(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】湿式摩擦材用フェノール樹脂、フェノール樹脂組成物および湿式摩擦材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20230117BHJP
F16D 13/62 20060101ALI20230117BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20230117BHJP
C08G 8/20 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09K3/14 530G
F16D13/62 A
F16D69/02 A
C08G8/20
(21)【出願番号】P 2019034574
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000102784
【氏名又は名称】NSKワーナー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】常増 卓也
(72)【発明者】
【氏名】国実 貴夫
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147885(JP,A)
【文献】特開平07-207121(JP,A)
【文献】特開2003-292727(JP,A)
【文献】特開2000-053738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 13/62
F16D 69/02
C08J 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造中に、下記一般式(A)で表される1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび、下記一般式(B)で表される2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂を含
み、
前記レゾール型フェノール樹脂中の前記構造単位Bの含有比率は、前記構造単位Aおよび前記構造単位Bの合計値に対して、10重量%以上90重量%以下である、
湿式摩擦材用フェノール樹脂。
【化1】
(上記一般式(A)中、R
1は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、aは0~3の整数であり、mは1以上10以下の整数を表す。)
【化2】
(上記一般式(B)中、R
2は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、bは0~2の整数であり、nは1以上10以下の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂であって、
前記2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物は、レゾルシノール、カテコールおよびヒドロキノンからなる群から選択される一種以上を含む、湿式摩擦材用フェノール樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂であって、
当該湿式摩擦材用フェノール樹脂の重量平均分子量Mwが、100以上10000以下である、湿式摩擦材用フェノール樹脂。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂および有機溶媒を含む、フェノール樹脂組成物。
【請求項5】
分子構造中に、下記一般式(A)で表される1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび、下記一般式(B)で表される2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂を含む湿式摩擦材用フェノール樹脂と、有機溶媒と、を含む、フェノール樹脂組成物を基材に含浸してなる湿式摩擦材
であって、
前記フェノール樹脂組成物の硬化物中における前記構造単位Bの含有比率は、前記構造単位Aおよび前記構造単位Bの合計値に対して、10重量%以上90重量%以下である、湿式摩擦材。
【化3】
(上記一般式(A)中、R
1
は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、aは0~3の整数であり、mは1以上10以下の整数を表す。)
【化4】
(上記一般式(B)中、R
2
は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、bは0~2の整数であり、nは1以上10以下の整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式摩擦材用フェノール樹脂、フェノール樹脂組成物および湿式摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾール型フェノール樹脂は自動車の自動変速機用クラッチ・ブレーキに使用される湿式摩擦材の結合材として、従来から様々な検討がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、レゾール型フェノール樹脂をマレイミド化合物で変性したマレイミド変性フェノール樹脂を、基材の結合剤として湿式摩擦材に適用する事で、摩擦特性に安定性を示す記述がなされているが、物理的な耐久性に関しては言及していない(特許文献1、請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、レゾール型フェノール樹脂においては、総厚変化を抑制し、耐久性の点で改善する余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記特許文献1に記載のマレイミド変性フェノール樹脂は、特許文献1の段落0019に記載のとおり、マレイミド化合物系樹脂の特徴である耐熱性に着眼し、レゾール型フェノール樹脂をマレイミド化合物で変性したものである。
本発明者は、レゾール型フェノール樹脂以外の他の樹脂骨格を利用しなくとも、レゾール型フェノール樹脂の分子構造において、フェノール性水酸基を有するベンゼン環骨格(すなわち、フェノール骨格)を適切に選択することにより、そのようなレゾール型フェノール樹脂を用いた湿式摩擦材の耐久性を制御できることを見出した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aと2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bとを併用することにより、レゾール型フェノール樹脂を用いた湿式摩擦材の耐久性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
分子構造中に、下記一般式(A)で表される1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび、下記一般式(B)で表される2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂からなる、湿式摩擦材用フェノール樹脂が提供される。
【化1】
(上記一般式(A)中、R
1は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、aは0~3の整数であり、mは1以上10以下の整数を表す。)
【化2】
(上記一般式(B)中、R
2は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、bは0~2の整数であり、nは1以上10以下の整数を表す。)
【0007】
また本発明によれば、上記湿式摩擦材用フェノール樹脂および有機溶媒を含む、フェノール樹脂組成物が提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記フェノール樹脂組成物を基材に含浸してなる湿式摩擦材が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性に優れる湿式摩擦材用フェノール樹脂およびそれを用いたフェノール樹脂組成物および湿式摩擦材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂の概要について説明する。
本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂は、分子構造中に、下記一般式(A)で表される1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび、下記一般式(B)で表される2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂を含むものである。
【化3】
(上記一般式(A)中、R
1は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、aは0~3の整数であり、mは1以上10以下の整数を表す。)
【化4】
(上記一般式(B)中、R
2は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、bは0~2の整数であり、nは1以上10以下の整数を表す。)
【0011】
本発明者の知見によれば、レゾール型フェノール樹の分子構造において、フェノール骨格を適切に選択し、1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aと2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bとを併用することにより、レゾール型フェノール樹脂を用いた湿式摩擦材の耐久性が改善されることが見出された。詳細なメカニズムは定かでないが、1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aと2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bとを併用した分子構造を適切に選択することにより、基材に対するレゾール型樹脂の密着性を高められるため、湿式摩擦材の耐久性が向上する、と考えられる。
【0012】
本実施形態の湿式摩擦材は、上記湿式摩擦材用フェノール樹脂および有機溶媒を含むフェノール樹脂組成物(樹脂ワニス)を基材に含浸してなるものである。このように湿式摩擦材においても、優れた耐久性を実現することが可能である。
【0013】
上記湿式摩擦材は、オートマチック車等の自動変速機等において使用される摩擦材(クラッチ摩擦材)である。この湿式摩擦材には、一般的にレゾール型フェノール樹脂が用いられる。
近年はエネルギー、環境問題による低燃費指向から自動変速機の小型軽量化が進んでおり、湿式摩擦材にも小径化、枚数低減が求められている。これにより従来の湿式摩擦材ではトルク容量が不足するため、これを補うために、湿式摩擦材用フェノール樹脂に対する要求特性は年々高まっている。これに対して、本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂を用いることにより、耐久性に優れた湿式摩擦材を実現できる。したがって、本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂は、このような湿式摩擦材の小型化に寄与することが期待される。
【0014】
以下、本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂は、分子構造中に、1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂を含むものである。
【0016】
上記レゾール型フェノール樹脂の製造方法は、特に限定されないが、1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物Aとともに2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物Bをアルデヒド類と反応させても良いし、1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物Aとアルデヒド類とを反応させた後に、得られた反応化合物に対して、さらに2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物Bを反応させても良い。レゾール型フェノール樹脂を製造する観点から、アルカリ性条件下または弱酸性下で行うことができる。アルカリ性条件下の場合、アルカリ性触媒を用いることができ、弱酸性下の場合、亜鉛系触媒を用いることができる。
【0017】
上記1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物Aは、フェノール性水酸基を1個備えるベンゼン環を有する化合物であれば、特に限定されない。このフェノール化合物Aは、分子中において、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に、水酸基以外の置換基を1種または2種以上有してもよい。フェノール化合物Aとして、モノマー化合物を用いることができる。
また、フェノール化合物A中の置換基としては、それぞれ互いに独立して、例えば、アルキル基、アリール基、ビニル基、ハロゲン元素、アミノ基、ニトロ基、またはこれらの組み合わせた基を用いることができる。この中でも、非反応性置換基が好ましく、アルキル基やアリール基などの炭化水素基が好ましい。なお、置換基としてのアリール基は、上記のベンゼン環と縮合して縮合環を構成してもよい。
【0018】
上記1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物Aの一例としては、特に限定されないが、例えば、フェノール;オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール;2、3-キシレノール、2、4-キシレノール、2、5-キシレノール、2、6-キシレノール、3、5-キシレノール等のキシレノール;2,3,5-トリメチルフェノール、2-エチルフェノール、4-エチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、イソブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール、アリルフェノール、カルダノール等のアルキルフェノール;1-ナフトール、2-ナフトール等のナフトール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール、p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体;ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールE等のビスフェノールなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、上記フェノール化合物Aは、フェノール、クレゾール、キシレノール、アルキルフェノールおよびビスフェノールからなる群より選ばれる1種以上を含むことができ、安価な観点から、フェノール、クレゾール、カルダノール、ブチルフェノール、ビスフェノールAを用いることができ、特に好ましくはフェノール、クレゾール、カルダノールを用いることができる。
【0019】
上記2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物Bは、フェノール性水酸基を2個備えるベンゼン環を有する化合物であれば、特に限定されない。この多官能フェノール化合物Bは、分子中において、フェノール性水酸基を2個備えるベンゼン環に、水酸基以外の置換基を1種または2種以上有してもよい。多官能フェノール化合物Bとして、モノマー化合物を用いることができる。
また、多官能フェノール化合物B中の置換基としては、それぞれ互いに独立して、例えば、アルキル基、アリール基、ビニル基、ハロゲン元素、アミノ基、ニトロ基、またはこれらの組み合わせた基を用いることができる。この中でも、非反応性置換基が好ましく、アルキル基やアリール基などの炭化水素基が好ましい。なお、置換基としてのアリール基は、上記のベンゼン環と縮合して縮合環を構成してもよい。
【0020】
上記2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物Bの一例としては、特に限定されないが、例えば、レゾルシノール、アルキルレゾルシノール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。これらの中でも、安価な観点から、多官能フェノール化合物Bは、レゾルシノール、カテコールおよびヒドロキノンからなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。
【0021】
上記湿式摩擦材用フェノール樹脂の製造方法中において、上記フェノール化合物Aおよび多官能フェノール化合物B以外の他のフェノール化合物をさらに用いてもよい。他のフェノール化合物としては、例えば、フェノール環数は1核体、2核体または3核体などのいずれでもよく、フェノール性水酸基数は、1個でも2個以上でもよい。
なお、上記製造方法中におけるフェノール類は、上記フェノール化合物Aおよび多官能フェノール化合物Bを含み、必要に応じて、他のフェノール化合物を含むものである。
【0022】
上記アルデヒド類としては、特に限定されないが、例えば、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド;トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、tert-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドを含むことができ、生産性および安価な観点から、ホルマリンまたはパラホルムアルデヒドを用いることができる。
【0023】
上記反応溶液を得る工程において、上記のフェノール類とアルデヒド類とは、アルカリ性触媒を使用し、例えばpH7以上のアルカリ条件下にて反応させることができる。
【0024】
上記アルカリ性触媒としては、特に限定はされないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の酸化物及び水酸化物、炭酸塩、アンモニア水、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどのアミン、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、などのアルカリ性物質を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、水酸化ナトリウムを用いてもよい。
【0025】
また、上記反応溶液を得る工程において、上記のフェノール類とアルデヒド類とは、亜鉛系触媒を使用し、例えばpH4から6の弱酸性条件下にて反応させることができる。
【0026】
上記亜鉛系触媒としては、特に限定されず、二価金属塩触媒であればいずれも使用できるが、例えば、酢酸亜鉛や蟻酸亜鉛等を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、酢酸亜鉛の水和物を用いてもよい。
【0027】
上記アルカリ性触媒または上記亜鉛系触媒の添加量は、フェノール類100重量%に対し、例えば、0.01重量%~20重量%としてもよく、好ましくは0.1重量%~10重量%とすることができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0028】
また、フェノール類とアルデヒド類のモル比(F/Pモル比)は、フェノール類1モルに対し、例えば、アルデヒド類を0.5モル~4.0モルとしてもよく、好ましくは1.0モル~3.0モルとすることができる。アルデヒド類を上記範囲とすることで、上記のようにフェノール類1モルに対して、アルデヒド類の転化率が高まり、残留未反応アルデヒド類を低減させることができる。
【0029】
また、反応温度は、例えば、40℃~120℃としてもよく、好ましくは60℃~100℃としてもよい。これにより、ゲル化を抑制して、反応を十分に進めることができる。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
【0030】
本実施形態における溶媒としては、水を用いてもよいが、有機溶剤を用いてもよい。上記有機溶剤の一例としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素類で、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等で、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等で、エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等で、エーテル類としては、プロピルエーテル、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、炭化水素類としては、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ソルベントナフサ、工業ガソリン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、脱水工程をさらに行ってもよい。脱水方法としては、減圧脱水を用いてもよいが、常圧脱水を用いてもよい。例えば、減圧脱水時の真空度は、例えば、110torr以下としてもよく、さらに好ましくは80torr以下としてもよい。これにより、脱水時間を短縮することができ、樹脂特性のばらつきの少ない安定的なレゾール型フェノール樹脂を得ることができる。これらの方法により水分を十分に除去することができるが、更に除去するために、真空乾燥機や薄膜蒸発装置などの公知の水分除去装置を使用する工程と組み合わせてもよい。
【0032】
以上により、分子構造中に、下記一般式(A)で表される1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび、下記一般式(B)で表される2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂を得ることができる。
【0033】
【0034】
上記一般式(A)中、R
1は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、aは0~3の整数であり、mは1以上10以下の整数を表す。
上記一般式(A)の置換基としては、それぞれ互いに独立して、例えば、アルキル基、アリール基、ビニル基、ハロゲン元素、アミノ基、ニトロ基、またはこれらの組み合わせた基を用いることができる。この中でも、非反応性置換基が好ましく、アルキル基やアリール基などの炭化水素基が好ましい。アルキル基としては、例えば、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
aは、0~3であり、好ましくは0~2、より好ましくは0~1である。
この中でも、上記一般式(A)のR
1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
【化6】
【0035】
上記一般式(B)中、R2は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、bは0~2の整数であり、nは1以上10以下の整数を表す。
上記一般式(B)の置換基としては、それぞれ互いに独立して、例えば、アルキル基、アリール基、ビニル基、ハロゲン元素、アミノ基、ニトロ基、またはこれらの組み合わせた基を用いることができる。この中でも、非反応性置換基が好ましく、アルキル基やアリール基などの炭化水素基が好ましい。アルキル基としては、例えば、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
bは、0~3であり、好ましくは0~2、より好ましくは0~1である。
この中でも、上記一般式(B)のR2は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
【0036】
以上のように得られたレゾール型フェノール樹脂を上記湿式摩擦材用フェノール樹脂に用いる。
上記湿式摩擦材用フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂のみから構成されていてもよいが、レゾール型フェノール樹脂とともに、レゾール型フェノール樹脂中の構造単位Aや構造単位Bを構成する各原料モノマーを含むように構成されていてもよい。湿式摩擦材用フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂の他に、例えば質量換算で数%~数十%のレゾール型フェノール樹脂を構成する原料モノマーを含有してもよい。湿式摩擦材用フェノール樹脂中の原料モノマーは、後述の湿式摩擦材の製造過程中の硬化時において、レゾール型フェノール樹脂由来の硬化骨格中に組み込まれる。これにより、湿式摩擦材の強度を高められることが期待される。
【0037】
次に、本実施形態の湿式摩擦材用フェノール樹脂の特性について説明する。
【0038】
上記レゾール型フェノール樹脂は室温25℃において液状でもよく、液状フェノール樹脂として用いることができる。これにより、基材への含浸性を高めることができる。
【0039】
上記レゾール型フェノール樹脂中の構造単位Bの含有比率の下限値は、構造単位Aおよび構造単位Bの合計値に対して、例えば、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。これにより、湿式摩擦材の耐久性を向上させることができる。一方、この構造単位Bの含有比率の上限値は、構造単位Aおよび構造単位Bの合計値に対して、例えば、90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下でもよい。これにより、他の物性とのバランスを図ることができる。
レゾール型フェノール樹脂中の構造単位Bの含有比率は、例えば、NMRで測定できる。
【0040】
上記湿式摩擦材用フェノール樹脂の、室温25℃における粘度は、例えば、1mPa・s以上500mPa・s以下でもよく、好ましくは3mPa・s以上300mPa・s以下でもよく、より好ましくは5mPa・s以上200mPa・s以下でもよい。これにより基材への含浸性と定着性のバランスを図ることができる。
【0041】
また、上記湿式摩擦材用フェノール樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば、100以上10000以下でもよく、好ましくは120以上5000以下でもよく、より好ましくは150以上3000以下でもよい。これにより基材への含浸性と硬化性のバランスを図ることができる。
【0042】
本実施形態において、重量平均分子量Mwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができる。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用でき、GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定できる。装置は、本体:東ソー製HLC-8020、分析用カラム:東ソー製TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、を使用できる。
【0043】
次に、本実施形態の湿式摩擦材料樹脂組成物について説明する。
本実施形態の湿式摩擦材用樹脂組成物(フェノール樹脂組成物)は、上記湿式摩擦材用フェノール樹脂と、有機溶剤と、を含むことができる。
この湿式摩擦材用樹脂組成物は、湿式摩擦材を形成するためのものであって、摩擦材と金属基材とを接着するために使用する接着剤とは異なるものである。
【0044】
上記有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒及びこれらの混合物を用いることができる。これらの中でも、低コストかつ効率的な製造プロセスを実現する観点や、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上させる観点等から、メタノールまたはアセトンを含むことがとくに好ましい。
【0045】
上記湿式摩擦材用樹脂組成物は、上記成分以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記他の成分としては、とくに限定されないが、たとえばレゾール型フェノール樹脂以外のフェノール樹脂、水、およびヘキサミン等の硬化剤、エラストマー、各種添加剤などが挙げられる。なお、上記他の成分は、接着成分としてポリビニルブチラールを含まないように構成され得る。
【0046】
上記湿式摩擦材用樹脂組成物における不揮発成分比率(固形分の含有量)は、当該湿式摩擦材用樹脂組成物全体に対して、10%以上90%以下でもよく、好ましくは20%以上80%以下でもよく、より好ましくは30%以上70%以下でもよい。これにより基材への含浸性と樹脂付着量のバランスを図ることができる。
【0047】
上記湿式摩擦材用樹脂組成物は、特に含浸用に好適に用いることができる。含浸する基材としては、特に限定されないが、天然繊維、金属繊維、炭素繊維、化学繊維などの繊維類を用いることができる。具体的には、天然パルプ繊維、リンターパルプ等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、アラミド繊維、フェノール繊維等の化学繊維などの繊維類を使用することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、摩擦特性、耐久性の観点から、アラミド繊維を主成分として繊維基材に使用することが好ましい。また、繊維の形態としては、特に限定されるものではないが、不織布、織布などを用いることができる。この場合、たとえば繊維材料により構成される基材に湿式摩擦材用樹脂組成物を含浸させ、これを焼成、硬化することにより湿式摩擦材を形成することができる。
【0048】
(湿式摩擦材)
本実施形態の湿式摩擦材は、上記湿式摩擦材用樹脂組成物(フェノール樹脂組成物)を基材に含浸してなるものである。
上記湿式摩擦材用樹脂組成物を湿式ペーパー摩擦材に用いる場合は、本発明の湿式摩擦材用樹脂組成物を、金属繊維や炭素繊維及び化学繊維と、カシューダストなどの摩擦調整剤、珪藻土などを充填した紙基材へ含浸し、これを焼成・硬化することにより、湿式摩擦材を得ることができる。
【0049】
上記湿式摩擦材は、フェノール樹脂組成物の硬化物中の構造単位Bの含有比率の下限値は、構造単位Aおよび構造単位Bの合計値に対して、例えば、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。これにより、湿式摩擦材の耐久性を向上させることができる。一方、この構造単位Bの含有比率の上限値は、構造単位Aおよび構造単位Bの合計値に対して、例えば、90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下でもよい。これにより、他の物性とのバランスを図ることができる。
【0050】
上記得られた湿式摩擦材は、優れた耐久性を実現することが可能である。
【0051】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 分子構造中に、上記一般式(A)で表される1個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物由来の構造単位Aおよび、上記一般式(B)で表される2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有するレゾール型フェノール樹脂を含む、湿式摩擦材用フェノール樹脂。
(上記一般式(B)中、R
2
は、それぞれ独立に、水酸基以外の置換基を表し、bは0~2の整数であり、nは1以上10以下の整数を表す。)
2. 1.に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂であって、
前記2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物は、レゾルシノール、カテコールおよびヒドロキノンからなる群から選択される一種以上を含む、湿式摩擦材用フェノール樹脂。
3. 1.または2.に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂であって、
当該湿式摩擦材用フェノール樹脂の重量平均分子量Mwが、100以上10000以下である、湿式摩擦材用フェノール樹脂。
4. 1.から3.のいずれか1つに記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂および有機溶媒を含む、フェノール樹脂組成物。
5. 4.に記載のフェノール樹脂組成物を基材に含浸してなる湿式摩擦材。
6. 5.に記載の湿式摩擦材であって、
前記フェノール樹脂組成物の硬化物中における前記構造単位Bの含有比率は、前記構造単位Aおよび前記構造単位Bの合計値に対して、10重量%以上90重量%以下である、湿式摩擦材。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0053】
<レゾール型フェノール樹脂の調製>
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール100重量部、37%ホルマリン水溶液200重量部、50%水酸化ナトリウム水溶液2重量部を添加し、還流条件下で30分間反応させた。その後、91kPaの減圧条件下で脱水を行いながら系内の温度が70℃に達したところで、メタノールを200重量部、レゾルシノールを100重量部(アルデヒド類/フェノール類のモル比=1.25)加えて、60℃で30分反応させた。次いで、メタノールを15重量部加えることにより、重量平均分子量1100のレゾール型フェノール樹脂1を得た。
得られたレゾール型フェノール樹脂1は、分子構造中に、フェノールに由来する構造単位Aと、レゾルシノールに由来する構造単位Bと、を有したものであった。
【0054】
(実施例2)
フェノールの配合量を160重量部、レゾルシノールの配合量を40重量部(アルデヒド類/フェノール類のモル比=1.19)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重量平均分子量700のレゾール型フェノール樹脂2を得た。
得られたレゾール型フェノール樹脂2は、分子構造中に、フェノールに由来する構造単位Aと、レゾルシノールに由来する構造単位Bと、を有したものであった。
【0055】
(実施例3)
実施例1と同様の反応容器にフェノール100重量部、ヒドロキノン100重量部、37%ホルマリン水溶液200重量部(アルデヒド類/フェノール類のモル比=1.25)、50%水酸化ナトリウム水溶液2重量部を添加し、還流条件下で30分間反応させた。その後、91kPaの減圧条件下で脱水を行いながら系内の温度が70℃に達したところで、メタノールを200重量部加えることにより、重量平均分子量850のレゾール型フェノール樹脂3を得た。
得られたレゾール型フェノール樹脂3は、分子構造中に、フェノールに由来する構造単位Aと、ヒドロキノンに由来する構造単位Bと、を有したものであった。
【0056】
(比較例1)
フェノールの配合量を200重量部とし、レゾルシノールを用いなかった点以外は、実施例3と同様にして、重量平均分子量950のレゾール型フェノール樹脂4を得た。
得られたレゾール型フェノール樹脂4は、分子構造中に、フェノールに由来する構造単位Aを有していたものの、2個のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物由来の構造単位Bを有しないものであった。
【0057】
【0058】
得られたレゾール型フェノール樹脂1~4について、湿式摩擦材用フェノール樹脂として用い、下記の評価項目について評価を行った。
【0059】
(重量平均分子量)
得られたレゾール型フェノール樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC測定した。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用し、GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定した。装置は、本体:東ソー製HLC-8020、分析用カラム:東ソー製TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本を使用した。
【0060】
<湿式摩擦材の試験片作製>
上述の実施例及び比較例より得られたレゾール型フェノール樹脂1~4(湿式摩擦材用フェノール樹脂)に対して、メタノールを加えてレゾール型フェノール樹脂の重量パーセント濃度が30%になるフェノール樹脂組成物1~4を作製した。
【0061】
次に、天然パルプ繊維、アラミド繊維、珪藻土などからなる混合物から作製したペーパー基材に、上記のフェノール樹脂組成物1~4を含浸、硬化させることで湿式摩擦材の材質を得た。これら湿式摩擦材を炭素鋼板に接着して評価に供する湿式摩擦板を製作した。
【0062】
得られた湿式摩擦材において、フェノール樹脂組成物1~4の硬化物中の構造単位Bの含有比率は、1から4の順に、50重量%、20重量%、50重量%、0重量%であった。硬化物中の構造単位Bの含有比率は、原料モノマーのほぼすべてが反応したことが確認されたため、[レゾルシノールまたはヒドロキノンの重量部/レゾルシノールまたはヒドロキノンの重量部+フェノールの重量部]×100から算出した。単位は重量%である。
【0063】
(繰返し圧縮疲労試験)
得られた湿式摩擦板を用いて、繰り返し圧縮疲労試験を行った。具体的には、繰り返し圧縮疲労試験機を用い、表2に示す試験条件で圧縮疲労試験を行った。
評価基準は繰り返し圧縮疲労試験10万サイクルの総厚変化を歪み率(%)として算出した。評価基準は以下の通りである、結果を表3に示す。
・評価基準:
◎:歪み率が20%以下であり、評価基準に対して優れた耐久性を示す
○:歪み率が20%以上超過、30%以下であり、耐久性の評価基準を満たす
×:歪み率が30%超過であり、耐久性の評価基準を満足していない
【表2】
【表3】
【0064】
実施例1~3のレゾール型フェノール樹脂は、湿式摩擦材用フェノール樹脂として用いることにより、比較例1と比べて、歪み率が低くなり、評価基準を十分に満足することを確認し、湿式摩擦材の耐久性を高められることが分かった。
したがって実施例1~3のレゾール型フェノール樹脂は、湿式摩擦材の耐久性に優れることから、湿式摩擦材(クラッチ摩擦材)に好適に用いることができる。