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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20230117BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20230117BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20230117BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230117BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230117BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
F01N3/28 301P
F01N3/035 A ZAB
F01N3/022 C
F01N3/24 E
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 301E
B01J35/04 301L
B01J23/46 311A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019097705
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020193569
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 幸司
(72)【発明者】
【氏名】西岡 寛真
(72)【発明者】
【氏名】三好 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 あけみ
(72)【発明者】
【氏名】池部 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】中島 諒太
(72)【発明者】
【氏名】野村 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】小里 浩隆
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-154223(JP,A)
【文献】特開2007-130624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
B01D 53/94
B01J 35/04
B01J 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム基材と、流入セル側触媒層と、流出セル側触媒層とを備える排ガス浄化装置であって、
前記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、
前記複数のセルは、前記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、
前記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、
前記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、
前記流入セル側触媒層は、前記隔壁の流入側端から流出側端に近い位置までの流入セル側触媒領域における前記流入セル側の表面に設けられ、
前記流出セル側触媒層は、前記隔壁の前記流入側端に近い位置から前記流出側端までの流出セル側触媒領域における前記流出セル側の表面又は前記流出セル側の内部領域に設けられ、
前記排ガス浄化装置は、前記隔壁の前記流出側端に近い位置から前記流出側端までの流出側領域における前記流入セル側の表面又は前記流入セル側の内部領域に設けられている流出側触媒層をさらに備え、
前記隔壁の前記流出側領域及び前記流出側領域に配置された前記流出セル側触媒層に加えて前記流出側触媒層さらに含む流出側隔壁部のガス透過性が、前記隔壁の前記流入セル側触媒領域及び前記流出セル側触媒領域の重複部分並びに該重複部分に配置された前記流入セル側触媒層及び前記流出セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高いことを特徴とする排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等における内燃機関から排出される排ガスには、大気汚染の原因となる炭素を主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter、以下では「PM」と略すことがある。)や不燃成分であるアッシュ等が含まれている。PMを排ガスから捕集して除去するためのフィルタとして、ウォールフロー構造のフィルタが広く用いられている。
【0003】
ウォールフロー構造のフィルタは、通常、ハニカム基材を備え、ハニカム基材が流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、複数のセルが隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含んでいる。そして、流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口している。このため、流入セルに流入側端から流入した排ガスは隔壁を透過することで流出セルに流入し、流出セルの流出側端から排出される。そして、排ガスが隔壁を透過する時に、PMが隔壁の気孔内に捕集される。ウォールフロー構造のフィルタとしては、例えば、ディーゼルエンジン用のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)やガソリンエンジン用のガソリンパティキュレートフィルタ(GPF、以下では「GPF」と略すことがある。)等が知られている。
【0004】
一方、排ガスには、PMの他に、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。有害成分は、貴金属触媒等の触媒を塗布したフィルタによって排ガスから除去できる。
【0005】
近年、PM及び有害成分の両方を排ガスから除去するために、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置が用いられている。例えば、特許文献1には、フィルタが備えるハニカム基材における多孔質の隔壁の表面にNOx還元触媒層を設け、NOx還元触媒層の表面にさらに酸化触媒層を設けた排ガス浄化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-282852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置では、フィルタが備えるハニカム基材における多孔質の隔壁に触媒が設けられることで、隔壁のガス透過性が低下することにより、圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧力損失が大きくなるのを抑制できる排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の排ガス浄化装置は、ハニカム基材と流入セル側触媒層とを備える排ガス浄化装置であって、前記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、前記複数のセルは、前記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、前記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、前記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、前記流入セル側触媒層は、前記隔壁の流入側端から流出側端に近い位置までの流入セル側触媒領域における前記流入セル側の表面に設けられ、前記隔壁の前記流出側端に近い位置から前記流出側端までの流出側領域を含む流出側隔壁部のガス透過性が、前記隔壁の前記流入セル側触媒領域及び前記流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力損失が大きくなるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の排ガス浄化装置の実施形態に係る各例の排ガス浄化装置を概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る第1例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る第2例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る第3例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る第4例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図6】実施例の計算モデルにおけるFrコートの長さに対する圧力損失を示すグラフである。
図7】(a)は、参考例1-1で作製した排ガス浄化装置の試験体を模式的に示す断面図である。(b)は、参考例2-1で作製した排ガス浄化装置の試験体を模式的に示す断面図である。
図8】(a)は、参考例1-1~1-3の排ガス浄化装置における各入りガス温度でのNOx浄化率を示すグラフである。(b)は、参考例2-1~2-3の排ガス浄化装置における各入りガス温度でのNOx浄化率を示すグラフである。
図9】排ガス浄化装置における排ガスの隔壁の表面及び内部における反応時間を調査する試験装置を模式的に示す図である。
図10図9に示される試験装置における流入セル及び流出セルに設置した各触媒付き熱電対の発熱開始時間を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の排ガス浄化装置の実施形態は、ハニカム基材と流入セル側触媒層とを備える排ガス浄化装置であって、前記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、前記複数のセルは、前記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、前記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、前記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、前記流入セル側触媒層は、前記隔壁の流入側端から流出側端に近い位置までの流入セル側触媒領域における前記流入セル側の表面に設けられ、前記隔壁の前記流出側端に近い位置から前記流出側端までの流出側領域を含む流出側隔壁部のガス透過性が、前記隔壁の前記流入セル側触媒領域及び前記流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高いことを特徴とする。
ここで、「流入側」とは、排ガス浄化装置において排ガスが流入する側を指し、「流出側」とは、排ガス浄化装置において排ガスが流出する側を指す。
【0013】
本実施形態において、隔壁の延伸方向は、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向と略同一であり、セルの延伸方向は、特に限定されないが、通常、隔壁の延伸方向と略同一である。本実施形態の説明において、「延伸方向」とは、隔壁の延伸方向及びセルの延伸方向であって、ハニカム基材の軸方向と略同一の方向を指す。以下、本実施形態として、第1実施形態及び第2実施形態を説明する。
【0014】
I.第1実施形態
第1実施形態に係る排ガス浄化装置は、前記隔壁の前記流出側領域における前記流入セル側の表面又は前記流入セル側の内部領域に触媒層が設けられていないことを特徴とする。
【0015】
まず、第1実施形態に係る排ガス浄化装置の概略について、例示して説明する。
ここで、図1は、本発明の排ガス浄化装置の実施形態に係る各例の排ガス浄化装置を概略的に示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る第1例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0016】
図1及び図2に示されるように、第1例の排ガス浄化装置1は、ハニカム基材10と封止部16と流入セル側触媒層20とを備えている。ハニカム基材10は、円筒状の枠部11と枠部11の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁14とが一体形成された基材である。隔壁14は、流入側端面10Saから流出側端面10Sbまで延びる複数のセル12を画成する多孔質のものである。隔壁14の形状は、複数のセル12の延伸方向に垂直な断面が正方形になるように、互いに離間して平行に配置される複数の壁部14Lと、これらの複数の壁部14Lと直行しかつ互いに離間して平行に配置される複数の壁部14Sとを含み、延伸方向に垂直な断面が格子状となっている。
【0017】
複数のセル12は、隔壁14を挟んで隣接する流入セル12A及び流出セル12Bを含んでいる。流入セル12Aは、延伸方向の流入側端12Aaが開口し、延伸方向の流出側端12Abが封止部16により封止されており、流出セル12Bは、延伸方向の流入側端12Baが封止部16により封止され、延伸方向の流出側端12Bbが開口している。
【0018】
流入セル側触媒層20は、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)の少なくとも1種(図示せず)を含有する触媒金属粒子と、それらを担持する担体(図示せず)とを含む。流入セル側触媒層20は、隔壁14の延伸方向の流入側端14aから流出側端に近い位置14xまでの流入セル側触媒領域14Xaにおける流入セル側の表面14SAに設けられている。また、隔壁14の延伸方向の流出側端に近い位置14xから流出側端14bまでの流出側領域14Xbにおける流入セル側の表面14SA及び流入セル側の内部領域14NAに触媒層は設けられていない。よって、第1例の排ガス浄化装置1では、隔壁14の流出側領域14Xbを含む流出側隔壁部のガス透過性が、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xa及び流入セル側触媒層20を含む触媒配置隔壁部より高くなっている。
【0019】
従って、図1に示されるように、排ガスが流入側端面10Saから流入し、流出側端面10Sbから外部に流出するように第1例の排ガス浄化装置1を通過する場合には、図2に示されるように、まず、排ガスは流入セル12Aに流入側端12Aaから流入する。上記のように流出側隔壁部のガス透過性が触媒配置隔壁部より高くなっている。さらに、高負荷の運転条件で排ガスの流速が高い状況やPMが堆積した状況を含む各種の状況で、流入セル12A内の排ガスの圧力は流出側隔壁部側が触媒配置隔壁部側より高くなる。このため、各種の状況で、流入セル12Aに流入した排ガスは、その大半が流出側隔壁部まで流入セル側触媒層20に接触しながら流れた後に、流出側隔壁部を透過することで流出セル12Bに流入し、流出セル12Bの流出側端12Bbから外部に流出する。なお、流入セル12Aに流入した排ガスの残りは、触媒配置隔壁部を透過することで流出セル12Bに流入した後に、流出セル12Bの流出側端12Bbから外部に流出する。
【0020】
ここで、図3は、第1実施形態に係る第2例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0021】
図3に示されるように、第2例の排ガス浄化装置1は、第1例の排ガス浄化装置と同一のハニカム基材10、封止部16、及び流入セル側触媒層20に加えて、流出セル側触媒層30をさらに備えている。流出セル側触媒層30は、ロジウム(Rh)を含有する触媒金属粒子(図示せず)と、それを担持する担体(図示せず)とを含む。流出セル側触媒層30は、隔壁14の延伸方向の流入側端に近い位置14yから流出側端14bまでの流出セル側触媒領域14Ybにおける流出セル側の表面14SBに設けられている。
【0022】
隔壁14の流入セル側触媒領域14Xa及び流出セル側触媒領域14Ybの重複部分における流入セル側の表面14SA及び流出セル側の表面14SBにそれぞれ流入セル側触媒層20及び流出セル側触媒層30が配置される。一方、隔壁14の流出側端に近い位置14xから流出側端14bまでの流出側領域14Xbにおける流出セル側の表面14SBに流出セル側触媒層30が配置され、隔壁14の流入側端14aから流入側端に近い位置14yまでの流入側領域14Yaにおける流入セル側の表面14SAに流入セル側触媒層20が配置される。
【0023】
よって、第2例の排ガス浄化装置1では、隔壁14の流出側領域14Xb及び流出側領域14Xbに配置された流出セル側触媒層30を含む流出側隔壁部のガス透過性が、隔壁の流入セル側触媒領域14Xa及び流出セル側触媒領域14Ybの重複部分並びに該重複部分に配置された流入セル側触媒層20及び流出セル側触媒層30を含む中央側隔壁部(触媒配置隔壁部)より高くなっている。隔壁14の流入側領域14Ya及び流入側領域14Yaに配置された流入セル側触媒層20を含む流入側隔壁部のガス透過性も、中央側隔壁部より高くなっている。
【0024】
従って、図1に示されるように、排ガスが第2例の排ガス浄化装置1を通過する場合には、図3に示されるように、まず、排ガスは流入セル12Aに流入側端12Aaから流入する。上記のように流出側隔壁部及び流入側隔壁部のガス透過性が中央側隔壁部より高くなっている。さらに、各種の状況で、流入セル12A内の排ガスの圧力は流出側隔壁部側が流入側隔壁部側及び中央側隔壁部側より高くなる。このため、各種の状況で、流入セル12Aに流入した排ガスは、その大半が流出側隔壁部まで流入セル側触媒層20に接触しながら流れた後に、流出側隔壁部を透過することで流出セル12Bに流入し、流出セル12Bの流出側端12Bbから外部に流出する。そして、流入セル12Aに流入した排ガスの残りは、流入側隔壁部を透過することで流出セル12Bに流入した後に、流出セル12Bの流出側端12Bbまで流出セル側触媒層30に接触しながら流れ、流出側端12Bbから外部に流出する。
【0025】
第1実施形態に係る排ガス浄化装置では、第1例及び第2例のように、隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に設けられている流入セル側触媒層を備え、隔壁の流出側領域における流入セル側の表面又は流入セル側の内部領域に触媒層が設けられておらず、隔壁の流出側領域を含む流出側隔壁部のガス透過性が、隔壁の流入セル側触媒領域及び流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高い。このため、各種の状況で、流入セルに流入した排ガスは、その大半が流出側隔壁部まで流入セル側触媒層に接触しながら流れた後に、流出側隔壁部を透過することで流出セルに流入し、流出セルの流出側端から外部に流出する。これにより、圧力損失が大きくなるのを抑制できる。さらに、排ガスの流入セル側触媒層への接触時間を長くすることで浄化性能を向上できる。なお、後述する第2実施形態とは異なり、排ガスは流出側隔壁部を透過する際に流出側触媒層を透過しないので、圧力損失を効果的に抑制できる。
【0026】
また、隔壁の流出側領域における流入セル側に触媒層を設けなくてもよいので触媒の費用を低減できる。さらに、流入セルに流入した排ガスの大半を、触媒層が設けられていない流出側隔壁部を透過させることができるので、排ガス中のPMを容易に隔壁の気孔内に捕集できる。
【0027】
さらに、第1実施形態に係る排ガス浄化装置の中でも、第1例のように、隔壁の流出セル側に触媒層が設けられていない排ガス浄化装置では、流出側隔壁部のガス透過性が大きくなるので、圧力損失を効果的に抑制できる。また、第2例のように、隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側に設けられている流出セル側触媒層をさらに備える排ガス浄化装置では、流入側隔壁部のガス透過性が中央側隔壁部(触媒配置隔壁部)より高い。このため、流入セルに流入した排ガスの一部は、流入側隔壁部を透過することで流出セルに流入した後に、流出セルの流出側端まで流出セル側触媒層に接触しながら流れる。これにより、浄化性能を効果的に向上できる。
【0028】
続いて、第1実施形態に係る排ガス浄化装置の各構成を詳細に説明する。
【0029】
1.ハニカム基材
ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有する。そして、前記複数のセルは、前記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、前記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、前記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口している。ハニカム基材は、いわゆるウォールフロー型のハニカム基材である。
【0030】
ハニカム基材は、枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に区切る隔壁とが一体形成された基材である。
【0031】
ハニカム基材の軸方向の長さは、特に限定されず、一般的な長さを用いることができるが、例えば10mm以上500mm以下の範囲内が好ましく、中でも50mm以上300mm以下の範囲内が好ましい。ハニカム基材の容量、すなわち、セルの総体積は、特に限定されず、一般的な容量を用いることができるが、例えば0.1L以上5L以下の範囲内が好ましい。
【0032】
ハニカム基材の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス等の合金等が挙げられる。
【0033】
枠部の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、例えば、円筒形の他、楕円筒形、多角筒形等の筒形が挙げられる。枠部の他の構成は、特に限定されず、一般的な構成を用いることができる。
【0034】
隔壁の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができる。隔壁の延伸方向の長さは、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向の長さと略同一となる。隔壁の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができるが、例えば50μm以上2000μm以下の範囲内が好ましく、中でも100μm以上1000μm以下の範囲内が好ましい。隔壁の厚さがこれらの範囲内であることにより、基材の強度を確保しつつ、十分なPMの捕集性能を得ることができ、圧力損失を十分に抑制できるからである。
【0035】
隔壁は排ガスが透過可能な多孔質構造を有する。隔壁の気孔率は、特に限定されず、一般的な気孔率を用いることができるが、例えば40%以上70%以下の範囲内が好ましく、中でも50%以上70%以下の範囲内が好ましい。気孔率がこれらの範囲の下限以上であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからであり、気孔率がこれらの範囲の上限以下であることにより、十分な機械的強度を確保できるからである。隔壁の気孔の平均細孔径は、特に限定されず、一般的な平均細孔径を用いることができるが、例えば1μm以上60μm以下の範囲内が好ましく、中でも5μm以上30μm以下の範囲内が好ましい。気孔の平均細孔径がこれらの範囲内であることにより、十分なPMの捕集性能を得ることができ、圧力損失を十分に抑制できるからである。なお、「隔壁の気孔の平均細孔径」は、例えば、パームポロメータを用いたバブルポイント法により測定されたものを指す。
【0036】
流入セル及び流出セルは、枠部の内側の空間を隔壁が区切ることで形成されたものであり、隔壁を挟んで隣接する。流入セル及び流出セルは、通常、延伸方向に垂直な方向が隔壁で囲まれている。
【0037】
流入セルは、通常、流出側端が封止部により封止されている。流出セルは、通常、流入側端が封止部により封止されている。封止部の延伸方向の長さは、特に限定されず、一般的な長さでよいが、例えば2mm以上20mm以下の範囲内が好ましい。封止部の材料は、特に限定されず、一般的な材料でよい。
【0038】
流入セル及び流出セルの延伸方向に垂直な断面形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができ、排ガス浄化装置を透過する排ガスの流量及び成分等を考慮して適宜設定することができる。断面形状としては、例えば、正方形等の矩形、六角形等を含む多角形、円形等が挙げられる。流入セル及び流出セルの延伸方向に垂直な断面積は、特に限定されず、一般的な断面積を用いることができるが、例えば1mm以上7mm以下の範囲内である。流入セル及び流出セルの延伸方向の長さは、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向の長さから封止部の延伸方向の長さを差し引いた長さと略同一となる。流入セル及び流出セルの配置態様は、第1例及び第2例における配置態様のように、流入セル及び流出セルを交互に配置する市松模様のような態様等が挙げられる。
【0039】
2.流入セル側触媒層
流入セル側触媒層は、前記隔壁の流入側端から流出側端に近い位置までの流入セル側触媒領域における前記流入セル側の表面に設けられている。これにより、隔壁の流入セル側触媒領域における気孔が流入セル側触媒層により閉塞され、隔壁の流出側領域を含む流出側隔壁部のガス透過性が隔壁の流入セル側触媒領域及び流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高くなる。
【0040】
ここで、「流出側端に近い位置」とは、隔壁の延伸方向の中央よりも流出側端に近い位置を指す。また、「隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に設けられている」とは、隔壁の外部において、隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に接するように設けられていることを指す。
【0041】
流入セル側触媒層の延伸方向の長さは、隔壁の延伸方向の長さの1/2より長ければ特に限定されないが、隔壁の延伸方向の長さの1/2超4/5以下の範囲内が好ましく、中でも3/5以上4/5以下の範囲内、特に2/3以上4/5以下の範囲内が好ましい。長さがこれらの範囲の下限を超えるかそれ以上であることにより、高負荷の運転条件で排ガスの流速が高い状況でも排ガスの流入セル側触媒層への接触時間を十分に長くすることで浄化性能を向上できるからである。長さがこれらの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できる上に、隔壁における流入セル側触媒層が配置されない領域の延伸方向の長さとして、想定されるアッシュの堆積厚さを超える長さを確保できるからである。
【0042】
流入セル側触媒層の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができるが、例えば、隔壁の厚さの5%以上の範囲が好ましい。厚さがこれらの範囲の下限以上であることにより、隔壁の流入セル側触媒領域及び流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部を排ガスが透過することを効果的に抑制できるからである。なお、流入セル側触媒層の厚さの範囲の上限は、圧力損失等を考慮し適宜設定することができる。
【0043】
流入セル側触媒層は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含む。流入セル側触媒層は、例えば、触媒金属粒子を担持した触媒付担体の多孔質焼結体である。
【0044】
触媒金属粒子の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の貴金属等が挙げられる。触媒金属粒子の材料は、1種の金属又は2種以上の金属でもよいし、2種以上の金属を含有する合金でもよい。触媒金属粒子の材料としては、Pd及びPt等の少なくとも1種が好ましい。
【0045】
触媒金属粒子の平均粒径は、特に限定されず、一般的な平均粒径を用いることができるが、例えば0.1nm以上20nm以下の範囲内が好ましい。平均粒径がこの範囲の上限以下であることにより、排ガスとの接触面積を大きくできるからである。なお、触媒金属粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される粒径から求められる平均値を指す。
【0046】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず、一般的な含有量を用いることができるが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がPd、Pt、又はRhである場合には、ハニカム基材の1L当たり0.05g以上5g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、流入セル側触媒層に含有される触媒金属粒子の質量を、流入セル側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0047】
担体の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、酸化チタン(TiO)等の金属酸化物、又は例えば、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物等のようなこれらの固溶体等が挙げられる。担体の材料としては、これらのうちの1種でも2種以上でもよい。担体の材料としては、アルミナ及びセリア-ジルコニア複合酸化物等の少なくとも1種が好ましい。
【0048】
担体の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、粉末状が好ましい。より大きい比表面積を確保できるからである。粉末状の担体の平均粒径は、特に限定されないが、例えば0.01μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。平均粒径がこの範囲の下限以上であることにより、十分な耐熱特性が得られるからであり、平均粒径がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の分散性を十分に確保することで浄化性能を効果的に向上できるからである。なお、「粉末状の担体の平均粒径」は、例えば、レーザ回折・散乱法により求められる平均粒径を指す。
【0049】
触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、特に限定されず、一般的な質量比を用いることができるが、例えば、0.01質量%以上10質量%以下の範囲内が好ましい。質量比がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、質量比がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。
【0050】
触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、触媒金属塩(例えば、硝酸塩等)又は触媒金属錯体(例えば、テトラアンミン錯体等)を含有する水溶液に担体を含浸させた後、乾燥し、焼成する方法等が挙げられる。
【0051】
流入セル側触媒層は、触媒金属粒子及び担体の他に、触媒金属粒子を担持していない助触媒を含んでもよい。助触媒は、特に限定されず、一般的な助触媒を用いることができるが、例えば、アルミナ、シリカ、セリア-ジルコニア複合酸化物等が挙げられる。助触媒の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、粉末状が好ましい。触媒金属粒子、担体、及び助触媒の合計の質量に対する助触媒の質量比は、特に限定されず、一般的な質量比を用いることができるが、例えば、30質量%以上80質量%以下の範囲内が好ましい。
【0052】
流入セル側触媒層は、単一の触媒層でもよいし、異なる複数の触媒層が積層された部分を含むものでもよい。異なる複数の触媒層が積層された部分を含むものとしては、例えば、異なる触媒金属粒子を含む複数の触媒層が積層されたものや、延伸方向の長さが異なる複数の触媒層が積層されたもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、パラジウム(Pd)が用いられた触媒金属粒子を含む触媒層及びロジウム(Rh)が用いられた触媒金属粒子を含む触媒層が、それらのスラリーを隔壁の表面上に面内方向の別々の長さで順に供給することで積層されたもの等が挙げられる。
【0053】
流入セル側触媒層の密度は、特に限定されないが、例えば、30g/L以上250g/L以下の範囲内が好ましい。密度がこの範囲の下限以上であることにより、浄化性能を効果的に向上できるからである。密度がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからである。なお、「流入セル側触媒層の密度」とは、流入セル側触媒層の合計の質量を、流入セル側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0054】
流入セル側触媒層の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0055】
スラリーは、流入セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子及び担体を含む。スラリーは、触媒金属粒子及び担体に加えて、酸素吸放出材、バインダ、添加剤等の任意の成分を適宜含んでもよい。スラリーに含まれる粉末状の担体の平均粒径等は、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように適宜調整してもよい。
【0056】
スラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に供給する方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流入側端面側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように、流出セルを流出側端側から加圧して流出セル及び流入セルの間に圧力差を生じさせてもよい。また、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状等を適宜調整してもよい。
【0057】
スラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に供給した後に、乾燥し、焼成する方法において、乾燥条件は、特に限定されないが、ハニカム基材又は担体の形状及び寸法により左右されるが、例えば、80℃以上300℃以下の範囲内の温度で1時間以上10時間以下の範囲内の時間乾燥する条件が好ましい。焼成条件は、特に限定されないが、例えば、400℃以上1000℃以下の範囲内の温度で1時間以上4時間以下の範囲内の時間焼成する条件が好ましい。
【0058】
なお、流入セル側触媒層の厚さ、気孔率等の性状は、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等により調整できる。
【0059】
3.排ガス浄化装置
排ガス浄化装置は、ハニカム基材と流入セル側触媒層とを備える。前記隔壁の前記流出側端に近い位置から前記流出側端までの流出側領域を含む流出側隔壁部のガス透過性が、前記隔壁の前記流入セル側触媒領域及び前記流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高い。
【0060】
ここで、「流出側隔壁部」とは、具体的には、少なくとも隔壁の流出側領域を含む隔壁部を指す。このため、流出側隔壁部は、第1例における流出側隔壁部のように隔壁の流出側領域のみを含むものでもよいし、第2例における流出側隔壁部のように隔壁の流出側領域及び流出側領域に配置された流出セル側触媒層を含むものでもよい。また、「触媒配置隔壁部」とは、具体的には、少なくとも隔壁の流入セル側触媒領域の流出側の一部及び該一部に配置された流入セル側触媒層を含む隔壁部を指す。このため、触媒配置隔壁部は、第1例における触媒配置隔壁部のように隔壁の流入セル側触媒領域及び流入セル側触媒層を含むものでもよいし、第2例における中央側隔壁部のように隔壁の流入セル側触媒領域及び流出セル側触媒領域の重複部分並びに該重複部分に配置された流入セル側触媒層及び流出セル側触媒層を含むものでもよい。
【0061】
(1)流出セル側触媒層
排ガス浄化装置は、特に限定されないが、第2例のように隔壁の流入側端に近い位置から流出側端までの流出セル側触媒領域における流出セル側の表面又は流出セル側の内部領域に設けられている流出セル側触媒層をさらに備えるものでもよい。
【0062】
ここで、「流入側端に近い位置」とは、隔壁の延伸方向の中央よりも流入側端に近い位置を指す。「隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面に設けられている」とは、隔壁の外部において、隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面に接するように設けられていることを指す。「隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の内部領域に設けられている」とは、隔壁の流出側領域の内部において、流出セルに面する領域に設けられていることを指す。
【0063】
流出セル側触媒層の中でも、隔壁の流出セル側の表面に設けられている流出セル側触媒層では、流出セルに流入した排ガスが接触する面積が大きくなり、浄化性能を効果的に向上できる。一方、隔壁の流出セル側の内部領域に設けられている流出セル側触媒層では、隔壁の流出側領域及び流出側領域に配置された流出セル側触媒層を含む流出側隔壁部のガスの透過性が高くなる。以下、流出セル側触媒層について、隔壁の流出セル側の表面に設けられている流出セル側触媒層と、隔壁の流出セル側の内部領域に設けられている流出セル側触媒層とに分けて説明する。
【0064】
a.隔壁の流出セル側の表面に設けられている流出セル側触媒層
流出セル側触媒層の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができるが、例えば、隔壁の厚さの5%以上の範囲が好ましい。厚さがこれらの範囲の下限以上であることにより、隔壁の流入セル側触媒領域及び流出セル側触媒領域の重複部分並びに該重複部分に配置された流入セル側触媒層及び流出セル側触媒層を含む中央側隔壁部を排ガスが透過することを効果的に抑制できるからである。なお、流出セル側触媒層の厚さの範囲の上限は、圧力損失等を考慮し適宜設定することができる。
【0065】
流出セル側触媒層は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含む。流出セル側触媒層は、例えば、触媒金属粒子を担持した触媒付担体の多孔質焼結体である。
【0066】
触媒金属粒子の材料は、ロジウム(Rh)等が好ましい点を除いて、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子の平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0067】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず、一般的な含有量を用いることができるが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がRh、Pd、又はPtである場合には、ハニカム基材の1L当たり0.01g以上2g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、流出セル側触媒層に含有される触媒金属粒子の質量を、流出セル側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0068】
担体の材料及び形状並びに粉末状の担体の平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。流出セル側触媒層は、流入セル側触媒層と同様に助触媒を含んでもよい。
【0069】
流出セル側触媒層の密度は、特に限定されないが、30g/L以上250g/L以下の範囲内が好ましい。密度がこの範囲の下限以上であることにより、浄化性能を効果的に向上できるからである。密度がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからである。なお、「流出セル側触媒層の密度」とは、流出セル側触媒層の合計の質量を、流出セル側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0070】
流出セル側触媒層の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0071】
スラリーは、流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子及び担体を含む点を除いて、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0072】
スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面に供給する方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流出側端面側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように、流入セルを流入側から加圧して流入セル及び流出セルの間に圧力差を生じさせてもよい。また、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状を適宜調整してもよい。乾燥条件及び焼成条件は、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、流出セル側触媒層の厚さ、気孔率等の性状は、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等により調整できる。
【0073】
b.隔壁の流出セル側の内部領域に設けられている流出セル側触媒層
流出セル側触媒層の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができるが、例えば、隔壁の厚さの50%以上100%以下の範囲内が好ましい。厚さがこれらの範囲の下限以上であることにより、排ガスが隔壁を通過する際に触媒層と排ガスの接触頻度を確保できるからである。
【0074】
流出セル側触媒層は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含む。流出セル側触媒層は、例えば、触媒金属粒子を担持した触媒付担体が隔壁内部の気孔内に配置されることで構成されたものである。
【0075】
触媒金属粒子の材料は、ロジウム(Rh)等が好ましい点を除いて、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子の平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず、一般的な含有量を用いることができるが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がRh、Pd、又はPtである場合には、ハニカム基材の1L当たり0.01g以上2g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、隔壁の流出セル側の表面に設けられている流出セル側触媒層に含有される触媒金属粒子と同様の値を指す。
【0077】
担体の材料及び形状並びに粉末状の担体の平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。流出セル側触媒層は、流入セル側触媒層と同様に助触媒を含んでもよい。
【0078】
流出セル側触媒層の密度は、特に限定されないが、30g/L以上150g/L以下の範囲内が好ましい。密度がこの範囲の下限以上であることにより、浄化性能を効果的に向上できるからである。密度がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからである。
【0079】
流出セル側触媒層の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の内部領域に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0080】
スラリーは、流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子及び担体を含む点、スラリーに含まれる粉末状の担体の平均粒径等が、スラリーが隔壁の内部に浸透するように適宜調整してもよい点を除いて、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0081】
スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の内部領域に供給する方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流出側端面側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、スラリーが隔壁の内部に浸透するように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状を適宜調整してもよい。乾燥条件及び焼成条件は、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、流出セル側触媒層の厚さ、気孔率等の性状は、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等により調整できる。
【0082】
(2)その他
排ガス浄化装置が流出セル側触媒層をさらに備えるものである場合には、第2例のように流入セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子がパラジウム(Pd)及び白金(Pt)の少なくとも1種を含有し、かつ流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子がロジウム(Rh)を含有するものが好ましい。排気ガスに含まれる炭化水素(HC)が流入セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子により効果的に浄化された後に、排気ガスが流出セル側触媒層に接触することになるので、流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子に含有されるロジウム(Rh)が炭化水素(HC)により被毒されるのを抑制できるからである。
【0083】
排ガス浄化装置は、通常、流入セルの流出端及び流出セルの流入側端を封止する封止部をさらに備える。
【0084】
II.第2実施形態
第2実施形態に係る排ガス浄化装置は、前記隔壁の前記流出側領域における前記流入セル側の表面又は前記流入セル側の内部領域に設けられている流出側触媒層をさらに備え、前記隔壁の前記流出側領域及び前記流出側触媒層を含む前記流出側隔壁部のガス透過性が、前記隔壁の前記触媒配置隔壁部より高いことを特徴とすることを特徴とする。
【0085】
まず、第2実施形態に係る排ガス浄化装置の概略について、例示して説明する。
ここで、図4は、第2実施形態に係る第3例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0086】
図4に示されるように、第3例の排ガス浄化装置1は、第1実施形態に係る第1例の排ガス浄化装置と同一のハニカム基材10、封止部16、及び流入セル側触媒層20に加えて、流出側触媒層22をさらに備えている。流出側触媒層22は、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)の少なくとも1種(図示せず)を含有する触媒金属粒子と、それらを担持する担体(図示せず)とを含む。流出側触媒層22は、隔壁14の流出側領域14Xbにおける流入セル側の表面14SAに設けられている。流出側触媒層22は、気孔率が流入セル側触媒層と同程度で流入セル側触媒層20より薄い。よって、第3例の排ガス浄化装置1では、隔壁14の流出側領域14Xb及び流出側触媒層22を含む流出側隔壁部のガス透過性が、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xa及び流入セル側触媒層20を含む触媒配置隔壁部より高くなっている。
【0087】
従って、図1に示されるように、排ガスが第3例の排ガス浄化装置1を通過する場合には、図4に示されるように、第1実施形態に係る第1例の排ガス浄化装置を通過する場合と概ね同様に排ガスは流れる。なお、第1例の排ガス浄化装置を通過する場合とは異なり、排ガスは流出側隔壁部を透過する際に流出側触媒層22を透過する。
【0088】
ここで、図5は、第2実施形態に係る第4例の排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0089】
図5に示されるように、第4例の排ガス浄化装置1は、第1実施形態に係る第2例の排ガス浄化装置と同一のハニカム基材10、封止部16、及び流入セル側触媒層20に加えて、第2例の排ガス浄化装置とは異なる流出セル側触媒層30を備え、さらに流出側触媒層22を備えている。流出セル側触媒層30は、ロジウム(Rh)を含有する触媒金属粒子(図示せず)と、それを担持する担体(図示せず)とを含む。流出セル側触媒層30は、隔壁14の流出セル側触媒領域14Ybにおける流出セル側の内部領域14NBに設けられている。また、流出側触媒層22は、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)の少なくとも1種(図示せず)を含有する触媒金属粒子と、それらを担持する担体(図示せず)とを含む。流出側触媒層22は、隔壁14の流出側領域14Xbにおける流入セル側の内部領域14NAに設けられている。流出側触媒層22は、隔壁14内部の気孔を閉塞せずに隔壁14内部の気孔を取り囲む表面に設けられている。
【0090】
隔壁14の流入セル側触媒領域14Xa及び流出セル側触媒領域14Ybの重複部分における流入セル側の表面14SA及び流出セル側の内部領域NBにそれぞれ流入セル側触媒層20及び流出セル側触媒層30が配置される。一方、隔壁14の流出側領域14Xbにおける流入セル側の内部領域14NA及び流出セル側の内部領域14NBにそれぞれ流出側触媒層22及び流出セル側触媒層30が配置され、隔壁14の流入側領域14Yaにおける流入セル側の表面14SAに流入セル側触媒層20が配置される。
【0091】
よって、第4例の排ガス浄化装置1では、隔壁14の流出側領域14Xb並びに流出側領域14Xbに配置された流出側触媒層22及び流出セル側触媒層30を含む流出側隔壁部のガス透過性が、隔壁の流入セル側触媒領域14Xa及び流出セル側触媒領域14Ybの重複部分並びに該重複部分に配置された流入セル側触媒層20及び流出セル側触媒層30を含む中央側隔壁部(触媒配置隔壁部)より高くなっている。隔壁14の流入側領域14Ya及び流入側領域14Yaに配置された流入セル側触媒層20を含む流入側隔壁部のガス透過性も、中央側隔壁部より高くなっている。
【0092】
従って、図1に示されるように、排ガスが第4例の排ガス浄化装置1を通過する場合には、図5に示されるように、第1実施形態に係る第2例の排ガス浄化装置を通過する場合と概ね同様に排ガスは流れる。なお、排ガスが第2例の排ガス浄化装置を通過する場合とは異なり、排ガスは流出側隔壁部を透過する際に流出側触媒層22を透過する。
【0093】
第2実施形態に係る排ガス浄化装置では、第3例及び第4例のように、隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面に設けられている流入セル側触媒層に加え、隔壁の流出側領域における流入セル側の表面又は流入セル側の内部領域に設けられている流出側触媒層をさらに備え、隔壁の流出側領域及び流出側触媒層を含む流出側隔壁部のガス透過性が、隔壁の流入セル側触媒領域及び流入セル側触媒層を含む触媒配置隔壁部より高い。これにより、第1実施形態と同様に、圧力損失が大きくなるのを抑制でき、浄化性能を向上できる。なお、第1実施形態とは異なり、排ガスは流出側隔壁部を透過する際に流出側触媒層を透過するので、浄化性能を効果的に向上できる。
【0094】
また、流出側触媒層の密度を流入セル側触媒層より小さくできるので触媒の費用を低減できる。さらに、流入セルに流入した排ガスの大半を、流入セル側触媒層より密度が小さい流出側触媒層が設けられている流出側隔壁部を透過させることができるので、排ガス中のPMを容易に隔壁の気孔内に捕集できる。
【0095】
さらに、第2実施形態に係る排ガス浄化装置の中でも、第3例のように、隔壁の流出セル側に触媒層が設けられていない排ガス浄化装置では、第1実施形態と同様に、圧力損失を効果的に抑制できる。また、第4例のように、隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側に設けられている流出セル側触媒層をさらに備える排ガス浄化装置では、第1実施形態と同様に、浄化性能を効果的に向上できる。
【0096】
続いて、第2実施形態に係る排ガス浄化装置の各構成を詳細に説明する。
【0097】
1.流出側触媒層
流出側触媒層は、前記隔壁の前記流出側領域における前記流入セル側の表面又は前記流入セル側の内部領域に設けられている。
【0098】
ここで、「隔壁の流出側領域における流入セル側の表面に設けられている」とは、隔壁の外部において、隔壁の流出側領域における流入セル側の表面に接するように設けられていることを指す。「隔壁の流出側領域における流入セル側の内部領域に設けられている」とは、隔壁の流出側領域の内部において、流入セルに面する領域に設けられていることを指す。
【0099】
以下、流出側触媒層について、第3例における流出側触媒層22のように隔壁の流入セル側の表面に設けられている流出側触媒層と、第4例における流出側触媒層22のように隔壁の流入セル側の内部領域に設けられている流出側触媒層とに分けて説明する。
【0100】
a.隔壁の流入セル側の表面に設けられている流出側触媒層
流出側触媒層は、隔壁の流出側隔壁部のガス透過性が隔壁の触媒配置隔壁部より高くなるものであれば特に限定されないが、例えば、気孔率が流入セル側触媒層と同程度で流入セル側触媒層より薄いもの等が挙げられる。なお、気孔率が流入セル側触媒層と同程度で流入セル側触媒層より厚い流出側触媒層は、例えば、単位面積当たりのスラリーの供給量を少なくすることを除いて流入セル側触媒層と同一の条件で形成されたものであり、気孔率が流入セル側触媒層の気孔率の±10%の範囲内のものである。
【0101】
流出側触媒層の厚さは、隔壁の流出側隔壁部のガス透過性が隔壁の触媒配置隔壁部より高くなるものであれば特に限定されないが、例えば、隔壁の厚さの5%以上の範囲が好ましい。厚さがこの範囲の下限以上であることにより、排ガスが隔壁と平行に流れる際に排ガス浄化作用を確保できるからである。
【0102】
流出側触媒層は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含む。流出側触媒層は、例えば、触媒金属粒子を担持した触媒付担体の多孔質焼結体である。
【0103】
触媒金属粒子の材料及び平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず、一般的な含有量を用いることができる。
【0104】
担体の材料及び形状並びに粉末状の担体の平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。流出側触媒層は、流入セル側触媒層と同様に助触媒を含んでもよい。
【0105】
流出側触媒層の密度は、特に限定されないが、通常、流入セル側触媒層より低い。なお、「流出側触媒層の密度」とは、流出側触媒層の合計の質量を、流出側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0106】
流出側触媒層の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリーを隔壁の流出側領域における流入セル側の表面に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0107】
スラリーは、流出側触媒層に含まれる触媒金属粒子及び担体を含む点を除いて、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0108】
スラリーを隔壁の流出側領域における流入セル側の表面に供給する方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流入側端面側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように、流出セルを流出側端側から加圧して流出セル及び流入セルの間に圧力差を生じさせてもよい。また、スラリーが隔壁の内部に浸透しないように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状等を適宜調整してもよい。乾燥条件及び焼成条件は、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、流出側触媒層の厚さ、気孔率等の性状は、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等により調整できる。
【0109】
b.隔壁の流入セル側の内部領域に設けられている流出側触媒層
流出側触媒層は、隔壁の流出側隔壁部のガス透過性が隔壁の触媒配置隔壁部より高くなるものであれば特に限定されないが、例えば、隔壁内部の気孔を閉塞せずに隔壁内部の気孔を取り囲む表面に設けられたもの等が挙げられる。
【0110】
流出側触媒層の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができるが、例えば、隔壁の厚さの50%以上100%以下の範囲内が好ましい。厚さがこれらの範囲の下限以上であることにより、排ガスが隔壁を通過する際に触媒層と排ガスの接触頻度を確保できるからである。
【0111】
流出側触媒層は、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含む。流出側触媒層は、例えば、触媒金属粒子を担持した触媒付担体が隔壁内部の気孔内に配置されることで構成されたものである。
【0112】
触媒金属粒子の材料及び平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず、一般的な含有量を用いることができる。
【0113】
担体の材料及び形状並びに粉末状の担体の平均粒径は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、流入セル側触媒層と同様であるため、ここでの説明は省略する。流出側触媒層は、流入セル側触媒層と同様に助触媒を含んでもよい。流出側触媒層の密度は、特に限定されないが、通常、流入セル側触媒層より低い。
【0114】
流出側触媒層の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリーを隔壁の流出側領域における流入セル側の内部領域に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0115】
スラリーは、流出側触媒層に含まれる触媒金属粒子及び担体を含む点、スラリーに含まれる粉末状の担体の平均粒径等は、スラリーが隔壁の内部に浸透するように適宜調整してもよい点を除いて、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0116】
スラリーを隔壁の流出側領域における流入セル側の内部領域に供給する方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流入側端面側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、スラリーが隔壁の内部に浸透するように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状を適宜調整してもよい。乾燥条件及び焼成条件は、流入セル側触媒層の形成方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、流出側触媒層の厚さ、気孔率等の性状は、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等により調整できる。
【0117】
2.その他
ハニカム基材及び流入セル側触媒層は、第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。排ガス浄化装置は、特に限定されないが、第4例のように隔壁の流入側端に近い位置から流出側端までの流出セル側触媒領域における流出セル側の表面又は流出セル側の内部領域に設けられている流出セル側触媒層をさらに備えるものでもよい。流出セル側触媒層及び流出セル側触媒層をさらに備える排ガス浄化装置は、第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、排ガス浄化装置は、通常、第1実施形態と同様の封止部をさらに備える。
【実施例
【0118】
以下、実施例及び参考例を挙げて、本実施形態に係る排ガス浄化装置をさらに具体的に説明する。
【0119】
[実施例]
本実施形態に係る排ガス浄化装置における流入セル側触媒層の延伸方向の長さの圧力損失への影響を後述するシミュレーションにより評価するために、本実施形態に係る排ガス浄化装置の計算モデルを作製した。計算モデルの構成は、以下の通りである。
【0120】
ハニカム基材の形状:円筒形
ハニカム基材のサイズ:外径129mm×軸方向の長さ150mm
セル密度:1平方インチ当たり300個
隔壁の厚さ:200μm
封止部の延伸方向の長さ:隔壁の延伸方向の長さの4%
排ガス透過性:Fr部(触媒配置隔壁部)=1E-14,Rr部(流出側隔壁部)=1E-13
Inletガス温度:300K
ガス流量:7m/min
【0121】
[流入セル側触媒層の延伸方向の長さの圧力損失への影響]
シミュレーションにより、実施例の計算モデルにおけるFrコートの長さ(隔壁の延伸方向の長さに対する流入セル側触媒層の延伸方向の長さ割合)の圧力損失への影響を評価した。シミュレーションの条件は以下の通りである。
【0122】
解析手法:排気後処理シミュレーション
使用ソフトウェア:Exothermia社製Axisuite
conponents:Axitrap
【0123】
図6は、実施例の計算モデルにおけるFrコートの長さに対する圧力損失を示すグラフである。図6に示されるように、Frコートの長さ(隔壁の延伸方向の長さに対する流入セル側触媒層の延伸方向の長さ割合)が80%より大きくなると、圧力損失の上昇感度が大きくなった。
【0124】
[参考例1-1]
図7(a)は、参考例1-1で作製した排ガス浄化装置の試験体を模式的に示す断面図である。
【0125】
参考例1-1では、図7(a)に示されるように、ハニカム基材10と封止部16と流入セル側触媒層20と流出セル側触媒層30とを備える排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0126】
具体的には、まず、円筒状の枠部(図示せず)と枠部の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁14とが一体形成された軸方向の長さが80mmのコージェライト製ハニカム基材10と、延伸方向の長さが4mmの封止部16とを備え、触媒がコートされていないGPFを準備した。GPFにおいて、流出セル12Bの流入側端12Baのみが、封止部16により封止されている。
【0127】
次に、粉末状の担体にロジウム(Rh)を担持した触媒付担体と溶媒とを混合することで、流入セル側触媒層形成用スラリーを準備した。
【0128】
次に、流入セル側触媒層形成用スラリーをGPFにおける隔壁14の流入セル側触媒領域における流入セル側の内部領域に供給した後に、GPFを乾燥し、焼成した。これにより、延伸方向の長さが隔壁の7/10、厚さが隔壁の50%、ロジウム(Rh)の基材の体積1L当たりの含有量が0.3g/Lの流入セル側触媒層20を形成した。
【0129】
次に、粉末状の担体にパラジウム(Pd)を担持した触媒付担体と溶媒とを混合することで、流出セル側触媒層形成用スラリーを準備した。
【0130】
次に、流出セル側触媒層形成用スラリーをGPFにおける隔壁14の流出セル側触媒領域における流出セル側の内部領域に供給した後に、GPFを乾燥し、焼成した。これにより、延伸方向の長さが隔壁の7/10、厚さが隔壁の50%、パラジウム(Pd)の基材の体積1L当たりの含有量が0.6g/Lの流出セル側触媒層30を形成した。この際、流入セル側触媒層20の密度>流出セル側触媒層30の密度となるように流出セル側触媒層30を形成する。以上により、排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0131】
[参考例1-2]
軸方向の長さが122mmであるハニカム基材10を準備した点を除いて、参考例1-1と同一の排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0132】
[参考例1-3]
軸方向の長さが150mmであるハニカム基材10を準備した点を除いて、参考例1-1と同一の排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0133】
[参考例2-1]
図7(b)は、参考例2-1で作製した排ガス浄化装置の試験体を模式的に示す断面図である。
【0134】
参考例2-1では、図7(b)に示されるように、流出セル12Bの流入側端12Ba及び流入セル12Aの流出側端12Abの両方が封止部16により封止されている点を除いて、参考例1-1と同一の排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0135】
[参考例2-2]
軸方向の長さが122mmであるハニカム基材10を準備した点を除いて、参考例2-1と同一の排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0136】
[参考例2-3]
軸方向の長さが150mmであるハニカム基材10を準備した点を除いて、参考例2-1と同一の排ガス浄化装置の試験体1Sを作製した。
【0137】
[排ガス浄化装置の浄化性能の比較]
各参考例の排ガス浄化装置の試験体1Sをモデルガス評価設備に設置し、排ガスの各入りガス温度でのNOx浄化率を求めた。具体的には、排ガスを、入りガス温度を150℃から20℃/minの昇温速度で上昇させながら80L/minの流速で流入側端面10Saから流入させ流出側端面10Sbから外部に流出させた時に、各入りガス温度での入りガスのNOx濃度設定値と出側のNOx濃度を測定値から、NOx浄化率を求めた。
【0138】
図8(a)は、参考例1-1~1-3の排ガス浄化装置における各入りガス温度でのNOx浄化率を示すグラフである。一方、図8(b)は、参考例2-1~2-3の排ガス浄化装置における各入りガス温度でのNOx浄化率を示すグラフである。
【0139】
図8(a)及び図8(b)に示されるように、例えば、入りガス温度が250℃では、参考例1-1~1-3におけるNOx浄化率は、それぞれ参考例2-1~2-3より高くなった。他の入りガス温度でも同様であった。これは、参考例1-1~1-3の試験体1Sでは、図7(a)における矢印で示されるように、流入セル12Aに流入した排ガスは、ほぼ全てが流出側端12Abまで流入セル側触媒層20に接触しながら流れたのに対し、参考例2-1~2-3の試験体1Sでは、図7(b)における矢印で示されるように、流入セル12Aに流入した排ガスは、一部が流入セル側触媒層20が配置されていない流出側隔壁部まで流入セル側触媒層20に接触しながら流れた後に、流出側隔壁部を透過することで流出セル12Bに流入し、他の一部が流出セル側触媒層30が配置されていない流入側隔壁部を透過することで流出セル12Bに流入した後に、流出側端12Bbまで流出セル側触媒層30に接触しながら流れたためと考えられる。
【0140】
[排ガス浄化装置における排ガスの隔壁の表面及び内部における反応時間]
図9は、排ガス浄化装置における排ガスの隔壁の表面及び内部における反応時間を調査する試験装置を模式的に示す図である。
【0141】
試験装置は、円筒状の枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁とが一体形成された軸方向の長さが122mmのコージェライト製ハニカム基材と、延伸方向の長さが4mmの封止部とを備え、触媒がコートされていないGPFに触媒付き熱電対を設置したものである。試験装置において、流出セルの流入側端及び流入セルの流出側端の両方が封止部により封止されている。触媒付き熱電対は、流入セル及び流出セルにおける流入側端から延伸方向にそれぞれ19mm、47mm、75mm、及び103mm離れた各位置に設置されている。
【0142】
排ガスの隔壁の表面及び内部における反応時間を調査するために、図9に示される試験装置において、排ガスを400℃の入りガス温度で30g/sの流量で流入側端面から流入させ流出側端面から外部に流出させた時において、排ガスが流入を開始してから流入セル及び流出セルに設置した各触媒付き熱電対が発熱を開始するまでの時間(以下、「発熱開始時間」と略す。)を測定した。図10は、図9に示される試験装置における流入セル及び流出セルに設置した各触媒付き熱電対の発熱開始時間を示したグラフである。
【0143】
図10に示される各触媒付き熱電対の発熱開始時間からわかるように、排ガスの隔壁の表面における反応時間に相当する時間(排ガスが流入セル(流出セル)における流入側端から流出端側まで移動する時間)は約0.1secとなった。これに対し、排ガスの隔壁の内部における反応時間に相当する時間(流入セルに流入した排ガスが隔壁を透過することで流出セルに流入するのに要する時間)はずっと短く、1/10程度になった。
【0144】
以上、本発明の排ガス浄化装置の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0145】
1 排ガス浄化装置
10 ハニカム基材
10Sa ハニカム基材の流入側端面
10Sb ハニカム基材の流出側端面
12 セル
12A 流入セル
12Aa 流入セルの流入側端
12Ab 流入セルの流出側端
12B 流出セル
12Ba 流出セルの流入側端
12Bb 流出セルの流出側端
14 隔壁
14a 隔壁の流入側端
14y 隔壁の流入側端に近い位置
14b 隔壁の流出側端
14x 隔壁の流出側端に近い位置
14Xa 隔壁の流入セル側触媒領域
14Xb 隔壁の流出側領域
14Ya 隔壁の流入側領域
14Yb 隔壁の流出セル側触媒領域
14SA 隔壁の流入セル側の表面
14NA 隔壁の流入セル側の内部領域
14SB 隔壁の流出セル側の表面
14NB 隔壁の流出セル側の内部領域
16 封止部
20 流入セル側触媒層
22 流出側触媒層
30 流出セル側触媒層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10