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特許7211942金属部品の部分熱処理用の焼き戻しステーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】金属部品の部分熱処理用の焼き戻しステーション
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/18 20060101AFI20230117BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20230117BHJP
   C21D 1/673 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C21D1/18 C
C21D9/00 A
C21D1/673
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019524318
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017078675
(87)【国際公開番号】W WO2018087191
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】102016121699.2
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】315015977
【氏名又は名称】シュヴァルツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンケル,ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,アンドレアス
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0110961(KR,A)
【文献】特開昭63-225693(JP,A)
【文献】特開2014-141367(JP,A)
【文献】特開2013-170454(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0004948(KR,A)
【文献】特表2012-500377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/00-9/44;9/50
C21D 1/00-1/84
C21D 7/00-8/10
C21D 9/663-11/00
F27B 9/00-9/40
F27D 7/00-15/02
C22F 1/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品(2)を部分熱処理するための部分熱処理用ステーション(1)であって、
前記部分熱処理用ステーション(1)に設けられた加工面(3)であって、その上に前記金属部品(2)を設置可能な1つの加工面(3)と、
前記加工面(3)に向けられた少なくとも1つのノズル(4)であって、前記金属部品(2)の少なくとも第1部分領域(6)を冷却するための流体流(5)を吐出するために設けられているノズル(4)と、
少なくとも1つの熱源(9)であって、前記金属部品(2)の少なくとも第2部分領域(10)に熱エネルギーを供給するために設けられた熱源(9)と、
前記加工面(3)の上方のみに設置された少なくとも1つのノズルボックス(7)と
を備え、
前記少なくとも1つのノズルボックス(7)には、少なくとも1つのノズル領域(8)が形成されており、
前記少なくとも1つのノズル(4)は、前記ノズル領域(8)内まで延在するか、又は、前記ノズル領域(8)内に完全に入っており、
前記少なくとも1つのノズルボックス(7)は、前記少なくとも1つのノズル領域(8)と少なくとも1つの加熱領域(11)とを分離するように形成されており、
前記少なくとも1つの加熱領域(11)には、前記熱源(9)が少なくとも部分的に設置可能であるか、及び/又は、前記少なくとも1つの加熱領域(11)が、熱エネルギーの拡散を少なくとも部分的に制限しており、
少なくとも1つの熱源(9)は、少なくとも1つの放射熱源であり、
前記少なくとも1つのノズル領域(8)の前記加工面(3)に平行な断面は、前記金属部品(2)の前記第1部分領域(6)の取り得る形状又は幾何学的な形状に対応する形状又は幾何学的な形状を有する、
ことを特徴とする部分熱処理用ステーション(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の部分熱処理用ステーションであって、
前記少なくとも1つのノズルボックス(7)は、少なくとも部分的に繊維強化セラミック材料より構成される
ことを特徴とする部分熱処理用ステーション。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部分熱処理用ステーションであって、
前記少なくとも1つのノズルボックス(7)は、少なくとも部分的にアルミナセラミックより構成される
ことを特徴とする部分熱処理用ステーション。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の部分熱処理用ステーションであって、
少なくとも1つのノズル領域(8)内に、複数のノズル(4)を備えるノズル列(12)が、少なくとも部分的に設置されている
ことを特徴とする部分熱処理用ステーション。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の部分熱処理用ステーションであって、
前記少なくとも1つのノズル領域(8)は、前記加工面(3)のうち前記金属部品(2)の前記少なくとも1つの第1部分領域(6)設置可能な領域に広がるように形成されている
ことを特徴とする部分熱処理用ステーション。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の部分熱処理用ステーションであって、
前記少なくとも1つのノズルボックス(7)は、少なくとも部分的に壁が二重になっている及び/又は少なくとも部分的に断熱材(13)を備える
ことを特徴とする部分熱処理用ステーション。
【請求項7】
金属部品(2)を部分熱処理するための装置(14)であって、少なくとも
加熱可能な第1炉(15)と、
請求項1乃至6の何れか1つに従って設計され、且つ、前記第1炉(15)の下流側に位置する、部分熱処理用ステーション(1)と
を備える
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、少なくとも
前記部分熱処理用ステーション(1)の下流側に位置する加熱可能な第2炉(16)、又は、
前記部分熱処理用ステーション(1)の下流側、又は、前記第2炉(16)の下流側、又は、前記部分熱処理用ステーション(1)及び前記第2炉(16)の下流側に位置するプレス焼入れツール(17)、又は、
前記第2炉(16)及び前記プレス焼入れツール(17)の両方
を更に備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品の部分熱処理用の焼き戻しステーション、及び、金属部品の熱処理用の装置に関する。本発明は、特に、選択的にプレコートされた部品を部分硬化(partiellen Harten)させる際に用いられる。前記部品は、高強度のマンガンボロン鋼製のものを対象とする。
【背景技術】
【0002】
安全性に関わる鋼板製車体部品の製造には、通常、車体部品へと成形中又は成形後に該鋼板を硬化させる必要がある。このため、「プレス焼入れ(Pressharten)」と呼ばれる熱処理プロセスが確立されている。この場合、通常は板状で提供される鋼板は、まず炉内で加熱され、その後成形加工時にプレス機(Presse)にて冷却され硬化する。
【0003】
近年では、Aピラー、Bピラー、ドア部の側面衝突保護梁、根太、枠部、バンパー、屋根部・床部用のクロスメンバ、フロント側部、リヤ側部等の自動車の車体部品、つまり、異なる機能を部分毎に満たせるように部分領域毎に強度が異なる車体部品をプレス焼入れによって製造することが望まれてきた。例えば、車両のBピラーの中央領域は、側面衝突時に乗員を保護するため高い強度を有する必要がある。同時に、該Bピラーの上端領域及び/又は下端領域では、側面衝突の際に変形エネルギーを吸収するために、又は、例えば、Bピラーの組立の際に他の車体部品に容易に接続可能なように軟らかくしておくために、強度を比較的低くする必要がある。
【0004】
このような部分硬化された車体部品を形成するには、この部分硬化された部品が各部分領域において異なる材料構造又は強度特性を持つ必要がある。硬化後の材料構造又は強度特性を異ならせるには、硬化対象の鋼板を、例えば、接続した複数の異なる板金領域を持つように製造してもよく、又は、プレス機での冷却を部分的に異ならせてもよい。
【0005】
上述の代わりに又は上述に加えて、硬化対象の鋼板に対し、プレス機にて冷却形成する前に、部分的に異なる熱処理プロセスを行うことも可能である。ここでは、例えば、硬化対象の鋼板のこれらの各部分領域のみを加熱することが可能であり、この場合、マルテンサイト等のより硬い構造へ組織変態が可能である。また、熱伝導による鋼板の部分焼き戻し用に設計された接触プレート(Kontaktplatten)により、部分熱処理を行うことも可能である。しかしながら、この場合は、接触プレートと所定時間の接触をする必要があり、この時間は、下流におけるプレス機に到達するまでの(最小の)サイクル時間よりも通常は長い。しかしながら、このような工程管理では、スケーリングに対する保護として鋼板表面に通常なされる、アルミニウム-シリコンコーティング等のコーティングの拡散(Eindiffundieren)を熱処理プロセスに効率的に統合することができないという不利な点が必ず残る。また、所定の接触時間と該プレス機におけるサイクル時間とを調整して合わせる場合、通常、対応する各焼き戻しステーションを工業的な規模のプレス焼入れライン内に統合することが困難であり、稼働中の生産変動は通常は避けられない。
【0006】
硬化対象の鋼板が、冷却形成前に、複数の異なる熱処理プロセスを部分的に受ける場合、該鋼板に部分的に適用される複数の異なる熱処理手段を、十分な程度に確実に、互いに熱的に分離することができないという頻発する問題も存在する。この問題は、特に、該鋼板に部分的に異なる熱処理をほぼ同時に行う場合に発生する。
【発明の概要】
【0007】
上記に基づき、本実施形態は、先行技術に関して述べた前記問題の少なくとも一部を解決することを目的とする。特に、金属部品の熱処理用の焼き戻しステーション及び装置を提供するものであり、これらは、該金属部品に部分的に作用する各熱処理手段を、十分な程度に確実に熱的に区分すること、又は、該金属部品に部分的に作用する各熱処理手段を、十分な程度に確実に熱的に分離すること、又は、その両方が可能とする。
【0008】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって実現される。本明細書において提案される解決策の更に有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。なお、従属請求項に個別に列記されている特徴については、技術的に有意な態様で互いを組み合わせることができ、本発明の更なる実施形態を定義することができる。また、請求項に記載した特徴は明細書により詳細に記載され説明されており、本発明の更に好適な実施形態提示される。
【0009】
本発明によれば、金属部品の部分熱処理用焼き戻しステーションが提案されている。この焼き戻しステーションは、前記焼き戻しステーションに設置された加工面と、前記加工面に向けられた少なくとも1つのノズルと、前記加工面の上方に設置された少なくとも1つのノズルボックスを備える。前記加工面は、その上に前記金属部品を設置可能である。前記少なくとも1つのノズルは、前記金属部品の少なくとも第1部分領域を冷却するための流体流を吐出するために設けられている。前記少なくとも1つのノズルボックスには、少なくとも1つのノズル領域が形成されている。前記少なくとも1つのノズル領域には、前記少なくとも1つのノズルが少なくとも部分的に設置可能であるか、及び/又は、前記少なくとも1つのノズル領域が、少なくとも部分的に前記流体流の拡散を制限する。前記少なくとも1つのノズルボックスは、少なくとも部分的にセラミック材料より構成されている。
【0010】
前記金属部品は、金属板、鋼板、又は、少なくとも部分的にプリフォームされた半製品であることが好ましい。前記金属部品は、例えば22MnB5の(マンガン)ボロン鋼等の、(硬化可能な)鋼を含むもの又は鋼製であることが好ましい。前記金属部品は、少なくともその大部分に、(金属)コーティング(Beschichtung)をするか又はプレコートされていることが、さらに好ましい。前記金属コーティングは、例えば、(主に)亜鉛含有のコーティング、又は、(主に)アルミニウム及び/又はシリコン含有のコーティング、特に、いわゆるアルミニウム/シリコン(Al/Si)コーティングであってもよい。
【0011】
前記焼き戻しステーションは、第1炉の下流及び/又は第2炉の上流に設置されることが好ましい。前記焼き戻しステーションには加工面が設けられており、ここに前記部品が設置可能であるか又は設置されている。この場合、前記加工面は、特に、前記焼き戻しステーション内で前記部品を処理するためにその上を前記部品が移動することが可能な面、及び/又は、前記部品を前記焼き戻しステーション内で処理する際に前記部品が設置される及び/又は前記部品を固定できる面を指す。前記加工面は、実質的に水平であることが好ましい。前記部品は、前記加工面に設置可能であるか又は設置されていることが好ましい。また、前記部品は、前記ノズルボックスに対して位置合わせ可能であるか又は位置合わせされているが好ましい。前記部品は、加工ステーション内に設置されている際は、前記ノズルボックスに対して位置合わせされていることが好ましい。
【0012】
前記焼き戻しステーションは、少なくとも1つのノズルを備える。前記ノズルは、前記加工面に向けられている。また、前記ノズルは、前記部品の少なくとも第1部分領域を冷却するための流体流を吐出するために設けられている。この冷却は、特に、前記部品の前記少なくとも1つの第1部分領域(処理済み部品のうち延性がある)と少なくとも第2部分領域(処理済み部品のうち比較的硬い)との間の温度差を調整するように行われる。ノズルは複数設けられていることが好ましく、前記複数のノズルはノズル列として設置されることが特に好ましい。ノズルが複数設けられている場合、前記ノズルボックスには、ノズルそれぞれに対し別個のノズル領域を形成してもよく、及び/又は、前記複数のノズルの幾つか又は全てに対して共通のノズル領域を形成してもよい。前記各ノズルの形状については、平らな放射ノズル及び/又は丸いノズルであることが好ましい。
【0013】
さらに、前記焼き戻しステーションは、前記加工面の上方に少なくとも1つのノズルボックスを備える。前記ノズルボックスは、枠又はボックス又はハウジング又はこれらを組み合わせた態様で設計されてもよく、ここに窪み及び/又は空間が設けることが可能であり、ノズル及び/又は熱源を収容可能である。特に、周辺環境から及び/又は少なくとも1つの加熱領域から、少なくとも1つのノズル領域を少なくとも部分的に(熱的に)分離又は区分又は遮蔽又はこれらを組み合わせて行うことができるように、前記ノズルボックスは構成されており、特に、そのような形状となっている。また、前記ノズルボックスは(水平方向の)幅を有し、特に、この幅は、前記ノズルボックスの(鉛直方向の)高さの少なくとも1.5倍以上であることが好ましい。特に、前記ノズルボックスは、その下端に又はその下側に、処理対象の部品の外側輪郭に実質的に対応する又は類似の(外側)輪郭を有することが好ましい。
【0014】
前記少なくとも1つのノズルボックスには、少なくとも1つのノズル領域が形成されている。複数のノズル領域が設置可能であることが好ましい。前記ノズルボックスには、前記少なくとも1つのノズル領域が、少なくとも1つのノズルを少なくとも部分的に収容可能であるように構成される、又は、そのような形状を有することが好ましい。このようなノズル領域を構成するには、前記ノズルボックスは、1つ又は複数の壁及び/又は壁領域を有してもよく、この壁及び/又は壁領域は、前記ノズル領域を少なくとも部分的に囲う、又は、前記ノズル領域を周辺環境から及び/又は少なくとも1つの加熱領域から分離又は区分する。前記ノズルボックスは、前記加工面に平行な断面においてノズル領域を完全に囲っている少なくとも1つの(内)壁を備えることが好ましい。
【0015】
前記少なくとも1つのノズル領域においては、前記少なくとも1つのノズルが少なくとも部分的に設置可能であるか又は設置されている。前記少なくとも1つのノズルは、少なくとも部分的に前記ノズル領域内に突出していることが好ましく、又は、完全に前記ノズル領域内に設置されていることも好ましい。これの代わりに又はこれに加えて、前記ノズル領域は、前記ノズル領域が少なくとも部分的に前記流体流の拡散を制限するように形成されている。これにより、少なくとも1つのノズルを用いて前記部品に吐出される流体流を、意図した態様で、前記部品の少なくとも1つの第1部分領域に導くことが可能となり、特に、当該ノズルが前記ノズル領域に突出していない又は前記ノズル領域内に設置されていない場合においても可能となることに優位性がある。また、前記ノズル領域、又は、前記ノズルボックスの(内)壁のうち前記ノズル領域を形成している壁が、横方向及び/又は水平方向への前記流体流の拡散を制限することが好ましい。
【0016】
また、前記少なくとも1つのノズルボックスは、少なくとも部分的にセラミック材料を含む、又は、少なくとも部分的に前記セラミック材料より構成される。少なくとも1つの壁及び/又は前記ノズルボックスの少なくとも1つの壁領域は、前記セラミック材料を含むか、又は、前記セラミック材料より構成されることが好ましい。少なくとも1つのノズル領域を少なくとも1つの加熱領域から(熱的に及び/又は空間的に)分離することが特に好ましい。また、前記セラミック材料は、焼結されていることが好ましい。
【0017】
更なる態様では、金属部品を部分熱処理するための以下のような焼き戻しステーションを提案する。この焼き戻しステーションは、前記焼き戻しステーションに設置された加工面と、前記加工面に向けられた少なくとも1つのノズルと、少なくとも1つの熱源と、前記加工面の上方に設置された少なくとも1つのノズルボックスとを備える。前記加工面は、その上に前記部品を設置可能である。前記少なくとも1つのノズルは、前記部品の少なくとも第1部分領域を冷却するための流体流を吐出するために設けられている。前記少なくとも1つの熱源は、前記部品の少なくとも第2部分領域に熱エネルギーを供給するために設けられている。前記少なくとも1つのノズルボックスには、少なくとも1つのノズル領域が形成されている。前記少なくとも1つのノズル領域には、前記少なくとも1つのノズルが少なくとも部分的に設置可能であるか、及び/又は、前記流体流の拡散を少なくとも部分的に制限する。前記少なくとも1つのノズルボックスには、前記少なくとも1つのノズル領域とは分離した少なくとも1つの加熱領域が形成されている。前記加熱領域には、前記熱源が少なくとも部分的に設置可能であるか、及び/又は、熱エネルギーの拡散を少なくとも部分的に制限している。
【0018】
前記少なくとも1つの熱源は、少なくとも1つの放射熱源であることが好ましい。前記熱源は、活発に動作可能な熱源であることが好ましく、特に、電気的に動作可能又は電力で起動可能な熱源であることが好ましい。特に、前記熱源は、電動加熱素子により構成される(物理的にも電気的にも前記部品に接続しない)ことが好ましい。前記加熱素子は、加熱ループ及び/又は加熱線でもよい。これの代わりに又はこれに加えて、前記熱源は、(ガス加熱式)放射管で構成されてもよい。
【0019】
前記少なくとも1つの加熱領域は、前記ノズルボックスに形成されている。前記ノズルボックスには、前記少なくとも1つの加熱領域が、少なくとも1つの熱源を少なくとも部分的に収容可能であるように構成される、又は、そのような形状を有することが好ましい。このような加熱領域を構成するには、前記ノズルボックスは、1つ又は複数の壁及び/又は壁領域を有してもよく、この壁及び/又は壁領域は、前記加熱領域を少なくとも部分的に囲う、及び/又は、前記加熱領域を周辺環境から及び/又は少なくとも1つのノズル領域から分離又は区分する。前記ノズルボックスは、前記加工面に平行な断面において加熱領域を完全に囲っている少なくとも1つの(内)壁を備えることが好ましい。
【0020】
前記少なくとも1つの加熱領域においては、前記少なくとも1つの熱源が、少なくとも部分的に設置可能であるか又は設置されている。前記少なくとも1つの熱源は、少なくとも部分的に前記加熱領域内に突出していることが好ましく、又は、完全に前記加熱領域内に設置されていることも好ましい。これの代わりに又はこれに加えて、前記加熱領域は、前記加熱領域が少なくとも部分的に熱エネルギーの拡散を制限するように形成されている。これにより、前記少なくとも1つの熱源を用いて前記部品に放出される又は放射される熱エネルギーを、意図した態様で、前記部品の前記少なくとも1つの第2部分領域に導くことが可能となり、特に、前記熱源が前記加熱領域内に突出していない又は前記加熱領域内に設置されていない場合においても可能となることに優位性がある。また、前記加熱領域、又は、前記ノズルボックスの(内)壁のうち前記加熱領域を形成している壁が、横方向及び/又は水平方向への熱エネルギーの拡散を制限することが好ましい。前記熱源が、特に電気的に又はガス加熱式で動作可能な放射熱源により構成されている場合、特に、横方向に向けた熱放射を、例えば、前記加熱領域の内壁から前記部品の前記第2部分領域に向ける又は反射することができる。
【0021】
前に記載した焼き戻しステーションに関連して記載されている詳細、特徴、有利な実施形態については、ここで述べる焼き戻しステーションにおいても適宜適用可能であり、その逆も可能である。これについて、特徴を更に特徴付けるように提供される記載の全てが、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0022】
有利な実施形態では、前記少なくとも1つのノズルボックスは、繊維強化セラミック材料を少なくとも部分的に含む、又は、少なくとも部分的に繊維強化セラミック材料より構成されることを提案する。例えば、アルミナ繊維を繊維として使用してもよい。前記少なくとも1つのノズルボックス、又は、前記ノズルボックスの少なくとも1つの壁及び/又は少なくとも1つの壁領域は、(微細)アルミナ繊維で強化されたアルミナセラミックを少なくとも部分的に含むか、又は、該アルミナセラミックより少なくとも部分的に構成されることが好ましい。
【0023】
より有利な実施形態では、前記少なくとも1つのノズルボックスは、アルミナセラミックを少なくとも部分的に含む、又は、少なくとも部分的にアルミナセラミックより構成されることを提案する。前記ノズルボックスの少なくとも1つの壁及び/又は少なくとも1つの壁領域は、アルミナセラミック少なくとも部分的に含むか、又は、該アルミナセラミックより少なくとも部分的に構成されることが好ましい。前記ノズルボックスの(ほぼ)全ての壁及び/又は壁領域は、アルミナセラミック、特に(微細)アルミナ繊維で強化されたアルミナセラミックを含むか又はより構成されることが特に好ましい。
【0024】
有利な実施形態では、少なくとも1つのノズル領域内に、複数のノズルを備えるノズル列が少なくとも部分的に設置されており、特に、前期複数のノズルは、互いに間隔をあけて配置されていることを提案する。前記ノズル列の形状及び/又は前記複数のノズルの配置は、前記部品の前記少なくとも1つの第1部分領域の(取り得る)ジオメトリ(Geometrie)に適合していることが好ましい。
【0025】
有利な実施形態では、前記少なくとも1つのノズル領域は、前記加工面のうち前記部品の前記少なくとも1つの第1部分領域が設置可能な領域に広がるように形成されていることを提案する。前記ノズル領域の、前記加工面に平行な断面は、前記部品の前記少なくとも1つの第1部分領域の(取り得る)形状又はジオメトリに対応する形状又はジオメトリを有することが好ましい。また、前記少なくとも1つの加熱領域が、前期加工面のうち前記部品の前記少なくとも1つの第2部分領域を設置可能な領域に広がっているように形成されていることがさらに好ましい。前記加熱領域の、前記加工面に平行な断面は、前記部品の前記第2部分領域の(取り得る)形状又はジオメトリに対応する形状又はジオメトリを有することは特に好ましい。
【0026】
また、前記部品の前記少なくとも1つの第1部分領域の(横方向及び/又は水平方向の)位置に対応する、前記ノズルボックス内又は前記ノズルボックス上の(横方向及び/又は水平方向の)所定位置に、前記少なくとも1つのノズル領域を設置してもよい。特に、前記部品が前記加工面に設置され及び/又は前記ノズルボックス対して位置合わせされたときに直ちに、前記少なくとも1つのノズル領域が重なるようにしてもよい。また、前記部品の前記少なくとも1つの第2部分領域の(横方向及び/又は水平方向の)位置に対応する、前記ノズルボックス内又は前記ノズルボックス上の(横方向及び/又は水平方向の)所定位置に、前記少なくとも1つの加熱領域を設置してもよい。特に、前記部品が前記加工面に設置され及び/又は前記ノズルボックス対して位置合わせされたときに直ちに、前記少なくとも1つの加熱領域が重なるようにしてもよい。
【0027】
有利な実施形態では、前記少なくとも1つのノズルボックスは、少なくとも部分的に壁が二重になっている及び/又は少なくとも部分的に断熱材を備えることを提案する。好ましくは、前記ノズルボックスは、前記少なくとも1つの加熱領域内において又は前記少なくとも1つの加熱領域の少なくとも部分的な周囲において壁が二重になっているか、及び/又は、前記ノズルボックスは(熱的に)隔離されている。前記断熱材は、特に、細孔断熱材を含む又は細孔断熱材より構成される。前記断熱材は、前記ノズルボックスの壁の間及び/又は前記ノズルボックスの壁領域の間に設置され、前記ノズルボックスの壁が二重になっている領域を形成することが好ましい。前記断熱材は、1073.15Kを超える温度に対して温度耐性があることが好ましい。
【0028】
更なる態様では、金属部品を(部分的に)熱処理するための装置であって、
加熱可能な第1炉であって、特に、放射及び/又は対流により加熱される第1炉と、
前記第1炉の下流に設けられた焼き戻しステーションと
を少なくとも備える装置を提案する。
有利な実施形態では、前記装置は、
前記焼き戻しステーションの下流に設けられた加熱可能な第2炉であって、特に、放射及び/又は対流により加熱される第2炉、又は、
前記焼き戻しステーション及び/又は前記第2炉の下流に設けられたプレス焼入れツール、又は、
その両方
を少なくとも備えることを提案する。
【0029】
より有利な実施形態では、少なくとも前記第1炉又は前記第2炉は、連続加熱炉又はチャンバー炉であることを提案する。前記第1炉については、連続加熱炉、特に、ローラーハース炉であることが好ましい。前記第2炉については、連続加熱炉、特に、ローラーハース炉又はチャンバー炉、特に、上下に重ねて設けられたチャンバーを少なくとも2つ有する多段炉であることが特に好ましい。前記第2炉は、炉内部が、特に放射熱(のみ)によって加熱可能となっていることが好ましく、内部温度を仮想的に均一に設定可能であることが好ましい。特に、前記第2炉が多段チャンバー炉として設計されている場合、前述のような炉内空間が、チャンバーの数に対応させて複数あってもよい。
【0030】
第1炉及び/又は第2炉内には、放射熱源(のみ)を設置することが好ましい。これは、少なくとも1つの電気的に動作する加熱ループ及び/又は少なくとも1つの電気的に動作する加熱線等の少なくとも1つの電気的に動作する(部品と接触しない)加熱素子を、第1炉の炉内及び/又は第2炉の炉内に設置する場合に特に好ましい。これの代わりに又はこれに加えて、少なくとも1つの、特にガス加熱式の放射管を、第1炉の炉内及び/又は第2炉の炉内に設置可能である。また、第1炉の炉内及び第2炉の炉内では少なくとも1つのガスバーナーが燃焼するが、複数の放射管ガスバーナー又は複数の放射管を、第1炉の炉内及び/又は第2炉の炉内に設置することが好ましい。このとき、これらのガスバーナーが内部で燃焼する鋼管の内部領域と炉内とが空気に関して分離している場合は、燃焼ガス及び排気ガスのいずれも前記炉内には侵入できず、その結果、炉内空気に影響を与えることがないため、特に優位性を有することとなる。そのような配置は「間接ガス加熱」とも呼ばれる。
【0031】
前記焼き戻しステーションに関連して記載されている詳細、特徴、有利な実施形態については、ここに示す前記装置においても適宜適用可能であり、その逆も可能である。これについて、特徴を更に特徴付けるように提供される記載の全てが、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0032】
更なる態様では、少なくとも部分的にセラミック材料で構成されたノズルボックスを焼き戻しステーション内で使用することを提案する。ここでは、該ノズルボックスは、金属部品の部分熱処理のために使用する。
【0033】
前記焼き戻しステーション及び/又は前記装置に関連して記載されている詳細、特徴、有利な実施形態については、ここに示す使い方でも適宜適用可能であり、その逆も可能である。これについて、特徴を更に特徴付けるように提供される記載の全てが、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0034】
本発明及び技術的な環境を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、ここに示す例示的な実施形態によって限定されないものとする。特に、特段の記載がない限り、図面により説明された事項の部分的な態様を抽出し、他の構成要素、及び/又は、他の図面及び/又は本明細書からの知見と、これを組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に従う焼き戻しステーションの概略図である。
図2】本発明に従う別の焼き戻しステーションの概略図である。
図3】本発明に従う焼き戻しステーション内で使用可能なノズルボックスの断面の斜視図である。
図4】本発明に従う装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、金属部品2を部分熱処理するための焼き戻しステーション1の概略図を示す。焼き戻しステーション1には、加工面3が設置されており、ここに金属部品2が配置される。例えば、焼き戻しステーション1は、加工面3に向けられたノズル4を備え、このノズル4は、金属部品2の少なくとも第1部分領域6を冷却するための流体流5を吐出するために設けられている。また、例えば、焼き戻しステーション1は、金属部品2の少なくとも第2部分領域10に熱エネルギーを与えるための熱源9を備えている。この熱源9は、例えば、電熱線の態様で設けられている。また、焼き戻しステーション1は、加工面3の上方にノズルボックス7を備えている。このノズルボックス7には、ここではノズル領域8が形成されており、ここにノズル4が少なくとも部分的に設置されている。また、ノズルボックス7は、図1に示すように、ノズル領域8から分離された加熱領域11が形成されており、ここに熱源9が少なくとも部分的に設置されている。
【0037】
図1では、ノズルボックス7及びノズルボックス7の壁18は、セラミック材料よりなる。ここで使用されるセラミック材料としては、繊維強化アルミナセラミックが例として挙げられる。また、図1では、ノズルボックス7において、加熱領域11の周りが二重壁になっていることと、ノズルボックス7の二重壁となっている部分の壁18の間に断熱材13を有することとが示されている。
【0038】
図1の記載は、金属部品2が加工面3に設置され且つノズルボックス7に対して位置合わせされたときはいつでも、加工面3のうち金属部品2の第1部分領域6が設置される領域にノズル領域8が広がっているように、該ノズル領域8が形成されていることをさらに示している。また、加熱領域11は、加工面3のうち金属部品2の第2部分領域10が設置される領域に広がるように形成されている。言い換えると、紙面に垂直で且つ加工面3に平行な、ノズル領域8の断面は、第1部分領域6の(取り得る)形状又はジオメトリに対応する形状を有する。したがって、紙面に垂直で且つ加工面3に平行な、加熱領域11の断面は、第2部分領域10の(取り得る)形状又はジオメトリに対応する形状を有する。
【0039】
ノズル領域8と加熱領域11は、ノズルボックスによって互いに(熱的に)分離されており、それにより、金属部品2は、異なる焼き戻しをされた部分領域毎に、可能な限り正確に互いに区分された温度プロファイルを呈する。ノズル4により第1部分領域6を冷却することで第1部分領域6と第2部分領域10との間に明確な温度差があるため、焼き戻しステーション1の下流に設けられたプレス焼入れツール(ここでは図示せず)での硬化後は、部分領域6と部分領域10は、異なる材料構造及び/又は強度特性を示す。ここで、冷却された第1部分領域6では、第2部分領域10よりも、構造の延性が高く及び/又は硬度が低くなり得る。
【0040】
図2は、金属部品2を部分熱処理するための別の焼き戻しステーション1の概略図を示す。参照符号は統一しているので、図1に示す焼き戻しステーションとの違いのみを述べる。また、図1の説明に対して参照を行っており、これにより図1の説明はここに完全に組み込まれる。第1の違いは、ノズル列12に設置されたノズル4が、ここでは2個である点である。
【0041】
また、図2は、例として、ノズル領域8が、流体流5の拡散を少なくとも部分的に制限するように形成可能であることも示している。例えば、ノズル領域8を横方向に形成することにし、ノズル(複数の場合もあり)自体はノズル領域8内に設置されなくてもよい。同様に、加熱領域11も、ここでは例として、熱エネルギーの拡散を少なくとも部分的に制限するようにノズルボックス7により構成され、例えば、加熱領域11を横方向に形成する。このため、例えば、図2に点線で示す熱放射を加熱領域11の各内壁18にて反射可能である。
【0042】
図3は、本発明による焼き戻しステーション(ここでは図示せず)内で使用可能なノズルボックス7の断面の斜視図である。例として、このノズルボックス7は、各ノズル(ここでは図示せず)を配置可能な及び/又は各ノズルが噴射可能な、複数のノズル領域8を備える。また、ノズルボックス7は複数の加熱領域11を形成し、この加熱領域11には1つ又は複数の熱源(ここでは図示せず)が設置可能である。また、各ノズル領域8は、ノズルボックス7の各壁18及び断熱材13にて、前述の加熱領域11から隔てられている。
【0043】
図4は、金属部品2を熱処理するための、本発明による装置14の概略図を示す。この装置14は、加熱可能な第1炉15と、前記第1炉15の下流に(隣接して)設置された焼き戻しステーション1と、前記焼き戻しステーション1の下流に(隣接して)設置された加熱可能な第2炉16と、前記第2炉16の下流に(隣接して)設置されたプレス焼き入れツール17とを備える。ここでは、装置14は、(部分的な)プレス焼入れ用の熱成形ライン(Warmformlinie)を示す。
【0044】
先行技術に記載された諸問題を少なくとも部分的に解決する、金属部品の熱処理用の焼き戻しステーション及び装置をここに開示した。特に、この焼き戻しステーション及び装置により、該金属部品に部分的に作用する各熱処理手段を、十分な程度に確実に熱的に区分すること、又は、該金属部品に部分的に作用する複数の異なる熱処理手段を、十分な程度に確実に熱的に分離すること、又は、その両方が可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 焼き戻しステーション
2 部品
3 加工面
4 ノズル
5 流体流
6 第1部分領域
7 ノズルボックス
8 ノズル領域
9 熱源
10 第2部分領域
11 加熱領域
12 ノズルボックス
13 断熱材
14 装置
15 第1炉
16 第2炉
17 プレス焼入れツール
18 壁
図1
図2
図3
図4