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▶ ユーシーエル ビジネス ピーエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】細胞死のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6881 20180101AFI20230117BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20230117BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
C12Q1/6881 Z ZNA
G01N33/574 A
A61K38/19
A61K38/46
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/7088
A61K31/713
C12N15/55
C12N15/09 110
C12N15/113 130
C07K14/525
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019514263
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 GB2017052733
(87)【国際公開番号】W WO2018051110
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】1615842.0
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512030278
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェーンズ,サムエル
(72)【発明者】
【氏名】コルリ,クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】マクデモット,ウルタン
(72)【発明者】
【氏名】クマル,ニーラム
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/196064(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/156527(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0037165(US,A1)
【文献】国際公開第2015/054555(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/187427(WO,A1)
【文献】Sarhan, D. et al.,"A novel inhibitor of proteasome deubiquitinating activity renders tumor cells sensitive to TRAIL-mediated apoptosis by natural killer cells and T cells",Cancer Immunol. Immunother., [online],2013年05月21日,Internet, [retrieved on 2022.02.15],<URL: http://dx.doi.org/10.1007/s00262-013-1439-1>
【文献】Crowder, R. N. et al.,"The Deubiquitinase Inhibitor PR-619 Sensitizes Normal Human Fibroblasts to Tumor Necrosis Factor-related Apoptosis-inducing Ligand (TRAIL)-mediated Cell Death",J. Biol. Chem.,2016年01月12日,Vol. 291,pp. 5960-5970
【文献】Alifrangis, C. et al.,"High throughput therapeutic screening of malignant pleural mesothelioma (MPM) to identify correlation of sensitivity to FGFR inhibitors with BAP1 inactivation",J. Clin. Oncol., [online],2015年05月20日,Vol. 33, No. 15_suppl,p. 7563,https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/jco.2015.33.15_suppl.7563,Internet, [retrieved on 2021.05.13]
【文献】Polanski, R. et al. ,"Caspase-8 activation by TRAIL monotherapy predicts responses to IAPi and TRAIL combination treatment in breast cancer cell lines",Cell Death Dis.,2015年,Vol. 6; e1893,pp. 1-9
【文献】Ventii, K. H. et al.,"BRCA1-associated protein-1 is a tumor suppressor that requires deubiquitinating activity and nuclear localization",Cancer Res.,2008年,Vol. 68,pp. 6953-6962
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/48-33/98
A61P 38/00-38/58
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の癌細胞が細胞死受容体リガンド(DRL)誘導性の細胞死に対して感受性があるかどうかを判定する方法であって、前記個体から採取された生物学的試料において、
(i)非機能的もしくは酵素的に不活性であるBAP1タンパク質、またはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示すBAP1タンパク質をコードする変異型BAP1遺伝子または非機能的であるもしくは酵素的に不活性であるもしくはASXLタンパク質に結合できないもしくはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示す変異型BAP1タンパク質の存在;
(ii)DRL誘導性の細胞死に耐性がある、BAP1野生型細胞である参照細胞における発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較した、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少;または
(iii)DRL誘導性の細胞死に耐性がある、BAP1野生型細胞である参照細胞における結合レベルと比較した、野生型BAP1タンパク質に対するASXLタンパク質の結合の減少または非結合、
を検出することを含み、
前記試料中の、前記変異型BAP1遺伝子もしくは前記変異型BAP1タンパク質の、または前記野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくはタンパク質濃度の減少の存在、あるいはASXLタンパク質の野生型BAP1タンパク質への結合の減少もしくは非結合が、前記個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があることを示している、方法。
【請求項2】
前記ASXLタンパク質が、ASXL1、ASXL2、またはASXL3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発現レベルの減少が、前記参照細胞と比較して、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少であり、前記野生型BAP1タンパク質の濃度の減少が、前記参照細胞と比較して、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少であり得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記変異型BAP1タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号4によってコードされている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記変異型BAP1遺伝子のヌクレオチド配列が、配列番号5によってコードされている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があるかどうかを判定するためのキットであって、非機能的もしくは酵素的に不活性であるBAP1タンパク質、またはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示すBAP1タンパク質をコードする変異型BAP1遺伝子または非機能的であるもしくは酵素的に不活性であるもしくはASXLタンパク質に結合できないもしくはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示す変異型BAP1タンパク質の発現を検出するための、またはDRL誘導性の細胞死に耐性がある参照細胞中の発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較した、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少を検出するための、またはDRL誘導性の細胞死に耐性があるBAP1野生型細胞である参照細胞における結合レベルと比較した、BAP1タンパク質へのASXLタンパク質の非結合もしくは結合の減少を検出するための、検出手段を備え、前記試料中の、前記変異型BAP1遺伝子もしくは前記BAP1タンパク質の、または前記野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少の存在、あるいは野生型BAP1タンパク質に対するASXLタンパク質の結合の減少もしくは非結合が、前記個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があることを示しており、前記キットが少なくとも1つの対照または参照試料を含み、前記キットが、DRL誘導性の細胞死に耐性がある野生型BAP1タンパク質を含む陰性対照を含むキット。
【請求項7】
前記キットが、変異型BAP1 mRNA、または変異型BAP1タンパク質、またはブランク試料を含む陽性対照を含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
(i)非機能的もしくは酵素的に不活性であるBAP1タンパク質、またはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示すBAP1タンパク質をコードする変異型BAP1遺伝子または非機能的であるもしくは酵素的に不活性であるもしくはASXLタンパク質に結合できないもしくはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示す変異型BAP1タンパク質、または(ii)BAP1野生型細胞である参照細胞における発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較して、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少を有する癌細胞の、DRL誘導性の細胞死に対して感受性があるバイオマーカーとしての、インビトロでの使用。
【請求項9】
(i)BAP1阻害剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含み、前記BAP1阻害剤が、CRISPR/CAS9;shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含む、RNAi分子;またはTALENである、組成物。
【請求項10】
治療に使用するための、または医薬品として使用するための、(i)BAP1阻害剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含み、前記BAP1阻害剤が、CRISPR/CAS9;shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含む、RNAi分子;またはTALENである、組成物。
【請求項11】
癌の治療、予防、または改善に使用するための、(i)BAP1阻害剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含み、前記BAP1阻害剤が、CRISPR/CAS9;shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含む、RNAi分子;またはTALENである、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の使用のための、(i)BAP1阻害剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含み、前記BAP1阻害剤が、CRISPR/CAS9;shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含む、RNAi分子;またはTALENである、組成物であって、前記癌が、中皮腫、悪性胸膜中皮腫、ブドウ膜黒色腫、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、腎臓癌、肺癌、胸膜癌、腹部癌、腹膜癌、心膜癌、頭頸部癌、脳腫瘍、乳癌、肝臓または胆道癌、上部管および下部管を含む消化器癌、尿路上皮癌、前立腺癌、精巣癌、精巣鞘膜癌、卵巣癌、子宮頸癌、肉腫、リンパ腫、または白血病である、組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の組成物と、薬学的に許容されるビヒクルと、を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
治療有効量のBAP1阻害剤および細胞死受容体リガンド、ならびに薬学的に許容されるビヒクルを接触させることを含み、前記BAP1阻害剤が、CRISPR/CAS9;shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含む、RNAi分子;またはTALENである、請求項13に記載の薬学的組成物を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞の細胞死に関し、特に、細胞死受容体リガンド(DRL)誘導性の細胞死(death receptor ligand (DRL)-induced cell death)に対して感受性がある癌細胞を同定するために使用され得るバイオマーカーに関する。本発明はまた、DRL誘導性の細胞死に対して感受性がある癌細胞を同定するための予測方法およびキットにも及ぶ。本発明はさらに、癌を治療するための新規な組成物およびそのような組成物を使用する治療方法にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
悪性胸膜中皮腫(MPM)は、胸膜に最も頻繁に発生し、ほとんど常にアスベスト曝露に関連する、まれであるが常に致命的な悪性腫瘍である(1、2)。アスベストの採掘と使用は、多くの国で法的規制の対象となっているが、世界的な工業化への傾向が高まるにつれて、アスベストの使用と生成が増加しているという証拠が残っている(3)。10~40年のいずれかの癌潜伏期間を考えると、それゆえ、そのような国々では、アスベストに関連する癌は、今後50年間で増加する可能性が高い。MPMと診断された患者に対する現在の治療法の選択肢は限られている。例えば、根治手術は限られた利益しか提供せず、癌はほとんどの化学療法薬に対して難治性である(4)。実際、ペメトレキセドにシスプラチンを加えた現在のゴールドスタンダードである化学療法投与計画では、全生存期間中央値は12.1カ月、進行までの期間は5.7カ月である(5)。
【0003】
腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL/Apo2L)は、インビトロおよびインビボで腫瘍細胞において細胞死を誘導するが、ほとんどの正常細胞においてはそうではないTNFリガンドファミリーのメンバーである。多数の化学療法薬もまた、TRAIL媒介細胞死に対して腫瘍細胞を感受性にすることが示されている。中皮腫細胞の中には、TRAIL誘導性の細胞死に対して感受性があるものもあれば、インビトロでの細胞死の誘導に耐性があるものもあり、コア細胞死機構のこの破壊は、臨床的に観察されている従来の細胞傷害剤に対する一般的な耐性における関係が示唆されている(11)。
【0004】
ある種の癌は、既知の細胞死受容体リガンドの前細胞死効果に対して感受性があるが、他のものはそうではない。どの癌がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があるかがわからなければ、癌を有する個体は、毒性および問題が記述されている、化学療法のような非特異的細胞傷害療法による治療に頼らなければならない(5)。さらに、患者が反応するか否かについての明確な指示による前治療がなければ、そのような治療の利点は、最初は不確実である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、細胞死受容体リガンド(DRL)誘導性の細胞死によって引き起こされる細胞死に対して感受性がある癌の治療のためのより効果的な治療的介入に対する強い要望がある。TRAIL受容体1および2(細胞死受容体4および5)、TNF受容体およびFAS受容体などの、細胞死受容体に結合された際に細胞死受容体リガンドによって引き起こされる細胞死に対して感受性がある癌性細胞を同定するために使用され得るバイオマーカーを提供する必要もある。
【0006】
したがって、本発明の第1の態様では、個体の癌細胞が細胞死受容体リガンド(DRL)誘導性の細胞死に対して感受性があるかどうかを判定する方法であって、個体から採取された生物学的試料において、
(i)変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質の存在、
(ii)DRL誘導性の細胞死に耐性がある、BAP1野生型細胞である参照細胞における発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較した、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少、もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少、または
(iii)DRL誘導性の細胞死に耐性がある、BAP1野生型細胞である参照細胞における結合レベルと比較した、野生型BAP1タンパク質に対するASXLタンパク質の結合の減少または非結合、を検出することを含み、
試料中の、変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質の、または野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくはタンパク質濃度の減少の存在、あるいはASXLタンパク質の野生型BAP1タンパク質への結合の減少もしくは非結合が、個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があることを示している、方法を提供する。
【0007】
以前の遺伝子解析は、CDKN2A、NF2、およびBAP1の不活性化、ならびに多数の染色体アームの頻繁な喪失および獲得を含む、いくつかの重要な反復性の変化を同定している。さらに最近になって、22人の悪性中皮腫患者の最初の全エクソーム配列分析により、腫瘍発生における可能性のあるドライバー事象としてのこれら3つの遺伝子の重要性が確認され、さらにSCF E3ユビキチンリガーゼ複合体の必須の成分であるCUL1中の反復性の非同義変異が同定された(6)。
【0008】
BAP1は、中皮腫(7)、ブドウ膜黒色腫(8)、腎細胞癌(9)、および胆管癌(10)を含む、様々な種類の癌で体細胞変異している腫瘍抑制遺伝子である。本発明者らは、癌細胞におけるBAP1変異体の発現が、細胞死受容体リガンドによって誘導される細胞死に対する感受性を増大させることを発見し、これは標的外効果がより少ないことを示す。腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)は、例えば、インビトロおよびインビボで腫瘍細胞において細胞死を誘導するが、ほとんどの正常細胞においてはそうではない。したがって、有益なことに、本発明は、変異型BAP1遺伝子の発現もしくは変異型BAP1タンパク質の合成、または野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少に関連する、癌を有する個体が、細胞死受容体リガンド療法で治療されたときに肯定的な結果を示すであろう可能性を増加させる。したがって、本発明の方法は、予想(prognosis)を提供する。したがって、そのような個体は、非特異的療法で治療されて、関連する望ましくない副作用を被る可能性が低くなる。
【0009】
BAP1は、BAP1遺伝子によってコードされる脱ユビキチン化酵素である。それは、核局在化配列およびユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼ(UCH)ドメインを含む、80.4kDaのタンパク質であり、これは脱ユビキチン活性をBAP1に提供する。BAP1遺伝子は、生殖細胞系でまたは体細胞的に様々な形態の癌で変異され得る。ヒト野生型BAP1遺伝子(BAP1全遺伝子配列>gi|568815595:c52410105-52401004ホモサピエンス染色体3)の一実施形態をコードするヌクレオチド配列は、本明細書では以下のように、配列番号1として提供される。
GAGCGCATGCCCGCATCTGCTGTCCGACAGGCGGAAGACGAGCCCAGAGGCGGAGCAGGGCCGTCGCGCCTTGGTGACGTCTGCCGCCGGCGCGGGCGGGTGACGCGACTGGGCCCGTTGTCTGTGTGTGGGACTGAGGGGCCCCGGGGGCGGTGGGGGCTCCCGGTGGGGGCAGCGGTGGGGAGGGAGGGCCTGGACATGGCGCTGAGGGGCCGCCCCGCGGGAAGATGAATAAGGGCTGGCTGGAGCTGGAGAGCGACCCAGGTGAGGAGGGGACCGGGAGGGCCAGGGGCTGGGGAGGCCGGATGGGCCCGGGACGCGCCTGCCTGACCATCACCCCCTCCTCTTGTCGCCCCACCCAGGCCTCTTCACCCTGCTCGTGGAAGATTTCGGTAAGAGCCTTTTCTCCCTGCCGGACCGGGGCTGTGGCGGCCCACCCCTGCGCCCTCACTCATCAGGGGCTGTCCTTCCCTACTGCTTTCCTTTCCTCATCGCAGGTGTCAAGGGGGTGCAAGTGGAGGAGATCTACGACCTTCAGAGCAAATGTCAGGGGTGAGTGGCTGTACACCAGGGCTGCCCCTTACACCCAGAGTGCTGGGGAAGGTCCCAGAGAACAGGGCCCCTTAGGGAAGACAGTGCCAGGAACCCTACGTTGTAAAATCTCACAGAAAGCAGCAGCCTTGCTCTCTGAGTGCCCGCTCCTGATCAAACTGATACTTTCTTTTCTCCCAAACTTTCCTTAGCGCTTCCCTTTTTGTAGCAGCCCCCTCCCCACCCCTAAGCATCCTTTGGTTCAGCTGCTTTCCTGGCCTTGCAGCGGGAAGACCCCGGTCACACAATGTCTTTTGTGCAGTTGTGTAATGTATTAATTTTAGTGTGCCCATGTGTCCTTGGCTTTAATCCTGACACAAAGTCATCCTGTATTGATTGGTTGGGGTGACAAGGCCCCTCCTGGGTGCCCACACTTAGAGTCTTTTCCCAGTGGTCCTGCAGAATAGATGTGTAAGAGAGTAGCAACAGTAGCAACCGTGACTGAACCAAGAAGTCTACTTTAATTTCCTGGAACAAAAGAGACTGGTGTGGGTGTTCATTTGCTTTCCTGACTGCATTGGGGCCCACAAGTGAGAAGGAGTGCCTCAGTTCCTCATCAGAGTTTTTGTTCTTGTCTTACTTTGTGTTCCTACCCTGTCCCATCCTTGGCCCTCAGTTCCAGCTTTTCTTCTCTTACCCAGAACTATAGACTTCATAAGGAGACTGGGTGGACTCCTGGAGCATCACAGTCAGAGGCTTATGCTTTGCTCTGCCTGTGGCAGGCCTTTGGTGTGTGAGGGCACAAGGCCACTTCAGACACAGTGTTGGGAAGAAGCCAGGGGAGAGGGGGGATCACAGCAAGGACACCTGAGTGATGACGCAGTGCAAAGGATTAATGGGAGAAAGAAGGGAATGCTGATTGTCTTCTCCCCTTTGGCTGATCTGGCTCTGCCCCTTACTTCCCCCAGCCCTGTATATGGATTTATCTTCCTGTTCAAATGGATCGAAGAGCGCCGGTCCCGGCGAAAGGTCTCTACCTTGGTGGATGATACGTCCGTGATTGATGATGATATTGTGAATAACATGTTCTTTGCCCACCAGGTCTGCTGGACTCTGTGCTTTGTTTGGAGGGTGGGATGCTGCCATGTTTTTGCTTGGGAAGTGGAAATGGAGGAAGACAGGAGGAGGAGATAGGCAGATTCTAGGGGTGGTAGCTACAGAAATCCTCTGGCAGAACGAACTGAACTCTTAATTCATTAAAGGGAACAGCTTTAGAGTAGGAGGGTGTCTGAGTCCACTCTCTGTGTCCTCAGATATCCAGTGGGTATTTGGTAGGTGCTTGTTAAATGAATAAACATTAGGCAAAGATGAAAGGAGCTGAGAAGGGGAGTTGTCCAGATATGACTGACCTGCTCTGGATCCCCATTCTTGATGTATATGGGCTTGGGGCTTGCAGTGAGGGGTGCTGTGTATGGGTGACTATTCTTGGTTTCACAGCTGATACCCAACTCTTGTGCAACTCATGCCTTGCTGAGCGTGCTCCTGAACTGCAGCAGCGTGGACCTGGGACCCACCCTGAGTCGCATGAAGGACTTCACCAAGGGTTTCAGCCCTGAGGTAGGCTGCAGTGCCTTCATCCTGGCTCACAGCCAACTGGGCAGATCTGACCCTGAGGGCCACTGGGAATGCTACCACATGATATTGGGTACTATTAGGCTGTTTCTTTTTCAAATGATTGTTTATGTTACATTTGACTCTTAAATAAATTGTGTAAGGCCATTGTTTTTAGATGCAGTTGCGGGGAAAGGACACAGGCCTAGGGAGGGAGGAGAGTTTCCTTAAGTCAGACCATGTCAGAACCTTCTCTGTCAGGACTTTTCCTCTCAGGCCATGTTGCTTCCTAGTGTCCACTAATTACCATGCAAGGCCAGCACAGTCCATCTCTTTGGGGCTCCAGAGCTCTTTTCTGCCCCCACCAGCCTTTTAAGAAAGTTCGTCTGTGTTCCTTCCGATTCCTGGAATGCCTCCAGGCTGCTCTCTGAAGCTTTGCCTTCCACCCATAGTCCTACCTGAGGAGAAATTATTCTGATACGGCCTTATTTTCTTCCCCGTAGAGCAAAGGATATGCGATTGGCAATGCCCCGGAGTTGGCCAAGGCCCATAATAGCCATGCCAGGTGTGTGGGAGCTGTGGGAGCTGATGTGGGGTGGGAGTAGGGGGAGTATCATTTTTTGGGCCCTGACTCTGTTTTTCCCCAGGCCCGAGCCACGCCACCTCCCTGAGAAGCAGAATGGCCTTAGTGCAGTGCGGACCATGGAGGCGTTCCACTTTGTCAGCTATGTGCCTATCACAGGCCGGCTCTTTGAGCTGGATGGGCTGAAGGTCTACCCCATTGACCATGGTAGGCACCATGAGCTGGAGGCCTGTTGGGTGTCTCTGCCTACCTCCTAGGGAGCTGGGGCTCAGGGCCCTCTGGTATGTGGTACCCAGTGGCAGGGGTTGTCGGTACCGACACCCGGCTCTGGCTGGGGTTTCACCCTACACCATATTGCCCGACCAGCTCCTGATTCCCTGGCTCAACTGCTCTTCTCTGTCTTCCTTCCCACTCCTGGCCTGCCCAAACTCAGGGTTTCCTTCTCGCTGATTCCTTGTCTTGGTCTCCACTAGGGCCCTGGGGGGAGGACGAGGAGTGGACAGACAAGGCCCGGCGGGTCATCATGGAGCGTATCGGCCTCGCCACTGCAGGGTAAGGGCCCTGTGCCTGCCCTGTTCTACTCTCTGGAGCTGTACCTACTTTGGGAGGGACAGAGAGTATCCAGGTGATTTGTAAATTGCAAGGCCATATGGTGAATCTGGCAAGATCAGGCTTAGATCATGGGTTCTCAACTTGTTGTCTTATTTCCTGCCTGGGCTGCCTGTGGCCTGCTCCTGGGTGGGCTGGGGGAGGGGCAGGCCTCAGTGGAGCCTTAGGCAGCCCAGGTCTGCTGGTTCACTTCCAGATAGGCCCCTCATACAGCTTGTTGGAAGGTACCAGCTCAGGTGCCTGGCATGTATGGCTAGTCGCTGCCTGCCTGTTGGGGTGGGGCCTATACCTACAGCTGCAGGTGTGACTGCAGGGAGCCCTGCCAGGATATCTGCCTCAACCTGATGGCGGGGCCGGGGCGGGAGCTGCTCTCACGGCTGCGGCTGTGACTGCAGGGAGCCCTACCACGACATCCGCTTCAACCTGATGGCAGTGGTGCCCGACCGCAGGATCAAGTATGAGGCCAGGCTGCATGTGCTGAAGGTGAACCGTCAGACAGTACTAGAGGCTCTGCAGCAGGTAGGTGCCCTTTCTTCCTGGCCTCTGCCCAGCCCAACCCTCCCTGCATTCCTCCTCCCTTCCCCCACAGCATTTGTCTCTGATTCGTGAACATACTCTCTTGTAGATCTGGGCTTCAGCTAACCACATCTTTTCTTTGCCCCCATTGTGGGAAAGGTGGGACTTGGAGTGGGGAGGGAGAATAGCTTCTAAAAGGAAGTTTGGGTTTGGGTGTTTTATTTCCCTGTGAGTGAATGGGTAGAGCCAAGGCCATTATTCCTTTAGGTCCTCAGCCCTTAGCTATTTAAGGTAGAAGCCCGGGTCTACCCTTTCTCCTCTGAGCCCTGGATTCTGTTGTTAGCTGATAAGAGTAACACAGCCAGAGCTGATTCAGACCCACAAGTCTCAAGAGTCACAGCTGCCTGAGGAGTCCAAGTCAGCCAGCAACAAGTCCCCGCTGGTGCTGGAAGCAAACAGGGCCCCTGCAGCCTCTGAGGGCAACCACACAGGTACTGGGGGGTTTGGGACCTCTTGTGGACCTCAGAGCCACCCGCTAATGTCTGACATGGGAGGCCTAAACAGGGAAAGTCTTTTTCTGGGGATGTCCTTGGGCAGTGTTCTTCCCCCGTCAGAAGGTAGAGGGAGAGCAGTCCTTCCCTAAAGAAAGGCACCTGTAAAGGGCCGCTGTTACCACAGGCCCCTGGGCCCTTCTCTGTAATGTACACTCCCTTTCTTGTTTTCTCTAGAGGCGGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTCTTCCTGCTTCTTTTTTCCCATCTCATTCTTTGCCCTGTCTCATTGCGGGATCATGACTTAGAGCTTGCTGACTCCCATTGCACCAGCTGGCTGGGCTGTTCTTCTCTGGGAAGTGCTGGTTCACAGGGCCGGGGAGACTGTGAGCTTTTCTTGGAGATCCTACTGGAGGTCCTGCCTGTGTTCTTGCCCTGTCTCAGATGGTGCAGAGGAGGCGGC
TGGTTCATGCGCACAAGCCCCATCCCACAGCCCTCCCAACAAACCCAAGCTAGTGGTGAAGCCTCCAGGCAGCAGCCTCAATGGGGTTCACCCCAACCCCACTCCCATTGTCCAGCGGCTGCCGGCCTTTCTAGACAATCACAATTATGCCAAGTCCCCCATGCAGGTAAGCTGGGAGCACCCTTGCAGGATTCTCTACTTGATTCTCTTGAGAGGCTGCAACAGGCAATTTTCCCATGTGGTTCCTTGGTGTTCATCCTTGGCATGGCTGGGTCAAGCTGCCTGGGCCTGGGTTGCTAGGTTCCTCTGCCTGATATGAAAAGGCCCCCACAACAGCAGGAGCTTAGGGAGGCAGGGAGAGCTCCTTTGAATTTAATCTAGTTACGTGGCTGTGGGATTAAATGTTTAGGTCACGCTCCTTGGTACAACTTCATGGGTTGGGTTTTACTGGCAAAATAAAGGCATGTGTTTCAGGGCACTCTGTTTCTCTTAAAACCCCTCCGTGGGGTTCTATCCAGTGTAAGTGGGTGGCAGCCTCCCCACAAGCCAAGGACAGGCCATGGAACAGCTGGAGGGGTTCCGCTGACTCAGTCTGGAAAACCATGTTGGCTTTCTCTCTGGCTGTGAGTGTCTAGGCTCAGCCTGGGCCGAGCAGCACTTGTTTGTAACTGCCCTGGTCTTTGTCCCAGGAGGAAGAAGACCTGGCGGCAGGTGTGGGCCGCAGCCGAGTTCCAGTCCGCCCACCCCAGCAGTACTCAGATGATGAGGATGACTATGAGGATGACGAGGAGGATGACGTGCAGAACACCAACTCTGCCCTTAGGTCAGCCCAGCTTTCTAAGGCTACCAGGTTCTAGGTGCTTCGGATCCCATCCTGAATATCTCAGTCTGTGTCTGAGAATGCCCTGCAGCAGATAATGTTGAGCACCTGCGGAGTTTGGGGCCCTGGGGGAGGCTGGCATGATGGGGCTGACCCCAGGTCCCCAGGAAGTTTTTGGTGGGCTGGGGGGTAAGGCTGAGCACGTAAGCTTATATCATGTCCTATTGGAAGTGGCCTTTTAGCCAGGCCTTGAAGGATTGGTTGGGGCAGGGATGGAGGAGATGTGGGTGGTGGGGAGGCAGCTTTGCTGGAACACAGGGCATTGGCAAAAGGCCAGGAGTGGGATGGCTGGAATAGAGGAAGTGTCTTTTGAGGACACTTGGCTGCAGCTGTCAGAACTTGATGCCAGGCTTAGCATGGCTAGTTCAAGTTGCTTGGACCAAGTATAAGGAGTTTTAGGGTCAGCCCCTGGAGGTCGGGATGTATTTAAGCCATTCTGGGTACTGCTGGGTATGGTCACCTGGCCCGTTCCCTTGCTTCACATCTTCTCGGGCCCCACAGGTATAAGGGGAAGGGAACAGGGAAGCCAGGGGCATTGAGCGGTTCTGCTGATGGGCAACTGTCAGTGCTGCAGCCCAACACCATCAACGTCTTGGCTGAGAAGCTCAAAGAGTCCCAGAAGGACCTCTCAATTCCTCTGTCCATCAAGACTAGCAGCGGGGCTGGGAGTCCGGCTGTGGCAGTGCCCACACACTCGCAGCCCTCACCCACCCCCAGCAATGAGAGTACAGACACGGCCTCTGAGATCGGCAGTGCTTTCAACTCGCCACTGCGCTCGCCTATCCGCTCAGCCAACCCGACGCGGCCCTCCAGCCCTGTCACCTCCCACATCTCCAAGGTGCTTTTTGGAGAGGATGACAGCCTGCTGCGTGTTGACTGCATACGCTACAACCGTGCTGTCCGTGATCTGGGTCCTGTCATCAGCACAGGCCTGCTGCACCTGGCTGAGGATGGGGTGCTGAGTCCCCTGGCGCTGACAGGTGGGCCTTGGACTGGCTCACTGGCCACTTGGTGCACCCAGGAGGGAGGAGGGAAGTGGCCAAGTGACCACAAAGTGTCCTGCACTCTGATGATTTTCTTGTGACCTCTCTTCCCAGAGGGTGGGAAGGGTTCCTCGCCCTCCATCAGACCAATCCAAGGCAGCCAGGGGTCCAGCAGCCCAGTGGAGAAGGAGGTCGTGGAAGCCACGGACAGCAGAGAGAAGACGGGGATGGTGAGGCCTGGCGAGCCCTTGAGTGGGGAGAAATACTCACCCAAGGTGAGCCTCCGTTGTGGTTTTCTCCTTTAATCCTGGCAGAGGGTAAGGCCTGAGCTCCTCCTGCCCAGGTGCCAAGTTCTTGATTGGAACTTTGGTGTGAAGATTGGTGGCTGGAGCCATGTGCCAGAAGACTTTCTGGGTTGGGTGGTGGCAGGGGCCTTGATAGGCATGGACTCGCTGCTCATCCTTGCCTCTAGCTGCCTATTGCTCGTGGGGCTTTGTTGCTGGCCCGCCCCGATCAGAGGTGCAATGCTGGGTTTTGGCAGGAGCTGCTGGCACTGCTGAAGTGTGTGGAGGCTGAGATTGCAAACTATGAGGCGTGCCTCAAGGAGGAGGTAGAGAAGAGGAAGAAGTTCAAGGTGGGTGATTTCTCCAGTTGCCTGATCTGGCCTCTCCCGAGGTCCACTGGTGGCTGCTCTGGCAAGATTGGCTCCAGTGCTCTCAGTCTTCTTCTCTCCTACAGATTGATGACCAGAGAAGGACCCACAACTACGATGAGTTCATCTGCACCTTTATCTCCATGCTGGCTCAGGAAGGTGAGGGGATGCGCTGCTGTCTTAACTGGAATGCCCTGCTGAGGGCCGTGTCCTTCAGCTCCCCTCCCCTGGCCTCTCCTGAGGCTTGAGCAGACCTTGGGGCACAGGGAGGGCCATGAGAGCCTCAGCTCCTGGCCTGAGGCAGCCAGCACCTGCTCAAGGGTCTCTACCTCTTCGCAGGCATGCTGGCCAACCTAGTGGAGCAGAACATCTCCGTGCGGCGGCGCCAAGGGGTCAGCATCGGCCGGCTCCACAAGCAGCGGAAGCCTGACCGGCGGAAACGCTCTCGCCCCTACAAGGCCAAGCGCCAGTGAGGACTGCTGGCCCTGACTCTGCAGCCCACTCTTGCCGTGTGGCCCTCACCAGGGTCCTTCCCTGCCCCACTTCCCCTTTTCCCAGTATTACTGAATAGTCCCAGCTGGAGAGTCCAGGCCCTGGGAATGGGAGGAACCAGGCCACATTCCTTCCATCGTGCCCTGAGGCCTGACACGGCAGATCAGCCCCATAGTGCTCAGGAGGCAGCATCTGGAGTTGGGGCACAGCGAGGTACTGCAGCTTCCTCCACAGCCGGCTGTGGAGCAGCAGGACCTGGCCCTTCTGCCTGGGCAGCAGAATATATATTTTACCTATCAGAGACATCTATTTTTCTGGGCTCCAACCCAACATGCCACCATGTTGACATAAGTTCCTACCTGACTATGCTTTCTCTCCTAGGAGCTGTCCTGGTGGGCCCAGGTCCTTGTATCATGCCACGGTCCCAACTACAGGGTCCTAGCTGGGGGCCTGGGTGGGCCCTGGGCTCTGGGCCCTGCTGCTCTAGCCCCAGCCACCAGCCTGTCCCTGTTGTAAGGAAGCCAGGTCTTCTCTCTTCATTCCTCTTAGGAGAGTGCCAAACTCAGGGACCCAGCACTGGGCTGGGTTGGGAGTAGGGTGTCCCAGTGGGGTTGGGGTGAGCAGGCTGCTGGGATCCCATGGCCTGAGCAGAGCATGTGGGAACTGTTCAGTGGCCTGTGAACTGTCTTCCTTGTTCTAGCCAGGCTGTTCAAGACTGCTCTCCATAGCAAGGTTCTAGGGCTCTTCGCCTTCAGTGTTGTGGCCCTAGCTATGGGCCTAAATTGGGCTCTAGGTCTCTGTCCCTGGCGCTTGAGGCTCAGAAGAGCCTCTGTCCAGCCCCTCAGTATTACCATGTCTCCCTCTCAGGGGTAGCAGAGACAGGGTTGCTTATAGGAAGCTGGCACCACTCAGCTCTTCCTGCTACTCCAGTTTCCTCAGCCTCTGCAAGGCACTCAGGGTGGGGGACAGCAGGATCAAGACAACCCGTTGGAGCCCCTGTGTTCCAGAGGACCTGATGCCAAGGGGTAATGGGCCCAGCAGTGCCTCTGGAGCCCAGGCCCCAACACAGCCCCATGGCCTCTGCCAGATGGCTTTGAAAAAGGTGATCCAAGCAGGCCCCTTTATCTGTACATAGTGACTGAGTGGGGGGTGCTGGCAAGTGTGGCAGCTGCCTCTGGGCTGAGCACAGCTTGACCCCTCTAGCCCCTGTAAATACTGGATCAATGAATGAATAAAACTCTCCTAAGAATCTCCTGAGAAATGAA
[配列番号1]
ヒト野生型BAP1遺伝子の一実施形態をコードするcDNA配列は、本明細書では以下のように、配列番号2として提供される。
ATGAATAAGGGCTGGCTGGAGCTGGAGAGCGACCCAGGCCTCTTCACCCTGCTCGTGGAAGATTTCGGTGTCAAGGGGGTGCAAGTGGAGGAGATCTACGACCTTCAGAGCAAATGTCAGGGCCCTGTATATGGATTTATCTTCCTGTTCAAATGGATCGAAGAGCGCCGGTCCCGGCGAAAGGTCTCTACCTTGGTGGATGATACGTCCGTGATTGATGATGATATTGTGAATAACATGTTCTTTGCCCACCAGCTGATACCCAACTCTTGTGCAACTCATGCCTTGCTGAGCGTGCTCCTGAACTGCAGCAGCGTGGACCTGGGACCCACCCTGAGTCGCATGAAGGACTTCACCAAGGGTTTCAGCCCTGAGAGCAAAGGATATGCGATTGGCAATGCCCCGGAGTTGGCCAAGGCCCATAATAGCCATGCCAGGCCCGAGCCACGCCACCTCCCTGAGAAGCAGAATGGCCTTAGTGCAGTGCGGACCATGGAGGCGTTCCACTTTGTCAGCTATGTGCCTATCACAGGCCGGCTCTTTGAGCTGGATGGGCTGAAGGTCTACCCCATTGACCATGGGCCCTGGGGGGAGGACGAGGAGTGGACAGACAAGGCCCGGCGGGTCATCATGGAGCGTATCGGCCTCGCCACTGCAGGGGAGCCCTACCACGACATCCGCTTCAACCTGATGGCAGTGGTGCCCGACCGCAGGATCAAGTATGAGGCCAGGCTGCATGTGCTGAAGGTGAACCGTCAGACAGTACTAGAGGCTCTGCAGCAGCTGATAAGAGTAACACAGCCAGAGCTGATTCAGACCCACAAGTCTCAAGAGTCACAGCTGCCTGAGGAGTCCAAGTCAGCCAGCAACAAGTCCCCGCTGGTGCTGGAAGCAAACAGGGCCCCTGCAGCCTCTGAGGGCAACCACACAGATGGTGCAGAGGAGGCGGCTGGTTCATGCGCACAAGCCCCATCCCACAGCCCTCCCAACAAACCCAAGCTAGTGGTGAAGCCTCCAGGCAGCAGCCTCAATGGGGTTCACCCCAACCCCACTCCCATTGTCCAGCGGCTGCCGGCCTTTCTAGACAATCACAATTATGCCAAGTCCCCCATGCAGGAGGAAGAAGACCTGGCGGCAGGTGTGGGCCGCAGCCGAGTTCCAGTCCGCCCACCCCAGCAGTACTCAGATGATGAGGATGACTATGAGGATGACGAGGAGGATGACGTGCAGAACACCAACTCTGCCCTTAGGTATAAGGGGAAGGGAACAGGGAAGCCAGGGGCATTGAGCGGTTCTGCTGATGGGCAACTGTCAGTGCTGCAGCCCAACACCATCAACGTCTTGGCTGAGAAGCTCAAAGAGTCCCAGAAGGACCTCTCAATTCCTCTGTCCATCAAGACTAGCAGCGGGGCTGGGAGTCCGGCTGTGGCAGTGCCCACACACTCGCAGCCCTCACCCACCCCCAGCAATGAGAGTACAGACACGGCCTCTGAGATCGGCAGTGCTTTCAACTCGCCACTGCGCTCGCCTATCCGCTCAGCCAACCCGACGCGGCCCTCCAGCCCTGTCACCTCCCACATCTCCAAGGTGCTTTTTGGAGAGGATGACAGCCTGCTGCGTGTTGACTGCATACGCTACAACCGTGCTGTCCGTGATCTGGGTCCTGTCATCAGCACAGGCCTGCTGCACCTGGCTGAGGATGGGGTGCTGAGTCCCCTGGCGCTGACAGAGGGTGGGAAGGGTTCCTCGCCCTCCATCAGACCAATCCAAGGCAGCCAGGGGTCCAGCAGCCCAGTGGAGAAGGAGGTCGTGGAAGCCACGGACAGCAGAGAGAAGACGGGGATGGTGAGGCCTGGCGAGCCCTTGAGTGGGGAGAAATACTCACCCAAGGAGCTGCTGGCACTGCTGAAGTGTGTGGAGGCTGAGATTGCAAACTATGAGGCGTGCCTCAAGGAGGAGGTAGAGAAGAGGAAGAAGTTCAAGATTGATGACCAGAGAAGGACCCACAACTACGATGAGTTCATCTGCACCTTTATCTCCATGCTGGCTCAGGAAGGCATGCTGGCCAACCTAGTGGAGCAGAACATCTCCGTGCGGCGGCGCCAAGGGGTCAGCATCGGCCGGCTCCACAAGCAGCGGAAGCCTGACCGGCGGAAACGCTCTCGCCCCTACAAGGCCAAGCGCCAGTGA
[配列番号2]
ヒト野生型BAP1の一実施形態のアミノ酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号3と呼ばれる。
MNKGWLELESDPGLFTLLVEDFGVKGVQVEEIYDLQSKCQGPVYGFIFLFKWIEERRSRRKVSTLVDDTSVIDDDIVNNMFFAHQLIPNSCATHALLSVLLNCSSVDLGPTLSRMKDFTKGFSPESKGYAIGNAPELAKAHNSHARPEPRHLPEKQNGLSAVRTMEAFHFVSYVPITGRLFELDGLKVYPIDHGPWGEDEEWTDKARRVIMERIGLATAGEPYHDIRFNLMAVVPDRRIKYEARLHVLKVNRQTVLEALQQLIRVTQPELIQTHKSQESQLPEESKSASNKSPLVLEANRAPAASEGNHTDGAEEAAGSCAQAPSHSPPNKPKLVVKPPGSSLNGVHPNPTPIVQRLPAFLDNHNYAKSPMQEEEDLAAGVGRSRVPVRPPQQYSDDEDDYEDDEEDDVQNTNSALRYKGKGTGKPGALSGSADGQLSVLQPNTINVLAEKLKESQKDLSIPLSIKTSSGAGSPAVAVPTHSQPSPTPSNESTDTASEIGSAFNSPLRSPIRSANPTRPSSPVTSHISKVLFGEDDSLLRVDCIRYNRAVRDLGPVISTGLLHLAEDGVLSPLALTEGGKGSSPSIRPIQGSQGSSSPVEKEVVEATDSREKTGMVRPGEPLSGEKYSPKELLALLKCVEAEIANYEACLKEEVEKRKKFKIDDQRRTHNYDEFICTFISMLAQEGMLANLVEQNISVRRRQGVSIGRLHKQRKPDRRKRSRPYKAKRQ
[配列番号3]
腫瘍は、癌原遺伝子または腫瘍抑制遺伝子の変異によって生じる。癌原遺伝子における機能獲得型変異(gain-of-function mutation)は、それを癌遺伝子に変換し、それが腫瘍形成を引き起こす。このような機能獲得型変異は、通常、DNA塩基におけるミスセンス変異であり、これはアミノ酸配列の変化、または遺伝子のコピー数の獲得をもたらす。腫瘍抑制遺伝子における機能喪失変異もまた、腫瘍形成を招くであろう。しかしながら、腫瘍抑制因子における機能喪失変異は、数個のアミノ酸の変化に限定されない。タンパク質の機能を損なうアミノ酸のいずれかの変化が、機能喪失変異をもたらす。それゆえ、癌遺伝子とは異なり、腫瘍抑制遺伝子の機能の喪失をもたらす特定の変異を同定することは必ずしも可能ではない。したがって、腫瘍抑制因子の機能喪失短縮型変異(Loss-of-function truncating mutations)は、典型的には、遺伝子のコーディングエクソン全体を通して同定される。
【0010】
BAP1は、腫瘍抑制遺伝子である。本発明によると、変異型BAP1遺伝子は、変異を含むものである。変異型BAP1遺伝子は、非機能的もしくは酵素的に不活性なBAP1タンパク質、またはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示すBAP1タンパク質、をコードする遺伝子である。したがって、変異型BAP1タンパク質は、非機能的もしくは酵素的に不活性であるか、またはASXLタンパク質に結合することができないか、あるいはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、参照細胞における結合レベルと比較して、ASXLタンパク質への結合の減少を示すものである。実施例に記載されるように(図7dを参照のこと)、BAP1は、驚くべきことに、ASXL1、ASXL2、またはASXL3と複合体を形成することが示された。これらのタンパク質は、本明細書では一括して、ASXLタンパク質と称する。BAP1-ASXL複合体は、ヒストン2Aおよび他の基質を脱ユビキチン化することが示されている。この複合体の形成を阻害することにより、BAP1は機能しなくなるか、または酵素的に不活性になる。
【0011】
変異型BAP1タンパク質は、特定の遺伝子座に変異を有する全長タンパク質であり得る。変異型BAP1タンパク質は、野生型BAP1タンパク質の部分的もしくは完全な欠失もしくは変異であり得る。部分的な欠失もしくは変異は、核局在化配列(NLS)、野生型BAP1の活性部位、ASXLの結合部位、またはBAP1の機能の喪失をもたらすであろう遺伝子中の任意の場所で起こり得る。変異は、1つ以上の点変異を含み得る。点変異は、置換、挿入、欠失、またはフレームシフト変異であり得る。
【0012】
参照細胞における発現レベルと比較した、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少は、同じ参照細胞におけるタンパク質濃度と比較した、野生型BAP1タンパク質濃度の減少をもたらし得る。野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少は、参照細胞と比較して、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少であり得る。同様に、野生型BAP1タンパク質の濃度の減少は、参照細胞と比較して、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少であり得る。当業者であれば、BAP1遺伝子発現の減少またはBAP1タンパク質発現の減少の程度を検出する方法を知っているであろう。
【0013】
野生型BAP1タンパク質の発現の減少は、エピジェネティックサイレンシング(epigenetic silencing)、メチル化、または低レベルのBAP1遺伝子発現によって引き起こされる可能性がある。「非機能的BAP1タンパク質」という用語は、脱ユビキチン化酵素(酵素)活性を示さないBAP1タンパク質を指すことができるが、これに限定されない。当業者であれば、脱ユビキチン化酵素活性を測定するための標準的なアッセイには、ユビキチン-アミドメチルクマリンなどの蛍光発生基質を使用する蛍光アッセイ;および脱ユビキチン化活性を監視するためのモデル基質としてユビキチンエチルエステルまたはユビキチン融合ペプチドを使用するHPLCアッセイが含まれるが、これらに限定されないことを理解するであろう。
【0014】
一実施形態では、変異型BAP1遺伝子のアミノ酸配列(p.R60Q)は、本明細書では以下のように、配列番号4と呼ばれる。
【0015】
【化1】
【0016】
したがって、変異型BAP1タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4またはその断片もしくは変異体によってコードされ得る。
【0017】
一実施形態では、変異型BAP1遺伝子のヌクレオチド配列は、本明細書では以下のように、配列番号5と呼ばれる。
ATGAATAAGGGCTGGCTGGAGCTGGAGAGCGACCCAGGCCTCTTCACCCTGCTCGTGGAAGATTTCGGTGTCAAGGGGGTGCAAGTGGAGGAGATCTACGACCTTCAGAGCAAATGTCAGGGCCCTGTATATGGATTTATCTTCCTGTTCAAATGGATCGAAGAGCGCCGGTCCCGGCAAAAGGTCTCTACCTTGGTGGATGATACGTCCGTGATTGATGATGATATTGTGAATAACATGTTCTTTGCCCACCAGCTGATACCCAACTCTTGTGCAACTCATGCCTTGCTGAGCGTGCTCCTGAACTGCAGCAGCGTGGACCTGGGACCCACCCTGAGTCGCATGAAGGACTTCACCAAGGGTTTCAGCCCTGAGAGCAAAGGATATGCGATTGGCAATGCCCCGGAGTTGGCCAAGGCCCATAATAGCCATGCCAGGCCCGAGCCACGCCACCTCCCTGAGAAGCAGAATGGCCTTAGTGCAGTGCGGACCATGGAGGCGTTCCACTTTGTCAGCTATGTGCCTATCACAGGCCGGCTCTTTGAGCTGGATGGGCTGAAGGTCTACCCCATTGACCATGGGCCCTGGGGGGAGGACGAGGAGTGGACAGACAAGGCCCGGCGGGTCATCATGGAGCGTATCGGCCTCGCCACTGCAGGGGAGCCCTACCACGACATCCGCTTCAACCTGATGGCAGTGGTGCCCGACCGCAGGATCAAGTATGAGGCCAGGCTGCATGTGCTGAAGGTGAACCGTCAGACAGTACTAGAGGCTCTGCAGCAGCTGATAAGAGTAACACAGCCAGAGCTGATTCAGACCCACAAGTCTCAAGAGTCACAGCTGCCTGAGGAGTCCAAGTCAGCCAGCAACAAGTCCCCGCTGGTGCTGGAAGCAAACAGGGCCCCTGCAGCCTCTGAGGGCAACCACACAGATGGTGCAGAGGAGGCGGCTGGTTCATGCGCACAAGCCCCATCCCACAGCCCTCCCAACAAACCCAAGCTAGTGGTGAAGCCTCCAGGCAGCAGCCTCAATGGGGTTCACCCCAACCCCACTCCCATTGTCCAGCGGCTGCCGGCCTTTCTAGACAATCACAATTATGCCAAGTCCCCCATGCAGGAGGAAGAAGACCTGGCGGCAGGTGTGGGCCGCAGCCGAGTTCCAGTCCGCCCACCCCAGCAGTACTCAGATGATGAGGATGACTATGAGGATGACGAGGAGGATGACGTGCAGAACACCAACTCTGCCCTTAGGTATAAGGGGAAGGGAACAGGGAAGCCAGGGGCATTGAGCGGTTCTGCTGATGGGCAACTGTCAGTGCTGCAGCCCAACACCATCAACGTCTTGGCTGAGAAGCTCAAAGAGTCCCAGAAGGACCTCTCAATTCCTCTGTCCATCAAGACTAGCAGCGGGGCTGGGAGTCCGGCTGTGGCAGTGCCCACACACTCGCAGCCCTCACCCACCCCCAGCAATGAGAGTACAGACACGGCCTCTGAGATCGGCAGTGCTTTCAACTCGCCACTGCGCTCGCCTATCCGCTCAGCCAACCCGACGCGGCCCTCCAGCCCTGTCACCTCCCACATCTCCAAGGTGCTTTTTGGAGAGGATGACAGCCTGCTGCGTGTTGACTGCATACGCTACAACCGTGCTGTCCGTGATCTGGGTCCTGTCATCAGCACAGGCCTGCTGCACCTGGCTGAGGATGGGGTGCTGAGTCCCCTGGCGCTGACAGAGGGTGGGAAGGGTTCCTCGCCCTCCATCAGACCAATCCAAGGCAGCCAGGGGTCCAGCAGCCCAGTGGAGAAGGAGGTCGTGGAAGCCACGGACAGCAGAGAGAAGACGGGGATGGTGAGGCCTGGCGAGCCCTTGAGTGGGGAGAAATACTCACCCAAGGAGCTGCTGGCACTGCTGAAGTGTGTGGAGGCTGAGATTGCAAACTATGAGGCGTGCCTCAAGGAGGAGGTAGAGAAGAGGAAGAAGTTCAAGATTGATGACCAGAGAAGGACCCACAACTACGATGAGTTCATCTGCACCTTTATCTCCATGCTGGCTCAGGAAGGCATGCTGGCCAACCTAGTGGAGCAGAACATCTCCGTGCGGCGGCGCCAAGGGGTCAGCATCGGCCGGCTCCACAAGCAGCGGAAGCCTGACCGGCGGAAACGCTCTCGCCCCTACAAGGCCAAGCGCCAGTGA
[配列番号5]
したがって、変異型BAP1遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号5またはその断片もしくは変異体によってコードされ得る。
【0018】
ASXLタンパク質(ASXL1、ASXL2、またはASXL3)と野生型BAP1タンパク質との間の結合の減少または非結合は、野生型BAP1タンパク質とASXLタンパク質との間の結合が生じる参照細胞と比較して、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少であり得る。当業者であれば、ASXLタンパク質に結合する野生型BAP1タンパク質の減少の程度を検出する方法を知っているだろう。野生型BAP1タンパク質とASXLタンパク質との間の結合を測定するための標準的なアッセイとしては、タンパク質複合体免疫沈降法または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「DRL誘導性の細胞死(DRL-induced cell death)」という用語は、ネクロプトーシスおよび壊死のような細胞死受容体リガンド(DRL)によって引き起こされるアポトーシスおよび他の種類の細胞死を指し得るが、これらに限定されない。したがって、「細胞死受容体リガンド(death receptor ligand)」という用語は、細胞受容体に結合し、受容体が位置する細胞の死を誘導する任意の薬剤を指す。「細胞死」という用語は、細胞アポトーシス、壊死、およびネクロプトーシスを指すことができる。好ましくは、それは、細胞アポトーシスを指す。アポトーシスとは、アポトーシスシグナル伝達経路の活性化によって引き起こされるプログラムされた細胞死を指す。これは、DRLの細胞死受容体への結合を通して達成することができる。細胞死受容体リガンドは、TRAIL、TNFアルファ、FASリガンド(FASL)、組換えTRAIL(デュラネルミン)、細胞死受容体に対する抗体、特にリガンドTRAILの細胞死受容体に対する抗体(マパツムアブ、ドロジツムマブ、コナツムマブ、レキサツムマブ、チガツズマブ、LBY-135など)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0020】
DRLは、Medi-3039などのアゴニスト分子、またはアポトーシスシグナル伝達経路を活性化する任意の薬剤であり得る。外因性アポトーシスシグナル伝達経路は、FASリガンド経路、TNFアルファ経路、またはTRAIL経路であり得る。
【0021】
「発現(された)」または「発現」という用語は、転写された遺伝子(すなわち、DNA)、またはポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳された対応するRNAを指すことができる。BAP1変異遺伝子もしくはBAP1ポリペプチドの発現は、細胞の任意の区画中に(例えば、核、細胞質ゾル、小胞体、ゴルジ装置、または原形質膜の細胞内表面中に)検出され得る。
【0022】
第1の態様の(i)、(ii)、または(iii)に従って検出することは、試料中の遺伝子もしくはその対応するタンパク質の存在を検出するための以下のアッセイ:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);ノーザンブロッティング;ハイブリダイゼーションに基づく検出技術;フローサイトメトリー;酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、酵素免疫検定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット、免疫沈降、もしくは免疫組織化学などの免疫検定法;免疫蛍光法;発色(酵素活性)アッセイ;蛍光測定画像化プレートリーダー(FLIPR)アッセイ;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)タンデム質量分析法(MS/MS)のうちのいずれか1つの使用を含み得る。
【0023】
生物学的試料は、好ましくは、試験個体から採取された癌性の身体試料である。したがって、試料中のBAP1変異遺伝子または変異型BAP1タンパク質の存在の検出は、好ましくはインビトロで実施される。試料は、組織、血液、血漿、血清、髄液、尿、汗、唾液、痰、涙液、乳房吸引液、前立腺液、精液、膣液、糞便、頸部掻爬、羊水、眼内液、粘液、呼気中の水分、動物組織、細胞溶解物、腫瘍組織、髪の毛、皮膚、頬側掻き取り、爪、骨髄、軟骨、プリオン、骨粉、耳垢、またはそれらの組み合わせを含み得る。試料は、生検であり得る。
【0024】
別の実施形態では、試料は、実験動物(例えば、マウスもしくはラット)またはヒトであり得る、試験対象内に含有されてもよく、この方法は、インビボに基づく試験である。代替的に、試料は、エクスビボ試料またはインビトロ試料であり得る。したがって、試験される細胞は、組織試料中に存在し得るか(エクスビボに基づく試験のために)、または細胞は、培養中で増殖され得る(インビトロ試料)。好ましくは、生物学的試料は、エクスビボ試料である。
【0025】
本発明者らは、DRL誘導性の細胞死に対する対象の感受性または別様を判定するための予測キット(prognostic kit)を開発した。
【0026】
第2の態様によると、個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があるかどうかを判定するためのキットであって、変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質の発現を検出するための、またはDRL誘導性の細胞死に耐性がある参照細胞における発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較した、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少を検出するための、またはDRL誘導性の細胞死に耐性があるBAP1野生型細胞である参照細胞における結合レベルと比較した、ASXLタンパク質のBAP1タンパク質への非結合もしくは結合の減少を検出するための、検出手段を備え、試料中の、変異型BAP1遺伝子もしくはBAP1タンパク質の、または野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少の存在、あるいは野生型BAP1タンパク質へのASXLタンパク質の結合の減少もしくは非結合が、個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に感受性があることを示している、キットを提供する。
【0027】
好ましくは、キットを使用して、細胞死受容体リガンド(DRL)またはアポトーシス経路を活性化する任意の薬剤で治療されている個体の予後を提供する。細胞死受容体リガンドは、TRAIL、TNFアルファ、FASリガンド(FASL)、組換えTRAIL(デュラネルミン)、細胞死受容体抗体(マパツムアブ、ドロジツムマブ、コナツムマブ、レキサツムマブ、チガツズマブなど)、Medi-3038またはMedi-3039などの細胞死受容体アゴニスト、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0028】
好ましくは、キットは、少なくとも1つの対照または参照試料を含む。キットは、陰性対照および/または陽性対照を含み得る。陰性対照は、DRL誘導性の細胞死に耐性がある野生型BAP1タンパク質を含み得る。陽性対照は、変異型BAP1 mRNA、または変異型BAP1タンパク質、またはブランク試料を含み得る。当業者であれば、試料中のmRNAのレベルが細胞中の遺伝子発現のレベルを示していることを理解するであろう。
【0029】
検出手段は、好ましくは、試験個体から採取された生物学的試料中の変異型BAP1タンパク質もしくはmRNA、または野生型BAP1 mRNAもしくはBAP1タンパク質の発現または濃度を検出するように構成される。試料中の、変異型BAP1 mRNAもしくは変異型BAP1タンパク質の存在、または対照に対する野生型BAP1 mRNAの発現レベルの減少もしくはタンパク質発現の減少は、試験試料がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があることを示している。生物学的試料中の野生型BAP1 mRNAの発現レベルもしくはBAP1タンパク質の濃度は、陰性対照における野生型BAP1 mRNAもしくはタンパク質の濃度もしくは発現レベルと比較して、減少または低下し得る。発現の減少は、陰性対照と比較して、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少であり得る。同様に、生物学的試料中の野生型BAP1タンパク質の濃度は、少なくとも10%、15%、25%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少し得る。逆に、試料中の、変異型BAP1遺伝子もしくはタンパク質の不存在、または野生型BAP1遺伝子もしくはタンパク質の正常~高い発現は、試料がDRL誘導性の細胞死に対して感受性がないことを示している。
【0030】
BAP1遺伝子またはタンパク質における変異の検出は、数多くの配列判定アプローチを使用して達成され得る。1つのアプローチでは、全エクソームまたは標的遺伝子配列判定は、市販のRNAベイトを使用して濃縮された標的遺伝子を有する腫瘍DNAの大規模並列配列判定を用いて行われる。
【0031】
別の実施形態では、BAP1遺伝子フットプリント内のエクソンの各々に対して設計されたPCRプライマーを用いてキャピラリー配列判定アプローチを利用する。したがって、検出手段は、プライマーであり得る。
【0032】
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン12(chr3:52438255~52438817F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号6と呼ばれる。
acctagaacctggtagccttag
[配列番号6]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン8(chr3:52440631~52441138F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号7と呼ばれる。
gtacagctccagagagtagaac
[配列番号7]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン1(chr3:52443644~52444094F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号8と呼ばれる。
tcttaccgaaatcttccacgag
[配列番号8]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン3(chr3:52443356~52443839F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号9と呼ばれる。
ctgctgctttctgtgagatttt
[配列番号9]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン6(chr3:52436404~52436905F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号10と呼ばれる。
agggcattccagttaagacag
[配列番号10]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン17(chr3:52436105~52436652F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号11と呼ばれる。
caagagtgggctgcagag
[配列番号11]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン6(chr3:52441201~52441691F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号12と呼ばれる。
actaaggccattctgcttctc
[配列番号12]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン4(chr3:52442276~52442837F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号13と呼ばれる。
atcccaccctccaaacaaag
[配列番号13]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン13a(chr3:52437218~52437786F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号14と呼ばれる。
caccaagtggccagtgag
[配列番号14]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン13b(chr3:52437388~52437956F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号15と呼ばれる。
ggctgtcatcctctccaaaa
[配列番号15]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン13c(chr3:52437558~52438125F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号16と呼ばれる。
gagggctgcgagtgtgtg
[配列番号16]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン14(chr3:52436940~52437529F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号17と呼ばれる。
ctctgccaggattaaaggagaa
[配列番号17]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン9(chr3:52440055~52440607F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号18と呼ばれる。
gaatgcagggagggttgg
[配列番号18]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン5(chr3:52441760~52442308F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号19と呼ばれる。
acccaatatcatgtggtagcat
[配列番号19]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン2(chr3:52443516~52443974F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号20と呼ばれる。
aaggacagcccctgatga
[配列番号20]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン7(chr3:52440976~52441547F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号21と呼ばれる。
gtaggcagagacacccaac
[配列番号21]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン15(chr3:52436581~52437102F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号22と呼ばれる。
ccttctctggtcatcaatctgt
[配列番号22]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン10(chr3:52439567~52440143F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号23と呼ばれる。
ctctgaggtccacaagaggt
[配列番号23]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン11(chr3:52438912~52439525F)を検出するために使用されるフォワードプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号24と呼ばれる。
tcaagtagagaatcctgcaagg
[配列番号24]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン12(chr3:52438255~52438817R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号25と呼ばれる。
gagcagcacttgtttgtaactg
[配列番号25]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン8(chr3:52440631~52441138R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号26と呼ばれる。
ctcaactgctcttctctgtctt
[配列番号26]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン1(chr3:52443644~52444094R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号27と呼ばれる。
gagggagggcctggacat
[配列番号27]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン3(chr3:52443356~52443839R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号28と呼ばれる。
ctgtccttccctactgctttc
[配列番号28]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン16(chr3:52436404~52436905R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号29と呼ばれる。
gaagttcaaggtgggtgatttc
[配列番号29]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン17(chr3:52436105~52436652R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号30と呼ばれる。
ctcagctcctggcctgag
[配列番号30]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン6(chr3:52441201~52441691R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号31と呼ばれる。
ggagaaattattctgatacggcc
[配列番号31]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン4(chr3:52442276~52442837R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号32と呼ばれる。
gaagggaatgctgattgtcttc
[配列番号32]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン13a(chr3:52437218~52437786R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号33と呼ばれる。
ctatccgctcagccaacc
[配列番号33]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン13b(chr3:52437388~52437956R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号34と呼ばれる。
ctctcaattcctctgtccatca
[配列番号34]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン13c(chr3:52437558~52438125R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号35と呼ばれる。
cgttcccttgcttcacatct
[配列番号35]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン14(chr3:52436940~52437529R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号36と呼ばれる。
tcctgcactctgatgattttct
[配列番号36]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン9(chr3:52440055~52440607R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号37と呼ばれる。
gatatctgcctcaacctgatgg
[配列番号37]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン5(chr3:52441760~52442308R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号38と呼ばれる。
gtgctgtgtatgggtgacta
[配列番号38]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン2(chr3:52443516~52443974R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号39と呼ばれる。
gaagatgaataagggctggct
[配列番号39]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン7(chr3:52440976~52441547R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号40と呼ばれる。
tgatgtggggtgggagtag
[配列番号40]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン15(chr3:52436581~52437102R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号41と呼ばれる。
cccgatcagaggtgcaat
[配列番号41]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン10(chr3:52439567~52440143R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号42と呼ばれる。
agctatttaaggtagaagcccg
[配列番号42]
一実施形態では、野生型BAP1 mRNAのエクソン11(chr3:52438912~52439525R)を検出するために使用されるリバースプライマーの核酸配列は、本明細書では以下のように、配列番号43と呼ばれる。
actgtgagcttttcttggagat
[配列番号43]
当業者であれば、ASXLタンパク質の野生型BAP1タンパク質への結合は、タンパク質複合体免疫沈降、二分子蛍光相補、アフィニティー電気泳動、免疫電気泳動、化学架橋、近接ライゲーションアッセイ、およびFRETを含む、当該技術分野において知られている様々な技術を使用して達成され得ることを認識するであろう。
【0033】
本発明者らは、彼らの知見(すなわち、変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質を含有する細胞、または野生型BAP1遺伝子の減少したレベルを発現する細胞、またはBAP1タンパク質の濃度が減少した細胞は、DRL誘導性の細胞死に対して感受性がある)は、それらがDRL誘導性の細胞死に対する感受性についての頑健なバイオマーカーを同定したことを意味すると考えている。
【0034】
したがって、本発明の第3の態様では、DRL誘導性の細胞死に対して感受性があるバイオマーカーとしての、(i)変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質、または(ii)BAP1野生型細胞である参照細胞における発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較して、野生型BAP1遺伝子の発現レベルが減少したもしくは野生型BAP1タンパク質濃度が減少した癌細胞の使用を提供する。
【0035】
本発明者らは、癌に罹患している対象、特に細胞死受容体リガンド誘導性の細胞死に対して完全にまたは部分的に感受性がない癌に罹患している対象を治療する方法を開発した。
【0036】
したがって、第4の態様では、癌に罹患している個体を治療する方法であって、
(i)変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質の存在、またはDRL誘導性の細胞死に耐性があるBAP1野生型細胞である参照細胞における発現レベルもしくはタンパク質濃度と比較した、野生型BAP1遺伝子の発現レベルの減少もしくは野生型BAP1タンパク質濃度の減少、あるいはDRL誘導性の細胞死に耐性がある、BAP1野生型細胞である参照細胞における結合レベルと比較した、野生型BAP1タンパク質に対するASXLタンパク質の結合の減少もしくは非結合を検出することと、
(ii)治療有効量の細胞死受容体リガンドを個体に投与することと、を含む、方法を提供する。
【0037】
細胞死受容体リガンドは、単剤療法として、または癌細胞を殺傷することができる他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0038】
「対象」または「個体」は、脊椎動物、哺乳動物、または家畜であり得る。したがって、本発明による医薬品は、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ)、ペットを治療するために使用することができる、または他の獣医学的用途に使用することができる。最も好ましくは、対象は、ヒトである。
【0039】
前述の通り、中皮腫細胞は、細胞死の誘導に耐性がある。コア細胞死機構のこの破壊は、一般に臨床的に観察されている従来の細胞傷害剤に対する耐性における関係が示唆されている。細胞死機構の破壊は、IAP(アポトーシスの阻害剤)ファミリーまたはBCL-2ファミリーのメンバーなどの抗細胞死タンパク質の発現の上昇を通して下流で媒介されると考えられている。IAPファミリーは、8つのメンバー(BIRC2、BIRC3、BIRC5、BIRC6、BIRC7、BIRC8、NAIP、XIAP)からなる。IAPタンパク質の明確な特徴としては、タンパク質-タンパク質の相互作用を媒介する約70アミノ酸のバキュロウイルスIAPリピート(baculovirus IAP repeat)(BIR)ドメインの存在がある(12)。これらのドメインを通して、IAPメンバーは、細胞死の主な執行者であるカスパーゼの内因性阻害剤として作用し、カスパーゼ分解の直接カスパーゼ阻害またはユビキチン媒介調整のいずれかを通して作用する(13)。
【0040】
本発明者らは、BAP1 shRNA発現レンチウイルスを使用して中皮腫細胞株においてBAP1遺伝子発現を減少させることができ、このBAP1遺伝子発現の減少により、これらの細胞株におけるDLR誘導性の細胞死に対する感受性が増加することを実証した。したがって、本発明者らは、BAP1阻害剤を投与することによって、DRL誘導性の細胞死に通常は感受性がない癌に罹患している個体を、DRL誘導性の細胞死に対して感受性をもつ(sensitise)ようにさせることが可能であると判定した。
【0041】
したがって、本発明の第5の態様では、以下の方法:
DRL誘導性の細胞死に対して感受性がない癌に罹患している個体を、DRL誘導性の細胞死に対して感受性をもつ(sensitise)ようにさせる方法、または
DRL誘導性の細胞死に対して感受性がある癌に罹患している個体におけるDRL誘導性の細胞死に対する感受性を増強させる方法であって、
前記方法が、BAP1阻害剤もしくはBAP1阻害の効果を模倣する薬剤を個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0042】
したがって、BAP1阻害剤は、BAP1遺伝子またはタンパク質を直接標的とする任意の薬剤であり、BAP1阻害の効果を模倣する薬剤は、BAP1遺伝子/タンパク質シグナル伝達経路の下流のシグナル伝達分子を標的とする分子である。
【0043】
BAP1阻害剤は、脱ユビキチン化酵素阻害剤もしくはアンタゴニストなどのBAP1タンパク質機能を不活性化する、またはBAP1遺伝子もしくはタンパク質の発現もしくは機能を沈黙もしくは減少させる(BAP1の小分子阻害剤など)、または野生型BAP1タンパク質のASXLタンパク質への結合を防止もしくは減少させる、任意の分子であり得る。BAP1阻害剤または薬剤はまた、野生型BAP1遺伝子を変異させて、変異型BAP1遺伝子を創成する任意の分子であり得る。したがって、BAP1阻害剤もしくは薬剤は、shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含む、RNAi分子;TALEN(転写活性化剤様エフェクターヌクレアーゼ(Transcriptional Activator Like-Effector Nuclease));またはCRISPR/CAS9ヌクレアーゼであり得る。本発明者らは、以下の実施例において、レンチウイルスを発現するshRNAを使用して、中皮腫細胞株においてBAP1遺伝子発現を減少させることができ、このBAP1遺伝子発現の減少が、これら細胞株におけるDLR誘導性の細胞死に対する感受性の増大をもたらすことを実証した。
【0044】
BAP1阻害剤に加えて、BAP1阻害の効果を模倣する薬剤は、BAP1の下流のシグナル伝達分子またはエフェクター分子を標的とする薬剤であり、このような薬剤は、癌細胞においてDLR耐性を誘導するために使用され得る。一実施形態では、BAP1阻害剤は、IAP阻害剤(SMAC模倣物)であり得る。IAPは、BIRC2、BIRC3、BIRC5、BIRC6、BIRC7、BIRC8、NAIP、XIAP、またはそれらの断片であり得る。本発明者らは、BAP1発現がBIRC3タンパク質の発現を増加させること、およびLCL161などのIAP阻害剤によるBIRC3タンパク質の阻害により、DRL誘導性の細胞死に対する感受性をもたらすことを見出した。IAP阻害剤は、IAPの発現もしくは翻訳を減少させるか、またはIAPを機能的に不活性にする、薬剤である。IAP阻害剤もしくは薬剤はまた、IAP遺伝子もしくはタンパク質を変異させて、変異型IAP遺伝子もしくはタンパク質を創成する、任意の分子であり得る。したがって、IAP1阻害剤もしくは薬剤は、shRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、およびアンチセンス分子を含むRNAi分子;TALEN(転写活性化剤様エフェクターヌクレアーゼ);またはCRISPR/CAS9ヌクレアーゼであり得る。BAP1阻害の効果を模倣する薬剤は、YK-4279などのRNAヘリカーゼ阻害剤、またはソラフェニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤であり得る。
【0045】
本発明者らは、それらの驚くべき観察(すなわち、BAP1がDRL誘導性の癌細胞の細胞死の調整において役割を果たす)を使用して、BAP1の変異体を含む任意の癌の治療のための新規の標的アプローチを開発することができる。
【0046】
したがって、本発明の第6の態様では、(i)BAP1阻害剤もしくはBAP1阻害の効果を模倣する薬剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含む、組成物を提供する。
【0047】
第7の態様では、治療に使用するための、または医薬品として使用するための、(i)BAP1阻害剤もしくはBAP1阻害の効果を模倣する薬剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含む、組成物を提供する。
【0048】
第8の態様では、癌の治療、予防、または改善に使用するための、(i)BAP1阻害剤もしくはBAP1阻害の効果を模倣する薬剤、および(ii)細胞死受容体リガンドを含む、組成物を提供する。
【0049】
第9の態様では、癌に罹患している個体を治療、予防、または改善する方法であって、治療有効量の第6の態様の組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0050】
BAP1阻害剤もしくはBAP1阻害の効果を模倣する薬剤、および細胞死受容体リガンドは、同時に投与され得る、またはBAP1阻害剤は、細胞死受容体リガンドの前に投与され得る。
【0051】
BAP1阻害剤の投与は、最初に、DRL誘導性の細胞死に対して対象を感作させることが理解されるだろう。次に、細胞死受容体リガンドの投与は、癌性細胞において細胞死を誘導するために効果的に使用され得る。
【0052】
好ましくは、BAP1阻害剤は、脱ユビキチン化酵素阻害剤もしくはアンタゴニストなどのBAP1タンパク質機能を不活性化する、またはBAP1遺伝子転写もしくはBAP1タンパク質発現を沈黙もしくは減少させるか、または野生型BAP1遺伝子を変異させて、BAP1変異遺伝子およびタンパク質を創成する、任意の分子もしくはアプローチである。BAP1阻害剤は、WP1130、Usp9x、Usp5、Usp14、Usp24、UCH37、b-AP15、CRISPR/CAS9、またはBAP1の小分子阻害剤であり得る。
【0053】
好ましい細胞死受容体リガンドは、TRAIL、TNFアルファ、FASリガンド(FASL)、組換えTRAIL(デュラネルミン)、細胞死受容体抗体(マパツムアブ、ドロジツムマブ、コナツムマブ、レキサツムマブ、チガツズマブ、LBY-135など)、またはMedi 3038もしくはMedi 3039などの細胞死受容体アゴニスト、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0054】
中皮腫(または悪性胸膜中皮腫)は、体の内臓のうちの多くを覆っている保護粘膜層である、中皮の細胞から発生するまれな形態の癌である。中皮腫の最も一般的な解剖学的部位は、胸膜(肺の外側の内層と胸部の内壁)であるが、腹膜(腹腔の内層)、心膜(心臓を囲む嚢)、または精巣鞘膜(精巣を囲む嚢)にも発生し得る。したがって、本発明の任意の態様に従って治療され得る癌は、中皮腫、悪性胸膜中皮腫、ブドウ膜黒色腫、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、腎臓癌、胆管癌、肺癌、胸膜癌、腹部癌、腹膜癌、心膜癌、頭頸部癌、脳腫瘍、乳癌、肝臓および胆道癌、上部管および下部管を含む胃腸癌、尿路上皮癌、前立腺癌、精巣癌、精巣鞘膜癌、卵巣癌、子宮頸癌、肉腫、リンパ腫、ならびに白血病から選択され得る。
【0055】
より好ましくは、治療される癌は、中皮腫である。最も好ましくは、治療される癌は、アスベスト誘導性癌である。
【0056】
本発明による組成物は、特に組成物の使用方法に応じて、多数の異なる形態を有し得る。したがって、例えば、組成物は、粉末剤、錠剤、カプセル剤、液剤、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液、または治療を必要とするヒトもしくは動物に投与され得る任意の他の好適な形態であり得る。本発明による医薬品のビヒクルは、それが与えられる対象によって良好な忍容性が示されるものでなければならないことが理解されるであろう。
【0057】
本発明による組成物は、数多くの方法で使用することができる。例えば、経口投与が必要とされる場合があり、その場合、薬剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、または液剤の形態で経口摂取され得る組成物内に含有され得る。本発明の薬剤を含む組成物は、吸入(例えば、鼻腔内)によって投与されてもよい。組成物はまた、局所使用のためにも製剤化され得る。例えば、クリームまたは軟膏が、皮膚に塗布されてもよい。
【0058】
本発明による薬剤もしくは組成物はまた、徐放型もしくは遅延型放出デバイス内に組み込まれ得る。そのようなデバイスは、例えば、皮膚の上もしくは下に挿入されてもよく、医薬品は、数週間もしくは数ヶ月にわたって放出され得る。デバイスは、少なくとも治療部位に隣接して配置され得る。そのようなデバイスは、本発明に従って使用される薬剤による長期治療が必要とされ、通常頻繁な投与を必要とするであろう(例えば、少なくとも毎日の注射)場合に、特に有益であり得る。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明による組成物および薬剤は、血流中への注射または治療を必要とする部位への直接注射によって対象に投与され得る。例えば、医薬品は、少なくとも感受性細胞に隣接して、または腫瘍内に注射することができる。注射は、静脈内(ボーラスもしくは注入)、または皮下(ボーラスもしくは注入)、または皮内(ボーラスもしくは注入)であり得る。
【0060】
必要とされる組成物および薬剤の量は、その生物学的活性および生物学的利用能によって判定され、次に、投与方法、モジュレーターの生理化学的特性、およびそれが単独療法としてまたは組み合わせ療法において使用されるかどうかに応じて判定されることが理解されるであろう。投与頻度はまた、治療される対象内のBAP1阻害剤およびDRLの半減期によっても影響されるだろう。投与される最適投与量は、当業者によって判定されてよく、使用中の特定の薬剤、薬学的組成物の強度、投与方法、および癌の進行によって変わるだろう。対象の年齢、体重、性別、食事、および投与時間を含む、治療される特定の対象に応じたさらなる要因は、投与量を修正する必要性をもたらすであろう。
【0061】
一般に、どの薬剤を使用するかに応じて、0.01μg/kg体重~500mg/kg体重という本発明による薬剤(例えば、阻害剤もしくはDRL)の1日用量が、癌を治療、改善、または予防するために使用され得る。より好ましくは、1日用量が、0.01mg/kg体重~400mg/kg体重であり、より好ましくは、0.1mg/kg体重~200mg/kg体重であり、最も好ましくは、約1mg/kg体重~100mg/kg体重である。
【0062】
組成物もしくは薬剤(複数可)は、癌の発症前、発症中、または発症後に投与することができる。1日用量は、単回投与(例えば、1日1回の注射)として与えられてもよい。代替的に、薬剤は、1日に2回以上の投与を必要とし得る。一例として、薬剤は、25mg~7000mg(すなわち、70kgの体重と仮定)の1日用量を2回(または治療される疾患の重症度によってはそれ以上)投与され得る。治療を受けている患者は、起床時に最初の用量を服用し、次に、夕方に(2回投与計画の場合)またはその後3~4時間間隔で2回目の用量を服用し得る。代替的に、徐放放出デバイスを使用して、反復用量を投与する必要なく、本発明による薬剤の最適用量を患者に提供してもよい。
【0063】
製薬業界によって従来用いられるもの(例えば、インビボ実験、臨床試験など)などの既知の手順を使用して、本発明による薬剤を含む特定の製剤および(薬剤の1日用量および投与頻度などの)厳密な治療計画を形成することができる。本発明者らは、細胞死受容体誘導性の細胞死に対して対象を感作させるためのBAP1阻害剤、および細胞死受容体を発現し、かつ以前は細胞死受容体誘導性の細胞死に対して感受性がなかった細胞の細胞死を誘導する、細胞死受容体リガンドの使用に基づいて、癌を治療するための薬学的組成物を最初に記載していると考える。
【0064】
第10の態様によると、第6の態様による組成物と薬学的に許容されるビヒクルとを含む薬学的組成物を提供する。
【0065】
第11の態様によると、治療有効量のBAP1阻害剤またはBAP1阻害の効果を模倣する薬剤および細胞死受容体リガンドと、薬学的に許容されるビヒクルとを接触させることを含む、第10の態様による薬剤組成物を調製するための方法を提供する。
【0066】
BAP1阻害剤の「治療有効量」は、対象に投与されたときに、個体の細胞を細胞死受容体誘導性の細胞死に対して感作させるのに必要な量である。細胞死受容体リガンドの「治療有効量」は、対象に投与されたときに、癌を治療するか、または所望の効果を生成するのに必要な量である。
【0067】
例えば、使用される活性薬剤(すなわち、BAP1阻害剤および細胞死受容体リガンド)の治療有効量は、約0.01mg/kg体重~約800mg/kgであり得、好ましくは、約0.01mg~約500mgであり得る。薬剤の量は、約0.1mg~約250mgの量であることが好ましく、最も好ましくは、約0.1mg/kg体重~約20mg/kg体重である。
【0068】
本明細書で言及される「薬学的に許容されるビヒクル」は、薬学的組成物を製剤化するのに有用であることが当業者に知られている、任意の既知の化合物または既知の化合物の組み合わせである。
【0069】
一実施形態では、薬学的に許容されるビヒクルは、固体であってよく、組成物は、粉末剤または錠剤の形態であってよい。固体の薬学的に許容されるビヒクルは、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、染料、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味剤、防腐剤、染料、コーティング剤、または錠剤崩壊剤としても作用し得る、1つ以上の物質を含み得る。ビヒクルは、封入材料でもあり得る。粉末剤では、ビヒクルは、本発明による微粉化活性剤と混合されている微粉化固体である。錠剤では、活性剤(例えば、ペプチド、抗体、DRL、またはBAP1阻害剤)を、必要な圧縮特性を有するビヒクルと好適な割合で混合し、所望の形状およびサイズに小型化することができる。粉末剤および錠剤は、好ましくは、最大99%の活性剤を含有する。好適な固体ビヒクルとしては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施形態では、薬学的ビヒクルは、ゲルであってもよく、組成物は、クリームなどの形態であってよい。
【0070】
しかしながら、薬学的ビヒクルは、液体であってもよく、薬学的組成物は、溶液の形態である。液体ビヒクルは、液剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ剤、エリキシル剤、および加圧組成物を調製するのに使用される。本発明による活性剤は、水、有機溶媒、それらの両方の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪などの薬学的に許容される液体ビヒクル中に溶解もしくは懸濁することができる。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定化剤、または浸透圧調整剤などの他の好適な薬学的添加剤を含有することができる。経口および非経口投与のための液体ビヒクルの好適な例には、水(上記の添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分別ヤシ油および落花生油)が含まれる。非経口投与の場合、ビヒクルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルでもあり得る。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与用の滅菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される推進剤であり得る。
【0071】
滅菌溶液または懸濁液である、液体薬学的組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、および特に皮下注射によって利用することができる。組成物もしくは抗体は、滅菌水、食塩水、もしくは他の適切な滅菌注射用媒体を使用して、投与時に溶解または懸濁することができる滅菌固体組成物として調製することができる。
【0072】
本発明の薬剤および組成物は、他の溶質もしくは懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な食塩水もしくはグルコース)、胆汁酸塩、アカシアゴム、ゼラチン、ソルビタンモノレート、ポリソルベート80(ソルビトール及びその無水物のオレイン酸エステとエチレンオキシドと共重合したもの)などを含有する、滅菌溶液もしくは懸濁液の形態で経口投与され得る。本発明による薬剤もしくは組成物は、液体もしくは固体のいずれかの組成物の形態で経口投与することもできる。経口投与に好適な組成物および薬剤には、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤、および粉末剤などの固体形態、ならびに液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液などの液体形態が含まれる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、乳剤、および懸濁液が挙げられる。
【0073】
本発明は、実質的に本明細書で言及される配列のうちのいずれかのアミノ酸もしくは核酸配列(その変異体または断片を含む)を含む、あらゆる核酸もしくはペプチドまたはその変異体、誘導体もしくは類似体に及ぶことが理解されるであろう。「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「変異体」および「断片」という用語は、本明細書で言及される配列のうちのいずれか1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性、例えば、配列番号3または4として同定されるポリペプチドと40%の同一性などを有する配列であり得る。
【0074】
言及される配列のうちのいずれかに対して、50%よりも大きい、より好ましくは、65%よりも大きい、70%よりも大きい、75%よりも大きい、さらにより好ましくは、80%よりも大きい配列同一性を有する、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列もまた、想定される。好ましくは、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、言及される配列のうちのいずれかと少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、最も好ましくは、本明細書で言及される配列のうちのいずれかと少なくとも99%の同一性を有する。
【0075】
当業者であれば、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性百分率を計算する方法を理解するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性百分率を計算するためには、最初に、2つの配列のアライメントを調製し、続いて配列同一性値を計算しなければならない。2つの配列についての同一性百分率は、以下:(i)配列を整列させるために使用される方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(異なるプログラムで実施される)、または3D比較による構造的アライメント;ならびに(ii)アライメント方法によって使用されるパラメータ、例えば、ローカル対グローバルアライメント、使用されるペア-スコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、およびギャップペナルティ、例えば、機能形式および定数に応じて異なる値を取り得る。
【0076】
アライメントをしたので、2つの配列間の同一性百分率を計算するための多くの異なる方法がある。例えば、同一性の数を次のもの:(i)最短配列の長さ;(ii)アライメントの長さ;(iii)配列の平均長さ、(iv)非ギャップ位置の数、または(iv)オーバーハングを除いた同値位置の数で割ることができる。さらに、同一性百分率もまた、長さに強く依存することが理解されるであろう。したがって、一対の配列が短いほど、偶然に起こると予想され得る配列同一性が高くなる。したがって、タンパク質またはDNA配列の正確なアライメントは、複雑なプロセスであることが理解されるであろう。一般的なマルチプルアライメントプログラムClustalW(Thompsonら、1994年、Nucleic Acids Research、22、4673~4680;Thompsonら、1997年、Nucleic Acids Research、24、4876~4882)は、本発明によるタンパク質またはDNAのマルチプルアライメントを生成するための好ましい方法である。ClustalWの好適なパラメータは、以下の通りであり得る:DNAアライメントについて:ギャップオープンペナルティ=15.0、ギャップエクステンションペナルティ=6.66、およびマトリックス=同一性。タンパク質アライメントについて:ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップエクステンションペナルティ=0.2、およびマトリックス=Gonnet。DNAおよびタンパク質アライメントについて:ENDGAP=-1、およびGAPDIST=4。当業者であれば、最適な配列アライメントのために、これらおよび他のパラメータを変えることが必要であり得ることを認識しているだろう。好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性百分率の計算は、(N/T)*100のようなアライメントから計算することができ、ここでNは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含むがオーバーハングを除く、比較された位置の総数である。したがって、2つの配列間の同一性百分率を計算するための最も好ましい方法は、(i)例えば、上述のような好適なパラメータのセットを使用して、ClustalWプログラムを使用した配列アライメントを準備することと、(ii)NおよびTの値を以下の式:配列同一性=(N/T)*100に挿入することと、を含む。
【0077】
類似の配列を同定するための代替方法は、当業者に知られているであろう。例えば、実質的に類似のヌクレオチド配列は、本明細書で言及される任意の配列またはそれらの相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列によってコードされるであろう。ストリンジェントな条件とは、ヌクレオチドが、3倍の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中に約45℃でフィルタ結合DNAまたはRNAとハイブリダイズし、続いて、0.2倍のSSC/0.1%SDS中に約20~65℃で少なくとも1回洗浄することを意味する。代替的に、実質的に類似のポリペプチドは、配列番号3または4に示される配列と少なくとも1つ、しかし5、10、20、50、または100個未満のアミノ酸だけ異なり得る。
【0078】
遺伝暗号の縮重のために、それによってコードされるタンパク質の配列に実質的に影響を及ぼすことなく、本明細書に記載の任意の核酸配列を、変えるかまたは変更して、その変異体を提供することができるであろうことは明らかである。好適なヌクレオチド変異体は、配列内の同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって改変された配列を有するものであり、したがってサイレント変化を生成する。他の好適な変異体は、相同なヌクレオチド配列を有するが、それが置換するアミノ酸と類似の生物物理学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって改変されて保存的な変化を生成する、配列の全部または一部を含むものである。例えば、小さな非極性の疎水性アミノ酸には、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが含まれる。大きな非極性の疎水性アミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが含まれる。極性中性アミノ酸には、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正荷電(塩基性)アミノ酸には、リシン、アルギニン、およびヒスチジンが含まれる。負帯電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。したがって、どのアミノ酸が類似の生物物理学的特性を有するアミノ酸と置換され得るかが理解され、当業者であれば、これらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知っているであろう。
【0079】
本明細書に記載される特徴のうちの全て(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップのうちの全ては、そのような特徴および/もしくはステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで上記態様のうちのいずれかと組み合わせされ得る。
【0080】
本発明をよりよく理解するために、また本発明の実施形態が実施され得る方法を示すために、添付の図面を、これより例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1A図1Aは、異なる悪性胸膜中皮腫(MPM)細胞株における様々な種類の変異を示す。
図1B図1Bは、BAP1機能喪失変異の濃縮のためのTCGAエクソームの分析である。
図1C図1Cは、5180個のTCGAエクソームから注釈を付けられた変異を有するBAP1遺伝子エクソンの概略図である。
図2A図2Aは、MPMにおける薬物とゲノムとの相互作用を示すボルケーノプロット(volcano plot)である。ボルケーノプロットは、92個のライブラリー化合物についての遺伝子型による平均デルタAUCを表示する。Y軸は、修正されたp値を表し、X軸は、効果の大きさを表す。円のサイズは、試験されたコホートにおける変異体株の数を示す。
図2B図2Bは、複数の中皮腫細胞株(n=19)についての6日間生存率アッセイの結果を示すヒストグラムである。rTRAIL(40ng/ml)。Met 5aは、中皮の正常対照株である。
図2C図2Cは、BAP1変異状態によって離散化された(discretized)細胞株における、40ng/mlのrTRAIL(DMSO処理対照に対して正規化された)に反応した6日間生存率アッセイ後のAUCを示す散布プロットである。BAP1変異状態は、rTRAILに対する反応と有意に相関している。両側t検定(two-tailed t-test)、p=0.015。
図3A図3Aは、様々なMPM細胞株をrTRAILで処理した生存率アッセイの結果を示す。MPM細胞株を、0.5ng/ml~100ng/mlの用量範囲で処理し、細胞生存率をSyto-60アッセイを使用して測定した。それらの細胞生存率に基づいて、細胞株を、耐性(赤)、部分的感受性(橙色)、および感受性(緑)に分類した。細胞株を、ウエスタンブロットして、BAP1タンパク質発現の発現を調べた。
図3B図3Bは、様々なMPM細胞株をrTRAILで処理した生存率アッセイの結果を示す。3つのBAP1野生型細胞株(MPP-89、H2869およびH2818)および4つのBAP1変異型細胞株(H2722、H2461、H28、およびH2731)を、TRAIL(0~1000ng/ml)で24時間処理し、細胞の死亡率をアネキシンV/DAPI細胞死アッセイを使用して定量した。
図4図4は、BAP1野生型中皮腫細胞株H2818においてBAP1をノックダウンすると、rTRAILに対する細胞死反応が増加することを示す、グラフ(およびウエスタンブロット)である。
図5A図5Aは、空ベクターおよびBAP1発現ベクターでトランスフェクションした後の、BAP1ヌル中皮腫株(BAP1 null mesothelioma lines)におけるBAP1タンパク質のイムノブロットである。
図5B図5Bは、BAP1ヌルH226親株(BAP1 null H226 parental line)、BAP1 wt過剰発現安定株(BAP1 wt overexpressing stable line)、およびBAP1 c91ヒドロラーゼ不活性安定細胞株(BAP1 c91 hydrolase inactive stable cell line)について、rTRAILを用いて行われたアネキシンV/DAPI細胞死アッセイの用量反応曲線である。
図5C図5Cは、非形質導入H226細胞株、BAP1(形質導入)細胞株、およびNLSが欠失したH226細胞株の細胞生存率に対するrTRAILの効果を示すグラフである。
図6A図6Aは、細胞死がBAP1触媒ユビキチン水酸化ドメイン(BAP1 catalytic ubiquitin hydrolation domain)の喪失により著しく調整不全になっていることを示す。adj p<0.05およびFDR<20%の有意に調整不全な遺伝子分析に関する、C91変異体(触媒的に不活性)のBAP1形質導入H226のGEXプロファイルとH226 BAP1野生型形質導入H226Kegg経路分析との比較。
図6B図6Bは、c91変異型BAP1対野生型BAP1発現H226細胞株におけるIAP遺伝子BIRC2およびBIRC3のRMA正規化遺伝子中心mRNA発現を示すグラフである。ウエスタンブロットは、触媒的に不活性化されたC91変異体BAP1を発現するH226細胞株におけるIAPファミリータンパク質の調整不全を示す。
図7A図7Aは、rTRAILを94の単剤化合物のライブラリーと組み合わせてアンカー薬として使用したときの薬物とゲノムとの相互作用を示すボルケーノプロット(volcano plot)である。相乗効果を、デルタAUC測定基準を使用して説明した。
図7B図7Bは、LCL161存在下でのMPM細胞の細胞生存率に関するrTRAILの効果を示すグラフである。TRAIL耐性MPM細胞を、0~1000ng/mlのTRAIL単独、または5μMのLCL161と0~1000ng/mlのTRAILとの組み合わせのいずれかで24時間処理し、細胞の死亡率をアネキシンV/DAPIアッセイによって定量した。
図7C図7Cは、LCL161存在下でのMPM細胞の細胞生存率に関するrTRAILの効果を示すグラフである。TRAIL耐性MPM細胞を、0~1000ng/mlのTRAIL単独、または5μMのLCL161と0~1000ng/mlとのTRAILの組み合わせのいずれかで24時間処理し、細胞の死亡率をアネキシンV/DAPIアッセイによって定量した。
図7D図7Dは、IAP阻害剤LCL161の存在下での細胞生存率に関するrTRAILの効果を示すグラフである。BAP1形質導入またはBAP1 C91A形質導入H226細胞を、0~1000ng/mlのTRAIL単独または5μMのLCL161と0~1000ng/mlのTRAILとの組み合わせのいずれかで24時間処理し、細胞の死亡率をアネキシンV/DAPIアッセイによって定量した。
図8A図8Aは、様々な癌細胞株の生存率に関するrTRAILの効果を示すグラフである。BAP1においてナンセンス変異を有する膀胱(RT4)および乳(HCC1187)癌細胞株はrTRAILに対する感受性を示す一方、ミスセンス変異を有する腎細胞癌細胞株(769PおよびRCC10RGB)ならびに野生型腎臓(BB65RCC)および膀胱癌(SW1710)細胞株は、TRAILに耐性がある。
図8B図8Bは、乳癌細胞株MDA MB-231におけるBAP1のノックダウンが、rTRAILに対する感受性を増大させることを示す。
図9A図9Aは、インビボ実験のプロトコルである。
図9B図9Bは、rTRAILでの処理後の、変異型または野生型BAP1発現細胞を注射されたマウスから抽出された腫瘍の重量を示す箱ひげプロットである。変異されたBAP1異種移植片の腫瘍重量は、TRAIL処理後の野生型BAP1異種移植片よりも有意に小さい。
図9C図9Cは、TRAIL処理済みの野生型BAP1異種移植片または未処理のBAP1変異およびBAP1野生型異種移植片と比較したときに、TRAIL処理が変異型BAP1異種移植片の腫瘍量(tumor burden)(生物発光により測定された)を減少させることを示すグラフである。
図10図10は、BAP1の触媒ドメインであるBAP1が、細胞死誘導リガンド、TRAIL、FASL、およびTNFαに対するH226細胞の感受性も調整することを示すグラフである。非形質導入BAP1陰性H226細胞、BAP1発現および触媒活性を示さない(catalytically dead)BAP1発現H226細胞を、100ng/mlのFASL、TRAIL、およびTNF-アルファで24時間処理し、細胞の死亡率をアネキシンV/DAPIアッセイによって定量した。*p<0.05は、非形質導入H226細胞とH226 BAP1発現細胞との間の有意差を示す。NSは、非形質導入H226細胞とBAP1 C91A形質導入細胞との間に有意差を示さなかった。#p<0.05は、非形質導入H226細胞とBAP1 C91A形質導入細胞との間の有意差を示す。
図11図11は、BAP1の触媒ドメインであるBAP1が、細胞死誘導リガンド、TRAIL、FASL、およびTNFαに対するH226細胞の感受性も調整することを示すグラフである。非形質導入BAP1陰性H226細胞、BAP1発現、ASXL結合部位欠失BAP1発現H226細胞、および触媒活性を示さない(catalytically dead)BAP1発現H226細胞を、100ng/mlのFASL、TRAIL、およびTNF-アルファで24時間処理し、細胞の死亡率をアネキシンV/DAPIアッセイにより定量した。
【0082】
実施例
本発明者らは、BAP1腫瘍抑制遺伝子の変異が、ヒト癌におけるアポトーシス経路の治療的調節に対する感受性を付与することを発見した。本発明者らは、悪性胸膜中皮腫、膀胱癌、および乳癌におけるこの関連性を調査および検証し、腎細胞癌、子宮頸癌、およびブドウ膜黒色腫を含む、1~36%のヒト癌にも及び得るという証拠を有している。本明細書に記載されるデータは、rTRAIL、TRAIL受容体1(TRAIL-R1、細胞死受容体4としても知られる;DR4)およびTRAIL-R2(DR5としても知られる)に結合することによってTRAIL経路を活性化する組換えタンパク質に焦点を合わせているが、BAP1は、FASリガンド経路もしくはTNF経路または内因性アポトーシス経路などの他のプロアポトーシス経路を調節することも見出されている(実施例6を参照のこと)。
【0083】
材料および方法
全エクソーム配列判定
製造業者の指示(QIAGEN)に従って、カラム抽出技術を使用して、DNAを抽出した。製造業者の指示に従って、イルミナのペアエンド試料調製キット(Illumina paired end sample prep kit)を使用して、ゲノムライブラリーを調製した。製造業者の推奨プロトコルに従って、Agilent SureSelect Human All Exon 50Mbキットを使用して、エクソーム濃縮を行った。各エクソームを、Illumina HiSeq 2000 DNAアナライザーで75-bpペアエンドプロトコルを使用して配列判定し、エクソーム当たり約5~10Gbの配列を生成した。デフォルト設定でBurrows-Wheelerアライナ(BWA)アルゴリズムを使用して、配列判定リードをヒトゲノム整列させた(NCBI build GrCh 37)(17)。マッピングされていないリードおよびPCR重複は、分析から除外された。20倍以上の細胞株エクソームの平均カバレッジは、80%であった。
【0084】
コピー数注釈
上記のようにDNAを抽出した。SNP6.0アレイについては、DNAをAROSにアウトソーシングした(http://arosab/services/microarrays/genotyping/)。コピー数注釈を、PICNICアルゴリズムから導いた[18]。
【0085】
変異体検出
単一ヌクレオチド置換を呼び出すために、CaVEManアルゴリズムを使用した[19]。このアルゴリズムは、単純ベイズ分類器(naive Bayesian classifier)を使用して、各塩基における可能性のある各遺伝子型(野生型、生殖系列、または体細胞変異)の事後確率(posterior probability)を推定する。挿入と欠失を呼び出すために、分割リードマッピング(split read mapping)を、Pindelアルゴリズムの修正として実装した[19]。Pindelは、ゲノム上に固定された一方のリードを、2つの部分にマッピングされた他方のリードにより検索し、推定の挿入/欠失に及ぶ。両方のアルゴリズムについて、利用可能な適合正常組織なしで研究された全ての細胞株において使用されている腫瘍のCGPパネルからの同一の推定正常を正規化した。可能な限り多くの生殖細胞系一塩基多型を排除するために、その後、正常の様々なパネルに対する有意な後処理フィルタリングを行った。これらには、1000ゲノムデータベース、DB SNP、およびCGP正常の内部パネルが含まれる。これらのステップに続いて、変異体の潜在的な機能的影響に関して、FATHMアルゴリズム(Cancer Genome Project)を使用して、ミスセンス変異に注釈を付けた。
【0086】
組み合わせ(ゲノムと薬物との)治療スクリーニングアプローチ
手動の「単回投与」組み合わせスクリーニングを、96ウェルフォーマットを使用して行った。細胞を1日目に180μl培地中に予め最適化された播種密度で蒔いた。2日目に、薬物のストックから20μlの10倍の濃度の培地を加えた。次に、細胞を72時間または6日間増殖させ、アッセイ終了時に固定した。薬物ウェルを、DMSO処理済みの対照ウェルと比較した。
【0087】
4%パラホルムアルデヒドで固定してSyto60核酸染料(Invitrogen)で生存率について染色することによる、ロボット式液体処理(robotic liquid handling)を使用して、384ウェルフォーマット[18]で単剤ハイスループット5点生存率スクリーニング(Single agent high throughput 5 point viability screening)を行った(以下を参照のこと)。使用された実験に従って、85~95個の薬物の各ライブラリーについて単剤用量反応曲線を導き、以前に導き出された式[18]に従って各細胞株中の各ライブラリー化合物について、log IC50または曲線下面積(AUC)測定基準を導いた。このデータを使用して、様々な2薬物相乗作用を、デルタAUC測定基準を用いて測定した。
【0088】
コピー数およびエクソームデータを集計することによって、中皮腫スクリーニングにおける細胞株についてバイナリイベントマトリックスを編集し、これをゲノム相関のための入力分類子として使用した。次に、この治療スクリーニングからのデータを、多変量分散分析(MANOVA)[18]を使用して分析し、用量反応に対する遺伝子型の感作効果に注釈を付けた。結果は、相互作用の有意性(Benjamin Hochbergの誤発見閾値を超える)および効果の大きさの程度を示すボルケーノプロットとして提示されている。
【0089】
TCGAデータの分析
様々な癌種におけるBAP1切断型変異の頻度は、The Cancer Genome Atlas(TCGA)研究ネットワークによって作成されたデータに基づいている:http://cancergenome.nih.gov/。
【0090】
細胞培養
293T細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、非必須アミノ酸、50U/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、および1%ピルビン酸ナトリウムを添加した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。ヒト中皮腫細胞株を、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、および1%ピルビン酸ナトリウムを添加した、RPMI-1640培地(H2369、H2373、H2461、H2591、H2595、H2722、H2731、H2795、H2803、H2804、H2869、H290、H513、IST-MES1、MPP-89、MSTO-211H、NCI-H2052、NCI-H2452、NCI-H226、NCI-H28)、または10%FBS、非必須アミノ酸、50U/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、および1%ピルビン酸ナトリウムを添加した、ダルベッコの改変イーグル培地/栄養混合物F-12(DMEM/F-12)(H2818、H2810)中で培養した。細胞を、5%COで37℃に維持した。
【0091】
ウエスタンブロッティング
細胞単層を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で洗浄し、氷上で放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(Sigma-Aldrich)およびプロテアーゼ阻害剤(Complete-min;Roche)中に溶解させた。溶解物を、14000rpmで10分間遠心分離し、上清を吸引した。タンパク質濃度を、製造業者の指示に従って、BCAアッセイ(Calbiotech)を使用して、ウシ血清アルブミンの標準曲線から計算した。溶解物を、適切な濃度に調製し、4倍のLaemelli緩衝液および10倍の還元剤を添加した後、試料を70℃で10分間加熱した。溶解物を、プレキャスト4~12%Bis-Trisゲル(Invitrogen)上で、200Vで1時間のSDS-PAGEに供した。製造業者の指示に従って、iBlotゲル転写装置(Invitrogen)を使用して、タンパク質をニトロセルロース膜に転写した。4℃で一晩、一次抗体を添加する前に(別段明記しない限り、TBS-T中に1:1000で)、膜をTween 20(TBS-T)を含むトリス緩衝食塩水中の5%のミルク(TBS-T)中でブロックした。翌日、膜を、TBS-Tで3回洗浄し、二次抗体を添加した(TBS-T中に1:2500で)。使用された抗体としては、BAP1(C-4;Santa Cruz sc-28383)、アルファチューブリン(細胞シグナル伝達#2125)、c-IAP1(細胞シグナル伝達#7065)、cIAP2(細胞シグナル伝達#3130)、リビン(Livin)(細胞シグナル伝達#5471)、サバイビン(Survivin)(細胞シグナル伝達#2803)、Alexa Fluor(登録商標)488(Invitrogen A-21202)がある。イムノブロットを、ImageQuant(商標)LAS 4000バイオモレキュラーイメージャー(biomolecular imager)を使用して画像化した。
【0092】
細胞生存率アッセイ
接着性細胞株を、薬物投与の24時間前に播種した。細胞をトリプシン処理し、播種前にウェルのサイズ(96または384)およびアッセイ期間に最適な密度で計数した。薬物処理してから72時間後に、細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。dH2Oで2回洗浄した後、100μlのSyto60核酸染色剤(Invitrogen)を、1μMの最終濃度で添加し、プレートを室温で1時間固定した。630/695nMの励起/発光波長を使用して、蛍光シグナルの定量化を行った。
【0093】
細胞の死亡率アッセイ
付着性中皮腫細胞株を、1ウェル当たり約10000個の細胞で96ウェルプレートに蒔いた。細胞を蒔いて、薬物を添加した時点で1日間付着させた。48時間後、浮遊細胞を含む培地を、各ウェルから集めた。残りの接着細胞をPBSで洗浄し、EDTA中0.05%トリプシンで動かした(mobilize)。全ての細胞を、以前に除去された培地を含むチューブに集め、遠心分離(300g、5分間)によりペレット化した。次に、細胞を、10μl/1ml濃度のアネキシンV-647抗体(Invitrogen)を含む1XアネキシンV結合緩衝液に再懸濁し、室温で15分間インキュベートした。次に、以下のようにフローサイトメトリー分析の前に、DAPI(2μg/ml)を各試料に添加した。アネキシンV-/DAPI細胞は、生存可能であると判断され、アネキシンV+/DAPI細胞は、アポトーシスを受けている(初期アポトーシス期)と考えられ、アネキシンV+/DAPI+細胞は、後期アポトーシスまたは壊死と考えられ、死滅と記録された。
【0094】
フローサイトメトリー分析
細胞を、リン酸緩衝食塩水で洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中、室温で20分間インキュベートすることにより固定した。細胞内BAP1染色のために、固定された細胞を、氷上で20分間PBS中0.1%トリトンX-100で透過処理し、PBSで2回洗浄し、氷上で20分間一次抗体(C-4;Santa Cruz sc-28383、1:100)と共にインキュベートし、再度2回洗浄し、蛍光二次抗体(Alexa Fluor(登録商標)488、1:200(Invitrogen A-21202))と共にインキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、フローサイトメトリー分析のためにPBSに懸濁した。細胞死アッセイの一部として分析された細胞を、上記のように調製した。
【0095】
フローサイトメトリー分析をLSRFortessa細胞アナライザー(BD Biosciences)で行い、データをFlowJoソフトウェアで分析した。
【0096】
mRNAマイクロアレイ
触媒的に不活性なBAP1発現H226細胞(H226 C91A)およびWT BAP1発現H226細胞(H226 BAP1)からmRNAを抽出し、Illumina HT12アレイに流した(run)。
【0097】
経路分析
mRNAマイクロアレイから同定された有意に差次的に発現された遺伝子を、KEGG経路分析を使用して分析した。
【0098】
プラスミド
ヒトBAP1のcDNA全長クローンを、pCMV6-ACバックボーン(Origene、SC117256)で得て、これをさらなる実験のために、PCCL.CMVレンチウイルスバックボーン中にクローニングした。部位特異的変異誘発キット(NEB)を使用して、BAP1変異構築物を生成し、全長DNA配列判定によって確認した。GIPZ shRNAmirレンチウイルスベクター(Dharmacon V2LHS41473)中のUCL RNAiライブラリーにより、短鎖ヘアピンRNAを得た。短鎖ヘアピンの配列(配列番号44)は、以下の通りである。
TAAAGGTGCAGATGAACTC
[配列番号44]
レンチウイルスの生成および濃度
トランスフェクション試薬としてjetPEI(Polyplus Transfection)を使用して、パッケージングプラスミドpCMVdR8.2およびエンベローププラスミドpMDG.2と共に、293T細胞をレンチウイルスベクタープラスミドでトランスフェクションすることによって、レンチウイルスを生成した。293T細胞を、37℃でインキュベートし、レンチウイルスを含有する培地を、24時間および48時間で回収した。レンチウイルスを、4℃で2時間18000rpmで超遠心分離(SW28ローター、Optima LE80K Ultracentrifuge、Beckman)によって濃縮し、使用前は-80℃で保存した。
【0099】
4μg/mlポリブレンの存在下で、293T細胞にウイルスの段階希釈物を形質導入することによって、レンチウイルス滴定を行った。4日後、フローサイトメトリーを使用して、BAP1陽性細胞の割合(%)について細胞を分析した。以下のように、ウイルスを計算した。
【0100】
【数1】
【0101】
次に、MPM細胞を、4μg/mlポリブレンの存在下で、一定範囲の感染多重度(MOI)で形質導入し、形質導入効率を、フローサイトメトリー分析によって評価した。最適集団(>90%の形質導入が達成される最低のMOI)を、さらなる実験のために選択した。
【0102】
shRNA実験
上記のレンチウイルス生成プロトコルに従って、BAP1を標的とするshRNAをコート゛するレンチウイルスを生成した。MPM細胞(H2818)を形質導入し、純粋な集団が達成されるまでピューロマイシン200μg/mLで処理した。shRNAノックダウンの有効性を評価するために、イムノブロッティングを行った。
【0103】
動物
全ての動物実験は、University College Londonの生物学的サービス倫理審査委員会によって承認され、英国内務省の規則および1986年の動物操作の証拠(科学的手続き)法(英国、ロンドンの本社)の下で認可された。マウスは、Charles Riverから購入し、特定の病原体のない条件下で個別に換気されたケージで飼育され、滅菌照射食品およびオートクレーブ処理された水を自由に摂取できるようにした。
【0104】
異種移植マウスモデル
8週齢のNOD.CB17-Prkdcscid/NcrCrl(NOD SCID)マウス(Charles River)の群の各脇腹に、マトリゲルおよび培地の1:1の混合物中の100万個の細胞のルシフェラーゼ形質導入中皮腫細胞株(H226 BAPおよびH226 C91A)を注射した。腫瘍細胞の注射後14日目に、生物発光画像化(IVIS)によって評価した場合に腫瘍が構築されたとき、ビヒクルまたはイソロイシンジッパーTRAIL(izTRAIL)のいずれかを用いて、処置を開始した[20]。実験期間中、ビヒクルまたはizTRAILのいずれかを、1日1回600mcgの用量で腹腔内投与した。腫瘍サイズを、生物発光画像化(IVIS)を使用して、0、13、19、26、および41日目に評価した。マウスを42日目に処分し、腫瘍を除去して秤量した。1群当たり6匹のマウスを処置した。研究者らは、これらの実験で予備知識を持っていなかった。
【0105】
統計分析
GraphPad Prism V.4(GraphPad Software)を使用して、統計分析を行った。反復測定ANOVAを使用して、複数の群を用いたインビボ実験を分析し、単一群データを、Student t検定を使用して評価した。別段明記しない限り、全てのインビトロ実験を、三連で行った。
【0106】
実施例1-TRAILは、BAP1変異型中皮腫細胞を標的とする
本発明者らは、単独で、またはリガンド腫瘍壊死因子(TNF)関連の細胞死誘導リガンド(TRAIL)と組み合わせてのいずれかで、94個の小分子阻害剤および化学療法剤(表1を参照のこと)を使用して、15種の中皮腫細胞株(Met5a中皮正常対照株と共に)でコンビナトリアルケミカルスクリーニングを実施した。極端な薬物感受性の例を検出するために、本発明者らは、中皮腫における候補癌遺伝子であると最近同定された8個の遺伝子のセットに基づいて、反応とこれらの細胞株の変異状態との間の統計的関連について分析した(図1Aを参照のこと)。注目すべきことに、BAP1変異は、癌の種類わたってよく認識されている(図1BおよびCを参照のこと)。薬物反応に対する変異の最大の効果は、脱ユビキチン化酵素BAP1に変異を保有し、TRAILで処理された中皮腫細胞のそれであった(図2Aを参照のこと)。スクリーンに含まれる対照正常中皮細胞株MET-5Aにおいて観察される細胞生存率では有意な効果はなかった(図2Bを参照のこと)。BAP1変異細胞は、それらの野生型対応物よりもTRAILに対して有意に感受性が高かった(図2Bおよび図2Cを参照のこと)。さらに、これらの細胞株で検出されたBAP1変異は、切断型であると予測されるだろう(表2を参照のこと)。本発明者らは、BAP1変異が、通常、タンパク質発現の喪失と関連しており、変異細胞株は、一般に、TRAILに対して感受性があることをイムノブロット法によって確認した(図3Aを参照のこと)。
【0107】
【表1-1】
【0108】
【表1-2】
【0109】
【表1-3】
【0110】
【表2】
【0111】
実施例2-BAP1発現の調節は、細胞死の活性化を通してTRAIL感受性を決定する
TRAILは、2つの活性な膜貫通型細胞死受容体、DR4およびDR5を介して結合し、カスパーゼカスケードおよびその後の細胞死を引き起こす。BAP1変異細胞において観察されたTRAILの生存率効果は、アポトーシスマーカーアネキシンVで染色された細胞の画分の増加と実際に関連していた(図3Bを参照のこと)。
【0112】
したがって、本発明者らは、次に、中皮腫細胞におけるBAP1発現の調節がTRAIL感受性の変化をもたらすかどうかを調べた。BAP1野生型細胞株H2818におけるレンチウイルスshRNAの使用によるBAP1タンパク質の除去は、BAP1コンピテント親株と比較して、BAP1ヌルにおいて感受性の増加へのシフトを促進した(図4を参照のこと)。野生型全長BAP1(図5Aを参照のこと)または触媒活性を示さない(catalytically dead)C91A変異体の発現を回復させるために、BAP1のホモ接合性欠失を有するBAP1ヌル細胞株NCI-H226を、BAP1発現ベクターで形質導入した。投与量範囲のTRAILでヌルNCI-H226細胞株を処理すると、細胞死が増加し、これはBAP1発現H226細胞株において有意に減少した(図5bを参照のこと)。しかしながら、C91A変異体は、BAP1ヌル親細胞株の反応を模写し(phenocopy)、これから機能的ユビキチンヒドロラーゼ触媒ドメインがTRAILに対する感受性にとって決定的に重要であることが示される。NLSの欠失はBAP1誘導TRAIL耐性の有意な減少をもたらすので、核局在化シグナル(NLS)も、TRAIL耐性を付与するのに重要な役割を果たす(図5cを参照のこと)。
【0113】
実施例3-BAP1の発現および機能の喪失は、アポトーシス機構の成分を調節する
H226中皮腫細胞株は、BAP1のホモ接合性欠失を有し、その結果、BAP1発現の完全な喪失をもたらす。本発明者らはさらに、以前に記載されたように(PMID 18990722)、示差的mRNA遺伝子発現に関するこの触媒的に不活性なBAP1の効果を調べ、さらにシグナル伝達経路影響分析(signalling pathway impact analysis)(SPIA)を実施した。野生型とc91a mt BAP1とを比較した場合に有意に改変されたこれらの経路の中には、細胞死経路の経路があった(図6Aを参照のこと)(http://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?path:map04210)。特に、触媒活性を示さない(catalytically dead)C91A変異体で安定的に形質導入されたH226細胞において、IAPファミリーのメンバーの発現が減少した(図6Bを参照のこと)。最大の効果がCIAP2で見られ、これはウエスタンブロットによって確認された(図6Cを参照のこと)。
【0114】
実施例4-組み合わせ薬物スクリーニングにより、BAP1コンピテント細胞株におけるSMAC模倣物LCL161とrTRAILとの間の相乗効果が示される
rTRAILを、上記に記載される94個の単剤化合物のライブラリーと組み合わせて、アンカー薬として使用した。デルタAUC測定基準(Wesslesらを参照のこと)を使用して、相乗効果を記載し、これは、以前に記載されるゲノムサブ群と相関した。本発明者らは、SMAC模倣物LCL161、DNAヘリカーゼ阻害剤YK-4279、およびチロシンキナーゼ阻害剤ソラフェニブなどの薬物が、別様に耐性細胞におけるDRL誘導アポトーシスの有効性を増大させることを示した。このスクリーニングの最も相乗的な知見の1つは、BAP1野生型MPMにおけるSMAC模倣物LCL161およびrTRAILに対する感受性の関連性であった(図7Aを参照のこと)。これは、TRAIL耐性野生型BAP1発現細胞をLCL161とTRAILとの組み合わせで処理することによって検証された。TRAIL単独に耐性があることが以前に実証された野生型BAP1を安定的に発現するH226細胞株においても、さらなる検証を行った(図5および7B~Dを参照のこと)。IAP阻害剤、LCL161、およびTRAILの組み合わせは、変異型および野生型の両方の株において細胞死の相乗的な増加を示し、これは、BAP1変異体および野生型細胞におけるDRL誘導性の細胞死が、他の薬剤との組み合わせによって向上され得ることを示す(図7B~Dを参照のこと)。特に図7Dは、BAP1変異体および野生型細胞の両方が、TRAILとLCL161との組み合わせによる処理に反応して細胞死することを示す。内因性SMAC/Diabloは、IAPの特異的な天然の阻害剤である(14)。このデータは、BAP1コンピテント状態において、IAPに対するこの阻害効果を特異的に模倣することによってBAP1喪失を模写することができ、その結果、IAPの正味の不活性化およびrTRAILに対する感受性がもたらされることを示唆する。これは、見られたBAP1/外因性アポトーシス経路の混乱が、IAPの正味の活性の特異的な調整不全に関連しているという考えをさらに支持するであろう。
【0115】
実施例5-BAP1機能喪失変異を有する他の組織へのBAP1/TRAIL効果の拡大
脱ユビキチン化酵素BAP1は、前述のような、胸膜中皮腫(36%)、ブドウ膜黒色腫(47%)、および肝内胆管癌(25%)で頻繁に変異している。この治療アプローチにも適している可能性がある追加のBAP1変異型腫瘍が発生するかどうかを判定するために、本発明者らは、The Cancer Genome Atlas(TCGA)(http://cancergenome.nih.gov/)の変異データを使用して、20種の癌における5180個の腫瘍試料のコホートにまでこの分析を拡張した。切断型BAP1変異は、最大6%の頻度で、多様な範囲の癌の種類においても観察された(図1bおよびcを参照のこと)Carbone、M.ら、Nature Reviews Cancer 13、153-159(2013年3月)。本発明者らが、以前に全エクソームおよびコピー数分析のために提出された1001個の癌細胞株のパネルにそれらの分析を拡張したとき、彼らは、BAP1における切断変異を有する17個の細胞株を同定した(http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cell_lines/)。これらには、明細胞腎臓癌、膀胱癌、および乳癌細胞株が含まれた。TRAILでこれらの細胞株を処理すると、同じ癌の種類のBAP1野生型細胞株と比較して、顕著な生存率効果が得られた(図8Aを参照のこと)。本発明者らはまた、乳癌細胞株MDA-MB231中のレンチウイルスshRNAを使用して、BAP1を不活性化し、rTRAILに対する誇張されたアポトーシス反応を観察した(図8Bを参照のこと)。これは、TRAIL療法が(中皮腫に加えて)他の形態の癌において有効であり得ること、およびBAP1の阻害、またはBAP1がTRAIL耐性を誘導する経路を標的とすることによってTRAILに対して癌細胞を感受性をもつようにさせる(sensitise)ことが可能であることを示唆する。
【0116】
本発明者らは、マウス異種移植片モデルによってインビボでTRAILを用いてBAP1変異細胞を標的とすることの有効性を実証した。変異体および野生型BAP1細胞を、マウスの左右の脇腹に皮下注射した。マウスを、rTRAILまたはビヒクルのいずれかで処理した(図9Aを参照のこと)。実験の終わりに腫瘍を秤量したところ、TRAILを受けたマウスにおける変異型BAP1腫瘍の重量は、TRAIL処理をした野生型BAP1腫瘍またはビヒクル処理をしたマウスの変異体および野生型腫瘍よりも有意に少なかった(図9Bを参照のこと)。4週間にわたってリアルタイムで腫瘍量を追跡した。TRAILを受けたマウスにおける変異型BAP1異種移植片の腫瘍量は、TRAIL処理をした野生型BAP1異種移植片またはビヒクル処理をしたマウスの変異体および野生型異種移植片よりも有意に少なかった(図9Cを参照のこと)。
【0117】
実施例6-BAP1機能上のASXL結合部位の役割
本発明者らはまた、BAP1遺伝子のASXLタンパク質結合部位における変異が、BAP1誘導TRAIL耐性を損なうことを実証した(図11を参照のこと)。BAP1は、ASXL1、ASXL2、またはASXL3と複合体を形成することが示された。ASXLタンパク質に対する結合部位の変異は、BAP1-ASXL複合体の形成を阻害する。BAP1-ASXL複合体は、ヒストン2Aおよび他の基質を脱ユビキチン化することが示されており、BAP1およびASXL1、ASXL2、またはASXL3の両方が、この脱ユビキチン化機能に必要とされる。この複合体は、ポリコームレスプレッサー複合体(Polycomb Respressor Complex)および遺伝子転写の重要な調整因子である。本発明者らは、BAP1野生型およびASXL3変異体(切断型変異)細胞株H513がTRAILに感受性があることを示した。それゆえ、ASXL1、ASXL2、またはASXL3の機能喪失は、DRL誘導性の細胞死に対する細胞の感受性を増大させる。ASXL1、ASXL2、またはASXL3の変異はまた、DLRに対する感受性を予測するため、BAP1変異状態とは無関係に、細胞死のバイオマーカーとして使用することができる。
【0118】
実施例7-BAP1/TRAIL効果の他の外因性細胞死経路への拡張
本願におけるデータは、DR4およびDR5受容体に結合することによってTRAIL経路を活性化する組換えタンパク質である、rTRAILに焦点を合わせているが、観察されたBAP1変異-感受性付与(mutation-sensitisation)は、FASリガンド経路およびTNFアルファ経路を含む、他の外因性アポトーシス経路に及ぶ(図10を参照のこと)。
【0119】
概要
本発明者らは、BAP1が、TRAIL、TNFアルファ(TNFα)、およびFASリガンド(FASL)などの、細胞死受容体リガンドによる細胞死受容体の活性化に反応して、細胞が細胞死を受けるかどうかの重要な調整因子であることを見出した。具体的には、野生型BAP1の非機能的発現または低発現は、細胞を細胞死受容体リガンド誘導性の細胞死に対して感受性にする。結果として、変異型BAP1遺伝子もしくは変異型BAP1タンパク質、または野生型BAP1タンパク質の発現が低い癌細胞が、DRL誘導性の細胞死に対する感受性のバイオマーカーとして使用され得ることが発見された。
【0120】
したがって、本発明はまた、以下の有利な点を包含する。
【0121】
●個体の癌細胞が細胞死受容体リガンド(DRL)誘導性の細胞死に対して感受性があるかどうかを判定する方法、
●個体の癌細胞がDRL誘導性の細胞死に対して感受性があるかどうかを判定するためのキット、
●細胞死受容体リガンド誘導性の細胞死に対して感受性がない癌に罹患している個体において、細胞死受容体リガンド誘導性の細胞死を選択的に誘導する方法、
●DRL誘導性の細胞死に対して感受性がない癌に罹患している個体を、DRL誘導性の細胞死に感作させる方法、
●BAP1阻害剤および細胞死受容体リガンドを含む組成物、ならびに
●DRL誘導性の細胞死に対して感受性がない癌に罹患している個体を治療、予防、または改善する方法。
【0122】
参考文献
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