(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】薬液注入システム及び薬液注入工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2019046659
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】巴 直人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 仁哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-299780(JP,A)
【文献】特開2004-183334(JP,A)
【文献】特開2019-155325(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0103650(KR,A)
【文献】特開2006-002457(JP,A)
【文献】特開2004-195320(JP,A)
【文献】特開2016-128752(JP,A)
【文献】特開昭57-000213(JP,A)
【文献】特開平06-257136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入システムにおいて、前記2種類の薬液の液温を計測する薬液温度計測装置と、前記2種類の薬液の液温を調整する温度調整装置と、制御装置を備えており、
当該制御装置は、前記温度計測装置の計測結果に基づいて、温度調整装置により、前記2種類の薬液の液温を調整する機能を有して
おり、
前記温度調整装置は、前記2種類の薬液の少なくとも一方を希釈する水を貯蔵する貯蔵設備に設けられていることを特徴とする薬液注入システム。
【請求項2】
混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入システムにおいて、前記2種類の薬液の液温を計測する薬液温度計測装置と、前記2種類の薬液の液温を調整する温度調整装置と、制御装置を備えており、
当該制御装置は、前記温度計測装置の計測結果に基づいて、温度調整装置により、前記2種類の薬液の液温を調整する機能を有しており、
前記薬液温度計測装置に加えて、施工現場の地下水温度を計測する地下水温度計測装置を設けており、
前記制御装置は、前記薬液温度計測装置の計測結果に加えて、前記地下水温度計測装置の計測結果に基づいて温度調整装置により前記2種類の薬液の液温を調整する機能を有している
ことを特徴とする薬液注入システム。
【請求項3】
前記温度調整装置は、前記2種類の薬液を地中に供給する供給系統の各々に介装されている請求項
2の薬液注入システム。
【請求項4】
前記薬液温度計測装置は、前記2種類の薬液を地中に供給する供給系統の各々に介装されている請求項
2の薬液注入システム。
【請求項5】
混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入工法において、
薬液温度計測装置により前記2種類の薬液の液温を計測する工程と、
前記温度計測装置の計測結果に基づいて温度調整装置により前記2種類の薬液の液温を調整する工程を有して
おり、
前記温度調整装置は前記2種類の薬液の少なくとも一方を希釈する水を貯蔵する貯蔵設備に設けられており、
前記液温を調整する工程では貯蔵設備に貯えられている水の温度を調整することを特徴とする薬液注入工法。
【請求項6】
混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入工法において、
薬液温度計測装置により前記2種類の薬液の液温を計測する工程と、
前記温度計測装置の計測結果に基づいて温度調整装置により前記2種類の薬液の液温を調整する工程を有しており、
地下水温度計測装置により施工現場の地下水温度を計測する工程を有し、
前記液温を調整する工程では、前記薬液温度計測装置の計測結果に加えて、前記地下水温度計測装置の計測結果に基づいて温度調整装置により前記2種類の薬液の液温を調整する
ことを特徴とする薬液注入工法。
【請求項7】
前記温度調整装置は前記2種類の薬液の各々を地中に供給する供給系統に介装されており、
前記液温を調整する工程では前記2種類の薬液の温度を調整する請求項
6の薬液注入工法。
【請求項8】
前記薬液温度計測装置は、前記2種類の薬液を地中に供給する供給系統の各々に介装されている請求項
6の薬液注入工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,注入装置を用いて地中に注入薬液(例えばセメントミルク)を注入するための注入システム及びそれを用いた薬液注入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
係る薬液注入工法では,単体では固結しないが,混合すると固結する2種類の薬液を用意して,当該薬液を地中に圧入して混合することにより,地中の亀裂,空隙等に薬液を充填して固結している。
ここで,2つの薬液を混合した後,固化する時間(或いはゲルタイム)は,薬液の濃度,比重,計量比,水温(液温)に依存する。特に,濃度と水温によるところが大きい。薬液の固化し易さと液温(水温)との特性(相対的な関係)が,
図12で示されている。
従来は室内で薬液を混合して,混合後に固化するまでの時間(ゲルタイム)を測定し,そのデータに基づいて,施工を行っている。
【0003】
しかし,薬液注入工法の施工現場で薬液(二液)を所定の温度(例えば20℃)に維持するのは困難である。特に,薬液注入工法においては,大量の薬液(ボーリングマシン1台あたり1日に4000~5000リットル)を使用することが多く,その様に大量の薬液の温度調整を行うことは困難であった。
そのため,従来技術では,薬液注入工法の実施に際して,薬液の温度特性については何等考慮されていない。
【0004】
その他の従来技術として,高圧パッカーを取り除いた際に薬液が逆流するのを防止する技術が提案されている(特許文献1参照)が,上述した薬液の温度特性については何等考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり,薬液の温度特性を考慮した薬液注入システム及び薬液注入工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬液注入システム(100)は、混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入システムにおいて、前記2種類の薬液の液温を計測する薬液温度計測装置(1A、1B:温度計)と、前記2種類の薬液の液温を調整する温度調整装置(2A、2B、2-1:冷却装置或いは加熱装置)と、制御装置(10:コントロールユニット)を備えており、当該制御装置(10)は、前記温度計測装置(1A、1B)の計測結果に基づいて温度調整装置(2A、2B)により前記2種類の薬液の液温を調整する機能を有しており、
前記温度調整装置(2-1)は、前記2種類の薬液の少なくとも一方を希釈する水を貯蔵する貯蔵設備(5)に設けられていることを特徴としている。
また、本発明の薬液注入システム(100)は、混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入システムにおいて、前記2種類の薬液の液温を計測する薬液温度計測装置(1A、1B:温度計)と、前記2種類の薬液の液温を調整する温度調整装置(2A、2B、2-1:冷却装置或いは加熱装置)と、制御装置(10:コントロールユニット)を備えており、当該制御装置(10)は、前記温度計測装置(1A、1B)の計測結果に基づいて温度調整装置(2A、2B)により前記2種類の薬液の液温を調整する機能を有しており、
前記薬液温度計測装置(1A、1B)に加えて施工現場の地下水温度を計測する地下水温度計測装置(6)を設けており、前記制御装置(10)は、前記薬液温度計測装置(1A、1B)の計測結果に加えて前記地下水温度計測装置(6)の計測結果に基づいて温度調整装置(2A、2B、2-1)により前記2種類の薬液の液温を調整する機能を有していることを特徴としている。
【0008】
本発明において、前記温度調整装置(2A、2B)は、前記2種類の薬液を地中に供給する供給系統(3、4)の各々に介装されているのが好ましい。
【0009】
また、前記薬液温度計測装置(1A、1B)は、前記2種類の薬液を地中に供給する供給系統(3、4)の各々に介装されているのが好ましい。
【0010】
本発明の薬液注入工法は、混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入工法において、
薬液温度計測装置(1A、1B:温度計)により前記2種類の薬液の液温を計測する工程と、
前記温度計測装置(1A、1B)の計測結果に基づいて温度調整装置(2A、2B、2-1)により前記2種類の薬液の液温を調整する(冷却する或いは加熱する)工程を有しており、
前記温度調整装置(2-1)は前記2種類の薬液の少なくとも一方を希釈する水を貯蔵する貯蔵設備(5)に設けられており、
前記液温を調整する工程では貯蔵設備(5)に貯えられている水の温度を調整することを特徴としている。
また、本発明の薬液注入工法は、混合すると固結する2種類の薬液を地中に供給し且つ混合する薬液注入工法において、
薬液温度計測装置(1A、1B:温度計)により前記2種類の薬液の液温を計測する工程と、
前記温度計測装置(1A、1B)の計測結果に基づいて温度調整装置(2A、2B、2-1)により前記2種類の薬液の液温を調整する(冷却する或いは加熱する)工程を有しており、
地下水温度計測装置(6)により施工現場の地下水温度を計測する工程を有し、
前記液温を調整する工程では、前記薬液温度計測装置(1A、1B)の計測結果に加えて、前記地下水温度計測装置(6)の計測結果にも基づいて、温度調整装置(2A、2B、2-1)により前記2種類の薬液の液温を調整することを特徴としている。
【0011】
本発明において,前記温度調整装置(2A,2B)は前記2種類の薬液の各々を地中に供給する供給系統(3,4)に介装されており,
前記液温を調整する工程では前記2種類の薬液の温度を調整するのが好ましい。
或いは,前記温度調整装置(2-1)は前記2種類の薬液の少なくとも一方を希釈する水を貯蔵する貯蔵設備(5)に設けられており,
前記液温を調整する工程では貯蔵設備(5)に貯えられている水の温度を調整するのが好ましい。
さらに本発明において,前記薬液温度計測装置(1A,1B)は,前記2種類の薬液を地中に供給する供給系統の各々に介装されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば,混合すると固結する2種類の薬液の液温を計測し,当該計測結果に基づいて前記2種類の薬液の液温を調整する(冷却する或いは加熱する)ので,施工現場の性状,仕様に対して最適な固化時間(ゲルタイム)を実現することが出来る。
それと共に,本発明において,施工現場の地下水温度を計測して前記2種類の薬液の液温を調整すれば,瞬結タイプの薬液や中結タイプの薬液(場合によっては緩結タイプの薬液を含む)が地中で混合された際の液温を,地下水温度の影響をも考慮して,施工箇所における最適な固結時間となる様に薬液の液温を調整することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第3実施形態を示すブロック図である。
【
図6】第3実施形態の制御であって,
図5とは異なる制御を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第4実施形態を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第5実施形態を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第6実施形態を示すブロック図である。
【
図11】第6実施形態の制御フローチャートである。
【
図12】注入薬液の固化が液温(水温)に依存することを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,添付図面を参照して,本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態において,同一の部材には同一の符号を付して,重複説明を省略する。
最初に
図1,
図2を参照して,本発明の第1実施形態を説明する。
図1において,第1実施形態に係る薬液注入システムは全体を符号100で示されている。薬液注入システム100は,混合すると固結する2種類の薬液(2液混合タイプの薬液)を地中に供給するシステムであって,第1の薬液供給系統3(第1の薬液ライン),第2の薬液供給系統4(第2の薬液ライン)を有している。
ここで,二液混合タイプの注入薬液は,混合後に「秒」単位で固結する瞬結タイプ,混合後に「分」単位で固結する中結タイプ,混合後に「時間(h)」単位で固結する緩結タイプが存在する。そして,瞬結タイプと中結タイプは,二液を混合する以前の段階で,二液の各々を温度調整(加熱或いは冷却)する。一方,緩結タイプは,二液を混合した後に温度調整(加熱或いは冷却)すること場合があるが,瞬結タイプ及び中結タイプと同様に,混合前に加熱或いは冷却することも出来る。
【0016】
図示の実施形態において,2種類の薬液(第1の薬液,第2の薬液)は地中に注入され,地中注入後に混合される。
図1,
図3,
図4,
図7,
図9,
図10において,地中における混合領域は,符号Mで示されている。そして図示の実施形態では,2種類の薬液(第1の薬液,第2の薬液)は,混合する以前に(地中に注入される前の段階で),第1及び第2の薬液ラインにおいて,各々適正な温度(例えば20℃)に温度調整される。
図1において,第1の薬液ライン3及び第2の薬液ライン4は,薬液注入現場において,それぞれ第1の薬液注入ポンプミキサ7,第2の薬液注入ポンプミキサ8から,地中掘削用に配置されたボーリングマシン9を介して,地中側に連通している。第1の薬液ライン3及び第2の薬液ライン4は,例えば並行して配置されている。
第1の薬液注入ポンプミキサ7,第2の薬液注入ポンプミキサ8は,それぞれ第1の薬液の供給源11,第2の薬液の供給源12と配管により接続されると共に,水供給配管15,16により水を貯蔵する水槽5(貯蔵設備)と接続されている。図示はされていないが,水槽5を,2種類の薬液の少なくとも一方を希釈する様に,配管で接続することが出来る。
【0017】
第1の薬液ライン3,第2の薬液ライン4には,それぞれの薬液の液温を計測する上流側の薬液温度計測装置1A(上流側温度計1A1,1A2)と,下流側の薬液温度計測装置1B(下流側温度計1B1,1B2)が介装されている。
上流側及び下流側の温度計1A,1Bの間には,それぞれの薬液の液温を調整する温度調整装置2A,2B(加熱装置或いは冷却装置)が介装されている。なお,上流側温度計1A1,1A2と第1の薬液注入ポンプミキサ7及び第2の薬液注入ポンプミキサ8の間には,薬液の流量を計測し,調整する流量計13,14がそれぞれ配置されている。
図1において,薬液注入システム100は,制御装置10(コントロールユニット)を有しており,コントロールユニット10は,信号ラインSL1,SL2により,上流側温度計1A1,1A2で計測された第1及び第2の薬液の温度計測結果を受信する。そして,信号ラインSL3,SL4により,下流側温度計1B1,1B2で計測された第1及び第2の薬液の温度計測結果を受信し,信号ラインSL5Aを介して温度調整装置2Aに制御信号を送信し,信号ラインSL5Bを介して温度調整装置2Bに制御信号を送信する。
【0018】
図1において,第1の薬液注入ポンプミキサ7,第2の薬液注入ポンプミキサ8は,それぞれ第1の薬液の供給源11,第2の薬液の供給源12から供給される第1及び第2の薬液と,水槽5から供給される水とを混合して,第1の薬液ライン3,第2の薬液ライン4に対して吐出する。
図1では示されていないが,水槽5から供給される水は,第1の薬液ライン3,第2の薬液ライン4の何れか一方のみに供給される場合も存在する。
第1及び第2の薬液ライン3,4を流れる第1及び第2の薬液の液温は,上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2により計測される。温度調整装置2A,2Bは,上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の液温に基づいて,それぞれ適正温度(例えば20℃)になる様に,コントロールユニット10からの制御信号に従って加熱或いは冷却する。
図1では,温度調整装置2A,2Bはそれぞれ,温度調整装置2A,2Bの上流の温度計1A1,1A2と,下流の下流側温度計1B1,1B2の計測結果に基づいて,第1及び第2の薬液の液温を正確且つ効率的に適正温度に調整する。
【0019】
ここで,薬液ライン3,4を流れる薬液の温度は供給源11,12の薬液温度,水槽5の水温に依存する。
そして,施工環境,季節(夏の高温時,冬の低温時)等の施工条件や,その他の条件に従って,温度調整装置2A,2Bを加熱装置とするのか或いは冷却装置とするのかが変更される。例えば,施工条件のため,薬液ライン3,4を流れる第1及び第2の薬液の温度が調整されるべき適正温度(例えば20℃)よりも低い場合,温度調整装置2A,2Bとして加熱装置を使用する。一方,薬液ライン3,4に吐出される薬液の温度が,調整されるべき適正温度(例えば20℃)よりも高い場合,温度調整装置2A,2Bとしては冷却装置が使用される。
また,温度調整装置2A,2Bを加熱装置として使用する場合,例えば20℃より低温の水と混合した第1及び第2の薬液を20℃よりも低温にした後,第1及び第2の薬液をそれぞれ温度調整装置2A,2Bで加熱して,20℃程度に調整することが出来る。
さらに,温度調整装置2A,2Bを冷却装置として使用する場合,例えば20℃より高温の水と混合した第1及び第2の薬液を20℃よりも高温にした後,第1及び第2の薬液をそれぞれ温度調整装置2A,2Bで冷却して,20℃程度に調整することが出来る。
【0020】
温度調整装置2A,2Bとしての加熱装置は,既存の技術も利用できる。
例えば,インラインヒーターを用いた場合には,加熱部分における耐食性を考慮する必要がある。
一方,誘導加熱により第1及び第2の薬液を加熱する手法であれば,インラインヒーターとは異なり,第1及び第2の薬液が流過している配管自体を加熱することが出来る。
また,温度調整装置2A,2Bとしての冷却装置も,冷却水循環式の装置等,既存の技術が利用できる。
図示の実施形態では,第1の薬液ライン3,第2の薬液ライン4に温度調整装置2A,2Bがそれぞれ介装されているが,単一の温度調整装置(図示せず)が第1の薬液ライン3及び第2の薬液ライン4に介装される様に構成することも可能である。
【0021】
図1においては,温度調整装置2A,2Bの上流側及び下流側に,それぞれ上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B21Aを配置している。それに対して,図示はしないが,上流側温度計1A1,1A2或いは下流側温度計1B1,1B2の何れかのみを配置することも可能である。上流側温度計1A1,1A2或いは下流側温度計1B1,1B2の何れかのみを配置する場合,上流側温度計1A1,1A2のみで第1及び第2の薬液の温度を計測して,その計測結果に基づいて,温度調整装置2A,2Bにより,温度調整しても良い。或いは,下流側温度計1B1,1B2のみで第1及び第2の薬液それぞれの温度を計測して,その計測結果に基づいて,温度調整装置2により,温度調整しても良い。
第1及び第2の薬液ライン3,4を流れ,適正温度(例えば20℃)に調整された第1及び第2の薬液は,ボーリングマシン9を介して地中に注入され,地中の領域Mにおいて混合される。
第1の薬液ライン3において,下流側温度計1B1の下流側(ボーリングマシン9側)には開閉弁VBが介装され,第2の薬液ライン4において,下流側温度計1B2の下流側(ボーリングマシン9側)には開閉弁VAが介装されている。開閉弁VA,VBは,それぞれ信号ラインSLVA,SLVBを介してコントロールユニット10からの制御信号を受信し,第1及び第2の薬液の温度が適正な場合には開閉弁VA,VBは開放し,第1及び第2の薬液の温度が適正ではない場合には開閉弁VA,VBは閉鎖する制御を行う様に構成されている。
【0022】
第1実施形態の制御について,主として
図2を参照して説明する。
図2において,ステップS1では,薬液注入を実施するか(薬液注入工法を施工するか)否かを判断する。
ステップS1において,薬液注入を実施する場合(ステップS1が「Yes」)はステップS2に進み,薬液注入を実施しない場合(ステップS1が「No」)はステップS1に戻る。
ステップS2では,薬液注入ライン3,4に配置した上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2により第1及び第2の薬液の温度計測を行う。
【0023】
ステップS3では,上流側温度計1A1,1A2により計測された薬液温度(温度調整装置2A,2Bにより温度調整される前の薬液温度)と,下流側温度計1B1,1B2により計測された薬液温度(温度調整装置2A,2Bにより温度調整された後の薬液温度)が,適正な温度か否かを判断する。上述した様に,適正な薬液温度は地中への注入時に例えば20℃であり,上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2で計測された第1及び第2の薬液の温度が約20℃(所定の誤差範囲を含む)であれば,適正温度であると判断する。ここで,下流側温度計1B1,1B2の計測結果は,上流側温度計1A1,1A2の計測結果に比較して,適正温度に近い数値であることを考慮している。
ステップS3の判断の結果,上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2で計測された第1及び第2の薬液の温度が適正温度でなければ(ステップS3が「No」)ステップS4に進み,適正温度であれば(ステップS3が「Yes」)ステップS5に進む。
【0024】
ステップS4(適正温度ではない場合)では,温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を調整する。温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を調整する際には,コントロールユニット10が,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2からの計測結果に基づき,温度調整装置2A,2Bを制御して,第1及び第2の薬液の温度を適正温度に近づける。それと共に,ステップS4では(適正温度ではない場合),開閉弁VA,VBを閉鎖する。そしてステップS3に戻る。
ステップS5(第1及び第2の薬液の温度が適正温度の場合)では,開閉弁VA,VBを開放して,第1及び第2の薬液を地中に注入する。そしてステップS6に進み,薬液注入を終了するか否かを判断する。
ステップS6において,薬液注入を終了しない場合(ステップS6が「No」)はステップS2に戻る。薬液注入を終了する場合(ステップS6が「Yes」)は制御を終了する。
なお,
図2で示す制御はコントロールユニット10による自動制御であるが,作業員による制御とすることも可能である。
【0025】
図1,
図2の第1実施形態によれば,混合すると固結する2種類の薬液(第1の薬液,第2の薬液)の液温を上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2で計測し,当該計測結果に基づいて温度調整装置2A,2Bにより第1の薬液,第2の薬液の液温を地中注入に適した温度(例えば20℃)に調整する(冷却する或いは加熱する)ので,施工現場の性状,仕様に対して最適な固化時間(ゲルタイム)を実現することが出来る。
また,温度調整装置2A,2Bの上流の上流側温度計1A1,1A2と,温度調整装置2A,2Bの下流の下流側温度計1B1,1B2の計測結果に基づいて温度調整をすることで,第1及び第2の薬液を注入に適した温度に正確且つ効率的に調整することが出来る。
【0026】
次に
図3を参照して,本発明の第2実施形態について説明する。
図3において,全体を符号100-1で示す第2実施形態の薬液注入システムは,
図1,
図2の薬液注入システム100と異なり,温度調整装置2-1(加熱装置或いは冷却装置)を,薬液を希釈するための水を貯蔵した水槽5(貯蔵設備:少なくとも一方の薬液を希釈するための水を貯蔵した水槽)に配置している。
また
図3では,上流側温度計1A1,1A2のみを設けており,下流側温度径1B1,1B2は設けていない。
【0027】
図3において第1の薬液の液温は温度計1A1により計測され,第2の薬液の液温は温度計1A2により計測される。
コントロールユニット10は,信号ラインSL1,SL2により温度計1A1,1A2と接続され,水槽5内に配置された水槽内温度調整装置2-1(加熱装置或いは冷却装置)と信号ラインSL6を介して接続されている。
薬液の液温調整の際は,水槽内温度調整装置2-1は,温度計1A1,1A2で計測した第1及び第2の薬液の液温に基づき,コントロールユニット10からの制御信号に従って,第1及び第2の薬液の液温がそれぞれ適正温度(例えば20℃)になる様に,水槽5中の水に対する加熱量或いは冷却量を調整する。
【0028】
図3の第2実施形態における制御は,水槽5に設けられた水槽内温度調整装置2-1により加熱或いは冷却する点を除き,
図2を参照して説明した第1実施形態の制御と概略同様である。
図3の第2実施形態におけるその他の構成,作用効果は,
図1,
図2の第1実施形態と同様である。
【0029】
図4を参照して,第3実施形態を説明する。
第3実施形態に係る薬液注入システムは,
図4において全体を符号100-2で示されている。
第3実施形態に係る薬液注入システム100-2では,温度調整装置2A,2Bを第1及び第2の薬液ライン3,4に介装すると共に,薬液を希釈するための水を貯蔵した水槽5(貯蔵設備)内に温度調整装置2-1を配置している。
【0030】
図4において,コントロールユニット10は水槽5内に配置された水槽内温度調整装置2-1(加熱装置或いは冷却装置)と信号ラインSL6を介して接続されており,コントロールユニット10からの制御信号が水槽内温度調整装置2-1に送信される。それと共にコントロールユニット10からの制御信号は,信号ラインSL5A,SL5Bを介して,第1及び第2の薬液ライン3,4に介装された温度調整装置2A,2Bに送信される。
図4の第3実施形態では,上流側温度計1A1,1A2と下流側温度計1B1,1B2による第1及び第2の薬液の液温測定結果に基づいて,温度調整装置2A,2B,水槽内温度調整装置2-1を制御しているが,制御のついては,以下の3つのパターンに大別される。
第1のパターンでは,上流側温度計1A1,1A2による第1及び第2の薬液の液温測定結果に基づき,水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量を調整し,下流側温度計1B1,1B2による第1及び第2の薬液の液温測定結果に基づき,薬液ラインに介装された温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を調整している。換言すれば,第1のパターンの場合,水槽5内の水温が水槽内温度調整装置2-1により温度調整され,例えば,冬季は高めに水温調整し,夏季は低めに水温調整する。そして,薬液ライン3,4に介装された温度調整装置2A,2Bにより第1及び第2の薬液の液温が,地中注入時に適した温度(例えば20℃)に調整される。
【0031】
第2のパターンでは,上流側温度計1A1,1A2による第1及び第2の薬液の液温測定結果に基づき,薬液ライン3,4に配置された温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量が制御される。一方,下流側温度計1B1,1B2による第1及び第2の薬液の液温測定結果に基づき,水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量が調整される。
第3のパターンでは,上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2による第1及び第2の薬液の液温測定結果に基づき,薬液ライン3,4に介装された温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を調整し,且つ,水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量を調整する。
【0032】
次に,主として
図5を参照して,第1の制御パターンによる制御を説明する。
図5において,ステップS11では,薬液注入を実施するか(薬液注入工法を施工するか)否かを判断する。
ステップS11において薬液注入を実施する場合(ステップS11が「Yes」)はステップS12に進み,薬液注入を実施しない場合(ステップS11が「No」)はステップS11に戻る。
ステップS12では,薬液注入ライン3,4に配置した上流側温度計1A1,1A2により第1及び第2の薬液の温度計測を行う。そしてステップS13に進む。
【0033】
ステップS13では,上流側温度計1A1,1A2により計測された第1及び第2の薬液の薬液温度が,適正な温度か否かを判断する。適正な薬液温度は,例えば,地中注入時に20℃である。従って,上流側温度計1A1,1A2から地中に注入されるまでの薬液の温度変化を考慮して,上流側温度計1A1,1A2で計測された温度が適正か否かを判断する。
ステップS13の判断の結果,上流側温度計1Aで計測された第1及び第2の薬液の温度が適正温度の場合(ステップS13が「Yes」)はステップS15に進み,適正温度でない場合(ステップS13が「No」),ステップS14に進む。
【0034】
ステップS14では(上流側温度計1A1,1A2の計測結果が適正温度ではない場合),水槽5において水槽内温度調整装置2-1(加熱装置或いは冷却装置)の加熱量或いは冷却量を調整する。水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量の調整は,コントロールユニット10から発信される水槽内温度調整装置2-1の制御信号に基いて実行され,水槽中5中の水の温度を適正な温度に調整する。
【0035】
ステップS15では(上流側温度計1A1,1A2の計測結果が適正温度の場合),薬液注入ライン3,4に配置した下流側温度計1B(1B1,1B2)により第1及び第2の薬液の温度計測を行い,ステップS16に進む。
ステップS16では,下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の薬液温度が,適正な温度であるか否かを判断する。
ステップS16において,下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の薬液温度が適正温度ではない場合(ステップS16が「No」)にはステップS17に進み,適正温度であれば(ステップS16が「Yes」)にはステップS18に進む。
【0036】
ステップS17では(下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の薬液温度が適正温度ではない場合),薬液ラインに配置された温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を,コントロールユニット10からの制御信号に基づいて制御して,薬液ライン中の第1及び第2の薬液の温度を適正温度に近づける。それと共に,開閉弁VA,VBを閉鎖する。そしてステップS16に戻る。
ステップS18では(下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の薬液温度が適正の場合),開閉弁VA,VBを開放して,第1及び第2の薬液を地中に供給する。そしてステップS19に進む。
ステップS19では制御を終了するか否かを判断する。
ステップS19の判断の結果,薬液注入における制御を終了しない場合(ステップS19が「No」)はステップS12に戻る。薬液注入を終了する場合(ステップS19が「Yes」)は制御を終了する。
ここで,
図5で示す制御は自動制御で行われるが,作業員により実行することも可能である。
なお,上述の第2の制御パターンによる制御では,上流側温度計1A1,1A2の測定結果に基づき薬液ライン3,4に配置された温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を制御し,下流側温度計1B1,1B2の測定結果に基づき水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量が制御される点以外は,
図5を参照して上述したのと同様である。
【0037】
次に,主として
図6を参照して,上述した第3の制御パターンによる制御を説明する。
図6において,ステップS21では,薬液注入を実施するか(薬液注入工法を施工するか)否かを判断する。
ステップS21において,薬液注入を実施する場合(ステップS21が「Yes」)はステップS22に進み,薬液注入を実施しない場合(ステップS21が「No」)はステップS21に戻る。
ステップS22では,薬液注入ライン3,4に配置した上流側温度計1A1,1A2及び下流側温度計1B1,1B2により,第1及び第2の薬液の温度計測を行う。そしてステップS23に進む。
【0038】
ステップS23では,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の薬液温度が,適正な温度か否か(地中注入時に例えば20℃となる温度か否か)を判断する。
ステップS23の判断の結果,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2で計測された第1及び第2の薬液の温度が適正温度ではない場合(ステップS23が「No」)にはステップS24に進み,適正温度の場合(ステップS23が「Yes」)にはステップS25に進む。
【0039】
ステップS24では(上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2で計測された第1及び第2の薬液の温度が適正温度ではない場合),コントロールユニット10からの制御信号により,温度調整装置2A,2B及び水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量を調整し,薬液ラインの第1及び第2の薬液の温度及び水槽中5中の水の温度を適正な温度に調整する。それと共に,開閉弁VA,VBを閉鎖する。そしてステップS23に戻る。
一方,ステップS25(上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2で計測された第1及び第2の薬液の温度が適正温度の場合)では,開閉弁VA,VBを開放して第1及び第2の薬液を地中に供給する。そしてステップS26に進む。
ステップS26では薬液注入の制御を終了するか否かを判断する。
ステップS26の判断の結果,薬液注入の制御を終了しない場合(ステップS26が「No」),ステップS22に戻る。薬液注入を終了する場合(ステップS26が「Yes」)は制御を終了して,薬液注入も終了する。
図6の制御も自動制御であるが,作業員による制御も可能である。
【0040】
図4~
図6の第3実施形態では,第1及び第2の薬液ライン3,4に配置された上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2の計測結果に基づき,薬液ライン3,4に配置された温度調整装置2A,2B及び水槽5に配置された水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量を調整して,第1及び第2の薬液を地中注入時に適した温度(例えば20℃)に調整している。
図4~
図6の第2実施形態におけるその他の構成,作用効果は,
図1~
図3の第1実施形態,第2実施形態と同様である。
【0041】
次に
図7を参照して,本発明の第4実施形態を説明する。
図7において,第4実施形態に係る薬液注入システムは全体を符号100-3で示されている。以下において,主として
図1の第1実施形態の構成とは相違する構成について説明する。
図7において,薬液注入システム100-3は,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2に加えて,施工現場の地下水温度を計測する地下水温度計6(地下水温度計測装置)を備えている。
【0042】
図7において,コントロールユニット10は地下水温度計6と信号ラインSL7で接続されており,地下水温度計6からの計測信号がコントロールユニット10に送信される。そしてコントロールユニット10は,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2による第1及び第2の薬液温度の計測結果に加えて,地下水温度計6の計測結果に基づいて,温度調整装置2A,2Bの加熱量或いは冷却量を調整して,第1及び第2の薬液の液温を適正温度にしている。
ここで,第1及び第2の薬液は施工現場で地中注入され,混合される際に,同時に地下水とも混合される。地下水温が第1及び第2の薬液の液温と相違していれば,第1及び第2の薬液が地下水と混合されることによる温度変化が生じ,ゲルタイムが設計値と異なる可能性がある。
図7の第4実施形態では,上述した温度調整制御において,地下水温度計6の計測結果を温度調整装置2A,2Bによる加熱或いは冷却に反映させて,第1及び第2の薬液の温度を調整している。例えば,地下水温度計6による計測の結果,地下水温度が低ければ,温度調整装置2A,2Bにより第1及び第2の薬液の温度を高めに調整し,地下水温度が高ければ,第1及び第2の薬液の温度を低めに調整する。
すなわち
図7の第4実施形態では,第1及び第2の薬液を混合し,さらに地下水と混合した時に,混合された薬液の温度が適正温度(例えば20℃)となる様に制御しているのである。
【0043】
主として
図8を参照して,第4実施形態の制御を説明する。
図8のステップS31~ステップS36は,それぞれ,
図2のステップS1~S6に対応している。しかし上述した様に,第4実施形態では地下水温度も制御パラメータに含んでいるため,制御も第1実施形態とは異なる点を有している。
すなわち,
図8のステップS32では,薬液注入ライン3,4に配置した上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2により第1及び第2の薬液の温度計測を行うと共に,地下水温度計6により施工現場の地下水の温度も計測している。
【0044】
そして,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の温度が適正な温度か否かを判断するステップS33において,当該適正な薬液温度は,第1及び第2の薬液の温度が地中に注入された後,地下水と混合した時に,例えば20℃となる様な温度として,設定されている。
さらに,(薬液ラインに配置された)温度調整装置2A,2Bにより第1及び第2の薬液の温度を調整するステップS34では,第1及び第2の薬液の温度が地中に注入された後,地下水と混合した時に適正な温度(例えば20℃)となる様に,加熱量或いは冷却量が制御される。
図8におけるその他の制御については,
図2で説明した制御と同様である。
なお
図8の制御も自動制御であるが,作業員による制御とすることも可能である。
【0045】
第4実施形態によれば,上流側温度計1A,下流側温度計1Bによる第1及び第2の薬液の温度計測結果に加えて,地下水温度計6による施工現場の地下水温度の計測結果に基づき,第1及び第2の薬液の液温を調整する。そのため,第1及び第2の薬液の温度を,薬液が地中で混合された際に地下水と混合することを考慮して設定するので,実際の施工に合致して,適切なゲルタイムを実現することが出来る。
図7,
図8の第4実施形態におけるその他の構成,作用効果は,
図1~
図2の第1実施形態と同様である。
【0046】
次に
図9を参照して,本発明の第5実施形態について説明する。以下において,主として
図3で示す第2実施形態と異なる構成について説明する。
図9において,第5実施形態の薬液注入システム100-4は,
図3に示す第2実施形態の薬液注入システム100-1に対して,地下水温計測装置6を付加した構成となっており,地下水温度を加熱或いは冷却の制御パラメータに含めている。
そして
図9において,コントロールユニット10は地下水温度計6と信号ラインSL7で接続されており,地下水温度計6からの計測信号がコントロールユニット10に送信される。また,コントロールユニット10は,水槽5に配置された水槽内温度調整装置2-1(加熱装置或いは冷却装置)と信号ラインSL6により接続されており,コントロールユニット10の制御信号が水槽内温度調整装置2-1に送信される。
第5実施形態では,第1及び第2の薬液の液温は,
図7,
図8の第4実施形態と同様に,第1及び第2の薬液を混合し,さらに地下水と混合した時の薬液の温度が適正温度(例えば20℃)となる様に調整される。その様な液温となる様に,水槽内温度調整装置2-1により加熱量或いは冷却量が制御される。
【0047】
第5実施形態では,上流側温度計1A,下流側温度計1Bによる第1及び第2の薬液の温度計測結果に加えて,地下水温度計6による施工現場の地下水温度の計測結果に基づき,水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量を調整する。そのため,第1及び第2の薬液の温度が,薬液が地中で混合された際に地下水と混合する際に適温となる様に調節され,実際の施工に合致して,適切なゲルタイムを実現することが出来る。
図9の第5実施形態におけるその他の構成,作用効果は,
図3の第2実施形態と同様である。
【0048】
図10,
図11を参照して,本発明の第6実施形態を説明する。
図10において,第6実施形態に係る薬液注入システムは全体が符号100-5で示されている。薬液注入システム100-5は,
図4の薬液注入システム100-2に地下水温計測装置6を付加した構成を具備しており,地下水温度を加熱或いは冷却の判断パラメータに含めている。
図10の第6実施形態では,コントロールユニット10は地下水温度計6と信号ラインSL7で接続されており,地下水温度計6からの計測信号がコントロールユニット10に送信される。
【0049】
第6実施形態の温度調整制御も,
図4で示す第3実施形態と同様に,第1のパターン~第3のパターンが存在する。
ここで,第3実施形態の制御における第1のパターン(
図5)と同様な制御について,
図11を参照して説明する。
図11のステップS41~ステップS49は,それぞれ,
図5のステップS11~S19に対応している。しかし上述した様に,第6実施形態では地下水温度も制御パラメータに含んでいるため,制御も第3実施形態とは異なる点が存在する。
すなわち,
図11のステップS42では,薬液注入ライン3,4に配置した上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2により第1及び第2の薬液の温度計測を行うと共に,地下水温度計6により施工現場の地下水の温度も計測している。
【0050】
そして,上流側温度計1A1,1A2,下流側温度計1B1,1B2により計測された第1及び第2の薬液の温度が適正な温度か否かを判断するステップS43において,当該適正な薬液温度は,第1及び第2の薬液の温度が地中に注入された後,地下水と混合した時に,例えば20℃となる様な温度として設定される。
ステップS45でも,ステップS42と同様に地下水温度計6により施工現場の地下水の温度も計測する。そしてステップS46でも,適正温度としては,第1及び第2の薬液の温度が地中に注入された後,地下水と混合した時に,例えば20℃となる様な温度が設定される。
さらに,ステップS44で水槽内温度調整装置2-1の加熱量或いは冷却量を制御し,薬液ライン3,4に介装された温度調整装置2A,2Bによる加熱量或いは冷却量を制御するに際しても,第1及び第2の薬液の温度が地中に注入された後,地下水と混合した時に適正な温度(例えば20℃)となる様に制御される。
図11におけるその他の制御については,
図5で説明したのと同様である。
なお
図11の制御も自動制御であるが,作業員による制御とすることも可能である。
【0051】
第6実施形態においては,上流側温度計1A,下流側温度計1Bによる第1及び第2の薬液の温度計測結果に加えて,地下水温度計6による施工現場の地下水温度の計測結果に基づき,(薬液ライン3,4に介装された)温度調整装置2A,2B及び水槽内温度調整装置2-1の加熱量及び冷却量を制御する。それにより,第1及び第2の薬液の温度を,薬液が地中で混合された際に地下水と混合することを考慮して設定することが出来,実際の施工に合致して,適切なゲルタイムを実現することが出来る。
図10,
図11の第6実施形態におけるその他の構成,作用効果は,
図1~
図6の実施形態,特に
図4~
図6の第3実施形態と同様である。
【0052】
図示の実施形態はあくまでも例示であり,本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0053】
1A,1B・・・温度計(薬液温度計測装置)
2A,2B,2-1・・・温度調整装置(冷却装置或いは加熱装置)
3,4・・・薬液供給系統
5・・・水槽(貯蔵設備)
6・・・地下水温度計(地下水温度計測装置)
10・・・コントロールユニット(制御装置)
100,100-1,100-2,100-3,100-4,100-5・・・薬液注入システム
VA,VB・・・開閉弁