膨張スロットを備えている。熱膨張スロットは、複合材レイアップを加熱するステップの間、幅を変更するように構成されている。カウルは、熱膨張スロットのうちの少なくとも1つの上で延在する。カウルは、マンドレルの長さの実質的全体にわたって、且つ、すべての熱膨張スロットの上で延在する連続シートであり得る。
【0017】
幾つかの実施例では、マンドレルは、アルミニウムを含む。カウルは、鉄を含む合金から形成される。合金は、ニッケルをさらに含み得る。幾つかの実施例では、合金内のニッケルの濃度は、約30原子%と47原子%との間である。合金は、コバルトをさらに含む。合金内のニッケルの濃度は、約20原子%と40原子%との間であり得るが、合金内のコバルトの濃度は、約10原子%と20原子%との間であり得る。
【0018】
幾つかの態様では、カウルは、約0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有する。カウルは、非平面形状を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】幾つかの実施例に係る、誘導加熱セルの断面図を示す。
図1B】幾つかの実施例に係る、誘導加熱セルの断面図を示す。
図2A-2C】幾つかの実施例に係る、カウルを有する状態とカウルを有しない状態のマンドレルの斜視図を示す。
図3】幾つかの実施例に係る、例えば、複合材部品を形成するための、誘導加熱セルを操作する方法のプロセスフロー図である。
図4A-4F】複合材部品を形成する方法の様々な段階における誘導加熱セルを示す。
図5】幾つかの実施例に係る、航空機の製造及び保守方法の一例のフロー図を示す。
図6】幾つかの実施例に係る、航空機の一例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記の説明では、提示されている概念の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が提示されている。提示されている概念は、これらの具体的な詳細の一部又は全てがなくても実行可能である。他の事例においては、記載された概念を不必要に分かりにくくしないように、周知の処理工程については詳細に記載していない。一部の概念は、特定の実施例と併せて説明されるが、これらの実施例は、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0021】
導入
繊維強化樹脂などの複合材料は、航空機、自動車などの様々な用途において益々普及している。これらの材料は、高い重量比強度又は高い重量比剛性、及び好ましい疲労特性を有する。幾つかの実施例では、製造中、未硬化のマトリックス材料(有機樹脂)内に埋め込まれた、連続繊維、織繊維、及び/又は短繊維を含むプリペグが積層される。複合材レイアップとも呼ばれ得るこの積層体は、処理のために誘導加熱セル内に配置される。処理には、加熱及び加圧が関わる。当業者であれば、誘導加熱セルの他の様々な用途も本開示の範囲内にあることを理解されよう。簡略化するために、処理した部分を参照し、実施例は複合材料を対象とする。
【0022】
幾つかの実施例では、複合材レイアップ、及び誘導加熱セル内の複合材レイアップから形成された、結果として得られた複合材部品は、平面部及び非平面部を含む。本開示の目的のために、非平面部は、少なくとも部分的に平面部に対して垂直な方向に延びる特徴として画定される。しかしながら、他の実施例は、平面部に対する任意の形状又は角度を有し得る。複雑な形状を有する部品の一実施例は、平面部、及びこれらの平面部から離れて延びる1つ又は複数の補強材を有する翼構造体を含む。
【0023】
複合材レイアップは、誘導加熱セル内で処理されるが、圧力及び熱は、処理された部分(例えば、平面部及び非平面部)のすべての部分に均一に加えられる。平面部上の圧力及び熱の均一性を確立且つ維持することは、簡単である。例えば、表面に対して押圧されるブラダーを使用して、圧力が加えることができる。ブラダーは、平面部の表面と均一な接触を確立する。平面部から設定距離で位置付けされ得る、誘導加熱器、又はより具体的には、誘導加熱器のサセプタを使用して、熱が加えられ得る。しかしながら、非平面部に加えられる圧力及び/又は熱の均一性は、遙かに困難である。第1に、非平面部の湾曲のため、且つ/又は、平面部の表面に対する非平面部の表面の種々の配向のため、圧力が種々の方向に加えられる場合がある。ブラダーは、非平面部の表面全体に容易に適合するには、可撓性が十分ではない場合があり、加圧において非均一性を引き起こし得る。例えば、ブラダーの可撓性と伸縮性が限られているため、ブラダーは、非平面的な特徴の狭い角部まで達することができない場合がある。マンドレルは、非平面部の様々な形状及び表面に対応し、圧力を均一化するために使用され得る。さらに、非平面部の種々の領域は、非平面部の配向により、誘導加熱器から種々の距離で位置付けされ得る。マンドレルが使用されると、これらのマンドレルはヒートシンクとして作用する場合があり、複合材レイアップの非平面部への均一な熱伝達がさらに複雑になる。さらに、マンドレルのCTEは、複合材レイアップのCTEとかなり異なる場合があり、これにより、マンドレルと複合材レイアップの熱膨張及び収縮が異なり、複合材レイアップの界面及びしわにおいて高いせん断力の可能性が生じ得る。
【0024】
1つ又は複数のマンドレルと複合材レイアップとの間にカウルを追加することは、複雑な形状をもつ複合材部品の形成に伴う様々な問題に対処することが発見された。カウルは、2つの円滑な平行面を有する、金属、プラスチック、又はゴム構造体(例えば、シート)であってもよい。カウルは、カウルプレートとも呼ばれ得る。カウルは、複合材レイアップ及び/又はマンドレルのために寸法形成且つ成形され得、複合材レイアップ及び/又はマンドレルに使用される。特に、カウルは、硬化処理中、レイアップと直接接触することができ、圧力を伝達して、仕上がり部分に円滑な表面を設ける。カウルは、複合材レイアップの非平面部に接触することがあり、均一な加圧をもたらすためにマンドレルが必要とされる。カウルは、非平面部の表面及びマンドレルに対して、実質的に可撓性であり、適合し得る。このようにして、マンドレルは、その形状規定特性を保持することができる。カウルの材料は、特に、複合材レイアップのCTEに合致するように、又は、マンドレルのCTEより複合材レイアップのCTEに近くなるように、選択され得る。このようにして、マンドレルは、複合材レイアップに衝突せずに、熱膨張及び収縮を行うことができる。
【0025】
装置の実施例
図1A及び図1Bは、誘導加熱セル100の実施例を示す。誘導加熱セル100は、複合材レイアップ190の処理(例えば、強化及び/又は硬化)のために使用され得る。しかしながら、誘導加熱セル100の他の適用例も範囲内に含まれる。
【0026】
図1Aを参照し、さらに具体的には、図1Bを参照すると、誘導加熱セル100内で処理される複合材レイアップ190は、平面部192及び非平面部194を含む。非平面部194は、平面部192に対して垂直な方向(図1BのZ方向)で、例えば、少なくとも部分的に平面部192から離れて延びる。非平面部194の存在により、複合材レイアップ190に熱及び圧力を加えるときの様々な態様が複雑になる。例えば、非平面部194は、誘導加熱器140のサセプタ144などの熱源から離れて延び得る。さらに、複合材レイアップ190の処理中、非平面部194に加えられる圧力は、平面部192に加えられる圧力より異なる方向(時として複数の異なる方向)でなければならない。
【0027】
図1Aを参照すると、誘導加熱セル100は、1つ又は複数の型120、誘導加熱器140、カウル170、1つ又は複数のマンドレル160、及びブラダー150を備えている。誘導加熱セル100の動作中、複合材レイアップ190は、型120とブラダー150との間に配置され、熱及び/又は圧力に曝される。熱は、誘導加熱器140によって供給される。圧力は、ブラダー150によって供給される。
【0028】
幾つかの実施例では、例えば、図2Bに示すように、誘導加熱器140は、誘導コイル142(例えば、ソレノイド型誘導コイル)を含む。誘導コイル142は、磁界を生成するように構成されている。誘導加熱器140は、複合材レイアップ190に熱的に連結された1つ又は複数のサセプタ144をさらに含み得る。例えば、図1Bは、サセプタ144に直接接触している複合材レイアップ190を示す。幾つかの実施例では、サセプタ144は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。
【0029】
誘導加熱は、誘導コイル142に交流を供給することにより行われる。この交流が、複合材レイアップ190、サセプタ144(使用時)、及びカウル170の近くに交番磁場を発生させる。熱は、渦電流加熱を介して、これらの1つ又は複数の構成要素内で発生する。これは、誘導加熱とも呼ばれ得る。幾つかの実施例では、複合材レイアップ190は、磁界によって直接加熱される。これは、直接誘導加熱とも呼ばれ得る。例えば、複合材レイアップ190は、グラファイト又はホウ素補強有機マトリックス複合材を含み得、これらは、磁界の影響を十分に受ける。幾つかの実施例では、複合材レイアップ190の誘導加熱に加えて、又はその代わりに、サセプタ144が複合材レイアップ190の間接加熱に使用される。具体的には、サセプタ144は、誘導加熱されて、次いで、熱を、サセプタ144に熱的に連結された複合材レイアップ190に伝達する。この種の加熱は、間接加熱と呼ばれ得る。幾つかの実施例では、サセプタによる間接加熱及び/又は複合材レイアップ190の直接誘導加熱に加えて、又はその代わりに、カウル170が複合材レイアップ190の間接加熱をもたらす場合がある。カウル170は、サセプタ144と似たように動作可能である。すなわち、磁界によって誘導加熱され、複合材レイアップ190の特定部分に熱を伝達する。具体的には、図1Bに示すように、カウル170は、複合材レイアップ190の非平面部194に熱的に連結される。カウル170によってもたらされるこの種の加熱は、局所加熱とも呼ばれ得る。
【0030】
コイルドライバが誘導コイル142を駆動する頻度は、複合材レイアップ190、サセプタ144、及びカウル170の性質、並びに処理パラメータ及びその他の要因に依存する。例えば、3kHzでの銅の電流浸透は、約1.5ミリメートルであるが、10kHzでの電流浸透は、約0.7ミリメートルである。コイルの形状は、磁界の均一性、ひいては、加熱/温度の均一性の制御に使用される。
【0031】
圧力は、1つ又は複数の型120とブラダー150との組み合わされた動作によって供給される。例えば、図1Aに示すように、誘導加熱セル100は、2つの型120を含む。複合材レイアップ190及びブラダー150に利用可能な空間を変更することは、ブラダー150の内部の圧力と、ブラダー150及び型120のうちの1つが複合材レイアップ190に作用する圧力との増加又は減少に用いられ得る。さらに、圧力を制御するため、ガスを、ブラダー150の中にポンプ供給してもよく、又は、ブラダー150からポンプ供給してもよい。特に、ブラダー150は、ガス源、ポンプ、バルブ等に接続され得る。
【0032】
幾つかの実施例では、ブラダー150は、薄い金属シート(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム又はマグネシウム合金)、ポリマーシート、又はその他の類似の材料から形成され得る。ブラダー150の特定の特性には、圧力保持能力、熱安定性、可撓性、適合性、及び熱膨張特性が含まれ得る。ブラダー150の可撓性により、圧力の均一配分、及び、例えば、複合材レイアップ190のプライドロップ(ply drop)又はその他の特徴への適合がもたらされる。ブラダー150の熱膨張特性により、複合材レイアップ190を処理した後にブラダー150を取り外すことが可能になる。
【0033】
幾つかの実施例では、型120は、複合材及び/又はセラミックなど、誘導加熱の影響を受けにくい材料から作られる。型120の材料は、低い熱膨張率、優れた耐熱衝撃性、及び相対的に高い圧縮強度を有し得る。その具体例は、シリカセラミックであり、又は、さらに具体的には、キャスタブル溶融シリカセラミック(castable fused silica ceramic)である。
【0034】
幾つかの実施例では、型120は、型120を支持し且つ型120の位置を制御するのに使用されるボルスタ(図示せず)間に位置付けされる。ボルスタは、剛性の平坦な裏打ち面を設ける。幾つかの実施例では、ボルスタは、鋼、アルミニウム、又はパネル形成中に存在する荷重を処理し得る任意の他の材料から形成される。特定の実施例では、アルミニウム又は一部の鋼合金などの非磁性材料がボルスタに使用され、それにより、誘導加熱器140によって生成された磁界に対する任意の変形が避けられる。
【0035】
図1Bに示し、さらに図2Aから図2Cに示すように、誘導加熱セル100は、1つ又は複数のマンドレル160を備えている。誘導加熱セル100の動作中、誘導加熱セル100は、非平面部194の形状に適合し、均一な圧力を非平面部194の表面195に加えるために使用される。マンドレル160は、一方向、例えば、Y方向に延びる単一の連続構造体であり得る。マンドレル160は、延長方向に対して垂直に延びる1つ又は複数の熱膨張スロット162を有し得る。代替的に、複数の切り離されたマンドレル160が延長方向に積層されてもよく、1つ又は複数の熱膨張スロット162が、これらの切り離されたマンドレル160を分離している。両方の実施例が、本開示の範囲内に含まれる。簡略化するために、両方の実施例に含まれるマンドレル160を参照する。同様に、これらのスロットの数(例えば、1つ、2つ、3つ等)に関わらず、熱膨張スロット162を参照する。
【0036】
熱膨張スロット162は、延長方向に沿った総膨張量が複合材レイアップ190及びマンドレル160にとって実質的に同一であるように、マンドレル160のCTE及び複合材レイアップ190のCTEに基づいて寸法形成される。幾つかの実施例では、マンドレル160は、アルミニウム、又は具体的には、アルミニウム合金を含む。アルミニウムは、高い熱伝導率を有し、これがシステム全体の温度の均一性を保つ助けとなり得る。複合材レイアップ190は、グラファイト補強複合材であり得る。アルミニウムのCTEは、22×10-6m/(m℃)であるが、グラファイト補強複合材のCTEは、約2×10-6m/(m℃)である。したがって、一方向のメートルごとに、100℃への温度上昇において、アルミニウム構造は、複合材構造より2ミリメートル膨張することになる。これらの材料及び処理条件について、マンドレル160は、延長方向の1メートル長につき2ミリメートルの総幅を有する1つ又は複数の熱膨張スロット162を使用し得る。当業者であれば、他の材料及び/又は処理条件についてこれらのパラメータをどのように測るべきかを理解されよう。マンドレル160は、複合材レイアップ190用の成形ツールとして使用可能である。複合材レイアップ190を型120の上に位置付けした後、マンドレル160が複合材レイアップ190の上に配置され得る。
【0037】
図1Bを参照すると、カウル170は、マンドレル160と複合材レイアップ190との間に位置付けされ、又は、より具体的には、少なくとも、マンドレル160と複合材レイアップ190の少なくとも非平面部194との間に位置付けされる。マンドレル160とは異なり、カウル170は、複合材レイアップ190のCTEに近いCTEを有する材料から形成される。より具体的には、カウル170のCTEと複合材レイアップ190のCTEとの間の差は、マンドレル160のCTEとカウル170のCTEとの間の差より少ない。幾つかの実施例では、カウル170は、鉄を含む合金から形成される。この合金は、合金内のニッケルの濃度が、例えば、約30原子%と47原子%との間である状態でニッケルをさらに含み得る。幾つかの実施例では、合金は、コバルトをさらに含む。これらの実施例では、合金内のニッケルの濃度は、約20原子%と40原子%との間であり得るが、合金内のコバルトの濃度は、約10原子%と20原子%との間であり得る。
【0038】
幾つかの実施例では、カウル170のCTEは、約2×10-6m/(m℃)と8×10-6m/(m℃)との間、又は、より具体的には、約3×10-6m/(m℃)と7×10-6m/(m℃)との間、例えば、約5×10-6m/(m℃)と6×10-6m/(m℃)との間である。複合材レイアップ190のCTEは、約1×10-6m/(m℃)と3×10-6m/(m℃)との間、又は、より具体的には、約2.5×10-6m/(m℃)と3.5×10-6m/(m℃)との間であり得る。マンドレル160のCTEは、約15×10-6m/(m℃)未満、又はさらに少なくとも約20×10-6m/(m℃)、例えば、約20×10-6m/(m℃)と25×10-6m/(m℃)との間であり得る。
【0039】
図2B及び図2Cに示すように、カウル170は、マンドレル160の熱膨張スロット162の上で延びる。したがって、カウル170は、複合材レイアップ190を、マンドレル160(及びマンドレルの大きな熱膨張及び収縮)から、具体的には、膨張及び収縮が最大となる膨張スロット162の端部から隔離する。さらに、カウル170は、複合材レイアップ190が膨張スロット162の中に延在することを防ぐ。熱と圧力により、複合材レイアップ190は、処理中に流動し得ることに留意するべきである。
【0040】
さらに、マンドレル160に接触するカウル170の表面は、例えば、複合材レイアップ190の非平面部194の表面195より機械的に強靱である。このようにして、カウル170は、マンドレル160の熱膨張及び収縮、並びに複合材レイアップ190に作用する、関連するせん断力に耐えることがさらに可能となる。これらのせん断力は、マンドレル160、カウル170、及び複合材レイアップ190によって形成された積層体における圧力に起因して、相当なものであり得る。図2Bに示すように、カウル170は、マンドレル160の長さの実質的全体にわたって、且つ、マンドレル160のすべての熱膨張スロット162の上で延在する連続シートであり得る。
【0041】
カウル170は、マンドレル160の形状に対して実質的に適合し、マンドレル160の形状形成機能に干渉しない。したがって、カウル170は、非平面形状を有し得る。幾つかの実施例では、カウル170は、約0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有する。カウル170は、非平面形状を有し得る。
【0042】
幾つかの実施例では、カウル170は、誘導加熱器140によって生成された磁界の影響を受ける。特に、カウル170は、熱を生成し、複合材レイアップ190の非平面部194を間接的に加熱し、それにより局所的な加熱をもたらすように構成されている。図1Bに示すように、非平面部194は、複合材レイアップ190の他の部分(平面部192など)よりも、誘導加熱器140のサセプタ144からさらに離れていることがあり、サセプタ144のみを使用して非平面部194を加熱することがより困難になる。それと同時に、複合材レイアップ190の処理(例えば、硬化及び/又は強化)のためには、温度の均一性が重要であり得る。
【0043】
処理例
図3は、複雑な表面形状を有する複合材部品191を形成するために使用され得る方法300に対応するプロセスフロー図を示す。複合材部品191は、複合材レイアップ190から形成される。図4Aから図4Fは、幾つかの実施例に係る方法300の種々の段階の概略図である。
【0044】
方法300は、型120の上に複合材レイアップ190を位置付けするステップ310を含む。複合材レイアップ190は、平面部192、及び型120から離れる方向に平面部192から離れて延びる非平面部194を備えている。図4Aは、型120の上に配置された、又は、より具体的には、型120の上に位置付けされたサセプタ144の上に配置された、複合材レイアップ190の実施例を示す。非平面部194は、少なくともZ方向で、平面部192から離れて延びる。幾つかの実施例では、複合材レイアップ190は、ブラダー150上に位置付けされ得る。
【0045】
このステップの後、複合材レイアップ190は、型120及び/又はサセプタ144に直接接触し得る。幾つかの実施例では、複合材レイアップ190に接触する型120及び/又はサセプタ144の表面は、複合材レイアップ190のこの部分の形状を画定する。図4Aは、複合材レイアップ190の底面が平坦であるように示しているが、当業者であれば、様々な種類の形状が範囲内にあることを理解されよう。
【0046】
このステップの間、様々な位置付け技法が使用され得る。例えば、複合材レイアップ190は、ブレイディング、テープ積層、トウ積層、又は任意の他の望ましい複合材レイアップ技法のうちの少なくとも1つを用いて位置付けされ得る。さらに、位置付けするステップ310は、複合材レイアップ190を形成する個々の部品(例えば、プライ)の正確な位置付けを確実に補助するために、レーザが関わる場合がある。
【0047】
幾つかの実施例では、複合材レイアップ190は、編組熱可塑性材料、仮留めされた熱可塑性材料、又は任意の他の適切な熱可塑性材料のうちの少なくとも1つを含む。複合材レイアップ190の厚さは、複合材レイアップ190にわたって、一定又は変動的であり得る。例えば、複合材レイアップ190は、プライドロップ又はプライ添加物(ply additions)を有し得、これらは、例えば、非平面部194を形成するために、厚さの変動を引き起こす。
【0048】
方法300は、複合材レイアップ190の非平面部194の上にカウル170を位置付けするステップ320をさらに含む。カウル170は、非平面部194の表面195に適合するように構成されている。カウルの様々な例が上記で説明されている。幾つかの実施例では、カウル170のCTEは、マンドレル160のCTEより複合材レイアップ190のCTEに近い。例えば、カウル170は、鉄を含む合金から形成されてもよく、幾つかの実施例では、ニッケルを含む合金から形成されてもよい。幾つかの実施例では、合金は、コバルトをさらに含む。カウル170は、非平面部194の形状、及びマンドレル160の形状に適合することが可能である。このようにして、カウル170は、十分に薄い(例えば、約0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間)場合がある。このステップを完成した後、カウル170は、複合材レイアップ190の非平面部194に直接接触する。図4Bは、複合材レイアップ190の非平面部194の上にカウル170が位置付けされた実施例を示す。カウル170は、マンドレル160がない状態で示されているが、マンドレルは後の工程で導入され得る。
【0049】
方法300は、カウル170が1つ又は複数のマンドレル160と非平面部194との間に配置されるように、1つ又は複数のマンドレル160をカウル170の上に位置付けする任意選択的なステップ330を含む。このステップは、任意選択的である。幾つかの実施例では、方法300を実行する前に、カウル170が1つ又は複数のマンドレル160に取り付けられる。
【0050】
マンドレル160の様々な例が上記で説明されている。幾つかの実施例では、1つ又は複数のマンドレル160は、熱膨張スロット162を備えている。熱膨張スロット162は、マンドレル160の熱サイクルの間、例えば、複合材レイアップ190を加熱するステップ360の間、幅を変更する。複合材レイアップ190が熱膨張スロット162の中に浸透できないように、カウル170は熱膨張スロット162にかかる。さらに、カウル170は、複合材レイアップ190をマンドレル160から分離し、マンドレル160が、複合材レイアップ190に干渉することなく、膨張且つ収縮することを可能にする。これにより、アルミニウム又はアルミニウム合金などの任意の適切な材料からマンドレル160を形成することを可能にする。図4Cは、カウル170の上に位置付けされたマンドレル160の実施例を示す。
【0051】
方法300は、1つ又は複数のマンドレル160の上に、且つ、複合材レイアップ190の平面部192の上にブラダー150を位置付けするステップ340を含む。ブラダー150は、複合材レイアップ190に均一な圧力を加えて、それを維持するために使用される。幾つかの実施例では、図4Dに示すように、ブラダー150は、1つ又は複数のマンドレル160及び複合材レイアップ190の平面部192の上に直接接触し得る。
【0052】
方法300は、誘導加熱器140を使用して、複合材レイアップ190を加熱するステップ360を含む。例えば、誘導コイル142は、磁界を生成し得る。この磁界は、複合材レイアップ190(例えば、複合材レイアップ190が磁界の影響を受けるものである場合)及び/又はサセプタ144(例えば、サセプタ144が使用される場合)と直接相互作用する。特に、サセプタ144が使用される場合、複合材レイアップ190を加熱するステップ360は、磁界を使用して、誘導加熱器140のサセプタ144を誘導加熱するステップ362を含む。サセプタ144は、複合材レイアップ190に熱的に連結され、生成された熱を複合材レイアップ190に伝達する。複合材レイアップ190の直接的及び間接的な加熱の様々な例が以下でさらに説明される。
【0053】
幾つかの実施例では、複合材レイアップ190を加熱するステップ360は、カウル170を誘導加熱する任意選択的なステップ366を含む。複合材レイアップ190及び/又はサセプタ144と同様に、カウル170は、誘導加熱器140によって生成された磁界を使用して誘導加熱される。これにより、複合材レイアップ190の非平面部194の局所化された加熱がもたらされる。複合材レイアップ190の非平面部194は、サセプタなどの誘導加熱器140の加熱構成要素からさらに離れていることがある。
【0054】
方法300は、ブラダー150を使用して、1つ又は複数のマンドレル160及び複合材レイアップ190の平面部192に圧力を加えるステップ370を含む。例えば、ブラダー150の内部の圧力を増大するために、ブラダー150によって占有された空間を縮小することができる(2つの型の間の空間が縮小し得る)。同じ又は他の実施例では、圧力を増大するために、ガスがブラダー150内に供給され得る。
【0055】
複合材レイアップ190が、編組熱可塑性材料である場合、複合材レイアップ190のスリットは、互いに対して動く場合がある。複合材レイアップ190の編組スリットの動きは、加圧ステップで起こり得る。複合材レイアップ190の編組スリットの動きは、結果として得られる複合材部品191の品質を改善し得る。ブラダー150が加圧されると、型が耐圧をもたらす。言い換えると、型は、実質的に剛性な外側モールドラインを設け得る。
【0056】
複合材レイアップ190が加熱且つ圧縮されるにつれて、複合材レイアップ190の熱可塑性材料が強化される。例えば、複合材レイアップ190の樹脂は、流動且つ凝固する。幾つかの実施例では、複合材レイアップ190を加熱するステップ360、及びブラダー150を使用して、圧力を加えるステップ370は、時間的に重複する。幾つかの実施例では、複合材レイアップ190を加熱するステップ360、及びブラダー150を使用して、圧力を加えるステップ370は、複合材レイアップ190から複合材部品191を形成する。
【0057】
複合材部品191の幾つかの実施例には、補強材を備えた翼、飛行操縦翼面、及び胴体ドアが含まれる。航空機の重量を減らすため、航空機では複合材料が使用されていることに留意するべきである。この軽量化により、ペイロード能力及び燃費効率などの性能特徴が改善される。さらに、複合材料により航空機の様々な構成要素の寿命が延びる。
【0058】
例示的な実施形態に関する例示的な実施例は、航空機に関して説明されているが、例示的な実施例は、他の型のプラットフォームに応用することができる。プラットフォームは、例えば、移動式プラットフォーム、固定式プラットフォーム、陸上構造物、水上構造物、及び宇宙構造物であり得る。より具体的には、プラットフォームは、水上艦、戦車、人員運搬機、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家屋、風車、製造施設、建造物、及び他の適切なプラットフォームであってよい。
【0059】
航空機の実施例
上記で開示されたシステム、装置、及び方法は、飛行機及び航空宇宙産業に関して説明されているが、本明細書に開示された実施例は、自動車、鉄道などの他の任意の局面、並びに、それ以外の機械的な且つビークルに関する局面にも適用され得ることを認識されたい。
【0060】
したがって、本開示の実施例は、図5に示す航空機の製造及び保守方法900、並びに図6に示す航空機920に関連して説明され得る。製造前の段階では、例示的な方法900は、航空機920の仕様及び設計904、並びに材料調達906を含み得る。製造段階では、航空機920の構成要素及びサブアセンブリの製造908、並びにシステムインテグレーション910が行われる。その後、航空機920は、認可及び納品912を経て、運航914に供される。顧客によって運航される間、航空機920は、定期的な整備及び保守916(改造、再構成、改修等も含み得る)が予定される。
【0061】
方法900の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレーター(例えば、顧客)によって実施又は実行され得る。本明細書の目的のために、システムインテグレータは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含んでもよく、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含んでもよく、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであってもよい。
【0062】
図6に示すように、例示的な方法900によって製造された航空機920は、複数のシステム920及び内装922を有する機体918を含み得る。高レベルシステム920の実施例には、推進システム924、電気システム926、液圧システム928、及び環境システム930のうちの1つ又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムも含まれてよい。ここでは航空宇宙産業の実施例を示しているが、本明細書に開示された実施例の原理は、自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0063】
本明細書で具現化された装置及び方法は、製造及び保守方法900の任意の1つ又は複数の段階において用いられ得る。例えば、構成要素及びサブアセンブリの製造908に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機920の運航期間中に製造される構成要素又はサブアセンブリと同様の態様で製作又は製造され得る。さらに、1つ又は複数の装置の実施例、方法の実施例、又はこれらの組み合わせは、例えば、航空機920の組み立てを実質的に効率化するか、又は、航空機920のコストを削減することにより、製造908及びシステムインテグレーション910の段階で利用され得る。同様に、装置の実施例、方法の実施例、又はこれらの組み合わせのうちの1つ又は複数は、航空機920の運航中、例えば、限定しないが、整備及び保守916に利用され得る。
【0064】
前述の概念は、理解の明確化を目的としてやや詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲内で、ある一定の変更及び修正が実践され得ることは明白であろう。プロセス、システム、及び装置の実装には、多数の代替的な様態があることに留意されたい。したがって、本明細書の実施例は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなすべきである。
【0065】
結論
本開示に係る発明の特徴の例示的且つ非排他的な実施例は、以下に列挙される段落に記載される。
【0066】
A1
型120の上に複合材レイアップ190を位置付けするステップ310であって、複合材レイアップ190が、平面部192、及び型120から離れる方向に平面部192から離れて延びる非平面部194を備えている、位置付けするステップ310、
複合材レイアップ190の非平面部194の上にカウル170を位置付けするステップ320であって、カウル170が、非平面部194の表面195に適合するように構成されている、位置付けするステップ320、
カウル170の上にマンドレル160を位置付けするステップ330であって、カウル170が、マンドレル160と非平面部194との間に配置され、カウル170のCTEと複合材レイアップ190のCTEとの間の差が、マンドレル160のCTEとカウル170のCTEとの間の差より少ない、位置付けするステップ330、
マンドレル160の上に、且つ、複合材レイアップ190の平面部192の上にブラダー150を位置付けするステップ340、
誘導加熱器140を使用して、複合材レイアップ190を加熱するステップ360、並びに
ブラダー150を使用して、マンドレル160及び複合材レイアップ190の平面部192に圧力を加えるステップ370
を含む方法300。
【0067】
A2
誘導加熱器140を使用して、複合材レイアップ190を加熱するステップ360が、誘導加熱器140によって生成された磁界を使用して、カウル170を誘導加熱するステップ366を含む、段落A1に記載の方法300。
【0068】
A3
カウル170が、複合材レイアップ190の非平面部194に直接接触する、段落A1からA2に記載の方法300。
【0069】
A4
誘導加熱器140を使用して、複合材レイアップ190を加熱するステップ360が、誘導加熱器140によって生成された磁界を使用して、誘導加熱器140のサセプタ144を誘導加熱するステップ362を含む、段落A1からA3に記載の方法300。
【0070】
A5
複合材レイアップ190が、サセプタ144とカウル170との間に配置される、段落A1からA4に記載の方法300。
【0071】
A6
複合材レイアップ190が、誘導加熱器140によって生成された磁界に対して少なくとも部分的に透過性である、段落A1からA5に記載の方法300。
【0072】
A7
複合材レイアップ190を加熱するステップ360と、ブラダー150を使用して、圧力を加えるステップ370とが時間的に重複する、段落A1からA6に記載の方法300。
【0073】
A8
マンドレル160が、熱膨張スロット162を備え、
熱膨張スロット162が、複合材レイアップ190を加熱するステップ360の間に幅を変更し、且つ
カウル170が、熱膨張スロット162のうちの少なくとも1つの上で延在する、段落A1からA7に記載の方法300。
【0074】
A9
カウル170が、マンドレル160の長さの実質的全体にわたって、且つ、すべての熱膨張スロット162の上で延在する連続シートである、段落A1からA8に記載の方法300。
【0075】
A10
マンドレル160が、複合材レイアップ190に直接接触しない、段落A1からA9に記載の方法300。
【0076】
A11
マンドレル160が、アルミニウムを含む、段落A1からA10に記載の方法300。
【0077】
A12
カウル170が、鉄を含む合金から形成される、段落A1からA11に記載の方法300。
【0078】
A13
前記合金が、ニッケルをさらに含む、段落A12に記載の方法300。
【0079】
A14
前記合金内のニッケルの濃度が、約30原子%と47原子%との間である、段落A13に記載の方法300。
【0080】
A15
前記合金が、コバルトをさらに含む、段落A13に記載の方法300。
【0081】
A16
合金内のニッケルの濃度が、約20原子%と40原子%との間であり、且つ
合金内のコバルトの濃度が、約10原子%と20原子%との間である、段落A15に記載の方法300。
【0082】
A17
カウル170が、約0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有する、段落A1からA16に記載の方法300。
【0083】
A18
カウル170が、非平面形状を有する、段落A1からA17に記載の方法300。
【0084】
A19
複合材レイアップ190を加熱するステップ360、及びブラダー150を使用して、圧力を加えるステップ370が、複合材レイアップ190から複合材部品191を形成する、段落A1からA18に記載の方法300。
【0085】
A20
複合材部品191が、補強材を備えた翼部品、飛行操縦翼面、又は胴体ドアをのうちの1つである、段落A19に記載の方法300。
【0086】
B1
平面部192、及び平面部192から離れて延びる非平面部194を備えた複合材レイアップ190を処理するための誘導加熱セル100であって、
複合材レイアップ190を受け容れるように構成された型120、
複合材レイアップ190を誘導加熱するように構成された誘導加熱器140、
複合材レイアップ190の非平面部194の上に配置され、複合材レイアップ190の非平面部194に適合するように構成されたカウル170、
カウル170の上に配置されるように構成されたマンドレル160であって、カウル170のCTEと複合材レイアップ190のCTEとの間の差が、マンドレル160のCTEとカウル170のCTEとの間の差より少ない、マンドレル160、並びに
マンドレル160、及び複合材レイアップ190の平面部192の上に配置されるように構成されたブラダー150
を備えている、誘導加熱セル。
【0087】
B2
カウル170が、誘導加熱器140によって生成された磁界の影響を受けるものであり、熱を生成し且つ複合材レイアップ190の非平面部194を間接的に加熱するように構成されている、段落B1に記載の誘導加熱セル100。
【0088】
B3
誘導加熱器140が、熱を生成し且つ複合材レイアップ190を加熱するためのサセプタ144を備えている、段落B1からB2に記載の誘導加熱セル100。
【0089】
B4
マンドレル160が、熱膨張スロット162を備え、
マンドレル160が、熱サイクルの間に熱膨張スロット162の幅を変更するように構成され、且つ
カウル170が、熱膨張スロット162のうちの少なくとも1つの上で延在する、段落B1からB3に記載の誘導加熱セル100。
【0090】
B5
カウル170が、マンドレル160の長さの実質的全体にわたって、且つ、すべての熱膨張スロット162の上で延在する連続シートである、段落B1からB4に記載の誘導加熱セル100。
【0091】
B6
マンドレル160が、アルミニウムを含む、段落B1からB5に記載の誘導加熱セル100。
【0092】
B7
カウル170が、鉄を含む合金から形成される、段落B1からB6に記載の誘導加熱セル100。
【0093】
B8
前記合金が、ニッケルをさらに含む、段落B7に記載の誘導加熱セル100。
【0094】
B9
前記合金内のニッケルの濃度が、約30原子%と47原子%との間である、段落B8に記載の誘導加熱セル100。
【0095】
B10
前記合金が、コバルトをさらに含む、段落B8に記載の誘導加熱セル100。
【0096】
B11
合金内のニッケルの濃度が、約20原子%と40原子%との間であり、且つ
合金内のコバルトの濃度が、約10原子%と20原子%との間である、段落B10に記載の誘導加熱セル100。
【0097】
B12
カウル170が、約0.3ミリメートルと0.7ミリメートルとの間の厚さを有する、段落B1からB11に記載の誘導加熱セル100。
【0098】
B13
カウル170が、非平面形状を有する、段落B1からB12に記載の誘導加熱セル100。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3
図4A-4C】
図4D-4F】
図5
図6