(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】船舶における対象物の支持構造
(51)【国際特許分類】
B63B 73/00 20200101AFI20230117BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20230117BHJP
B63B 15/00 20060101ALI20230117BHJP
B63B 73/43 20200101ALN20230117BHJP
【FI】
B63B73/00
B63J99/00 B
B63B15/00 Z
B63B73/43
(21)【出願番号】P 2019036605
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2018034504
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】小熊 健
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-088773(JP,A)
【文献】特開2014-162430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 73/00 - 73/30
B63J 99/00
B63B 15/00 - 15/02
B63B 73/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され対象となる対象物を支持するための支持構造であって、
船体を構成する壁部の一面側に固定され前記壁部を補強する壁部補強部材と、
前記壁部において前記壁部補強部材の反対側に固定され、前記対象物を支持する支持体と、を備え、
前記支持体は、第1の支持部材と、第2の支持部材と、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に介在し前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材に固定された介在部材と、を有
し、
前記壁部補強部材と前記第1の支持部材とを前記壁部を介して突き合わせた状態で、前記壁部補強部材の厚みの範囲に対して、前記第1の支持部材の一方の主面は、前記壁部補強部材の一方の主面から遠ざかる一方向へはみ出し、前記第1の支持部材の他方の主面は、前記壁部補強部材の厚みの範囲内に存在し、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを前記介在部材を介して突き合わせた状態で、前記第1の支持部材の厚みの範囲に対して、前記第2の支持部材の一方の主面は、前記一方向と同方向へはみ出し、前記第2の支持部材の他方の主面は、前記第1の支持部材の厚みの範囲内に存在し、
前記第2の支持部材の前記他方の主面は、前記壁部補強部材の中心線より前記一方向へ位置している、ことを特徴とする船舶における対象物の支持構造。
【請求項2】
前記支持体は、前記船体の前後方向の中央及び中央近傍の範囲に配置されていることを特徴とする
請求項1に記載の船舶における対象物の支持構造。
【請求項3】
前記対象物は、前記壁部補強部材の厚み方向に力を受けるものであることを特徴とする
請求項1又は2に記載の船舶における対象物の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載され対象となる対象物を支持するための支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、船舶の船首部の上甲板上の両舷に配置されているウインドラス(揚錨機)のシプシーホイールから、船体の横方向(左右方向)に張設するアンカーチェーンを、ホースパイプの手前で、中継、保持するローラ式チェーンコンプレッサ(対象物)が開示されている。このチェーンコンプレッサでは、アンカーチェーンが掛け渡されるローラがローラ軸に固定され、このローラ軸の両端が、上甲板上に固定された本体側わく(支持体)に保持されている。
【0003】
このようなチェーンコンプレッサにあっては、アンカーチェーンの捩れ等が原因で、チェーンコンプレッサの配置を、当初の設計位置に対して船首尾方向にずらさなければならない場合がある。
【0004】
ここで、本体側わくには、アンカーチェーンを介してアンカーを含む比較的大きな荷重が作用するが、船舶にあっては局所的に応力が集中しないように、本体側わくからの荷重を船体構造に分散させるのが一般的である。具体的には、本体側わくを、上甲板(壁部)を補強すべく上甲板下に溶接された例えばロンジや甲板横桁等の壁部補強部材上方に位置させ上甲板上に溶接するのが、一般的な設計となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、本体側わくが、ロンジや甲板横桁等の壁部補強部材上方から大きくずれてしまう場合(予め決められた許容限界を超えてずれてしまう場合)には、壁部補強部材に本体側わくからの荷重を良好に分散できないため、以下のような処理を施すのが一般的である。すなわち、ずれている範囲の壁部補強部材を切断し、本体側わく下方に位置するように再度取り付けたり、部分的に壁部補強部材を切断し板厚を厚くする等の処置を施すことになる。また、高所の作業の場合には、足場の設置、解体、再塗装等がさらに加わることになる。すなわち、船体構造側となる壁部補強部材の調整が必要になるため、現場作業が非常に非効率になっていた。
【0007】
また、例えばオイルタンカー等の船舶においては、オイルを船内のカーゴオイルタンクに流し込む、又はその逆を行うパイプ(対象物)を有している。当該パイプは、二重船殻構造の内底板(壁部)上に溶接された支持体で支持されることが知られている。内底板下には、内底板を補強すべく例えばロンジ等の壁部補強部材が溶接されている。ここで、パイプ精度や船殻精度等が原因で、支持体の位置を、例えばロンジ等の壁部補強部材上方から大きくずらさなければならないことがある(予め決められた許容限界を超えてずらさなければならないことがある)。この場合には、上述したチェーンコンプレッサの場合と同様に、壁部補強部材の調整が必要となるため、現場作業が非常に非効率になっていた。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、壁部補強部材を調整することなく、支持体の構成により壁部補強部材に対して対象物を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる船舶における対象物の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による船舶における対象物の支持構造は、船舶に搭載され対象となる対象物を支持するための支持構造であって、船体を構成する壁部の一面側に固定され壁部を補強する壁部補強部材と、壁部において壁部補強部材の反対側に固定され、対象物を支持する支持体と、を備え、支持体は、第1の支持部材と、第2の支持部材と、第1の支持部材と第2の支持部材との間に介在し第1の支持部材及び第2の支持部材に固定された介在部材と、を有することを特徴としている。
【0010】
このような船舶における対象物の支持構造によれば、対象物を支持する支持体は、第1の支持部材と、第2の支持部材と、介在部材と、を備えている。そして、介在部材は、第1の支持部材と第2の支持部材との間に介在し第1の支持部材及び第2の支持部材に固定されている。すなわち、壁部補強部材で補強された壁部と、支持体が対象物を支持する支持箇所との間に、介在部材を介して荷重を伝達可能な状態の第1の支持部材及び第2の支持部材が存在するような構成となる。この場合、荷重の伝達性を確保できる範囲で壁部補強部材に対して第1の支持部材を一方向にずらし、且つ、第1の支持部材に対して第2の支持部材を一方向にずらした構造を採用することが可能になる。当該構成によれば、対象物から壁部補強部材への荷重の伝達性は確保しつつも、壁部補強部材と上記支持箇所との間のずれ量は、壁部補強部材と上記支持箇所との間で一つの支持部材のみを用いる場合のずれ量に比して大きくすることができる。従って、壁部補強部材を調整することなく、上記支持体の構成により壁部補強部材に対して対象物を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる。
【0011】
壁部補強部材と第1の支持部材とを壁部を介して突き合わせた状態で、壁部補強部材の厚みの範囲に対して、第1の支持部材の一方の主面は、壁部補強部材の一方の主面から遠ざかる一方向へはみ出し、第1の支持部材の他方の主面は、壁部補強部材の厚みの範囲内に存在し、第1の支持部材と第2の支持部材とを介在部材を介して突き合わせた状態で、第1の支持部材の厚みの範囲に対して、第2の支持部材の一方の主面は、一方向と同方向へはみ出し、第2の支持部材の他方の主面は、第1の支持部材の厚みの範囲内に存在する。これにより、壁部補強部材と第1の支持部材とが壁部を介して突き合わされた状態で、壁部補強部材の厚みの範囲に対して、第1の支持部材の一方の主面が、壁部補強部材の一方の主面から遠ざかる一方向へはみ出すと共に、第1の支持部材の他方の主面が、壁部補強部材の厚みの範囲内に位置している。第1の支持部材の他方の主面が壁部補強部材の厚みの範囲内に位置しているため、第1の支持部材に作用する荷重を壁部補強部材へ伝達することができる。
【0012】
壁部補強部材と第1の支持部材とが壁部を介して突き合わされた状態で、壁部補強部材の厚みの範囲に対して、第1の支持部材の一方の主面が、壁部補強部材の一方の主面から遠ざかる一方向へはみ出すと共に、第1の支持部材の他方の主面が、壁部補強部材の厚みの範囲内に位置している。第1の支持部材の他方の主面が壁部補強部材の厚みの範囲内に位置しているため、第1の支持部材に作用する荷重を壁部補強部材へ伝達することができる。この構成により、荷重の伝達性を確保しつつ、壁部補強部材に対して第1の支持部材を一方向へずらすことができる。また、第1の支持部材と第2の支持部材とが介在部材を介して突き合わされた状態で、第1の支持部材の厚みの範囲に対して、第2の支持部材の一方の主面が、一方向と同方向へはみ出すと共に、第2の支持部材の他方の主面が、第1の支持部材の厚みの範囲内に位置している。第2の支持部材の他方の主面が第1の支持部材の厚みの範囲内に位置しているため、第2の支持部材に作用する荷重を第1の支持部材へ伝達することができる。この構成により、荷重の伝達性を確保しつつ、第1の支持部材に対して第2の支持部材を一方向へさらにずらすことができる。すなわち、壁部補強部材と第2の支持部材とのずれ量は、壁部補強部材と第1の支持部材とのずれ量と、このずれと同方向を向く第1の支持部材と第2の支持部材とのずれ量との合計とすることができ、各所のずれ量を超えるずれ量とすることができる。従って、壁部補強部材を調整することなく、上記支持体の構成により壁部補強部材に対して対象物を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる。
【0013】
ここで、第2の支持部材の他方の主面は、壁部補強部材の中心線より一方向へ位置していると、第2の支持部材を、壁部補強部材の厚みの半分を超えた位置まで大きくずらすことができる。
【0014】
また、支持体は、船体の前後方向の中央及び中央近傍の範囲に配置されているのが好ましい。船体の前後方向の中央及び中央近傍の範囲には、波による大きな負荷が作用する例えば縦強度部材等の重要部材が配置される。重要部材が配置される範囲内においては、壁部補強部材と支持部材との間のずれ量(すなわち一箇所あたりの部材間のずれ量)は、厳しく制限される。このような厳しい制限下においても、本発明の対象物の支持構造を適用すれば、壁部補強部材に対して対象物を大きくずらすことができる。すなわち、船体の前後方向の中央及び中央近傍の範囲にて本発明の対象物の支持構造を採用することで、当該支持構造によって得られる効果がより顕著となる。
【0015】
また、対象物は、壁部補強部材の厚み方向に力を受けるものであるのが好ましい。船舶には、例えば、チェーンコンプレッサや、オイルが流れるパイプ(オイルパイプ)等の対象物のように、自重以外の力が発生するものがある。このような対象物を支持する場合、壁部補強部材は、対象物の自重に加えて、対象物からの壁部補強部材の厚み方向の力を当該壁部補強部材の厚みで受け、強度を確保することができる。ここで、壁部補強部材に厚み方向の力がかかる場合、壁部補強部材と支持部材との間のずれ量(すなわち一箇所あたりの部材間のずれ量)を大きくすることが困難となる場合がある。このような場合であっても、本発明の対象物の支持構造を適用すれば、壁部補強部材に対して対象物を大きくずらすことができる。すなわち、壁部補強部材の厚み方向に力を受ける対象物に対して、本発明の支持構造を採用することで、当該支持構造によって得られる効果がより顕著となる。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、壁部補強部材を調整することなく、支持体の構成により壁部補強部材に対して対象物を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる船舶における対象物の支持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る対象物の支持構造が適用された船舶を示す概略側面図である。
【
図2】
図1中の対象物の支持構造を示す概略斜視図である。
【
図3】対象物をパイプとした支持構造を示す断面図である。
【
図4】
図3中の支持構造の要部を示す拡大断面図であり、各部材同士のずれを示すべく溶接部を省略した図である。
【
図5】
図4に対応する支持構造の拡大断面図であり、溶接部を追加した図である。
【
図6】他の実施形態に係る対象物の支持構造の拡大断面図であり、各部材同士のずれを示すべく溶接部を省略した図である。
【
図7】JSQSに規定されている目違い量を示す説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による船舶における対象物の支持構造の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」の語は船体の進行方向に対応するものであり、「縦」の語は前後方向に対応するものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応するものであり、「上」「下」の語は船体の上下方向に対応するものである。因みに、「前」「後」と「縦」の語、「横」と左右の語は、文中適宜使い分けられている。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る対象物の支持構造が適用された船舶を示す概略側面図であり、船舶は、ここでは、オイルタンカーである。
【0020】
図1に示すように、船舶100は、船体1、推進器2及び舵3を備えている。船首部は、船体1の前方側(図示右側)に位置し、船尾部は、船体1の後方側(図示左側)に位置しており、推進器2及び舵3は船尾部に位置している。推進器2は、船体1を推進させるものであり、例えばスクリューが用いられている。舵3は、船体1の推進方向を制御する。
【0021】
船体1は、天井面を構成する上甲板4と、船体1の外殻を形成する外板(外壁)5と、外板5の船体内側に水密に設けられた内板(内壁)6と、を備え、外板5及び内板6によって、二重船殻構造(ダブルハル構造)が構成されている。外板5は、船底側の外殻を構成する船底外板7と、船側側の外殻を構成する船側外板と、を備える。一方、内板6は、船底側において縦方向に延在する内底板8と、船側側において縦方向に延在する縦通部材としての縦通隔壁と、を含んでいる。
【0022】
この船体1では、内板6よりも船体内側の空間が、オイルを積載するためのカーゴオイルタンク9とされ、外板5と内板6との間の空間が、バラスト水を張水するためのバラストタンク10とされている。カーゴオイルタンク9及びバラストタンク10は、前後方向に複数が並設された横隔壁11によって前後方向に仕切られている。なお、
図1においては、図が煩雑になるのを避けるために、横隔壁11,11同士間のトランスリングや、上甲板4、外板5、内板6等を壁部として当該壁部の一面側に複数固定され、当該壁部を補強する壁部補強部材としての例えばロンジ(防撓材)等の骨部材は省略されている。
【0023】
そして、船尾側のカーゴオイルタンク9を画成する横隔壁11より船尾側には、ポンプ室50が配置され、ポンプ室50より船尾側には、横隔壁25を隔てて機関室51が配置される。ポンプ室50には、カーゴオイルタンク9用のポンプ及びバラストタンク10用のポンプ等が配設され、機関室51には、推進器2を駆動するための主機等が配設される。
【0024】
船舶100は、当該船舶100に搭載され対象となる対象物90を支持するための支持構造30を備えている。
図2は、対象物の支持構造を示す概略斜視図である。
図2に示すように、支持構造30は、船体1を構成する壁部91の一面側に固定され当該壁部91を補強する壁部補強部材92と、壁部91において壁部補強部材92の反対側に固定され、対象物90を支持する支持体13と、を備えている。対象物90は、船体1の上甲板4及び内板6等の壁部91に対して設けられるものであれば特に限定されず、あらゆる機器や構造物等を採用可能である。
【0025】
ここで、船体1内には、オイルを船内のカーゴオイルタンク9に流し込む、又はその逆を行うパイプ(対象物)が搭載されている。従って、本実施形態では、パイプを対象物90として支持する支持構造30について説明するものとする。なお、他の対象物に関しては後述する。
図3は、対象物をパイプとした支持構造30を示す断面図である。
【0026】
図3に示すように、パイプ12は、壁部91としての内底板8に対して設けられる。また、パイプ12は、ヘビーアンカーピースと称される構造物を支持体13として支持される。
【0027】
図2及び
図3に示すように、支持体13は、下側の第1の支持部材14と、上側の第2の支持部材15と、第1の支持部材14と第2の支持部材15との間に介在し第1の支持部材14及び第2の支持部材15に固定された介在部材16と、を有している。
【0028】
第1の支持部材14は、上下方向及び横方向に延在する平板状に構成され、前後方向に平行に離間して一対が配置される。第2の支持部材15も、第1の支持部材14と同様に、上下方向及び横方向に延在する平板状に構成され、前後方向に平行に離間して一対が配置される。第2の支持部材15は、介在部材16を間に介して第1の支持部材14の上方に概ね位置している。第1の支持部材14及び第2の支持部材15は、横方向に沿って、パイプ12の大きさに対応するように延在している。また、第1の支持部材14及び第2の支持部材15は、横方向に長尺に延びる壁部補強部材92としてのロンジ17(後述)の一部に対応して横方向に延びている。
【0029】
介在部材16は、内底板8と平行を成して平板状に構成され、第1、第2の支持部材14,15と同様に、横方向に延在している。介在部材16の外形は、第1、第2の支持部材14,15より多少前後方向且つ横方向に張り出す大きさとされている。すなわち、ここでは、介在部材16は1枚の平板として水平に配置されている。このような一枚板の介在部材16により、一方側(例えば
図3の右側)の第1の支持部材14と第2の支持部材15と、他方側(例えば
図3の左側)の第1の支持部材14と第2の支持部材15との間において、介在部材16のバランスが良く安定性を保ちやすく、且つ、強度を容易に確保でき、加えて、設計が容易であるという利点がある。
【0030】
一方、一方側の第1の支持部材14と第2の支持部材15との間の介在部材と、他方側の第1の支持部材14と第2の支持部材15との間の介在部材とを、別々の部材として分けることもできる。この場合、別々の介在部材は、上下の位置が異なっていても良い。このように、介在部材を一方側と他方側とで別々の部材として分けた場合、一方側の状況と他方側の状況に合わせて、各々の介在部材を適切な高さ位置に配置することが可能となる。なお、以下の説明では、介在部材16を
図2及び
図3に示す1枚の平板として説明している。
【0031】
壁部としての内底板8の上側の平面には、第1の支持部材14の下端面が突き当てられ、介在部材16の下側の平面には、第1の支持部材14の上端面が突き当てられ、介在部材16の上側の平面には、第2の支持部材15の下端面が突き当てられ、内底板8と第1の支持部材14、第1の支持部材14と介在部材16、介在部材16と第2の支持部材15は、各々隅肉溶接により固定されている(
図5参照)。そして、支持体13上にパイプ12が載置され溶接固定されている(
図3参照)。
【0032】
図2及び
図3に示すように、内底板8の裏面側(一面側)には、内底板8を補強するための壁部補強部材92としてのロンジ17が固定されている。ロンジ17は、上下方向及び横方向に長尺に延在し、例えば、I字状(平板状)や、下端が折曲するL字状やT字状等の構成が採用される。ロンジ17は、複数が前後方向に所定に離間して並設されている。これらのロンジ17は、その上端面が、壁部としての内底板8の下側の平面に突き当てられ、内底板8とロンジ17は、隅肉溶接により固定されている(
図5参照)。
【0033】
ところで、設計上では、内底板8を間に介したロンジ17の上方(真上)に、第1の支持部材14が配置されることになるが、パイプ精度や船殻精度等が原因で、パイプ12の位置が変更され、支持体13を構成する第1の支持部材14を、設計位置より、ずらさなければならないことがある。
【0034】
本実施形態では、
図4に示すようにずらしている。なお、ここでは、ロンジ17の板厚T1、第1の支持部材14の板厚T2、第2の支持部材15の板厚T3は同じ厚さである。
【0035】
そして、ロンジ17と第1の支持部材14とを内底板8を介して突き合わせた状態で、ロンジ17の厚みT1の範囲に対して、第1の支持部材14の一方の主面14aは、ロンジ17の一方の主面17aから遠ざかる一方向(図示右方向)へずれ、ずれ量A1はみ出し、第1の支持部材14の他方の主面14bは、ロンジ17の厚みT1の範囲内に存在している。
【0036】
また、第1の支持部材14と第2の支持部材15とを介在部材16を介して突き合わせた状態で、第1の支持部材14の厚みT2の範囲に対して、第2の支持部材15の一方の主面15aは、上記一方向と同方向へずれ、ずれ量A2はみ出し、第2の支持部材15の他方の主面15bは、第1の支持部材14の厚みT2の範囲内に存在している。
【0037】
ロンジ17と第2の支持部材15とのずれ量A3は、ロンジ17と第1の支持部材14とのずれ量A1と、このずれと同方向を向く第1の支持部材14と第2の支持部材15とのずれ量A2との合計となる。
【0038】
そして、
図5に示すように、ロンジ17と内底板8、内底板8と第1の支持部材14には、隅肉溶接部18がそれぞれ設けられ、互いに固定されている。また、第1の支持部材14と介在部材16、介在部材16と第2の支持部材15には、隅肉溶接部20がそれぞれ設けられ、互いに固定されている。
【0039】
なお、
図4及び
図5では、
図3に示す支持体13のうち、船首部側の支持構造が抜粋して描かれているが、支持体13の船尾部側の支持構造も同様であり、第1の支持部材14、第2の支持部材15を同様に船首部側に移動し、同様な隅肉溶接部18,20を形成することになる。
【0040】
ここで、部材同士をずらす場合には、一般的に制約条件があり、その制約条件として目違い量が、JSQS(Japan Shipbuilding Quality Standard)日本鋼船工作法精度標準2010に規定されている。
【0041】
この規定は、
図7に示すように、中間板80を間に介して第1の板81と第2の板82が例えば十字を成すように突き合わされ、第1の板81と中間板80とを隅肉溶接すると共に、第2の板82と中間板80とを隅肉溶接する。ここで、第1の板81の一方の主面81aと第2の板82の一方の主面82aとの間の距離を目違い量aと定義し、第1の板81の板厚t1、第2の板82の板厚t2、t1≧t2とすると、本実施形態にように重要部材(詳しくは後述)の場合には、目違い量aの許容限界は、以下の数式(1)の範囲内となっている。
a≦(1/3)t2
…(1)
【0042】
本実施形態では、JSQS2010に準じており、ずれ量A1,A2の許容限界を(1/3)T1としてずらしている。因みに、前述したようにT1=T2=T3である。
【0043】
従って、本実施形態によれば、
図4に示すように、第2の支持部材15の他方の主面15bを、ロンジ17の中心線CLより一方向へ位置することができる。具体的には、ずれ量A1を(1/3)T1、ずれ量A2を(1/3)T1とすれば、ずれ量A3は(2/3)T1となり、第2の支持部材15を、ロンジ17の厚みT1の半分を超えた位置まで大きくずらすことができる。
【0044】
また、JSQS2010では、重要部材以外のその他の部材の目違い量aの許容限界は、以下の数式(2)の範囲内となっている。
a≦(1/2)t2 …(2)
【0045】
この場合は、許容限界が数式(1)より大きくなるため、第2の支持部材15の他方の主面15bを、勿論、ロンジ17の中心線CLより一方向へ位置することができ、第2の支持部材15を、ロンジ17の厚みT1の半分を超えた位置まで大きくずらすことができる。
【0046】
さらにまた、JSQS2010では、重要部材の場合であって以下の数式(3)を満たす場合には、さらに溶接に制約条件を加えることで許容されている。
(1/3)t2≦a≦(1/2)t2 …(3)
【0047】
具体的には、
図5に示すように、例えば追加溶接として、既に施工した溶接ビード18,20上に、さらに例えば10%以上の所謂増し脚長と呼ばれる点線で示される溶接ビード19,21をそれぞれ重ねて設け増強するのが良いとされている。なお、ここでは、一方の対角位置に溶接ビード19,21をそれぞれ重ねて設けているが、両方の対角位置に設けるようにしても良い。
【0048】
次に、本実施形態に係る支持構造の作用・効果について説明する。
【0049】
まず、比較例として、
図4に示す支持構造から介在部材16及び第2の支持部材15を省略した支持構造について説明する。比較例に係る支持構造では、第1の支持部材14がパイプ12を支持する。比較例に係る支持構造では、パイプ12とロンジ17との間のずれ量は、ロンジ17と第1の支持部材14とのずれ量A1となる。パイプ12からの荷重を第1の支持部材14を介してロンジ17に伝達するためには、第1の支持部材14の他方の主面14bが、少なくともロンジ17の厚みT1の範囲内に存在している必要がある。従って、パイプ12をロンジ17に対してずらそうとした場合、比較例に係る支持構造では、当該ずれ量は、最大でもロンジ17の厚みT1の範囲内に限られる。更には、部材同士のずれ量をJSQS2010に準拠させる場合は、パイプ12とロンジ17との間のずれ量は、前述の数式(1)~(3)に準じた範囲に制限される。
【0050】
従って、上述のような制限の範囲を超えてパイプ12をロンジ17に対して大きくずらすためには、既存のロンジ17を一度切断し、パイプ12のずれに対応した位置に再度取り付ける必要がある。あるいは、既存のロンジ17よりも板厚の厚いロンジ17に取り替える必要がある。このように、比較例に係る支持構造では、パイプ12の位置を大きくずらす場合に、船体構造側となるロンジ17の調整が必要になるため、現場作業が非常に非効率になっていた。
【0051】
これに対し、本実施形態においては、対象物90を支持する支持体13は、第1の支持部材14と、第2の支持部材15と、介在部材16と、を備えている。そして、介在部材16は、第1の支持部材14と第2の支持部材15との間に介在し第1の支持部材14及び第2の支持部材15に固定されている。すなわち、壁部補強部材92で補強された壁部91と、支持体13が対象物90を支持する支持箇所(
図2では第2の支持部材15の上端)との間に、介在部材16を介して荷重を伝達可能な状態の第1の支持部材14及び第2の支持部材15が存在するような構成となる。この場合、荷重の伝達性を確保できる範囲で壁部補強部材92に対して第1の支持部材14を一方向にずらし、且つ、第1の支持部材14に対して第2の支持部材15を一方向にずらした構造を採用することが可能になる。当該構成によれば、対象物90から壁部補強部材92への荷重の伝達性は確保しつつも、壁部補強部材92と上記支持箇所との間のずれ量は、壁部補強部材92と上記支持箇所との間で一つの支持部材のみを用いる場合のずれ量に比して大きくすることができる。従って、壁部補強部材92を調整することなく、上記支持体13の構成により壁部補強部材92に対して対象物90を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる。
【0052】
より詳細には、ロンジ17と第1の支持部材14とが内底板8を介して突き合わされた状態で、ロンジ17の厚みT1の範囲に対して、第1の支持部材14の一方の主面14aが、ロンジの一方の主面17aから遠ざかる一方向へはみ出すと共に、第1の支持部材14の他方の主面14bが、ロンジ17の厚みT1の範囲内に位置している。第1の支持部材14の他方の主面14bがロンジ17の厚みT1の範囲内に位置しているため、第1の支持部材14に作用する荷重をロンジ17へ伝達することができる。この構成により、荷重の伝達性を確保しつつ、ロンジ17に対して第1の支持部材14を一方向へずらすことができる。また、第1の支持部材14と第2の支持部材15とが介在部材16を介して突き合わされた状態で、第1の支持部材14の厚みT2の範囲に対して、第2の支持部材15の一方の主面15aが、一方向と同方向へはみ出すと共に、第2の支持部材15の他方の主面15bが、第1の支持部材14の厚みT2の範囲内に位置している。第2の支持部材15の他方の主面15bが第1の支持部材14の厚みT2の範囲内に位置しているため、第2の支持部材15に作用する荷重を第1の支持部材14へ伝達することができる。この構成により、荷重の伝達性を確保しつつ、第1の支持部材14に対して第2の支持部材15を一方向へさらにずらすことができる。
【0053】
すなわち、ロンジ17と第2の支持部材15とのずれ量A3は、ロンジ17と第1の支持部材14とのずれ量A1と、このずれと同方向を向く第1の支持部材14と第2の支持部材15とのずれ量A2との合計とすることができ、各所のずれ量A1,A2を超えるずれ量A3とすることができる。従って、ロンジ17を調整することなく、支持体13の構成によりロンジ17に対してパイプ12を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる。
【0054】
なお、船独特の事情や制約があるため、板厚一枚分とはいえ、ずれ量を大きくできることは、船の分野にとっては非常に大きな効果をもたらすものである。
【0055】
また、本実施形態によれば、
図4に示すように、第2の支持部材15の他方の主面15bを、ロンジ17の中心線CLより一方向へ位置することができる。これにより、第2の支持部材15、すなわちパイプ12を支持する部材を、ロンジ17の厚みT1の半分を超えた位置まで大きくずらすことができる。ここで、比較例に係る支持構造については、パイプ12を支持する部材(第1の支持部材14)は、ロンジ17と第1の支持部材14とのずれ量A1しかずらすことができない。部材同士のずれ量をJSQS2010に準拠させる場合には、許容限界が大きい数式(2),(3)の制約条件を採用した場合であっても、パイプ12を支持する部材のロンジ17に対するずれ量をロンジ17の厚みT1の半分より大きくすることはできない。それに対し、本実施形態では、許容限界が厳しく制限された数式(1)の制約条件を採用した場合でも、ずれ量A1を(1/3)T1とし、ずれ量A2を(1/3)T1とすれば、ずれ量A3は(2/3)T1となる。すなわち、厳しい制約条件下ですら、パイプ12を支持する部材である第2の支持部材15を、ロンジ17の厚みT1の半分を超えた位置まで大きくずらすことができる。
【0056】
図6は、他の実施形態に係る対象物の支持構造の拡大断面図であり、各部材同士のずれを示すべく溶接部を省略した図である。
【0057】
この実施形態の支持構造が先の実施形態と違う点は、ロンジ17、第1の支持部材14、第2の支持部材15の板厚が変わった点であり、ここでは、T1<T2<T3となっている。
【0058】
このような実施形態にあっても、先の実施形態と同様に、ロンジ17と第2の支持部材15とのずれ量A3は、ロンジ17と第1の支持部材14とのずれ量A1と、このずれと同方向を向く第1の支持部材14と第2の支持部材15とのずれ量A2との合計とすることができ、各所のずれ量A1,A2を超えるずれ量A3とすることができる。従って、ロンジ17を調整することなく、支持体13の構成によりロンジ17に対してパイプ12を大きくずらすことができ、現場作業を効率化できる。
【0059】
また、先の実施形態と同様に、第2の支持部材15の他方の主面15bを、ロンジ17の中心線CLより一方向へ位置することができ、第2の支持部材15を、ロンジ17の厚みT1の半分を超えた位置まで大きくずらすことができる。
【0060】
また、上記数式(3)に準ずる場合には、溶接に制約条件を付けば良い。
【0061】
なお、
図1に示すように、舵3の中心と満載喫水線での船首材の前端との距離をLとし、船体1の前後方向の中心Cから船首側へ0.3L延びる範囲、中心Cから船尾側へ0.3L延びる、都合0.6Lの範囲Mを重要部材が配される範囲と呼ぶ。この範囲Mは、波による負荷が厳しい範囲であり、当該範囲M内の重要部材としては、縦強度部材が挙げられる。当該範囲M以外の範囲の重要部材としては、トランス、フロア、クロスタイ、棚構造、ウェブのスロット周辺、ハッチコーミング周辺、aft peak内フロア、主機台、スラスト台の周辺、ピラーの上下、各種Bkt端部等応力の高いと考えられるところが挙げられる。
【0062】
そして、支持構造30は、船体1の前後方向の中央及び中央近傍の範囲、すなわち、重要部材が配される範囲Mに配置されているのが好ましい。船体1の前後方向の中央及び中央近傍の範囲Mには、波による大きな負荷が作用する例えば縦強度部材等の重要部材が配置される。重要部材が配置される範囲内においては、壁部補強部材92と支持部材との間のずれ量(すなわち一箇所あたりの部材間のずれ量)は、厳しく制限される。具体的には、JSQS2010に準ずる場合には、重要部材に対して、数式(2)よりも厳しい制約条件である数式(1)が適用される。このような厳しい制限下においても、本実施形態の支持構造30を適用すれば、壁部補強部材92に対して対象物を大きくずらすことができる。すなわち、船体1の前後方向の中央及び中央近傍の範囲にて支持構造30を採用することで、当該支持構造30によって得られる効果がより顕著となる。
【0063】
また、パイプ12を始めとした対象物90は、ロンジ17を始めとした壁部補強部材92の厚み方向に力を受けるものであるのが好ましい。船舶100には、例えば、チェーンコンプレッサや、オイルが流れるパイプ12等の対象物のように、自重以外の力が作用するものがある。従って、壁部補強部材92において、対象物90の自重に加えて、対象物90からの壁部補強部材92の厚み方向の力を当該壁部補強部材92の厚みで受け、強度を確保することができる。ここで、壁部補強部材92に厚み方向の力がかかる場合、壁部補強部材92と支持部材との間のずれ量(すなわち一箇所あたりの部材間のずれ量)を大きくすることが困難となる場合がある。このような場合であっても、本実施形態の支持構造30を適用すれば、壁部補強部材92に対して対象物を大きくずらすことができる。すなわち、壁部補強部材92の厚み方向に力を受ける対象物に対して、支持構造30を採用することで、当該支持構造30によって得られる効果がより顕著となる。
【0064】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、支持体13を、介在部材16を間に介し、平板状を成し平行に離間する第1の支持部材14と、平板状を成し平行に離間する第2の支持部材15と、を備える構成としているが、第1の支持部材、第2の支持部材をそれぞれ、側面が四面の矩形パイプとしても良い。この場合には支持体の剛性を、より高めることができる。同様に、第1、第2の支持部材は、例えば、四角柱等を始めとした多角柱等、種々のものを採用できる。また、介在部材16は、円板等であって良い。また、第1の支持部材14、第2の支持部材15のそれぞれは、多少同じ方向に傾いていても良い。
【0065】
また、上記実施形態においては、上下方向において壁部91と対象物90との間に設けられる介在部材16を1枚としているが、2枚以上を離間して並設してその間に上記支持部材14や15を固定し複数枚とすれば、ずれ量を累積して大きくできる。すなわち、壁部と対象物との間にN段分の支持部材が存在し(Nは3以上の整数)、壁部から数えてn段目の支持部材を「第nの支持部材」とする(nは「N-1」以下の整数)。このとき、第nの支持部材と第(n+1)の支持部材との間には、介在部材が設けられる。また、第nの支持部材と第(n+1)の支持部材とを介在部材を介して突き合わせた状態で、第nの支持部材の厚みの範囲に対して、第(n+1)の支持部材の一方の主面は、一方向と同方向へはみ出し、第(n+1)の支持部材の他方の主面は、第nの支持部材の厚みの範囲内に存在する。このような関係が、第2の支持部材から第Nの支持部材までの全ての部材に対して成り立つ。このような構成を採用すれば、対象物のずれ量が
図4に示す形態より更に大きい場合であっても、壁部補強部材の位置を調整する必要無く、対象物のずれに対応することができる。
【0066】
また、上記においては、壁部91、壁部補強部材92、支持体13の種々の変形例を述べているが、これだけに限定されるものではない。特に、従来技術で説明したように、対象物をチェーンコンプレッサとし、壁部を上甲板4(
図1参照)とし、壁部補強部材をロンジや甲板横桁等とし、支持体をチェーンコンプレッサ台とした場合に有効に適用できる。この場合、チェーンコンプレッサが、揚錨機(ウインドラス)により巻き上げ/巻き下げられたアンカーチェーンを、ホースパイプの手前で中継、保持することになるが、アンカーチェーンの捩れ等により、アンカーチェーンを保持するチェーンコンプレッサの位置が、設計位置に対して船首尾方向にずれてしまい、チェーンコンプレッサ台(上記特許文献1でいう本体側わく)が、壁部補強部材上の設計位置からずれてしまうため、本発明の支持構造の適用が効果的である。さらにまた、壁部91を縦通隔壁や横隔壁等とし、壁部補強部材92をロンジ等とし、対象物90を例えばパイプ等とし、支持体13が対象物90を横から支持する場合にも適用でき、種々のものに対して適用できる。
【0067】
また、船舶もオイルタンカーに限定されるものではなく、船舶に搭載され対象となる対象物を支持するための支持構造全てに適用できる。この場合、対象物単体では設置位置が決まらないもの全てに対して適用可能である。
【0068】
また、上記各数式、数値、条件に基づく許容限界は、国際的、また、将来的に規格が変わることはあり、その場合には、それに準拠することになる。
【0069】
すなわち、規格によって定められる許容限界次第では、荷重の伝達性を確保できる範囲で壁部補強部材に対して第1の支持部材を一方向にずらし、且つ、第1の支持部材を一方向にずらした構造であれば、上述の実施形態のような構造に限定されない。例えば、第1の支持部材の他方の主面が、壁部補強部材の厚みの範囲外に存在し、壁部補強部材の一方の主面から一方向へはみ出してもよい(あるいは、僅かにはみ出す程度で略同位置)。第2の支持部材の他方の主面が、第1の支持部材の厚みの範囲外に存在し、第1の支持部材の一方の主面から一方向へはみ出してもよい(あるいは、僅かにはみ出す程度で略同位置)。また、「第1の支持部材の一方の主面は、壁部補強部材の一方の主面から遠ざかる一方向へはみ出し、第1の支持部材の他方の主面は、壁部補強部材の厚みの範囲内に存在し」という条件と「第2の支持部材の一方の主面は、一方向と同方向へはみ出し、第2の支持部材の他方の主面は、第1の支持部材の厚みの範囲内に存在する。」という条件を同時に満たさず、一方のみの条件を満たすような構造が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…船体、8…内底板(壁部)、12…パイプ(対象物)、13…ヘビーアンカーピース(支持体)、14…第1の支持部材、14a…第1の支持部材の一方の主面、14b…第1の支持部材の他方の主面、15…第2の支持部材、15a…第2の支持部材の一方の主面、15b…第2の支持部材の他方の主面、16…介在部材、17…ロンジ(壁部補強部材)、17a…ロンジの一方の主面、30…支持構造、90…対象物、91…壁部、92…壁部補強部材、100…船舶、CL…ロンジの中心線、M…中央及び中央近傍の範囲、T1…ロンジの厚み、T2…第1の支持部材の厚み。