(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】二層構造の触媒コンバータ
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20230117BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20230117BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
F01N13/08 A
F01N13/14
F01N3/28 301V
(21)【出願番号】P 2019051197
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】久永 徹
(72)【発明者】
【氏名】下野園 均
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 大輔
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智行
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075214(JP,A)
【文献】実開昭55-030955(JP,U)
【文献】特開昭62-063031(JP,A)
【文献】特開2014-196744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ取付用孔がそれぞれ設けられた外筒と内筒
と、フランジを有する二層構造の触媒コンバータであって、
前記センサ取付用孔は、排気ガスの上流側に前記外筒と前記内筒を貫通するように設けられ、
前記外筒のセンサ取付用孔にセンサが保持され、前記内筒のセンサ取付用孔と前記センサとの間には排気ガスが通過可能なクリアランスが形成され、
前記内筒は、シールマットで前記外筒の内面にシールするように固定され、
前記内筒は、前記フランジの排気ガス入口に挿入され、
前記外筒の端部は、前記フランジに固着され、
前記シールマットは、前記センサ取付用孔の位置よりも排気ガスの下流側に配置されると共に、前記内筒に設けられた触媒担体より排気ガスの上流側に配置され
、前記内筒と前記外筒の間は密封されていることを特徴とする二層構造の触媒コンバータ。
【請求項2】
請求項1記載の二層構造の触媒コンバータであって、
前記シールマットは、前記内筒と前記外筒間のディフューザ部に設けられていることを特徴とする二層構造の触媒コンバータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の二層構造の触媒コンバータであって、
前記内筒と前記外筒の少なくとも一方に前記シールマットを係止してその位置を制限する規制部が設けられていることを特徴とする二層構造の触媒コンバータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の二層構造の触媒コンバータであって、
前記内筒の内部に第1の触媒担体と第2の触媒担体がそれぞれ配置され、
前記第1の触媒担体と前記第2の触媒担体の間の前記内筒と前記外筒に第2のセンサ取付用孔がそれぞれ設けられ、
前記内筒と前記外筒の少なくとも一方の前記第2のセンサ取付用孔の下流側に、前記シールマットを係止してその位置を制限する規制部が設けられていることを特徴とする二層構造の触媒コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排気経路に設けられる二層構造の触媒コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の排気浄化装置(触媒コンバータ)として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示されたものは、内筒と、この内筒の外周に設けられる外筒とを備え、一方の端部と他方の端部でそれぞれ内筒と外筒が周状に溶接され、一方の端部と他方の端部との間に内筒の外周面と外筒の内周面とが離間して空隙が形成され、この空隙が空気層を構成する断熱排気流通管であり、また、筒部に排気浄化体(触媒担体)が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の排気浄化装置は、外筒と内筒の二層構造(二重管構造)であるため、外筒と内筒を貫通するセンサ取付用孔を設けた場合、センサ取付用孔部分のガスシール性の確保が難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、外筒と内筒を貫通したセンサ取付用孔部分のガスシール性を簡単に確保することができ、かつ、向上させることができる二層構造の触媒コンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、センサ取付用孔がそれぞれ設けられた外筒と内筒と、フランジを有する二層構造の触媒コンバータであって、前記センサ取付用孔は、排気ガスの上流側に前記外筒と前記内筒を貫通するように設けられ、前記外筒のセンサ取付用孔にセンサが保持され、前記内筒のセンサ取付用孔と前記センサとの間には排気ガスが通過可能なクリアランスが形成され、前記内筒は、シールマットで前記外筒の内面にシールするように固定され、前記内筒は、前記フランジの排気ガス入口に挿入され、前記外筒の端部は、前記フランジに固着され、前記シールマットは、前記センサ取付用孔の位置よりも排気ガスの下流側に配置されると共に、前記内筒に設けられた触媒担体より排気ガスの上流側に配置され、前記内筒と前記外筒の間は密封されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外筒と内筒との間に介在されるシールマットを、外筒と内筒を貫通したセンサ取付用孔の位置よりも排気ガスの下流側に配置すると共に、内筒に設けられた触媒担体より排気ガスの上流側に配置したことで、センサ取付用孔部分のガスシール性を簡単に確保することができ、かつ、向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の二層構造の触媒コンバータを示す部分断面図である。
【
図2】上記触媒コンバータの要部の拡大断面図である。
【
図3】上記触媒コンバータの要部の他の例を示す拡大断面図である。
【
図4】上記触媒コンバータの要部の別の例を示す拡大断面図である。
【
図5】上記触媒コンバータの要部の更に別の例を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の二層構造の触媒コンバータを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態の二層構造の触媒コンバータを示す部分断面図、
図2は同触媒コンバータの要部の拡大断面図である。
【0011】
図1に示すように、二層構造の触媒コンバータ10は、排気ガスGの入口側に位置する金属製の入口側フランジ11と排気ガスGの出口側に位置する図示しない金属製の出口側フランジとの間に金属製の外筒20と金属製の内筒30とを有しており、入口側フランジ11が例えばエンジンの排気マニホールド側の排気通路等に配置されている。
【0012】
図1、
図2に示すように、外筒20は、上流側端部21が入口側フランジ11に溶接Eにより固着されると共に、図示しない下流側端部が図示しない出口側フランジに溶接Eにより固着されている。また、内筒30は、上流側端部31が入口側フランジ11の排気ガス入口11a内に挿入されて摺動自在に取り付けられていると共に、図示しない下流側端部が図示しない出口側フランジの排気ガス出口内に挿入されて摺動自在に取り付けられている。これらにより、外筒20と内筒30との間には空気層(間隙)Sが形成された二重管構造になっている。
【0013】
外筒20の上流側端部21側及び内筒30の上流側端部31側のディフューザ部22,32は、小径の円筒状で側面L次状に形成され、円錐筒状のテーパ部23,33を介して大径円筒状のコンテナ部24,34に連続している。
【0014】
また、外筒20と内筒30のディフューザ部22,32には、排気ガスGの濃度や温度等を検出するセンサ40を取り付けるためのセンサ取付用孔25,35が外筒20と内筒30を貫通するように設けられている。
【0015】
さらに、外筒20と内筒30の各センサ取付用孔25,35とテーパ部23,33との間のディフューザ部22,32には、内筒30の内周面に巻き付けるようにシールマット(断熱部材)41が介在されていて、外筒20と内筒30の各ディフューザ部22,32間から各コンテナ部24,34間側へ排気ガスGが流れないようにシールされている。この断熱部材としてのシールマット41は、内筒30を保持可能な面圧(弾性力)を有し、低熱伝導率のものである。また、シールマット41は、各センサ取付用孔25,35の位置よりも排気ガスGの下流側に配置されると共に、内筒30に設けられた後述する触媒担体38より排気ガスGの上流側に配置されている。これらにより、内筒30は、シールマット41で外筒20の内面にシールするように固定されていて、
図2に示すように、内筒30のセンサ取付用孔35より流入した排気ガスGが外筒20と内筒30の各ディフューザ部22,32間のシールマット41よりも下流側の空気層(間隙)S側に漏れないようになっている。
【0016】
また、
図1、
図2に示すように、外筒20のディフューザ部22のセンサ取付用孔25とテーパ部23との間には、シールマット41を係止してその位置を制限する凹環状の規制部26が外側へ突出するように設けられている。さらに、内筒30のコンテナ部34内には、排気ガスGを浄化する触媒担体38が保持マット(保持部材)39を介して収容されている。
【0017】
尚、外筒20のセンサ取付用孔25は筒状になって、センサ40を保持している。さらに、外筒20及び内筒30の図示しない下流側端部側は、ディフューザ部22,32から図示しない逆円錐筒状のテーパ部を介して小径円筒状に形成されて図示しない出口側フランジに連結されている。また、外筒20と内筒30の各ディフューザ部22,32間のシールマット41より下流側の空気層Sは、外筒20と内筒30の各コンテナ部24,34間まで連通している。
【0018】
以上第1実施形態の二層構造の触媒コンバータ10によれば、外筒20のディフューザ部22と内筒30のディフューザ部32との間に介在されるシールマット41を、外筒20と内筒30の各センサ取付用孔25,35の位置よりも排気ガスGの下流側に配置すると共に、内筒30のコンテナ部34内に設けられた触媒担体38より排気ガスGの上流側に配置したことにより、
図2に示すように、内筒30のセンサ取付用孔35より流入した排気ガスGを外筒20と内筒30の各ディフューザ部22,32間のシールマット41よりも下流側の空気層S側に漏れないようにすることができる。これにより、簡単な構造でガスシール性(未浄化ガス漏洩に対するシール性)を確保することができ、かつ、向上させることができ、また、ガスシール位置を減らすことができ、設計自由度を向上させることができる。さらに、外筒20と内筒30の各センサ取付用孔25,35部分のガスシール性を考慮しなくても良いため、その分、部品点数を少なくするこができる。
【0019】
また、外筒20のディフューザ部22に、シールマット41を係止してその位置を制限する凹環状の規制部26を設けたことで、振動や排圧等によるシールマット41の位置ズレを防止することができる。さらに、規制部26の形状は、シールマット41が嵌り込む凹環状であるため、シールマット41の形状を簡素化することができ、生産時の歩留まりを向上させることができる。
【0020】
尚、前記第1実施形態によれば、
図2に示すように、外筒20のディフューザ部22に、シールマット41を係止してその位置を制限する凹環状の規制部26を外側へ突出するように設けたが、
図3に示すように、外筒20のディフューザ部22に断面L字状の規制部27を外側へ突出するように設けて、シールマット41を係止してその位置を制限しても良く、また、
図4に示すように、内筒30のディフューザ部32に、シールマット41を係止してその位置を制限する凹環状の規制部36を内側へ突出するように設けたり、また、
図5に示すように、内筒30のディフューザ部32に断面L字状の規制部37を内側へ突出するように設けて、シールマット41を係止してその位置を制限しても良い。
【0021】
さらに、前記第1実施形態では、外筒と内筒のいずれか一方にシールマットを係止してその位置を制限する規制部を設けたが、外筒と内筒の双方にシールマットを係止してその位置を制限する規制部をそれぞれ設けても良い。また、凹状やL状の形状は、直角でなくても良く、さらに、外側に限らず、内側に突出するように、或いは内側に限らず、外側に突出するように設けても良い。
【0022】
図6は本発明の第2実施形態の二層構造の触媒コンバータを示す部分断面図である。
【0023】
この第2実施形態の二層構造の触媒コンバータ10′は、第1の触媒担体としてのTWC(三元触媒)38の下流側の内筒30のコンテナ部34内に、第2の触媒担体としてのガソリン・パティキュレート・フィルタ(GPF)、或いは、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPE)48を保持マット(保持部材)49を介して収容してある点が前記第1実施形態と異なる。
【0024】
また、外筒20のコンテナ部24と内筒30のコンテナ部34の第1の触媒担体38と第2の触媒担体48の間には、排気ガスGの圧力や温度等を検出する第2のセンサ42を取り付けるための第2のセンサ取付用孔25′,35′が外筒20と内筒30を貫通するように設けられている。さらに、外筒20のコンテナ部24のセンサ取付用孔25′の下流側には、シールマット43を係止してその位置を制限する凹環状の規制部28が外側へ突出するように設けられている。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
この第2実施形態の二層構造の触媒コンバータ10′では、内筒30の第2のセンサ取付用孔35′より流入した排気ガスGを外筒20と内筒30の各コンテナ部24,34間のシールマット43よりも下流側の空気層S側に漏れないようにすることができる。これにより、簡単な構造でガスシール性(未浄化ガス漏洩に対するシール性)を確保することができ、かつ、向上させることができ、さらに、外筒20と内筒30の各センサ取付用孔25′,35′部分のガスシール性を考慮しなくても良いため、その分、部品点数を少なくするこができる。
【0026】
尚、シールマット43を係止してその位置を制限する凹環状の規制部28の形状は、前記第1実施形態と同様に、外側ではなく、内側へ突出するように設けたり、断面L字状に設けたり、内筒側に設けても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
10,10′ 二層構造の触媒コンバータ
11 入口側フランジ(フランジ)
11a 排気ガス入口
20 外筒
21 上流側端部(端部)
22 ディフューザ部
24 コンテナ部
25 センサ取付用孔
25′ 第2のセンサ取付用孔
26,27,28 規制部
30 内筒
32 ディフューザ部
34 コンテナ部
35 センサ取付用孔
35′ 第2のセンサ取付用孔
36,37 規制部
38 第1の触媒担体(触媒担体)
48 第2の触媒担体
40 センサ
42 第2のセンサ
41,43 シールマット(断熱部材)
G 排気ガス