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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】免疫原性アルギナーゼペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/78 20060101AFI20230117BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C12N9/78 ZNA
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/55
C12N15/63 Z
A61P37/02
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/17
A61K38/46
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019518424
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2017075443
(87)【国際公開番号】W WO2018065563
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】16192794.2
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518289427
【氏名又は名称】アイオー バイオテック エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】IO Biotech ApS
【住所又は居所原語表記】Ole Maaloes Vej 3, 2200 Copenhagen N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,マッズ ハルド
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0250307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1(アルギナーゼ1)のヒトアルギナーゼタンパク質の単離された免疫原性ポリペプチド断片であって、該断片が最大で55アミノ酸長であり、且つ、配列番号36のアミノ酸配列を含む、前記断片。
【請求項2】
配列番号1(アルギナーゼ1)のヒトアルギナーゼタンパク質の単離された免疫原性ポリペプチド断片であって、該断片が最大で55アミノ酸長であり、且つ、配列番号53のアミノ酸配列を含む、前記断片。
【請求項3】
配列番号9、34、35、37、50~52又は54のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載のポリペプチド断片。
【請求項4】
配列番号4~6、15、17、33又は38のいずれか1つのアミノ酸配列をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項記載のポリペプチド断片。
【請求項5】
配列番号13、31又は32のいずれか1つのアミノ酸配列をさらに含む、請求項2又は3項記載のポリペプチド断片。
【請求項6】
配列番号39のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1又は3記載のポリペプチド断片。
【請求項7】
配列番号37、36、34又は35のいずれか1つの少なくとも8、9、10、15又は20個全部の連続するアミノ酸を含む、請求項1~のいずれか1項記載のポリペプチド断片。
【請求項8】
a. C末端アミノ酸が対応するアミドで置き換えられた;及び/又は
b. 配列番号1の190位に対応する位置のLがIで置き換えられた;及び/又は
c. 配列番号1の205位に対応する位置のRがKで置き換えられた;及び/又は
d. ポリペプチド断片の溶解度又は製造性を改善するために少なくとも1つの更なる部分が前記断片のN及び/若しくはC末端に結合され、場合により、前記更なる部分がアミノ酸R若しくはKである;及び/又は
e. 前記断片が、対応する完全長アルギナーゼと比較してアルギナーゼ活性を欠く、若しくはアルギナーゼ活性が低下している;及び/又は
f. 前記断片が対応するアルギナーゼを発現する細胞を認識するT細胞を刺激することができる、
請求項1~のいずれか1項記載のポリペプチド断片。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項記載のポリペプチド断片をコードする核酸。
【請求項10】
請求項記載の核酸を含むベクター。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項記載のポリペプチド断片又は請求項記載の核酸又は請求項10記載のベクターと、製薬上許容し得る希釈剤又は担体と、場合によりアジュバントとを含む組成物。
【請求項12】
アジュバントが、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン及びモンタニドISAアジュバントから成る群より選択される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
医薬としての使用のための、請求項1~のいずれか1項において定義される単離されたポリペプチド断片又は請求項において定義される核酸又は請求項10において定義されるベクター又は請求項11若しくは12において定義される組成物。
【請求項14】
少なくとも部分的には、アルギナーゼの不適切な若しくは過剰な免疫抑制機能を特徴とする疾患若しくは状態、及び/又は癌である、前記疾患若しくは状態を治療又は予防する方法において使用するための、請求項1~のいずれか1項において定義される単離されたポリペプチド断片又は請求項において定義される核酸又は請求項10において定義されるベクター又は請求項11若しくは12において定義される組成物。
【請求項15】
疾患又は状態が癌であり、且つ、場合により、前記方法が、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤(例えば、抗体)、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、及び樹状細胞などの更なる癌療法の同時的又は連続的投与をさらに含む、請求項14記載の使用するための単離されたポリペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【請求項16】
更なる癌療法が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンのうちの1種以上である、請求項15記載の使用するための単離されたポリペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギナーゼ1の断片などの新規ペプチド化合物、ならびにこれらのペプチド化合物を含む組成物、使用、キット部品に関する。さらに、本発明は、単独で、またはさらなるがん療法と同時的もしくは連続的に投与した場合の、がんの治療または予防のための方法における使用のための、前記ペプチド化合物を発現する核酸、ベクター、および宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギナーゼは、アミノ酸L-アルギニンをL-オルニチンおよび尿素に変換する反応を触媒する酵素である。これは、アルギニンの微小環境を枯渇させ、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞応答の抑制をもたらす。アルギナーゼ活性の増大は、乳がん、肺がん、結腸がんまたは前立腺がんを有する患者のがん細胞中で検出されている[1]。ラットアルギナーゼgenをトランスフェクトしたマウスマクロファージは、同時培養された腫瘍細胞の増殖を促進することが、in vitroとin vivoの両方で示された[2]。マクロファージによるアルギナーゼ発現のさらなる誘導は、ポリアミン合成を介する腫瘍血管新生を増加させることが示されている。マウス肺癌モデルの結果により、高レベルのアルギナーゼを発現する成熟腫瘍関連骨髄性細胞のサブ集団が存在することが示された。これらの腫瘍関連骨髄性細胞は、細胞外L-アルギナーゼを枯渇させ、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗原特異的増殖を阻害した。アルギナーゼ阻害剤の注入により、マウスにおける肺癌の増殖が阻害された。これは、腫瘍細胞および腫瘍関連骨髄性細胞中でのアルギナーゼ発現の誘導が、TILに対する負の効果を介する抗腫瘍免疫応答の抑制によってどのように腫瘍増殖を促進するかを示すものである。
【0003】
MDSC(骨髄由来免疫抑制細胞)は、エフェクターT細胞およびナチュラルキラー細胞の活性化、増殖、および細胞傷害性を阻害し、ならびにTregの分化および拡張を誘導する。がん細胞とMDSCは両方とも、一酸化窒素合成酵素(NOS)およびアルギナーゼ酵素によるL-アルギニン代謝を操作することによって、T細胞を抑制することができる。多くの腫瘍は、アルギナーゼおよび誘導性NOS(iNOS)の発現の増加を示し、腫瘍微小環境からのアルギニン枯渇をもたらす[1]。いくつかの研究は、この重要性が腫瘍特異的T細胞応答の抑制における腫瘍アルギニン代謝を変化させ、AML芽球がT細胞増殖および造血幹細胞を阻害するアルギナーゼ依存的能力を示すことが最近証明されたことを強調する。さらに、アルギナーゼおよびiNOS阻害剤は、AMLの抑制活性を軽減する[2]。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、アルギナーゼ1に由来する新しい免疫原性エピトープを同定した。さらに、メラノーマ患者に由来する末梢血単核細胞(PBMC)を、アルギナーゼ1由来ペプチドに対する特異的T細胞応答の存在について分析したところ、新しい免疫原性エピトープに対する強力な免疫応答が検出された。さらに、いくつかのペプチド断片に対する頻繁な免疫応答が検出された。また、アルギナーゼ1に対する免疫応答が実際にCD4およびCD8T細胞によって媒介され、CD8とCD4 T細胞の両方が標的細胞の表面上のアルギナーゼ1由来ペプチドを認識することができることも示された。
【0005】
がんのための新規免疫療法の開発には、発症に関与する分子ならびに免疫系によって認識される特異的タンパク質の完全な理解が必要である。臨床設定においては、アルギナーゼ特異的免疫応答の誘導は、がん細胞の殺傷に加えて、一般的には、アルギナーゼ発現細胞、特に、MDSCおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)の抑制機能を抑制することによって抗がん免疫応答を抑制することができた。したがって、アルギナーゼ発現細胞は、例えば、ワクチン接種による、骨髄性樹状細胞を標的とする他の免疫治療手法の所望の効果に拮抗するため、結果として、さらなる抗がん免疫療法と高度に相乗作用的である。
【0006】
配列番号1(アルギナーゼ1)または配列番号60(アルギナーゼ2)のヒトアルギナーゼタンパク質の単離された、免疫原性ポリペプチド断片が本明細書で提供される。断片は、典型的には、8、9、10、15、20、25、30、45、50または55アミノ酸長までである。断片は、配列番号52または配列番号58のいずれかの少なくとも8、9、10、20、30、40または50個の連続するアミノ酸の配列を含むか、またはそれからなってもよい。ポリペプチド断片は、配列番号52、50、51、34、35、36、37、9、53、54、2~33、または38~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなってもよい。
【0007】
ポリペプチド断片は、以下のさらなる特徴:
a. C末端アミノ酸が対応するアミドで置換される;および/または
b. 配列番号1の190位に対応する位置のLがIで置換される;および/または
c. 配列番号1の205位に対応する位置のRがKで置換される;および/または
d. 少なくとも1つのさらなる部分がNおよび/もしくはC末端に結合され、場合により、前記さらなる部分がRもしくはKなどの親水性アミノ酸である;および/または
e. 対応する完全長アルギナーゼと比較してアルギナーゼ活性を欠く、もしくはそれが低下している、
の1つ以上を有してもよい。
【0008】
また、前記断片、製薬上許容し得る希釈剤または担体、および場合により、アジュバントを含む組成物も提供される。前記組成物または前記断片は、がんなどの疾患もしくは状態を治療もしくは予防する方法における使用のため、またはがんなどの疾患もしくは状態を治療もしくは予防するための医薬の製造における使用のためのものであってよい。前記組成物は、場合により、ワクチンとして記載することができる。また、がんなどの疾患または状態を治療または予防する方法であって、前記組成物または前記断片を、治療または予防を必要とする被験体に投与することを含む、前記方法も提供される。
【0009】
ポリペプチド断片を、本明細書ではペプチド化合物またはペプチドと互換的に記載することができる。
【0010】
一態様においては、本開示は、
a)8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b)配列番号1またはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有する機能的相同体、および
c)配列番号1またはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/または置換された、機能的類似体
から選択され、a)、b)またはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸もアミドを含む、アルギナーゼ1のペプチド化合物、またはその製薬上許容し得る塩に関する。上記文脈において、「機能的」とは、「配列番号1のアルギナーゼに対する免疫応答を刺激することができる」ことを意味する。相同体b)および類似体c)は、好ましくは、低下した(またはゼロの)アルギナーゼ機能を有する。
【0011】
実施形態においては、ペプチド化合物は、a)C末端アミノ酸もアミドを含む、8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~300個のアミノ酸、8~250個のアミノ酸、8~200個のアミノ酸、8~150個のアミノ酸、8~120個のアミノ酸、例えば、10~100個のアミノ酸、20~80個のアミノ酸、30~60個のアミノ酸、40~50個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、配列番号1のペプチド断片は、ARG(1-310)、ARG(1-301)、ARG(1-291)、ARG(11-322)、ARG(21-322)、ARG(30-322)、ARG(40-322)、ARG(11-310)、ARG(11-301)、ARG(11-291)、ARG(21-310)、ARG(21-301)、ARG(21-291)、ARG(30-310)、ARG(30-301)、ARG(30-291)、ARG(40-310)、ARG(40-301)、およびARG(40-291)からなる群から選択される。
【0012】
さらなる実施形態においては、アルギナーゼ活性は、アルギナーゼ活性アッセイによって測定した場合、アルギナーゼ1と比較して低下する。一実施形態においては、アルギナーゼ活性は、不活性まで低下する。別の実施形態においては、アルギナーゼ活性は、アルギナーゼ活性比色アッセイキット(BioVision Arginase assay #K755-100)から選択される。
【0013】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号52、50、51、37、36、35、34、9、53、54、2~33、または38~39のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む。一実施形態においては、連続する配列は、配列番号52、50、51、37、36、35、34、9、53または54から選択される配列を含む。
【0014】
さらなる実施形態においては、a)の下のペプチド断片、b)の下の機能的相同体、またはc)の下の機能的類似体は、それがアルギナーゼ1を発現する細胞を認識するT細胞を活性化するという意味で機能的である。一実施形態においては、活性化は、本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定される。
【0015】
また、本発明のペプチド化合物をコードする核酸も本明細書に開示される。本発明のペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、核酸は、DNAおよびRNAからなる群から選択される。
【0016】
また、本発明の核酸を含むベクターも本明細書に開示される。本発明の核酸は、上記実施形態のいずれか1つから選択され、本発明のペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、ベクターは、ウイルスベクターから選択される。
【0017】
さらなる態様においては、本開示は、本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。ベクターは、上記実施形態のいずれか1つから選択され、核酸は、上記実施形態のいずれか1つから選択され、ペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、宿主細胞は、哺乳動物細胞から選択される。
【0018】
ベクターは、好ましくは、アルギナーゼ機能を欠く配列である、アルギナーゼ1の不活性配列をコードする核酸を含む。
【0019】
本明細書に記載の任意のペプチド、核酸、ベクター、または宿主細胞を、場合により、担体または希釈剤などの製薬上許容し得る添加剤と一緒に、組成物中に提供することができる。組成物は、場合により、アジュバントを含んでもよい。組成物は、医薬としての使用のためのものであってよい。組成物は、疾患を治療または予防するための医薬の製造における使用のためのものであってもよい。
【0020】
組成物は、がんから選択される疾患、障害または状態の治療または予防のための方法における使用のためのものであってもよい。一実施形態においては、がんは、腫瘍を形成するがん疾患である。アジュバントを、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択することができる。
【0021】
本明細書に開示される疾患の治療または予防のための方法は、被験体に、有効量の
a)上記の組成物、および
b)インターロイキン、例えば、IL-2および/もしくはIL-21などの免疫刺激化合物、化学療法剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗がん剤、またはチェックポイント阻害剤、例えば、ニボルマブもしくはペンブロリズマブなどの抗体から選択される、少なくとも1つの第2の活性成分を含む組成物
を投与することを含んでもよい。
【0022】
提供される組成物を、同時的または連続的に投与してもよい。組成物を、キット部品中の成分として提供してもよい。
【0023】
さらなる態様においては、本開示は、配列番号1のアルギナーゼ1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態に罹患する個体に、有効量の上記ペプチド、核酸、ベクターまたは宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0024】
さらなる態様においては、本開示は、がん患者における、CD4およびCD8 T細胞などの、アルギナーゼ1特異的T細胞の刺激のための方法であって、がん患者に、有効量の上記ペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0025】
さらなる態様においては、本開示は、がん患者における、アルギナーゼ1を発現する細胞の免疫抑制機能を抑制する方法であって、がん患者に、有効量の上記ペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0026】
さらなる態様においては、本開示は、がんの治療または予防のための、免疫治療組成物またはワクチンなどの、医薬の製造のための上記のペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞の使用であって、前記がんが場合により、アルギナーゼ1の発現を特徴とする、前記使用に関する。
【0027】
さらなる態様においては、本開示は、場合により、さらなるがん療法と同時的または連続的に投与した(施した)場合、がんの治療または予防のための方法における使用のための、ペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞に関する。
【0028】
さらなるがん療法を、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞からなる群から選択することができる。一実施形態においては、さらなるがん療法は、チェックポイント遮断抗体(例えば、ニボルマブもしくはペンブロリズマブから選択される)などの免疫系チェックポイント阻害剤から選択されるか、またはアクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】配列番号2~16(Arg1~Arg15)のアミノ酸配列のそれぞれからなるペプチドに対する、6人のがん患者に由来する試料におけるT細胞応答を示す図である。
図2】配列番号9(Arg8)のアミノ酸配列のそれぞれからなるペプチドに対する、6人のがん患者に由来する試料におけるT細胞応答を示す図である。
図3】配列番号18~48(Arg1-1~Arg1-31)のアミノ酸配列のそれぞれからなるペプチドに対する、3人のがん患者に由来する試料におけるT細胞応答を示す図である。
図4】配列番号9 (Arg8)、配列番号21 (Arg1-4)、配列番号29 (Arg1-12)、配列番号34 (Arg1-17)、配列番号35 (Arg1-18)、配列番号36 (Arg1-19)、配列番号37 (Arg1-20)、配列番号40 (Arg1-23)、配列番号44 (Arg1-17)のそれぞれのアミノ酸配列からなるペプチドに対する8人の健康な個体に由来する試料におけるT細胞応答を示す図である。
図5】CD8陽性培養物が、配列番号9(Arg8)のアミノ酸配列のそれぞれからなるペプチドを載せた標的細胞を殺傷することができることを示す図である。
図6】アルギナーゼ特異的T細胞によるアルギナーゼ陽性がん(メラノーマ)細胞株FM3およびFM93の殺傷を示す図である。
図7】配列番号9(Arg8)のアミノ酸配列のそれぞれからなるペプチドによる刺激なし(上パネル)およびあり(下パネル)で培養した後の、IFN-g(PE-Cy7A)およびTNF-アルファ(APC-A)に関する細胞内染色により評価された、がん患者に由来するCD4 T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図8図7と同様の結果を示す。
図9】複数のアルギナーゼ-1ペプチドが、IFNγELISPOTにより評価された場合の3人のメラノーマ患者(9A)および8人の健康なドナー(9B)に由来するPBMCによって認識されることを示す図である。ペプチドは、ヒトアルギナーゼ1の配列内のその配列の開始および終止位置を参照することによって記載される。スポット数は、ペプチドで刺激されたウェルのと、対照ウェルの平均の差異として与えられる。ペプチドおよび対照刺激を、2回または3回実施した。
図10】配列番号1の161~210位に対応する領域が、がん患者および健康なドナーのPBMCによって広く認識されることを示す図である。A-配列番号34(Arg161-180)、配列番号35(Arg171-190)および配列番号36(Arg181-200)のそれぞれのアミノ酸配列からなるペプチドに応答してIFNγを放出するメラノーマ患者に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)中のCD4+T細胞の割合を示す。ペプチド名は、ヒトアルギナーゼ1の配列内のその配列の開始および終止位置を指す。B-左:5人の選択されたがん患者および4人の健康なドナーに由来するPBMC中でのArg(161-190)ペプチドに対する応答。右:2人の健康なドナー(HD)および2人のがん患者(MM)におけるArg(161-190)ペプチドまたは対照に対する応答に関する例示的なELISPOTウェル。C-左:5人の選択されたがん患者および4人の健康なドナーに由来するPBMC中でのArg(181-210)ペプチドに対する応答。右:2人の健康なドナー(HD)および2人のがん患者(MM)におけるArg(161-190)ペプチドまたは対照に対する応答に関する例示的なELISPOTウェル。スポット数は、ペプチドで刺激されたウェルと、対照ウェルの平均の差異として与えられる。ペプチドおよび対照刺激を、3回実施した。
図11】配列番号1の161~210位に対応する領域に対する応答のさらなる分析を示す図である。A-上は、Arg(161-190)ペプチドによる8時間の刺激後またはペプチドで刺激しない場合のIFN-g(PE-Cy7A)およびTNF-アルファ(APC-A)放出に関する細胞内染色により評価された、がん患者に由来するCD4 T細胞の例示的なフローサイトメトリー分析を示す。下は、2人の健康なドナー(HD)および1人のがん患者(MM)に関するこのアッセイにおけるTNF-aを放出するCD4+T細胞の割合を示す。B-Arg(161-190)ペプチドのみ、またはHLAクラスI(抗クラスI;W6/32)またはHLAクラスII(抗クラスII;Tu39)の発現の抗体遮断による3人のがん患者に由来するPBMCの刺激後のIFNγELISPOTの結果の概要。スポット数は、ペプチドで刺激されたウェルと、対照ウェルの平均の差異として与えられる。ペプチドおよび対照刺激を、2回または3回実施した。C-左:ArgSort、アルギナーゼ1の161~190位(Arg161-190)に由来する配列からなる30マー、もしくはアルギナーゼ1の161~210位(Arg161-210)に由来する配列からなる50マーで刺激した場合、または刺激しなかった場合(対照)の、アルギナーゼ特異的CD4 T細胞(配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド(ArgShort)による反復刺激により産生される)に由来するIFNγELISPOT応答。右:Arg(161-190)または対照による8時間の刺激後のIFN-g(PE-Cy7A)およびTNF-アルファ(APC-A)放出に関する細胞内染色により評価されたアルギナーゼ特異的CD4 T細胞の例示的なフローサイトメトリー分析。
図12】アルギナーゼ特異的T細胞がアルギナーゼ発現免疫細胞を認識することを示す図である。AおよびC-無関係の対照mRNA(DC Mock)またはアルギナーゼ-1 mRNA(DC Arg mRNA)をエレクトロポレーションし、トランスフェクトした自己樹状細胞に対する、2人の異なるメラノーマ患者(MM01およびMM05)に由来するアルギナーゼ特異的T細胞培養物によるIFNγ応答。エフェクターの標的に対する比は10:1である。BおよびD-無関係の対照mRNA(DC Mock)またはアルギナーゼ-1 mRNA(DC Arg mRNA)をエレクトロポレーションし、トランスフェクトした自己B細胞に対する、2人の異なるメラノーマ患者に由来するアルギナーゼ特異的T細胞培養物によるIFNγ応答。エフェクターの標的に対する比は2:1である。E-下:無関係の対照mRNA(DC Mock)またはアルギナーゼmRNA(DC Arg mRNA)またはDC-LAMPシグナル配列を含有するアルギナーゼmRNA(DC LAMP Arg mRNA)をエレクトロポレーションし、トランスフェクトした自己樹状細胞に対する、アルギナーゼ特異的T細胞培養物によるIFNγ応答。上:代表的なELISPOTウェル画像。対照およびトランスフェクト細胞刺激を、2回または3回実施した。
図13】ヒトアルギナーゼ1およびマウスアルギナーゼ1の配列アラインメントを示す図である。
図14】アルギナーゼ特異的免疫応答が、本明細書に開示される異なるペプチドをワクチン接種した後にC57BL/6マウスにおいて増加することを示す図である。
図15】アルギナーゼ特異的免疫応答が、本明細書に開示される異なるペプチドをワクチン接種した後にBalb/cマウスにおいて増加することを示す図である。
図16】本明細書に開示される異なるペプチドによるがんワクチン接種のマウスモデルにおける腫瘍体積の減少を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒトアルギナーゼ1の野生型アミノ酸配列である。
【0031】
配列番号2~54は、ヒトアルギナーゼ1のペプチド断片のアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号55~57は、マウスアルギナーゼ1のペプチド断片のアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号58は、ヒトアルギナーゼ2のペプチド断片のアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号59は、マウスアルギナーゼ1の野生型アミノ酸配列である。
【0035】
配列番号60は、ヒトアルギナーゼ2の野生型アミノ酸配列である。
【0036】
配列番号61は、ヒトアルギナーゼ1の代替的配列である。
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、アルギナーゼタンパク質の免疫原性ポリペプチド断片に関する。そのような断片は、ワクチンとして有用であり得る。「免疫原性」とは、ポリペプチド断片が、少なくとも1の個体において、該個体に投与した後に、免疫応答、好ましくは、T細胞応答を惹起することができることを意味する。ポリペプチドを、in vitroでの方法を含む任意の好適な方法を使用して、免疫原性と同定することができる。例えば、ペプチドが以下の特徴:
(i)それがELISPOTアッセイによって決定された場合、少なくとも1人のがん患者のPBL集団においてIFN-γ産生細胞を惹起することができる、および/または
(ii)それが、対応するアルギナーゼと反応するCTLの腫瘍組織の試料においてin situで検出することができる;および/または
(iii)それが特異的T細胞のin vitroでの増殖を誘導することができる、
のうちの少なくとも1つを有する場合、それを免疫原性であると同定することができる。
【0038】
ポリペプチドが免疫原として活性であるかどうかを決定するための好適な方法も、以下の実施例に提供される。
【0039】
本発明者らは、配列番号1のアルギナーゼ1配列の複数の領域が免疫原性であると決定した。これらのものは、配列番号52、50、51、37、36、35、34、9、53、54、2~33、または38~49を含む。配列番号52は、配列番号1の161~210位のアルギナーゼ1の領域に対応する。この領域は、T細胞応答ががん患者および健康な被験者の間で最も頻繁に検出される配列を含むため、免疫原性のためのホットスポットとして同定することができる。免疫原性ポリペプチドは、最大で50または55アミノ酸長であってもよく、および/または配列番号52の少なくとも8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50個全部の連続するアミノ酸を含んでもよい。前記連続するアミノ酸は、好ましくは、配列番号50、51、34、35、36、37、9、53および54のいずれか1つを含むか、またはそれからなってもよい。配列番号50、51、34、35、36、37、9、53および54はそれぞれ、配列番号52の配列内に由来する配列を含む。具体的には、配列番号50、51、34、35、36、37、9、53および54はそれぞれ、161~190、181~210、161~180、171~190、181~200、191~210、174~182、172~179および193~200位によって定義される配列番号1の領域に対応する。
【0040】
免疫原性ポリペプチド断片は、最大で30、35、40、45、50または55アミノ酸長であり、配列番号50または51の少なくとも8、9、10、15、20、25または30個全部の連続するアミノ酸を含んでもよい。免疫原性ポリペプチド断片は、最大で20、25、30、35、40、45、50または55アミノ酸長であり、配列番号37、36、35、34のいずれか1つの少なくとも8、9、10、15または20個全部の連続するアミノ酸を含んでもよい。
【0041】
ポリペプチド断片は、好ましくは、配列番号1の181~200位(すなわち、配列番号36)によって定義される領域に由来する少なくとも8、9、10、15もしくは20個全部の連続するアミノ酸、または最も好ましくは、配列番号1の191~200位(すなわち、配列番号37)によって定義される領域に由来する少なくとも8、9、10、15もしくは20個全部の連続するアミノ酸を含む。ポリペプチド断片は、配列番号1の161~180位(すなわち、配列番号34)または配列番号1の171~190位(すなわち、配列番号35)によって定義される領域に由来する少なくとも8、9、10、15もしくは20個全部の連続するアミノ酸を含んでもよい。前者(配列番号34)において、168位に対応するシステインを、場合により、保存的置換によって置換して、例えば、溶解度または安定性を改善することができる。
【0042】
免疫原性ポリペプチド断片は、最大で8または9アミノ酸長であってもよく、配列番号9、53または54のいずれか1つの少なくとも8または9個の連続するアミノ酸を含んでもよい。免疫原性ポリペプチド断片は、配列番号52、50、51、34、35、36、37、9、53、54、2~33、または38~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなってもよい。
【0043】
本発明者らはまた、221~240位 (配列番号40、7、14を参照); 271~290位 (配列番号45、8、10、11、12を参照); 111~130位 (配列番号29を参照); 1~20位 (配列番号18を参照); 61~80位 (配列番号24を参照); 131~150位 (配列番号31、4を参照); 141~160位 (配列番号32、4を参照); 51~70位 (配列番号23を参照); 151~170位 (配列番号33、4を参照); 211~240位 (配列番号39、6を参照); および281~300位 (配列番号46を参照)によって定義される(または少なくとも部分的にそれと重複する)領域を含む、配列番号1の他の領域に対応する配列における応答も同定した。免疫原性ポリペプチド断片は、かくして、これらの領域または配列のいずれか1つに由来する少なくとも8、9個以上の連続するアミノ酸を含んでもよい。免疫原性ポリペプチド断片は、これらの領域または配列のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなってもよい。
【0044】
ヒトアルギナーゼ2は、アルギナーゼ1と関連し、配列におけるいくらかの類似性がある(それぞれ、配列番号60と配列番号1とを参照)。かくして、アルギナーゼ1における目的の領域はまた、アルギナーゼにおける目的のものである可能性もある。したがって、前記セクションに記載された配列のいずれか1つは、アルギナーゼ2における対応する位置の1個以上のアミノ酸で置換された任意の1個以上のアミノ酸を有してもよい。前記配列の全体を、アルギナーゼ2における対応する配列と置換することができる。免疫原性ポリペプチドは、配列番号52、50、51、34、35、36、37、9、53、54、2~33、または38~49のいずれか1つの配列番号1における位置に対応する配列番号60における位置によって定義される配列番号60の配列を含むか、またはそれからなってもよい。例えば、配列番号1の161~210位によって定義されるホットスポット領域は、配列番号58として本明細書に示される配列番号60の180~229位に対応する。かくして、配列番号52に対する参照を、配列番号58に対する参照によって置換することができる。免疫原性ポリペプチドは、配列番号58の少なくとも8、9、または好ましくは、少なくとも20または30個の連続するアミノ酸を含んでもよい。
【0045】
ヒトアルギナーゼ1はまた、マウスアルギナーゼ1と非常に類似している(それぞれ、配列番号59と配列番号1、および図13を参照)。したがって、ヒトアルギナーゼ1に関して前記セクションに記載された配列のいずれか1つは、マウスアルギナーゼ1における対応する位置の1個以上のアミノ酸で置換された任意の1個以上のアミノ酸を有してもよい。前記配列の全体を、マウスアルギナーゼ1における対応する配列と置換することができる。免疫原性ポリペプチドは、配列番号52、50、51、34、35、36、37、9、53、54、2~33、または38~49のいずれか1つの配列番号1における位置に対応する配列番号59における位置によって定義される配列番号59の配列を含むか、またはそれからなってもよい。例えば、配列番号1の161~210位によって定義されるホットスポット領域は、配列番号57として本明細書に示される配列番号59の161~210位に対応する。かくして、配列番号52に対する参照を、配列番号57に対する参照によって置換することができる。免疫原性ポリペプチドは、配列番号57の少なくとも8、9、または好ましくは、少なくとも20または30個の連続するアミノ酸を含んでもよい。実際、これは、配列番号1の190位に対応する位置のLを、Iで、および/または配列番号1の205位に対応する位置のRを、Kで、これらの残基を包含する本明細書に記載の任意のポリペプチド断片において、置換することができることを意味する。
【0046】
本明細書に記載の任意のポリペプチド断片において、C末端アミノ酸を、場合により、対応するアミドで置換して、溶解度を改善する、および/または製造/単離を補助することができる。同様に、ポリペプチドは、溶解度を改善する、および/または製造/単離を補助するために、少なくとも1つのさらなる部分でNおよび/またはC末端で結合していてもよい。好適な部分としては、親水性アミノ酸が挙げられる。例えば、アミノ酸KRを、N末端に付加する、および/またはアミノ酸RKを、順番にC末端に付加することができる。
【0047】
本明細書に記載の任意のポリペプチド断片は、対応する完全長アルギナーゼと比較して低下したアルギナーゼ活性を有する。アルギナーゼ活性の低下は、不活性までの低下を含んでもよい。アルギナーゼ活性のための好適なアッセイは、アルギナーゼ活性比色アッセイキット(BioVision Arginase assay #K755-100)である。
【0048】
一態様においては、本開示は、
a)8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b)配列番号1もしくはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有する機能的相同体、ならびに
c)配列番号1もしくはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/もしくは置換された機能的類似体
から選択され、a)、b)もしくはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸もアミドを含む、アルギナーゼ1のペプチド化合物、またはその製薬上許容し得る塩に関する。
【0049】
実施形態において、ペプチド化合物は、b)配列番号1またはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有する機能的相同体であって、C末端アミノ酸もアミドを含む、機能的相同体;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。一実施形態においては、機能的相同体は、配列番号1に対する少なくとも80%の同一性を有する。さらなる実施形態においては、機能的相同体は、配列番号1に対する少なくとも90%の同一性を有する。さらなる実施形態においては、機能的相同体は、配列番号1に対する少なくとも95%の同一性を有する。さらなる実施形態においては、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも70%の同一性を有する。さらなる実施形態においては、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも80%の同一性を有する。さらなる実施形態においては、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも90%の同一性を有する。さらなる実施形態においては、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも95%の同一性を有する。
【0050】
別の実施形態においては、ペプチド化合物は、c)配列番号1もしくはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/または置換された機能的類似体であって、C末端アミノ酸もアミドを含む、機能的類似体;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。
【0051】
さらなる実施形態において、ペプチド化合物は、a)8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片であって、C末端アミノ酸もアミドを含む、ペプチド断片;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、8~300個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、8~250個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、8~200個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、8~150個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、8~120個の個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、10~100個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、20~80個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、30~60個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、ペプチド断片は、40~50個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(1-310)、ARG(1-301)、ARG(1-291)、ARG(11-322)、ARG(21-322)、ARG(30-322)、ARG(40-322)、ARG(11-310)、ARG(11-301)、ARG(11-291)、ARG(21-310)、ARG(21-301)、ARG(21-291)、ARG(30-310)、ARG(30-301)、ARG(30-291)、ARG(40-310)、ARG(40-301)、およびARG(40-291)からなる群から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(1-310)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(1-301)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(1-291)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(11-322)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(21-322)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(30-322)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(40-322)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(11-310)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(11-301)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(11-291)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(21-310)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(21-301)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(21-291)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(30-310)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(30-301)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(30-291)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(40-310)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(40-301)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(40-291)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(161-190)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(181-210)から選択される。さらなる実施形態において、配列番号1のペプチド断片は、ARG(161-210)から選択される。
【0052】
ペプチド断片が8~120の範囲の連続する配列からなる場合、それを、例えば、ARG(40-291)の配列内で同時に選択してもよいが、8~321の範囲の連続する配列からなるペプチド断片は、例えば、ARG(40-291)の配列内で同時に選択することはできないことが理解されるべきであり、これは、当業者には公知である。そうでなければ、全ての組合せが本発明内で企図される。
【0053】
また、ARG(x-y)(式中、xおよびyは本明細書で使用される場合、1~322から選択される整数である)は、xがN末端アミノ酸であり、yがC末端アミノ酸である、本明細書で定義される配列番号1を有するアルギナーゼ1のペプチド断片を意味することも理解されるべきであり、例えば、ARG(174-182)は、アミノ酸174がIであり、アミノ酸182がVである、配列番号1のアミノ酸174から配列番号1のアミノ酸182までのペプチド断片を示す。
【0054】
本明細書で使用される用語「同一性」とは、配列を比較することによって決定される、ポリペプチドなどの2つ以上のペプチドの配列間の関係を指す。当業界では、「同一性」はまた、2個以上のアミノ酸残基の一連のものの間の一致数によって決定される、タンパク質またはポリペプチドの間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって指定されるギャップアラインメント(もしあれば)を有する2つ以上の配列の小さい方の間の同一の一致のパーセントを測定する。関連するタンパク質またはペプチドの同一性を、公知の方法によって容易に算出することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Pro-jects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Se-quence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991; およびCarillo et al., SIAM J. Applied Math., 48, 1073, (1988)に記載のものが挙げられる。
【0055】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致を与えるように設計される。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法としては、GAP (Devereux et al., Nucl. Acid. Res., 12, 387, (1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA (Altschul et al., J. Mol. Biol., 215, 403-410, (1990))を含む、GCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information (NCBI)および他の供給源(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul et al., supra)から公共的に利用可能である。周知のSmith Watermanのアルゴリズムを用いて、同一性を決定することもできる。
【0056】
例えば、コンピューターアルゴリズムGAP(Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)を用いて、配列同一性パーセントを決定しようとする2つのタンパク質を、そのそれぞれのアミノ酸の最適一致のために整列させる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。ギャップオープニングペナルティ(平均対角線の3倍として算出される;「平均対角線」は、用いられる比較マトリックスの対角線の平均である;「対角線」は、特定の比較マトリックスによってそれぞれの完全なアミノ酸一致に対して割り当てられるスコアまたは数である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップオープニングペナルティの{分数(1/10)}倍である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較マトリックスが、アルゴリズムと共に用いられる。標準的な比較マトリックス(PAM250比較マトリックスについては、Dayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, supp.3 (1978); BLOSUM62比較マトリックスについては、Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89, 10915-10919, (1992)を参照されたい)も、アルゴリズムによって用いられる。タンパク質またはペプチド配列のための好ましいパラメーターとしては、以下のもの:アルゴリズム:Needleman et al., J. Mol. Biol, 48, 443-453, (1970); 比較マトリックス: Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10915-10919, (1992)からのBLOSUM62; ギャップペナルティ: 12、ギャップ長ペナルティ: 4、類似性閾値: 0が挙げられる。GAPプログラムは、上記パラメーターと共に有用である。上記パラメーターは、GAPアルゴリズムを用いるタンパク質比較のためのデフォルトパラメーター(末端ギャップについてのペナルティなしと共に)である。
【0057】
さらなる実施形態においては、アルギナーゼ活性は、アルギナーゼ活性アッセイによって測定した場合、アルギナーゼ1と比較して低下する。一実施形態においては、アルギナーゼ活性は、不活性まで低下する。別の実施形態では、アルギナーゼ活性アッセイは、アルギナーゼ活性比色アッセイキット(BioVision Arginase assay # K755-100)から選択される。さらなる実施形態においては、アルギナーゼ活性は、アルギナーゼ活性比色アッセイキットから選択されるアルギナーゼ活性アッセイによって測定した場合、アルギナーゼ1と比較して不活性まで低下する。
【0058】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号2~17のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む。一実施形態においては、連続する配列は、配列番号9から選択される配列を含む。別の実施形態においては、連続する配列は、配列番号2~8または10~17のいずれか1つではなく、配列番号9から選択される配列のみを含む。
【0059】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号50を有する配列を含む。さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号51を有する配列を含む。さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号52を有する配列を含む。
【0060】
さらなる実施形態においては、a)の下のペプチド断片、b)の下の機能的相同体、またはc)の下の機能的類似体は、アルギナーゼ1を発現する細胞を認識するT細胞を活性化する。一実施形態においては、活性化は、本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定される。さらなる実施形態においては、a)の下のペプチド断片は、本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定される場合、アルギナーゼ1を発現する細胞を認識するT細胞を活性化する。
【0061】
特定の態様においては、本開示は、
a)配列番号52もしくは8~49個のアミノ酸を有する連続する配列からなる配列番号52のペプチド断片、
b)配列番号52もしくはa)のペプチド断片に対して少なくとも70%、80%、90%、もしくは95%の同一性を有する機能的相同体、ならびに
c)配列番号52もしくはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/もしくは置換された機能的類似体
から選択されるアルギナーゼ1のペプチド化合物であって、a)、b)もしくはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸もアミドを含む、前記ペプチド化合物;またはその製薬上許容し得る塩に関する。a)、b)またはc)のペプチド化合物のいずれか1つは、個々の実施形態の被験体であってもよいことが意図される。
【0062】
さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、20~30個のアミノ酸などの、10~40個のアミノ酸などの、9~49個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる。
【0063】
さらなる実施形態においては、8~49個のアミノ酸を有する連続する配列からなる配列番号52のペプチド断片は、配列番号51を含む。さらなる実施形態においては、8~49個のアミノ酸を有する連続する配列からなる配列番号52のペプチド断片は、配列番号50を含む。さらなる実施形態においては、8~49個のアミノ酸を有する連続する配列からなる配列番号52のペプチド断片は、配列番号9を含む。
【0064】
さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、少なくとも1つのCD4+および少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープを含む。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、少なくとも1つのCD4+または少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープを含む。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、少なくとも1つのCD4+T細胞エピトープを含む。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、少なくとも1つのCD8+T細胞エピトープを含む。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、ARG(161-210)中のホットスポット領域に位置する、全てのT細胞エピトープ、特に、全てのCD4+およびCD8+エピトープを含む。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、ARG(161-210)中のホットスポット領域に位置する、1つを除く全てのT細胞エピトープ、特に、全てのCD4+およびCD8+エピトープを含む。
【0065】
さらなる態様においては、本開示は、本発明のペプチド化合物をコードする核酸に関する。ペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、核酸は、DNAおよびRNAからなる群から選択される。
【0066】
さらなる態様においては、本開示は、本発明の核酸を含むベクターに関する。核酸は、上記実施形態のいずれか1つから選択され、本発明のペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、ベクターは、ウイルスベクターから選択される。
【0067】
さらなる態様においては、本開示は、本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。ベクターは、上記実施形態のいずれか1つから選択され、核酸は上記実施形態のいずれか1つから選択され、ペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、宿主細胞は、哺乳動物細胞から選択される。
【0068】
さらなる態様においては、本開示は、
a)8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b)配列番号1またはa)のペプチド断片に対して少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有する機能的相同体、ならびに
c)配列番号1またはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/または置換された機能的類似体
から選択されるアルギナーゼ1の不活性ペプチドをコードする核酸を含むベクターであって、a)、b)もしくはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸もアミドを含み、核酸が不活性配列を発現し、不活性配列が少なくとも1つの免疫原性エピトープを含む、前記ベクターに関する。一実施形態においては、エピトープは、配列番号2~17からなる群から選択され、典型的には、エピトープは、配列番号9から選択される。別の実施形態においては、エピトープは、配列番号50~52のいずれか1つの中に含まれる少なくとも8個の連続するアミノ酸の任意の配列を含んでもよい。
【0069】
さらなる態様においては、本開示は、場合により、担体またはアジュバントなどの、製薬上許容し得る添加剤と共に、本開示のペプチド化合物または核酸またはベクターまたは宿主細胞を含む組成物に関する。
【0070】
さらなる態様においては、本開示は、医薬としての使用のための、
a)本発明のペプチド化合物または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞;および
b)アジュバント
を含む免疫治療組成物に関する。
【0071】
実施形態においては、免疫治療組成物は、がんから選択される疾患、障害または状態の治療または予防のための方法における使用のためのものである。一実施形態においては、がんは、腫瘍を形成するがん疾患である。さらなる実施形態においては、アジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択される。
【0072】
さらなる態様においては、本開示は、
a)本発明の免疫治療組成物、ならびに
b)インターロイキン、例えば、IL-2および/またはIL-21などの免疫刺激化合物、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗がん剤から選択される少なくとも1つの第2の活性成分を含む組成物
を含む、キット部品に関する。
【0073】
キット部品の実施形態においては、提供される組成物は、同時的または連続的に投与される。
【0074】
さらなる態様においては、本開示は、配列番号1のアルギナーゼ1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態に罹患する個体に、有効量の本発明のペプチド化合物または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0075】
さらなる態様においては、本開示は、がん患者における、CD4およびCD8 T細胞などのアルギナーゼ1特異的T細胞の刺激のための方法であって、がん患者に、有効量の本開示のペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0076】
さらなる態様においては、本開示は、がん患者における、アルギナーゼ1を発現する細胞の免疫抑制機能を抑制する方法であって、がん患者に、有効量の本開示のペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0077】
さらなる態様においては、本開示は、アルギナーゼ1の発現を特徴とするがんの治療または予防のための、免疫治療組成物またはワクチンなどの医薬の製造のための、本開示のペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞の使用に関する。
【0078】
さらなる態様においては、本開示は、さらなるがん療法と同時的に、または連続的に投与した(施した)場合、がんの治療または予防のための方法における使用のための、本開示のペプチド化合物、または核酸、またはベクター、または宿主細胞に関する。
【0079】
さらなるがん療法は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞からなる群から選択される。一実施形態においては、さらなるがん療法は、チェックポイント遮断抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ)などの免疫系チェックポイント阻害剤から選択されるか、またはアクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンからなる群から選択される。
【0080】
アルギナーゼ活性を、例えば、アルギナーゼ活性比色アッセイキット(BioVision Arginase assay # K755-100)を使用することによって測定することができる。BioVisionのアルギナーゼ活性アッセイキットは、単純で高感度かつ迅速である。このアッセイでは、アルギナーゼは、アルギナーゼと反応し、OxiRed(商標)プローブと化学量論的に反応する中間体を形成する一連の反応を受けて、着色生成物(OD570nm)を生成する。キットは、96ウェルアッセイ形式で0.2U/L未満のアルギナーゼ活性を検出することができる。
【0081】
本明細書で用いられる場合、示されるアミノ酸配列はいずれも、C末端アミノ酸で改変してアミド形態(-CONH2)にするか、または酸形態(-COOH)にあってもよく、かくして、これらのいずれか一方が好ましい実施形態であり、I、F、R、L、K、G、M、D、V、S、T、N、Y、Pなどの任意のC末端アミノ酸は、-NH2または-OHによって特定されない限り、アミド形態と酸形態との両方を含むことが意図される。
【0082】
本明細書に開示されるアルギナーゼペプチド断片は、固相ペプチド合成(SPPS)などの標準的なペプチド合成によって作製される。SPPSは、実験室でペプチドを合成するための標準的な方法である。SPPSは、細菌中では発現させるのが難しい天然ペプチドの合成、非天然アミノ酸、ペプチド/タンパク質骨格改変の組込み、およびD-アミノ酸からなるD-タンパク質の合成を可能にする。小孔ビーズを、ペプチド鎖を構築することができる機能的単位(「リンカー」)で処理する。ペプチドは、無水フッ化水素またはトリフルオロ酢酸などの試薬によってそれから切断されるまで、ビーズに共有的に結合したままであろう。かくして、ペプチドは、固相上に「固定」され、液相試薬および合成の副生成物が洗い流される間、濾過プロセス中に保持することができる。SPPSの一般的原理は、脱保護-洗浄-カップリング-洗浄の反復サイクルの1つである。固相に結合したペプチドの遊離N末端アミンを、単一のN保護されたアミノ酸単位にカップリングさせる。次いで、さらなるアミノ酸を結合することができる新しいN末端アミンを示す、この単位を脱保護する。この技術の優位性の一部は、不溶性樹脂に共有的に結合したままである目的の成長するペプチドの全部と共に過剰の試薬を除去する、各反応後の洗浄サイクルを実行する能力にある。2つの主に使用される形態のSPPSであるFmocおよびBocが存在する。リボソームタンパク質合成とは違って、固相ペプチド合成は、C末端からN末端への様式で進行する。アミノ酸モノマーのN末端を、これらの2つの基のいずれかによって保護し、脱保護されたアミノ酸鎖に付加する。自動化合成装置は両技術について利用可能であるが、多くの研究グループは、手動でSPPSを実施し続けている。さらに、中間化合物の官能基は、保護基によって保護する必要があってもよい。
【0083】
本明細書に開示されるペプチド化合物、核酸、ベクター、宿主細胞および医薬組成物を、上記治療のために使用する場合、治療有効量の少なくとも1つの化合物を、前記治療を必要とする哺乳動物に投与する。
【0084】
本明細書で用いられる場合、アミノ酸は、当業者には公知であり、便宜上、以下の表に示される1文字または3文字コードによって同定される。
【0085】
本明細書で用いられる用語「治療」および「治療すること」とは、疾患または障害などの状態と闘うための患者の管理およびケアを意味する。この用語は、症状もしくは合併症を軽減するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅延させるため、症状および合併症を軽減もしくは緩和するため、および/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは消失させるため、ならびに状態を予防するための活性化合物の投与などの、患者が罹患している所与の状態のための完全な範囲の治療を含むことが意図され、ここで、予防は、疾患、状態、または障害と闘うための患者の管理およびケアと理解されるべきであり、症状または合併症の開始を予防するための活性化合物の投与を含む。治療を、急性的または慢性的様式で実施することができる。治療される患者は、好ましくは哺乳動物、特に、ヒトであるが、それは、イヌ、ネコ、ウシ、サル、類人猿、ヒツジおよびブタなどの動物を含んでもよい。
【0086】
本明細書で用いられる場合、本発明のペプチド化合物または本明細書に開示されるペプチド断片の用語「治療有効量」とは、所与の疾患およびその合併症の臨床徴候を治癒させる、軽減する、または部分的に停止させるのに十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。それぞれの目的のための有効量は、疾患または傷害の重症度ならびに被験体の体重および全身状態に依存するであろう。適切な用量の決定を、値のマトリックスを構築し、マトリックス中の異なる点を試験することによって、日常的な実験を用いて達成することができ、これは全て訓練された医師または獣医師の通常の技術の範囲内にある。
【0087】
さらなる態様においては、本開示は、本発明のペプチド断片などのペプチド化合物と、場合により、担体または賦形剤などの製薬上許容し得る添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0088】
本明細書で用いられる場合、「製薬上許容し得る添加剤」は、限定されるものではないが、当業者が、医薬組成物を作製するために本発明の化合物を製剤化する場合に使用を考慮するであろう、担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、着色料、芳香剤、保存剤などを含むことが意図される。
【0089】
本発明の組成物中で用いることができるアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体は、医薬組成物のペプチド化合物、ペプチド断片、核酸、ベクター、または宿主細胞および他の成分と適合するという意味で製薬上許容し得るものでなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならない。組成物は、アレルギー反応などの有害反応を引き起こし得るいかなる材料も含有しないことが好ましい。本発明の医薬組成物中で用いることができるアジュバント、希釈剤、賦形剤および担体は、当業者には周知である。
【0090】
アジュバントは、組成物中への混合が、組成物によって惹起される免疫応答を増大させるか、またはそうでなければ改変する任意の物質である。広く定義されるアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。アジュバントはまた、好ましくは、それらが投与部位からの活性薬剤の遅延放出および持続放出をももたらす点で、デポー効果を有してもよい。アジュバントの一般的な考察は、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (2nd edition, 1986) pages 61-63に提供されている。
【0091】
アジュバントを、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4 (SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-DMP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11687、ノル-MDPとも称される)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEとも称される)、2%スクアレン/Tween-80.RTM.エマルジョン中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リポ多糖およびその様々な誘導体、例えば、リピドA、Freundの完全アジュバント(FCA)、Freundの不完全アジュバント、Merck Adjuvant 65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス由来のワックスD、コリネバクテリウム・パルバム、ボルデテラ・ペルツシスおよびブルセラ属のメンバーに見出される物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(米国特許第58767号および第5,554,372号を参照)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS融合体、合成ペプチド混合物またはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA-51ならびにQS-21からなる群から選択することができる。様々なサポニン抽出物も、免疫原性組成物中のアジュバントとして有用であることが示唆されている。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)も、アジュバントとして用いることができる。
【0092】
本発明と共に用いられる好ましいアジュバントとしては、モンタニドアジュバント(Seppic, Belgiumから入手可能)、好ましくは、モンタニドISA-51などの油/界面活性剤に基づくアジュバントが挙げられる。他の好ましいアジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントなどの、細菌DNAに基づくアジュバントである。さらに他の好ましいアジュバントは、ポリI:Cなどの、ウイルスdsRNAに基づくアジュバントである。GM-CSFおよびイミダゾキニリンも、好ましいアジュバントの例である。
【0093】
アジュバントは、最も好ましくは、モンタニドISAアジュバントである。モンタニドISAアジュバントは、好ましくは、モンタニドISA 51またはモンタニドISA 720である。
【0094】
Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (2nd edition, 1986) pages 61-63には、目的の抗原が低分子量のものであるか、または免疫原性が低い場合、免疫原性担体へのカップリングが推奨されることも記載されている。本発明の免疫治療組成物のペプチド化合物、ペプチド断片、核酸、ベクター、または宿主細胞を、担体にカップリングさせることができる。担体は、アジュバントとは無関係に存在してもよい。担体の機能は、例えば、活性もしくは免疫原性を増大させるため、安定性を付与するため、生物活性を増大させるため、または血清半減期を増大させるために、ペプチド化合物、ペプチド断片、核酸、ベクター、または宿主細胞の分子量を増加させることであってもよい。さらに、担体は、ポリペプチドまたはその断片をT細胞に提示するのを助けてもよい。かくして、免疫原性組成物において、ポリペプチドまたはその断片を、以下に記載のものなどの担体と結合させてもよい。
【0095】
担体は、当業者には公知の任意の好適な担体、例えば、タンパク質または抗原提示細胞、例えば、樹状細胞(DC)であってもよい。担体タンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミンなどの血清タンパク質、免疫グロブリン、またはインスリンもしくはパルミチン酸などのホルモンが挙げられる。あるいは、担体タンパク質は、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドであってもよい。あるいは、担体は、セファロースなどのデキストランであってもよい。担体は、ヒトにとって生理的に許容し得るものであり、安全でなければならない。
【0096】
免疫治療組成物は、場合により、製薬上許容し得る賦形剤を含んでもよい。賦形剤は、組成物の他の成分と適合するという意味で「許容し得る」ものでなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならない。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が賦形剤中に存在してもよい。これらの賦形剤および補助物質は、一般的には、組成物を受容する個体において免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与することができる薬剤である。製薬上許容し得る賦形剤としては、限定されるものではないが、水、塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられる。製薬上許容し得る塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩をその中に含有させることもできる。製薬上許容し得る賦形剤、ビヒクルおよび補助物質の完全な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)で利用可能である。
【0097】
免疫治療組成物を、ボーラス投与または連続投与にとって好適な形態で調製、包装、または販売することができる。注射用組成物を、保存剤を含有するアンプルまたは複数用量容器中などの単位剤形で調製、包装、または販売することができる。組成物としては、限定されるものではないが、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、および埋込み可能な持続放出製剤または生分解性製剤が挙げられる。組成物の一実施形態においては、活性成分は、再構成される組成物の投与前に好適なビヒクル(例えば、滅菌された発熱源を含まない水)を用いて再構成するための乾燥(例えば、粉末または顆粒)形態で提供される。組成物を、滅菌注射用水性または油性懸濁液または溶液の形態で調製、包装、または販売することができる。この懸濁液または溶液を、当業界で公知の方法に従って製剤化してもよく、それは、活性成分に加えて、本明細書に記載のアジュバント、賦形剤および補助物質などのさらなる成分を含んでもよい。そのような滅菌注射用製剤を、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどの、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒を用いて調製することができる。他の許容し得る希釈剤および溶媒としては、限定されるものではないが、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、および合成モノまたはジグリセリドなどの固定油が挙げられる。
【0098】
有用な他の組成物としては、リポソーム調製物中の、または生分解性ポリマー系の成分としての、微結晶形態の活性成分を含むものが挙げられる。持続放出または埋込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩などの製薬上許容し得るポリマーまたは疎水性材料を含んでもよい。あるいは、組成物の活性成分を、粒子状担体に封入する、それに吸着させる、またはそれと結合させることができる。好適な粒子状担体としては、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来するもの、ならびにポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)に由来するPLG微粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al. (1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照されたい。他の粒子系およびポリマー、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン、ならびにこれらの分子のコンジュゲートなどのポリマーを用いることもできる。
【0099】
上記のように、本明細書に開示される組成物、特に、免疫治療組成物は、本明細書に開示される化合物に加えて、少なくとも1つの製薬上許容し得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体をさらに含む。いくつかの実施形態においては、医薬組成物は、1~99重量%の前記少なくとも1つの製薬上許容し得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体と、1~99重量%の本明細書に開示される化合物とを含む。活性成分と、製薬上許容し得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体との合わせた量は、組成物、特に、医薬組成物の100重量%を超えることはできない。
【0100】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるただ1つの化合物を、上記で考察された目的のために用いる。
【0101】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示される2つ以上の化合物を、上記で考察された目的のために組み合わせて用いる。
【0102】
本明細書に記載された化合物を含む組成物、特に、免疫治療組成物を、経口、静脈内、局所、腹腔内、経鼻、頬、舌下、もしくは皮下投与のために、または例えば、エアロゾルもしくは空気中に懸濁された微細な粉末の形態での気道を介する投与のために適合させることができる。したがって、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、粉末、ナノ粒子、結晶、非定型物質、溶液、経皮パッチまたは坐剤の形態にあってもよい。
【0103】
プロセスのさらなる実施形態は、本明細書の実験セクションに記載され、それぞれ個々のプロセスならびにそれぞれの出発材料は、実施形態の一部を形成し得る実施形態を構成する。
【0104】
ある実施形態が本発明のある特定の態様または複数の態様に関するものであることが特定されない限り、上記実施形態を、本明細書に記載の態様のいずれか1つ(「治療方法」、「免疫治療組成物」、「医薬としての使用のためのペプチド化合物」または「方法における使用のためのペプチド化合物」)ならびに本明細書に記載の実施形態のいずれか1つを指すものと見るべきである。
【0105】
本明細書で引用される、刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、あたかもそれぞれの参考文献が個別的かつ具体的に参照により組み込まれると示され、その全体が本明細書に記載されたのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0106】
全ての見出しおよび小見出しは、本明細書で便宜上用いられるに過ぎず、いかなる意味でも本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0107】
全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、別途本明細書に示されない限り、または別途本文によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
【0108】
開示される生成物および方法の異なる適用を当業界における特定の必要性に応じて調整することができることが理解されるべきである。また、本明細書で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0109】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、本文が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。かくして、例えば、「ペプチド(a peptide)」に対する参照は、2つ以上のそのようなペプチドを含む。
【0110】
本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」は、その最も広い意味で、2個以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、または他のペプチド模倣体の化合物を指す。かくして、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列およびまた、より長いポリペプチドおよびタンパク質を含む。本明細書で用いられる場合、用語「アミノ酸」は、DまたはL光学異性体を含む、天然および/もしくは非天然または合成のアミノ酸、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体、ならびにその製薬上許容し得る塩を指す。
【0111】
本明細書で用いられる「被験体」は、任意の哺乳動物、好ましくは、ヒトを含む。
【0112】
本明細書における値の範囲の記載は、別途本明細書に示されない限り、その範囲内にあるそれぞれ別々の値を個別的に指す簡便な方法として働くことを単に意図するものであり、それぞれ別々の値が、あたかもそれが本明細書に個別的に記載されたかのように本明細書に組み込まれる。別途記述しない限り、本明細書で提供される全ての抽出値は、対応する近似値を代表する(例えば、特定の因子または測定値に関して提供される全ての抽出例示値を、適切な場合、「約」で修飾された、対応する近似測定値をも提供すると考えることができる)。
【0113】
本明細書に記載される全ての方法を、別途本明細書に示されない限り、または別途本文によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0114】
本明細書に提供される任意かつ全ての例、または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明により良く光を当てることを意図するものであり、別途示されない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書における言語は、任意の要素が、同等に明示的に記述されない限り、本発明の実施にとって必須であると解釈されるべきではない。
【0115】
本明細書における特許文献の引用および組込みは、便宜上行われるに過ぎず、そのような特許文献の妥当性、特許性および/または権利行使可能性のいずれの観点も反映するものではない。
【0116】
ある要素または複数の要素に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」などの用語を用いた本発明の任意の態様または実施形態の本明細書における記載は、別途記述しないか、または本文によって明確に否定しない限り、特定の要素または複数の要素「からなる(consists of)」、「本質的にからなる(consists essentially of)」、または「を実質的に含む(substantially comprises)」本発明の類似する態様または実施形態に対する支援を提供することが意図される(例えば、特定の要素を含む本明細書に記載の組成物は、別途記述しないか、または本文によって明確に否定されない限り、その要素からなる組成物をも記載すると理解されるべきである)。
【0117】
本発明は、適用可能な法律によって許容される最大の程度で、本明細書に記載される主題の全ての改変および等価物を含む。
【0118】
態様
以下は、本開示のいくつかのさらなる態様である。
【0119】
1. 下記:
a)8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b)配列番号1またはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有する機能的相同体、および
c)配列番号1またはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/または置換された、機能的類似体
から選択され、a)、b)またはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸もアミドを含む、アルギナーゼ1のペプチド化合物;またはその製薬上許容し得る塩。
【0120】
2. a)C末端アミノ酸もアミドを含む、8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片から選択される態様1に記載のペプチド化合物;またはその製薬上許容し得る塩。
【0121】
3. ペプチド断片が、8~300個のアミノ酸、8~250個のアミノ酸、8~200個のアミノ酸、8~150個のアミノ酸、8~120個のアミノ酸、例えば、10~100個のアミノ酸、20~80個のアミノ酸、30~60個のアミノ酸、40~50個のアミノ酸の範囲の連続する配列からなる、態様2に記載のペプチド化合物。
【0122】
4. 配列番号1のペプチド断片が、ARG(1-310)、ARG(1-301)、ARG(1-291)、ARG(11-322)、ARG(21-322)、ARG(30-322)、ARG(40-322)、ARG(11-310)、ARG(11-301)、ARG(11-291)、ARG(21-310)、ARG(21-301)、ARG(21-291)、ARG(30-310)、ARG(30-301)、ARG(30-291)、ARG(40-310)、ARG(40-301)、およびARG(40-291)からなる群から選択される、態様2~3のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0123】
5. アルギナーゼ活性が、アルギナーゼ活性比色アッセイキット(BioVision Arginase assay #K755-100)などのアルギナーゼ活性アッセイによって測定した場合、アルギナーゼ1と比較して低下する、好ましくは、不活性まで低下する、態様1~4のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0124】
6. 連続する配列が、配列番号9から選択される1つの配列などの、配列番号2~17のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む、態様2~5のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0125】
7. a)の下のペプチド断片、b)の下の機能的相同体、またはc)の下の機能的類似体が、アルギナーゼ1を発現する細胞を認識するT細胞を活性化する、態様1~6のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0126】
8. 活性化が本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定される、態様7に記載のペプチド化合物。
【0127】
9. 前記態様のいずれか1つに記載のペプチド化合物をコードする、DNAまたはRNAなどの核酸。
【0128】
10. 態様9の核酸を含む、ウイルスベクターなどのベクター。
【0129】
11. 態様10のベクターを含む、哺乳動物細胞などの宿主細胞。
【0130】
12. 下記:
a)8~321個のアミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b)配列番号1またはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有する機能的相同体、および
c)配列番号1またはa)のペプチド断片において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、挿入および/または置換された、機能的類似体
から選択されるアルギナーゼ1の不活性ペプチドをコードする核酸を含むベクターであって、a)、b)またはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸もアミドを含み、核酸が不活性配列を発現し、不活性配列が、配列番号2~17からなる群から選択されるエピトープなどの少なくとも1つの免疫原性エピトープを含み、典型的には、エピトープが配列番号9から選択される、前記ベクター。
【0131】
13. 場合により、担体またはアジュバントなどの製薬上許容し得る添加剤と共に、態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞を含む組成物。
【0132】
14. 医薬としての使用のための、
a)態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞;および
b)アジュバント
を含む免疫治療組成物。
【0133】
15. 腫瘍を形成するがん疾患などの、がんから選択される疾患、障害または状態の治療または予防のための方法における使用のための、態様14に記載の免疫治療組成物。
【0134】
16. アジュバントが、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタニドISAアジュバントからなる群から選択される、態様14~15のいずれか1つに記載の免疫治療組成物。
【0135】
17. キット部品であって、
a)態様14~16のいずれか1つに記載の免疫治療組成物、ならびに
b)インターロイキン、例えば、IL-2および/もしくはIL-21などの免疫刺激化合物、化学療法剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗がん剤から選択される、少なくとも1つの第2の活性成分を含む組成物
を含む、前記キット部品。
【0136】
18. 提供される組成物が同時的または連続的に投与される、態様17に記載のキット部品。
【0137】
19. 配列番号1のアルギナーゼ1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態に罹患する個体に、有効量の態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞を投与することを含む、前記方法。
【0138】
20. がん患者における、CD4およびCD8 T細胞などの、アルギナーゼ1特異的T細胞の刺激のための方法であって、がん患者に、有効量の態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞を投与することを含む、前記方法。
【0139】
21. がん患者における、アルギナーゼ1を発現する細胞の免疫抑制機能を抑制する方法であって、がん患者に、有効量の態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞を投与することを含む、前記方法。
【0140】
22. アルギナーゼ1の発現を特徴とするがんの治療または予防のための、免疫治療組成物またはワクチンなどの医薬の製造のための、態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞の使用。
【0141】
23. サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞などの、さらなるがん療法と同時的または連続的に投与した(施した)場合の、がんの治療または予防のための方法における使用のための、態様1~8のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様9に記載の核酸または態様10もしくは12に記載のベクターまたは態様11に記載の宿主細胞。
【0142】
24. チェックポイント遮断抗体が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンから選択される、態様23に記載のペプチド断片、核酸、ベクターまたは宿主細胞。
【0143】
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)配列番号1(アルギナーゼ1)または配列番号60(アルギナーゼ2)のヒトアルギナーゼタンパク質の単離された免疫原性ポリペプチド断片であって、該断片が最大で55アミノ酸長であり、配列番号52または配列番号58のいずれかの少なくとも8、9、10、20、30、40または50個の連続するアミノ酸の配列を含むか、またはそれから成る、前記断片。
(2)配列番号52、50、51、37、35、35、34、9、53、54、2~33、または38~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、またはそれから成る、(1)記載のポリペプチド断片。
(3)配列番号37、36、34または35のいずれか1つの少なくとも8、9、10、15または20個全部の連続するアミノ酸を含み、場合により、配列番号34中のシステインが保存的置換によって置き換えられた、(1)または(2)記載のポリペプチド断片。
(4)(1)~(3)のいずれか1記載のポリペプチド断片であって、
a. C末端アミノ酸が対応するアミドで置き換えられた;および/または
b. 配列番号1の190位に対応する位置のLがIで置き換えられた;および/または
c. 配列番号1の205位に対応する位置のRがKで置き換えられた;および/または
d. ポリペプチドの溶解度または製造性を改善するために少なくとも1つのさらなる部分がNおよび/もしくはC末端に結合され、場合により、前記さらなる部分がRもしくはKなどの親水性アミノ酸である;および/または
e. 前記断片が、対応する完全長アルギナーゼと比較してアルギナーゼ活性を欠く、もしくはアルギナーゼ活性が低下している;および/または
f. 前記断片が対応するアルギナーゼを発現する細胞を認識するT細胞を刺激することができる、
前記断片。
(5)(1)~(4)のいずれか1記載のポリペプチド断片、製薬上許容し得る希釈剤または担体、および場合により、アジュバントを含む組成物。
(6)アジュバントが、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択される、(5)記載の組成物。
(7)被験体における疾患または状態を治療または予防する方法であって、前記被験体に、(1)~(4)のいずれか1記載の単離されたポリペプチドまたは(5)もしくは(6)記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
(8)疾患もしくは状態が、少なくとも部分的には、アルギナーゼの不適切な、もしくは過剰な免疫抑制機能を特徴とする、および/または疾患もしくは状態ががんである、(7)記載の方法。
(9)疾患または状態ががんであり、場合により、前記方法が、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤(例えば、抗体)、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、および樹状細胞などのさらなるがん療法の同時的または連続的投与をさらに含む、(8)記載の方法。
(10)さらなるがん療法が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのうちの1種以上である、(9)記載の方法。
本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、これらは保護の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。前記説明および以下の実施例に開示される特徴は、両方とも別々に、またその任意の組合せにおいて、その多様な形態で本発明を実現するための材料であってよい。
【実施例
【0144】
序論
以下は、以下の実験のいくつかの計画および実行の背後にある原理を説明する。
【0145】
アルギナーゼ1に由来する新しい免疫原性エピトープ、および新しい免疫原性エピトープに対する強力な免疫応答ならびにアルギナーゼ1のいくつかのペプチド断片に対して検出される頻繁な免疫応答に加えて、本発明者らはまた、T細胞が同様にアルギナーゼを認識するかどうかを同定する。さらに、アルギナーゼに由来する免疫原性エピトープを同定する。リバースイムノロジー手法を用いて、潜在的なMHCクラスI結合モチーフを同定し、候補ペプチドを合成する。続いて、対応するMHC対立遺伝子への実際の結合を確立する。クラスI結合ペプチド化合物の同定の後、そのようなペプチドを、ペプチド特異的T細胞によるサイトカイン放出についてELISPOTアッセイにおいて検査して、特異的T細胞ががん患者ならびに健康なドナーの末梢PBMC中に存在するかどうかを検査する。計画された研究において、四量体MHC/ペプチド複合体を、フローサイトメトリーにより末梢血中のT細胞反応性を調査するさらなる手段として用いる。最後に、四量体MHC/ペプチド複合体を用いて、患者の血液または腫瘍浸潤したリンパ節から直接的に特異的T細胞を単離する。これを用いて、特異的T細胞の機能的能力を決定する。
【0146】
さらに、CD4+T細胞は抗原特異的細胞性および体液性免疫応答を生成し、維持するのに重要な役割を果たすため、本発明者らは、MHCクラスII分子により提示される新規エピトープを検索する。CD4+T細胞は、ELISPOTアッセイにおいてタンパク質配列全体に及ぶ18マーの重複合成ペプチドを提示する。ペプチド特異的CD4+T細胞クローンは、ペプチドを用いる反復刺激によって生成される。さらに、部分的に組織適合性のEBV-B細胞系およびMHCクラスII特異的抗体のセットを用いて、HLAクラスII制限エレメントを同定する。最後に、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)培養物を、極めて重要なin vivoでの標的に関する重要な情報を示す、CD4およびCD8ペプチドエピトープに対する反応性について分析する。
【0147】
アルギナーゼは、免疫系にける主要なプレーヤーであり、そのようなT細胞が一般的な免疫調節に関与すると考えることができる。これらの研究のさらなる部分は、したがって、アルギナーゼ特異的T細胞の役割が免疫調節における役割も有することを分析することを目的とする。第1に、アルギナーゼ特異的T細胞が、アルギナーゼ発現調節細胞を排除することによって、局部免疫抑制を抑制する、および/または遅延させることによって免疫を行うことができるかどうかを検査する。アルギナーゼT細胞の可能な免疫効果を検査するために、アルギナーゼ特異的T細胞の存在またはアルギナーゼ由来ペプチドによるそのようなT細胞の活性化が、他の抗原に対するさらなるTおよび/またはB細胞応答を促進し得るかどうかを検査する。調節性細胞は、所与の免疫応答の強度および持続期間に寄与する。かくして、他の免疫細胞に対するアルギナーゼ特異的T細胞の任意の「支持」効果は、いくつかの直接的および間接的様式で良好に媒介され得る。これに関して、必須アミノ酸のレベル、Tregの頻度ならびにIL-17産生細胞の頻度を検査する。さらに、INF-γ、IL-6、TNF-αならびにIL-10およびTGF-βなどの様々なサイトカインの全体的な産生に対するアルギナーゼ特異的T細胞の効果を検査する。アルギナーゼ特異的T細胞の別の可能性のある効果は、アルギニンの代謝産物によって媒介され得る。さらに、FACSによるアルギナーゼ特異的T細胞の表現型ならびにそのようなT細胞のサイトカインプロファイルの分析を記載する。さらに、共刺激分子の発現(FACS)、エフェクター細胞およびAPCの直接的または間接的殺傷(サイトトックスアッセイ)に対処する。多数のT細胞を含有するがん患者に由来する白血球除去輸血試料の使用により、ドナーから直接単離されたアルギナーゼ特異的T細胞の天然のサブセットを用いる実験を実施することが可能になる。
【0148】
ペプチド
これらの実験で用いられるペプチドの配列を、以下の表Aに完全に示す(「配列」の表題のセクションを参照されたい)。ペプチドは、配列番号、名称、またはアルギナーゼ1の完全長配列内の各ペプチド配列の開始および終止位置に対する参照によって表A中に記載される。それぞれを互換的に用いることができる。例えば、配列番号34のペプチドを、Arg1-17の名称で代替的に言うことができるか、またはあるいは、Arg161-190(161の開始位置および190の終止位置が与えられる)と言うことができる。各事例における意図される参照は、文脈から明らかであろう。配列番号9のペプチドはさらに、ArgShortと呼ぶことができる。
【0149】
20マーおよび22マーのペプチドを、PepScan(Netherlands)によって合成し、10mMでDMSO中に溶解した。30マーおよび50マーのペプチドを、Schafer-N Aps(Denmark)によって合成し、10mMストックでDMSO中に溶解した。より短いペプチドはKJ Ross-Petersen Aps(Denmark)によって合成し、滅菌水に溶解して、2mMのストック濃度とした。合成されたペプチドの純度は80%を超えていた。
【0150】
〔実施例1〕
患者、プロトコールおよび方法
患者材料:
本プロジェクトは、メラノーマ、腎細胞癌および卵巣がん患者に由来する血液および腫瘍病変の分析に基づくものである。血液および腫瘍試料の収集を、Herlev Hospitalで行った。血液試料を、いずれかの種類の抗がん療法の終結後、少なくとも4週間にわたって採取した。PBMCを、Lymphoprep(商標)(Alere AS、カタログ番号1114547)分離を用いて単離し、HLAタイピングし、10%DMSO(Sigma-Aldrich、カタログ番号D5879-100ML)を含むFCS中で凍結した。材料の即時のプロセッシングを、地方の倫理的要求に従ってCCIT (Centre for Cancer Immunotherapy)で取り扱った。全ての患者は、インフォームドコンセント文書がある場合、および倫理委員会がプロジェクトを認可した場合にのみ参加する。
【0151】
酵素結合イムノスポット(ELISPOT):
「ELISPOT」技術を使用して、利用可能なT細胞が比較的少ないにも拘わらず、多数のペプチド抗原のT細胞認識をスクリーニングすることができる。「ELISPOT」技術は、T細胞が、TCRとの遭遇およびその後のシグナリングの際にサイトカイン、例えば、IFN-γを合成するという事実を利用するものである。この方法を用いて、選択された任意のサイトカインの分泌について分析することができる。本発明者らの研究室では、本発明者らは、IFN-γ、TNF-α、IL-10、グランザイムBならびにパーフォリンをELISPOT分析において日常的に用いている。標準化された定量化は、ELISPOTリーダー(IMMUNOSPOT、CTLanalyzers LLC http://www.immunospot.com/)の使用によって達成される。
【0152】
細胞傷害アッセイ
CTL媒介性細胞傷害性に関する従来の51Cr放出アッセイを、他の場所に記載のように実行した[3]。標的細胞は、T2細胞(ATCC)、HLA-A2+メラノーマ細胞系(FM3およびFM93)であった。
【0153】
FACS:
過去数年にわたって、新しい強力なFACS技術が、特に、免疫機能および特異性の研究のために開発されてきた。これに関して、ペプチド/HLA複合体が、ペプチド特異的T細胞の頻度を分析するために容易に用いられる。特異的T細胞を単離し、in vitroで増殖させることができる。細胞内染色のために、細胞をアルギナーゼ由来ペプチドで刺激し、表面マーカーのために、本発明者らは4μlのNIR、10μlのCD4 PerCP、2μlのCD8 Pacific Blue、および10μlのCD3 FITCを使用し、細胞内染色のために、本発明者らは、PE-Cy7またはAPCとコンジュゲートした2μlの抗TNF-aおよび抗IFN-g抗体を用いた。洗浄、透過処理および染色手順、次いで、以前に記載された方法を行った[4]。フローサイトメトリー分析を、FACSCANTO II(BD Biosciences、San Jose CA、USA)上で実施した。
【0154】
結果:
アルギナーゼ1に由来する16種のペプチドを設計した。これらのペプチドを、本明細書ではArg1~Arg16(配列番号12~17)と呼ぶ。これらのペプチドの配列は、以下の表Aに完全に示される(「配列」の表題のセクションを参照されたい)。15種のペプチド(Arg1~Arg15)を、ELISPOTにおいて検査した。本発明者らは、IFN-γ ELISPOT分泌アッセイを用いて、Arg由来ペプチドに対する特異的T細胞応答の存在について6人のメラノーマ患者に由来する末梢血単核細胞(PBMC)を精査した。Arg2(配列番号3)、Arg3(配列番号4)、Arg5(配列番号6)、Arg6(配列番号7)、Arg7(配列番号8)、Arg8(配列番号9)、Arg9(配列番号10)、Arg10(配列番号11)、Arg11(配列番号12)、Arg14(配列番号15)、Arg15(配列番号16)に対する強力な応答が検出された。図1は、Arg特異的T細胞応答を例示する。特に、Arg8(配列番号9)を、より詳細に検査した。Arg8に対する免疫応答をホスティングする患者PBMC。図2に見られるようなアルギナーゼ由来Arg8ペプチドに対する6人のがん患者に由来する免疫応答(特異的細胞/3x10e5細胞)。非常に強力な応答が、患者PBMC間で頻繁に検出された。
【0155】
本発明者らは次に、配列番号1の全アルギナーゼ配列に及ぶ重複する20マーの重複ペプチドを検査した。かくして、配列の全長に及ぶ30x20マーペプチドおよび1x22マーペプチドが存在する。これらのペプチドの配列は、以下の表Aに完全に示され(「配列」の表題のセクションを参照されたい)、配列番号18~48に対応する。本発明者らは、上記のペプチドを使用して、図3に見られる3人のがん患者に由来するPBMCにおける免疫応答を検査した。いくつかのペプチド、特に、Arg1-23、Arg1-18、Arg1-27、Arg1-17、Arg1-19、Arg1-12、Arg1-20、Arg1-4、Arg1-1、Arg1-7、Arg1-14、Arg1-15、Arg1-6、Arg1-16、Arg1-22、Arg1-29と呼ばれる長いペプチドに対して頻繁な免疫応答が検出された。さらに、本発明者らは、これらの長いペプチドに対する健康な個体に由来するPBMC中での応答を示す(図4)。
【0156】
CD8陽性培養物は、図5に見られるような標準的なクロム放出アッセイによって検査されたように、表面上にArg8を載せた標的細胞を殺傷することができる。アルギナーゼ特異的T細胞によるアルギナーゼ陽性がん(メラノーマ)細胞系FM3およびFM93の殺傷も、図6に見られるような標準的なクロム放出アッセイを用いて証明した。この実験では、アルギナーゼ特異的T細胞を、異なるエフェクター:標的比でCr標識メラノーマ細胞系FM3またはFM93と共に4hインキュベートした。両細胞系とも細胞内アルギナーゼを発現する。
【0157】
次に、本発明者らは、CD4 CD4 T細胞がin vitroでの刺激後にアルギナーゼを認識することができるかどうかを検査した。したがって、本発明者らは、細胞内サイトカイン染色を用いてArg8に対する応答を示す患者に由来するPBMCを分析することを選択した。この方法はELISPOTよりも感度が低いが、どの免疫細胞がELISPOTにおいて同定されたサイトカインを分泌するかを解明することができる。したがって、本発明者らは、がん患者に由来するCD4 T細胞を、Arg8ペプチドで5回刺激した。次に、本発明者らは、Arg8ペプチドでin vitroで5回刺激した後、T細胞培養物のINF(PE-Cy7A)およびTNF-アルファ(APC-A)に対する細胞内染色を実施した。培養物を、図7に見られるように、Arg8ペプチドを用いて、または用いずに刺激する。同様の結果が図8に見られる。
【0158】
結論として、CD8とCD4 T細胞は両方とも、標的細胞の表面上のアルギナーゼ由来ペプチドを認識することができる。アルギナーゼ1の161~190位に及ぶ領域は、特に免疫原性であると考えられる。この領域を、本明細書ではホットスポットと呼ぶことができる。
【0159】
〔実施例2〕
材料および方法
さらなるペプチド刺激およびELISPOTアッセイ
健康なドナーまたはがん患者に由来するPBMCを、80μgのアルギナーゼ由来ペプチドおよび120U/mlのIL-2(Peprotech, London, UK、カタログ番号200-02)で1週間刺激した。次いで、4~6x105個のPBMCを、IFN-γ捕捉Ab(Mabtech、カタログ3420-3-1000)で予備コーティングしたELISPOTプレート(MultiScreen MAIP N45によるニトロセルロース底96ウェルプレート;Millipore、カタログ番号MSIPN4W50)の底部に入れ、1~10μgのアルギナーゼ由来ペプチドを添加した。各患者およびドナーに由来するPBMCを、ペプチドおよび対照刺激について2回または3回設定した。細胞を、抗原の存在下で14~16時間、ELISPOTプレート中でインキュベートした後、それらを洗浄除去し、二次ビオチン化Ab(Mabtech、カタログ番号3420-6-1000)を添加した。2時間のインキュベーション後、未結合の二次抗体を洗浄除去し、ストレプトアビジンコンジュゲートアルカリホスファターゼ(AP)(Mabtech、カタログ番号3310-10)を1時間添加した。次に、未結合のコンジュゲート化酵素を洗浄除去し、BCIP/NBT基質(Mabtech、カタログ番号3650-10)を添加することによってアッセイを展開する。展開されたELISPOTプレートを、Immunospotソフトウェアv5.1を用いてCTL ImmunoSpot S6 Ultimate-V分析装置上で分析した。アルギナーゼ1ペプチドで刺激したウェルと、対照ウェルにおけるスポットの平均数の間の差異として、応答を算出した。
【0160】
HLAブロッキング
HLAクラスIおよびIIのブロッキングのために、PBMCを2μg/mlのブロッキング抗体:抗ヒトHLA-DR、DP、DQ抗体クローンTu39(Biolegend、カタログ番号361702)または抗ヒトHLA-ABC抗体クローンw6/32(Dako、Agilent)と共にRTで20分間予備インキュベートした後、ペプチドを添加した。
【0161】
アルギナーゼ特異的T細胞培養物の確立
アルギナーゼ特異的T細胞培養物を、照射されたArgShort(配列番号9)ペプチドをロードした自己DCまたはPBMCを用いるがん患者のPBMCの刺激によって確立した。次の日、IL-7およびIL-12(PeproTech、London、UK、カタログ番号200-07-10および200-12)を添加した。培養物の刺激を、ArgShortペプチドをロードした照射された自己DC、次いで、ArgShortペプチドをロードした照射された自己PBMCを用いて8日毎に実行した。ペプチド刺激の次の日、IL-2(PeproTech、London、UK、カタログ番号200-12)を添加した。5回の刺激後、アルギナーゼ特異的T細胞を、TNF-α細胞富化キット(MiltenyiBiotec、カタログ番号130-091-269)を用いて富化した。
【0162】
樹状細胞の生成
DCを、RPMI1640中、37℃で1~2時間、培養皿上に接着させることによりPBMCから生成した。接着性の単球を、IL-4(250U/ml)およびGM-CSF(1000U/ml)(Peprotech、London、UK、カタログ番号200-04および300-03-100)の存在下、10%FCSを添加したRPMI1640中で6日間培養した。DCを、IL-β(1000U/ml)、IL-6(1000U/ml)、TNF-α(1000U/ml)(Peprotech、London、UK、カタログ番号200-01B、200-06および300-01A)およびPGE2(1ug/ml)(Sigma Aldrich、カタログ番号P6532)の添加により成熟させた。
【0163】
B細胞の単離
がん患者由来PBMCを解凍し、一晩休ませた。B細胞を、製造業者の指示書に従ってPan B Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec Inc.、カタログ番号130-101-638)を用いて患者PBMCから単離した。
【0164】
in vitroで転写されたmRNAの産生
アルギナーゼをコードするcDNA(受託番号NM_000045)を合成し、5'XhoI/3'PacI制限部位(Geneart/Life Technologies)を用いてpSP73-SphA64 (Dr.E.Gilboa、Duke University Medical Center、Durham、NCによって親切に提供された)中に、または5'BamHI/3'BamHI制限部位を用いてHLAクラスII標的化プラスミドpGEM-sig-DC.LAMP(Dr.K.Thielemans、Medical School of the Vrije Universiteit Brusselによって親切に提供された)中にクローニングした。両方のプラスミドをSpeIで線状化した後、in vitroでの転写のためのDNA鋳型として用いた。
【0165】
エレクトロポレーション
mRNA実験のために、樹状細胞およびB細胞に、以前に記載されたエレクトロポレーションパラメーターを用いて、アルギナーゼmRNAまたはGFPもしくは神経成長因子受容体(NGFR)をコードする対照mRNAをトランスフェクトした。簡単に述べると、細胞を2回洗浄し、Opti-MEM培地(Invitrogen、カタログ番号11058021)中に懸濁し、4~7x106細胞/mlの最終細胞密度に調整した。細胞懸濁液(200~300μl)を氷上で5分間予備インキュベートし、5~10μgのmRNAを添加した。次いで、細胞懸濁液を4mmギャップのエレクトロポレーションキュベットに移し、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーションした細胞を、5%CO2を含む加湿雰囲気中でさらにインキュベートし、特定されたような実験分析のために用いた。エレクトロポレーション効率を、GFPまたはNGFRをトランスフェクトされた細胞のFACS分析によって24時間後に決定した。
【0166】
フローサイトメトリー分析
フローサイトメトリー分析を、FACSCanto(商標)II (BD Biosciences、San Jose CA、USA)上で実施した。細胞を、20マーのペプチドで5時間または30マーのペプチドで8時間刺激した後、細胞培養物の細胞内染色を実施した(BD GolgiPlug(商標)、カタログ番号555029を最初の1時間後に添加した)。次いで、細胞を表面マーカーについて染色した後、洗浄し、製造業者の指示書に従ってFixation/Permeabilization and Permeabilization Buffer (eBioscience、カタログ番号00-5123-43)を用いることにより透過処理した。用いた抗体:IFNγ-APC(カタログ番号341117)、TNFα-BV421(カタログ番号562783)、CD4-FITC(カタログ番号347413)、CD8-PerCP(カタログ番号345774)(全てBD Biosciencesから)。死んだ細胞を、製造業者の指示書に従ってFVS510(564406、BD Biosciences)を用いて染色した。
【0167】
結果
アルギナーゼ-1に対する自発的免疫応答
本発明者らは、アルギナーゼ-1タンパク質配列全体を重複する20アミノ酸長のペプチドに分割し、全配列(配列番号18~48)を包含する31種のペプチドのライブラリーを生成した。ライブラリー中の各ペプチドは、以下のペプチドの最初の10アミノ酸と重複していた。このアルギナーゼペプチドライブラリーおよびINFγELISPOTアッセイを用いて、本発明者らは次に、自発的応答についてメラノーマ患者および健康なドナーに由来するPBMCをスクリーニングした(図9Aおよび9B)。PBMCを、3~4の隣接する20マーのアルギナーゼライブラリーペプチドのプールおよび低用量のIL-2(120U/mL)で1週間刺激した。次いで、それらをIFNγELISPOTアッセイのために設定して、それぞれの20マーのペプチドに対する応答について別々にスクリーニングした。以下の8つのペプチドが、がん患者のPBMC中で最も高く、最も豊富な応答を示した(ペプチドは開始および停止位置を参照して標識される):Arg(31-50)、Arg(111-130)、Arg(161-180)、Arg(171-190)、Arg(181-200)、Arg(191-210)、Arg(221-240)、およびArg(261-280)。これらの重複ペプチドのうち、Arg(161-180)、Arg(171-190)、Arg(181-200)、およびArg(191-210)は、50アミノ酸長の領域に広がり、ほぼ全ての患者がこれらのペプチドの1つ以上に対する応答を担持していたため、ホットスポット領域であると見なされた(図9A)。選択された8つのペプチドをさらに用いて、IFNγELISPOTを用いて8人の健康なドナーに由来するPBMC中でアルギナーゼ-1に対する自発的免疫応答についてスクリーニングした。がん患者に由来するPBMC中と同様、健康なドナーに由来するPMBCは、ホットスポット領域中で4つのアルギナーゼペプチドに対する最も高いIFNγ応答を示した(図9B)。
【0168】
メラノーマTILにおけるアルギナーゼ-1応答
がんにおける腫瘍浸潤性リンパ球間のアルギナーゼ特異的T細胞の存在可能性を精査するために、本発明者らは、アルギナーゼ-1由来ペプチドに対する応答について8人のメラノーマ患者に由来するTILをスクリーニングした。この目的のために、本発明者らは、ペプチド刺激に応答するIFNγおよびTNFα放出について細胞内染色を実施した。TILを解凍し、IL-2を用いずに一晩休ませた後、3つのホットスポット免疫原性領域20マーペプチド(ペプチドは開始および停止位置を参照して標識される):Arg(161-180)、Arg(171-190)、Arg(181-200)で5時間刺激した。1つのTIL培養物において、IFNγが3つ全てのアルギナーゼペプチドによる刺激に応答してCD4+T細胞から放出された(図10A)が、これは、アルギナーゼ-1ホットスポット領域がいくつかのCD4+T細胞エピトープを含有する可能性があることを示唆している。IFNγ産生細胞のパーセンテージは、Arg(161-180)と比較して、Arg(171-190)およびArg(181-200)について高く、Arg(181-200)に対する応答は、Arg(161-180)に対するもののほぼ2倍であった。IFNγもTNFα放出もCD8+T細胞からは観察されなかった。
【0169】
アルギナーゼ-1ホットスポット領域はCD4+およびCD8+T細胞によって認識される
本発明者らはホットスポット領域に由来するアルギナーゼ-1ペプチドに対する応答を最も頻繁に観察したため、本発明者らは次に、同じ配列を包含するより長いペプチドを4つの20マーの代わりに用いることができるかどうかを分析した。ホットスポット領域全体を包含する50マーのペプチドは、20マーのペプチドと比較してより低い応答を惹起した(データは示さない)。本発明者らは次いで、アルギナーゼ-1ホットスポット領域を、10アミノ酸が重複する2つの30マーのペプチドに分割した(ペプチドは開始および停止位置を参照して標識される):Arg(161-190)およびArg(181-210)。これらの30マーのペプチドを用いて、20マーのホットスポットペプチドに対する応答を以前に示した、がん患者および健康なドナーに由来する選択されたPBMC中での応答についてチェックした。PMBCを、IL-2の存在下でArg(161-190)またはArg(181-210)で1週間刺激した後、IFNγELISPOTにおいて用いた。がん患者と健康なドナーの両方に由来するPBMCが、20マーのペプチドに対する応答と比較して、Arg(161-190)に対する高い応答(図10B)を示した。いくらかのPBMCも、30マーのArg(181-210)ペプチドに対する応答を示した(図10C);しかしながら、これらの応答は、同じタンパク質領域を包含する重複する20マーのペプチドに対するものよりも低かった(図9B)。
【0170】
どの種類のT細胞がホットスポット領域中のペプチドエピトープに反応したかを精査するために、本発明者らは、IFNγELISPOTにおいてArg(161-190)ペプチドに対する応答を示した、2人の健康なドナーおよび1人のがん患者に由来するPBMC中でのIFNγおよびTNFαについて細胞内染色を実施した。本発明者らは、Arg(161-190)と共に8時間インキュベートした後、CD4+T細胞からのTNFα放出を検出した(図11A)。本発明者らはまた、いくつかの試料においてCD8+T細胞からの少しの応答も検出した(データは示さない)が、これは、アルギナーゼ-1ホットスポット領域中のHLAクラスIおよびIIエピトープの存在を示唆している。HLAクラスIまたはクラスII発現の遮断は、Arg(161-190)ペプチド刺激に応答してIFNγ放出を部分的に遮断したが、これは、Arg(161-190)がCD4+およびCD8+T細胞エピトープを含有していたことをさらに示している(図11B)。
【0171】
本発明者らは、ホットスポット領域中に位置する最小アルギナーゼペプチド(ArgShort)をロードしたDCおよびPBMCを用いる、メラノーマ患者由来PBMCの反復刺激によりアルギナーゼ特異的CD4+T細胞培養物を生成した。最小アルギナーゼエピトープに対して特異的なT細胞培養物はまた、IFNγELISPOT(図11C、左)および細胞内染色(図11C、右)において30マーのArg(161-190)ペプチドを認識した。しかしながら、ホットスポット領域全体を包含する50マーのペプチドは認識されなかった。Arg(161-190)ペプチド刺激の8時間後、細胞内染色は、CD4+T細胞からのTNFα放出を示した。
【0172】
アルギナーゼ-1発現に依存するT細胞認識
アルギナーゼ-1を産生する免疫細胞を認識し、それに対して反応するアルギナーゼ特異的CD4+T細胞の能力を評価するために、本発明者らは、自己樹状細胞およびB細胞に、アルギナーゼ-1 mRNAをコードする2つの異なる構築物をトランスフェクトした。これらの構築物の1つは、タンパク質をリソソーム区画に対して標的化し、かくして、そのタンパク質をクラスII提示に対して指向させる、DC-LAMPシグナル配列に融合したアルギナーゼ-1配列を含有していた。2人の異なるメラノーマ患者に由来するアルギナーゼ特異的CD4+T細胞培養物を、IL-2を用いずに24時間休ませた後、エレクトロポレーションした自己DCまたはB細胞を用いるIFNγELISPOTのために設定した。本発明者らは、モック対照と比較して、アルギナーゼ-1 mRNAをトランスフェクトしたDCおよびB細胞に対して、より高い反応性を観察した(図12A~D)。その応答は、モック対照とアルギナーゼ-1 mRNAの両方と比較して、アルギナーゼ-DC-LAMPをトランスフェクトしたDCに対してさらにより高かった(図12E)。24時間後、本発明者らは、GFP/NGFRを発現する細胞のFACS分析によりDCのエレクトロポレーション効率をチェックし、90%を超えるトランスフェクション効率を見出した。
【0173】
結論
これらの実験は、アルギナーゼ1の161~190位に及ぶ領域ががん患者と健康なドナーの両方において特に免疫原性であり、CD4とCD8の両方が陽性のT細胞応答を生じることを確認する。この領域は、制限された複数のHLAクラスIおよびクラスIIを含有してもよい。この領域に由来するペプチドは、アルギナーゼ1に対するワクチンにおいて特に有効であり得る。そのようなワクチンは、がんにおける治療利益を有すると予想される。
【0174】
〔実施例3〕
in vivoでの実験
in vivoでの実験のためのペプチドの設計
マウスにおけるワクチン接種実験における使用にとって好適なペプチドを設計するために、マウスアルギナーゼ1の配列(配列番号59)を、配列番号1のヒトアルギナーゼ1配列と比較した。配列が高レベルの類似性を有することを示す、図13に示されるアラインメントを参照されたい。類似性のレベルは、特に、上記の例に記載されたヒトアルギナーゼ1のホットスポット領域、すなわち、配列番号1の161~210位に対応する領域において高い。この50アミノ酸の領域は、図13中で両配列について太字で示される。この領域と、マウスアルギナーゼ1における対応する領域とのアラインメントも、以下に示される:
【0175】
50個のうちのわずか2個が異なり、太字かつ下線付きで示される。ヒト配列中のロイシンは、マウスにおいては高度に類似する脂肪族アミノ酸であるイソロイシンに置換されており、ヒト配列中のアルギニンは、マウスにおいては同様に塩基性のリシンに置換されている。両方の変化は保存的である。したがって、ホットスポット領域は、ヒトとマウスとの間で高度に保存的である。
【0176】
上記の類似性を考慮して、以前の実施例で試験されたヒトペプチドのマウス類似体を作出するためには、比較的少ない変化が必要であることが決定された。用いたペプチドは、したがって、以下の通りであった:
【0177】
ARG17は、ヒトアルギナーゼ1(配列番号1)の161~180位の配列である。マウスアルギナーゼ1における対応する領域は、同一である(また、以前の実施例ではARG1-17およびARG(161-180)と互換的に呼ばれている)。
【0178】
ARG1-19は、ヒトアルギナーゼ1(配列番号1)の181~200位の配列である。マウスアルギナーゼ1における対応する領域は、1個の位置で異なる(太字の下線付きのLは、マウス配列ではIで置き換えられる)(また、以前の実施例ではARG(181-200)と互換的に呼ばれている)。
【0179】
mARG1は、ヒトアルギナーゼ1(配列番号1)の172~179位の配列である。マウスアルギナーゼ1における対応する領域は、同一である。
【0180】
mARG2は、ヒトアルギナーゼ1(配列番号1)の193~200位の配列である。マウスアルギナーゼ1における対応する領域は、同一である。
【0181】
mARG20は、マウスアルギナーゼ1(配列番号59)の191~210位の配列である。ヒトアルギナーゼ1における対応する領域は、配列番号37であり、1個の位置で異なる(太字の下線付きのKは、ヒト配列ではRで置き換えられる)。
【0182】
C57BL/6およびBalb/cマウスのペプチドワクチン接種
動物に、不完全Freundアジュバント(IFA)またはモンタニドとの1:1エマルジョン中の、DMSO/H2O中の100μgのペプチドを皮下的にワクチン接種した。IFA+DMSO/H2Oを、対照ワクチンとして用いた。ワクチン接種を、0日目および7日目に実行した。特異的ペプチドに対する免疫応答のその後の分析のために、マウスを14日目に犠牲にし、流入領域リンパ節(dLN)を収獲した。
【0183】
ペプチド特異的応答のELISPOT分析
マウス免疫細胞を、ELISPOT分析にかけた。単細胞懸濁液を、細胞ストレーナーを通過させることにより、脾臓またはdLNから調製した。赤血球を溶解した後、0.9x10E6個の細胞/ウェルを、抗IFNガンマ抗体でコーティングしたELISPOTプレート中に播種した。目的のペプチドを指定のウェルに添加し、細胞をペプチドと共に一晩インキュベートした。次の日、細胞を取り出し、プレートを洗浄し、ビオチン化された検出抗体と共にインキュベートした。最後に、ストレプトアビジン-ALPおよび基質の添加後、目に見えるスポットが出現する。それぞれのスポットは、個々のIFNガンマ産生細胞に対応する。プレートを、Immunospot分析装置中で分析し、スポット/0.9x10E6細胞-バックグラウンド(すなわち、対応する非刺激(ペプチドなし)ウェル中のスポット数を引く)としてプロットした。
【0184】
オスのBalb/cマウス、9~10週齢、4匹の動物/群の腫瘍ワクチン接種
それぞれの動物の左脇腹に、100μlのPBS中の0.5x10E6個の同系CT26.WT結腸がん細胞を皮下的に接種した。6日目に、接種後、腫瘍が触診可能になった時、動物はペプチドまたは対照ワクチン(ペプチドワクチン接種について上記されたもの)の1回目のワクチン接種を受けた。13日目に、動物は、2回目のワクチン接種を受けた。腫瘍増殖をモニタリングし、腫瘍を週に3回測定した。腫瘍体積を、V[mm3] = lx w2/2(式中、lは最も長い直径であり、wはlと直交する)で算出した。
【0185】
結果
ARG17、ARG1-19およびmARG20は全て、C57BL/6マウスとBalb/cマウスの両方において免疫原性であることがわかった。ペプチド特異的応答は、ARG17、ARG1-19およびmARG20のそれぞれをワクチン接種されたC57BL/6マウスとBalb/cマウスの両方において検出された(図14~15を参照されたい)。より短いペプチドのうち、mARG1はC57BL/6マウスにおいて免疫原性であり、mARG2はいずれの株においても免疫原性ではなかった(データは示さない)。
【0186】
腫瘍接種実験において、ARG17、ARG1-19およびmARG20のそれぞれを用いるワクチン接種は、対照ペプチドを用いるワクチン接種と比較して腫瘍増殖を阻害することがわかった。その効果は、ARG1-19およびmARG20に関して最も顕著であったが、治療利益は3つ全ての試験したペプチドについて明らかであった。これは、がんのための治療としての本発明のペプチドの(および一般に、アルギナーゼ1に対するワクチン接種の)可能性を確認するものである。
【0187】
ARG17に対するより少ない応答は、例えば、システイン残基の存在のため、そのペプチドの安定性の欠如を反映し得る。保存的置換によるそのアミノ酸の置き換えは、161~180位によって定義されるArg1の配列の他の特性を変化させることなく、この問題を解決することができる。しかしながら、これらの結果はまた、181~200位、特に、191~210位によって定義されるArg1の配列は製造が容易であり、安定的であり、マウスにおいて最良の応答を生成すると考えられるという点で、それらが好ましいことも示唆している。
【0188】
【0189】
【0190】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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