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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ワイヤを接続するクリンプ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20230117BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20230117BHJP
   H02G 15/02 20060101ALI20230117BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H01R4/18 Z
H01R43/048 Z
H02G15/02
F16B2/08 R
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019001502
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2019125576
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】201841001391
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】514095099
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ インディア プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TE CONNECTIVITY INDIA PRIVATE LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ,ブリューメル
(72)【発明者】
【氏名】エム,サラヴァナクマール
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-084032(JP,U)
【文献】実開昭56-170880(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0160419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/048
H02G 15/02
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを接続するクリンプであって、少なくとも1つの圧着バレルを備え、前記圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、前記ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、前記側壁は、前記ワイヤの周囲で曲がるように適合され、したがって前記対向する側壁の端部が、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっており、
前記圧着バレルは、前記側壁の内面および外面に少なくとも1つの盛り上がり区域および少なくとも1つの窪み区域を備えている、クリンプ。
【請求項2】
前記盛り上がり区域および前記窪み区域は、前記対向する側壁の前記端部に設けられ、したがって第1の側壁の前記盛り上がり区域が、第2の側壁の前記窪み区域に係合するようになっている、請求項1に記載のクリンプ。
【請求項3】
前記窪み区域は、噛合面を備えている、請求項1または2に記載のクリンプ。
【請求項4】
前記互い違いの継ぎ目は、前記側壁を固定し、噛合区間を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載のクリンプ。
【請求項5】
前記盛り上がり区域および前記窪み区域は、前記クリンプの前記ベースまで延びている、請求項1から4のいずれか一項に記載のクリンプ。
【請求項6】
ワイヤを接続するクリンプであって、少なくとも1つの圧着バレルを備え、前記圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、前記ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、前記側壁は、前記ワイヤの周囲で曲がるように適合され、したがって前記対向する側壁の端部が、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっており、
前記対向する側壁の前記端部は、前記圧着バレルの外面に少なくとも1つの盛り上がり区域および少なくとも1つの窪み区域を備え、したがって第1の側壁の前記盛り上がり区域が、第2の側壁の前記窪み区域に係合するようになっており、
前記盛り上がり区域および前記窪み区域は、前記クリンプの前記ベースまで延びている、クリンプ。
【請求項7】
前記圧着バレルは、Fクリンプワイヤバレルである、請求項1から6のいずれか一項に記載のクリンプ。
【請求項8】
前記窪み区域の深さが、側壁厚さの1/3~1/2である、請求項1から7のいずれか一項に記載のクリンプ。
【請求項9】
ワイヤを接続するクリンプを形成する方法であって、圧着バレルのベースを前記ワイヤの周囲で曲げるステップを含み、したがって前記ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁が、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっており、前記圧着バレルは、前記側壁の内面および外面に少なくとも1つの盛り上がり区域および少なくとも1つの窪み区域を備えている、方法。
【請求項10】
前記盛り上がり区域および前記窪み区域は、前記側壁の端部に設けられ、したがって第1の側壁の前記盛り上がり区域が、第2の側壁の前記窪み区域に係合するようになっている、請求項9に記載のクリンプを形成する方法。
【請求項11】
前記窪み区域は、噛合面を有している、請求項9または10に記載のクリンプを形成する方法。
【請求項12】
前記互い違いの継ぎ目は、前記側壁を固定し、噛合区間を形成する、請求項11に記載のクリンプを形成する方法。
【請求項13】
前記圧着バレルは、Fクリンプワイヤバレルである、請求項9から12のいずれか一項に記載のクリンプを形成する方法。
【請求項14】
前記窪み区域の深さが、側壁厚さの1/3~1/2である、請求項9から13のいずれか一項に記載のクリンプを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、より薄い素材を用いた頑健性の高いクリンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器および電気工学では、電流、電圧、および周波数、ならびに/またはデータ速度の可能な限り広い範囲で、電流、電圧、および/または電気信号を伝送する働きをする多数の電気機械的接続が知られている。そのような接続は、熱負荷を受けている、不潔な、湿度の高い、かつ/または化学的に攻撃的な状態で、一時的に、妥当な場合は比較的長い期間後、または恒久的に、機械的接触、電力、電気信号、および/またはデータの正しい伝送を確実にしなければならない。したがって、多数の特別に構築された電気機械的コンタクト、特に圧着コンタクトが知られている。
【0003】
圧着接続は、無半田接続である。圧着接続は、ワイヤの端部への端子の通常の締付けに比べて有利である。接続の所望の性能および耐久性を得るには、クリンプの形状および印加される圧力の量が適正でなければならない。適当でないクリンプは、不十分な電気的接続によって熱を発することがあり、その結果、製品の再加工を要し、廃物が増大し、極端な場合は破局的な故障を招く可能性がある。
【0004】
ワイヤの端部を終端させるには、電気端子が使用されることが多い。そのような電気端子は、典型的には、電気コンタクトおよび圧着バレルを含む。いくつかの端子では、圧着バレルは、ワイヤの端部を受け取る開いた区域を含む。圧着バレルは、ワイヤ内の電気導体と端子との間の電気的接続を確立し、ならびに電気端子をワイヤ端部に機械的に保持するために、ワイヤの端部の周りに圧着される。ワイヤ端部に圧着されたとき、圧着バレルは、ワイヤの導体と電気コンタクトとの間に電気的かつ機械的な接続を確立する。
【0005】
恒久的な電気的接続に加えて、ケーブルと圧着コンタクトの導体圧着領域との間には、コンタクトによって恒久的な機械的接続も形成しなければならない。電気機械的接続のために、圧着コンタクトは導体圧着領域を有し、ほとんどの場合、ケーブルのための絶縁圧着領域を有する。小型化およびコストの節減のため、製造者は引き続きより小さくより薄いコンタクトを求めざるを得ない。
【0006】
当技術分野で知られている圧着接続は、電気コンタクトを確立し、ならびに圧着ベースと少なくとも1つの電気導体との間に機械的弾性接続を提供する働きをする。少なくとも1つの電気導体は、1つまたは複数の個別ワイヤからなることができる。圧着バレルは通常、金属板からなり、断面がU字形もしくはV字形または底辺が平坦な矩形になるように曲げられる。以下、U字形またはV字形の下側を圧着ベースと呼ぶ。U字形またはV字形の上向きの脚部は通常、圧着フランクとして知られている。
【0007】
圧着接続は、アンビルおよび圧着スタンプからなる圧着ダイによって形成される。圧着のために、圧着ベースはアンビルの中心に位置決めされ、電気導体は圧着バレルの圧着脚部間に配置される。その後、圧着スタンプはアンビルへ下降し、電気導体の周囲で圧着フランクを曲げて、圧着フランクをきつく圧縮し、押込みロックにより電気導体を圧着バレルに固定する。圧着ベースからクリンプ側壁への移行区域、いわゆる圧着ルート、ならびに横方向にクリンプ側壁では、曲げ応力が高い区間が圧着バレル内に形成される。
【0008】
圧着バレルと電気導体との間の押込み接続は、導体に対向する圧着バレルの内側に、ロック要素を形成するための追加の形状嵌め要素、たとえば凹部またはくぼみを設けることによって改善することができ、変位された導体材料は、圧縮中に凹部に貫入することができる。
【0009】
圧着接続の押圧区間は、より良好な電気特性を有する。それほど強く押圧されない区域は、より高い機械的安定性を有する。
【0010】
圧着バレルおよび電気導体は、圧着ダイ内の段または突出部によって局部的に補強することができる。
【0011】
米国特許第5,901,439号は、圧着ダイが閉じているときにアンビルの作業面の開口に追加のパンチを供給することによって、どのように圧縮を局部的に増大させることができるかを開示している。
【0012】
特許出願DE102006.045567A1は、圧着工具によって形成された、丸くなった幾何形状で連続してずれた状態のFクリンプの互い違いの継ぎ目について記載している。この圧着接続では、より薄い薄板金属を有するクリンプが、上述した問題を呈する。
【0013】
この圧着接続が機械的応力を受けた場合、圧着フランクは、圧着ルートおよび曲げ応力が高い他の区間に沿って跳ね上がる可能性がある。圧着ベースは、クリンプ側壁の端部で長手方向の継ぎ目に沿って開くリスクがある。応力のタイプに応じて、クリンプ側壁の端部も互いに対して軸方向に動く可能性がある。さらに、従来技術における圧着力の低減は、電気導体の個別ワイヤが互いに対して動くことができることから好まれている。個別ワイヤが長手方向に変位するとき、その結果生じる自由空間によって、圧着接続の力は低減される。自由空間は、外部からの物質が圧着接続に貫入する可能性を与える。次いで、外部からの物質によって引き起こされる電気導体および圧着バレルの腐食によって、圧着力がさらに弱くなる。
【0014】
圧着力の損失が生じた場合、圧着接続の所望の機械的安定性をもはや維持することができなくなる。接続線または電気導体が動いた場合、圧着接続の他方の端部で電気導体の個別ワイヤの動きが観察される可能性があることが分かっている。これは、電気導体の個別ワイヤ、ならびに電気導体および圧着バレルがいずれも、もはや十分にしっかりと固定されなくなることを示す。したがって、それぞれの場合において、圧着バレルと電気導体との間の電気的な境界抵抗の増大が生じる可能性がある。
【0015】
圧着接続の機械的かつ電気的な頑健性を実現するために、圧着バレルは、ワイヤサイズに関係する薄板金属の十分な素材の厚さを有していなければならない。特にワイヤサイズが大きい場合、この最小のバレル素材の厚さは欠点になる。なぜなら、薄板金属から電気素子を製造するための打抜きプロセスにおける切断、曲げ、または形成が難しく、強い圧着力および高い材料コストを必要とするからである。
【0016】
他方では、薄すぎる素材を使用するとき、クリンプは、機械的かつ電気的な性能のために丸い部分の継ぎ目で故障し始める。
【0017】
形状ロック要素または補強された圧着接続要素を提供するための当技術分野で知られている方策では、圧着バレルが撓むこと、ならびに電気導体の個別ワイヤが相対的に動き、その結果圧着力の損失を招くことを防止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第5,901,439号
【文献】特許出願DE102006.045567A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
非限定的かつ例示的な実施形態の1つは、前述の問題を解決することができる互い違いの継ぎ目を含む圧着接続を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
1つの概略的な態様では、ワイヤを接続するクリンプは、少なくとも1つの圧着バレルを備え、圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、これらの側壁は、ワイヤの周囲で曲がるように適合され、したがって対向する側壁の端部が、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっている。
【0021】
有利には、対向する側壁の端部は、圧着バレルの外面に少なくとも1つの盛り上がり区域および少なくとも1つの窪み区域を備え、したがって第1の側壁の盛り上がり区域が、第2の側壁の窪み区域に係合するようになっている。
【0022】
有利には、窪み区域は、噛合面を備えている。
【0023】
有利には、互い違いの継ぎ目は、側壁を固定し、噛合区間を形成する。
【0024】
有利には、圧着バレルは、側壁の内面および外面に少なくとも1つの盛り上がり区域および少なくとも1つの窪み区域を備えている。
【0025】
有利には、盛り上がり区域および窪み区域は、クリンプのベースまで延びている。
【0026】
有利には、圧着バレルは、Fクリンプワイヤバレルである。
【0027】
有利には、窪み区域の深さが、側壁厚さの1/3~1/2である。
【0028】
本開示の本態様では、ワイヤを接続するクリンプを形成する方法が、圧着バレルのベースをワイヤの周囲で曲げるステップを含み、したがってベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁が、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっている。
【0029】
有利には、側壁の端部は、圧着バレルの外面に盛り上がり区域および窪み区域を有し、したがって第1の側壁の盛り上がり区域が、第2の側壁の窪み区域に係合するようになっている。
【0030】
有利には、窪み区域は、噛合面を有している。
【0031】
有利には、互い違いの継ぎ目は、側壁を固定し、噛合区間を形成する。
【0032】
有利には、圧着バレルは、側壁の内面および外面に少なくとも1つの盛り上がり区域および少なくとも1つの窪み区域を備えている。
【0033】
有利には、圧着バレルは、Fクリンプワイヤバレルである。
【0034】
有利には、窪み区域の深さが、側壁厚さの1/3~1/2である。
【0035】
開示する実施形態の追加の利益および利点は、本明細書および図面から明らかになるであろう。これらの利益および/または利点は、本明細書および図面の様々な実施形態および特徴によって個別に得ることができるが、そのような利益および/または利点の1つまたは複数を得るために、これらの実施形態および特徴をすべて提供する必要はない。
【0036】
本発明について、実施形態および添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明する。これらの図面の様々な図では、同一の、一義的な、または類似の構造および/または機能を有する要素または構成要素を、同じ参照番号で参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本開示による圧着接続の一実施形態の概略斜視図である。
図2】盛り上がり区域および窪み区域を有するフランクの端部が噛合面を提供する閉状態にある圧着接続の概略図である。
図3】本開示による圧着接続の別の実施形態による圧着接続の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の実施形態の説明の前に、本開示の基礎を形成する根本的な知識について説明する。上記の考慮に基づいて、本発明者らは、本開示の以下の態様を考案した。
【0039】
ワイヤを接続するクリンプが提供され、クリンプは、少なくとも1つの圧着バレルを備え、圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、これらの側壁は、ワイヤの周囲で曲がるように適合され、したがって対向する側壁の端部が、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっている。
【0040】
これにより、フランクの軸方向の歪みを防ぐようにロックする継ぎ目を改善し、クリンプ形成時の圧縮中にクリンプが軸方向に細長くなることにより、継ぎ目の追加の固定をもたらすことが可能になる。
【0041】
本開示のより具体的な実施形態について、以下に説明する。しかし、過度に詳細な説明は省略することもあることに留意されたい。たとえば、すでによく知られている事柄の詳細な説明および実質的に同一の構成要素の説明の繰返しは省略することがある。これは、以下の説明を不必要に冗長にすることを避け、当業者の理解を容易にすることを意図するものである。本発明者らは、当業者であれば本開示を完全に理解することができるように添付の図面および以下の説明を提供すること、ならびに添付の図面および以下の説明は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではないことに留意されたい。以下の説明において、同一または類似の構成要素には同じ参照番号を与える。
【0042】
本開示の一般的な概念によれば、係合されたクリンプ側壁の互い違いの継ぎ目が、圧着接続の要素である。ワイヤを接続するクリンプは、少なくとも1つの圧着バレルを備え、圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、これらの側壁は、ワイヤの周囲で曲がるように適合され、したがって対向する側壁の端部が、圧着状態で、互い違いの継ぎ目に沿って互いに係合するようになっている。
【0043】
図1は、圧着状態にある圧着接続10の概略図を示す。側壁4が、圧着状態で、「角張って曲折した」または「ジグザグの」継ぎ目ラインを形成している。図1において、圧着接続は、この圧着接続10の互い違いの継ぎ目1が、より薄い素材で頑健性を高めるようになっている。
【0044】
加えて、圧着接続10は、長手方向に互い違いの継ぎ目1を形成するように係合する圧着接続の側壁4が「角張って曲折した」形状の継ぎ目ラインを有するように設計された場合が有利である。係合要素は、長手方向の継ぎ目に沿ってクリンプ側壁4の端部間で形状嵌めをもたらす。クリンプ側壁の端部は、形状嵌め接続によって互いに堅く接続される。クリンプ側壁4の端部の堅い接続は、圧着接続の全体的な安定性を増大させ、したがって圧着接続に印加される力およびモーメントによる圧着力の損失を防止する。
【0045】
上述したように、クリンプ側壁4の端部間の形状嵌め自体が、圧着接続の全体的な安定性を増大させる。加えて、この形状嵌めは、曲がった圧着フランクの曲げに対する抵抗モーメントを増大させる。
【0046】
さらに有利な作用として、圧着接続は、長手方向の互い違いの継ぎ目1が少なくとも一部分に横方向のずれを有するように設計することができる。このずれにより、圧着フランクの対向する部分の材料が、圧着プロセス中に互いの周りに流れ込み、形状嵌めを提供することが可能になる。
【0047】
さらに、圧着フランクの端部が互い違いの継ぎ目で互いに係合することから、上述した問題が解決される。クリンプ側壁の端部は、互いに対する係合により長手方向にもはや変位する可能性がなくなる。したがって、長手方向における圧着フランクの相対的な動きによる圧着力のあらゆる損失を防止することができる。
【0048】
図2は、圧着区分14の別の実施形態の斜視図である。圧着区分14は、圧着バレル20を含む。圧着バレル20は、ベース22と、ベース22から延びる対向する側壁24とを含み、側壁24は圧着フランクとも呼ばれる。ベース22および側壁24は、1つまたは複数の電気導体を含むことができるワイヤ(図示せず)の端部を受け取るように構成された圧着バレル20の開口25を画定する。圧着区分14はまた、コンタクト素子、張力緩和部などをさらに備えるクリンプの一部とすることもできる。
【0049】
圧着バレル20は、ワイヤの端部の周りに圧着してワイヤを端子に機械的かつ電気的に接続するように構成される。任意選択で、ワイヤは電気ワイヤであり、電気導体の長さの少なくとも一部分に沿って電気導体の周りに延びる電気絶縁層を含む。
【0050】
図示の実施形態では、ベース22および側壁24は、圧着バレル20の長さ全体に沿って延び、圧着バレル20の長さ全体を画定する。ベース22は、内面40を含み、側壁24はそれぞれ、内面42を含む。内面40および42は、圧着バレル20の開口25の境界を画定する。
【0051】
加えて、圧着フランク24の端部が長手方向の継ぎ目1に沿って圧着されることが有利である。締付けにより、長手方向の継ぎ目に沿って圧着フランクが位置決めされ、したがって長手方向の継ぎ目が開くことによる圧着力の損失が防止される。
【0052】
圧着区分14は、それだけに限定されるものではないが、銅、銅合金、銅覆鋼、アルミニウム、ニッケル、金、銀、金属合金などの任意の材料から製造することができる。圧着区分14の1つもしくは複数の部分またはすべてを、卑金属および/または金属合金から製造することができ、これは別の材料(たとえば、別の金属および/または金属合金)で被覆(たとえば、めっきなど)される。たとえば、1つもしくは複数の部分または圧着区分14全体を、銅ベースから製造することができ、これをニッケルでめっきする。
【0053】
電気導体は、それだけに限定されるものではないが、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、銅覆鋼、ニッケル、金、銀、金属合金などの任意の材料から製造することができる。
【0054】
図2は、非圧着状態にある図1の圧着区分10の特徴部をさらに示し、クリンプ側壁24の端部は、盛り上がり領域32を形成するように盛り上げられ、窪み領域31を形成するように窪まされて、継ぎ目の追加の固定のための噛合面を提供する。
【0055】
図2では、実施形態1の互い違いの継ぎ目1は、圧着バレルから上方へ延びている圧着フランク24の外面に盛り上がり区域32および窪み区域31を有することによって補強される。2つのクリンプ側壁の盛り上がり区域32および窪み区域31はまた、互いに対向するフランクとも呼ばれ、圧着バレルの2つのフランクが係合したとき、圧着フランク24のうちの一方の盛り上がり区域32が、対向する圧着フランク24の窪み区域31に係合するようになっている。
【0056】
圧着接続の盛り上がり区域32および窪み区域31は、様々な方法、たとえば材料の切削、コルゲーション加工、または変形によって実現することができる。
【0057】
図3では、図1および図2の特徴に加えて、圧着バレル20が、圧着フランクの両面に盛り上がり区域32および窪み区域31を有する。これにより、噛合面がさらに増大し、したがって圧着フランクの互い違いの継ぎ目の噛合が促進される。
【0058】
別の態様では、圧着バレルの側壁の内面は、角張った縁の溝(たとえば、セレーション)のような少なくとも1つの固定区間44を含むことができ、固定区間44は、存在する場合、より強い把持を確実にすることができる。圧着バレルは、アルミニウムを含むことができ、したがって接続領域の圧着中、固定デバイスは、部分的な冷間圧接を確実にし、したがって良好な電気的接続を確立することができる。
【0059】
圧着バレルの固定区間44は、好ましくは、少なくとも1つの溝および/またはリブ、溝付き構造、波状構造、コルゲーション構造、またはセレーション、すなわち、実質的に横方向に延びる広い歯を有する「歯状構成」を有する3D構造区間として構築される。この例では、固定区間44は、圧着バレルの側壁の内面に同様に、長手方向軸の周りに互いの鏡像として構築される。
【0060】
図3の圧着接続の盛り上がり区域および窪み区域は、様々な方法、たとえば押圧などによって実現することができる。
【0061】
導電ワイヤに接触するために、クリンプは、たとえば、非絶縁ワイヤに取り付けられる。電気絶縁層は、導体端部を露出させるために、電気導体の端部の少なくとも一部分から除去することができる。いくつかの代替実施形態では、電気コンタクトは、別の電気ワイヤ(図示せず)の端部の周りに圧着して他方の電気ワイヤを端子に機械的かつ電気的に接続するように構成された別の圧着バレル20である。
【0062】
したがって、いくつかの代替実施形態では、端子は、電気ワイヤを別の電気ワイヤに電気的に接続するように構成される。言い換えれば、いくつかの代替実施形態では、この端子を使用して、電気ワイヤを別のワイヤに接合することができる。
【0063】
任意選択で、内面40および/または42は、電気導体30に蓄積した酸化物および/または他の表面材料(それだけに限定されるものではないが、残留ワイヤ押出促進材料など)層に貫入する1つまたは複数のセレーション44を含む。本明細書では、内面40および42をそれぞれ、圧着バレル20の「金属性表面」と呼ぶことができる。
【0064】
上記の実施形態の圧着区分は、圧着デバイスを使用して電気的かつ機械的な接続を実現するために使用される。圧着デバイスは、圧着区分をワイヤに圧着する。一実施形態では、電気ワイヤは電気導体を有し、電気導体は圧着バレル内に受け取られる。たとえば、ワイヤの端部区分は露出した導体を有し、露出した導体は圧着バレルに装入される。圧着動作中、バレルは、導体の周りに圧着され、圧着区分と電気ワイヤとの間の機械的かつ電気的な接続を形成する。
【0065】
圧着動作は、圧着区分10、14を形成して導体を機械的に保持し、導体と圧着区分10、14との間の係合を提供することを含む。端子の形成は、開端子(たとえば、「F」型クリンプ)と同様に、アームまたはタブをワイヤ導体の周囲で曲げること、または閉端子(たとえば、「O」型クリンプ)と同様に、閉じたバレルをワイヤ導体の周囲で圧縮することを含むことができる。圧着動作中に端子がワイヤの周りに形成されるとき、端子および/または端子内の導体の金属を押し出すことができる。端子と電気ワイヤとの間に、確実な機械的接続および良質な電気的接続を提供することが望ましい。本明細書に開示するような圧着工具の実施形態を使用することで、金属の押出によって圧着動作中に形成される成形特徴部が端子に形成される。この工具によって、様々なタイプの端子に様々な端子の形状および設計で、成形特徴部を形成することができる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、側壁の長さは、側壁が係合して互い違いの継ぎ目を形成するとき、側壁の端部がクリンプの内面に当たらないようになっている。
【0067】
圧着デバイス(図示せず)は、アンビルおよび圧着工具部材を含むことができる。アンビルは、圧着区分を受け取る上面を有する。ワイヤの電気導体は、圧着バレル内でアンビルに受け取られる。圧着工具部材は、成形プロファイルを含み、成形プロファイルは、成形プロファイルが圧着区分に係合するとき、バレルを導体の周りに形成または圧着するように選択的に成形されている。成形プロファイルは、圧着動作中に圧着区分およびワイヤが受け取られる圧着区間の一部を画定する。アンビルの上面もまた、端子が圧着工具部材とアンビルとの間でワイヤに圧着されるとき、圧着区間の一部を画定する。
【0068】
圧着工具部材は、圧着行程に沿って、アンビルに向かう方向およびアンビルから離れる方向に可動である。圧着行程は、アンビルから離れる上向き成分と、アンビルに向かう下向き成分とを有する。圧着工具部材は、圧着軸に沿って、アンビルに向かう方向およびアンビルから離れる方向の両方向に動く。圧着工具部材は、圧着工具部材がアンビルに向かって動くとき、圧着行程の下向き成分中に電気導体の周りに端子を形成する。図示しないが、圧着工具部材は、圧着行程に沿って圧着工具部材の動きを推進させる機械アクチュエータに結合することができる。たとえば、圧着工具部材は、アプリケータまたはリードメーカ機械の可動ラムに結合することができる。加えて、アプリケータまたはリードメーカ機械はまた、圧着デバイスのアンビルおよびベース支持体を含むことができ、または圧着デバイスのアンビルおよびベース支持体に結合することができる。
【0069】
圧着動作中、圧着区分14は、アンビルの上面に装着される。ワイヤは、圧着区間に向かって装着方向に動かされ、したがって電気導体は、圧着バレル20内で圧着バレルの2つの側壁間に受け取られる。圧着工具部材がアンビルの方へ動くとき、成形プロファイルは圧着バレルの上に下降して側壁に係合し、壁を電気導体の周囲で曲げる、または電気導体の周りに形成する。より具体的には、圧着工具部材が下方へ動くにつれて、成形プロファイルのサイドタブおよび頂部形成面が、電気導体の頂部の上に側壁を徐々に曲げる。成形プロファイルの左側のアーチが、圧着バレルの左側の側壁に係合して曲げるように構成され、右側のアーチが、圧着バレルの右側の側壁に係合して曲げるように構成される。圧着工具部材の底部のデッド位置、すなわち圧着行程中の圧着工具部材の最も低い位置(またはベース支持体に最も近い位置)で、成形プロファイルの一部は、アンビルの上面を越えて延びることができる。圧着区分は、成形プロファイルとアンビルとの間で圧縮され、それにより圧着バレルの側壁は、ワイヤの電気導体に機械的に係合し、電気的に接続する。高い圧縮力が、側壁と導体との間で金属と金属との接合を引き起こす。本明細書に記載する1つまたは複数の実施形態は、本明細書に記載するような圧着動作中、圧着バレルの側壁が互いに係合すると互い違いの継ぎ目が形成される成形プロファイルを対象とする。
【0070】
さらに、外力下での圧着接続の仕組みおよび挙動について説明する。
【0071】
圧着接続の恒久的な接触を確立しかつ維持する2つの機構が存在する。すなわち冷間圧接、および適当な残留力分布の生成である。どちらの機構も、恒久的な接続の形成に寄与し、互いに独立している。圧着中、2つの金属表面が力の印加を受けて摺動またはワイピング動作を行い、したがって金属を低温で溶接する。これは冷間圧接としても知られている。適当な残留力分布下で、コンタクトインターフェースは正の力を受ける。圧着中、圧着工具が取り外されたとき、導体と圧着バレルとの間に残留力が生じる。これは弾性回復が異なることを示す。
【0072】
電気導体が圧着バレルより跳ね返る傾向があるとき、バレルは、導体に圧縮力を作用させ、これによりコンタクトインターフェースの完全性が維持される。圧着接続の電気的かつ機械的な性能は、導体間および導体と圧着バレルとの間に冷間圧接された微小な接合を形成する導体および圧着バレルの制御された変形に起因する。これらの接合は、圧着接続内の適当な残留応力分布によって維持され、これにより残留力は、ひいては接合の安定性を維持する。
【0073】
圧着接続への外力(たとえば、張力)の印加中に、圧着フランク間の噛合が位置ずれする可能性があり、その結果、圧着接続が不十分になることがある。したがって、本開示の圧着接続の実施形態では、互い違いの継ぎ目に向かって内向き方向にテーパーが付けられた窪み区域31、盛り上がり区域32を有する圧着接続が提供される。
【0074】
そのようにテーパーが付けられた盛り上がり区域は、圧着フランクの内側または外側の両方に提供することができ、それによって圧着フランクの外面の横方向において法線ベクトルに等しくない角度で張力が印加されたときでも噛合が維持されることを確実にすることができる。
【0075】
本開示について、その例示的な実施形態を参照して特に図示および説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の目的から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を加えることができることが、当業者には理解されよう。例示的な実施形態は、限定の目的ではなく、説明のみを意味すると見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、上記の本発明の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義され、この範囲内のあらゆる違いは、本発明に含まれると解釈される。
【符号の説明】
【0076】
10、14 圧着区分
4、24 側壁
1 互い違いの継ぎ目
20 圧着バレル
22 圧着ベース
32 盛り上がり区域
31 窪み区域
40、42 圧着バレルの内面
44 セレーション
図1
図2
図3