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特許7211809流木捕捉体および流木捕捉体の構築工法ならびに流木捕捉工の設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】流木捕捉体および流木捕捉体の構築工法ならびに流木捕捉工の設置構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018244109
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105764
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】國領 ひろし
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042735(WO,A1)
【文献】特開平11-236713(JP,A)
【文献】特開2012-012815(JP,A)
【文献】特開2017-072020(JP,A)
【文献】特開2005-200933(JP,A)
【文献】特開昭62-050522(JP,A)
【文献】特開平09-105122(JP,A)
【文献】特開2002-121728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00 -7/18
E02B 8/00
E02B 8/06 -8/08
E02D 29/00
E02D 29/045-37/00
E02D 17/00 -17/20
E02D 27/00 -27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体であって、
前記流木捕捉体は、閉断面空間を形成する閉断面形成部材と、前記閉断面空間内に充填される中詰材と、前記閉断面空間から下方に突出して前記中詰材に固定される杭基礎と、前記閉断面空間から立ち上がり前記中詰材に固定される流木捕捉柱部材とからなることを特徴とする、流木捕捉体。
【請求項2】
前記杭基礎と前記流木捕捉柱部材とは、機械式継手で一連に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載した流木捕捉体。
【請求項3】
前記流木捕捉柱部材は、前記閉断面空間内に設けられ前記中詰材に固定される鞘管内に脱着可能に挿入して立ち上がる構成であることを特徴とする、請求項1に記載した流木捕捉体。
【請求項4】
前記杭基礎は、前記鞘管の底面に接合されていることを特徴とする、請求項3に記載した流木捕捉体。
【請求項5】
前記杭基礎は、前記鞘管に垂設されるガイドフレームに対して相対移動可能に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載した流木捕捉体。
【請求項6】
前記杭基礎における前記突出部分も固定されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載した流木捕捉体。
【請求項7】
砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体であって、
前記流木捕捉体は、閉断面空間を形成する閉断面形成部材と、前記閉断面空間内に充填される中詰材と、前記閉断面空間を上下に貫通するように立設され前記中詰材に固定される流木捕捉柱部材とからなることを特徴とする、流木捕捉体。
【請求項8】
前記流木捕捉柱部材における前記閉断面空間から下方へ突き出した部分も固定されていることを特徴とする、請求項7に記載した流木捕捉体。
【請求項9】
前記閉断面形成部材は、複数のセグメントを連結して構成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載した流木捕捉体。
【請求項10】
前記流木捕捉柱部材は、1本又は複数本であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載した流木捕捉体。
【請求項11】
前記閉断面形成部材は、平面的にみて、円形状、小判形状、又は矩形状に形成されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載した流木捕捉体。
【請求項12】
前記鞘管は、有底筒状に形成されていることを特徴とする、請求項3~6及び9~11のいずれか1項に記載した流木捕捉体。
【請求項13】
前記鞘管は、その上端が前記中詰材の表面と略面一に埋め込まれていることを特徴とする、請求項3~6及び9~12のいずれか1項に記載した流木捕捉体。
【請求項14】
砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体の構築工法であって、
前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材を立設すると共に、杭基礎を前記閉断面空間から下方に突出する構成で設置する工程と、
前記杭基礎の上端部に流木捕捉柱部材を接合して前記閉断面空間から立ち上げる工程と、
前記閉断面空間内に中詰材を充填して前記杭基礎と前記流木捕捉柱部材とを固定する工程と、
からなることを特徴とする、流木捕捉体の構築工法。
【請求項15】
砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体の構築工法であって、
前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材を立設すると共に、上端部に有底筒状の鞘管を備えた杭基礎を前記閉断面空間から下方に突出する構成で設置する工程と、
前記閉断面空間内に中詰材を充填して前記杭基礎及び前記鞘管を固定すると共に、前記鞘管内に流木捕捉柱部材を挿入して立ち上げる工程と、
からなることを特徴とする、流木捕捉体の構築工法。
【請求項16】
砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体の構築工法であって、
前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材を立設すると共に、流木捕捉柱部材を前記閉断面空間を上下に貫通する構成で設置する工程と、
前記閉断面空間内に中詰材を充填して前記流木捕捉柱部材を固定する工程と、
からなることを特徴とする、流木捕捉体の構築工法。
【請求項17】
砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉工の設置構造であって、
前記流木捕捉工は、複数の請求項1~13のいずれかの流木捕捉体からなり、前記複数の流木捕捉体は、前記流木捕捉柱部材の間隔が、想定される最大流木長の1/3~1/2程度に離間し、かつ、想定される流木を捕捉するのに適正な配置に設置されていることを特徴とする、流木捕捉工の設置構造。
【請求項18】
前記複数の流木捕捉体は、河川横断方向に略直線状の配置に離間して設置されていることを特徴とする、請求項17に記載した流木捕捉工の設置構造。
【請求項19】
前記複数の流木捕捉体は、略扇形状又は略逆扇形状を形成する配置に離間して設けられていることを特徴とする、請求項17に記載した流木捕捉工の設置構造。
【請求項20】
前記複数の流木捕捉体は、河川横断方向に沿って蛇行する配置に離間して設けられていることを特徴とする、請求項17に記載した流木捕捉工の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砂防、治山等の目的で河川の横断方向に構築される堰堤(以下、「砂防堰堤」と総称する。)に対し、その上流側に設置する流木捕捉体(流木捕捉工)の技術分野に属する。
なお、前記砂防堰堤は、既設、新設を問わない。また、主に不透過型を対象とするが、透過型であっても構わない。
【背景技術】
【0002】
近年、流木捕捉対策工が進められており、下流側での災害をより効率よく防止するべく、前記砂防堰堤に流木捕捉工(流木捕捉機能)を付設することが要請されている。
しかし、前記砂防堰堤に前記流木捕捉工を後付けで設置する場合、前記砂防堰堤自体の強度が不足するためにコンクリートを増し打ちする必要があり、また、増し打ちしないときは設置できる大きさに限界があるため十分な流木の捕捉能力を得ることが困難である等、種々の問題があった。
そこで近年、前記砂防堰堤の上流側に、前記砂防堰堤とは切り離した構造の流木捕捉工を設置する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1には、同文献1の図2が分かりやすいように、堰堤2の上流側の堆砂域に、前記堰堤2とは切り離した構成の捕捉体(流木捕捉工)3が開示されている。
この捕捉体3は、堰堤2の延在方向に沿って延在する1本の梁部31と、この梁部31の延在方向に沿って所定間隔おきに複数個連結された柱部32と、柱部32を保持する基礎部33とが一体的に構成されている。前記基礎部33は、前記複数の柱部32をすべて一纏めに立設する構成の広大な規模の連続する底版コンクリートで形成されている(詳しくは、明細書の段落[0026]参照)。
【0004】
前記特許文献1によれば、既設の堰堤2に手を加えることなく、捕捉体3を効果的に設置でき、工事にかかるコストや時間を抑えることができる、旨の記載が認められる(明細書の段落[0021](発明の効果)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-72020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に係る捕捉体(流木捕捉工)3は、前記複数の柱部32をすべて一纏め(一体的)に立設するための広大な規模の連続する基礎部33を構築するので、必然的に多くのコンクリート量が必要となり、コストが嵩む問題があった。コンクリートの山間部への運搬や打設作業を考慮すると、非常に煩雑でもあった。
また、堰堤2の上流側の堆砂域は地盤が緩いため、不同沈下が発生した場合は、この影響が前記基礎部33の全体に及ぶので、捕捉体(流木捕捉工)3が機能しなくなることが懸念された。
さらに、捕捉体(流木捕捉工)3の補修工事も大掛かりなものとなり煩わしかった。
【0007】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、堰堤の上流側に、前記堰堤とは切り離した構造で、かつ、隣接した流木捕捉体(の基礎同士)も切り離した構造で実施することにより、使用するコンクリート量を抑制でき、対策の必要な箇所に最適な配置で設置できる、施工性、経済性、及び自在性に優れた流木捕捉体および流木捕捉体の構築工法ならびに流木捕捉工の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る流木捕捉体は、砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体であって、
前記流木捕捉体は、閉断面空間を形成する閉断面形成部材と、前記閉断面空間内に充填される中詰材と、前記閉断面空間から下方に突出して前記中詰材に固定される杭基礎と、前記閉断面空間から立ち上がり前記中詰材に固定される流木捕捉柱部材とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した流木捕捉体において、前記杭基礎と前記流木捕捉柱部材とは、機械式継手で一連に接合されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した流木捕捉体において、前記流木捕捉柱部材は、前記閉断面空間内に設けられ前記中詰材に固定される鞘管内に脱着可能に挿入して立ち上がる構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した流木捕捉体において、前記杭基礎は、前記鞘管の底面に接合されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載した発明は、請求項3に記載した流木捕捉体において、前記杭基礎は、前記鞘管に垂設されるガイドフレームに対して相対移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載した発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載した流木捕捉体において、前記杭基礎における前記突出部分も固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載した発明に係る流木捕捉体は、砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体であって、前記流木捕捉体は、閉断面空間を形成する閉断面形成部材と、前記閉断面空間内に充填される中詰材と、前記閉断面空間を上下に貫通するように立設され前記中詰材に固定される流木捕捉柱部材とからなることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載した発明は、請求項7に記載した流木捕捉体において、前記流木捕捉柱部材における前記閉断面空間から下方へ突き出した部分も固定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載した発明は、請求項1~8のいずれか1項に記載した流木捕捉体において、前記閉断面形成部材は、複数のセグメントを連結して構成されることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載した発明は、請求項1~9のいずれか1項に記載した流木捕捉体において、前記流木捕捉柱部材は、1本又は複数本であることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載した発明は、請求項1~10のいずれか1項に記載した流木捕捉体において、前記閉断面形成部材は、平面的にみて、円形状、小判形状、又は矩形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載した発明は、請求項3~6及び9~11のいずれか1項に記載した流木捕捉体において、前記鞘管は、有底筒状に形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載した発明は、請求項3~6及び9~12のいずれか1項に記載した流木捕捉体において、前記鞘管は、その上端が前記中詰材の表面と略面一に埋め込まれていることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載した発明に係る流木捕捉体の構築工法は、砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体の構築工法であって、
前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材を立設すると共に、杭基礎を前記閉断面空間から下方に突出する構成で設置する工程と、
前記杭基礎の上端部に流木捕捉柱部材を接合して前記閉断面空間から立ち上げる工程と、
前記閉断面空間内に中詰材を充填して前記杭基礎と前記流木捕捉柱部材とを固定する工程と、からなることを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載した発明に係る流木捕捉体の構築工法は、砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体の構築工法であって、
前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材を立設すると共に、上端部に有底筒状の鞘管を備えた杭基礎を前記閉断面空間から下方に突出する構成で設置する工程と、
前記閉断面空間内に中詰材を充填して前記杭基礎と前記鞘管とを固定すると共に、前記鞘管内に流木捕捉柱部材を挿入して立ち上げる工程と、からなることを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載した発明に係る流木捕捉体の構築工法は、砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉体の構築工法であって、
前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材を立設すると共に、流木捕捉柱部材を前記閉断面空間を上下に貫通する構成で設置する工程と、
前記閉断面空間内に中詰材を充填して前記流木捕捉柱部材を固定する工程と、からなることを特徴とする。
【0024】
請求項17に記載した発明に係る流木捕捉体の設置構造は、砂防堰堤の上流側に設置される流木捕捉工の設置構造であって、
前記流木捕捉工は、複数の請求項1~13のいずれかの流木捕捉体からなり、前記複数の流木捕捉体は、前記流木捕捉柱部材の間隔が、想定される最大流木長の1/3~1/2程度に離間し、かつ、想定される流木を捕捉するのに適正な配置に設置されていることを特徴とする。
【0025】
請求項18に記載した発明は、請求項17に記載した流木捕捉工の設置構造において、前記複数の流木捕捉体は、河川横断方向に略直線状の配置に離間して設置されていることを特徴とする。
【0026】
請求項19に記載した発明は、請求項17に記載した流木捕捉工の設置構造において、前記複数の流木捕捉体は、略扇形状又は略逆扇形状を形成する配置に離間して設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項20に記載した発明は、請求項17に記載した流木捕捉工の設置構造において、前記複数の流木捕捉体は、河川横断方向に沿って蛇行する配置に離間して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る流木捕捉体および流木捕捉体の構築工法ならびに流木捕捉工の設置構造によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)1体あたりの流木捕捉体の径を2.5m程度(2.5m程度以上でも以下でも可)の独立基礎形式で堆砂域(堆砂敷)に設置できるので、砂防堰堤とは切り離した構造で実施できることはもとより、隣接する流木捕捉体同士も切り離した構造で実施でき、従来のような広大な規模の連続する底版コンクリートの基礎部を必要としない。
よって、使用するコンクリート量を抑制でき、対策の必要な箇所に最適な配置で流木捕捉体を複数設置できる(図1図4、及び図5等参照)等、施工性、経済性、及び自在性に優れた流木捕捉体および流木捕捉体の構築工法ならびに流木捕捉工の設置構造を実現できる。
(2)本発明に係る流木捕捉体は、いわゆる杭基礎構造で実施することにより流水抵抗力を効果的に高めることができるので、堆砂域に設置する閉断面形成部材(閉断面空間)、ひいては流木捕捉体自体のコンパクト化を実現できる。よって、経済性、自在性に優れている。
(3)流木捕捉体の形態は、堆砂域の地形(図5参照)に応じて適宜設計変更可能であり、流木捕捉体の配置は、設置箇所の堆砂域の強度や高さ等の性状に応じて、単配置でも複数配置でもよく、複数配置の場合はランダム配置のほか、河川横断方向に略直線状の配置に離間して設置できるし(図1等参照)、略扇形状(図4B参照)又は略逆扇形状(図4A参照)を形成する配置に離間して設置できるし、河川横断方向に沿って蛇行する配置に離間して設置することもできる。例えば、堆砂域の地形や設置箇所の堆砂域の性状に応じて図2に係る流木捕捉体と図6に係る流木捕捉体と図11に係る流木捕捉体とを混在させて実施することもできる。
(4)独立基礎形式で実施しているので、流木捕捉体が沈下又は倒れを生じても、他の流木捕捉柱体に影響を与えることはない。損傷した場合は、損傷した流木捕捉体を補修することで対応できるので、経済的かつ合理的である。
(5)独立基礎形式で実施しているので、隣接する流木捕捉体の構築作業の進捗状況等に一切左右されることなく構築でき、流木捕捉体の設置の順序にも制約がなく、複数年にわたる分割施工や施設の追加、撤去を容易に行うことができる。
(6)例えば、ライナープレートで実施する場合は、土留め、仮締め切りが可能で地下水を有する現場でもポンプアップが容易となりドライ施工も可能で施工性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】Aは、本発明に係る流木捕捉体を堰堤の上流側に設置した状態を概略的に示した平面図であり、Bは同立面図である。
図2】Aは、本発明に係る流木捕捉体の実施例1を示した立面図であり、Bは、同立断面図であり、Cは、同平面図である。
図3】A~Cは、流木捕捉柱部材を鞘管に取り付ける手法を段階的に示した説明図であり、DとEは、Cの要部を示した平断面図である。
図4】A、Bは、本発明に係る流木捕捉体を堰堤の上流側に設置した状態のバリエーションを概略的に示した平面図である。
図5】A、Bは、本発明に係る流木捕捉体を堰堤の上流側に設置した状態を上流側からみたバリエーション図である。
図6】本発明に係る流木捕捉体の実施例2を示した立面図である。
図7】Aは、図6に係る流木捕捉体の杭基礎と流木捕捉柱部材との接合部を正面方向から拡大して示した説明図であり、Bは、AのB-B線矢視断面図である。
図8】Aは、図6に係る流木捕捉体の杭基礎と流木捕捉柱部材との接合部を側面方向から拡大して示した説明図であり、Bは、AのB-B線矢視断面図である。
図9図6に係る流木捕捉体の杭基礎の突き出し寸法を長く調整したバリエーション図である。
図10図6に係る流木捕捉体の杭基礎の突き出し寸法を更に長く調整したバリエーション図である。
図11】本発明に係る流木捕捉体の実施例3を示した立面図である。
図12】本発明に係る流木捕捉体の実施例3のバリエーションを示した立面図である。
図13】本発明に係る流木捕捉体のバリエーションを概略的に示した平面図であり、Bは、同立面図である。
図14】本発明に係る流木捕捉体のバリエーションを概略的に示した平面図であり、Bは、同立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係る流木捕捉体および流木捕捉体の構築工法ならびに流木捕捉工の設置構造の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0031】
図1A、Bは、砂防堰堤10の上流側に、本発明に係る流木捕捉体1を複数(図示例では直線状に5体)設置して河川の上流側から流れてくる流木を捕捉する実施例を示している。ちなみに図中の符号Sは元渓床面を示し、符号Tは堆砂面を示している。
【0032】
前記流木捕捉体1は、図2に示したように、閉断面空間を形成する閉断面形成部材2と、前記閉断面空間内に充填される中詰材3と、前記閉断面空間から下方に突出して中詰材3に固定される杭基礎4と、前記閉断面空間から立ち上がり前記中詰材3に固定される流木捕捉柱部材5とからなる。
【0033】
前記閉断面形成部材2は、本実施例では、所要の強度・剛性を備えた複数のセグメント12を連結してなる構成で実施されている。より具体的には、一例として、外径が2.5m程度の円筒形を周方向に略5等分割したに等しい弧状に形成され、その上下左右の端部には内側に突出するフランジが設けられた、高さが50cm程度のライナープレート12で実施されている。
図2に係る閉断面形成部材2は、前記ライナープレート12を周方向に5体(図2C参照)、及び軸方向に4体を千鳥状にフランジ接続し、もって直径が2.5m程度、高さが2m程度の円筒形状に構築されている。
【0034】
なお、前記ライナープレート12の形状や大きさは前記に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。前記閉断面形成部材2の形状や大きさも勿論前記に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
もっとも、前記閉断面形成部材2を構成する部材は前記ライナープレート12に限定されず、閉断面空間を形成できる所要の強度、剛性を備えた部材であればよい。例えば、鋼製セグメント、PCセグメント、コルゲートパイプ、鋼板セル、鋼矢板セル、大口径管、又は型枠でも同様に実施できる。前記型枠で実施する場合は、コンクリート3の養生後に撤去(脱型)することができる。
以下に説明する実施例についても同様の技術的思想とする。
【0035】
前記中詰材3は、本実施例ではコンクリート3で実施しているがこれに限定されず、ソイルセメントでも同様に実施できる。
前記杭基礎4は、堆砂域に設置される前記閉断面形成部材2よりも下方へ根入れする構成で実施することにより流水抵抗力を高め、河川の水力に対して合理的かつ効果的に抵抗するために設けられる。よって、閉断面形成部材2のコンパクト化を合理的に実現できる。本実施例では、一例として、外径が320mm程度、高さが2600mm程度の丸形鋼管が用いられ、その上半部分が前記閉断面形成部材2(閉断面空間)の内部に位置決めされ、下半部分を堆砂域に根入れする(埋め込む)構成で実施される。
また、本実施例では、前記杭基礎4の上端部に、前記流木捕捉柱部材5を脱着可能に挿入して立設するための鞘管6が溶接等の接合手段で一体的に設けられている。
【0036】
前記鞘管6は、角形鋼管とベースプレートとからなる金属製の有底筒状で実施されており、前記杭基礎4を堆砂域に根入れして鉛直に立設することで、前記閉断面空間の略中央の上方部に位置決めされる。より具体的には、充填するコンクリート3が鞘管6の内部に入り込まないように前記鞘管6の上端と閉断面形成部材2の上端との高さレベルを略揃えて、前記コンクリート3の表面と略面一に埋め込まれる部位に位置決めされる。
本実施例に係る鞘管6の大きさは一例として、高さが650mm程度、ベースプレートの一辺が700mm程度、ベースプレート上面の角形鋼管部の幅が500mm程度、肉厚が9mm程度で実施されている。
【0037】
前記流木捕捉柱部材5は、金属製の丸形鋼管で実施されており、前記鞘管6に脱着可能に挿入され、鉛直に起立する姿勢で立設される。
本実施例に係る流木捕捉柱部材5の大きさは一例として、頂部に備えた吊り金具を含めた高さが2800mm程度、丸形鋼管部の外径が320mm程度、肉厚が10mm程度で実施されている。
【0038】
前記鞘管6内に前記流木捕捉柱部材5を挿入して立設する構成について更に説明すると、本実施例では、図3に例示したように、前記流木捕捉柱部材5は、その外周面に径方向へ対照配置に突き出した2つの鉛直部材11を備えており、前記鞘管6は、その内壁面の対向する2辺に前記流木捕捉柱部材5の鉛直姿勢を保持するための水平部材13と、前記水平部材13に垂設されたストッパ部材14とを備えている。
前記鉛直部材11、水平部材13、及びストッパ部材14の位置関係は、図3A~Cに段階的に示したように、前記鞘管6内へ前記流木捕捉柱部材5の下端部を鉛直に建て込み、反時計回り(又は時計回り)に回動させると、前記流木捕捉柱部材5の鉛直部材11、11が前記ストッパ部材14、14に同時に突き当たって引き抜き不能となる構成で実施されている(図3D、Eも参照)。前記鞘管6の内側面と前記流木捕捉柱部材5の外周面との間に形成された隙間には適宜、現地発生土や砂が充填される。
【0039】
なお、前記鞘管6内に前記流木捕捉柱部材5を挿入して立設する構成はもちろん前記に限定されず、前記鞘管6内に前記流木捕捉柱部材5を安定した姿勢で脱着可能に立設できることを条件に適宜設計変更可能である(例えば、本出願人が既に出願し国際公開されたWO2013/042735等を参照)。
ちなみに、前記鉛直部材11、水平部材13、及びストッパ部材14は、図3以外の図面では図示の便宜上適宜省略していることを念のため特記しておく。
【0040】
次に、流木捕捉体1の構築工法について説明する。
本発明に係る流木捕捉体1の構築工法は、砂防堰堤10の上流側に設置される流木捕捉体1の構築工法であって、前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材2を立設すると共に、上端部に有底筒状の鞘管6を備えた杭基礎4を前記閉断面空間から下方に突出する構成で設置する工程と、前記閉断面空間内に中詰材(コンクリート)3を充填して前記杭基礎4及び前記鞘管6を固定すると共に、前記鞘管6内に流木捕捉柱部材5を挿入して立ち上げる工程とからなる。
【0041】
前記閉断面形成部材2は、本実施例のようにライナープレート12で実施する場合、周方向および軸方向にフランジ接続して立体的に組み立てる。なお、図示例に係る閉断面形成部材2は平面的にみて円形状で実施しているが、小判形状(図13参照)や矩形状で実施することもできる。また、図示例に係る閉断面形成部材2は、2m程度の高さで実施しているので、通常、床掘り(オープンカット)工法で実施されるが、2mの高さを超えるような閉断面形成部材2を構築する場合は逆巻き工法で実施することが好ましい。その他、ライナープレート12以外の部材(前記段落[0034]参照)で実施する場合は、個々の部材の特性に応じた手法で閉断面形成部材2を構築する。
なお、前記閉断面形成部材2を、前記図13に示したような平面的にみて小判形状に形成した流木捕捉体51で実施する場合は、前記閉断面形成部材2の形態を保持するための支保部材18を必要に応じて適宜設置して行う。
以下に説明する実施例についても同様の技術的思想とする。
【0042】
前記杭基礎4は、その上端部に鞘管6(の底面)と溶接等の接合手段で一体化されており、前記閉断面形成部材2の構築作業と並行又は相前後して、前記閉断面空間内の略中央部に位置決めし、堆砂域に鉛直姿勢で根入れすると共に前記根入れ部分の周囲にコンクリート7を打設している。この作業の際に前記鞘管6の上端と前記閉断面形成部材2の上端は略揃えておく。
なお、本実施例では、前記根入れ寸法(閉断面空間より下方の突き出し寸法)を1300mm程度で実施しているが、杭基礎4を根入れする堆砂域の強度や要求される流木捕捉体1の剛性等の構造設計に応じて適宜増減可能である。
また、本実施例では、前記杭基礎4の立設状態の安定化を図るべくコンクリート7を打
設して固定しているが、コンクリート7の代わりにソイルセメントでも同様に実施できる。この判断は、杭基礎4を根入れする堆砂域の地盤性状(強度等)や要求される流木捕捉体1の剛性等を適宜勘案して決せられる。
【0043】
かくして、前記閉断面形成部材2は所望の部位に所望の高さで構築され、その閉断面空間の略中央に杭基礎4が立設され、その上端部に一体的に接合された鞘管6の上端と前記閉断面形成部材2の上端とが略同じ高さレベルに揃えられたところで、次に、前記閉断面空間内にコンクリート3を充填(打設)する。本実施例に係るコンクリート3は、前記閉断面形成部材2(及び前記鞘管6)の天端に到達する程度まで充填する。この充填作業と相前後して、前記鞘管6内に前記流木捕捉柱部材5を挿入して立設する(詳しくは前記段落[0038]参照)。
なお、前記杭基礎4及び前記鞘管6の立設位置は、平面的にみて前記閉断面空間の略中央位置に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0044】
したがって、上記した流木捕捉体1の構築工法により構築した流木捕捉体1は、1体あたりの径が2.5m程度(2.5m程度以上でも以下でも可)の独立基礎形式で堆砂域に設置できるので、前記砂防堰堤10とは切り離した構造で実施できることはもとより、隣接する流木捕捉体1、1同士も切り離した構造で実施でき、従来のような広大な規模の連続する底版コンクリートの基礎部を必要としない。
よって、使用するコンクリート量を抑制でき、対策の必要な箇所に最適な配置で流木捕捉体を複数設置できる(図1図4、及び図5等参照)。
具体的に、流木捕捉体1の形態は、堆砂域の地形9(図5参照)に応じて適宜設計変更可能であり、流木捕捉体1の配置は、設置箇所の堆砂域の強度や高さ等の性状に応じて、単配置でも複数配置でもよく、複数配置の場合はランダム配置のほか、河川横断方向に略直線状の配置に離間して設置できるし(図1図4A参照)、略扇形状(図4B参照)又は略逆扇形状(図4A参照)を形成する配置に離間して設置できるし、河川横断方向に沿って蛇行する配置に離間して設置することもできる。
ちなみに、隣接する流木捕捉体1の設置間隔は、前記流木捕捉柱部材5の間隔が、想定される最大流木長の1/3~1/2程度に離間するように設置することが好ましい。
【実施例2】
【0045】
図6図10は、実施例2に係る流木捕捉体21を示している。
この実施例2に係る流木捕捉体21は、上記実施例1と比し、前記杭基礎4を前記鞘管6に対して相対移動可能な構成で実施することにより、前記杭基礎4の下方への突き出し寸法を調整可能な構成で実施している点が主に相違する。なお、上記実施例1と同様の部材は同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0046】
具体的には、実施例2に係る流木捕捉体21は、前記鞘管6のベースプレートの下面に、上下方向に長い左右一対のガイドフレーム8、8が前記杭基礎(丸形鋼管)4を間に挟む配置で垂設されている。前記一対のガイドフレーム8、8と前記杭基礎4との対応する縦軸ラインには、所定の間隔をあけて芯が一致するボルト通し孔8a、4aが複数(本実施例では4個ずつ)設けられている。そして、前記ボルト通し孔8a、4aに支持ボルト15を貫通させ、支持ボルト15の両端部をナット16、16で締結する構成とすることにより、前記杭基礎4が前記一対のガイドフレーム8、8に対して相対移動(上下動)可能に設けられている(図6図9図10を対比して参照)。
【0047】
このように、前記杭基礎4を前記ガイドフレーム8、8、ひいては前記鞘管6に対して相対移動可能な構成で実施する意義、言い換えると、前記杭基礎4の下方への突き出し寸法を調整可能な構成で実施する意義は、主に、現地で床掘りした堆砂域の地盤性状に応じて仮に基礎高さが深いと判明した場合にも現場で速やかに対応させるためにある。
【0048】
なお、本実施例に係る前記一対のガイドフレーム8、8は、高さ寸法が1250mm程度の断面コ字形(C形鋼:125×65×6×8mm)の金属製部材で実施され、前記杭基礎4の大きさは上記実施例1と同一の外径が320mm程度、高さが2600mm程度の丸形鋼管で実施されているが、前記寸法はあくまでも一例であり、適宜設計変更可能である。
また、本実施例に係る前記ボルト通し孔4a、8aは、一例として250mmの間隔をあけて等間隔に4個ずつ設けて実施しているがこれに限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
さらに、前記ボルト通し孔4a、8aに通して前記杭基礎4を支持する支持ボルト15は、安定性のためには本実施例のように上下2段配置で実施することが好ましいが、1段(1本)でも3段(3本)以上でも実施することは可能である。
【0049】
この実施例2に係る流木捕捉体21の構築工法は、前記杭基礎4を根入れする際に前記突き出し寸法を調整する工程が加わる以外は、上記実施例1と変わりはない。よって、上記実施例1とほぼ同様の手順で行われる(前記段落[0040]~[0043]参照)。また、コンクリート3を充填した後の流木捕捉体21は上記実施例1に係る流木捕捉体1と外形上(外観上)違いがない。
したがって、この実施例2に係る流木捕捉体21の構築工法により構築した流木捕捉体21は、上記実施例1に係る流木捕捉体1と外形上違いがないので、上記実施例1と同様の作用効果を奏する(詳しくは前記[0044]参照)。
なお、前記中詰材3がコンクリート3に限定されないこと、前記杭基礎4及び前記鞘管6の立設位置が平面的にみて前記閉断面空間の略中央位置に限定されないことも上記実施例1と同様である。
【実施例3】
【0050】
図11は、実施例3に係る流木捕捉体31を示している。
この実施例3に係る流木捕捉体31は、上記実施例1、2と比し、鞘管6を設けることなく、前記杭基礎4と前記流木捕捉柱部材5とを直接、機械式継手17により一連にボルト接合している点が相違する。その他、閉断面形成部材2の高さを、ライナープレート12の段数を3段に減らして1.5m程度の高さで実施している点も相違する。なお、上記実施例1、2と同様の部材は同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0051】
具体的に、この実施例3に係る流木捕捉体31は、閉断面空間を形成する閉断面形成部材2と、前記閉断面空間内に充填されるコンクリート(中詰材)3と、前記閉断面空間から下方に突出して前記コンクリート(中詰材)3に固定される杭基礎4と、前記閉断面空間から立ち上がり前記コンクリート(中詰材)3に固定される流木捕捉柱部材5とからなり、前記杭基礎4と前記流木捕捉柱部材5とは、機械式継手17で一連に接合されている。
【0052】
上記構成の流木捕捉体31の構築工法は、砂防堰堤10の上流側に設置される流木捕捉体31の構築工法であって、前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材2を立設すると共に、前記杭基礎4と一体化した前記流木捕捉柱部材5を、前記閉断面空間を上下に貫通する構成で設置する工程と、前記閉断面空間内にコンクリート(中詰材)3を充填して前記杭基礎4と前記流木捕捉柱部材5を固定する工程とからなる。
【0053】
なお、前記杭基礎4を設置した後、前記杭基礎4の上端部に流木捕捉柱部材5を接合する作業を行ってもよい。この場合の流木捕捉体41の構築工法は、前記上流側の所定箇所に、閉断面空間を形成する閉断面形成部材2を立設すると共に、杭基礎4を前記閉断面空間から下方に突出する構成で設置する工程と、前記杭基礎4の上端部に流木捕捉柱部材5を接合して前記閉断面空間から立ち上げる工程と、前記閉断面空間内にコンクリート3を充填して前記杭基礎4と前記流木捕捉柱部材5とを固定する工程とからなる。
【0054】
したがって、この実施例3に係る流木捕捉体31の構築工法により構築した流木捕捉体31は、上記実施例1、2に係る流木捕捉体1、21と外形上、高さ寸法が50cm程度低くなった以外は違いがないので、上記実施例1、2と同様の作用効果を奏する(詳しくは前記[0044]参照)。
なお、図12に示したように、前記流木捕捉柱部材5を長尺化した一本物とし、前記杭基礎4の役割を兼ねる構成で実施することもできる。この場合、前記閉断面空間を形成する閉断面形成部材2を立設すると共に、前記杭基礎4を兼ねる前記長尺化した流木捕捉柱部材5を、前記閉断面空間を上下に貫通する構成で設置する工程と、前記閉断面空間内にコンクリート3を充填して前記長尺化した流木捕捉柱部材5を固定する工程とからなる。
なお、前記中詰材3がコンクリート3に限定されないこと、前記杭基礎4や前記流木捕捉柱部材5の立設位置が平面的にみて前記閉断面空間の略中央位置に限定されないことも上記実施例1と同様である。
【0055】
ところで、上記した流木捕捉体31の構築工法によれば、コンクリート3を充填する前に予め、前記流木捕捉柱部材5を所定の部位に位置決め固定しておくことができるので、閉断面空間内へのコンクリート3の打設作業を1回で完了させることができる。
言い換えると、前記コンクリート3の打設作業を2回に分けて行う場合は、前記流木捕捉柱部材5を予め位置決め固定しておく必要はなく、前記杭基礎4と流木捕捉柱部材5とは分離した状態で実施することもできる。
この場合、前記閉断面形成部材2を前記杭基礎4とを所定の部位に設置した後、前記閉断面空間内の所定の高さまで第1回目のコンクリートの充填作業を行い、前記コンクリートの養生後、養生したコンクリートの上面に流木捕捉柱部材5を鉛直方向に立ち上げて前記閉断面空間の天端まで第2回目のコンクリートの充填作業を行う。
【0056】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【0057】
例えば、図14に示した流木捕捉体61のように、閉断面空間の平面積をより広く形成して閉断面空間内に2本の流木捕捉柱部材5を設けて実施することもできる。
この流木捕捉体61に係る閉断面形成部材2は、一例として、外径が4.5m程度の円筒形を周方向に略9等分割したに等しい弧状に形成され、その上下左右の端部には内側に突出するフランジが設けられた、高さが50cm程度のライナープレート12で実施されている。図示例に係る閉断面形成部材2は、前記ライナープレート12を周方向に9体、及び軸方向に4体を千鳥状にフランジ接続し、もって直径が4.5m程度、高さが2m程度の円筒形状に構築されている。前記鞘管6は、閉断面空間内に、想定される最大流木長の1/3~1/2程度に離間して2つ設置されている。
なお、本実施例3では、前記2つの鞘管6、6にそれぞれ鉛直方向に長い流木捕捉柱部材5、5を挿入して実施しているが、これに限定されない。例えば、図示は省略するが、前記2つの鞘管6、6を河川の流れ方向に、かつ適宜傾けて設け、河川の流れ方向へ開脚する構成の側面視A字形状(いわゆるA型スリットダム)、又は入字形状等の流木捕捉柱部材の脚部を挿入して立設して実施することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 流木捕捉体
2 閉断面形成部材
3 中詰材(コンクリート)
4 杭基礎
4a ボルト通し孔
5 流木捕捉柱部材
6 鞘管
7 コンクリート
8 ガイドフレーム
8a ボルト通し孔
9 地形
10 砂防堰堤
11 鉛直部材
12 ライナープレート(セグメント)
13 水平部材
14 ストッパ部材
15 支持ボルト
16 ナット
17 機械式継手
18 支保部材
21 流木捕捉体
31 流木捕捉体
41 流木捕捉体
51 流木捕捉体
61 流木捕捉体
S 元渓床面
T 堆砂面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14